接弦定理(tangent-chord angle theorem)とは、円周上の点 $A$ における接線の上の点 $T$ と弦 $AB$ のつくる角 $\angle TAB$ が、直線 $AB$ について $T$ と反対側の弧(交互の弧)の上の点 $P$ から見た円周角 $\angle APB$ に等しいという定理である。$A$ を通る直径を引き、接線と半径が垂直であることと直径に対する円周角を使って示せる。逆に、$T$ と $P$ が直線 $AB$ の反対側にあり $\angle TAB=\angle APB$ なら、直線 $AT$ は接線である。割線 $AX$ で $X$ を $A$ に近づけた極限が接線になり、接弦定理は円周角の定理の極限の場合とみなせる。円の外の点 $P$ からの接線 $PT$ と割線 $PAB$ について、相似から $PT^2=PA\cdot PB$ が出る。
前提知識: 円周角の定理(高校数学), 直径に対する円周角, 三角形の内角の和, 三角形の相似条件
円周上の点 $A$ で円に接する直線(接線)と、$A$ から引いた弦 $AB$ は角をつくる。教科書では、この角が「その角の内側にある弧 $AB$ に対する円周角」に等しいことを習う。これが 接弦定理 である。まず座標で角を計算して確かめる。
原点 $O$ を中心とする半径 $5$ の円 $x^2+y^2=25$ の上の点 $A(5,0)$ をとる。$A$ を通り半径 $OA$($x$ 軸)に垂直な直線 $x=5$ が $A$ における接線である。接線の上に $T(5,t)$($t>0$)をとり、弦 $AB$ を $B(-3,4)$ まで引く($(-3)^2+4^2=25$)。
(1) 接線と弦の角。$\overrightarrow{AT}$ は $(0,1)$ と同じ向きで、$\overrightarrow{AB}=(-8,4)$ である。内積で
$$
\cos\angle TAB=\frac{0\cdot(-8)+1\cdot4}{1\cdot\sqrt{64+16}}=\frac4{\sqrt{80}}=\frac1{\sqrt5}
$$
なので、$\angle TAB\approx63.43^\circ$ である。
(2) 円周角。弦 $AB$ について $T$ と反対側にある円周上の点 $P(0,-5)$ から見る。$\overrightarrow{PA}=(5,5)$、$\overrightarrow{PB}=(-3,9)$ で、内積は $-15+45=30$、長さは $5\sqrt2$ と $\sqrt{90}=3\sqrt{10}$ なので
$$
\cos\angle APB=\frac{30}{5\sqrt2\cdot3\sqrt{10}}=\frac{30}{15\sqrt{20}}=\frac{2}{2\sqrt5}=\frac1{\sqrt5}
$$
である。$\angle APB\approx63.43^\circ$ で、(1) と等しい。$P(-5,0)$ や $P(-3,-4)$ から見ても、同じく $\cos\angle APB=\dfrac1{\sqrt5}$ になる。
(3) 中心角。$\cos\angle AOB=\dfrac{5\cdot(-3)+0\cdot4}{25}=-\dfrac35$ で、$\angle AOB\approx126.87^\circ$ である。(1) の角はその半分である。
ex-tca-start の接線で、$A$ から下に向かう半直線 $AT'$($T'(5,-t)$、$t>0$)と弦 $AB$ の角は、$180^\circ-63.43^\circ=116.57^\circ$ である。実際、$\cos\angle T'AB=\dfrac{-4}{\sqrt{80}}=-\dfrac1{\sqrt5}$ である。
一方、弦 $AB$ について $T$ と同じ側にある円周上の点 $Q(3,4)$ から見ると、$\overrightarrow{QA}=(2,-4)$、$\overrightarrow{QB}=(-6,0)$ で、内積は $-12$、長さは $\sqrt{20}$ と $6$ なので $\cos\angle AQB=\dfrac{-12}{6\sqrt{20}}=-\dfrac1{\sqrt5}$、$\angle AQB\approx116.57^\circ$ である。$\angle T'AB$ に対しては、$Q$ が「交互の弧」の上の点になっている。逆に $\angle TAB$ から見ると、$Q$ は角の内側の弧の上にあり、$\angle AQB\approx116.57^\circ$ は $\angle TAB\approx63.43^\circ$ と等しくない(2 つの和が $180^\circ$ になる)。
円 x²+y²=25 の点 A(5, 0) における接線 x = 5 と弦 AB(B(−3, 4))の角 ∠TAB と、交互の弧の上の P(0, −5) から見た円周角 ∠APB はどちらも約 63.4°
図 1 のように、接線と弦の角 $\angle TAB$ の内側には弧 $AB$ の一方(オレンジ)があり、その角は、もう一方の弧(交互の弧)の上の点から見た円周角に等しい。この記事で答える問いは次の 4 つである。
| 高校の事実 | この記事の言葉 | 大学の言葉 |
|---|---|---|
| 接線は半径に垂直 | 割線 $AX$ の向きの、$X\to A$ の極限 | 微分係数(接ベクトル) |
| 接弦定理 | 円周角の定理で、弦の一端を接点に近づけた極限 | 有向角による円周角の定理 |
| 接線の長さの 2 乗 $=$ 割線の 2 つの長さの積 | 接弦定理による相似 | 方べき |
円の中心を $O$、半径を $r$ とする。
円周上の点 $A$ を通り、半径 $OA$ に垂直な直線を、$A$ における円の 接線 といい、$A$ を 接点 という。
円周上の点 $A$ を通る直線 $\ell$ について、次が成り立つ。
方針:1 と 2 は、中心 $O$ から $\ell$ に下ろした垂線の足 $H$ を使い、三平方の定理で距離を比べる。3 はベクトルで示す。
段 1(1 の証明)。$\ell$ が接線なら $OA\perp\ell$ である。$\ell$ の上の $A$ 以外の点 $X$ では、三角形 $OAX$ は $A$ を直角とする直角三角形なので、三平方の定理により $OX^2=OA^2+AX^2>r^2$ である。$X$ は円の外部にあり、共有点は $A$ だけである。
段 2(2 の証明、もう 1 点がある)。$\ell$ が接線でないとき、$O$ から $\ell$ に下ろした垂線の足 $H$ は $A$ と異なる($H=A$ なら $OA\perp\ell$ となり $\ell$ は接線である)。$\ell$ の上で $H$ について $A$ と対称な点を $A'$ とすると、$HA'=HA$ で、$A'\ne A$ である。三角形 $OHA$ と $OHA'$ は、$OH$ が共通、$HA=HA'$、$\angle OHA=\angle OHA'=90^\circ$ なので合同であり、$OA'=OA=r$ である($O$ が $\ell$ の上にあって $H=O$ のときは、$OA'=HA'=HA=OA$ である)。よって $A'$ も共有点である。
段 3(2 の証明、ちょうど 2 つ)。$\ell$ の上の点 $X$ が円の上にあれば、三平方の定理により $HX^2=OX^2-OH^2=r^2-OH^2$ である($X=H$ のときも成り立つ)。$\ell$ の上で $H$ からの距離が一定の値になる点は高々 2 つなので、共有点は高々 2 つである。段 2 と合わせて、ちょうど 2 つである。
段 4(3 の証明)。円周上の点 $X$ について $|\vec x-\vec o|^2=|\vec a-\vec o|^2=r^2$ である。$\vec x-\vec o=(\vec x-\vec a)+(\vec a-\vec o)$ を代入して展開すると
$$
|\vec x-\vec a|^2+2(\vec x-\vec a)\cdot(\vec a-\vec o)+r^2=r^2,\qquad (\vec x-\vec a)\cdot(\vec o-\vec a)=\frac{|\vec x-\vec a|^2}2
$$
である。$X\ne A$ なら右辺は正である。$\overrightarrow{AO}$ は接線に垂直なので、$\overrightarrow{AX}\cdot\overrightarrow{AO}>0$ は、$X$ が接線について $O$ と同じ側にあることを表す($O$ 自身は $\overrightarrow{AO}\cdot\overrightarrow{AO}=r^2>0$ である)。$\square$
2 の直線(円と 2 点で交わる直線)を 割線 という。1 は、接線が「円と 1 点だけを共有する直線」であることを示している。円と直線の共有点の個数は、中心と直線の距離でも判定できる(円と直線の位置関係)。
接弦定理を述べるために、弧の呼び名を決めておく。
円周上の相異なる 2 点 $A,B$ と、$A$ における接線の上の点 $T\ne A$ をとる。$T$ は直線 $AB$ の上にない(接線と円の共有点は $A$ だけなので、$B$ は接線の上になく、接線と直線 $AB$ は $A$ だけを共有する)。円周から $A,B$ を除いた 2 つの弧のうち、直線 $AB$ について $T$ と同じ側にあるものを $\angle TAB$ の 内側の弧、反対側にあるものを $\angle TAB$ に対する 交互の弧 という。
ex-tca-start では、$\angle TAB$ の内側の弧は $A(5,0)$ から反時計回りに $B(-3,4)$ に至る弧($Q(3,4)$ を通る弧)で、交互の弧は $P(0,-5)$ を通る弧である。
円周上の相異なる 2 点 $A,B$ と、$A$ における接線の上の点 $T\ne A$ をとる。$\angle TAB$ に対する交互の弧の上の点 $P$ について
$$
\angle TAB=\angle APB
$$
が成り立つ。$\angle TAB$ は、その内側の弧の中心角の半分に等しい。
教科書の証明は、$A$ を通る直径を引いて、直径に対する円周角 に帰着させる。$\angle TAB$ が鋭角・直角・鈍角の 3 つの場合に分ける。
方針:$A$ を通る直径 $AD$ を引く。$\angle TAD=90^\circ$(接線は半径に垂直)と $\angle ABD=90^\circ$(直径に対する円周角)を使って、$\angle TAB$ を三角形 $ABD$ の角 $\angle ADB$ に移し、それを円周角の定理で $\angle APB$ に移す。$\theta:=\angle TAB$ とおく。
段 1($\theta=90^\circ$ の場合)。$AB\perp AT$ なので、$B$ は $A$ を通り接線に垂直な直線、つまり直線 $AO$ の上にある。直線 $AO$ と円の共有点は $A$ と、直径のもう一方の端 $D$ だけなので $B=D$ で、$AB$ は直径である。直径に対する円周角 により $\angle APB=90^\circ=\theta$ である。
段 2($\theta<90^\circ$ の場合、$D$ の位置)。$A$ を通る直径を $AD$ とする。$\angle TAD=90^\circ$ である。lem-tca-tangent-secant の 3 により、$B$ と $D$ はどちらも接線について $O$ と同じ側にある。接線について同じ側にある 2 本の半直線 $AB$、$AD$ のうち、半直線 $AT$ となす角は $AB$ が $\theta$、$AD$ が $90^\circ$ で、$\theta<90^\circ$ なので、半直線 $AB$ は角 $TAD$ の内部にある。したがって $T$ と $D$ は直線 $AB$ について反対側にあり、$D$ は交互の弧の上にある。また $\theta\ne90^\circ$ なので $B\ne D$ である。
段 3($\theta<90^\circ$ の場合、角の計算)。$P$ と $D$ は同じ弧(交互の弧)の上にあるので、同じ弧 $AB$ に対する円周角として $\angle APB=\angle ADB$ である(円周角の定理(高校数学))。三角形 $ABD$ では、$AD$ が直径なので $\angle ABD=90^\circ$ であり(直径に対する円周角)、段 2 により半直線 $AB$ は角 $TAD$ の内部にあるので $\angle BAD=\angle TAD-\angle TAB=90^\circ-\theta$ である。内角の和から
$$
\angle ADB=180^\circ-90^\circ-(90^\circ-\theta)=\theta
$$
である。よって $\angle APB=\angle ADB=\theta$ である。
段 4($\theta>90^\circ$ の場合)。接線の上で、$A$ について $T$ と反対側に点 $T'$ をとる。$\angle T'AB=180^\circ-\theta<90^\circ$ である。接線と直線 $AB$ は $A$ で交わるので、$T$ と $T'$ は直線 $AB$ について反対側にある。したがって $\angle T'AB$ に対する交互の弧は、直線 $AB$ について $T$ の側の弧($\angle TAB$ の内側の弧)である。その上に点 $Q$ をとると、段 2・段 3 により $\angle AQB=\angle T'AB=180^\circ-\theta$ である。$P$ と $Q$ は弦 $AB$ で分けられた別々の弧の上にあるので、四角形 $AQBP$ は円に内接し、向かい合う角の和は $180^\circ$ である(円に内接する四角形)。よって $\angle APB=180^\circ-\angle AQB=\theta$ である。
段 5(中心角)。$\angle APB$ は、$P$ を含まない方の弧、つまり $\angle TAB$ の内側の弧に対する円周角なので、その中心角の半分に等しい(円周角の定理(高校数学))。段 1〜段 4 により $\angle TAB=\angle APB$ なので、$\angle TAB$ も内側の弧の中心角の半分である。$\square$
証明の図(θ が鋭角の場合)。A を通る直径 AD を引くと ∠ABD = 90°、∠TAD = 90° なので ∠ADB = θ。D と P は同じ弧の上にあるので ∠APB = ∠ADB = θ
証明の段 3 が要点である。直角が 2 つ(接線と半径、直径に対する円周角)あり、$\angle BAD$ を両方の直角三角形で使うと、$\theta$ が $\angle ADB$ に移る。同じ定理は Euclid『原論』第 III 巻の命題 32 で、同じく直径を引く方法で証明されている(Hea56)。
円周上の相異なる 3 点 $A,B,P$ と、$A$ を通る直線 $\ell$ の上の点 $T$ をとる。$T$ は直線 $AB$ の上になく、直線 $AB$ について $P$ と反対側にあるとする。$\angle TAB=\angle APB$ ならば、$\ell$ は $A$ における接線である。
方針:本物の接線の上に $T$ と同じ側の点 $T_0$ をとり、thm-tca-main で $\angle T_0AB=\angle TAB$ を示す。同じ側で同じ角をなす半直線は 1 本しかないので、$\ell$ は接線に一致する。
段 1(本物の接線)。$A$ における接線を $t$ とする。def-tca-alternate で見たように $t$ は直線 $AB$ と $A$ だけを共有するので、$t$ の上には直線 $AB$ の両側の点がある。$t$ の上で、直線 $AB$ について $T$ と同じ側にある点 $T_0$ をとる。
段 2(角を比べる)。$P$ は直線 $AB$ について $T_0$ と反対側にあるので、$\angle T_0AB$ に対する交互の弧の上にある。thm-tca-main により $\angle T_0AB=\angle APB$ で、仮定により $\angle APB=\angle TAB$ である。よって $\angle T_0AB=\angle TAB$ である。
段 3(半直線が一致する)。半直線 $AT_0$ と $AT$ は、直線 $AB$ について同じ側にあり、半直線 $AB$ と同じ大きさの角をなす。直線の一方の側で、与えられた半直線と与えられた大きさの角をなす半直線はただ 1 本なので、半直線 $AT_0$ と $AT$ は一致する。よって $T$ は $t$ の上にあり、$\ell=t$ である。$\square$
Heath は『原論』第 III 巻の命題 32 への注で、この逆が成り立つことを述べ、その証明の仕方を紹介している(Hea56)。使い方は、円に接することを角で確かめることである。
$A(0,0)$、$B(4,0)$、$P(4,2)$ を通る円を $\Gamma$ とし、直線 $\ell\colon y=-2x$ が $\Gamma$ に接するかを調べる。
段 1(円周角)。$\overrightarrow{PA}=(-4,-2)$、$\overrightarrow{PB}=(0,-2)$ で、$\cos\angle APB=\dfrac{4}{\sqrt{20}\cdot2}=\dfrac1{\sqrt5}$ である。
段 2(直線と弦の角)。$\ell$ の上の $T(1,-2)$ は、直線 $AB$($x$ 軸)について $P$ と反対側にある。$\cos\angle TAB=\dfrac{(1,-2)\cdot(4,0)}{\sqrt5\cdot4}=\dfrac1{\sqrt5}$ なので、$\angle TAB=\angle APB$ である。
段 3(結論と確かめ)。thm-tca-converse により、$\ell$ は $A$ で $\Gamma$ に接する。確かめると、$\angle ABP=90^\circ$ なので $AP$ は $\Gamma$ の直径で(直径に対する円周角)、中心は $AP$ の中点 $(2,1)$ である。半径の向き $\overrightarrow{AO}=(2,1)$ と $\ell$ の向き $(1,-2)$ の内積は $2-2=0$ で、確かに $\ell\perp OA$ である。
円に内接する四角形 の外角による判定の節では、弦の一端を接点に近づけると接弦定理が見えることに触れている。この「弦の一端を接点に近づける」見方を、座標で正確に述べる。円の中心を原点 $O$、半径を $r$ とし、円周上の点を、$x$ 軸の正の向きから反時計回りに測った角で $\bigl(r\cos\xi,\ r\sin\xi\bigr)$ と表す。
$A=(r\cos\alpha,\ r\sin\alpha)$、$X=(r\cos\xi,\ r\sin\xi)$、$0^\circ<\xi-\alpha<360^\circ$ とする。このとき
$$
\overrightarrow{AX}=2r\sin\frac{\xi-\alpha}2\left(-\sin\frac{\alpha+\xi}2,\ \cos\frac{\alpha+\xi}2\right)
$$
であり、$\sin\dfrac{\xi-\alpha}2>0$ である。したがって、$A$ から $X$ へ向かう長さ $1$ のベクトルは $\vec u(\xi)=\left(-\sin\dfrac{\alpha+\xi}2,\ \cos\dfrac{\alpha+\xi}2\right)$ で、$\xi$ を $\alpha$ に近づけると $\vec u(\xi)$ は $(-\sin\alpha,\ \cos\alpha)$ に近づく。これは $\overrightarrow{OA}$ に垂直な向き、つまり $A$ における接線の向きである。
方針:$\overrightarrow{AX}$ の成分に、和を積に直す公式を使う。
段 1(成分)。$\overrightarrow{AX}=\bigl(r(\cos\xi-\cos\alpha),\ r(\sin\xi-\sin\alpha)\bigr)$ である。和を積に直す公式(加法定理から積和・和積・合成・正接の公式を導く)により
$$
\cos\xi-\cos\alpha=-2\sin\frac{\xi+\alpha}2\sin\frac{\xi-\alpha}2,\qquad \sin\xi-\sin\alpha=2\cos\frac{\xi+\alpha}2\sin\frac{\xi-\alpha}2
$$
である。共通の $2\sin\dfrac{\xi-\alpha}2$ をくくり出すと、示す式になる。
段 2(符号)。$0^\circ<\xi-\alpha<360^\circ$ なので $0^\circ<\dfrac{\xi-\alpha}2<180^\circ$ で、$\sin\dfrac{\xi-\alpha}2>0$ である。$\left(-\sin\dfrac{\alpha+\xi}2,\ \cos\dfrac{\alpha+\xi}2\right)$ の長さは $1$ なので、これが $A$ から $X$ へ向かう長さ $1$ のベクトル $\vec u(\xi)$ である。
段 3(近づける)。正弦と余弦は連続な関数なので、$\xi\to\alpha$ のとき $\dfrac{\alpha+\xi}2\to\alpha$ で、$\vec u(\xi)\to(-\sin\alpha,\ \cos\alpha)$ である。$(\cos\alpha,\ \sin\alpha)\cdot(-\sin\alpha,\ \cos\alpha)=0$ なので、この向きは $\overrightarrow{OA}$ に垂直で、def-tca-tangent の接線の向きである。$\square$
割線 $AX$ の向きは、$X$ の角 $\xi$ の半分だけ回る(向きの角は $90^\circ+\dfrac{\alpha+\xi}2$)。これは円周角の定理の「円周角は中心角の半分」と同じ現象である。$X$ が $A$ に一致する極限で、割線は接線になる。
単位円($r=1$)で $A$ を $\alpha=0^\circ$ の点 $(1,0)$、$B$ を $120^\circ$ の点 $\left(-\dfrac12,\dfrac{\sqrt3}2\right)$ とする。$A$ から反時計回りに $B$ へ向かう弧の上に $X$(角 $\xi$、$0^\circ<\xi<120^\circ$)をとる。$A$ を含まない方の弧 $XB$ の中心角は $120^\circ-\xi$ なので、円周角の定理により $\angle XAB=\dfrac{120^\circ-\xi}2$ である。prop-tca-limit により、割線 $AX$ の向きの角は $90^\circ+\dfrac\xi2$ である。
| $\xi$ | $60^\circ$ | $30^\circ$ | $10^\circ$ | $1^\circ$ | $\xi\to0^\circ$ |
|---|---|---|---|---|---|
| 割線 $AX$ の向き | $120^\circ$ | $105^\circ$ | $95^\circ$ | $90.5^\circ$ | $90^\circ$(接線) |
| $\angle XAB$ | $30^\circ$ | $45^\circ$ | $55^\circ$ | $59.5^\circ$ | $60^\circ$ |
行き着く先の $60^\circ$ は、接線(向き $90^\circ$ の半直線)と弦 $AB$ の角であり、弧 $AB$ の中心角 $120^\circ$ の半分である。thm-tca-main と一致する。
単位円の A(0°)から、X を 60°、30°、10° の点に置いた割線 AX。X が A に近づくと、割線は A における接線(緑)に近づく
接弦定理を使うと、接線の長さと割線の長さの関係が、相似な三角形から出る。
円の外の点 $P$ から引いた接線の接点を $T$ とする。$P$ を通る直線が円と 2 点で交わるとき、$P$ に近い方を $A$、遠い方を $B$ とする。このとき三角形 $PTA$ と三角形 $PBT$ は相似であり、
$$
PT^2=PA\cdot PB
$$
が成り立つ。
方針:2 つの三角形で、$P$ の角が共通であることと、接弦定理による角の等しさから、2 組の角が等しいことを示す。
段 1(位置)。$A$ と $B$ は $P$ から見て同じ向きにあり、$A$ は線分 $PB$ の上にある($P$ は円の外部にあり、線分 $AB$ の点は円の内部か周上にあるので、$P$ は線分 $AB$ の上にない)。$T$ は直線 $PB$ の上にない(直線 $PB$ は円と $A,B$ の 2 点で交わるが、直線 $PT$ は接線なので円と $T$ だけを共有する。lem-tca-tangent-secant)。
段 2(共通の角)。半直線 $PA$ と $PB$ は同じなので、$\angle TPA=\angle BPT$ である。
段 3(接弦定理)。$T$ における接線の上の点 $P$ と弦 $TA$ を考える。$A$ は線分 $PB$ の内部の点で、直線 $TA$ は直線 $PB$ と $A$ だけを共有するので、$P$ と $B$ は直線 $TA$ について反対側にある。よって $B$ は $\angle PTA$ に対する交互の弧の上にあり、thm-tca-main により $\angle PTA=\angle TBA$ である。半直線 $BA$ と $BP$ は同じなので $\angle TBA=\angle PBT$ である。
段 4(相似)。段 2・段 3 により、三角形 $PTA$ と三角形 $PBT$ は 2 組の角がそれぞれ等しいので相似である(三角形の相似条件)。対応する辺の比から $\dfrac{PT}{PB}=\dfrac{PA}{PT}$、つまり $PT^2=PA\cdot PB$ である。$\square$
円 x²+y²=25 の外の点 P(13, 0)。接線 PT(T(25/13, 60/13))と割線 PAB(A(5, 0)、B(−5, 0))。三角形 PTA と PBT は相似で、PT² = 144 = 8 × 18 = PA · PB
円 $x^2+y^2=25$ と点 $P(13,0)$ をとる。
(1) 接線の長さは、三平方の定理で $PT^2=OP^2-5^2=169-25=144$、$PT=12$ である。接点の 1 つは $T\left(\dfrac{25}{13},\dfrac{60}{13}\right)$ で、$\overrightarrow{OT}\cdot\overrightarrow{PT}=\dfrac{25}{13}\cdot\left(-\dfrac{144}{13}\right)+\dfrac{60}{13}\cdot\dfrac{60}{13}=\dfrac{-3600+3600}{169}=0$ である。
(2) $x$ 軸は円と $A(5,0)$、$B(-5,0)$ で交わり、$PA\cdot PB=8\cdot18=144=PT^2$ である。相似の比も確かめる。$TA=\dfrac{20\sqrt{13}}{13}$、$TB=\dfrac{30\sqrt{13}}{13}$ なので、$\dfrac{TA}{TB}=\dfrac23=\dfrac{PT}{PB}=\dfrac{12}{18}=\dfrac{PA}{PT}=\dfrac8{12}$ で、3 組の比がそろっている。
(3) 点 $(3,4)$ を通る割線でも確かめる。$P$ から向き $(-5,2)$ に進む点 $(13-5s,\ 2s)$ が円の上にある条件は $(13-5s)^2+4s^2=25$、つまり $29s^2-130s+144=0$ で、$s=2$ と $s=\dfrac{72}{29}$ である。向きのベクトルの長さは $\sqrt{29}$ なので、$PA=2\sqrt{29}$、$PB=\dfrac{72}{29}\sqrt{29}$ で、$PA\cdot PB=2\cdot\dfrac{72}{29}\cdot29=144$ である。
thm-tca-power は、方べきの定理(方べきの定理(高校数学))の接線の場合である。そちらでは内積を使って、接線の場合も割線の場合も 1 つの式で示している。ここでの証明は、教科書の「相似な三角形による証明」の接線版である。
逆も成り立ち、接線であることの判定に使える。
相異なる 2 点 $A,B$ と、直線 $AB$ の上にあって線分 $AB$ の外にある点 $P$、直線 $AB$ の上にない点 $T$ をとる。$PT^2=PA\cdot PB$ ならば、直線 $PT$ は、$A,B,T$ を通る円に $T$ で接する。
方針:2 辺の比とその間の角で相似を示し、角の等しさから thm-tca-converse を使う。
段 1(名前)。$P$ は線分 $AB$ の外にあるので、$A,B$ は $P$ から見て同じ向きにある。$PA=PB$ なら $A=B$ となるので $PA\ne PB$ であり、必要なら名前を入れ替えて $PA< PB$、つまり $A$ が線分 $PB$ の内部にあるとする。$A,B,T$ は一直線上にないので、3 点を通る円 $\Gamma$ がただ 1 つある。
段 2(相似)。仮定から $\dfrac{PT}{PA}=\dfrac{PB}{PT}$ である。$\angle TPA=\angle BPT$(半直線 $PA$ と $PB$ は同じ)なので、2 辺の比とその間の角が等しく、三角形 $PTA$ と三角形 $PBT$ は相似である(三角形の相似条件)。よって $\angle PTA=\angle PBT=\angle TBA$ である。
段 3(逆の定理)。$A$ は線分 $PB$ の内部の点なので、$P$ と $B$ は直線 $TA$ について反対側にある。円 $\Gamma$ の弦 $TA$、円周上の点 $B$、直線 $TP$ の上の点 $P$ に thm-tca-converse を使うと、$\angle PTA=\angle TBA$ から、直線 $TP$ は $T$ における $\Gamma$ の接線である。$\square$
$P(0,0)$、$A(1,0)$、$B(4,0)$、$T(0,2)$ とする。$P$ は線分 $AB$ の外にあり、$PA\cdot PB=1\cdot4=4=PT^2$ である。cor-tca-power-converse により、$y$ 軸(直線 $PT$)は $A,B,T$ を通る円に $T$ で接する。確かめると、円の中心は $AB$ の垂直二等分線 $x=\dfrac52$ の上にあり、中心を $\left(\dfrac52,k\right)$ として $A$ と $T$ までの距離を等しくおくと $\dfrac94+k^2=\dfrac{25}4+(k-2)^2$、つまり $4k=8$、$k=2$ である。中心 $\left(\dfrac52,2\right)$ から $T(0,2)$ への向きは $x$ 軸の向きで、$y$ 軸に垂直である。
円 $C_1\colon x^2+y^2=4$(中心 $O_1(0,0)$、半径 $2$)と円 $C_2\colon (x-3)^2+y^2=1$(中心 $O_2(3,0)$、半径 $1$)は、点 $T(2,0)$ で外から接している(中心間の距離 $3$ が半径の和に等しい)。$T$ における共通の接線は直線 $x=2$ である。
$T$ を通る直線 $y=x-2$ を引く。$C_1$ との交点は $x^2+(x-2)^2=4$、つまり $2x^2-4x=0$ から $x=0,2$ で、$T$ 以外の交点は $A(0,-2)$ である。$C_2$ との交点は $(x-3)^2+(x-2)^2=1$、つまり $x^2-5x+6=0$ から $x=2,3$ で、$T$ 以外の交点は $B(3,1)$ である。
$A$ における $C_1$ の接線は $\overrightarrow{O_1A}=(0,-2)$ に垂直な直線 $y=-2$、$B$ における $C_2$ の接線は $\overrightarrow{O_2B}=(0,1)$ に垂直な直線 $y=1$ で、2 本は平行である。
接弦定理で見ると、$C_1$ の弦 $AT$ の両端の接線は、どちらも弦 $AT$ と $45^\circ$ の角をつくる($A$ では $x$ 軸の正の向きの半直線と $\overrightarrow{AT}=(2,2)$、$T$ では下向きの半直線と $\overrightarrow{TA}=(-2,-2)$)。どちらの角も、その内側の弧 $AT$(中心角 $90^\circ$)の中心角の半分である。$C_2$ の弦 $TB$ でも同じく両端の接線が弦と $45^\circ$ の角をつくる。接点 $T$ の接線を仲立ちにして、$A$ と $B$ の接線は直線 $AB$ と同じ角をつくり、平行になる。一般に、接する 2 円では接点を通るどの直線についてもこれが成り立つ。見通しのよい理由は、接点が 2 円の 相似の中心 になっていることで、2円の位置関係と共通接線 で扱う。
点 T(2, 0) で外から接する 2 円。T を通る直線 y = x − 2 と 2 円の交点 A(0, −2)、B(3, 1) における接線 y = −2、y = 1 は平行である
| 外した仮定 | 崩れる主張 | ボックス |
|---|---|---|
| 直線 $AT$ が $A$ における接線である | $\angle TAB$ は交互の弧の上の円周角に等しい | ex-tca-secant |
| $P$ が $\angle TAB$ に対する交互の弧の上にある | $\angle TAB=\angle APB$ | ex-tca-start-other |
| $P$ が線分 $AB$ の外にある | $PT^2=PA\cdot PB$ ならば直線 $PT$ は $A,B,T$ を通る円の接線 | ex-tca-power-counter |
ex-tca-start の円 $x^2+y^2=25$、$A(5,0)$、$B(-3,4)$ で、接線の代わりに、$A$ と $S(3,4)$ を通る割線をとる。$\overrightarrow{AS}=(-2,4)$、$\overrightarrow{AB}=(-8,4)$ で
$$
\cos\angle SAB=\frac{16+16}{\sqrt{20}\cdot\sqrt{80}}=\frac{32}{40}=\frac45
$$
なので、$\angle SAB\approx36.87^\circ$ である。直線 $AB$ について $S$ と反対側にある円周上の点、たとえば $P(0,-5)$ から見た円周角 $\angle APB\approx63.43^\circ$(ex-tca-start)とは等しくない。$\angle SAB$ は、$A$ を含まない弧 $SB$ に対する円周角であり、弧 $SB$ の中心角 $126.87^\circ-53.13^\circ=73.74^\circ$ の半分になっている。prf-tca-main の段 2 以降は $\angle TAD=90^\circ$(接線が半径に垂直)を使っており、割線では使えない。
$A(-1,0)$、$B(4,0)$、$P(0,0)$、$T(0,2)$ とする。$P$ は線分 $AB$ の内部にある。$PA\cdot PB=1\cdot4=4=PT^2$ で、長さの等式は ex-tca-power-converse と同じである。$A,B,T$ を通る円の中心を $\left(\dfrac32,k\right)$ とおくと、$\dfrac{25}4+k^2=\dfrac94+(k-2)^2$ から $4k=0$、$k=0$ で、中心は $\left(\dfrac32,0\right)$、半径は $\dfrac52$ である。中心から $T$ への向き $\left(-\dfrac32,2\right)$ と直線 $PT$($y$ 軸)の向き $(0,1)$ の内積は $2\ne0$ なので、直線 $PT$ は接線ではない。実際、$y$ 軸はこの円と $(0,2)$、$(0,-2)$ の 2 点で交わる。$P$ は円の内部にあり、この等式は方べきの定理の「2 本の弦」の場合($PA\cdot PB=PT\cdot PT'$、$T'(0,-2)$)である。prf-cor-tca-power-converse の段 3 は「$P$ と $B$ が直線 $TA$ について反対側」を使っており、$P$ が線分 $AB$ の内部にあるとこれが成り立たない。
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