円の接線と極線(tangent lines and polars of a circle)とは、円 $x^2+y^2=r^2$ 上の点 $(x_0,y_0)$ での接線 $x_0x+y_0y=r^2$ の式に、中心以外の任意の点 $P(x_0,y_0)$ を入れた直線($P$ の極線)の性質である。極線は $OP$ に垂直で、半直線 $OP$ 上の $OP\cdot OP'=r^2$ となる点 $P'$ を通る。$P$ が円の外なら 2 本の接線の接点を結ぶ直線、円の上なら接線、円の内部なら円と交わらず、$P$ を通る弦(中心を通らないもの)の両端での接線の交点の集まりになる。「$Q$ が $P$ の極線上にある」と「$P$ が $Q$ の極線上にある」は同値である(La Hire の定理)。中心が原点でない円や楕円でも、2 次式の偏極で極線が定まる。
前提知識: 円と直線の位置関係, 直線の方程式と点と直線の距離, ベクトルの内積(高校数学)
円 $x^2+y^2=r^2$ の上の点 $(x_0,y_0)$ での接線は $x_0x+y_0y=r^2$ である(円と直線の位置関係)。この式の $(x_0,y_0)$ に円の上にない点を入れると、何を表すだろうか。まず、円の外の点から接線を引く計算をしてみる。
円 $x^2+y^2=25$ に、円の外の点 $P(7,1)$ から接線を引く($7^2+1^2=50>25$ なので $P$ は円の外にある)。
段 1(接点を未知数にする)。接点を $T(a,b)$ とすると、$T$ での接線は $ax+by=25$ である。これが $P(7,1)$ を通るので
$$
7a+b=25
$$
である。$T$ は円の上にあるので $a^2+b^2=25$ である。
段 2(解く)。$b=25-7a$ を代入すると $a^2+(25-7a)^2=25$、展開して $50a^2-350a+600=0$、両辺を $50$ で割って $a^2-7a+12=0$、$(a-3)(a-4)=0$ である。$a=3$ なら $b=4$、$a=4$ なら $b=-3$ である。
段 3(答え)。接点は $T_1(3,4)$ と $T_2(4,-3)$、接線は $3x+4y=25$ と $4x-3y=25$ である。どちらも $P$ を通る($21+4=25$、$28-3=25$)。
段 4(気づくこと)。段 1 の式 $7a+b=25$ は、2 つの接点 $(a,b)$ がどちらも直線
$$
7x+y=25
$$
の上にあることを言っている。これは接線の公式 $x_0x+y_0y=r^2$ に、円の上にない点 $P(7,1)$ をそのまま入れた式である。つまり、$7x+y=25$ は 2 つの接点を結ぶ直線である(図 1)。
円 x² + y² = 25 の外の点 P(7, 1) から引いた 2 本の接線と、接点 T₁、T₂ を結ぶ直線 7x + y = 25(赤)。この直線は OP に垂直で、OP 上の点 P′(7/2, 1/2) を通る
ex-pol-hs-contact の接点 $T$ では、接線と半径が垂直なので $\angle OTP=90^\circ$ である。したがって $T$ は $OP$ を直径とする円の上にある(直径に対する円周角は直角)。$O(0,0)$、$P(7,1)$ を直径の両端とする円は、点 $(x,y)$ について $\overrightarrow{XO}\cdot\overrightarrow{XP}=0$、つまり
$$
x(x-7)+y(y-1)=0,\qquad x^2+y^2-7x-y=0
$$
である。2 つの接点は、円 $x^2+y^2-25=0$ とこの円の交点である。2 つの円の方程式を引くと
$$
(x^2+y^2-25)-(x^2+y^2-7x-y)=7x+y-25
$$
で、2 つの交点を通る直線 $7x+y=25$ が出てくる。これは 2曲線の交点を通る図形(束) の考え方(2 つの円の方程式の 1 次結合で 2 次の項を消す)である。
円と直線の位置関係 では、円の上の点 $P$ について $x_0x+y_0y=r^2$ が $P$ での接線になることを示した。この記事では、円の上にない点 $P$ についても同じ式を考え、次の問いに答える。
| 高校の計算 | この記事の言葉 | 大学の言葉 |
|---|---|---|
| 円上の点での接線 $x_0x+y_0y=r^2$ | 円上の点の極線(thm-pol-position の 2) | 2 次形式の偏極 |
| 接点を結ぶ直線 | 円の外の点の極線(cor-pol-contact) | 点と直線の対応(極と極線) |
| $x_0x_1+y_0y_1=r^2$ は 2 点について対称 | La Hire の定理(thm-pol-lahire) | 対称な双線形形式 |
| 弦の両端の接線の交点 | 円の内部の点の極線(prop-pol-inside) | 射影幾何の双対 |
| $OP\cdot OP'=r^2$ | 極線は $P$ の反転 $P'$ を通り $OP$ に垂直 | 円に関する反転 |
この記事では、円の中心を原点 $O$ にとり、円を $x^2+y^2=r^2$($r>0$)とする。点と原点からの位置ベクトルを同じ記号で書き、内積を $P\cdot X=x_0x+y_0y$ と書く。
円 $x^2+y^2=r^2$ と、原点と異なる点 $P(x_0,y_0)$ に対して、直線
$$
x_0x+y_0y=r^2,\qquad\text{内積で書くと}\qquad P\cdot X=r^2
$$
を、この円に関する $P$ の 極線 という。逆に、直線 $\ell$ がある点 $P$ の極線であるとき、$P$ を $\ell$ の 極 という。
$P\ne O$ なので $(x_0,y_0)\ne(0,0)$ で、$x_0x+y_0y=r^2$ はたしかに直線を表す。$P=O$ では式が $0=r^2$ となって満たす点がないので、中心には極線を定めない(ex-pol-center)。
円 $x^2+y^2=25$ に関する極線を 3 つ書く。
(1) 円の外の点 $P(7,1)$ の極線は $7x+y=25$ である(ex-pol-hs-contact)。
(2) 円の上の点 $(3,4)$ の極線は $3x+4y=25$ で、これは $(3,4)$ での接線である。
(3) 円の内部の点 $Q(4,2)$($16+4=20<25$)の極線は $4x+2y=25$ である。原点との距離は $\dfrac{25}{\sqrt{4^2+2^2}}=\dfrac{25}{2\sqrt5}=\dfrac{5\sqrt5}2\approx5.59$ で、半径 $5$ より大きい。この極線は円と交わらない。
ex-pol-first で見たように、極線が円と交わるかどうかは $P$ の位置で変わる。極線の位置を、$O$ と $P$ を結ぶ直線を基準にして求める。
円 $x^2+y^2=r^2$ と点 $P\ne O$ について、$OP=d_P$ とする。$P$ の極線は次の性質をもつ。
方針:極線の式 $P\cdot X=r^2$ から、法線ベクトルが $P$ であることと、極線の上の 1 点を読み取る。次に、原点と極線の距離を半径と比べる。
段 1(垂直であること)。極線の式は $x_0x+y_0y=r^2$ なので、法線ベクトルは $(x_0,y_0)=\overrightarrow{OP}$ である(直線の方程式と点と直線の距離)。よって極線は直線 $OP$ に垂直である。
段 2($P'$ を通ること)。$P'=\dfrac{r^2}{d_P^{\,2}}P$ を極線の式の左辺に代入すると
$$
P\cdot P'=\frac{r^2}{d_P^{\,2}}\,(P\cdot P)=\frac{r^2}{d_P^{\,2}}\,d_P^{\,2}=r^2
$$
である($P\cdot P=x_0^2+y_0^2=d_P^{\,2}$)。よって $P'$ は極線の上にある。$\dfrac{r^2}{d_P^{\,2}}>0$ なので $P'$ は半直線 $OP$ の上にあり、$OP'=\dfrac{r^2}{d_P^{\,2}}\cdot d_P=\dfrac{r^2}{d_P}$ である。
段 3(距離)。段 1、段 2 から、$P'$ は原点から極線に下ろした垂線の足である($OP'$ は極線に垂直で、$P'$ は極線の上にある)。よって原点と極線の距離は $OP'=\dfrac{r^2}{d_P}$ である。点と直線の距離の公式でも $\dfrac{|0+0-r^2|}{\sqrt{x_0^2+y_0^2}}=\dfrac{r^2}{d_P}$ となる。
段 4(2〜4)。距離 $\dfrac{r^2}{d_P}$ を半径 $r$ と比べる。$\dfrac{r^2}{d_P}< r$ は $r< d_P$ と同値である(両辺に正の数 $\dfrac{d_P}r$ を掛ける)。同じように $\dfrac{r^2}{d_P}=r$ は $d_P=r$ と、$\dfrac{r^2}{d_P}>r$ は $d_P< r$ と同値である。円と直線の位置関係 の主定理(中心と直線の距離と半径の大小で共有点の個数が決まる)により、$P$ が円の外なら 2 点で交わり、円の内部なら交わらない。$P$ が円の上なら距離が $r$ で接し、接点は垂線の足 $P'$ である。$d_P=r$ なら $P'=\dfrac{r^2}{r^2}P=P$ なので、接点は $P$ で、極線は $P$ での接線である。$\square$
段 2 の $P'$ は、$P$ の円に関する 反転(半直線 $OP$ の上で $OP\cdot OP'=r^2$ となる点)である。反転は 円に関する反転 で詳しく扱う。
極線の式 $x_0x+y_0y=r^2$ は、$(x_0,y_0)$ と $(x,y)$ を入れかえても変わらない。この単純な事実が、極線のいちばん大切な性質を生む。
円 $x^2+y^2=r^2$ と、原点と異なる 2 点 $P$、$Q$ について、次の 2 つは同値である。
方針:2 つの条件を式で書くと、同じ式になる。
$P=(x_0,y_0)$、$Q=(x_1,y_1)$ とする。1 は、$P$ の極線 $x_0x+y_0y=r^2$ に $Q$ を代入した $x_0x_1+y_0y_1=r^2$ である。2 は、$Q$ の極線 $x_1x+y_1y=r^2$ に $P$ を代入した $x_1x_0+y_1y_0=r^2$ である。実数の積は順序を入れかえても同じ($x_0x_1=x_1x_0$、$y_0y_1=y_1y_0$)なので、2 つの式は同じであり、1 と 2 は同値である。$\square$
円 $x^2+y^2=25$ で、$P(7,1)$ の極線 $7x+y=25$ の上の点 $Q(0,25)$ をとる($0+25=25$)。$Q$ の極線は $0\cdot x+25y=25$、つまり $y=1$ で、$P(7,1)$ はたしかにこの上にある。
もう 1 つ。$Q(4,2)$ の極線 $4x+2y=25$ の上の点 $R\left(\dfrac{25}4,0\right)$ をとる($25+0=25$)。$R$ の極線は $\dfrac{25}4x=25$、つまり $x=4$ で、$Q(4,2)$ はこの上にある。
La Hire の定理を使うと、ex-pol-hs-contact で見た事実が一般に示せる。
$P$ が円 $x^2+y^2=r^2$ の外にあるとき、$P$ から円に引いた接線はちょうど 2 本あり、その 2 つの接点を結ぶ直線は $P$ の極線である。
方針:円の上の点 $T$ について、「$T$ での接線が $P$ を通る」を式にすると、「$T$ が $P$ の極線の上にある」と同じになる。
段 1(読みかえ)。円の上の点 $T$ での接線は $T$ の極線である(thm-pol-position の 2)。thm-pol-lahire により、「$P$ が $T$ の極線($T$ での接線)の上にある」ことは「$T$ が $P$ の極線の上にある」ことと同値である。
段 2(接点の全体)。したがって、$P$ を通る接線の接点 $T$ の全体は、「円の上にあり、かつ $P$ の極線の上にある点」の全体、つまり円と $P$ の極線の共有点の全体である。
段 3(個数)。$P$ は円の外にあるので、thm-pol-position の 3 により、円と極線の共有点はちょうど 2 個である。よって接点はちょうど 2 個である。円の上の点 $T$ での接線はただ 1 本なので(円と直線の位置関係)、接線もちょうど 2 本である(異なる接点での接線は異なる直線である。1 本の直線が円と接する点は 1 つだけだからである)。2 つの接点はどちらも極線の上にあるので、それらを結ぶ直線は極線である。$\square$
cor-pol-contact は、円と直線の位置関係 で接点を未知数にして解いた計算(ex-pol-hs-contact の段 1)が、なぜいつも 1 本の直線の式を生むのかを説明している。接線の長さや方べきとの関係は 方べきの定理(高校数学) で扱う。
円の内部の点 $P$ からは接線が引けないので、cor-pol-contact の意味づけは使えない。それでも極線は、次のように図形的な意味をもつ。
$P$ を円 $x^2+y^2=r^2$ の内部の、原点と異なる点とする。
方針:接線の交点 $Q$ から見ると、弦 $T_1T_2$ は $Q$ の極線である。それが $P$ を通ることを La Hire の定理で $Q$ の側に移す。
段 1(2 本の接線が交わる)。$T_i$ での接線 $T_i\cdot X=r^2$ の法線ベクトルは $T_i$ である($i=1,2$)。2 本が平行なのは $T_1$ と $T_2$ が平行なベクトルのときで、どちらも長さ $r$ なので $T_2=T_1$ か $T_2=-T_1$ である。$T_1\ne T_2$ なので $T_2=-T_1$ となり、弦 $T_1T_2$ は原点を通る直径になる。弦は原点を通らないと仮定したので、2 本の接線は平行でなく、1 点 $Q$ で交わる。
段 2($Q$ の極線は弦)。$Q$ は原点ではない(原点と接線の距離は $r>0$ なので、原点は接線の上にない)。$Q$ は $T_1$ での接線($T_1$ の極線)の上にあるので、thm-pol-lahire により $T_1$ は $Q$ の極線の上にある。$T_2$ も同じである。$Q$ の極線は $T_1$、$T_2$ を通る直線なので、直線 $T_1T_2$ である。
段 3(1 の結論)。弦 $T_1T_2$ は $P$ を通るので、$P$ は $Q$ の極線の上にある。thm-pol-lahire により、$Q$ は $P$ の極線の上にある。
段 4(2 の証明)。$Q$ を $P$ の極線の上の点とする。thm-pol-position の 1 により、原点と $P$ の極線の距離は $\dfrac{r^2}{OP}$ で、$OP< r$ なので $\dfrac{r^2}{OP}>r$ である。$OQ$ はこの距離以上なので $OQ>r$ で、$Q$ は円の外にある。cor-pol-contact により、$Q$ から引いた 2 本の接線の接点 $T_1$、$T_2$ を結ぶ直線は $Q$ の極線である。$Q$ は $P$ の極線の上にあるので、thm-pol-lahire により $P$ は $Q$ の極線、つまり直線 $T_1T_2$ の上にある。$P$ は円の内部の点なので、直線 $T_1T_2$ の上で線分 $T_1T_2$ の内側にあり、$T_1T_2$ は $P$ を通る弦である。この弦は原点を通らない($Q$ の極線と原点の距離は $\dfrac{r^2}{OQ}>0$)。$T_1$、$T_2$ での接線はどちらも $Q$ を通るので、$Q$ は 1 のようにして得られる。$\square$
段 4 で「$P$ は線分 $T_1T_2$ の内側にある」としたのは、円の内部の点を通る直線は円と 2 点で交わり、その 2 点の間の部分が円の内部にあるからである(円と直線の位置関係 の弦の中点の議論と同じく、直線上の点を垂線の足からの距離 $t$ で表すと、円の内部は $t^2< r^2-d^2$ の部分である)。
円 $x^2+y^2=25$ と、内部の点 $Q(4,2)$(極線 $4x+2y=25$)を考える。$Q$ を通る 3 本の弦をとり、両端での接線の交点を求める(図 2)。
(1) 弦 $x=4$。両端は $(4,3)$、$(4,-3)$、接線は $4x+3y=25$ と $4x-3y=25$ である。足すと $8x=50$ で $x=\dfrac{25}4$、引くと $y=0$ で、交点は $\left(\dfrac{25}4,0\right)$ である。$4\cdot\dfrac{25}4+0=25$ なので、極線の上にある。
(2) 両端が $(5,0)$、$(3,4)$ の弦。この弦は $Q$ を通る($(5,0)$ から $(3,4)$ への向き $(-2,4)$ に対して、$(5,0)$ から $Q$ への向きは $(-1,2)$ でその半分)。接線は $x=5$ と $3x+4y=25$ で、交点は $\left(5,\dfrac52\right)$ である。$20+5=25$ なので極線の上にある。この弦の向き $(-1,2)$ は $\overrightarrow{OQ}=(4,2)$ に垂直で(内積 $-4+4=0$)、交点 $\left(5,\dfrac52\right)$ は ex-pol-position の $Q'$ である。
(3) 両端が $(0,5)$、$\left(\dfrac{24}5,\dfrac75\right)$ の弦。$(0,5)$ から $Q$ への向きは $(4,-3)$、$(0,5)$ から $\left(\dfrac{24}5,\dfrac75\right)$ への向きは $\left(\dfrac{24}5,-\dfrac{18}5\right)=\dfrac65(4,-3)$ なので、弦は $Q$ を通る。接線は $y=5$ と $\dfrac{24}5x+\dfrac75y=25$、つまり $24x+7y=125$ で、$y=5$ を代入すると $24x=90$、$x=\dfrac{15}4$ である。交点 $\left(\dfrac{15}4,5\right)$ は $15+10=25$ を満たし、極線の上にある。
円 x² + y² = 25 の内部の点 Q(4, 2) を通る 3 本の弦と、両端での接線(破線)。接線の交点(四角)はすべて Q の極線 4x + 2y = 25(赤)の上にある
ex-pol-inside の $Q(4,2)$ を通り原点も通る弦は、直線 $y=\dfrac x2$ の上の直径である。両端は $\pm(2\sqrt5,\sqrt5)$($20+5=25$)で、接線は
$$
2\sqrt5\,x+\sqrt5\,y=25,\qquad -2\sqrt5\,x-\sqrt5\,y=25
$$
つまり $2x+y=5\sqrt5$ と $2x+y=-5\sqrt5$ である。2 本は平行で交わらない。prop-pol-inside の 1 で「原点を通らない弦」に限ったのはこのためである。この 2 本の接線は、$Q$ の極線 $4x+2y=25$($2x+y=\dfrac{25}2$)とも平行である。
prf-prop-pol-inside の段 1〜3 は、$P$ が円の内部にあることを使っていない。したがって、円の外の点 $P$ を通る直線が円と 2 点 $T_1$、$T_2$ で交わるとき(その直線が原点を通らなければ)、$T_1$、$T_2$ での接線の交点も $P$ の極線の上にある。ただし、接線の交点はいつも円の外にある(接線の上の点で接点以外のものは、中心からの距離が半径より大きい。接点から接線に沿って $t$ だけ進んだ点の中心からの距離の 2 乗は、三平方の定理により $r^2+t^2$ で、$t\ne0$ なら $r^2$ より大きい)。逆に、極線の上で円の外にある点 $Q$ からは prf-prop-pol-inside の段 4 と同じ議論で、$Q$ から引いた接線の 2 つの接点を結ぶ直線が $P$ を通ることがわかる($P$ は 2 つの接点の間ではなく、その外側にある)。したがって、得られるのは極線のうち円の外にある部分のすべての点である。極線のうち円の内部にある部分(2 つの接点の間の弦)の点は、接線の交点としては現れない。
中心が原点でない円 $x^2+y^2+lx+my+n=0$ では、円と直線の位置関係 の「偏極」の規則で極線を書く。$x^2$ を $x_0x$ に、$y^2$ を $y_0y$ に、$lx$ を $l\cdot\dfrac{x_0+x}2$ に、$my$ を $m\cdot\dfrac{y_0+y}2$ に替える。これが中心を原点に移したときの極線と同じものであることを確かめる。
円 $F(x,y)=x^2+y^2+lx+my+n=0$ の中心を $C(p,q)$($p=-\dfrac l2$、$q=-\dfrac m2$)、半径を $R$ とする。点 $P(x_0,y_0)\ne C$ に対して
$$
G(P;X)=x_0x+y_0y+l\cdot\frac{x_0+x}2+m\cdot\frac{y_0+y}2+n
$$
とおくと、
$$
G(P;X)=(x_0-p)(x-p)+(y_0-q)(y-q)-R^2
$$
が成り立つ。したがって直線 $G(P;X)=0$ は、$C$ を原点とする座標 $(x-p,\ y-q)$ で見たときの、半径 $R$ の円に関する $P$ の極線である。
方針:右辺を展開し、$l=-2p$、$m=-2q$、$n=p^2+q^2-R^2$ を使って左辺と比べる。
段 1(係数の関係)。$F=(x-p)^2+(y-q)^2-R^2$ を展開すると $x^2+y^2-2px-2qy+p^2+q^2-R^2$ なので、$l=-2p$、$m=-2q$、$n=p^2+q^2-R^2$ である。
段 2(右辺の展開)。
$$
(x_0-p)(x-p)+(y_0-q)(y-q)-R^2=x_0x+y_0y-p(x_0+x)-q(y_0+y)+p^2+q^2-R^2
$$
である。
段 3(比べる)。段 1 から $-p=\dfrac l2$、$-q=\dfrac m2$、$p^2+q^2-R^2=n$ なので、段 2 の右辺は $x_0x+y_0y+l\cdot\dfrac{x_0+x}2+m\cdot\dfrac{y_0+y}2+n=G(P;X)$ に等しい。$\square$
prop-pol-translate により、thm-pol-position・thm-pol-lahire・cor-pol-contact・prop-pol-inside は、中心を $C$ に替えてそのまま成り立つ($O$ を $C$ に、$r$ を $R$ に読みかえる)。La Hire の定理は、$G(P;Q)=G(Q;P)$($G$ は $P$ と $X$ を入れかえても変わらない)からも直接わかる。
円 $x^2+y^2-2x-4y=0$(中心 $(1,2)$、半径 $\sqrt5$。$l=-2$、$m=-4$、$n=0$)と点 $P(4,-2)$ を考える。左辺に代入すると $16+4-8+8=20>0$ なので、$P$ は円の外にある(中心からの距離の 2 乗 $3^2+4^2=25$ が $5$ より大きい)。
段 1(極線)。規則どおりに書くと
$$
4x-2y-(4+x)-2(-2+y)=0,\qquad\text{整理して}\qquad 3x-4y=0
$$
である。
段 2(接点)。$3x=4y$ から $x=4s$、$y=3s$ とおいて円の式に代入すると $16s^2+9s^2-8s-12s=25s^2-20s=0$ で、$s=0$ または $s=\dfrac45$ である。接点は $(0,0)$ と $\left(\dfrac{16}5,\dfrac{12}5\right)$ である。
段 3(確かめ)。$(0,0)$ での接線は $x+2y=0$(円と直線の位置関係 の例)で、$P$ を代入すると $4-4=0$ となり $P$ を通る。$\left(\dfrac{16}5,\dfrac{12}5\right)$ での接線は $\left(\dfrac{16}5-1\right)(x-1)+\left(\dfrac{12}5-2\right)(y-2)=5$、つまり $\dfrac{11}5(x-1)+\dfrac25(y-2)=5$ で、$P$ を代入すると $\dfrac{11}5\cdot3+\dfrac25\cdot(-4)=\dfrac{33-8}5=5$ となり、$P$ を通る。
$P$ を通る直線が円と 2 点 $A$、$B$ で交わるとき、その直線と $P$ の極線の交点 $Q$ は、$A$、$B$、$P$ に対して特別な位置にある。直線の上の点を、$P$ からの符号付きの長さで表す。
円 $x^2+y^2=r^2$ の上にない点 $P\ne O$ を通る直線 $\ell$ が、円と 2 点 $A$、$B$ で交わり、$P$ の極線と点 $Q$ で交わるとする。$\ell$ の方向の長さ $1$ のベクトル $u$ をとり、$A=P+s_Au$、$B=P+s_Bu$、$Q=P+s_Qu$ と書く($s$ は $P$ からの符号付きの長さ)。このとき
$$
\frac2{s_Q}=\frac1{s_A}+\frac1{s_B}
$$
が成り立つ。
方針:$s_A$、$s_B$ は $s$ の 2 次方程式の 2 つの解、$s_Q$ は 1 次方程式の解として表せる。右辺を解と係数の関係で書きかえ、左辺と比べる。
段 1($s_A$、$s_B$)。点 $P+su$ が円の上にある条件は $|P+su|^2=r^2$ で、$|u|=1$ を使って展開すると
$$
s^2+2(P\cdot u)s+(|P|^2-r^2)=0
$$
である。$A$、$B$ はこの 2 つの解 $s_A$、$s_B$ にあたる。解と係数の関係から $s_A+s_B=-2(P\cdot u)$、$s_As_B=|P|^2-r^2$ である。$P$ は円の上にないので $s_As_B\ne0$ で、$s_A$、$s_B$ はどちらも $0$ でない。
段 2($s_Q$)。点 $P+su$ が $P$ の極線 $P\cdot X=r^2$ の上にある条件は $P\cdot(P+su)=r^2$、つまり $|P|^2+(P\cdot u)s=r^2$ である。$\ell$ は極線と交わるので $P\cdot u\ne0$ で($P\cdot u=0$ なら、この式は $|P|^2=r^2$ となり、$P$ が円の上にないので解がない)、$s_Q=\dfrac{r^2-|P|^2}{P\cdot u}$ である。$s_Q\ne0$ である。
段 3(比べる)。右辺は
$$
\frac1{s_A}+\frac1{s_B}=\frac{s_A+s_B}{s_As_B}=\frac{-2(P\cdot u)}{|P|^2-r^2}=\frac{2(P\cdot u)}{r^2-|P|^2}
$$
で、左辺は $\dfrac2{s_Q}=\dfrac{2(P\cdot u)}{r^2-|P|^2}$ である。2 つは等しい。$\square$
$\dfrac2{s_Q}=\dfrac1{s_A}+\dfrac1{s_B}$ は、$s_Q$ が $s_A$ と $s_B$ の 調和平均 であることを言っている。このとき 4 点 $A$、$B$、$P$、$Q$ は 調和点列 をなす、または $Q$ は $A$、$B$ に関して $P$ の 調和共役 であるという。これは $\dfrac{PA}{PB}=\dfrac{QA}{QB}$(長さの比)とも同値で、4 点の 複比 が $-1$ になることとも言いかえられる。つまり、$P$ の極線は「$P$ を通る直線の上で、$P$ の調和共役になる点」を集めた直線である。
円 $x^2+y^2=25$、$P(7,1)$、$\ell$ を直線 $y=1$ とし、$u=(1,0)$ とする。$\ell$ と円の交点は $x^2=24$ から $x=\pm2\sqrt6$ で、$s_A=-2\sqrt6-7$、$s_B=2\sqrt6-7$ である。$\ell$ と極線 $7x+y=25$ の交点は $x=\dfrac{24}7$ で、$s_Q=\dfrac{24}7-7=-\dfrac{25}7$ である。
右辺は $\dfrac{s_A+s_B}{s_As_B}=\dfrac{-14}{49-24}=-\dfrac{14}{25}$、左辺は $\dfrac2{-25/7}=-\dfrac{14}{25}$ で、一致する。長さの比でも、$\dfrac{PA}{PB}=\dfrac{7+2\sqrt6}{7-2\sqrt6}$、$\dfrac{QA}{QB}=\dfrac{\frac{24}7+2\sqrt6}{2\sqrt6-\frac{24}7}=\dfrac{24+14\sqrt6}{14\sqrt6-24}$ で、分母を払って比べると $(7+2\sqrt6)(14\sqrt6-24)=98\sqrt6-168+168-48\sqrt6=50\sqrt6$、$(7-2\sqrt6)(24+14\sqrt6)=168+98\sqrt6-48\sqrt6-168=50\sqrt6$ となり、等しい。
点 $(x,y)$ を 3 つの数の組 $(x,y,1)$ とみなし、比が等しい組を同じとみると(斉次座標)、円 $x^2+y^2=r^2$ は 2 次形式 $q(x,y,z)=x^2+y^2-r^2z^2$ の零点になる。対応する対称な双線形形式は $\beta\bigl((x_0,y_0,z_0),(x,y,z)\bigr)=x_0x+y_0y-r^2z_0z$ で、$P=(x_0,y_0,1)$ の極線は $\beta(P,X)=0$、つまり $x_0x+y_0y-r^2=0$ である。La Hire の定理は $\beta$ の対称性 $\beta(P,Q)=\beta(Q,P)$ そのものである。
この見方では、中心 $O=(0,0,1)$ の極線は $z=0$ で、普通の平面の外にある「無限遠直線」になる(ex-pol-center で極線がなかった理由)。向き $(a,b)$ の無限遠点 $(a,b,0)$ の極線は $ax+by=0$ で、向き $(a,b)$ に垂直な直径である。ex-pol-diameter で直径の両端の接線が平行だったのは、2 本の接線が無限遠点で交わると考えれば、prop-pol-inside の例外ではなくなる。
点 $P$ に極線を、直線に極を対応させると、「3 点が 1 本の直線の上にある」と「3 本の直線が 1 点で交わる」が入れかわる。この対応(点と直線の 双対)で、円に内接する六角形についての Pascalの定理 は、円に外接する六角形についての Brianchon の定理に移る。この対応は CG67 でも扱われている。楕円・双曲線・放物線でも、それぞれの曲線の 2 次式から同じように作った対称な双線形形式 $\beta$ を使えば、式 $\beta(P,X)=0$ で極線が定まる。楕円については、次の prop-pol-ellipse-tangent と ex-pol-ellipse で、極線が接点を結ぶことを確かめる。双曲線・放物線を含む 2 次曲線一般の極線の性質は、本記事では証明しない(極と極線)。
楕円の極線を調べるには、楕円の接線の式が要る。楕円と直線が 接する とは、共有点がただ 1 つであること(連立して 1 文字を消去した 2 次方程式が重解をもつこと)とする。円の接線の式から、楕円の接線の式が次のように得られる。
$a>0$、$b>0$ とし、楕円 $\dfrac{x^2}{a^2}+\dfrac{y^2}{b^2}=1$ の上の点を $T(x_1,y_1)$ とする。$T$ で楕円に接する直線はただ 1 本で、その式は
$$
\frac{x_1x}{a^2}+\frac{y_1y}{b^2}=1
$$
である。
方針:$x=aX$、$y=bY$ とおいて、楕円と直線を単位円と直線に移す。
段 1(対応)。$x=aX$、$y=bY$ とおくと、点 $(x,y)$ と点 $(X,Y)$ は 1 対 1 に対応し、楕円 $\dfrac{x^2}{a^2}+\dfrac{y^2}{b^2}=1$ は単位円 $X^2+Y^2=1$ に移る。直線 $px+qy=c$ は直線 $paX+qbY=c$ に移り、逆に $(X,Y)$ の直線は $X=\dfrac xa$、$Y=\dfrac yb$ で $(x,y)$ の直線に戻る。対応が 1 対 1 なので、楕円と直線の共有点は、単位円と移った直線の共有点に 1 つずつ対応する。したがって、直線が楕円に $T$ で接することと、移った直線が単位円に $T'\left(\dfrac{x_1}a,\dfrac{y_1}b\right)$ で接することは同じである。
段 2(単位円の接線)。$T'$ は単位円の上にある。単位円の $T'$ での接線はただ 1 本で、$\dfrac{x_1}aX+\dfrac{y_1}bY=1$ である(円と直線の位置関係。円 $x^2+y^2=r^2$ の接線の式で $r=1$ としたもの)。
段 3(戻す)。$X=\dfrac xa$、$Y=\dfrac yb$ を代入すると $\dfrac{x_1x}{a^2}+\dfrac{y_1y}{b^2}=1$ となる。段 1 により、これが $T$ で楕円に接するただ 1 本の直線である。
楕円 $\dfrac{x^2}4+y^2=1$ と点 $P(4,1)$ を考える。偏極の規則で $x^2$ を $4x$ に、$y^2$ を $1\cdot y$ に替えると、極線は $\dfrac{4x}4+y=1$、つまり $x+y=1$ である。
楕円と連立すると $\dfrac{x^2}4+(1-x)^2=1$、$\dfrac54x^2-2x=0$ で、$x=0$ または $x=\dfrac85$、交点は $(0,1)$、$\left(\dfrac85,-\dfrac35\right)$ である。楕円上の点 $(x_1,y_1)$ での接線は、prop-pol-ellipse-tangent($a=2$、$b=1$)により $\dfrac{x_1x}4+y_1y=1$ なので、$(0,1)$ での接線は $y=1$、$\left(\dfrac85,-\dfrac35\right)$ での接線は $\dfrac25x-\dfrac35y=1$、つまり $2x-3y=5$ である。どちらも $P(4,1)$ を通る($1=1$、$8-3=5$)。この例でも、極線は $P$ から引いた 2 本の接線の接点を結ぶ直線になっている(図 3)。
これは prop-pol-ellipse-tangent から一般に言える。楕円 $\dfrac{x^2}{a^2}+\dfrac{y^2}{b^2}=1$ で、原点と異なる点 $P(x_0,y_0)$ の極線は偏極の規則で $\dfrac{x_0x}{a^2}+\dfrac{y_0y}{b^2}=1$ である。楕円上の点 $T(x_1,y_1)$ での接線が $P$ を通る条件は $\dfrac{x_1x_0}{a^2}+\dfrac{y_1y_0}{b^2}=1$ で、これは $T$ が $P$ の極線の上にある条件と同じ式である。したがって、$P$ から引いた接線の接点は、楕円と $P$ の極線の共有点とちょうど一致する(cor-pol-contact と同じ議論)。
一方、極線 $x+y=1$ の法線ベクトルは $(1,1)$ で、$\overrightarrow{OP}=(4,1)$ と平行でない。円での「極線は $OP$ に垂直」(thm-pol-position の 1)は、楕円では成り立たない。
楕円 x²/4 + y² = 1 の外の点 P(4, 1) の極線 x + y = 1(赤)は 2 つの接点を結ぶが、OP に垂直ではない
この記事の主張がどの仮定に支えられているかを一覧にする。
| 外した仮定 | 崩れる主張 | ボックス |
|---|---|---|
| $P$ は中心と異なる | 極線が直線として定まる | ex-pol-center |
| $P$ は円の外にある | 極線は接点を結ぶ直線(円と交わる) | ex-pol-first の (3) |
| 弦は中心を通らない | 弦の両端での接線が交わる | ex-pol-diameter |
| 1 次の項も偏極の規則どおりに替える | 極線が接点を通る | ex-pol-wrong-rule |
| 図形が円である | 極線は $OP$ に垂直 | ex-pol-ellipse |
円 $x^2+y^2=25$ で、$P=\left(\dfrac1n,0\right)$($n$ は正の整数)の極線は $\dfrac1nx=25$、つまり $x=25n$ である。$n=1,2,3$ で $x=25$、$50$、$75$ と、$P$ が中心に近づくほど極線は遠ざかる。$P=O$ そのものでは式が $0\cdot x+0\cdot y=25$ となり、満たす点はない。thm-pol-position の 1 で、極線と中心の距離 $\dfrac{r^2}{OP}$ が $OP\to0$ で限りなく大きくなることと合っている。
ex-pol-general-circle の円 $x^2+y^2-2x-4y=0$ と $P(4,-2)$ で、1 次の項 $-2x$、$-4y$ を正しく $-2\cdot\dfrac{4+x}2$、$-4\cdot\dfrac{-2+y}2$ に替えると、極線 $3x-4y=0$ が得られ、接点 $\left(\dfrac{16}5,\dfrac{12}5\right)$ を通った。
(1) 1 次の項を $P$ の座標で $-2\cdot4$、$-4\cdot(-2)$ に替えると $4x-2y-8+8=0$、つまり $2x-y=0$ になる。$\left(\dfrac{16}5,\dfrac{12}5\right)$ を代入すると $\dfrac{32-12}5=4\ne0$ で、接点を通らない。
(2) 1 次の項をそのまま $-2x$、$-4y$ にすると $4x-2y-2x-4y=0$、つまり $x-3y=0$ になる。$\left(\dfrac{16}5,\dfrac{12}5\right)$ を代入すると $\dfrac{16-36}5=-4\ne0$ で、やはり通らない。
どちらの式も原点(もう 1 つの接点)は通るが、それは定数項が $0$ になる偶然である。$x$ と $x_0$ の平均をとる規則は、prop-pol-translate で見たように、中心を原点に移した極線と一致させるために必要である。
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