有限群の分類(位数1から100)

同義語:有限群の分類(位数1~100)classification of finite groups of order 1 to 100

概要

有限群の分類(位数1から100)(classification of finite groups of order 1 to 100)とは、位数が1以上100以下の有限群を同型まで数え、GAP Small Groups Libraryの識別子で一覧にしたものである。位数が素数 $p$、素数の平方 $p^2$、奇素数の二倍 $2p$、相異なる素数の積 $rs$ である場合の分類も扱う。同じ位数でも非同型な群があり、位数64では267個、位数96では231個の同型類がある。

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: 群, 巡回群, Lagrangeの定理, Sylowの定理
有限群の分類では、同じ位数の群を 同型 まで区別する。位数だけでは群は決まらない。たとえば位数 $4$ には巡回群 $C_4$ と Kleinの四元群 $V_4$ があり、両者は同型でない。本記事では、位数 $1$ から $100$ までの群の同型類数と GAP Small Groups Library における識別子を一覧にし、素数二個までで書ける代表的な位数の分類を証明する。

表の読み方

位数 $n$ の巡回群を $C_n$、正 $n$ 角形の対称群を位数 $2n$ の $\operatorname{Dih}_n$ と書く。とくに $\operatorname{Dih}_n$ を位数 $n$ の群とする流儀は採らない。
GAP の SmallGroup(n,i) が返す同型類を $[n,i]$ と略記する。下表の「ID 範囲」$[n,1]$–$[n,k]$ は、位数 $n$ の群がその $k$ 個で同型まで過不足なく尽くされることを表す。ただし ID はデータベース中の識別子であって、群の構造名ではない。個々の ID の構造を推測して群名へ置き換えてはいけない。

計算条件

表は GAP 4.16.0(2026-06-02)と SmallGrp 1.5.4 を用い、2026-09-13 に NumberSmallGroups(n) を $1\leq n\leq100$ の全整数について実行して作成した。Small Groups Library は収録範囲で同型類の完全かつ重複のない代表系を与える BEO26。同型類数は OEIS A000001 OEIS とも照合した。

位数1から100までの同型類数

位数 $n$同型類数 $k$ID 範囲
11$[1,1]$
21$[2,1]$
31$[3,1]$
42$[4,1]$–$[4,2]$
51$[5,1]$
62$[6,1]$–$[6,2]$
71$[7,1]$
85$[8,1]$–$[8,5]$
92$[9,1]$–$[9,2]$
102$[10,1]$–$[10,2]$
111$[11,1]$
125$[12,1]$–$[12,5]$
131$[13,1]$
142$[14,1]$–$[14,2]$
151$[15,1]$
1614$[16,1]$–$[16,14]$
171$[17,1]$
185$[18,1]$–$[18,5]$
191$[19,1]$
205$[20,1]$–$[20,5]$
212$[21,1]$–$[21,2]$
222$[22,1]$–$[22,2]$
231$[23,1]$
2415$[24,1]$–$[24,15]$
252$[25,1]$–$[25,2]$
262$[26,1]$–$[26,2]$
275$[27,1]$–$[27,5]$
284$[28,1]$–$[28,4]$
291$[29,1]$
304$[30,1]$–$[30,4]$
311$[31,1]$
3251$[32,1]$–$[32,51]$
331$[33,1]$
342$[34,1]$–$[34,2]$
351$[35,1]$
3614$[36,1]$–$[36,14]$
371$[37,1]$
382$[38,1]$–$[38,2]$
392$[39,1]$–$[39,2]$
4014$[40,1]$–$[40,14]$
411$[41,1]$
426$[42,1]$–$[42,6]$
431$[43,1]$
444$[44,1]$–$[44,4]$
452$[45,1]$–$[45,2]$
462$[46,1]$–$[46,2]$
471$[47,1]$
4852$[48,1]$–$[48,52]$
492$[49,1]$–$[49,2]$
505$[50,1]$–$[50,5]$
511$[51,1]$
525$[52,1]$–$[52,5]$
531$[53,1]$
5415$[54,1]$–$[54,15]$
552$[55,1]$–$[55,2]$
5613$[56,1]$–$[56,13]$
572$[57,1]$–$[57,2]$
582$[58,1]$–$[58,2]$
591$[59,1]$
6013$[60,1]$–$[60,13]$
611$[61,1]$
622$[62,1]$–$[62,2]$
634$[63,1]$–$[63,4]$
64267$[64,1]$–$[64,267]$
651$[65,1]$
664$[66,1]$–$[66,4]$
671$[67,1]$
685$[68,1]$–$[68,5]$
691$[69,1]$
704$[70,1]$–$[70,4]$
711$[71,1]$
7250$[72,1]$–$[72,50]$
731$[73,1]$
742$[74,1]$–$[74,2]$
753$[75,1]$–$[75,3]$
764$[76,1]$–$[76,4]$
771$[77,1]$
786$[78,1]$–$[78,6]$
791$[79,1]$
8052$[80,1]$–$[80,52]$
8115$[81,1]$–$[81,15]$
822$[82,1]$–$[82,2]$
831$[83,1]$
8415$[84,1]$–$[84,15]$
851$[85,1]$
862$[86,1]$–$[86,2]$
871$[87,1]$
8812$[88,1]$–$[88,12]$
891$[89,1]$
9010$[90,1]$–$[90,10]$
911$[91,1]$
924$[92,1]$–$[92,4]$
932$[93,1]$–$[93,2]$
942$[94,1]$–$[94,2]$
951$[95,1]$
96231$[96,1]$–$[96,231]$
971$[97,1]$
985$[98,1]$–$[98,5]$
992$[99,1]$–$[99,2]$
10016$[100,1]$–$[100,16]$

表は同型類数と識別子の完全な範囲を与えるが、各識別子を構造名で完全に記述する表ではない。たとえば位数 $64$ には $267$ 個、位数 $96$ には $231$ 個の同型類があり、少数の慣用名だけを並べる方法では全体を表しにくい。

素数に関係する位数の分類

以下では Lagrange の定理(Lagrangeの定理)、Cauchy の定理(Cauchyの定理)、Sylow の定理(Sylowの定理)を基礎として採用する。有限 $p$ 群(p群)の中心が自明でないことには 群の中心、有限アーベル群の標準形には 有限アーベル群の基本定理 を用いる。

素数位数の群

$p$ が素数で $|G|=p$ なら、$G\cong C_p$ である。

証明

$g\neq e$ を取る。Lagrange の定理により $g$ の位数は $p$ の $1$ でない約数、したがって $p$ である。ゆえに $G=\langle g\rangle\cong C_p$ である。

巡回な中心商

剰余群 $G/Z(G)$ が巡回群なら、$G$ は アーベル群 である。

証明

$G/Z(G)=\langle gZ(G)\rangle$ とする。任意の $x,y\in G$ は $x=g^az$、$y=g^bw$($z,w\in Z(G)$)と書ける。中心の元は全ての元と可換するので
$$ xy=g^{a+b}zw=g^{b+a}wz=yx $$
である。したがって $G$ はアーベル群である。

素数の平方を位数にもつ群

$p$ が素数で $|G|=p^2$ なら、$G\cong C_{p^2}$ または $G\cong C_p\times C_p$(直積)である。この二群は同型でない。

証明

群の中心 により $Z(G)$ は自明でない。$|Z(G)|$ は $p$ または $p^2$ である。前者なら $G/Z(G)$ は位数 $p$ だから prop-fgc-order-p により巡回群となり、lem-B247-cyclic-central-quotient によって $G$ はアーベル群となる。これは非中心元があるという $|Z(G)|=p$ に矛盾する。したがって $Z(G)=G$ で、$G$ はアーベル群である。
有限アーベル群の基本定理を位数 $p^2$ に適用すると、標準形は $C_{p^2}$ または $C_p\times C_p$ の二つである。前者は位数 $p^2$ の元をもつ。後者の全非単位元の位数は $p$ である。したがって両者は同型でない。

奇素数の二倍を位数にもつ群

$p$ を奇素数とし、$|G|=2p$ とする。このとき $G\cong C_{2p}$ または $G\cong\operatorname{Dih}_p$ である。この二群は同型でない。

証明

Sylow の定理より、Sylow $p$ 部分群(Sylow p部分群)$P$ の個数は $p$ を法として $1$ で $2$ を割るから $1$ であり、$P$ は 正規部分群 である。prop-fgc-order-p により $P\cong C_p$ である。Cauchy の定理で位数 $2$ の元 $t$ が取れ、$\langle t\rangle\cap P=\{e\}$ かつ $|P\langle t\rangle|=2p$ なので $G=P\rtimes\langle t\rangle$(半直積)となる。
$P=\langle a\rangle$ とする。$t$ の共役作用は $C_p$ の位数 $2$ 以下の自己同型である。自明なら $G\cong C_p\times C_2\cong C_{2p}$。非自明なら、自己同型群 $\operatorname{Aut}(C_p)\cong C_{p-1}$ の唯一の位数 $2$ の元である反転 $a\mapsto a^{-1}$ が作用する。このとき $G$ は関係式 $a^p=t^2=e$、$tat^{-1}=a^{-1}$ を満たす元 $a,t$ で生成され位数 $2p$ だから、二面体群 の記事の命題(表示と位数)により $G\cong\operatorname{Dih}_p$ である。前者はアーベル群で、後者は $p\geq3$ のとき 非アーベル群 なので同型でない。$p=3$ の固有な位数 $6$ の分類は 3次の対称群 が所有する。

相異なる二素数の積を位数にもつ群

$r< s$ を相異なる素数とし、$|G|=rs$ とする。

  1. $r\nmid(s-1)$ なら $G\cong C_{rs}$ である。
  2. $r\mid(s-1)$ なら、同型類は $C_{rs}$ と、忠実な作用(忠実な作用)による非可換半直積 $C_s\rtimes C_r$ のちょうど二つである。
証明

Sylow $s$ 部分群の個数 $n_s$ は $s$ を法として $1$ で $r$ を割る。$r< s$ より $n_s=1$ だから、Sylow $s$ 部分群 $S\cong C_s$ は正規である。Cauchy の定理で位数 $r$ の部分群 $R\cong C_r$ が存在し、$S\cap R=\{e\}$、$|SR|=rs$ より $G=S\rtimes R$ である。
作用準同型 $R\to\operatorname{Aut}(S)\cong C_{s-1}$ の像の位数は $1$ または $r$ である。$r\nmid(s-1)$ なら像は自明で、$G\cong C_s\times C_r\cong C_{rs}$ となる。$r\mid(s-1)$ なら、自明作用は同じ巡回群を与え、非自明作用は単射で非可換半直積を与える。巡回群 $C_{s-1}$ は位数 $r$ の部分群をただ一つもつので、非自明作用の像は一意である。$R$ の生成元を変えることはこの像の生成元を変えるだけであり、得られる半直積は互いに同型である。したがって非可換同型類は一つだけである。この分類の標準的な定式化は DF04 も参照した。

境界と具体例

位数 $4$ の分類は prop-fgc-order-p2 の $p=2$ の場合で、$C_4$ と $V_4$ の二同型類になる。これは「Klein 群が非巡回である」という個体の性質とは別の分類主張である。
位数 $2p$ の二群を同じものにしてはいけない。たとえば $C_{10}$ はアーベル群だが $\operatorname{Dih}_5$ は非アーベル群である。「位数 $2p$ なら二面体群」という含意を $C_{2p}$ が破る。二面体群の一般的な定義と記法は 二面体群 が所有する。

位数8と位数12の群

位数 $8$ の群は同型を除いて $5$ 個あり、表の $[8,1]$–$[8,5]$ に対応する。すなわち
$$ C_8,\qquad C_4\times C_2,\qquad C_2\times C_2\times C_2,\qquad \operatorname{Dih}_4,\qquad Q_8 $$
である。前 $3$ 個がアーベル群(有限アーベル群の基本定理 による $3$ の分割 $3$、$2+1$、$1+1+1$ に対応)、$\operatorname{Dih}_4$ は正方形の二面体群、$Q_8$ は 四元数群 である。
位数 $12$ の群は同型を除いて $5$ 個あり、表の $[12,1]$–$[12,5]$ に対応する。すなわち
$$ C_{12},\qquad C_6\times C_2,\qquad \operatorname{Dih}_6,\qquad A_4,\qquad \operatorname{Dic}_3=C_3\rtimes C_4 $$
である。前 $2$ 個がアーベル群、$\operatorname{Dih}_6$ は正六角形の二面体群(位数 $12$)、$A_4$ は $4$ 次の 交代群、$\operatorname{Dic}_3$ は $C_4$ の生成元が $C_3$ に反転で作用する半直積(二重巡回群)である。

位数8と位数12の分類の出典

上の例で挙げた群が互いに同型でなく、かつ位数 $8$ と $12$ の群を尽くすことの証明は本記事では割愛する。証明は DF04 の Sylow の定理と半直積の章、および Rob96 にある。同型類の個数が $5$ であることは表(rem-B247-computation)と整合する。

$r\mid(s-1)$ の例として $(r,s)=(3,7),(3,13),(5,11),(3,19),(3,31)$ があり、それぞれ位数 $21,39,55,57,93$ の非可換群が得られる。作用は $\operatorname{Aut}(C_s)$ の位数 $r$ の一意な部分群を通るため、作用の生成元表示が異なっても新しい同型類が増えるわけではない。ここで述べるのは半直積の同型型であり、Frobenius群 の一般論を本記事へ移してはいない。

位数21

$C_7$ の生成元を $2$ 倍する位数 $3$ の自己同型により、位数 $21$ の非可換群 $C_7\rtimes C_3$ を得る。

位数39

$C_{13}$ の生成元を $3$ 倍する位数 $3$ の自己同型により、位数 $39$ の非可換群 $C_{13}\rtimes C_3$ を得る。

位数55

$C_{11}$ の生成元を $4$ 倍する位数 $5$ の自己同型により、位数 $55$ の非可換群 $C_{11}\rtimes C_5$ を得る。

位数57

$C_{19}$ の生成元を $7$ 倍する位数 $3$ の自己同型により、位数 $57$ の非可換群 $C_{19}\rtimes C_3$ を得る。

位数93

$C_{31}$ の生成元を $5$ 倍する位数 $3$ の自己同型により、位数 $93$ の非可換群 $C_{31}\rtimes C_3$ を得る。

小位数群の識別子と同型類数には BEO26、計算系の版には GAP26、数列としての独立照合には OEIS を用いた。素数二個までの位数の分類の標準的な定式化は DF04 を、位数 $8$ と $12$ の分類は DF04 と Rob96 を参照した。

関連項目

参考文献

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