直和

同義語:direct sum

概要

直和(direct sum)とは、環 $R$ 上の加群の族 $(M_i)_{i\in I}$ から、有限個を除く成分が $0$ である元の族の全体として作る加群 $\bigoplus_{i\in I}M_i$、および加群の各元が部分加群の元の和にただ 1 通りに書けるという分解(内部直和)のことである。直和は加群の圏の余積であり、直和からの準同型を与えることは、各 $M_i$ からの準同型を独立に選ぶことと同じである。有限個の族では直和と直積は一致するが、無限個の $0$ でない加群の族では直和は直積より真に小さい。短完全列 $0\to A\to B\to C\to0$ が分裂することは、$B$ が射と両立する形で $A\oplus C$ に同型であることと同値である。

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{div}[0]{\mathbin{÷}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: 加群, 部分加群, 短完全列

$6$ を法とする整数の加法群 $\mathbb{Z}/6\mathbb{Z}$ の中で、$\{0,3\}$ と $\{0,2,4\}$ はそれぞれ位数 $2$ と位数 $3$ の部分群であり、$\mathbb{Z}/6\mathbb{Z}$ のどの元も「$\{0,3\}$ の元」と「$\{0,2,4\}$ の元」の和にただ 1 通りに書ける(たとえば $1=3+4$、$5=3+2$)。したがって $\mathbb{Z}/6\mathbb{Z}$ は、$\mathbb{Z}/2\mathbb{Z}$ と $\mathbb{Z}/3\mathbb{Z}$ を「独立に並べたもの」と同じ構造をもつ。このように、加群をいくつかの部分に分け、各部分を別々に調べてから組み立て直す操作が直和である。直和は、自由加群・半単純環・短完全列の分裂・有限生成アーベル群の構造など、加群論のほとんどの場面で現れる。

定義

以下、$R$ は単位元 $1$ をもつ環(可換とは限らない)とし、加群は左 $R$ 加群、準同型は $R$ 線形写像を指す。左 $R$ 加群 $M$ から $N$ への準同型の全体を $\operatorname{Hom}_R(M,N)$ と書く。これは値ごとの和でアーベル群になる($R$ が可換なら $R$ 加群になる)。
加群の族 $(M_i)_{i\in I}$ の直積 $\prod_{i\in I}M_i$ は、族 $(m_i)_{i\in I}$($m_i\in M_i$)の全体に成分ごとの和とスカラー倍を入れた加群である。第 $j$ 成分を取り出す写像 $\pi_j\colon\prod_iM_i\to M_j$ を射影という。

外部直和

左 $R$ 加群の族 $(M_i)_{i\in I}$ について、直積 $\prod_{i\in I}M_i$ の元 $(m_i)_{i\in I}$ のうち、有限個の $i$ を除いて $m_i=0$ となるものの全体
$$ \bigoplus_{i\in I}M_i:=\Bigl\{(m_i)_{i\in I}\in\prod_{i\in I}M_i\ \Big|\ \{i\in I\mid m_i\ne0\}\text{ は有限集合}\Bigr\} $$
は $\prod_iM_i$ の部分加群である。これを族 $(M_i)_{i\in I}$ の 直和(direct sum)または外部直和という。$j\in I$ について、$m\in M_j$ を「第 $j$ 成分が $m$、ほかの成分が $0$」の元に送る写像
$$ \iota_j\colon M_j\to\bigoplus_{i\in I}M_i $$
を第 $j$ 成分への 標準入射 という。$\pi_j$ を直和に制限したものも同じ記号 $\pi_j$ で表し、射影と呼ぶ。

有限個を除いて $0$ である族どうしの和とスカラー倍は、やはり有限個を除いて $0$ なので、$\bigoplus_iM_i$ は確かに部分加群である。$\iota_j$ は単射な準同型で、$\pi_j\circ\iota_j=\mathrm{id}_{M_j}$ を満たす。$I=\{1,\dots,n\}$ のときは $M_1\oplus\cdots\oplus M_n$ と書き、すべての $M_i$ が同じ加群 $M$ のときは $M^{(I)}$ と書く($I$ が $n$ 個の元からなるなら $M^n$)。$I=\emptyset$ のとき直和は零加群 $0$ である。$R^{(I)}$ は、第 $i$ 成分だけが $1$ の元 $e_i$ たち $(e_i)_{i\in I}$ を基底とする自由加群である。

内部直和と直和因子

左 $R$ 加群 $M$ の部分加群の族 $(N_i)_{i\in I}$ について、有限和 $x_{i_1}+\cdots+x_{i_k}$($x_{i_l}\in N_{i_l}$)の全体を $\sum_{i\in I}N_i$ と書く。$M$ の各元 $x$ が
$$ x=\sum_{i\in I}x_i\qquad(x_i\in N_i,\ \text{有限個の }i\text{ を除いて }x_i=0) $$
の形に書け、しかもその書き方がただ 1 通りであるとき、$M$ は $(N_i)_{i\in I}$ の 内部直和 であるといい、$M=\bigoplus_{i\in I}N_i$ と書く。部分加群 $N\subset M$ について、$M=N\oplus L$ となる部分加群 $L$ があるとき、$N$ を $M$ の 直和因子、$L$ を $N$ の 補加群 という。

2 つの定義は同じものを 2 つの側から見ている。部分加群の族 $(N_i)_{i\in I}$ に対し、外部直和からの準同型
$$ \sigma\colon\bigoplus_{i\in I}N_i\to M,\qquad(x_i)_{i\in I}\longmapsto\sum_{i\in I}x_i $$
(右辺は有限和)を考えると、$\sigma$ が全射であることは「どの元も和に書ける」こと、$\sigma$ が単射であることは「書き方が一意である」ことにあたる。したがって $M$ が $(N_i)$ の内部直和であることと、$\sigma$ が同型であることは同値である。逆に、外部直和 $\bigoplus_iM_i$ は、部分加群 $\iota_i(M_i)$ たちの内部直和である。このため、以下では外部と内部を区別せずに単に直和と呼ぶことが多い。
$R=\mathbb{Z}$ の場合はアーベル群の直和であり、$R$ が体 $K$ の場合は $K$ 上のベクトル空間の直和である。

直感

直和 $\bigoplus_iM_i$ の元は「有限個の部品 $m_i\in M_i$ の組」であり、部品どうしは互いに干渉しない。直和から加群 $N$ への準同型を作るには、各部品 $M_i$ から $N$ への準同型を好きなように独立に決めればよい(thm-direct-sum-universal)。これが直和の本質的な性質であり、余積(圏論)という圏論の言葉で言い表される。
直積 $\prod_iM_i$ では無限個の成分が $0$ でなくてもよい。直積は「各部品へ写す」準同型を独立に決められる対象(積(圏論))であり、直和とは役割が逆である。有限個の族では 2 つは一致するが、無限個の族では直和は直積より真に小さい(prop-direct-sum-finite-biproduct)。
内部直和は、すでにある加群を部品に分解する見方である。分解できれば、加群の問題は部品ごとの問題に帰着する。ただし、部分加群がいつも補加群をもつわけではなく(ベクトル空間とは違う点)、どの部分加群が直和因子になるかは、短完全列の分裂という形で問題になる(prop-direct-sum-complement-section)。

例と反例

数ベクトルと自由加群

$R^n=R\oplus\cdots\oplus R$($n$ 個)は、成分ごとの演算をもつ数ベクトルの加群である。$e_i$ を第 $i$ 成分だけが $1$ の元とすると $R^n=Re_1\oplus\cdots\oplus Re_n$(内部直和)であり、これは $(e_1,\dots,e_n)$ が基底であることの言い換えである。一般に、加群 $M$ の元の族 $(x_i)_{i\in I}$ が基底であることと、各 $Rx_i$ が $R$ と同型($r\mapsto rx_i$ が単射)で $M=\bigoplus_iRx_i$ となることは同値である。とくに体 $K$ 上のベクトル空間 $V$ は、基底 $(v_i)_{i\in I}$ をとれば 1 次元部分空間の直和 $V=\bigoplus_iKv_i$ に分解する。

中国剰余定理による分解

$\mathbb{Z}/6\mathbb{Z}$ の部分群 $N_1=\{0,3\}$、$N_2=\{0,2,4\}$ について、$N_1\cap N_2=\{0\}$ であり、$1=3+4\in N_1+N_2$ なので $N_1+N_2=\mathbb{Z}/6\mathbb{Z}$ である。よって $\mathbb{Z}/6\mathbb{Z}=N_1\oplus N_2$(prop-direct-sum-internal-criterion)であり、$N_1\cong\mathbb{Z}/2\mathbb{Z}$、$N_2\cong\mathbb{Z}/3\mathbb{Z}$ から $\mathbb{Z}/6\mathbb{Z}\cong\mathbb{Z}/2\mathbb{Z}\oplus\mathbb{Z}/3\mathbb{Z}$ を得る。一般に、互いに素な正の整数 $m,n$ について $\mathbb{Z}/mn\mathbb{Z}\cong\mathbb{Z}/m\mathbb{Z}\oplus\mathbb{Z}/n\mathbb{Z}$ であり、これは中国剰余定理の定理「剰余環の直積としての言い換え」の同型を加法群として読んだものである(有限個の直積と直和は一致する)。
一方、$\mathbb{Z}/4\mathbb{Z}$ は $\mathbb{Z}/2\mathbb{Z}\oplus\mathbb{Z}/2\mathbb{Z}$ と同型でない(ex-direct-sum-z4)。法 $2$ と $2$ は互いに素でないので、中国剰余定理は当てはまらない。

有限台の数列と数列全体

$R^{(\mathbb{N})}$ は、有限個を除いて $0$ である $R$ の元の列 $(a_0,a_1,a_2,\dots)$ の全体であり、$R^{\mathbb{N}}=\prod_{n\in\mathbb{N}}R$ は列全体である。列 $(a_n)$ に多項式 $\sum_na_nx^n$ を対応させると、$R^{(\mathbb{N})}$ は $R$ 加群として多項式環 $R[x]$ と同型であり、$R^{\mathbb{N}}$ は形式的冪級数の環 $R[\![x]\!]$ と同型である。$(1,1,1,\dots)$ は $R^{\mathbb{N}}$ の元だが $R^{(\mathbb{N})}$ の元ではない($R\ne0$ のとき)。

次の表は、直和についての「成り立ちそうで成り立たない」主張を、何を外したために崩れるかで並べたものである。

外す条件反例成り立たなくなること
短完全列が分裂する$0\to\mathbb{Z}/2\mathbb{Z}\to\mathbb{Z}/4\mathbb{Z}\to\mathbb{Z}/2\mathbb{Z}\to0$真ん中が両端の直和と同型
各部分加群が残りすべての和と交わらない$\mathbb{R}^2$ の相異なる $3$ 本の直線$2$ つずつの交わりが $0$ なら和は直和
添字集合が有限$\mathbb{Z}^{(\mathbb{N})}\subsetneq\mathbb{Z}^{\mathbb{N}}$直和と直積が一致
加群(アーベル群)の圏で考える群の圏での $\mathbb{Z}/2\mathbb{Z}$ と $\mathbb{Z}/2\mathbb{Z}$直和が余積
反例:分裂しない短完全列

$f\colon\mathbb{Z}/2\mathbb{Z}\to\mathbb{Z}/4\mathbb{Z}$、$\bar a\mapsto\overline{2a}$ と商写像 $g\colon\mathbb{Z}/4\mathbb{Z}\to\mathbb{Z}/2\mathbb{Z}$ からなる列 $0\to\mathbb{Z}/2\mathbb{Z}\xrightarrow{f}\mathbb{Z}/4\mathbb{Z}\xrightarrow{g}\mathbb{Z}/2\mathbb{Z}\to0$ は短完全列である($f$ は単射、$g$ は全射で、$\ker g=\{\bar0,\bar2\}=\operatorname{im}f$)。しかし $\mathbb{Z}/4\mathbb{Z}\not\cong\mathbb{Z}/2\mathbb{Z}\oplus\mathbb{Z}/2\mathbb{Z}$ である。実際、右辺のすべての元 $x$ は $2x=0$ を満たすが、左辺の $\bar1$ は $2\cdot\bar1=\bar2\ne\bar0$ である。この例は「短完全列 $0\to A\to B\to C\to0$ である」ことを満たすが「$B\cong A\oplus C$」を満たさず、「短完全列の真ん中は両端の直和である」という含意を破る。両端の射と両立する同型 $B\cong A\oplus C$ があるのは、列が分裂するときに限る(cor-direct-sum-splitting)。

反例:2 つずつ交わらないが直和でない 3 直線

$\mathbb{R}^2$ の部分空間 $L_1=\mathbb{R}(1,0)$、$L_2=\mathbb{R}(0,1)$、$L_3=\mathbb{R}(1,1)$ は、どの 2 つも交わりが $\{0\}$ である。しかし $(1,1)=(1,0)+(0,1)+0=0+0+(1,1)$ と $L_1+L_2+L_3=\mathbb{R}^2$ の元が 2 通りに書けるので、和は直和でない(直和なら次元は $3$ になるはずだが $\mathbb{R}^2$ は $2$ 次元である)。この例は「どの $2$ つの交わりも $0$」を満たすが「表し方が一意」を満たさない。$3$ 個以上の部分加群では、各 $N_j$ が「残りすべての和」と交わらないことが必要である(prop-direct-sum-internal-criterion)。ここでは $L_3\cap(L_1+L_2)=L_3\ne0$ となっている。

反例:可算個の直和と直積

$\mathbb{Z}^{(\mathbb{N})}$ は可算集合であるが、$\mathbb{Z}^{\mathbb{N}}$ は可算でない。したがって両者は加群として同型でなく、無限個の族では直和と直積は一致しない。この例は「どの成分も同じ加群 $\mathbb{Z}$」を満たすが「添字集合が有限」を満たさず、「直和と直積は一致する」という含意を破る。

可算性の確認を開く

$\mathbb{Z}^{(\mathbb{N})}$ は、$n\in\mathbb{N}$ について「第 $n$ 成分より後がすべて $0$」の元の集合 $S_n$ の合併である。$S_n$ は $\mathbb{Z}^{n+1}$ と全単射で対応し、可算集合の有限個の直積は可算なので、$S_n$ は可算であり、可算個の可算集合の合併も可算である。

一方、$\mathbb{Z}^{\mathbb{N}}$ は $0$ と $1$ だけからなる列の集合 $\{0,1\}^{\mathbb{N}}$ を含む。$\{0,1\}^{\mathbb{N}}$ が可算で、列 $s_0,s_1,s_2,\dots$ と並べられたとすると、第 $n$ 項を $1-(s_n\text{ の第 }n\text{ 項})$ とする列 $t$ はどの $s_n$ とも第 $n$ 項が異なり、並べたどれとも一致しない(Cantor の対角線論法)。よって $\{0,1\}^{\mathbb{N}}$ は可算でなく、それを含む $\mathbb{Z}^{\mathbb{N}}$ も可算でない。

反例:群の圏の余積は直和でない

群(可換とは限らない)の圏で、$\mathbb{Z}/2\mathbb{Z}$ の 2 つのコピー $G_1,G_2$ を考える。直積 $G_1\times G_2$(位数 $4$ の Klein の四元群)は、入射 $a\mapsto(a,0)$、$b\mapsto(0,b)$ に関して群の圏の余積にならない。対称群 $S_3$ の互換 $(1\,2)$ と $(2\,3)$ は可換でないので、生成元をこれらに送る 2 つの準同型を、可換な群 $G_1\times G_2$ からの 1 つの準同型に延長できないからである。

確認を開く

準同型 $G_1\to S_3$、$G_2\to S_3$ を、生成元をそれぞれ $(1\,2)$、$(2\,3)$ に送るものとする。これらを延長する準同型 $\varphi\colon G_1\times G_2\to S_3$ があれば、$G_1\times G_2$ は可換なので $(1\,2)(2\,3)=\varphi((1,0)+(0,1))=\varphi((0,1)+(1,0))=(2\,3)(1\,2)$ となる。しかし $(1\,2)(2\,3)$ と $(2\,3)(1\,2)$ は、一方が $(1\,2\,3)$、他方が $(1\,3\,2)$ で異なる(どちらになるかは積の順序の規約による)。

群の圏の余積は自由積であり(自由積 の記事の命題「自由積は群の圏の余積」)、$\mathbb{Z}/2\mathbb{Z}\ast\mathbb{Z}/2\mathbb{Z}$ は無限群である(同記事の例「位数2の群どうしの自由積と無限二面体群」)。この例は、直和が余積であること(thm-direct-sum-universal)が、加法が可換である加群・アーベル群の圏に特有であることを示す。

性質

普遍性

直和の普遍性

$(M_i)_{i\in I}$ を左 $R$ 加群の族、$N$ を左 $R$ 加群とする。準同型の族 $f_i\colon M_i\to N$($i\in I$)が与えられると、すべての $j\in I$ について $f\circ\iota_j=f_j$ を満たす準同型 $f\colon\bigoplus_{i\in I}M_i\to N$ がただ 1 つ存在する。それは
$$ f\bigl((m_i)_{i\in I}\bigr)=\sum_{i\in I}f_i(m_i) $$
で与えられる(右辺は有限和)。すなわち、直和 $\bigoplus_iM_i$ は標準入射 $(\iota_i)_{i\in I}$ とともに左 $R$ 加群の圏における族 $(M_i)_{i\in I}$ の余積(圏論)である。
$$ \xymatrix{ M_j \ar[r]^-{\iota_j} \ar[dr]_{f_j} & \bigoplus_{i\in I}M_i \ar@{.>}[d]^{f} \\ & N } $$
図式が可換であるとは、各 $j\in I$ について $f\circ\iota_j=f_j$ が成り立つことである。

存在:$x=(m_i)_{i\in I}\in\bigoplus_iM_i$ について、$m_i\ne0$ となる $i$ は有限個なので、$f(x):=\sum_if_i(m_i)$ は有限和として定まる($f_i(0)=0$ なので、$0$ の成分を和に加えても値は変わらない)。$x=(m_i)$、$y=(m_i')$、$r\in R$ について、$x+y=(m_i+m_i')$、$rx=(rm_i)$ であり、各 $f_i$ が準同型なので
$$ f(x+y)=\sum_i\bigl(f_i(m_i)+f_i(m_i')\bigr)=f(x)+f(y),\qquad f(rx)=\sum_irf_i(m_i)=rf(x) $$
である(有限和の順序を入れ替えた)。$m\in M_j$ について $\iota_j(m)$ は第 $j$ 成分だけが $m$ なので、$f(\iota_j(m))=f_j(m)$ である。
一意性:$g\colon\bigoplus_iM_i\to N$ も $g\circ\iota_j=f_j$(すべての $j$)を満たすとする。$x=(m_i)$ について $S:=\{i\mid m_i\ne0\}$ は有限集合で、$x=\sum_{i\in S}\iota_i(m_i)$ である。$g$ は準同型なので $g(x)=\sum_{i\in S}g(\iota_i(m_i))=\sum_{i\in S}f_i(m_i)=f(x)$ となり、$g=f$ である。$\square$

直和からの準同型

写像
$$ \Phi\colon\operatorname{Hom}_R\Bigl(\bigoplus_{i\in I}M_i,\ N\Bigr)\to\prod_{i\in I}\operatorname{Hom}_R(M_i,N),\qquad f\longmapsto(f\circ\iota_i)_{i\in I} $$
はアーベル群の同型である。$R$ が可換なら $R$ 加群の同型である。

$(f+g)\circ\iota_i=f\circ\iota_i+g\circ\iota_i$ なので $\Phi$ は加法を保ち、$R$ が可換なら同様に $(rf)\circ\iota_i=r(f\circ\iota_i)$ である。thm-direct-sum-universal の存在の部分は $\Phi$ が全射であること、一意性の部分は $\Phi$ が単射であることを述べている。$\square$

たとえば $\operatorname{Hom}_{\mathbb{Z}}(\mathbb{Z}^{(\mathbb{N})},\mathbb{Z})\cong\prod_{n\in\mathbb{N}}\operatorname{Hom}_{\mathbb{Z}}(\mathbb{Z},\mathbb{Z})\cong\mathbb{Z}^{\mathbb{N}}$ である。$\mathbb{Z}^{(\mathbb{N})}$ から $\mathbb{Z}$ への準同型は、基底 $e_n$ の行き先を任意に(無限個が $0$ でなくてもよく)決めて得られる。直積については逆向きの同型 $\operatorname{Hom}_R(L,\prod_iM_i)\cong\prod_i\operatorname{Hom}_R(L,M_i)$($f\mapsto(\pi_i\circ f)_i$)が成り立ち、これは直積が積(圏論)であることの言い換えである(AK13 (4.15))。

内部直和の判定

2 つの部分加群 $N_1,N_2\subset M$ については、$M=N_1\oplus N_2$ であることと「$M=N_1+N_2$ かつ $N_1\cap N_2=0$」は同値である(部分加群 の記事の定義「内部直和と補加群」の後の段落)。3 つ以上では、交わりの条件を強める必要がある(ex-direct-sum-three-lines)。

内部直和の判定

$k\ge2$ とし、$N_1,\dots,N_k$ を左 $R$ 加群 $M$ の部分加群とする。次の 3 条件は同値である。

  1. $M$ は $N_1,\dots,N_k$ の内部直和である。
  2. $M=N_1+\cdots+N_k$ であり、各 $j$ について $N_j\cap\sum_{i\ne j}N_i=0$ である。
  3. $M=N_1+\cdots+N_k$ であり、各 $j=2,\dots,k$ について $N_j\cap(N_1+\cdots+N_{j-1})=0$ である。
    これらが成り立つとき、$(x_1,\dots,x_k)\mapsto x_1+\cdots+x_k$ は外部直和 $N_1\oplus\cdots\oplus N_k$ から $M$ への同型である。とくに $k=2$ では、$M=N_1+N_2$ かつ $N_1\cap N_2=0$ ならば $M\cong N_1\oplus N_2$ である。

要点:2 つの表し方の差 $\sum_iz_i=0$($z_i\in N_i$)を考え、$z_j\ne0$ となる最大の $j$ をとると、$z_j=-(z_1+\cdots+z_{j-1})$ が条件 3 の交わりに入って矛盾する。逆に表し方が一意なら、$N_j$ と残りの和の共通の元は 2 通りの表し方をもつので $0$ である。

詳しい証明を開く

1 ⇒ 2:$M=\sum_iN_i$ は内部直和の定義に含まれる。$x\in N_j\cap\sum_{i\ne j}N_i$ とし、$x=\sum_{i\ne j}x_i$($x_i\in N_i$)と書く。すると $x$ は「$N_j$ の成分が $x$、ほかが $0$」という表し方と「$N_j$ の成分が $0$、$N_i$ の成分が $x_i$」という表し方をもつ。表し方の一意性から $N_j$ の成分を比べて $x=0$ である。

2 ⇒ 3:$N_1+\cdots+N_{j-1}\subset\sum_{i\ne j}N_i$ だからである。

3 ⇒ 1:和に書けることは $M=\sum_iN_i$ による。一意性を示すため、$\sum_ix_i=\sum_iy_i$($x_i,y_i\in N_i$)とし、$z_i:=x_i-y_i\in N_i$ とおくと $\sum_iz_i=0$ である。$z_i$ がすべて $0$ ではないと仮定し、$z_j\ne0$ となる最大の $j$ をとる。$j=1$ なら $z_1=\sum_iz_i=0$ となり矛盾する。$j\ge2$ なら $z_j=-(z_1+\cdots+z_{j-1})\in N_j\cap(N_1+\cdots+N_{j-1})=0$ となり、やはり矛盾する。よって $x_i=y_i$(すべての $i$)である。

最後の主張は、定義の後で述べた $\sigma$ が同型であることにほかならない。$\square$

無限個の部分加群の族 $(N_i)_{i\in I}$ についても、1 と 2 の同値は成り立つ。1 ⇒ 2 は上と同じである。2 ⇒ 1 では、2 つの表し方の差 $\sum_iz_i=0$(有限個を除いて $z_i=0$)で $z_j\ne0$ となる $j$ をとると、$z_j=-\sum_{i\ne j}z_i\in N_j\cap\sum_{i\ne j}N_i=0$ となって矛盾する。

冪等な自己準同型

直和分解と冪等な自己準同型

左 $R$ 加群 $M$ の自己準同型 $e$ が $e\circ e=e$ を満たすとき(冪等であるという)、$M=\operatorname{im}e\oplus\ker e$ である。逆に $M=N\oplus L$ のとき、$x=n+\ell$($n\in N$、$\ell\in L$)を $n$ に送る写像 $e_{N,L}$ は冪等な自己準同型で、$\operatorname{im}e_{N,L}=N$、$\ker e_{N,L}=L$ である。この 2 つの対応により、$M$ の冪等な自己準同型と、$M=N\oplus L$ を満たす部分加群の順序対 $(N,L)$ とは 1 対 1 に対応する。

要点:$x=e(x)+(x-e(x))$ が $\operatorname{im}e$ と $\ker e$ への分解を与え、$y\in\operatorname{im}e\cap\ker e$ なら $y=e(y)=0$ である。

詳しい証明を開く

$e$ を冪等とする。$x\in M$ は $x=e(x)+(x-e(x))$ と書け、$e(x-e(x))=e(x)-e(e(x))=0$ なので $x-e(x)\in\ker e$ である。よって $M=\operatorname{im}e+\ker e$ である。$y\in\operatorname{im}e\cap\ker e$ なら $y=e(z)$ と書けて $y=e(z)=e(e(z))=e(y)=0$ である。prop-direct-sum-internal-criterion により $M=\operatorname{im}e\oplus\ker e$ である。

$M=N\oplus L$ とする。表し方の一意性から $e_{N,L}$ は写像として定まり、$x=n+\ell$、$x'=n'+\ell'$ なら $x+x'=(n+n')+(\ell+\ell')$、$rx=rn+r\ell$ なので準同型である。$n\in N$ は $n=n+0$ と書けるので $e_{N,L}(n)=n$ であり、$e_{N,L}\circ e_{N,L}=e_{N,L}$、$\operatorname{im}e_{N,L}=N$ である。$e_{N,L}(n+\ell)=0$ となるのは $n=0$ のときなので $\ker e_{N,L}=L$ である。

2 つの対応が互いに逆であること:$(N,L)$ から作った $e_{N,L}$ に前半を当てると $(\operatorname{im}e_{N,L},\ker e_{N,L})=(N,L)$ に戻る。$e$ から作った $(\operatorname{im}e,\ker e)$ については、$x=e(x)+(x-e(x))$ が $\operatorname{im}e$ と $\ker e$ への分解なので $e_{\operatorname{im}e,\ker e}(x)=e(x)$ である。$\square$

このとき $1-e$ も冪等で、$\operatorname{im}(1-e)=\ker e$、$\ker(1-e)=\operatorname{im}e$ である。環 $R$ 自身を左 $R$ 加群とみれば、$R$ の冪等元 $e$ による右からの掛け算 $x\mapsto xe$ は ${}_RR$ の冪等な自己準同型で、分解 $R=Re\oplus R(1-e)$ を与える。

補加群と分裂

補加群・切断・引き込みの対応

$N$ を左 $R$ 加群 $M$ の部分加群とし、$\iota\colon N\to M$ を包含写像、$\pi\colon M\to M/N$ を商写像とする。次の 3 つの集合の間には自然な全単射がある。

  1. $N$ の補加群 $L$($M=N\oplus L$ を満たす部分加群)の全体。
  2. $\pi\circ s=\mathrm{id}_{M/N}$ を満たす準同型 $s\colon M/N\to M$($\pi$ の切断)の全体。
  3. $r\circ\iota=\mathrm{id}_N$ を満たす準同型 $r\colon M\to N$($\iota$ の引き込み)の全体。
    対応は、切断 $s$ に $L=s(M/N)$ を、引き込み $r$ に $L=\ker r$ を対応させるものである。とくに、$N$ が直和因子であること、$\pi$ が切断をもつこと、$\iota$ が引き込みをもつことは同値である。

補加群と切断:$L$ を補加群とする。$\pi$ の $L$ への制限 $\pi|_L\colon L\to M/N$ は全単射である。実際、$x=n+\ell$($n\in N$、$\ell\in L$)なら $\pi(x)=\pi(\ell)$ なので全射であり、$\ell\in L$ が $\pi(\ell)=0$ を満たせば $\ell\in N\cap L=0$ なので単射である。$s_L\colon M/N\to M$ を $(\pi|_L)^{-1}$ と包含 $L\to M$ の合成とすると、$s_L$ は準同型で $\pi\circ s_L=\mathrm{id}$、$s_L(M/N)=L$ である。逆に $s$ を切断とし $L:=s(M/N)$ とおく。$x\in M$ は $x=\bigl(x-s(\pi(x))\bigr)+s(\pi(x))$ と書け、$\pi\bigl(x-s(\pi(x))\bigr)=\pi(x)-\pi(x)=0$ なので第 1 項は $N$ に属する。$y=s(z)\in N$ なら $z=\pi(s(z))=\pi(y)=0$ なので $y=0$ である。よって $M=N\oplus L$ である。$s(z)$ は $L$ の元で $\pi$ により $z$ に写るので、$s_L=s$ である。以上で $L\mapsto s_L$ と $s\mapsto s(M/N)$ は互いに逆である。
補加群と引き込み:$L$ を補加群とすると、prop-direct-sum-idempotent の $e_{N,L}$ を値域 $N$ の写像と見たもの $r_L\colon M\to N$ は引き込みで $\ker r_L=L$ である。逆に引き込み $r$ があれば、$x=r(x)+(x-r(x))$ が $M=N\oplus\ker r$ を与える。これらは互いに逆の対応である。

詳細

$r_L(n)=n$($n\in N$)なので $r_L\circ\iota=\mathrm{id}_N$ であり、$e_{N,L}$ の核が $L$ なので $\ker r_L=L$ である。逆に $r$ を引き込みとする。$x\in M$ について $r(x)\in N$ で $r$ は $N$ 上で恒等なので $r(x-r(x))=r(x)-r(r(x))=0$ となり、$x-r(x)\in\ker r$ である。$n\in N\cap\ker r$ なら $n=r(n)=0$ である。よって $M=N\oplus\ker r$ であり、この分解での $N$ 成分は $r(x)$ なので $r_{\ker r}=r$ である。また $\ker r_L=L$ だったので、$L\mapsto r_L$ と $r\mapsto\ker r$ は互いに逆である。$\square$

これを短完全列の言葉に言い換えたものが、加群についての分裂の判定である。元を使わずに一般のアーベル圏で述べて証明した形は、短完全列 の記事の命題「分裂補題」にある。

分裂する短完全列

左 $R$ 加群の短完全列 $0\to A\xrightarrow{f}B\xrightarrow{g}C\to0$ について、次の 3 条件は同値である。

  1. $g\circ s=\mathrm{id}_C$ を満たす準同型 $s\colon C\to B$ がある。
  2. $r\circ f=\mathrm{id}_A$ を満たす準同型 $r\colon B\to A$ がある。
  3. 同型 $\varphi\colon B\to A\oplus C$ で、次の図式を可換にするものがある(下の行の $\iota_A$ は標準入射、$\pi_C$ は射影)。
    $$ \xymatrix{ 0 \ar[r] & A \ar[r]^{f} \ar@{=}[d] & B \ar[r]^{g} \ar[d]^{\varphi}_{\cong} & C \ar[r] \ar@{=}[d] & 0 \\ 0 \ar[r] & A \ar[r]_-{\iota_A} & A\oplus C \ar[r]_-{\pi_C} & C \ar[r] & 0 } $$
    図式が可換であるとは、$\varphi\circ f=\iota_A$ かつ $\pi_C\circ\varphi=g$ が成り立つことである。

要点:部分加群 $N:=f(A)\subset B$ に prop-direct-sum-complement-section を当てると 1 と 2 はともに「$f(A)$ が直和因子である」ことと同値になり、補加群 $L$ を 1 つ選べば $\varphi(b)=(r(b),g(b))$ が 3 の同型を与える。3 から 2 は $r:=\pi_A\circ\varphi$ とおけばよい。

詳しい証明を開く

$f\colon A\to N$ は同型であり、加群 の記事の定理「加群の準同型定理」により $g$ は同型 $\bar g\colon B/N\to C$ を誘導する($\ker g=N$ だから)。商写像を $\pi\colon B\to B/N$ とすると $g=\bar g\circ\pi$ である。

1 と「$\pi$ が切断をもつ」ことは同値である:$s$ が $g$ の切断なら $s\circ\bar g$ は $\pi$ の切断であり($\pi\circ s\circ\bar g=\bar g^{-1}\circ g\circ s\circ\bar g=\mathrm{id}$)、$s'$ が $\pi$ の切断なら $s'\circ\bar g^{-1}$ は $g$ の切断である。同様に、2 と「包含 $N\to B$ が引き込みをもつ」ことは同値である:$r$ が $f$ の引き込みなら $f\circ r$(値域を $N$ と見る)は包含の引き込みであり、$r'$ が包含の引き込みなら $f^{-1}\circ r'$ は $f$ の引き込みである。prop-direct-sum-complement-section により 1 と 2 は同値である。

1(したがって 2)が成り立つとき、補加群 $L$ を 1 つとり、$L$ に対応する $\pi$ の切断から上のように作った $g$ の切断を $s$、$L$ に対応する包含の引き込みから作った $f$ の引き込みを $r$ とする。このとき $s(C)=L=\ker r$ であり、$b=n+\ell$($n\in N$、$\ell\in L$)について $f(r(b))=n$、$s(g(b))=\ell$ である。$\varphi(b):=(r(b),g(b))$ とおくと、$\varphi(f(a))=(a,0)=\iota_A(a)$、$\pi_C(\varphi(b))=g(b)$ である。$\psi(a,c):=f(a)+s(c)$ とおくと、$r\circ s=0$ と $g\circ f=0$ から $\varphi(\psi(a,c))=(a,c)$ であり、$\psi(\varphi(b))=f(r(b))+s(g(b))=n+\ell=b$ である。よって $\varphi$ は同型である。

3 ⇒ 2:射影 $\pi_A\colon A\oplus C\to A$ について $r:=\pi_A\circ\varphi$ とおくと、$r\circ f=\pi_A\circ\iota_A=\mathrm{id}_A$ である。

1〜3 が成り立つとき、短完全列は 分裂する という。ex-direct-sum-z4 の列は、$\mathbb{Z}/4\mathbb{Z}$ が $\mathbb{Z}/2\mathbb{Z}\oplus\mathbb{Z}/2\mathbb{Z}$ と同型でないので 3 を満たさず、分裂しない。とくに部分群 $\{\bar0,\bar2\}\subset\mathbb{Z}/4\mathbb{Z}$ は補加群をもたない。3 は「$B\cong A\oplus C$ となる何らかの同型がある」よりも強い条件である。

分裂しないが真ん中が両端の直和と同型になる例を開く

$V:=(\mathbb{Z}/2\mathbb{Z})^{(\mathbb{N})}$ とおき、$f\colon\mathbb{Z}\to\mathbb{Z}\oplus V$、$n\mapsto(2n,0)$ を考える。余核は $(\mathbb{Z}/2\mathbb{Z})\oplus V$ で、これは $V$ と同型である(成分を 1 つずらす)。よって短完全列 $0\to\mathbb{Z}\xrightarrow{f}\mathbb{Z}\oplus V\to V\to0$ があり、真ん中は $\mathbb{Z}\oplus V$ で両端の直和そのものである。しかし $r\circ f=\mathrm{id}$ となる $r$ があれば $1=r(f(1))=r((2,0))=2r((1,0))$ となり、$2$ 倍して $1$ になる整数はないので、この列は分裂しない。

有限個の直和と直積

有限個の直和と直積

$(M_i)_{i\in I}$ を左 $R$ 加群の族とする。

  1. $I$ が有限集合なら $\bigoplus_iM_i=\prod_iM_i$ であり、標準入射と射影は
    $$ \pi_i\circ\iota_i=\mathrm{id}_{M_i},\qquad\pi_i\circ\iota_j=0\ (i\ne j),\qquad\sum_{i\in I}\iota_i\circ\pi_i=\mathrm{id} $$
    を満たす。したがって有限個の族の直和は、左 $R$ 加群の圏の余積であると同時に積でもある。
  2. $M_i\ne0$ となる $i$ が無限個あるなら、$\bigoplus_iM_i\subsetneq\prod_iM_i$ である。

要点:1 は成分ごとの計算であり、2 は $0$ でない成分を無限個もつ族を作ればよい。

詳しい証明を開く

1:$I$ が有限なら、どの族 $(m_i)$ も $0$ でない成分は有限個なので、2 つの集合は一致する。$\pi_i\circ\iota_j$ の式は $\iota_j$ の定義から直ちに従い、$x=(m_i)$ について $\sum_i\iota_i(\pi_i(x))=\sum_i\iota_i(m_i)=x$ である。余積であることは thm-direct-sum-universal、積であることは直積の性質 $\operatorname{Hom}_R(L,\prod_iM_i)\cong\prod_i\operatorname{Hom}_R(L,M_i)$ による。

2:$M_i\ne0$ となる $i$ の全体 $J$ は無限集合である。各 $i\in J$ について $m_i\ne0$ となる $m_i\in M_i$ を選び(選択公理を使う)、$i\notin J$ では $m_i=0$ とする。$(m_i)_{i\in I}$ は直積の元だが、$0$ でない成分が無限個あるので直和の元ではない。$\square$

1 の等式は、$I$ が 2 元集合のとき 加法圏 の記事の定義「双積」の条件そのものであり、一般の有限集合でも同じ形の等式が成り立つことを述べている。このため加法圏では有限個の対象の直和を双積として定義し、同じ記号 $\oplus$ で書く。2 のとき、直積 $\prod_iM_i$ は、第 $j$ 成分への入射 $M_j\to\prod_iM_i$ たちに関して族の余積にならない。

詳細

余積であれば、直和と直積がともに余積なので、入射と両立するただ 1 つの準同型 $\bigoplus_iM_i\to\prod_iM_i$(thm-direct-sum-universal により、それは包含写像である)は同型になる(余積(圏論) の記事の命題「構造射を保つ一意な同型」)。しかし 2 により包含写像は全射でない。

ex-direct-sum-countable は、$\mathbb{Z}^{(\mathbb{N})}$ と $\mathbb{Z}^{\mathbb{N}}$ が包含写像に限らずどんな写像でも同型にならないことを示す。

補足

直和因子にならない部分加群

体上のベクトル空間では、どの部分空間も補空間をもつ(部分加群 の記事の定義「内部直和と補加群」の後の段落)。一般の加群ではそうではなく、prop-direct-sum-complement-section により、部分加群 $N\subset M$ が直和因子であることは短完全列 $0\to N\to M\to M/N\to0$ が分裂することと同値である。たとえば $\mathbb{Z}$ の部分加群 $2\mathbb{Z}$ は補加群をもたない(部分加群 の記事の命題「整数環における補加群の非存在」)。すべての加群のすべての部分加群が直和因子になる環はちょうど半単純環である(半単純環 の記事の定理「加群による特徴づけ」)。

同じ記号の別の意味

記号 $\oplus$ と「直和」の語は、ほかの圏の余積にも使われる。位相空間の直和(非交和に位相を入れたもの)や、ベクトル束の直和・テンソル積 で扱うベクトル束の直和は、それぞれの圏での構成であり、この記事の加群の直和とは別の主題である。また、環の族の直和 $\bigoplus_iR_i$ は、族が無限個の $0$ でない環からなると単位元をもたず(単位元の候補 $(1,1,\dots)$ が直和に入らない)、環にならない(AK13 Exercise (4.16))。環の場合に基本となるのは直積環である。

文献

直積と直和の定義、および普遍性 $\operatorname{Hom}(L,\prod_iM_i)\cong\prod_i\operatorname{Hom}(L,M_i)$ と $\operatorname{Hom}(\bigoplus_iM_i,N)\cong\prod_i\operatorname{Hom}(M_i,N)$ は AK13 (4.15)、2 つの部分加群の内部直和の判定は同書 Exercise (4.17)、引き込み・切断と分裂の同値は同書 (5.8)・Proposition (5.9) にある(同書の環は可換環であるが、この記事で用いた議論は可換性を使わない)。

関連項目

参考文献

[1]
Allen Altman, Steven Kleiman, A Term of Commutative Algebra, Worldwide Center of Mathematics, 2013, pp. 21–22 (4.15) Direct Products, Direct Sums, Exercises (4.16), (4.17); p. 25 (5.8) Retraction, section, splits, Proposition (5.9)

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