Verdier双対

同義語:Verdier双対性Verdier双対定理Poincaré–Verdier双対性Verdier双対関手双対化複体(位相空間)Verdier dualityVerdier dualVerdier dualizing complex

概要

Verdier双対(Verdier duality)とは、局所コンパクト空間の間の連続写像 $f$ について、コンパクト台の順像の導来関手 $Rf_!$ が右随伴 $f^!$ をもつという Verdier の定理と、そこから定まる双対の総称である。$1$ 点への写像 $a$ について $\omega_X=a^!A$ を双対化複体、$\mathbb{D}_XF=R\mathcal{H}om(F,\omega_X)$ を $F$ の Verdier 双対という。係数が体なら $\mathbb{D}_XF$ のコホモロジーはコンパクト台のコホモロジーの双対になり、実直線では $\omega\cong k[1]$ から Poincaré 双対が層の言葉で得られる。構成可能な複体では二重双対がもとに戻るが、無限次元の茎では戻らない。

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{div}[0]{\mathbin{÷}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: コンパクト台の順像, 導来圏, 層コホモロジー, Poincaré双対

Verdier 双対(Verdier duality)は、局所コンパクト空間の間の連続写像 $f\colon X\to Y$ について、コンパクト台の順像の導来関手 $Rf_!$ が右随伴 $f^!$ をもつという定理と、そこから定まる双対の操作の総称である。1 点への写像 $a_X\colon X\to\{*\}$ について $\omega_X:=a_X^!A$ を双対化複体、$\mathbb D_XF:=R\mathcal Hom(F,\omega_X)$ を $F$ の Verdier 双対という。係数が体なら、コンパクト台のコホモロジーの双対が $\mathbb D_XF$ のコホモロジーになる。$X$ が $n$ 次元の多様体なら $\omega_X$ は向きの層を $n$ だけずらしたもので、この双対は Poincaré 双対そのものになる。
この記事では、Verdier の定理(引用)から大域双対を導き、双対化複体を実直線・半直線・三脚(3 本の半直線を 1 点でつないだもの)で計算する。実直線では $\omega\cong k[1]$ となり Poincaré 双対が従うが、半直線と三脚では $\omega$ が局所定数でなく、Poincaré 双対の形の主張が成り立たなくなる。さらに、双対が $Rf_!$ と $Rf_*$ を入れ替えることを示し、固有でない包含で $Rf_*$ と双対が交換しない例を計算する。

設定

空間はすべて局所コンパクト Hausdorff 空間とし、コンパクト台のコホモロジー次元が有限なもの(たとえば多様体や有限次元の多面体)とする。$A$ を可換環とし、層は $A$ 加群の層、$D^b(X)$・$D^+(X)$ はその有界・下に有界な導来圏とする。計算では $A=k$ を体とする。$f_!$・$Rf_!$・$H^q_c$ の定義と基本性質は コンパクト台の順像による。$R\mathcal Hom$ は層の Hom の導来関手、$R\mathrm{Hom}$ は Hom の導来関手で、$R\Gamma(X,R\mathcal Hom(F,G))\cong R\mathrm{Hom}(F,G)$ である(標準的な事実で、入射的な層 $I$ について $\mathcal Hom(F,I)$ が脆弱層であることによる。この記事では証明しない)。

Verdier の双対定理

Verdier の双対定理

$f\colon X\to Y$ を連続写像とし、$Rf_!$ のコホモロジー次元が有限であるとする。関手 $f^!\colon D^+(Y)\to D^+(X)$ があって、$F\in D^b(X)$、$G\in D^+(Y)$ について自然な同型
$$ \operatorname{Hom}(Rf_!F,G)\cong\operatorname{Hom}(F,f^!G),\qquad R\mathcal Hom(Rf_!F,G)\cong Rf_*R\mathcal Hom(F,f^!G) $$
が成り立つ。

Verdier の双対定理の使いどころ

定理は、$Rf_!$ が右随伴 $f^!$ をもつことを述べる。$Y$ が 1 点のときは、$f^!$ から双対化複体が定まり、コンパクト台のコホモロジーと通常のコホモロジーを結ぶ双対がここから出る。係数環や空間に仮定をおかないと、$f^!$ は一般には層としての簡単な表示をもたない。埋め込みや沈め込みでは $f^!$ が具体的に計算できる。この記事では定理の証明は与えず、以下では存在した $f^!$ の性質を使って議論を進める。

これは Verdier による(Ver65 §2 で $f^!$ を構成し(pp. 341–343)、§3 の定理で同型を示す(p. 344))。KS85 Theorem 1.3.1(p. 26)は同じ定理を引き、あわせて $f$ が位相的な埋め込みなら $f^!G=f^{-1}R\Gamma_{f(X)}(G)$ となること、$f$ が余次元 $\ell$ の位相的な沈め込み(局所的に射影 $\mathbb R^{n+\ell}\to\mathbb R^n$ の形)なら $f^!A_Y\cong\mathrm{or}_{X/Y}[\ell]$(相対的な向きの層)となることを述べる(同書は写像を $Y\to X$ と書いているので、ここでは文字を入れ替えた)。層の Hom の形の同型は Ver65 §3 の射 $\Delta'$(pp. 343–344)と KS85 1.3.5(pp. 27–28)にある。この記事では証明しない。2 つ目の同型の大域切断をとると 1 つ目の $R\mathrm{Hom}$ 版になる。
随伴の右側は同型を除いて一意なので(六演算の補題「右随伴の一意性」)、次がわかる。

  • $a_X=a_Y\circ f$ なので $R(a_X)_!\cong R(a_Y)_!\circ Rf_!$(合成)であり、右随伴をとって $a_X^!\cong f^!\circ a_Y^!$ である。
  • 開集合の包含 $j\colon U\to X$ では $j^!\cong j^{-1}$ である(六演算の系「開埋め込みでの例外的逆像」。$j_!$ は $j^{-1}$ の左随伴)。

双対化複体と大域双対

双対化複体と Verdier 双対

$a_X\colon X\to\{*\}$ を 1 点への写像とする。$\omega_X:=a_X^!A\in D^+(X)$ を $X$ の双対化複体(dualizing complex)という。$F\in D^b(X)$ について
$$ \mathbb D_XF:=R\mathcal Hom(F,\omega_X) $$
を $F$ の Verdier 双対、$\mathbb D_X$ を Verdier 双対関手という。

上の 2 つの事実から、$f\colon X\to Y$ について $f^!\omega_Y\cong\omega_X$、開集合 $U$ について $\omega_U\cong\omega_X|_U$ である。

大域双対

$F\in D^b(X)$ について $R\Gamma(X,\mathbb D_XF)\cong R\mathrm{Hom}(R\Gamma_c(X,F),A)$ である。特に $A=k$ が体なら、すべての $q$ について
$$ H^{-q}(X;\mathbb D_XF)\cong\operatorname{Hom}_k(H^q_c(X;F),k) $$
であり、この同型は $F$ について自然である。

thm-vd-verdier の 2 つ目の同型を $f=a_X$、$Y=\{*\}$、$G=A$ に使う。1 点の上の層は加群であり、$R(a_X)_*=R\Gamma(X,\cdot)$、$R(a_X)_!=R\Gamma_c(X,\cdot)$ なので、
$$ R\mathrm{Hom}(R\Gamma_c(X,F),A)\cong R\Gamma(X,R\mathcal Hom(F,a_X^!A))=R\Gamma(X,\mathbb D_XF) $$
である。$A=k$ が体なら、$k$ は $k$ 加群として入射的なので、$k$ 上の複体 $C$ について $R\mathrm{Hom}(C,k)$ は $\operatorname{Hom}_k(C,k)$ で計算され、$\operatorname{Hom}_k(\cdot,k)$ は完全なので $H^{-q}(\operatorname{Hom}_k(C,k))=\operatorname{Hom}_k(H^q(C),k)$ である。$C=R\Gamma_c(X,F)$ とすればよい。自然性は thm-vd-verdier の同型の自然性から従う。$\square$

$F=k_X$ とすると $\mathbb D_Xk_X=\omega_X$ なので、$H^{-q}(X;\omega_X)\cong H^q_c(X;k)^\vee$ である。つまり $\omega_X$ のコホモロジーは、コンパクト台のコホモロジーの双対、すなわち Borel–Moore ホモロジーである(MS21 Example 2.7 (3)、p. 8)。開集合 $V\subset X$ に同じことを使うと、$\omega_X|_V=\omega_V$ なので
$$ H^{-q}(V;\omega_X)\cong H^q_c(V;k)^\vee\qquad(1) $$
であり、$W\subset V$ への制限 $H^{-q}(V;\omega_X)\to H^{-q}(W;\omega_X)$ は、零拡張 $H^q_c(W)\to H^q_c(V)$ の双対である($j_{W!}k_W\to j_{V!}k_V$ に大域双対の自然性を使う)。コホモロジー層 $\mathcal H^{-q}(\omega_X)$ は前層 $V\mapsto H^{-q}(V;\omega_X)$ の層化である($\omega_X$ を入射的な層の複体で表せば、切断の複体のコホモロジーが $H^{-q}(V;\omega_X)$ で、層化は完全なので)。

双対化複体の計算

以下 $A=k$ を体とする。(1) と、コンパクト台の順像の命題「区間のコンパクト台のコホモロジー」を組み合わせる。

実直線の双対化複体

$\omega_{\mathbb R}\cong k_{\mathbb R}[1]$ である。$\mathbb R$ の開区間 $I$ についても $\omega_I\cong k_I[1]$ である。

開区間 $V$ について、(1) と $H^q_c(V)$ の計算($q=1$ で $k$、ほかは $0$)から、$H^{-1}(V;\omega)\cong k$、$q\neq-1$ で $H^q(V;\omega)=0$ である。開区間 $W\subset V$ について零拡張 $H^1_c(W)\to H^1_c(V)$ は同型なので、その双対である制限 $H^{-1}(V;\omega)\to H^{-1}(W;\omega)$ も同型である。
開区間は $\mathbb R$ の開集合の基をなすので、コホモロジー層の茎は開区間についての帰納極限で計算できる。$q\neq-1$ では $\mathcal H^q(\omega)_x=\varinjlim_{V\ni x}H^q(V;\omega)=0$ である。$\mathcal L:=\mathcal H^{-1}(\omega)$ とおく。開区間 $V$ と $x\in V$ について、$P(V):=H^{-1}(V;\omega)\to\mathcal L_x$ は、制限がすべて同型な系の帰納極限への写像なので同型である。$P(V)$ の $0$ でない元 $e$ をとり、その $\mathcal L(V)$ での像を $\bar e$ とすると、$1\mapsto\bar e$ で定まる射 $k_V\to\mathcal L|_V$ は $V$ の各点の茎で同型であり、層の同型である(層の命題「層の射の茎による判定」)。よって $\mathcal L$ は階数 $1$ の局所定数層で、$\mathbb R$ は単連結なので $\mathcal L\cong k_{\mathbb R}$ である(局所系の定理「局所系と基本群の表現の対応」)。
コホモロジー層が次数 $-1$ にしかない複体 $\omega$ は、切り詰めにより $\mathcal H^{-1}(\omega)[1]$ と同型である($\tau_{\le-1}\omega\to\omega$ と $\tau_{\le-1}\omega\to\mathcal H^{-1}(\omega)[1]$ がどちらも擬同型)。よって $\omega_{\mathbb R}\cong k_{\mathbb R}[1]$ である。開区間 $I$ は $\mathbb R$ と同相なので同じことが成り立つ。$\square$

$n$ 次元の位相多様体 $M$ では、一般に $\omega_M\cong\mathrm{or}_M[n]$ である($\mathrm{or}_M$ は向きの層。KS85 1.3.4(p. 25)の定義と Theorem 1.3.1 (iii)(p. 26)を $M\to\{*\}$ に使う。MS21 Example 2.7 (3)(p. 8)は複素多様体の場合に $\omega_X\cong k_X[2d]$ と述べる)。この記事では $n=1$ の場合だけを上で証明した。

層の言葉での Poincaré 双対

$M$ を $n$ 次元の位相多様体で $\omega_M\cong k_M[n]$ となるもの(たとえば向き付け可能なもの。$k$ の標数が $2$ ならすべての多様体)とする。すべての $q$ について
$$ H^{n-q}(M;k)\cong\operatorname{Hom}_k(H^q_c(M;k),k) $$
である。特に $M$ がコンパクトなら $H^{n-q}(M;k)\cong H^q(M;k)^\vee$ である。

$\mathbb D_Mk_M=R\mathcal Hom(k_M,\omega_M)=\omega_M\cong k_M[n]$ なので、prop-vd-global により $H^{-q}(M;k_M[n])=H^{n-q}(M;k)$ が $H^q_c(M;k)$ の双対と同型である。$M$ がコンパクトなら $H^q_c=H^q$ である。$\square$

$M=\mathbb R$ では $\omega_{\mathbb R}\cong k[1]$ を thm-vd-line で示したので、この系は完全に証明されている:$H^0(\mathbb R)\cong H^1_c(\mathbb R)^\vee\cong k$ である。コンパクトな場合は Poincaré双対の定理「閉多様体の Poincaré 双対」の体係数の形と同じ主張であり、ここではキャップ積を使わずに層の双対から得られる。

半直線の双対化複体

$X=[0,\infty)$、$U=(0,\infty)$、$j\colon U\to X$ とする。$\omega_X\cong j_!k_U[1]$ である。実際、$x>0$ では $\omega_X|_U=\omega_U\cong k_U[1]$(thm-vd-line)。原点では、近傍の基 $V=[0,\varepsilon)$ について $H^q_c([0,\varepsilon))=0$(すべての $q$。コンパクト台の順像の命題「区間のコンパクト台のコホモロジー」(1) を反転したもの)なので、(1) から $\mathcal H^q(\omega_X)_0=0$ である。よって $\mathcal L:=\mathcal H^{-1}(\omega_X)$ は $\mathcal L|_U\cong k_U$、$\mathcal L_0=0$ を満たし、ほかの次数のコホモロジー層は $0$ である。開集合と閉集合の完全列 $0\to j_!j^{-1}\mathcal L\to\mathcal L\to i_*i^{-1}\mathcal L\to0$ の右端は $0$ なので $\mathcal L\cong j_!k_U$ であり、$\omega_X\cong j_!k_U[1]$ である。
このとき cor-vd-poincare の形の主張は成り立たない:$H^0(X;k)=k$ だが $H^1_c(X;k)=0$ である。大域双対が与えるのは $H^{-q}(X;\omega_X)=H^{1-q}(X;j_!k_U)\cong H^q_c(X)^\vee$ であり、境界で $\omega$ の茎が $0$ になることが、境界つき多様体の双対の形を決める。

三脚の双対化複体

$T\subset\mathbb R^2$ を、原点から出る 3 本の閉じた半直線の和とする。原点以外の点は開区間と同相な近傍をもつので、$T\setminus\{0\}$ の上で $\mathcal H^{-1}(\omega_T)$ は階数 $1$ の局所定数層である。原点の近傍の基として、原点と長さ $\varepsilon$ の 3 本の開線分の和 $V$ をとる。$V$ の開集合 $V\setminus\{0\}$(3 つの開区間の交わらない和)と閉集合 $\{0\}$ についての長完全列
$$ 0\to H^0_c(V)\to H^0(\{0\})=k\to H^1_c(V\setminus\{0\})=k^3\to H^1_c(V)\to H^1(\{0\})=0 $$
で、$V$ は連結でコンパクトでないので $H^0_c(V)=0$ であり、$k\to k^3$ は単射である。よって $\dim_kH^1_c(V)=2$、$q\ge2$ で $H^q_c(V)=0$ である。小さい同じ形の近傍 $V'\subset V$ について、$V\setminus V'$ は 3 つの半開区間の交わらない和でコンパクト台のコホモロジーが消えるので、零拡張 $H^1_c(V')\to H^1_c(V)$ は同型である。よって (1) から $\mathcal H^{-1}(\omega_T)_0\cong k^2$、ほかの次数の茎は $0$ である。茎の次元が原点で $2$、ほかで $1$ なので、$\omega_T$ はどんな $\mathcal L[1]$($\mathcal L$ は局所定数層)とも同型でない。$T$ 全体でも同じ長完全列から $H^1_c(T)\cong k^2$ となり、$H^0(T)=k$ と $H^1_c(T)^\vee=k^2$ は一致しない。

三脚の $\omega_T$ は局所定数ではないが、原点・3 本の開いた半直線からなる層別に関して構成可能である(構成可能層)。構成可能な対象の双対が構成可能であることは一般に成り立つ(次の節)。

順像との交換と二重双対

双対は $Rf_!$ と $Rf_*$ を入れ替える

$f\colon X\to Y$ と $F\in D^b(X)$ について $\mathbb D_Y(Rf_!F)\cong Rf_*(\mathbb D_XF)$ である。

thm-vd-verdier の 2 つ目の同型を $G=\omega_Y$ に使うと、$R\mathcal Hom(Rf_!F,\omega_Y)\cong Rf_*R\mathcal Hom(F,f^!\omega_Y)$ である。左辺は $\mathbb D_Y(Rf_!F)$ であり、$f^!\omega_Y=f^!a_Y^!A\cong a_X^!A=\omega_X$(節「Verdier の双対定理」)なので右辺は $Rf_*\mathbb D_XF$ である。$\square$

逆像については $\mathbb D_X(f^{-1}G)\cong f^!(\mathbb D_YG)$ が成り立つ(KS85 1.3.5 の公式 $f^!R\mathcal Hom(G,G')\cong R\mathcal Hom(f^{-1}G,f^!G')$(p. 27)で $G'=\omega_Y$ とする。そこでは $X,Y$ を多様体とする)。

反例:固有でない包含では双対と順像が交換しない

$U=(0,\infty)$、$j\colon U\to\mathbb R$ とする。thm-vd-line により $\mathbb D_U k_U=\omega_U\cong k_U[1]$ なので、$Rj_*(\mathbb D_Uk_U)\cong Rj_*k_U[1]=j_*k_U[1]$ であり($R^qj_*k_U=0$、$q\ge1$)、原点での $\mathcal H^{-1}$ の茎は $(j_*k_U)_0=k$ である。一方 $\mathbb D_{\mathbb R}(Rj_*k_U)$ の原点での茎を (1) の形で計算する。$F:=j_*k_U$、$V=(-\varepsilon,\varepsilon)$ とすると、大域双対から $H^{-q}(V;\mathbb D F)\cong H^q_c(V;F)^\vee$ である。$V$ の開集合 $(0,\varepsilon)$ と閉集合 $(-\varepsilon,0]$ の長完全列で、$F|_{(0,\varepsilon)}=k$、$F|_{(-\varepsilon,0]}$ は原点の摩天楼層 $k$(脆弱なので $H^0_c=k$、正の次数は $0$)なので
$$ 0\to H^0_c(V;F)\to k\to H^1_c((0,\varepsilon))=k\to H^1_c(V;F)\to0 $$
である。$F$ の $V$ 上の切断は $(0,\varepsilon)$ 上の定数 $c$ で決まり、$c\neq0$ なら台 $[0,\varepsilon)$ はコンパクトでないので $H^0_c(V;F)=0$ である。よって $k\to k$ は単射、したがって同型で、$H^1_c(V;F)=0$ である。すべての $q$ で $H^q_c(V;F)=0$ なので、$\mathbb D_{\mathbb R}(Rj_*k_U)$ の原点での茎は $0$ である。したがって $\mathbb D_{\mathbb R}\circ Rj_*\not\cong Rj_*\circ\mathbb D_U$ である。prop-vd-exchange で交換するのは $Rj_!$ と $Rj_*$ であり、$j$ が固有でなければ $Rj_!\neq Rj_*$ である。

構成可能な対象では二重双対がもとに戻る:複素代数多様体(解析空間)の構成可能複体 $F$ について $F\cong\mathbb D\mathbb DF$ であり、$F$ が構成可能であることと $\mathbb DF$ が構成可能であることは同値である(MS21 Corollary 2.11、p. 10)。この記事では証明しない。茎の有限性は外せない。

反例:無限次元の茎では二重双対が戻らない

$X=\{*\}$、$F=V$ を無限次元の $k$ ベクトル空間とする。自然な写像 $F\to\mathbb D\mathbb DF=V^{\vee\vee}$ は全射でない。

1 点では $\omega=k$、$\mathbb DV=\operatorname{Hom}_k(V,k)=V^\vee$ である。$V$ の基底 $(e_\lambda)$ と双対の元 $e_\lambda^\vee$ をとり(基底の存在と、下の $\varphi$ の存在に選択公理を使う)、$e_\lambda^\vee$ の張る部分空間を $V'\subset V^\vee$ とする。基底が無限なので、すべての $e_\lambda$ で値 $1$ をとる線形形式は $V'$ に入らず、$V'\neq V^\vee$ である。$V^\vee/V'$ の $0$ でない線形形式を引き戻して、$V'$ の上で $0$ で $0$ でない $\varphi\in V^{\vee\vee}$ をとる。$\varphi$ が $v\in V$ の像なら、$v$ の各座標は $e_\lambda^\vee(v)=\varphi(e_\lambda^\vee)=0$ なので $v=0$ となり、$\varphi\neq0$ に反する。$\square$

$\mathbb R$ の上の無限階数の定数層 $V_{\mathbb R}$ でも、各点の茎で同じことが起こる。

反例の表

外す条件反例成り立たなくなること
空間が境界のない多様体であること半直線 $[0,\infty)$(ex-vd-half-line)$\omega\cong k[1]$、$H^0\cong(H^1_c)^\vee$ の形の Poincaré 双対
空間が多様体であること(局所的に $\mathbb R^n$)三脚 $T$(ex-vd-tripod)$\omega$ が局所定数層のずらしであること、Poincaré 双対
写像が固有であること($Rf_!$ を $Rf_*$ に替える)$j\colon(0,\infty)\to\mathbb R$(ex-vd-nonproper)$\mathbb D\circ Rj_*\cong Rj_*\circ\mathbb D$
茎の有限性(構成可能性)1 点の上の無限次元空間(prop-vd-bidual-failure)二重双対 $F\cong\mathbb D\mathbb DF$

関連する枠組み

Verdier の定理は、エタールコホモロジーでの Grothendieck の双対定理の位相空間版として述べられた(Ver65 序、p. 337)。定義可能な空間の上では、o-極小構造の層について局所・大域の Verdier 双対が示されている(EP18 要旨、p. 1)。構成可能複体の範囲では、双対は $f^{-1}$ と $f^!$、$Rf_*$ と $Rf_!$、$\otimes^{\mathbf L}$ と $R\mathcal Hom$ を結び付け、六演算の形式を完成させる。交叉コホモロジーの Poincaré 双対性は、交叉コホモロジー複体が Verdier 双対で自分自身に移ることの帰結である(MS21 §5、p. 77)。

関連項目

参考文献

[1]
Jean-Louis Verdier, Dualité dans la cohomologie des espaces localement compacts, Séminaire Bourbaki, 1965, 序(p. 337)、§2 f^! の構成(pp. 341–343)、§3 双対定理と射 Δ・Δ'(pp. 343–344)
[2]
Masaki Kashiwara, Pierre Schapira, Microlocal study of sheaves, Astérisque, 1985, 1.3.4 向きの層(p. 25)、Theorem 1.3.1(Poincaré–Verdier 双対定理、p. 26)、1.3.5 の公式(pp. 27–28)
[3]
Laurenţiu G. Maxim, Jörg Schürmann, Constructible sheaf complexes in complex geometry and applications, arXiv:2105.13069, 2021, 頁は arXiv:2105.13069v2 による。Example 2.7 (3)(双対化複体・Borel–Moore ホモロジー・Poincaré 双対、p. 8)、Corollary 2.11(構成可能複体の二重双対、p. 10)、§5(交叉コホモロジー複体の自己双対性と Poincaré 双対、p. 77)
[4]
Mário J. Edmundo, Luca Prelli, The six Grothendieck operations on o-minimal sheaves, arXiv:1401.0846, 2018, 頁は arXiv:1401.0846v3 による。要旨(o-極小層の局所・大域の Verdier 双対、p. 1)

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