広義積分(improper integral)とは、区間が有界でない場合や関数が区間の端の近くで有界でない場合に、有界閉区間上の Riemann 積分 $\int_a^cf$ の $c\to b$ での極限として定める積分である。たとえば $\int_1^\infty dx/x^2=1$、$\int_0^1dx/\sqrt{x}=2$ は収束するが、$\int_1^\infty dx/x$ は発散する。$\int_1^\infty x^{-p}\,dx$ は $p>1$ のときに限り収束し、比較判定法、絶対収束、級数の積分判定法など、級数の理論と並行する性質をもつ。$\int_0^\infty(\sin x/x)\,dx$ のように、収束するが絶対値の積分は発散する(条件収束する)ものもある。
前提知識: Riemann積分, 微分積分学の基本定理, 区間, 級数
曲線 $y=1/x^2$ と $x$ 軸にはさまれた $x\geq1$ の部分は右に限りなく伸びているが、その面積は有限と考えられる。実際、$1\leq x\leq R$ の部分の面積は $\int_1^R\frac{dx}{x^2}=1-\frac1R$ であり、$R\to\infty$ で $1$ に近づく。そこで $\int_1^\infty\frac{dx}{x^2}=1$ と定める。同じように、$0< x\leq1$ で有界でない関数 $1/\sqrt x$ についても $\int_\varepsilon^1\frac{dx}{\sqrt x}=2-2\sqrt\varepsilon\to2$($\varepsilon\to+0$)なので $\int_0^1\frac{dx}{\sqrt x}=2$ と定める。一方 $\int_1^R\frac{dx}{x}=\log R$ は $R\to\infty$ で限りなく大きくなるので、$\int_1^\infty\frac{dx}{x}$ は有限の値をもたない。このように、有界閉区間上の Riemann積分 の極限として、区間が有界でない場合や関数が有界でない場合の積分を定めたものが広義積分(improper integral)である。確率や物理で重要な $\int_{-\infty}^{\infty}e^{-x^2}\,dx=\sqrt\pi=1.7724538\ldots$ も広義積分である。
$a$ を実数、$b$ を $a< b$ を満たす実数または $\infty$ とし、$f\colon[a,b)\to\mathbb{R}$ は $a< c< b$ を満たすすべての $c$ について $[a,c]$ 上で Riemann 積分可能とする。極限
$$
\int_a^bf(x)\,dx:=\lim_{c\to b-0}\int_a^cf(x)\,dx
$$
($b=\infty$ なら $c\to\infty$ の極限)が実数として存在するとき、広義積分 $\int_a^bf$ は収束するといい、この極限をその値とする。存在しないとき発散するという。とくに極限が $+\infty$($-\infty$)のとき、$+\infty$($-\infty$)に発散するといい $\int_a^bf=+\infty$($-\infty$)と書く。
左の端についても同様に、$f\colon(a,b]\to\mathbb{R}$($a$ は実数または $-\infty$)が $[c,b]$ 上で積分可能なら $\int_a^bf:=\lim_{c\to a+0}\int_c^bf$ と定める。
$-\infty\leq a< b\leq\infty$ とし、$f\colon(a,b)\to\mathbb{R}$ は $a< c< d< b$ を満たすすべての $c,d$ について $[c,d]$ 上で Riemann 積分可能とする。点 $m\in(a,b)$ を 1 つとり、2 つの広義積分 $\int_a^mf$ と $\int_m^bf$ がともに収束するとき、広義積分 $\int_a^bf$ は収束するといい
$$
\int_a^bf:=\int_a^mf+\int_m^bf
$$
と定める。少なくとも一方が発散するときは発散するという。区間の内部の有限個の点 $c_1<\cdots< c_k$ の近くで $f$ が有界でない場合は、区間を $c_i$ で分けて各部分の広義積分がすべて収束するときに収束するといい、値をそれらの和とする。
片側の定義は Leb Definition 5.5.1(p. 214)と同じである。両端の場合、同書の Definition 5.5.8(p. 218)は 2 つの端での極限を順にとる形で定めている。同書の Proposition 5.5.10(p. 219)は $(-\infty,\infty)$ の場合に、その形の極限が存在することと 2 つの半分 $\int_{-\infty}^0f$、$\int_0^\infty f$ がともに収束することが同値で、値も一致することを示している(有限の端の場合も、積分を分点で分ける同じ計算で同値になる)。上の定義が点 $m$ のとり方によらないことは prop-ii-split-point で示す。広義積分は極限として定めた量であり、Riemann 積分そのものではない。ただし、$f$ がもともと $[a,b]$ 上で Riemann 積分可能なら、広義積分として考えても値は変わらない(prop-ii-consistent)。
広義積分は、無限に伸びた図形や、端で無限に高くなる図形の面積を、有限の部分の面積の極限として測るものである。$\int_a^cf$ を $c$ の関数とみると、これは級数の部分和 $\sum_{n\leq N}a_n$ に当たり、広義積分の収束は級数の収束に当たる。実際、比較判定法、絶対収束と条件収束の区別など、級数の理論の多くがほぼそのまま広義積分に移る(prop-ii-integral-test は両者を直接結びつける)。ただし、級数では項が $0$ に近づくことが収束の必要条件であるのに対し、広義積分では被積分関数が $0$ に近づく必要はない(ex-ii-spikes)。
$p$ を実数とする。
$x>0$ で $x^s:=e^{s\log x}$ とし、$\frac{d}{dx}x^s=sx^{s-1}$、$\frac{d}{dx}\log x=\frac1x$ を使う(連鎖律 の記事の例「対数関数と一般の冪」)。微分積分学の基本定理 の記事の定理「原始関数による積分の計算」により、$0< c< d$ について
$$
\int_c^d\frac{dx}{x^p}=\begin{cases}\dfrac{d^{1-p}-c^{1-p}}{1-p}&(p\ne1)\\[2mm]\log d-\log c&(p=1)\end{cases}
$$
である。$s>0$ なら $t\to\infty$ で $t^s=e^{s\log t}\to\infty$、$t\to+0$ で $t^s\to0$ であり、$s<0$ ならその逆である。また $\log t$ は $t\to\infty$ で $+\infty$ に、$t\to+0$ で $-\infty$ に近づく(対数関数、指数関数)。
1:$c=1$ とし $d\to\infty$ とする。$p>1$ なら $1-p<0$ なので $d^{1-p}\to0$ で、値は $\frac{0-1}{1-p}=\frac1{p-1}$ である。$p<1$ なら $d^{1-p}\to\infty$ で、$p=1$ なら $\log d\to\infty$ なので、どちらも $+\infty$ に発散する。
2:$d=1$ とし $c\to+0$ とする。$p<1$ なら $c^{1-p}\to0$ なので値は $\frac1{1-p}$ である。$p>1$ なら $c^{1-p}\to\infty$ なので $\frac{1-c^{1-p}}{1-p}=\frac{c^{1-p}-1}{p-1}\to+\infty$、$p=1$ なら $-\log c\to+\infty$ である。なお $p\leq0$ では $x^{-p}$ は $[0,1]$ 上で連続なので、この広義積分は通常の Riemann 積分と一致する(prop-ii-consistent)。
これは Leb Proposition 5.5.2(pp. 214–215、$p>0$ の場合)と同じである。境目の $p=1$ ではどちらの積分も発散する。たとえば $\int_1^\infty\frac{dx}{x^3}=\frac12$、$\int_0^1\frac{dx}{\sqrt[3]{x}}=\frac32$ である。
$\int_0^R e^{-x}\,dx=1-e^{-R}\to1$ なので $\int_0^\infty e^{-x}\,dx=1$ である。$\int_c^d\frac{dx}{1+x^2}=\arctan d-\arctan c$ であり、$\arctan$ は $\pm\infty$ で $\pm\frac\pi2$ に近づくので、$\int_0^\infty\frac{dx}{1+x^2}=\frac\pi2$、$\int_{-\infty}^0\frac{dx}{1+x^2}=\frac\pi2$ となり、両端の広義積分 $\int_{-\infty}^\infty\frac{dx}{1+x^2}=\pi$ が得られる(三角関数、Leb Example 5.5.9、p. 218)。$\log x$ は $0$ の近くで有界でないが、$(x\log x-x)'=\log x$ により $\int_\varepsilon^1\log x\,dx=-1-\varepsilon\log\varepsilon+\varepsilon$ であり、$\varepsilon=e^{-t}$ とおくと $\varepsilon\log\varepsilon=-te^{-t}\to0$($t\to\infty$)なので、$\int_0^1\log x\,dx=-1$ である。また、整数 $n\geq0$ について $\int_0^\infty t^ne^{-t}\,dt=n!$ である(部分積分 の記事の命題「階乗の積分表示」。Γ関数 の $\Gamma(n+1)=n!$ にあたる)。
$f(x)=x$ を $\mathbb{R}$ 上で考える。$\int_0^dx\,dx=\frac{d^2}2\to+\infty$ なので $\int_0^\infty x\,dx$ は発散し、def-ii-two-sided の意味で $\int_{-\infty}^\infty x\,dx$ は発散する。一方、両端を同じ速さで動かすと $\int_{-R}^Rx\,dx=0$ なので $\lim_{R\to\infty}\int_{-R}^Rx\,dx=0$ は存在する。この $f$ は「対称な極限 $\lim_{R\to\infty}\int_{-R}^Rf$ が存在する」を満たすが「広義積分 $\int_{-\infty}^\infty f$ が収束する」を満たさず、前者から後者は導けない。対称な極限は Cauchy の主値と呼ばれ、広義積分とは別の概念である。$\int_{-1}^1\frac{dx}{x}$ も、$0$ の両側で $\pm\infty$ に発散する広義積分であるが、$\varepsilon<|x|\leq1$ の範囲の積分は $0$ である。広義積分が収束するときは、対称な極限も存在して値は一致する(Leb Proposition 5.5.10、Leb Example 5.5.11 も同じ注意をしている)。
$\int_2^\infty\frac{2\,dx}{x^2-1}$ は収束する。実際 $\frac2{x^2-1}=\frac1{x-1}-\frac1{x+1}$ なので $\int_2^R\frac{2\,dx}{x^2-1}=\log\frac{R-1}{R+1}-\log\frac13\to\log3=1.0986\ldots$ である。しかし被積分関数を 2 つに分けて $\int_2^\infty\frac{dx}{x-1}-\int_2^\infty\frac{dx}{x+1}$ と書くと、どちらの広義積分も $+\infty$ に発散するので意味をもたない。有限区間の上では成り立つ $\int(f+g)=\int f+\int g$ は、広義積分では $\int f$ と $\int g$ がともに収束するときにしか使えない(Leb Example 5.5.7、pp. 217–218)。
整数 $n\geq2$ ごとに、区間 $[n-2^{-n},\,n+2^{-n}]$ の上で、両端で $0$、中点 $n$ で $1$ をとる折れ線の「山」を立て、それ以外では $0$ とする連続関数を $f\colon[1,\infty)\to\mathbb{R}$ とする($2^{-n}\leq\frac14$ なので山どうしは重ならず、すべて $[1,\infty)$ に入る)。$n$ 番目の山の面積は底辺 $2\cdot2^{-n}$、高さ $1$ の三角形の面積 $2^{-n}$ なので、どの $c$ についても $\int_1^cf\leq\sum_{n\geq2}2^{-n}=\frac12$ である。$f\geq0$ なので prop-ii-nonnegative により $\int_1^\infty f$ は収束する。しかし $f(n)=1$ なので、$x\to\infty$ で $f(x)\to0$ とはならない。この $f$ は「広義積分 $\int_1^\infty f$ が収束する」を満たすが「$f(x)\to0$($x\to\infty$)」を満たさず、級数の場合の「収束するなら項は $0$ に近づく」(級数 の記事の命題「収束する級数の項は0に近づく」)の類似は広義積分では成り立たない。
条件を 1 つ外した反例を表にまとめる。3 行目の確認は ex-ii-sinc に、5 行目は thm-ii-p-test の証明にあり、ほかの行の確認は上の反例の箱にある。
| 外す条件 | 反例 | 成り立たなくなること |
|---|---|---|
| 両端の極限を独立にとること(def-ii-two-sided) | $\mathbb{R}$ 上の $f(x)=x$(ex-ii-principal-value) | 対称な極限が存在すれば広義積分が収束すること |
| $\int f$ と $\int g$ がともに収束 | $[2,\infty)$ 上の $\frac1{x-1}$ と $\frac1{x+1}$(ex-ii-split-divergent) | $\int(f-g)=\int f-\int g$ |
| $\lvert f\rvert\leq g$ となる収束する $g$ がある(thm-ii-comparison) | $[1,\infty)$ 上の $\frac{\sin x}{x}$(ex-ii-sinc) | $\int\lvert f\rvert$ の収束($\int f$ は収束するが $\int\lvert f\rvert=+\infty$) |
| $f$ が単調減少(prop-ii-integral-test) | ex-ii-spikes の山の関数 | $\int_1^\infty f$ の収束と $\sum f(n)$ の収束の同値(積分は収束するが $f(n)=1$($n\geq2$)で級数は発散) |
| $p>1$(thm-ii-p-test) | $p=1$ の $\int_1^\infty\frac{dx}{x}$ | 収束すること |
$a< b$ を実数とし、$f\colon[a,b]\to\mathbb{R}$ を Riemann 積分可能とする。このとき
$$
\lim_{c\to b-0}\int_a^cf=\int_a^bf,\qquad\lim_{c\to a+0}\int_c^bf=\int_a^bf
$$
が成り立つ。すなわち、$[a,b)$ や $(a,b]$ 上の広義積分として考えても値は通常の Riemann 積分と同じである。
$f$ は有界なので、ある $K$ で $|f(x)|\leq K$ である。$F(x):=\int_a^xf$ とおくと、微分積分学の基本定理 の記事の定理「積分の上端についての微分」の 1 により $|F(x)-F(y)|\leq K|x-y|$ なので、$F$ は $b$ で連続であり、$\lim_{c\to b-0}F(c)=F(b)=\int_a^bf$ である。また Riemann積分 の記事の定理「区間についての加法性」により $\int_c^bf=F(b)-F(c)$ であり、$c\to a+0$ で $F(c)\to F(a)=0$ なので第 2 式を得る。
def-ii-two-sided の状況で、$m,m'\in(a,b)$ とする。$\int_a^mf$ と $\int_m^bf$ がともに収束することと、$\int_a^{m'}f$ と $\int_{m'}^bf$ がともに収束することは同値であり、そのとき $\int_a^mf+\int_m^bf=\int_a^{m'}f+\int_{m'}^bf$ である。
$m< m'$ としてよい。$K:=\int_m^{m'}f$ とおく。$a< c< m$ なら、Riemann積分 の記事の定理「区間についての加法性」により $\int_c^{m'}f=\int_c^mf+K$ なので、$c\to a+0$ の極限について、$\int_a^mf$ が収束することと $\int_a^{m'}f$ が収束することは同値で、そのとき $\int_a^{m'}f=\int_a^mf+K$ である。同様に $m'< d< b$ なら $\int_m^df=K+\int_{m'}^df$ なので、$\int_m^bf$ と $\int_{m'}^bf$ の収束は同値で、$\int_m^bf=K+\int_{m'}^bf$ である。したがって両辺の和は $\int_a^mf+K+\int_{m'}^bf$ に等しい。
広義積分の収束は、関数 $F(c):=\int_a^cf$ の $c\to b-0$ での極限の存在である。極限の値を知らなくても収束を判定できる形に言い換えておく。
$a< b\leq\infty$ とし、$F\colon[a,b)\to\mathbb{R}$ とする。$\lim_{c\to b-0}F(c)$ が実数として存在するための必要十分条件は、任意の $\varepsilon>0$ に対して $c_0\in[a,b)$ が存在し、$c_0< c< b$、$c_0< c'< b$ を満たすすべての $c,c'$ について $|F(c)-F(c')|<\varepsilon$ となることである。
極限 $L$ が存在するとき、$\varepsilon>0$ に対して $c_0$ を $c_0< c< b$ なら $|F(c)-L|<\varepsilon/2$ となるようにとれば、$|F(c)-F(c')|\leq|F(c)-L|+|L-F(c')|<\varepsilon$ である。
逆に条件が成り立つとする。$b$ に近づく数列 $c_n\in[a,b)$(たとえば $b<\infty$ なら $c_n:=b-(b-a)/(n+1)$、$b=\infty$ なら $c_n:=a+n$)をとる。$\varepsilon>0$ と条件の $c_0$ に対し、十分大きな $n,n'$ では $c_n,c_{n'}>c_0$ なので $|F(c_n)-F(c_{n'})|<\varepsilon$ であり、$(F(c_n))$ は Cauchy列 である。実数の Cauchy 列は収束する(Cauchy列 の記事の定理「実数列の Cauchy判定法」)ので、その極限を $L$ とする。$\varepsilon>0$ と $c_0$ をとり、$c_n>c_0$ かつ $|F(c_n)-L|<\varepsilon$ となる $n$ を 1 つ選ぶと、$c_0< c< b$ を満たすすべての $c$ で $|F(c)-L|\leq|F(c)-F(c_n)|+|F(c_n)-L|<2\varepsilon$ となる。よって $\lim_{c\to b-0}F(c)=L$ である。
$f\colon[a,b)\to\mathbb{R}$ はすべての $x$ で $f(x)\geq0$ を満たし、$a< c< b$ を満たす各 $c$ について $[a,c]$ 上で Riemann 積分可能とする。$\int_a^bf$ が収束するための必要十分条件は、$F(c):=\int_a^cf$ が $c\in[a,b)$ について上に有界であることであり、そのとき $\int_a^bf=\sup_{a\leq c< b}F(c)$ である。有界でなければ $\int_a^bf=+\infty$ である。
$c< c'$ なら $F(c')-F(c)=\int_c^{c'}f\geq0$ なので $F$ は単調増加である。$F$ が上に有界なら $S:=\sup F$ は実数であり(上限と下限)、$\varepsilon>0$ に対して $F(c_0)>S-\varepsilon$ となる $c_0$ があって、$c_0\leq c< b$ なら $S-\varepsilon< F(c_0)\leq F(c)\leq S$ となる。よって $F(c)\to S$ である。収束すれば、$c\to b-0$ の極限 $L$ に対し十分 $b$ に近い $c$ で $F(c)\leq L+1$、それ以外の $c$ でも単調性から $F(c)\leq L+1$ なので、$F$ は上に有界である。有界でなければ、任意の $K$ に対して $F(c_0)>K$ となる $c_0$ があり、単調性から $c\geq c_0$ で $F(c)>K$ なので $F(c)\to+\infty$ である。
したがって非負の関数の広義積分は、収束するか $+\infty$ に発散するかのどちらかである(Leb Proposition 5.5.4、pp. 215–216)。
$f,g\colon[a,b)\to\mathbb{R}$ は、$a< c< b$ を満たす各 $c$ について $[a,c]$ 上で Riemann 積分可能で、すべての $x\in[a,b)$ で $|f(x)|\leq g(x)$ を満たすとする。
1:$F(c):=\int_a^cf$、$G(c):=\int_a^cg$ とおく。$a\leq c< c'< b$ について、Riemann積分 の記事の命題「積分の単調性と絶対値の評価」により
$$
|F(c')-F(c)|=\left|\int_c^{c'}f\right|\leq\int_c^{c'}|f|\leq\int_c^{c'}g=G(c')-G(c)
$$
である。$G$ は $c\to b-0$ で収束するので、lem-ii-cauchy の条件を満たす。上の不等式から $F$ も同じ条件を満たし、lem-ii-cauchy により $F(c)$ は収束する。また $|F(c)|\leq\int_a^c|f|\leq G(c)$ で $c\to b-0$ とすれば不等式を得る。2 は 1 の対偶である。
Leb Proposition 5.5.5(pp. 216–217)も同じ主張を点列を使って証明している。左の端での広義積分や両端での広義積分についても、各端ごとに同じ判定法が成り立つ。たとえば $x\geq1$ で $e^{-x^2}\leq e^{-x}$($x^2\geq x$ だから)であり $\int_1^\infty e^{-x}\,dx=e^{-1}$ は収束するので、$\int_1^\infty e^{-x^2}\,dx$ は収束する。$e^{-x^2}$ は偶関数で $[-1,1]$ 上で連続なので、$\int_{-\infty}^\infty e^{-x^2}\,dx$ も収束する。その値が $\sqrt\pi$ であることは、平面の積分を極座標で計算して示される(極座標 の記事で扱う)。
広義積分 $\int_a^b|f|$ が収束するとき、$\int_a^bf$ は絶対収束するという($f$ が $[a,c]$ 上で Riemann 積分可能なら $|f|$ もそうである。Riemann積分 の記事の命題「積分の単調性と絶対値の評価」)。$\int_a^bf$ が収束するが絶対収束しないとき、条件収束するという。
広義積分 $\int_a^bf$ が絶対収束するならば収束し、$\left|\int_a^bf\right|\leq\int_a^b|f|$ である。
thm-ii-comparison で $g:=|f|$ とすればよい。
$\int_1^\infty\frac{\sin x}{x}\,dx$ は収束する。実際、$[1,R]$ で 部分積分 の記事の定理「部分積分の公式」を $F(x)=\frac1x$、$G(x)=-\cos x$ に使うと
$$
\int_1^R\frac{\sin x}{x}\,dx=\cos1-\frac{\cos R}{R}-\int_1^R\frac{\cos x}{x^2}\,dx
$$
となる。$R\to\infty$ で $\frac{\cos R}{R}\to0$ であり、$\left|\frac{\cos x}{x^2}\right|\leq\frac1{x^2}$ と thm-ii-p-test と thm-ii-comparison により最後の積分も収束するので、左辺は $R\to\infty$ で収束する(値は $0.6247\ldots$)。
一方、絶対収束はしない。正の整数 $k$ について、区間 $[k\pi,(k+1)\pi]$ では $\frac1x\geq\frac1{(k+1)\pi}$、$\int_{k\pi}^{(k+1)\pi}|\sin x|\,dx=\int_0^\pi\sin t\,dt=2$ なので
$$
\int_1^{(N+1)\pi}\frac{|\sin x|}{x}\,dx\geq\sum_{k=1}^{N}\int_{k\pi}^{(k+1)\pi}\frac{|\sin x|}{x}\,dx\geq\frac2\pi\sum_{k=1}^{N}\frac1{k+1}
$$
であり、調和級数 が発散するので右辺は $N\to\infty$ で $+\infty$ に近づく。prop-ii-nonnegative により $\int_1^\infty\frac{|\sin x|}{x}\,dx=+\infty$ である。したがって $\int_1^\infty\frac{\sin x}{x}\,dx$ は条件収束する。$\frac{\sin x}{x}$ は $x=0$ で値 $1$ を与えれば $[0,1]$ 上で連続なので、$\int_0^\infty\frac{\sin x}{x}\,dx$ も収束し、その値は $\frac\pi2$ である(証明は Cauchyの主値 の記事の系「Dirichlet の正弦積分」にある)。Leb Example 5.5.12(pp. 220–222)は、この積分の収束を別の方法(区間ごとの評価)で示している。
$k$ を整数、$f\colon[k,\infty)\to\mathbb{R}$ を非負で単調減少な関数とする。級数 $\sum_{n=k}^\infty f(n)$ が収束するための必要十分条件は、広義積分 $\int_k^\infty f$ が収束することであり、そのとき
$$
\int_k^\infty f\leq\sum_{n=k}^\infty f(n)\leq f(k)+\int_k^\infty f
$$
が成り立つ。
単調な関数は有界閉区間上で Riemann 積分可能である(Riemann積分 の記事の命題「単調関数の可積分性」)。$n\geq k$ と $x\in[n,n+1]$ について $f(n+1)\leq f(x)\leq f(n)$ なので、$f(n+1)\leq\int_n^{n+1}f\leq f(n)$ である。これを $n=k,\dots,N-1$ について足すと、区間についての加法性により
$$
\sum_{n=k+1}^{N}f(n)\leq\int_k^Nf\leq\sum_{n=k}^{N-1}f(n)\qquad(N>k)
$$
となる。部分和を $S_N:=\sum_{n=k}^{N}f(n)$ とおく。
$\int_k^\infty f=I$ が収束するなら、左の不等式と prop-ii-nonnegative から $S_N\leq f(k)+\int_k^Nf\leq f(k)+I$ である。正項級数の部分和が有界なので級数は収束し(級数 の記事の命題「正項級数の収束と部分和の有界性」)、和は $f(k)+I$ 以下である。逆に級数が和 $S$ に収束するなら、右の不等式から $\int_k^Nf\leq S_{N-1}\leq S$ であり、$c\geq k$ について $\int_k^cf\leq\int_k^{N}f\leq S$($N\geq c$ となる整数)なので、prop-ii-nonnegative により $\int_k^\infty f$ は収束して $I\leq S$ である。
同じ主張は Leb Proposition 5.5.13(pp. 222–223)にある。thm-ii-p-test と合わせると、$p>0$ について $\sum_{n\geq1}\frac1{n^p}$ が収束するのは $p>1$ のときに限る($p\leq0$ では項が $0$ に近づかないので発散する)。有限和の不等式からは評価も得られる。たとえば $f(x)=1/x$ では $\log(N+1)\leq1+\frac12+\cdots+\frac1N\leq1+\log N$ であり、$N=100$ では $4.615\ldots\leq5.187\ldots\leq5.605\ldots$ である(調和級数)。$f(x)=1/x^2$ では $1\leq\sum_{n\geq1}\frac1{n^2}\leq2$ であり、実際の値は $\frac{\pi^2}6=1.6449\ldots$ である(Basel問題)。また $x\log x$ は $x\geq2$ で増加するので $f(x)=\frac1{x\log x}$ は単調減少であり、$\int_2^R\frac{dx}{x\log x}=\log\log R-\log\log2\to\infty$ から $\sum_{n\geq2}\frac1{n\log n}$ は発散する。
Lebesgue積分では、関数の絶対値の積分が有限であることを可積分性の条件にする。そのため、条件収束する $\int_0^\infty\frac{\sin x}{x}\,dx$ は広義積分としては収束するが、$(0,\infty)$ 上の Lebesgue 積分としては定義されない(絶対収束 の記事の注意「積分との類似」も同じ点を述べている)。また、多変数の関数についても、有界な領域での積分の極限として広義の重積分が同様に定義される。
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