道(位相)(path)とは、位相空間 $X$ の中を点が連続に動く様子を表す連続写像 $\gamma\colon[0,1]\to X$ のことで、$\gamma(0)$ を始点、$\gamma(1)$ を終点といい、始点と終点が一致する道をループという。逆の道や、終点と始点が一致する二つの道をつないだ道の積が定まり、ループは円周からの連続写像と同じものである。どの道も開被覆に合わせて有限個の小片に分けられ、$\mathbb{R}^n$ の開集合の中の道は端点を止めたまま折れ線の道に変形できる。道は弧状連結性・基本群・被覆空間の理論の土台であり、端点を止めた連続変形の類が基本群をつくる。
位相空間の中を点が時間とともに連続に動いていく様子を、そのまま写像として捉えたものが 道 である。時刻を閉区間 $[0,1]$ でとり、各時刻 $t$ に点 $\gamma(t)$ を対応させる連続写像 $\gamma$ を考える。道を使うと「二点がつながっている」「ループが一周する」「変形して縮められる」といった直観を正確に述べられ、弧状連結空間・基本群・被覆空間の理論はすべて道の上に組み立てられている。
この記事では、道の定義と基本的な演算(逆の道・道の積・径数の取り替え)を述べ、道について繰り返し使われる三つの事実を証明する。ループは円周からの写像と同じものであること(prop-path-top-loop-circle)、道は開被覆に合わせて有限個の小片に分けられること(thm-path-top-subdivision)、$\mathbb{R}^n$ の開集合の中の道は端点を止めたまま折れ線に変形できること(thm-path-top-polygonal)である。あわせて、Hausdorff でない空間では道が「一瞬で跳ぶ」ことがある例(prop-path-top-jump)も扱う。グラフ理論の「道」は別の概念であり、道(グラフ) で扱う。
以下、$I:=[0,1]$ は実数直線 $\mathbb{R}$ の閉区間に相対位相を入れた空間とする。
道は写像そのものであり、像 $\gamma(I)\subset X$ のことではない。同じ像をもつ道でも、たどる向きや速さが違えば別の道である。
$\gamma,\delta\colon I\to X$ を道とする。
道の積の定義の二つの式は、$s=1/2$ でどちらも $\gamma(1)=\delta(0)$ を与えるので、写像として矛盾なく定まる。
$\gamma$ を $x$ から $y$ への道、$\delta$ を $y$ から $z$ への道とする。
1・3・4:$s\mapsto1-s$ は $I$ から $I$ への連続写像なので、いずれも連続写像の合成として連続であり、端点の値は定義から直ちに分かる。
2:連続性を閉集合の逆像で確かめる。$F\subset X$ を閉集合とすると
$$
(\gamma\cdot\delta)^{-1}(F)=\{s\in[0,1/2]\mid \gamma(2s)\in F\}\cup\{s\in[1/2,1]\mid \delta(2s-1)\in F\}
$$
である。右辺の第 1 項は、連続写像 $[0,1/2]\to I$、$s\mapsto2s$ による閉集合 $\gamma^{-1}(F)$ の逆像なので $[0,1/2]$ の閉集合であり、$[0,1/2]$ は $I$ の閉集合なので $I$ の閉集合でもある。第 2 項も同様に $I$ の閉集合である。よって逆像は閉集合であり、$\gamma\cdot\delta$ は連続である。端点は $(\gamma\cdot\delta)(0)=\gamma(0)=x$、$(\gamma\cdot\delta)(1)=\delta(1)=z$ である。$\square$
2 の証明は、閉集合二つに分けた定義域の上で連続な写像が境目で一致すれば全体で連続になるという貼り合わせの補題(Mun00 §18 Theorem 18.3、p. 108)の特別な場合である。
道の議論では、端点を止めたまま道を連続に変形することが基本になる。$x$ から $y$ への二つの道 $\gamma_0,\gamma_1$ に対し、連続写像 $H\colon I\times I\to X$ で $H(s,0)=\gamma_0(s)$、$H(s,1)=\gamma_1(s)$、$H(0,u)=x$、$H(1,u)=y$ を満たすものを道のホモトピーといい、これがあるとき $\gamma_0\simeq\gamma_1$ と書く(基本群の記事の定義「道のホモトピー」)。$\simeq$ は同値関係である。
定義域を一般の閉区間 $[a,b]$($a< b$)にとる流儀もある(Mun00 §24、p. 155)。$[a,b]$ 上の道 $\gamma$ は、$\gamma(a+(b-a)t)$ とおけば $[0,1]$ 上の道になり、端点も像も変わらないので、二点を結ぶ道があるかどうかという問いには違いが出ない。本記事は Hat02 §1.1(p. 25)と同じく $[0,1]$ を使う。微分幾何学では滑らかさ(区分的に滑らかなど)を課した写像を曲線と呼ぶことが多い。また、$[0,1]$ からその像への同相写像になっている道(埋め込み)を弧(arc)といい、弧状連結空間の記事の定義「弧連結性」で扱う。
道は「点の動き」の記録である。時刻 $t$ の位置が $\gamma(t)$ で、連続性は「瞬間移動しない」ことを表す。ただし連続性は位相で決まるので、Hausdorff でない空間では直観に反して、一点の時刻だけで別の点へ移る写像が連続になることがある(prop-path-top-jump)。逆に、正方形を塗りつぶす道もあり(ex-path-top-peano)、道の像は「細い線」とは限らない。道の価値は像の形よりも、端点を止めた連続変形(道のホモトピー)の下での振る舞いにあり、ループの変形類が基本群を、道の持ち上げが被覆空間の理論をつくる。
$\mathbb{R}^n$ の二点 $x,y$ に対し、$\gamma(t):=(1-t)x+ty$ は $x$ から $y$ への道であり、像は線分である。$\mathbb{R}^n$ の部分集合 $C$ が凸(凸集合)なら、$C$ の二点を結ぶこの道は $C$ の中にあり、$C$ に相対位相を入れた空間の道である。ノルム空間でも同じ式で道が得られる。
$e\colon I\to S^1$、$e(t):=(\cos2\pi t,\sin2\pi t)$ は単位円周 $S^1$ の点 $(1,0)$ を基点とするループで、円周を反時計回りに一周する。整数 $n$ について $e_n(t):=(\cos2\pi nt,\sin2\pi nt)$ は $n$ 周する($n<0$ なら時計回り、$n=0$ なら定値道)ループである。この例では道の積が写像として $e\cdot e=e_2$ と等しい:$0\le s\le1/2$ では $e(2s)=(\cos4\pi s,\sin4\pi s)$、$1/2\le s\le1$ では $e(2s-1)=(\cos(4\pi s-2\pi),\sin(4\pi s-2\pi))=(\cos4\pi s,\sin4\pi s)$ である。一般には、$\gamma$ を二回たどる道を別の速さで径数づけたものは $\gamma\cdot\gamma$ と写像として異なり、道のホモトピーで結ばれるだけである(基本群の記事の補題「径数の取り替え」)。
正方形 $I^2=I\times I$ への道 $f\colon I\to I^2$ で、像が $I^2$ 全体になるもの(全射な道)が存在する(Peano 曲線。Mun00 §44 Theorem 44.1、p. 272。この記事では証明しない)。$f$ は $(0,0)$ のような点から出発して正方形のすべての点を通る。道の像は、連続写像によるコンパクト連結空間の像としてコンパクトかつ連結であるが、それ以上に「1 次元の線」であるとは限らない。
ループは始点と終点が同じ道なので、$I$ の両端をつないだ円周からの写像と見なせる。ex-path-top-circle-loop の $e\colon I\to S^1$ を使う。
$X$ を位相空間、$x\in X$ とする。$x$ を基点とするループ $\gamma$ に対し、連続写像 $\ell\colon S^1\to X$ で $\ell\circ e=\gamma$ を満たすものがただ一つ存在し、$\ell(1,0)=x$ である。逆に、$\ell(1,0)=x$ を満たす連続写像 $\ell\colon S^1\to X$ に対し $\ell\circ e$ は $x$ を基点とするループである。したがって $\gamma\mapsto\ell$ は、$x$ を基点とするループ全体と、$(1,0)$ を $x$ に写す連続写像 $S^1\to X$ 全体との間の全単射である。
$e(t)=e(t')$ となるのは、$\cos$ と $\sin$ の周期性により $t-t'\in\mathbb{Z}$ のとき、すなわち $t,t'\in I$ では $t=t'$ または $\{t,t'\}=\{0,1\}$ のときに限る。
一意性:$e$ は全射なので、$\ell\circ e=\gamma$ から $\ell$ の値はすべて決まる。
存在:$z\in S^1$ に対し $z=e(t)$ となる $t$ をとり $\ell(z):=\gamma(t)$ とおく。$t$ の取り方の違いは $\{0,1\}$ の取り替えだけで、$\gamma(0)=\gamma(1)$ なので $\ell$ は矛盾なく定まり、$\ell\circ e=\gamma$、$\ell(1,0)=\gamma(0)=x$ である。$\ell$ が連続であることを示す。$F\subset X$ を閉集合とすると、$e$ が全射であることから
$$
\ell^{-1}(F)=\{e(t)\mid t\in I,\ \gamma(t)\in F\}=e\bigl(\gamma^{-1}(F)\bigr)
$$
である。$\gamma^{-1}(F)$ はコンパクト空間 $I$ の閉集合なのでコンパクトであり、その連続像 $e(\gamma^{-1}(F))$ は $S^1$ のコンパクト集合である。$S^1$ はHausdorff空間なので、コンパクト集合は閉集合である。よって $\ell^{-1}(F)$ は閉であり、$\ell$ は連続である。
逆向きの主張は、連続写像の合成 $\ell\circ e$ が $\ell(e(0))=\ell(1,0)=x$ と $\ell(e(1))=x$ を満たすことから従う。二つの対応 $\gamma\mapsto\ell$ と $\ell\mapsto\ell\circ e$ は、一意性により互いに逆である。$\square$
同じ論法を $e\times\mathrm{id}\colon I\times I\to S^1\times I$ に当てると、ループの間の道のホモトピーは、基点を止めた $S^1\times I\to X$ のホモトピーと同じものであることが分かる。このため、基点 $x$ の基本群 $\pi_1(X,x)$ を、基点を保つ写像 $S^1\to X$ のホモトピー類の集合と見ることもできる。
道をいくつかの短い道に分け、各部分が小さい開集合に入るようにすることは、被覆空間の道の持ち上げ、Seifert–van Kampenの定理、折れ線への変形(thm-path-top-polygonal)などで繰り返し使われる。
$\gamma\colon I\to X$ を道、$\mathcal{U}$ を $X$ の開被覆とする。このとき分点 $0=t_0< t_1<\dots< t_n=1$ で、各 $i=1,\dots,n$ について $\gamma([t_{i-1},t_i])$ が $\mathcal{U}$ のある成員に含まれるものが存在する。
$s\in I$ について、分点 $0=t_0<\dots< t_m=s$ で各 $\gamma([t_{i-1},t_i])$ が $\mathcal{U}$ のある成員に含まれるものがあるとき($s=0$ では $m=0$ とし、分点は $t_0=0$ だけとする)、$s$ を分けられる時刻と呼ぶ。$S$ を分けられる時刻の全体とし、$\sigma:=\sup S$ とおく($0\in S$ なので $S\neq\emptyset$)。
$\gamma(\sigma)$ を含む $U\in\mathcal{U}$ をとる。$\gamma$ は $\sigma$ で連続で、$\gamma^{-1}(U)$ は $\sigma$ を含む $I$ の開集合なので、$\delta>0$ を $I\cap(\sigma-\delta,\sigma+\delta)\subset\gamma^{-1}(U)$ となるようにとれる。$\sigma$ は上限なので、$s\in S$ で $s>\sigma-\delta$ となるもの($\sigma=0$ なら $s=0$)がある。$s':=\min\{\sigma+\delta/2,\,1\}$ とおくと $s\le\sigma< s'$ または $s'=1=\sigma$ であり、いずれにせよ $[s,s']\subset I\cap(\sigma-\delta,\sigma+\delta)$ なので $\gamma([s,s'])\subset U$ である。$s$ までの分点に $s'$ を付け加えれば($s=s'$ のときは何も付け加えない)、$s'$ も分けられる時刻である。$\sigma<1$ なら $s'>\sigma$ となり $\sigma$ が上限であることに反するので、$\sigma=1$ であり、このとき $s'=1\in S$ である。これが主張である。$\square$
$X$ が距離空間なら、Lebesgue数の補題(Mun00 §27 Lemma 27.5、p. 175)を開被覆 $\{\gamma^{-1}(U)\mid U\in\mathcal{U}\}$ に当てても同じ結論が得られる。上の証明は距離を使わないので、任意の位相空間で使える。ホモトピー $H\colon I\times I\to X$ についても、$I\times I$ のコンパクト性と Lebesgue 数の補題により、正方形を格子に細かく分けて、各小正方形の像が $\mathcal{U}$ のある成員に入るようにできる。
$\mathbb{R}^n$ の点 $p_0,p_1,\dots,p_m$ と分点 $0=t_0<\dots< t_m=1$ に対し、各 $[t_{i-1},t_i]$ の上で $p_{i-1}$ から $p_i$ へ一定の速さで進む道
$$
\sigma(s):=p_{i-1}+\frac{s-t_{i-1}}{t_i-t_{i-1}}\,(p_i-p_{i-1})\qquad(t_{i-1}\le s\le t_i)
$$
を折れ線の道という。隣り合う区間の式は分点で値 $p_i$ を共有するので、prop-path-top-operations の 2 の証明と同じ貼り合わせ(有限個の閉区間への分割)により $\sigma$ は連続である。
$U$ を $\mathbb{R}^n$ の開集合とし、$\gamma\colon I\to U$ を $x$ から $y$ への道とする。このとき $U$ の中の $x$ から $y$ への折れ線の道 $\sigma$ で、$U$ の中で $\gamma\simeq\sigma$(端点を止めたホモトピー)となるものが存在する。とくに、$U$ の二点が $U$ の中の道で結べるなら、$U$ の中の折れ線の道でも結べる。
$U$ は開集合なので、各点 $p\in U$ について $p$ を中心とする開球 $B_p\subset U$ がとれる。$\{B_p\}_{p\in U}$ は $U$ の開被覆なので、thm-path-top-subdivision を $X=U$ に当てて、分点 $0=t_0<\dots< t_m=1$ と開球 $B_1,\dots,B_m\subset U$ で $\gamma([t_{i-1},t_i])\subset B_i$ となるものをとる。$p_i:=\gamma(t_i)$ として、上の式で折れ線の道 $\sigma$ を定める。$\sigma(0)=p_0=x$、$\sigma(1)=p_m=y$ である。
$s\in[t_{i-1},t_i]$ とする。$p_{i-1},p_i\in B_i$ で、開球は凸なので $\sigma(s)\in B_i$ であり、$\gamma(s)\in B_i$ でもある。そこで
$$
H(s,u):=(1-u)\,\gamma(s)+u\,\sigma(s)\qquad(s,u\in I)
$$
とおくと、$H(s,u)$ は $\gamma(s)$ と $\sigma(s)$ を結ぶ線分の上にあり、$B_i$ の凸性により $B_i\subset U$ に属する。$H$ は連続な $\gamma,\sigma$ から和とスカラー倍で作られるので連続で、$H(s,0)=\gamma(s)$、$H(s,1)=\sigma(s)$、$H(0,u)=x$、$H(1,u)=y$ を満たす。よって $H$ は $U$ の中の道のホモトピーである。$\square$
$\mathbb{R}^n$ の開集合は局所弧状連結空間なので、連結な開集合は弧状連結である(弧状連結空間の記事の定理「連結性からの回復」)。thm-path-top-polygonal と合わせると、$\mathbb{R}^n$ の連結な開集合の二点は折れ線の道で結べる。複素解析で領域(連結開集合)の中の積分路を折れ線にとり替えてよいのは、このためである。開集合という仮定は外せない(ex-path-top-counterexamples の 3 行目)。
Hausdorff でない空間では、ほとんどずっと一点にとどまり最後の瞬間だけ別の点に移る写像が、道になることがある。
$X$ を位相空間、$x,y\in X$ とし、$\gamma\colon I\to X$ を $0\le t<1$ で $\gamma(t)=y$、$\gamma(1)=x$ と定める。$\gamma$ が連続であるための必要十分条件は、$x$ が $\{y\}$ の閉包 $\overline{\{y\}}$ に属すること、すなわち $x$ を含むすべての開集合が $y$ を含むことである。とくに $X$ が $T_1$ 空間(一点集合が閉集合)なら、$\gamma$ が連続であるのは $x=y$ のときに限る。
$O\subset X$ を開集合とする。逆像 $\gamma^{-1}(O)$ は、$x,y$ がともに $O$ に属すれば $I$、ともに属さなければ $\emptyset$、$y$ だけが属せば $[0,1)$、$x$ だけが属せば $\{1\}$ である。前の三つは $I$ の開集合で、$\{1\}$ は $I$ の開集合でない。よって $\gamma$ が連続であることは、「$x\in O$ かつ $y\notin O$」となる開集合 $O$ がないこと、すなわち $x\in\overline{\{y\}}$ と同値である。$T_1$ 空間では $\overline{\{y\}}=\{y\}$ なので、これは $x=y$ を意味する。$\square$
Sierpinski空間 $S=\{0,1\}$(開集合は $\emptyset,\{1\},S$)では $\overline{\{1\}}=S\ni0$ なので、$t<1$ で $1$、$t=1$ で $0$ をとる写像は $1$ から $0$ への道である。その逆の道で $0$ から $1$ へも行けるので、$S$ は弧状連結である。一般に写像 $\gamma\colon I\to S$ が連続であることは、$\gamma^{-1}(\{1\})$ が $I$ の開集合であることと同値である。たとえば $0\le t\le1/2$ で $0$、$t>1/2$ で $1$ をとる写像は道である(逆像 $(1/2,1]$ は開)が、$0\le t\le1/2$ で $1$、$t>1/2$ で $0$ をとる写像は道でない(逆像 $[0,1/2]$ は開でない)。「値 $1$ をとる時刻の集合が開」という条件だけが課され、$0$ をとる時刻の集合は閉集合でありさえすればよい。
有限個の点からなる位相空間では、prop-path-top-jump によって連結性と弧状連結性が一致する。
$X$ を有限集合上の位相空間とし、$x\in X$ に対し $U_x$ を $x$ を含む開集合すべての共通部分とする。
1:$X$ の開集合は有限個しかないので、$U_x$ は有限個の開集合の共通部分として開であり、$x$ を含むどの開集合にも含まれる。$y\in U_x$ とすると、$x$ を含むどの開集合も $U_x$ を含むので $y$ を含み、$x\in\overline{\{y\}}$ である。prop-path-top-jump により、$t<1$ で $y$、$t=1$ で $x$ をとる道が $y$ から $x$ への道になり、その像 $\{x,y\}$ は $U_x$ に含まれる。$U_x$ の二点はどちらも $x$ と結べるので、逆の道と道の積(prop-path-top-operations)で互いに結べる。
2:$x$ と道で結べる点全体($x$ の弧状連結空間の意味の弧状連結成分)を $P_x$ とすると、1 により各点 $z\in P_x$ について $U_z\subset P_z=P_x$ なので $P_x$ は開集合である。弧状連結成分は $X$ を互いに交わらない開集合に分けるので、$P_x$ の補集合も開である。$X$ は連結で $P_x\ni x$ は空でないので $P_x=X$ である。$\square$
道全体の集合 $C(I,X)$ には、コンパクト開位相を入れて位相空間として扱う(コンパクト開位相の記事の例「ループ空間と道の空間」)。この位相では、端点への写像 $\gamma\mapsto(\gamma(0),\gamma(1))$ は連続であり(同じ記事の命題「評価写像の連続性」)、$C(I,X)$ の中の道は $X$ の中のホモトピー $I\times I\to X$ と一対一に対応する(同じ記事の系「ホモトピーと写像空間の道」)。とくに、$x$ を基点とするループ全体の空間がループ空間であり、ホモトピー論の基本的な対象になる。
| 外す条件 | 反例 | 成り立たなくなること |
|---|---|---|
| 道の積の条件 $\gamma(1)=\delta(0)$ | $\mathbb{R}$ の定値道 $c_0$ と $c_1$ | 二つの式を貼り合わせた写像が連続であること |
| 道のホモトピーで割ること | $\mathbb{R}$ の三つの平行移動の道 | 道の積の結合律が写像の等式として成り立つこと |
| $U$ が開集合であること(thm-path-top-polygonal) | 単位円周 $S^1\subset\mathbb{R}^2$ | 道で結べる二点が折れ線の道でも結べること |
| $T_1$ 分離公理(prop-path-top-jump) | Sierpinski 空間 | 一点の時刻だけで値の変わる写像が連続でないこと |
| 道の単射性 | Peano 曲線(ex-path-top-peano) | Hausdorff 空間の中の道の像が $I$ と同相であること |
1 行目:$c_0,c_1$ はそれぞれ道(満たす性質)だが、$c_0(1)=0\neq1=c_1(0)$ である(満たさない条件)。積の定義式は $s<1/2$ で $0$、$s>1/2$ で $1$ を与え、$s=1/2$ でどちらの値を選んでも、中間値の定理に反して値 $1/2$ をとらずに $0$ から $1$ へ移る写像になるので連続でない。
2 行目:$\gamma(s):=s$、$\delta(s):=1+s$、$\varepsilon(s):=2+s$ はつなげられる道である。定義式から $((\gamma\cdot\delta)\cdot\varepsilon)(1/4)=(\gamma\cdot\delta)(1/2)=\gamma(1)=1$、$(\gamma\cdot(\delta\cdot\varepsilon))(1/4)=\gamma(1/2)=1/2$ なので、二つの道は写像として異なる。成り立つのは道のホモトピー $(\gamma\cdot\delta)\cdot\varepsilon\simeq\gamma\cdot(\delta\cdot\varepsilon)$ だけである(基本群の記事の定理「基本亜群の公理と基本群の群構造」)。
3 行目:$S^1$ は弧状連結である(ex-path-top-circle-loop の $e$ を使い、二点 $e(a)$、$e(b)$ を道 $t\mapsto e((1-t)a+tb)$ で結べる)が、$\mathbb{R}^2$ の開集合でない。$S^1$ は長さが正の線分を含まない。実際 $a\neq b$ が $S^1$ の点なら、中点 $m=(a+b)/2$ について
$$
\lvert m\rvert^2=\frac{\lvert a\rvert^2+\lvert b\rvert^2}{2}-\frac{\lvert a-b\rvert^2}{4}=1-\frac{\lvert a-b\rvert^2}{4}<1
$$
となり、$m\notin S^1$ である。したがって $S^1$ の中の折れ線の道はすべて定値道であり、相異なる二点 $(1,0)$ と $(-1,0)$ は $S^1$ の中の折れ線の道では結べない。
4 行目:ex-path-top-sierpinski の写像は、時刻 $t=1$ だけで値が $1$ から $0$ に変わるが連続である。Sierpinski 空間は $T_0$ だが $T_1$ でない($\{1\}$ は閉集合でない)。
5 行目:$X$ がHausdorff空間で $\gamma$ が単射なら、$\gamma$ はコンパクト空間から Hausdorff 空間への連続な単射なので像の上への同相写像であり(Mun00 §26 Theorem 26.6、p. 167)、像は $I$ と同相である。単射性を外すと、Peano 曲線 $f\colon I\to I^2$ の像 $I^2$ は $I$ と同相でない。
同相写像 $h\colon I\to I^2$ があれば、$I\setminus\{1/2\}$ と $I^2\setminus\{h(1/2)\}$ が同相になる。前者は $[0,1/2)$ と $(1/2,1]$ に分かれて連結でない。後者が弧状連結であることを示す。$p:=h(1/2)$ とおき、正方形の周 $\partial I^2$ から $p$ を除いた集合 $Q$ を考える。周は円周と同相なので、$Q$ は円周または円周から一点を除いたもの(開区間と同相)と同相であり、弧状連結である。$q\in I^2\setminus\{p\}$ に対し、$q$ を通る縦の線分と横の線分は $q$ でしか交わらないので、少なくとも一方は $p$ を通らない。その線分を $q$ から周まで進めば、$q$ は $I^2\setminus\{p\}$ の中で $Q$ の点と結べる。よって $I^2\setminus\{p\}$ は弧状連結であり、連結である。これは矛盾である。
1 次元の標準単体 $\Delta^1=\{(t_0,t_1)\mid t_0,t_1\ge0,\ t_0+t_1=1\}$ は $t\mapsto(1-t,t)$ で $I$ と同相なので、特異ホモロジーの特異 1 単体 $\Delta^1\to X$ は道と同じものである。ループは境界が $0$ になる特異 1 単体(輪体)を与え、基本群から 1 次ホモロジー群への準同型(Hurewicz 準同型)が「ループを輪体と見る」ことで得られる。
被覆空間 $p\colon E\to B$ では、$B$ の道 $\gamma$ と始点の上の点 $e$ に対し、$e$ から始まる持ち上げがただ一つ存在する(被覆空間の記事の定理「道の持ち上げ」)。その証明は thm-path-top-subdivision で道を均一被覆近傍に入る小片に分けて行う。道に沿ってファイバーを運ぶこの操作が、局所系のモノドロミーや普遍被覆の構成の基礎である。
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