正則基数(regular cardinal)とは、共終数が自分自身に等しい無限基数 $\kappa$、つまり $\operatorname{cf}\kappa=\kappa$ となる基数である。これは $\kappa$ 未満の個数の、濃度 $\kappa$ 未満の集合の合併がなお濃度 $\kappa$ 未満であることと同値で、$\omega$ や無限後続基数が例になる。$\aleph_\omega$ のように共終数が自身より小さい基数は特異基数という。非可算で正則な強極限基数を到達不能基数という。
正則基数(regular cardinal)とは、それより小さい個数の順序数を並べても、その基数の全体へ共終にはならない無限基数である。基数を初期順序数とみると、無限基数 $\kappa$ が正則であるための式は
$$
\operatorname{cf}(\kappa)=\kappa
$$
となる。反対に $\operatorname{cf}(\kappa)<\kappa$ なら特異基数という。$\omega$ と、その後のすべての無限後続基数は正則である。一方、$\aleph_\omega$ は特異である(Jec03 Chapter 3;Sta000E)。
正則性は、単に「長い増大列が必要」というだけではない。$\kappa$ 未満の個数の、各々濃度が $\kappa$ 未満である集合を合併しても、なお濃度は $\kappa$ 未満にとどまる。この性質は帰納構成で各段階の大きさを抑えたり、定常集合を扱うときに極限段階の上限を $\kappa$ の内側に保ったりするための基礎になる。この記事ではこれらの言い換えを証明し、具体例、巨大基数、強制法への接続を整理する。
基数は同じ濃度の順序数のうち最小のもの、すなわち初期順序数として扱う。無限基数 $\kappa$ は極限順序数である。$\kappa$ の部分集合 $C$ が共終であるとは、任意の $\alpha<\kappa$ に対し、それ以上の元 $\beta\in C$ が存在することをいう。言い換えると $\sup C=\kappa$ である。
共終数 $\operatorname{cf}(\kappa)$ は、$\kappa$ に共終な真に増加する列を作るのに必要な最小の長さである。同値に、$\kappa$ の共終部分集合の濃度の最小値としても定義できる(Sta000E)。共終部分集合を増加順に並べたときの順序型が、その集合の濃度と必ず等しいという意味ではない。$\kappa$ 自身をそのまま列にできるため、常に $\operatorname{cf}(\kappa)\leq\kappa$ である。
無限基数 $\kappa$ が正則であるとは、$\operatorname{cf}(\kappa)=\kappa$ であることをいう。$\operatorname{cf}(\kappa)<\kappa$ のときは特異である。
したがって、正則な $\kappa$ へ共終な列を作るには、少なくとも $\kappa$ 個の段階が要る。「$\kappa$ 未満の各段階で何かを選び続けると、途中で $\kappa$ の外へ出てしまうのではないか」という心配は、順序数の上限を取る場面では正則性によって解消される。
ここで後続順序数と後続基数は区別する。後続順序数 $\alpha+1$ は最大元 $\alpha$ をもつので共終数が $1$ である。これに対して無限基数 $\lambda$ の後続基数 $\lambda^+$ は初期順序数として極限順序数であり、共終数は $\lambda^+$ である。「後続」の二つの意味を混ぜると正則性を誤って判定する。
有限基数を正則・特異に含める慣習は文献によって異なる。以下では標準的に無限基数だけを対象とする。また、後続基数の正則性や集合の合併に関する議論は、選択公理を含む ZFC の下で述べる。
正則性は、$\kappa$ の部分集合がどこまで伸びるかで判断できる。
無限基数 $\kappa$ について次は同値である。
1 なら、もし 2 に反する $A$ があれば、$A$ は $\kappa$ に共終である。共終数は共終部分集合の濃度の最小値にも等しいので、$\operatorname{cf}(\kappa)\leq|A|<\kappa$ となり正則性に反する。2 から 3 へは、列の値の集合 $A=\{\alpha_i\mid i<\mu\}$ に 2 を適用すればよい。3 が成り立つのに 1 が成り立たないなら、$\operatorname{cf}(\kappa)=\mu<\kappa$ の共終列を取れる。その列の上限は $\kappa$ なので 3 に反する。従って三条件は同値である。$\square$
「有界」はここでは順序数として $\kappa$ のある点より下に収まることを指す。単に集合として濃度が小さいことと、この順序上の有界性とが一致するのは、まさに正則性があるからである。特異基数では、濃度の小さい共終部分集合が存在する。
もう一つの判定法は、日常の証明でより使いやすい。添字の個数も各集合の濃度も $\kappa$ より小さければ、合併の濃度も $\kappa$ より小さいという性質である。
無限基数 $\kappa$ について、次の条件は正則性と同値である。
任意の $\mu<\kappa$ と集合族 $(A_i)_{i<\mu}$ に対し、すべての $i<\mu$ で $|A_i|<\kappa$ なら
$$
\left|\bigcup_{i<\mu}A_i\right|<\kappa
$$
が成り立つ。
$\kappa$ が正則とする。まず $\kappa=\omega$ なら、$\mu$ と各 $A_i$ は有限であり、有限個の有限集合の合併も有限だからよい。$\kappa$ が非可算の場合、各濃度 $\lambda_i=|A_i|$ は $\kappa$ 未満である。前の命題を $(\lambda_i)_{i<\mu}$ に適用すると、それらを一様に上から抑える基数 $\lambda<\kappa$ が取れる。選択公理を用いて各 $A_i$ を $\lambda$ の部分集合へ単射で写せば、合併は $\mu\times\lambda$ の像として数えられる。無限基数の積の計算より $|\mu\times\lambda|=\max(\mu,\lambda)$、一方が有限の場合もこの積は $\kappa$ 未満なので、合併の濃度は $\kappa$ 未満である。
逆に $\kappa$ が特異なら、$\mu=\operatorname{cf}(\kappa)<\kappa$ とし、$\kappa$ に共終な増加列 $(\alpha_i)_{i<\mu}$ を取る。各 $A_i=\{\xi\mid\xi<\alpha_i\}$ は濃度が $\kappa$ 未満なのに、$\bigcup_{i<\mu}A_i=\kappa$ となる。従って合併条件は失敗する。$\square$
この命題で「個数が小さい」を抜くと結論は成り立たない。正則な $\kappa$ でも、$\kappa$ 個の単元集合 $\{\alpha\}$ を $\alpha<\kappa$ にわたり合併すれば $\kappa$ になる。また、各集合の濃度だけが $\kappa$ 未満でも添字が $\kappa$ 個なら同じ反例になる。二つの不等式 $\mu<\kappa$ と $|A_i|<\kappa$ がそろって初めて適用できる。
この形は帰納構成で役立つ。たとえば非可算正則 $\kappa$ のもとで、各段階 $\alpha<\mu<\kappa$ にそれまでの対象を追加し、毎回追加される点の個数が $\kappa$ 未満なら、$\mu$ 段階後の全体も $\kappa$ 未満である。個々の段階が小さいだけでは、極限段階の全体が小さいとは限らないが、正則性がその隙間を埋める。
$\omega$ の有限部分集合は自然数の最大値より下に収まる。ゆえに $\operatorname{cf}(\omega)=\omega$ であり、$\omega$ は正則である。
$\omega_1$ は最初の非可算基数である。可算個の可算順序数の上限は可算順序数だから、$\omega_1$ への可算共終列は存在しない。したがって $\operatorname{cf}(\omega_1)=\omega_1$ である。より一般には次の命題が後続基数すべてに当てはまる。
任意の無限基数 $\lambda$ について、$\lambda^+$ は正則である。
$\lambda^+$ に長さ $\mu<\lambda^+$ の共終列 $(\alpha_i)_{i<\mu}$ があると仮定する。$\lambda^+$ は $\lambda$ の次の基数だから $|\mu|\leq\lambda$、また $\alpha_i<\lambda^+$ より各 $\alpha_i$ の濃度も $\lambda$ 以下である。選択公理の下で
$$
\left|\bigcup_{i<\mu}\alpha_i\right|
\leq |\mu|\cdot\lambda
\leq\lambda\cdot\lambda
=\lambda.
$$
しかし列が共終なら、その合併は $\lambda^+$ 全体であり、濃度は $\lambda^+>\lambda$ である。矛盾する。$\square$
従って $\aleph_1,\aleph_2,\aleph_3,\ldots$ はどれも正則である。ただし「正則なら後続基数」という逆は主張できない。正則な極限基数の存在は別の問題であり、非可算な強極限性まで備えるものが到達不能基数である。
極限添字における定義から
$$
\aleph_\omega=\sup_{n<\omega}\aleph_n.
$$
右辺は可算個の $\aleph_\omega$ 未満の順序数で $\aleph_\omega$ に到達する。有限個では上限に届かないので $\operatorname{cf}(\aleph_\omega)=\omega<\aleph_\omega$ である。これは最初に現れる特異基数の例である。
集合の合併による反例も見える。$A_n=\aleph_n$ を順序数の集合とみれば、各 $|A_n|=\aleph_n<\aleph_\omega$ なのに $\bigcup_{n<\omega}A_n=\aleph_\omega$ である。
$\aleph_\omega$ が特異であることと、連続体の濃度が何であるかは別の問題である。$\aleph_\omega$ の共終数の計算には連続体仮説を使わない。さらに、極限基数がすべて特異というわけでもない。正則な極限基数が存在する場合もあり、その存在を当然のものとして扱うことはできない。
順序数の例との違い. $\omega_1+\omega$ という順序数は共終数 $\omega$ を持つが、基数ではない。同じ濃度を持つ初期順序数は $\omega_1$ で、その共終数は $\omega_1$ である。正則・特異を判定するときは、対象を初期順序数としての基数に固定しなければならない。
特異基数の共終数は、それ自体は正則である。このため「$\kappa$ は特異で、$\operatorname{cf}(\kappa)$ も特異」ということは起こらない。
任意の $0$ でない極限順序数 $\delta$ について、$\operatorname{cf}(\delta)$ は正則な無限基数である。
$\mu=\operatorname{cf}(\delta)$ とし、長さ $\mu$ の増加共終列 $(\delta_i)_{i<\mu}$ を取る。もし $\mu$ が特異なら、長さ $\nu=\operatorname{cf}(\mu)<\mu$ の増加共終列 $(i_j)_{j<\nu}$ がある。すると $(\delta_{i_j})_{j<\nu}$ も $\delta$ に共終になる。実際、任意の $\gamma<\delta$ を超える $\delta_i$ があり、その $i$ 以上の $i_j$ を選べるからである。これは $\mu$ が $\delta$ への共終列の最小長であることに反する。従って $\mu$ は正則である。$\square$
この証明は「共終列をさらに間引けるか」という操作そのものに基づく。$\delta$ の共終数が特異なら、いったん $\delta$ への列を作り、その添字の共終部分だけを残して、さらに短い共終列を作れてしまう。従って共終数は短縮の余地がない。
なお、ここで $\delta$ を「極限順序数」としたのは重要である。後続順序数は最大元を持ち、共終数が $1$ になる。この $1$ は、この記事で扱う無限正則基数の範囲外である。
非可算正則基数 $\kappa$ 上では、$\kappa$ の中に閉じた非有界集合を考え、それと必ず交わる集合を定常集合という。正則性によって、長さが $\kappa$ 未満の上昇列の上限は $\kappa$ 未満に残る。そのため、閉非有界集合を段階的に構成するとき、途中の極限点を $\kappa$ の外へ逃がさずに済む(Jec03 Chapter 8)。
具体的には、$\kappa$ が非可算正則で、$C,D\subseteq\kappa$ がそれぞれ閉非有界なら、$C\cap D$ も非有界である。任意の出発点 $\alpha<\kappa$ より上に、交互に $C$ と $D$ の点を選んで
$$
c_0< d_0< c_1< d_1<\cdots
$$
とする。$\kappa$ は非可算正則なので可算列の上限 $\gamma$ は $\kappa$ 未満である。両集合の閉性から $\gamma\in C\cap D$ となる。出発点を任意に上げられるため、共通部分は非有界である。この議論をさらに一般化すると、$\kappa$ 未満の個数の閉非有界集合の共通部分を扱える。詳しい定常性や Fodor の押し下げ補題は定常集合で扱う。
大きな基数の定義でも、正則性は明示的な条件になる。非可算基数 $\kappa$ が強極限であるとは、すべての $\lambda<\kappa$ について $2^\lambda<\kappa$ となることである。非可算・正則・強極限の三条件を備える基数が、強到達不能基数である(到達不能基数)。強極限性だけでは正則性は出ない。
$\beth_0=\aleph_0$、$\beth_{n+1}=2^{\beth_n}$、$\beth_\omega=\sup_{n<\omega}\beth_n$ とする。$\beth_\omega$ は長さ $\omega$ の増加列の上限なので共終数は $\omega$ であり、特異である。他方、任意の $\lambda<\beth_\omega$ に対し $\lambda<\beth_n$ となる $n$ を取れば
$$
2^\lambda\leq 2^{\beth_n}=\beth_{n+1}<\beth_\omega
$$
である。従って $\beth_\omega$ は強極限でもある。この例は、強極限性と正則性が異なる条件だと示す。
可測基数は、非自明な $\kappa$ 完備超フィルターを持つ基数として定義され、正則性を満たす。その理由の骨格は合併判定法と似ている。$\kappa$ が特異なら、$\kappa$ 全体を $\kappa$ 未満の個数の小さな集合の合併として書ける。超フィルターが非単項的かつ $\kappa$ 完備なら、各小集合は測度零であり、その $\kappa$ 未満の個数の合併も零であるはずだが、全体は零でない。矛盾する。可測性の定義と強極限性を含む詳しい議論は可測基数に譲る(Jec03 Chapter 10)。
強制法では、基礎モデルに新しい集合を加えた後も、どの基数と共終数が残るかを検討する。条件の順序や一般フィルターの定義は強制概念と強制法に譲り、ここでは閉性と正則性の一つの関係だけを述べる(Jec03 Chapter 15)。
強制概念 $\mathbb P$ が$<\kappa$ 閉であるとは、長さ $\mu<\kappa$ の任意の下降列 $(p_i)_{i<\mu}$ に、それらすべてより強い下界があることをいう。ここで「下降」は条件をより強くしていく向きである。正則な $\kappa$ を固定し、この閉性があるとする。
$\kappa$ が基礎モデルで無限正則基数で、$\mathbb P$ が $<\kappa$ 閉なら、$\mathbb P$ は長さ $\mu<\kappa$ の順序数列を新たに加えない。したがって $\kappa$ は強制拡大でも基数であり、正則である。
$\mu<\kappa$ と、順序数列の名前 $\dot f$、それが長さ $\mu$ であると強制する条件 $p$ を取る。各 $i<\mu$ で、現在の条件より強くして $\dot f(i)$ の値を決定できる。極限段階 $j<\mu$ では、それまでの下降列の長さが $j<\kappa$ なので、閉性により下界を取る。こうして $\mu$ 個の値を順に決め、最後にも長さ $\mu<\kappa$ の下降列の下界 $q$ を取る。$q$ は $\dot f$ 全体を基礎モデルにある列 $(\alpha_i)_{i<\mu}$ と等しいと強制する。よって新しい長さ $\mu$ の順序数列は存在しない。
もし拡大で $\kappa$ が濃度 $\mu<\kappa$ に縮めば、$\mu$ から $\kappa$ への全射という新しい順序数列が必要になる。もし $\kappa$ の共終数が $\mu<\kappa$ に下がれば、$\kappa$ への新しい共終順序数列が必要になる。どちらも前段に反するので、$\kappa$ は基数かつ正則のままである。$\square$
この命題では「$<\kappa$ 閉」という十分条件を使った。任意の強制法が正則基数を保存するという主張ではない。また、閉性の添字を $\kappa$ と書くか $<\kappa$ と書くかは文献の慣習に差があるため、適用時には「どの長さの下降列に下界を要求するか」を確認する。
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