空間ベクトルと1次独立(linear independence of space vectors)とは、空間の 3 つのベクトル $\vec a,\vec b,\vec c$ について、$s\vec a+t\vec b+u\vec c=\vec 0$ となるのが $s=t=u=0$ のときだけであること(1 次独立)、3 つが同一平面上にないこと、どのベクトルもこの形にただ 1 通りに表せることが同値だという事実である。一直線上にない 3 点 $A,B,C$ に対し、$P$ が平面 $ABC$ 上にあることは $\vec p=s\vec a+t\vec b+u\vec c$、$s+t+u=1$ と書けることと同値である。1 次独立は行列式 $\det(\vec a,\vec b,\vec c)\ne0$ で判定でき、空間の 4 ベクトルはいつも 1 次従属である(空間の次元は 3)。
前提知識: ベクトル, 位置ベクトルと内分点, ベクトルの内積(高校数学)
空間の座標では、ベクトル $\vec p=(x,y,z)$ は、基本ベクトル $\vec e_1=(1,0,0)$、$\vec e_2=(0,1,0)$、$\vec e_3=(0,0,1)$ を使って
$$
\vec p=x\,\vec e_1+y\,\vec e_2+z\,\vec e_3
$$
とただ 1 通りに書ける。成分とは、3 つの向き $\vec e_1$、$\vec e_2$、$\vec e_3$ にそれぞれ何倍ずつ進むかを表す数である。では、座標軸の向きでない 3 つのベクトルを使っても、同じことができるだろうか。
$\vec a=(1,1,0)$、$\vec b=(0,1,1)$、$\vec c=(1,0,1)$ とする。$\vec p=(3,4,5)$ を $s\vec a+t\vec b+u\vec c$ の形に表す。
$$
s\vec a+t\vec b+u\vec c=(s+u,\ s+t,\ t+u)
$$
なので、連立方程式 $s+u=3$、$s+t=4$、$t+u=5$ を解けばよい。
$\vec a=(1,1,0)$、$\vec b=(0,1,1)$ はそのままで、3 つ目を $\vec c'=(1,2,1)$ に替える。
$$
s\vec a+t\vec b+u\vec c'=(s+u,\ s+t+2u,\ t+u)
$$
である。
2 つの例の違いは、$\vec c'=\vec a+\vec b$ のように、3 つ目のベクトルが残りの 2 つで作れてしまうかどうかにある。この記事では次の問いに答える。
| 高校の計算 | この記事での見方 | ボックス |
|---|---|---|
| $s\vec a+t\vec b+u\vec c=\vec 0$ なら $s=t=u=0$ | 1 次独立 | def-lis-independent |
| 同じ平面上にない 3 つのベクトルで表す | 1 次独立 ⇔ ただ 1 通りに表せる | thm-lis-basis |
| 係数比較で交点を求める | 表し方がただ 1 通りであることを使う | ex-lis-tetra |
| $\vec p=s\vec a+t\vec b+u\vec c$、$s+t+u=1$ | 4 点が同じ平面上にある条件 | thm-lis-coplanar |
| 空間の 4 つのベクトルは 1 次従属 | 空間の次元は 3 | cor-lis-four、rem-lis-dimension |
| 3 次の行列式 $\ne0$ | 1 次独立の判定 | thm-lis-det |
ベクトル $\vec a_1,\dots,\vec a_k$ と実数 $s_1,\dots,s_k$ に対し、$s_1\vec a_1+\dots+s_k\vec a_k$ の形のベクトルを $\vec a_1,\dots,\vec a_k$ の 1 次結合 という。
$\vec a_1,\dots,\vec a_k$ が 1 次独立 であるとは、
$$
s_1\vec a_1+\dots+s_k\vec a_k=\vec 0\quad\text{ならば}\quad s_1=\dots=s_k=0
$$
が成り立つことをいう。1 次独立でないこと、つまり、少なくとも 1 つは $0$ でない $s_1,\dots,s_k$ で $s_1\vec a_1+\dots+s_k\vec a_k=\vec 0$ となるものがあることを、1 次従属 という。
$s_1=\dots=s_k=0$ とすれば、どんなベクトルでも $0\vec a_1+\dots+0\vec a_k=\vec 0$ である。1 次独立とは、「$\vec 0$ を作る方法がこの当たり前の方法しかない」ということである。
2 つのベクトルのときは、1 次独立は「平行でない」ことと同じである。
2 つのベクトル $\vec a$、$\vec b$ が 1 次独立であるための必要十分条件は、$\vec a\ne\vec 0$、$\vec b\ne\vec 0$ であって、$\vec a$ と $\vec b$ が平行でないことである。
方針:「1 次従属」⇔「一方が $\vec 0$ か、2 つが平行」を示す。これは示したい同値の両辺を否定したものである。平行とは、$\vec 0$ でない 2 つのベクトルの一方が他方の $0$ でない実数倍であることをいう。
段 1(従属なら $\vec 0$ か平行)。$s\vec a+t\vec b=\vec 0$ で、$s$、$t$ の少なくとも一方が $0$ でないとする。$s\ne0$ なら $\vec a=-\frac ts\vec b$ である。このとき $\vec a=\vec 0$ であるか、そうでなければ $-\frac ts\ne0$ かつ $\vec b\ne\vec 0$ なので、$\vec a$ と $\vec b$ は平行である。$s=0$ なら $t\ne0$ で、$t\vec b=\vec 0$ から $\vec b=\vec 0$ である。
段 2($\vec 0$ か平行なら従属)。$\vec a=\vec 0$ なら $1\cdot\vec a+0\cdot\vec b=\vec 0$、$\vec b=\vec 0$ なら $0\cdot\vec a+1\cdot\vec b=\vec 0$ で、どちらも $0$ でない係数を含む。平行なら $\vec a=k\vec b$($k\ne0$)と書けるので、$1\cdot\vec a+(-k)\vec b=\vec 0$ である。$\square$
次の補題は、1 次従属を「どれかが残りの 1 次結合になっている」と言い換える。
$\vec a$、$\vec b$、$\vec c$ が 1 次従属であるための必要十分条件は、3 つのうちのどれか 1 つが、残りの 2 つの 1 次結合になっていることである。
方針:$0$ でない係数を 1 つ選んで、その項だけを左辺に残す。
段 1(必要性)。$s\vec a+t\vec b+u\vec c=\vec 0$ で、$s$、$t$、$u$ のどれかが $0$ でないとする。たとえば $u\ne0$ なら、両辺を $u$ で割って移項すると $\vec c=-\frac su\vec a-\frac tu\vec b$ で、$\vec c$ は $\vec a$、$\vec b$ の 1 次結合である。$s\ne0$ や $t\ne0$ のときも、同じようにして $\vec a$ や $\vec b$ が残りの 1 次結合になる。
段 2(十分性)。たとえば $\vec c=p\vec a+q\vec b$ なら、$p\vec a+q\vec b+(-1)\vec c=\vec 0$ で、係数 $-1$ は $0$ でない。$\vec a$ や $\vec b$ が残りの 1 次結合のときも同じである。$\square$
3 つのベクトルが「同じ平面上にない」という言葉の意味を決めておく。空間に点 $O$ をとり、$\vec a=\overrightarrow{OA}$、$\vec b=\overrightarrow{OB}$、$\vec c=\overrightarrow{OC}$ とする。4 点 $O$、$A$、$B$、$C$ を含む平面があるとき、$\vec a$、$\vec b$、$\vec c$ は 同じ平面上にある という。これは $O$ の選び方によらない。$O$ を替えると 4 点全体が平行移動するだけであり、平面を平行移動したものはまた平面だからである(下の rem-lis-space-facts の 7)。
証明では、高校の空間図形で学ぶ次の性質を使う。
次の 7 つは、空間図形の出発点として認める性質である。この記事では証明しない。この記事の証明と例で使う空間の性質は、これで全部である(直線をベクトルで表すこと、たとえば点 $P$ を通り $\vec c$ に平行な直線が $\overrightarrow{PX}=u\vec c$ の点 $X$ の全体であることは、位置ベクトルと内分点 の直線の扱いによる)。
空間の 3 つのベクトル $\vec a$、$\vec b$、$\vec c$ について、次の 3 つは同値である。
方針:1 ⇒ 2 と 2 ⇒ 1 を対偶で示し、1 と 2 から 3 を導き、最後に 3 ⇒ 1 を示す。$O$、$A$、$B$、$C$ は上のとおりとする。
段 1(1 ⇒ 2。対偶「同じ平面上にあれば 1 次従属」を示す)。$O$、$A$、$B$、$C$ を含む平面 $\pi$ があるとする。
$\vec a=(1,1,0)$、$\vec b=(0,1,1)$、$\vec c=(1,0,1)$ は 1 次独立である(ex-lis-independent の 1)。$s\vec a+t\vec b+u\vec c=(s+u,\ s+t,\ t+u)$ を使う。
$\vec a=(1,1,0)$、$\vec b=(0,1,1)$、$\vec c=(1,0,1)$ の張る平行六面体(破線)と、$\vec p=(2,3,3)$ へ $\vec a$ の向きに 1、$\vec b$ の向きに 2、$\vec c$ の向きに 1 だけ進んで着くようす。3 つの向きへの進み方がただ 1 通りに決まることを見る図。
thm-lis-basis の 3 から、空間には 1 次独立な 4 つのベクトルがないことが出る。
空間の 4 つのベクトル $\vec a$、$\vec b$、$\vec c$、$\vec d$ は、いつも 1 次従属である。
方針:$\vec a$、$\vec b$、$\vec c$ が 1 次従属か 1 次独立かで場合を分ける。
段 1(従属のとき)。$s\vec a+t\vec b+u\vec c=\vec 0$ で $s$、$t$、$u$ のどれかが $0$ でないものがある。$\vec d$ の係数を $0$ として付け加えれば $s\vec a+t\vec b+u\vec c+0\,\vec d=\vec 0$ なので、4 つは 1 次従属である。
段 2(独立のとき)。thm-lis-basis の 3 により、$\vec d=s\vec a+t\vec b+u\vec c$ と書ける。移項して $s\vec a+t\vec b+u\vec c+(-1)\vec d=\vec 0$ で、係数 $-1$ は $0$ でない。よって 4 つは 1 次従属である。$\square$
位置ベクトルと内分点 では、点 $P$ が直線 $AB$ 上にある条件が $\vec p=s\vec a+t\vec b$、$s+t=1$ であることを見た。空間では、同じ形で平面の条件が書ける。
空間の 3 点 $A(\vec a)$、$B(\vec b)$、$C(\vec c)$ が一直線上にないとする(位置ベクトルの基準の点 $O$ はどこでもよい)。点 $P(\vec p)$ が平面 $ABC$ 上にあるための必要十分条件は、$s+t+u=1$ を満たす実数 $s$、$t$、$u$ で
$$
\vec p=s\vec a+t\vec b+u\vec c
$$
と書けることである。このとき $s$、$t$、$u$ は $P$ によってただ 1 通りに決まる。
方針:rem-lis-space-facts の 2 を、基準の点を $A$ にして使い、位置ベクトルの式に直す。
段 1(言い換え)。$A$、$B$、$C$ は一直線上にないので、rem-lis-space-facts の 2($O$ を $A$ に替えたもの)により、$P$ が平面 $ABC$ 上にあることは、実数 $t$、$u$ で
$$
\overrightarrow{AP}=t\,\overrightarrow{AB}+u\,\overrightarrow{AC}
$$
と書けることと同じである。
段 2(位置ベクトルに直す)。$\overrightarrow{AP}=\vec p-\vec a$、$\overrightarrow{AB}=\vec b-\vec a$、$\overrightarrow{AC}=\vec c-\vec a$ なので(位置ベクトルと内分点 の「2 点を結ぶベクトル」)、段 1 の式は $\vec p-\vec a=t(\vec b-\vec a)+u(\vec c-\vec a)$、すなわち
$$
\vec p=(1-t-u)\vec a+t\vec b+u\vec c
$$
と同じである。$s=1-t-u$ とおけば $s+t+u=1$ である。逆に $s+t+u=1$ で $\vec p=s\vec a+t\vec b+u\vec c$ なら、$s=1-t-u$ を代入して段 1 の式に戻る。
段 3(ただ 1 通り)。$\vec p=s\vec a+t\vec b+u\vec c=s'\vec a+t'\vec b+u'\vec c$ で、$s+t+u=s'+t'+u'=1$ とする。段 2 の計算を逆にたどると $t\,\overrightarrow{AB}+u\,\overrightarrow{AC}=t'\,\overrightarrow{AB}+u'\,\overrightarrow{AC}$、つまり $(t-t')\overrightarrow{AB}+(u-u')\overrightarrow{AC}=\vec 0$ である。$A$、$B$、$C$ が一直線上にないので、$\overrightarrow{AB}$、$\overrightarrow{AC}$ は $\vec 0$ でなく平行でもない。lem-lis-two によりこの 2 つは 1 次独立で、$t=t'$、$u=u'$ である。すると $s=1-t-u=s'$ である。$\square$
係数の和が $1$ の式は、基準の点 $O$ の取り方によらずに点を表す(位置ベクトルと内分点 の「係数の和が 1 なら原点によらない」)。thm-lis-coplanar で $O$ がどこでもよいのは、このためである。
$A(1,0,0)$、$B(0,2,0)$、$C(0,0,3)$ とし、原点 $O$ を基準にする。$s\vec a+t\vec b+u\vec c=(s,\ 2t,\ 3u)$ である。
1 次独立の係数比較と thm-lis-coplanar を組み合わせると、空間の直線と平面の交点が求められる。
四面体 $OABC$ で $\overrightarrow{OA}=\vec a$、$\overrightarrow{OB}=\vec b$、$\overrightarrow{OC}=\vec c$ とする。辺 $OA$ の中点を $L$、辺 $OB$ を $2:1$ に内分する点を $M$、辺 $OC$ を $1:2$ に内分する点を $N$ とし、三角形 $ABC$ の重心を $G$ とする。直線 $OG$ と平面 $LMN$ の交点を $X$ とし、$\overrightarrow{OX}$ を求める(図2)。
四面体 $OABC$ と、辺上の点 $L$、$M$、$N$ を通る平面(青)、直線 $OG$(赤)。交点 $X$ が $OG$ を $6:7$ に分けることを見る図。
$\vec a$、$\vec b$、$\vec c$ を 1 次独立とし、これらの張る平行六面体の、$O$ と向かい合う頂点を $D$ とする。$\overrightarrow{OD}=\vec a+\vec b+\vec c$ である。$A(\vec a)$、$B(\vec b)$、$C(\vec c)$ とし、対角線 $OD$ と平面 $ABC$ の交点 $X$ を求める。
| 外した仮定 | 崩れる主張 | ボックス |
|---|---|---|
| $\vec a$、$\vec b$、$\vec c$ が 1 次独立 | ただ 1 通りに表せる(thm-lis-basis) | ex-lis-start-fail |
| 3 つが 1 次独立(どの 2 つも平行でない、だけでは足りない) | 1 次独立である・ただ 1 通りに表せる | ex-lis-pairwise |
| $A$、$B$、$C$ が一直線上にない | 係数 $s$、$t$、$u$ がただ 1 通り(thm-lis-coplanar) | ex-lis-collinear |
| ベクトルの個数が $3$ 以下(4 つ以上にする) | 1 次独立でありうる(4 つ以上ではいつも 1 次従属) | cor-lis-four、ex-lis-four |
$\vec a=(1,0,0)$、$\vec b=(0,1,0)$、$\vec c=(1,1,0)$ とする(図3)。
$\vec a=(1,0,0)$、$\vec b=(0,1,0)$、$\vec c=(1,1,0)$ は、どの 2 つも平行でないが、3 つとも平面 $z=0$ の上にあり、1 次従属であることを見る図。
$A(1,0,0)$、$B(2,0,0)$、$C(3,0,0)$ は $x$ 軸上にある。原点 $O$ を基準にすると、点 $B(2,0,0)$ は
$$
0\cdot\vec a+1\cdot\vec b+0\cdot\vec c=(2,0,0),\qquad \frac12\vec a+0\cdot\vec b+\frac12\vec c=\left(\frac12+\frac32,\ 0,\ 0\right)=(2,0,0)
$$
のように、係数の和が $1$ の表し方が 2 通り以上ある。thm-lis-coplanar の「ただ 1 通り」が崩れる。prf-lis-coplanar の段 3 では $\overrightarrow{AB}$ と $\overrightarrow{AC}$ が平行でないことを使ったが、ここでは $\overrightarrow{AC}=2\overrightarrow{AB}$ である。そもそも、一直線上の 3 点を含む平面は 1 つに決まらず(rem-lis-space-facts の 5・6 から 2 つ以上あることが分かる)、「平面 $ABC$」が決まらない。
高校数学では、1 次独立を「同じ平面上にない」という図形の言葉と結びつけ、連立方程式を解いて確かめた。大学数学では、thm-lis-basis の 3 の性質に名前を付けて 基底 とよび、図形を使わずに数の計算だけで扱う。
| 高校数学で解く | 大学数学で見る | |
|---|---|---|
| 1 次独立 | 連立方程式を解いて $s=t=u=0$ を確かめる | 定義は同じ(Axl24 の 2.15) |
| 3 つで全部を表せる | 同じ平面上にない(thm-lis-basis) | 基底(Axl24 の 2.26、2.28) |
| 4 つは 1 次従属 | cor-lis-four | 次元が $3$(Axl24 の 2.23、2.34、2.35) |
| 判定の方法 | 図形の位置関係、連立方程式 | 行列式が $0$ でない(thm-lis-det、Axl24 の 9.39、9.45) |
空間のベクトルの組 $(\vec a_1,\dots,\vec a_k)$ が空間の 基底 であるとは、空間のどのベクトル $\vec p$ も、1 次結合 $\vec p=s_1\vec a_1+\dots+s_k\vec a_k$ としてただ 1 通りに表せることをいう。ここではベクトルの個数 $k$ を決めていない。基底 $(\vec a_1,\dots,\vec a_k)$ について、$\vec p$ を表す係数の組 $(s_1,\dots,s_k)$ を、この基底に関する $\vec p$ の 座標 という。
thm-lis-basis の 1 ⇒ 3 により、1 次独立な 3 つのベクトルの組 $(\vec a,\vec b,\vec c)$ は基底であり、$\vec p=s\vec a+t\vec b+u\vec c$ の $(s,t,u)$ が座標である。個数が 3 でない基底があるかどうかは、下の rem-lis-dimension で調べる。
この定義は、大学の線形代数の教科書の定義(1 次独立で、全体を 1 次結合で表せる組。Axl24 の 2.26)と同値である(Axl24 の 2.28)。
$\vec p=(1,2,3)$ とする。
空間の基底には、$(\vec e_1,\vec e_2,\vec e_3)$ も ex-lis-coordinates の $(\vec a,\vec b,\vec c)$ もあり、取り方はいくらでもある。それでも、基底をつくるベクトルの個数は取り方によらず、いつも $3$ である。これを確かめる。$(\vec a_1,\dots,\vec a_k)$ を空間の基底とする。
thm-lis-basis は図形の言葉を使っていた。成分の計算だけで 1 次独立を判定する式がある。
$\vec a=(a_1,a_2,a_3)$、$\vec b=(b_1,b_2,b_3)$、$\vec c=(c_1,c_2,c_3)$ に対し、
$$
\det(\vec a,\vec b,\vec c)=a_1b_2c_3+a_2b_3c_1+a_3b_1c_2-a_3b_2c_1-a_2b_1c_3-a_1b_3c_2
$$
を $\vec a$、$\vec b$、$\vec c$ の 行列式 という($\vec a$、$\vec b$、$\vec c$ を行に並べた $3\times3$ の表の 行列式 である)。また
$$
\vec a\times\vec b=(a_2b_3-a_3b_2,\ a_3b_1-a_1b_3,\ a_1b_2-a_2b_1)
$$
を $\vec a$ と $\vec b$ の 外積 という。
外積は 空間の平面と法線ベクトル でも同じ式で定義し、平面の法線ベクトルを作るのに使う。下の lem-lis-det の 1・3・5 と同じ内容はそちらにもあるが、この記事だけで読めるように、ここでも証明しておく。
$\vec a=(1,1,0)$、$\vec b=(0,1,1)$、$\vec c=(1,0,1)$ とする。
2 の計算で見えた関係を、一般に示しておく。内積の計算規則は ベクトルの内積(高校数学) による。
空間のベクトル $\vec a$、$\vec b$、$\vec c$ と実数 $p$、$q$ について、次が成り立つ。
方針:1〜3 は成分で展開して項を比べる。4 は 1 と 3 から、5 は $\vec a$ の $0$ でない成分で割って示す。
段 1(1 を示す)。$(\vec a\times\vec b)\cdot\vec c=(a_2b_3-a_3b_2)c_1+(a_3b_1-a_1b_3)c_2+(a_1b_2-a_2b_1)c_3$ を展開すると
$$
a_2b_3c_1-a_3b_2c_1+a_3b_1c_2-a_1b_3c_2+a_1b_2c_3-a_2b_1c_3
$$
である。これは def-lis-det の 6 つの項を並べ替えたものなので、$\det(\vec a,\vec b,\vec c)$ に等しい。
段 2(2 を示す)。def-lis-det の式で、$\vec a$ を $\vec b$ に、$\vec b$ を $\vec c$ に、$\vec c$ を $\vec a$ に置き換えると
$$
\det(\vec b,\vec c,\vec a)=b_1c_2a_3+b_2c_3a_1+b_3c_1a_2-b_3c_2a_1-b_2c_1a_3-b_1c_3a_2
$$
である。掛け算の順番を並べ替えると、正の項は $a_3b_1c_2$、$a_1b_2c_3$、$a_2b_3c_1$、負の項は $a_1b_3c_2$、$a_3b_2c_1$、$a_2b_1c_3$ で、$\det(\vec a,\vec b,\vec c)$ の 6 つの項と符号も含めて一致する。同じ置き換えをもう 1 回すると $\det(\vec c,\vec a,\vec b)=\det(\vec b,\vec c,\vec a)$ も分かる。
段 3(3 を示す)。段 1 の式で $\vec c=\vec a$ とすると
$$
(\vec a\times\vec b)\cdot\vec a=a_2b_3a_1-a_3b_2a_1+a_3b_1a_2-a_1b_3a_2+a_1b_2a_3-a_2b_1a_3
$$
である。$a_1a_2b_3$ と $-a_1a_2b_3$、$-a_1a_3b_2$ と $a_1a_3b_2$、$a_2a_3b_1$ と $-a_2a_3b_1$ が打ち消し合って $0$ になる。$\vec c=\vec b$ とすると
$$
(\vec a\times\vec b)\cdot\vec b=a_2b_3b_1-a_3b_2b_1+a_3b_1b_2-a_1b_3b_2+a_1b_2b_3-a_2b_1b_3
$$
で、同じように $a_2b_1b_3$、$a_3b_1b_2$、$a_1b_2b_3$ の項がそれぞれ打ち消し合って $0$ になる。
段 4(4 を示す)。$\vec n=\vec a\times\vec b$ とおく。1 と内積の分配法則により
$$
\det(\vec a,\vec b,p\vec a+q\vec b)=\vec n\cdot(p\vec a+q\vec b)=p\,(\vec n\cdot\vec a)+q\,(\vec n\cdot\vec b)
$$
であり、3 により右辺は $p\cdot0+q\cdot0=0$ である。
段 5(5 を示す)。$\vec a\times\vec b=\vec 0$、つまり $a_2b_3=a_3b_2$、$a_3b_1=a_1b_3$、$a_1b_2=a_2b_1$ とする。$\vec a=\vec 0$ なら、ex-lis-independent の 3 と同じく 1 次従属である。$\vec a\ne\vec 0$ なら、$0$ でない成分がある。$a_1\ne0$ とする。$k=\frac{b_1}{a_1}$ とおくと、$b_1=ka_1$ である。3 つ目の式 $a_1b_2=a_2b_1$ を $a_1$ で割ると $b_2=\frac{b_1}{a_1}a_2=ka_2$、2 つ目の式 $a_3b_1=a_1b_3$ を $a_1$ で割ると $b_3=\frac{b_1}{a_1}a_3=ka_3$ である。よって $\vec b=k\vec a$、すなわち $k\vec a+(-1)\vec b=\vec 0$ で、係数 $-1$ は $0$ でないから 1 次従属である。$a_2\ne0$ や $a_3\ne0$ のときも、外積の 3 つの成分は番号を $1\to2\to3\to1$ とずらすと互いに移り合うので、同じ計算で $\vec b$ が $\vec a$ の実数倍になる。$\square$
空間の 3 つのベクトル $\vec a$、$\vec b$、$\vec c$ が 1 次独立であるための必要十分条件は、$\det(\vec a,\vec b,\vec c)\ne0$ である。
方針:「1 次従属なら行列式が $0$」を lem-lis-det の 4 で示す。「1 次独立なら行列式が $0$ でない」は、外積 $\vec n=\vec a\times\vec b$ を $\vec a$、$\vec b$、$\vec c$ で表し、$\vec n$ との内積をとって示す。
段 1(1 次従属なら $\det=0$)。1 次従属とすると、lem-lis-dependent により、どれか 1 つが残りの 1 次結合である。
$|\det(\vec a,\vec b,\vec c)|$ は、$\vec a$、$\vec b$、$\vec c$ の張る平行六面体の体積に等しい。証明は 空間の平面と法線ベクトル にある(底面の平行四辺形の面積が $|\vec a\times\vec b|$、高さが $\frac{|\det(\vec a,\vec b,\vec c)|}{|\vec a\times\vec b|}$ になる)。図1 の平行六面体の体積は $|2|=2$ である。この見方では、thm-lis-det は「平行六面体がつぶれていない(体積が $0$ でない)ことと、3 つのベクトルが同じ平面上にないことは同じ」という、thm-lis-basis の 1 ⇔ 2 の言い換えになる。平面の 2 つのベクトルでは、$a_1b_2-a_2b_1$ が平行四辺形の符号付き面積で、$0$ でないことが 1 次独立と同値である(1次変換と行列式:面積の拡大率)。大学の線形代数では、正方行列の列が 1 次独立であることと、行列式が $0$ でないことが同値になる(Axl24 の 9.39 と 9.45)。3 つのベクトルを列に並べた $3\times3$ の行列の行列式も、def-lis-det と同じ 6 つの項の式になる。
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