第2可算公理

同義語:第2可算空間第2可算

概要

第2可算公理(second axiom of countability)とは、位相空間が高々可算な開基を持つという条件であり、これを満たす空間を第2可算空間(second-countable space)という。可算個の開集合の和集合ですべての開集合を組み立てられる、という空間全体に課される条件である。$\mathbb{R}^n$ は有理点を中心とし正の有理数を半径とする開球全体を可算な開基に持つ。第2可算空間はつねに第1可算・可分・Lindelöfであるが、逆向きは一般には成り立たない。非可算集合上の離散空間は第1可算だが第2可算でなく、Sorgenfrey直線は第1可算・可分・Lindelöfを同時に満たすが第2可算でない。距離空間に限れば、第2可算・可分・Lindelöfの三条件は互いに同値になる。正則Hausdorffな第2可算空間は距離化可能である(Urysohnの距離化定理)。

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前提知識: 位相空間, 開集合, 開基, 閉包

定義

位相空間 $(X,\mathcal{O})$ の開集合からなる族 $\mathcal{B}\subseteq\mathcal{O}$ が $X$ の開基(base)であるとは、任意の開集合 $U$ と任意の点 $x\in U$ に対して $x\in B\subseteq U$ を満たす $B\in\mathcal{B}$ が存在することをいう。これは「任意の開集合が $\mathcal{B}$ の元の和集合として表せる」ことと同じである。開基の定義と、この二つの言い方が同値であることは 開基 が所有する。

第2可算公理

位相空間 $X$ が 第2可算公理(second axiom of countability)を満たす、あるいは 第2可算空間(second-countable space)であるとは、$X$ の開基 $\mathcal{B}$ であって高々可算なもの、すなわち $|\mathcal{B}|\le\aleph_0$ を満たすものが少なくとも一つ存在することをいう。

条件は「ある可算な開基が存在する」であって、「どの開基も可算である」ではない。開集合全体 $\mathcal{O}$ はつねにそれ自身が開基であり、$\mathbb{R}$ の場合これは非可算だからである。言い換えれば、どれほど複雑な開集合であっても、あらかじめ用意した可算個の「部品」の和集合として組み立てられる、というのがこの条件の内容である。
この条件は空間全体に一度に課される大域的な条件であり、各点ごとに可算個の近傍を要求する第1可算公理とは課し方が異なる。また、$X$ の開基の最小濃度は $X$ の重み(weight)と呼ばれ、第2可算性は重みが高々可算であることと言い換えられる。重みの正確な定義(有限になる場合の扱いに流儀がある)とこの言い換えは 基数関数 が扱う。

直感

第2可算性は、空間の「解像度」に対する制限と捉えることができる。平面 $\mathbb{R}^2$ には無数の開集合があるが、それらはすべて「中心の座標が有理数で半径も有理数であるような開円盤」の和集合として書ける。そのような開円盤は可算個しかない。可算個の部品さえ用意すれば、空間内のすべての開集合を組み立てられる——これが第2可算空間の像である。
点の個数が可算であることとは別の条件であることに注意する。$\mathbb{R}$ は非可算だが第2可算である。効いているのは点の個数ではなく、位相を組み立てるのに何個の開集合が要るかである。

例と反例

有理点を中心とする開球の族

Euclid空間 $\mathbb{R}^n$ において、中心が有理点で半径が正の有理数である開球全体
$$\mathcal{B}=\{B(q,r)\mid q\in\mathbb{Q}^n,\ r\in\mathbb{Q},\ r>0\}$$
は可算な開基である。可算性は $\mathbb{Q}^n\times\mathbb{Q}$ が可算であることによる。開基であること:$U$ を開集合、$x\in U$ とすると $B(x,\varepsilon)\subseteq U$ となる $\varepsilon>0$ がある。$\mathbb{Q}^n$ は $\mathbb{R}^n$ で稠密だから $|x-q|<\varepsilon/4$ なる $q\in\mathbb{Q}^n$ をとり、$|x-q|< r<\varepsilon/2$ なる有理数 $r$ をとる。すると $x\in B(q,r)$ であり、$y\in B(q,r)$ ならば $|x-y|\le|x-q|+|q-y|<\varepsilon/4+\varepsilon/2<\varepsilon$ なので $B(q,r)\subseteq B(x,\varepsilon)\subseteq U$ である。したがって $\mathbb{R}^n$ は第2可算空間である。

可算集合上の離散空間

$\mathbb{Z}$ や $\mathbb{Q}$ のような可算集合 $X$ に離散位相(すべての部分集合が開)を入れると、一点集合の全体 $\{\{x\}\mid x\in X\}$ は可算であり、任意の開集合 $U$ と $x\in U$ に対して $x\in\{x\}\subseteq U$ だから開基である。したがって可算離散空間は第2可算空間である。$X$ が非可算になるとこの議論は崩れる(rem-second-countable-space-uncountable-discrete)。

部分空間とHilbert立方体

$\mathbb{R}^n$ の任意の部分空間は第2可算である(prop-second-countable-space-heredity)。点の個数に制限はないので、たとえばCantor集合も無理数全体も第2可算である。また $[0,1]$ の可算個の直積(直積位相) $[0,1]^{\mathbb{N}}$(Hilbert立方体)も第2可算である(prop-second-countable-space-countable-product)。

反例:非可算集合上の離散空間

非可算集合 $X$ に離散位相を入れた空間は第2可算ではない。破れる条件はdef-second-countable-spaceの「高々可算な開基が存在する」である。$x\ne y$ のとき $d(x,y)=1$、$x=y$ のとき $0$ とおく離散距離はこの位相を与えるので、これは距離空間でもある。したがって「距離空間ならば第2可算」という含意は破れる。さらにこの空間は可分(可分空間)でもLindelöf(Lindelöf空間)でもない一方、各点で $\{\{x\}\}$ が基本近傍系になるので第1可算公理は満たす。よって「第1可算ならば第2可算」という含意も破れる。

$\mathcal{B}$ を開基とする。各 $x\in X$ について $\{x\}$ は開集合であり $x\in\{x\}$ だから、$x\in B\subseteq\{x\}$ すなわち $B=\{x\}$ を満たす $B\in\mathcal{B}$ が存在する。よって $\{\{x\}\mid x\in X\}\subseteq\mathcal{B}$ となり $|\mathcal{B}|\ge|X|$ である。$X$ は非可算だから $\mathcal{B}$ も非可算であり、可算な開基は存在しない。
可分でないこと:$D\subseteq X$ が稠密なら、各 $x$ について $\{x\}$ は空でない開集合だから $D\cap\{x\}\ne\emptyset$、すなわち $x\in D$ である。よって $D=X$ となり非可算である。
Lindelöfでないこと:$\{\{x\}\mid x\in X\}$ は開被覆であり、そのどの真部分族も $X$ を覆わない。したがって可算部分被覆は存在しない。$\square$

反例:非可算集合上の補有限位相

非可算集合 $X$ に、$\emptyset$ と補集合が有限であるような部分集合を開集合とする補有限位相を入れる。この空間は可分であり、コンパクト(コンパクト空間)なのでLindelöf空間でもあるが、第2可算ではない。破れる条件はdef-second-countable-spaceの「高々可算な開基が存在する」であり、破れる含意は「可分ならば第2可算」および「Lindelöfならば第2可算」である。前の反例と違ってこの空間は距離空間ではない(Hausdorff(Hausdorff空間)ですらない)が、可分性とLindelöf性を同時に満たしたうえで第2可算性が破れる点で、thm-second-countable-metric-equivalenceの「距離空間」という仮定が落とせないことを示している。

可分性:$D\subseteq X$ を可算無限部分集合とする(非可算集合から可算無限部分集合をとるので可算選択公理を用いる)。空でない開集合は $X\setminus F$($F$ は有限)の形だから $D\setminus F$ は無限、とくに空でない。よって $D$ は稠密であり $X$ は可分である。
コンパクト性:$\mathcal{U}$ を開被覆とする。$X\ne\emptyset$ なら空でない $U_0=X\setminus F\in\mathcal{U}$ がとれ、$F$ は有限である。$F$ の各点 $y$ に対し $y\in U_y\in\mathcal{U}$ を選ぶ(有限個の選択なので選択公理は要らない)。$\{U_0\}\cup\{U_y\mid y\in F\}$ は有限部分被覆である。コンパクト空間はLindelöf空間である。
第2可算でないこと:$\{B_n\}_{n\ge1}$ を可算な開基とし、一般性を失わず各 $B_n$ は空でないとしてよい(空集合を除いても開基である)。すると各 $X\setminus B_n$ は有限である。$C=\bigcup_{n\ge1}(X\setminus B_n)$ は可算個の有限集合の合併なので高々可算である(可算選択公理を用いる)。$X$ は非可算だから $y\notin C$ となる $y\in X$ がとれ、さらに $x\ne y$ なる $x\in X$ がとれる。$U=X\setminus\{y\}$ は $x$ を含む開集合だが、$x\in B_n\subseteq U$ を満たす $n$ があれば $y\notin B_n$、すなわち $y\in X\setminus B_n\subseteq C$ となって矛盾する。よって $\{B_n\}$ は開基ではない。$\square$

反例:長い直線

長い直線 $L$ と長い半直線 $R$ は、局所的には実数の区間と同じでHausdorffかつ第1可算だが、可分でも第2可算でもない。破れる条件はdef-second-countable-spaceの「高々可算な開基が存在する」であり、破れる含意はここでも「第1可算ならば第2可算」である。これらの空間の定義と、局所的に実数の区間と同じであること・第1可算であること・可分でも第2可算でもないことは、いずれも 長い直線 が所有する。
拡張長い半直線 $\overline{R}$($R$ にすべての点より大きい最大元 $\infty$ を加えたもの)も可分でも第2可算でもないが、第1可算ではない。無限遠点 $\infty$ では高々可算な基本近傍系がとれないからである。したがって $\overline{R}$ を上の二つと並べて「第1可算」と書くことはできず、$\overline{R}$ は「第1可算ならば第2可算」が破れることの証人にもならない。この非第1可算性と、$\infty$ が局所Euclid的でないことは、いずれも 長い直線 が証明つきで所有する。
上の非可算離散空間との違いは、$L$ が連結(連結空間)で、各点の近くだけを見れば $\mathbb{R}$ と区別がつかないことである。可算性は各点の近くを見ても分からない大域的な条件だ、という点が現れている。

他の可算性条件との関係

以下で「第1可算」は各点に高々可算な基本近傍系があること、「可分」は可算な稠密部分集合が存在すること、「Lindelöf」は任意の開被覆が可算部分被覆を持つことをいう。稠密とは、すべての空でない開集合と交わることである。ここで可算には有限を含める。これらの定義はそれぞれ 第1可算公理・可分空間・Lindelöf空間・稠密 が所有する。

三つの帰結

一般の位相空間 $X$ について、次が成り立つ。
$$\text{第2可算}\implies\text{第1可算},\qquad \text{第2可算}\implies\text{可分},\qquad \text{第2可算}\implies\text{Lindelöf}$$

$\mathcal{B}$ を $X$ の高々可算な開基とする。
第1可算:点 $x$ に対し $\mathcal{B}_x=\{B\in\mathcal{B}\mid x\in B\}$ とおく。これは $\mathcal{B}$ の部分族だから高々可算である。$V$ を $x$ の近傍とすると $x\in U\subseteq V$ なる開集合 $U$ があり、開基の定義から $x\in B\subseteq U\subseteq V$ なる $B\in\mathcal{B}$ がとれる。この $B$ は $\mathcal{B}_x$ に属する。よって $\mathcal{B}_x$ は $x$ の高々可算な基本近傍系である。この向きに選択公理は要らない。
可分:$\mathcal{B}^{*}=\{B\in\mathcal{B}\mid B\ne\emptyset\}$ の各元 $B$ から一点 $x_B\in B$ を選ぶ($\mathcal{B}^{*}$ は高々可算なので可算選択公理を用いる)。$D=\{x_B\mid B\in\mathcal{B}^{*}\}$ は高々可算である。$U$ を空でない開集合、$x\in U$ とすると $x\in B\subseteq U$ なる $B\in\mathcal{B}$ があり、この $B$ は空でないから $x_B\in B\subseteq U$、すなわち $D\cap U\ne\emptyset$ である。よって $D$ は稠密であり $X$ は可分である。
Lindelöf:$\mathcal{U}$ を $X$ の開被覆とする。$\mathcal{B}'=\{B\in\mathcal{B}\mid \text{ある } U\in\mathcal{U} \text{ について } B\subseteq U\}$ とおき、各 $B\in\mathcal{B}'$ に対して $B\subseteq U_B$ となる $U_B\in\mathcal{U}$ を一つ選ぶ($\mathcal{B}'$ は高々可算なので可算選択公理を用いる)。$\{U_B\mid B\in\mathcal{B}'\}$ は高々可算である。任意の $x\in X$ に対し $x\in U$ なる $U\in\mathcal{U}$ があり、開基の定義から $x\in B\subseteq U$ なる $B\in\mathcal{B}$ がとれる。この $B$ は $\mathcal{B}'$ に属し $x\in B\subseteq U_B$ だから、この可算族は $X$ を覆う。よって可算部分被覆が存在する。
$X=\emptyset$ のときは、空の開基・空の稠密集合・空の部分被覆で三つとも成り立つ。$\square$

三つの向きはいずれも逆向きが成り立たない。

逆向きは一般には成り立たない

一般の位相空間では、第1可算・可分・Lindelöf のどれからも第2可算性は従わない。

  • 第1可算 $\not\implies$ 第2可算:非可算集合上の離散空間(rem-second-countable-space-uncountable-discrete)。長い直線 $L$ と長い半直線 $R$ も同様である(rem-second-countable-space-long-line。同じ記事が扱う拡張長い半直線は第1可算でないので、この向きの証人にはならない)。
  • 可分 $\not\implies$ 第2可算、Lindelöf $\not\implies$ 第2可算:非可算集合上の補有限位相(rem-second-countable-space-cofinite)。この空間は可分かつコンパクトだが第2可算でない。
  • 三つを同時に満たしても足りない:Sorgenfrey直線($\mathbb{R}$ に半開区間 $[a,b)$ を開基として入れた空間)は第1可算・可分・Lindelöf であり、しかもHausdorffだが第2可算ではない。この空間の定義と、可分であること・Lindelöfであること・第2可算でないことは、いずれも Sorgenfrey直線 が所有する。
    したがって次のthm-second-countable-metric-equivalenceの「距離空間」という仮定は落とせない。落とすと Sorgenfrey直線と補有限位相が反例になる。
距離空間における同値性

距離空間 $X$ について、次の3条件は互いに同値である。

  1. $X$ は第2可算空間である。
  2. $X$ は可分空間である。
  3. $X$ はLindelöf空間である。
    第1可算性はこの同値条件に含めない。距離空間はつねに第1可算だが、第2可算とは限らないからである(rem-second-countable-space-uncountable-discrete)。

距離を $d$ とし $B(x,r)=\{y\in X\mid d(x,y)< r\}$ とおく。$X=\emptyset$ のときは3条件とも成り立つので、以下 $X\ne\emptyset$ とする。
1 $\implies$ 2 と 1 $\implies$ 3 はprop-second-countable-implicationsによる(一般の位相空間で成り立つ)。
2 $\implies$ 1:可算な稠密集合 $D$ をとり、
$$\mathcal{B}=\{B(a,r)\mid a\in D,\ r\in\mathbb{Q},\ r>0\}$$
とおく。$D\times(\mathbb{Q}\cap(0,\infty))$ は可算だから $\mathcal{B}$ は可算である。$U$ を開集合、$x\in U$ とすると $B(x,\varepsilon)\subseteq U$ なる $\varepsilon>0$ がある。$D$ は稠密なので $B(x,\varepsilon/3)$ と交わり、$d(x,a)<\varepsilon/3$ なる $a\in D$ がとれる。$d(x,a)<\varepsilon/3<\varepsilon-d(x,a)$ だから、その間に有理数 $r$ がとれる。このとき $d(x,a)< r$ より $x\in B(a,r)$ であり、$y\in B(a,r)$ ならば $d(x,y)\le d(x,a)+d(a,y)< d(x,a)+r<\varepsilon$ なので $B(a,r)\subseteq B(x,\varepsilon)\subseteq U$ である。よって $\mathcal{B}$ は可算な開基である。この向きに選択公理は要らない(族 $\mathcal{B}$ は $D$ と $\mathbb{Q}$ から添字づけて定めており、点を選ぶ操作を含まない)。
3 $\implies$ 1:各正整数 $n$ について $\mathcal{C}_n=\{B(x,1/n)\mid x\in X\}$ は開被覆だから、Lindelöf性により可算部分被覆 $\mathcal{D}_n\subseteq\mathcal{C}_n$ がとれる($n$ ごとに一つ選ぶので可算選択公理を用いる)。$\mathcal{B}=\bigcup_{n\ge1}\mathcal{D}_n$ は可算個の可算族の合併なので可算である。$U$ を開集合、$x\in U$ とし、$B(x,\varepsilon)\subseteq U$ なる $\varepsilon>0$ と $2/n<\varepsilon$ なる $n$ をとる。$\mathcal{D}_n$ は $X$ を覆うから $x\in B(a,1/n)\in\mathcal{D}_n$ なる $a$ がある。$y\in B(a,1/n)$ ならば $d(x,y)\le d(x,a)+d(a,y)<1/n+1/n=2/n<\varepsilon$ だから $B(a,1/n)\subseteq B(x,\varepsilon)\subseteq U$ である。よって $\mathcal{B}$ は可算な開基である。
以上で 1 $\implies$ 2、1 $\implies$ 3、2 $\implies$ 1、3 $\implies$ 1 が示されたので、3条件は互いに同値である。$\square$

この同値性のおかげで、距離空間では可分性を確かめるだけで第2可算性が得られる。たとえば $\mathbb{R}^n$ がそうであり、$1\le p<\infty$ の $\ell^p$ もそうである。後者では、有理数を成分とする(複素数の場合は実部と虚部がともに有理数である)有限台の数列全体が可算稠密集合になる。指数 $p=\infty$ を含めて一括に述べることはできない。$\ell^\infty$ は可分でなく、したがって第2可算でもない(値が $0$ と $1$ だけの数列は非可算個あり、相異なる二つの距離はつねに $1$ である。可算な部分集合 $D$ があると、それらの半径 $1/2$ の開球は互いに素なので、$D$ と交わらない球が残る)。

性質

部分空間への遺伝

第2可算空間の任意の部分空間は第2可算である。

$\mathcal{B}$ を $X$ の可算な開基、$A\subseteq X$ を部分空間とする。$\mathcal{B}_A=\{B\cap A\mid B\in\mathcal{B}\}$ は $\mathcal{B}$ からの像なので高々可算であり、各元は $A$ の(相対位相での)開集合である。$V$ を $A$ の開集合、$x\in V$ とすると、相対位相の定義から $V=U\cap A$ なる $X$ の開集合 $U$ があり、$x\in B\subseteq U$ なる $B\in\mathcal{B}$ がとれる。このとき $x\in B\cap A\subseteq U\cap A=V$ である。よって $\mathcal{B}_A$ は $A$ の可算な開基である。$\square$

可算個の直積

第2可算空間の可算個の族 $\{X_n\}_{n\ge1}$ の直積空間 $\prod_{n\ge1}X_n$ は第2可算である。

各 $n$ について $X_n$ の可算な開基 $\mathcal{B}_n$ を一つ選ぶ(可算選択公理を用いる)。有限部分集合 $F\subseteq\{1,2,\dots\}$ と各 $n\in F$ ごとの $B_n\in\mathcal{B}_n$ に対し
$$\textstyle\bigcap_{n\in F}\pi_n^{-1}(B_n)$$
の形の集合全体を $\mathcal{B}$ とする($\pi_n$ は第 $n$ 成分への射影、$F=\emptyset$ のときは全体集合)。$\{1,2,\dots\}$ の有限部分集合は可算個であり、各 $F$ に対する選び方の全体 $\prod_{n\in F}\mathcal{B}_n$ は可算集合の有限直積なので可算である。可算個の可算集合の合併は可算だから $\mathcal{B}$ は可算である。直積位相の定義により、有限個の座標を開集合で制限した集合の全体は開基をなし、そこに現れる各座標の開集合を $\mathcal{B}_n$ の元に取り替えられる。実際、$x\in\bigcap_{n\in F}\pi_n^{-1}(U_n)$ なら各 $n\in F$ について $x_n\in B_n\subseteq U_n$ なる $B_n\in\mathcal{B}_n$ をとればよい($F$ は有限なので選択公理は要らない)。よって $\mathcal{B}$ は可算な開基である。$\square$

非可算個の直積では成り立たない。二点離散空間の非可算個の直積は第2可算でない。ただし理由は「上で作った開基が非可算になること」ではない。def-second-countable-spaceが要求するのはある可算な開基が存在することであって、どの開基も可算であることではないからである。効いているのは、非可算個の座標があると 1 点のまわりだけでも座標の個数だけの開集合が基本近傍系に要る、という局所的な事情である。同じ型の計算を、公開記事 Alexandroff立方体 が別の二点空間(Sierpiński空間)の非可算個の直積について完全証明つきで所有しており(重みがちょうど座標の個数になる)、そこから「可分だが第2可算でない」例も得られている。

補足:距離をどう作るか

第2可算性がとくに強く効くのは距離化可能性の判定である。以下では $X$ を正則(正則空間)Hausdorffな第2可算空間とし、$X$ に位相を与える距離を実際に構成する(Urysohnの距離化定理)。ここで正則とは、点とそれを含まない閉集合を互いに素な開近傍で分離できることであり、Hausdorffとは異なる二点を互いに素な開集合で分離できることである。分離公理の体系そのものは 分離公理 が扱う。正則性は、$x\in G$ かつ $G$ が開なら開近傍を $x\in V\subseteq\overline{V}\subseteq G$ と閉包ごと縮められる、と言い換えられる。実際、$x$ と $X\setminus G$ を互いに素な開集合 $V,W$ で分離すれば $\overline{V}\subseteq X\setminus W\subseteq G$ となる。逆向きには $V$ と $X\setminus\overline{V}$ を使えばよい。

閉集合を開集合で分離する

正則な第2可算空間 $X$ は正規(正規空間)である。ここで正規とは、互いに素な二つの閉集合が互いに素な開近傍を持つことをいう。これは「正則なLindelöf空間は正規である」という一般形の特殊な場合であり、一般形の言明と証明は Lindelöf空間 が所有する。本記事はUrysohnの距離化定理の構成部品としてこの特殊形だけを使う。

$X$ はprop-second-countable-implicationsによりLindelöf空間である。正則なLindelöf空間が正規であることは Lindelöf空間 が所有するので、正則な第2可算空間 $X$ は正規である。$\square$

閉集合を関数で分離する

正規空間 $X$ の互いに素な閉集合 $A,B$ に対し、$A$ 上で $0$、$B$ 上で $1$ の値をとる連続関数(連続写像)$f\colon X\to[0,1]$ が存在する(Urysohnの補題、MLSep26)。

正規性から、閉集合 $F$ と開集合 $G$ が $F\subseteq G$ を満たすとき、$F\subseteq V\subseteq\overline{V}\subseteq G$ なる開集合 $V$ がとれる($F$ と $X\setminus G$ を互いに素な開集合 $V,W$ で分離し $\overline{V}\subseteq X\setminus W\subseteq G$ とする)。
$[0,1]$ の二進有理数 $r=k/2^m$ を添字として開集合 $U_r$ を作る。$U_1=X\setminus B$ とし、上の縮小を $A\subseteq U_1$ に適用して $A\subseteq U_0\subseteq\overline{U_0}\subseteq U_1$ をとる。$m$ についての帰納法で、すでに定めた隣り合う添字 $r< s$ の中点 $t=(r+s)/2$ に対し $\overline{U_r}\subseteq U_t\subseteq\overline{U_t}\subseteq U_s$ となる $U_t$ を挿入する(各段階の挿入は有限個だが、次の段階に現れる候補が前の段階での選び方に依存する再帰なので、ここでは従属選択公理を用いる)。こうして $r< s$ ならば $\overline{U_r}\subseteq U_s$ が保たれる。
$$f(x)=\inf\bigl(\{r\mid x\in U_r\}\cup\{1\}\bigr)$$
とおく。$A\subseteq U_0$ より $A$ 上で $f=0$、$B\cap U_1=\emptyset$ よりどの $U_r$ も $B$ と交わらないので $B$ 上で $f=1$ である。連続性は
$$\{f< a\}=\bigcup_{r< a}U_r\quad(0< a\le1),\qquad \{f>a\}=\bigcup_{r>a}(X\setminus\overline{U_r})\quad(0\le a<1)$$
から従う。前者は下限の定義そのものである。後者は、$x\notin\overline{U_r}$ ならば $x\notin U_{r'}$($r'\le r$)なので $f(x)\ge r$ であること、および $f(x)>a$ なら $a< r< s< f(x)$ なる二進有理数 $r,s$ をとって $x\notin U_s\supseteq\overline{U_r}$ が言えることによる。$a$ が範囲外のときは両辺とも空集合または $X$ 全体である。$\{f< a\}$ と $\{f>a\}$ の形の集合は $[0,1]$ の位相の準開基の逆像を与えるので、$f$ は連続である。$\square$

可算な観測値から作る距離

$X$ を正則Hausdorffな第2可算空間、$\{B_i\}_{i\ge1}$ をその可算な開基とする。$\overline{B_i}\subseteq B_j$ を満たす組 $(i,j)$ ごとに、$\overline{B_i}$ 上で $1$、$X\setminus B_j$ 上で $0$ をとる連続関数を選び、それらを $f_1,f_2,\dots$ と並べる(組が有限個しかないときは零関数を補う)。このとき
$$d(x,y)=\sum_{n=1}^{\infty}2^{-n}\,|f_n(x)-f_n(y)|$$
は $X$ 上の距離であり、$d$ が定める位相は $X$ のもとの位相と一致する。とくに正則Hausdorffな第2可算空間は距離化可能(距離化可能空間)である(Urysohnの距離化定理。MLUry26)。

分離関数の存在:$\overline{B_i}$ と $X\setminus B_j$ は互いに素な閉集合だから、lem-second-countable-normalとlem-second-countable-urysohnから連続関数がとれる(組は可算個なので可算選択公理を用いる)。
族が点を分離すること:$x\in O$、$O$ 開とする。$x\in B_j\subseteq O$ なる $j$ をとり、正則性から $x\in V\subseteq\overline{V}\subseteq B_j$ なる開集合 $V$ をとり、さらに $x\in B_i\subseteq V$ なる $i$ をとる。$\overline{B_i}\subseteq\overline{V}\subseteq B_j$ なので組 $(i,j)$ は上の列に現れ、対応する $f_n$ は $f_n(x)=1$ かつ $X\setminus O\subseteq X\setminus B_j$ 上で $0$ を満たす。Hausdorff性から一点集合は閉なので、$x\ne y$ に対して $O=X\setminus\{y\}$ をとれば $f_n(x)=1$、$f_n(y)=0$ となる $n$ が存在する。
$d$ が距離であること:$|f_n(x)-f_n(y)|\le1$ より級数は $1$ 以下に収束する。非負性・対称性・三角不等式は各項がそれを満たすことから従う。$x\ne y$ なら上で $f_n(x)\ne f_n(y)$ なる $n$ があるので $d(x,y)>0$、$x=y$ なら明らかに $d(x,y)=0$ である。
位相の一致(もとの位相 $\supseteq$ 距離位相):$\varepsilon>0$ に対し $\sum_{n>N}2^{-n}<\varepsilon/2$ なる $N$ をとる。各 $f_n$ は連続だから、$x$ の開近傍 $W$ を、$n\le N$ のすべてで $|f_n(y)-f_n(x)|<\varepsilon/2$ となるようにとれる(有限個の交叉)。$y\in W$ なら $d(x,y)<(\varepsilon/2)\sum_{n\le N}2^{-n}+\varepsilon/2<\varepsilon$ である。よって距離球はもとの位相で近傍を含む。
位相の一致(距離位相 $\supseteq$ もとの位相):$x\in O$、$O$ 開とする。上のとおり $f_n(x)=1$ かつ $X\setminus O$ 上 $f_n=0$ なる $n$ がある。$d(x,y)<2^{-n-1}$ ならば $2^{-n}|f_n(x)-f_n(y)|\le d(x,y)<2^{-n-1}$ より $|1-f_n(y)|<1/2$、すなわち $f_n(y)>1/2>0$ なので $y\in O$ である。よってもとの開集合は距離球を含む。以上より二つの位相は一致する。$X=\emptyset$ や一点空間でも退化した場合として成立する。$\square$

この構成では、正則性が「近傍を閉包ごと縮める」役、第2可算性が「全点で共有する可算個の観測値へ絞る」役、Hausdorff性が「異なる点の距離を正にする」役を担っている。係数 $2^{-n}$ の尾部をいくらでも小さくできるので、距離の近さを有限個の観測値で制御できる。各点に別々の基本近傍系があるだけの第1可算性では、この「全点で共有する可算族」が得られないので、同じ構成はできない。
多様体論では、局所Euclid性とHausdorff性に加えて第2可算性を課すことが多い。これは1の分割の存在などを保証するためである。Hausdorffかつ局所Euclidな位相空間では、第2可算性・Lindelöf性・$\sigma$コンパクト(σコンパクト空間)性の三つが同値になる。この同値の言明と証明は Lindelöf空間 が所有する。連結な位相多様体ではさらにパラコンパクト性とも同値になることが知られているが、この言明を扱うのは パラコンパクト空間 であって本記事ではない。

選択公理の使いどころ

本記事の証明で選択公理を使っているのは次の箇所である。必要な強さは一様ではない。
可算選択公理で足りるもの:prf-second-countable-implicationsの可分性の向き(各基底要素からの一点の選択)とLindelöf性の向き(各基底要素に対する被覆元の選択)、prf-second-countable-metric-equivalenceの 3 $\implies$ 1(各 $n$ に対する可算部分被覆の選択)、prf-second-countable-space-countable-product(各因子の開基の選択)、prf-second-countable-space-cofinite(非可算集合から可算無限部分集合をとる箇所と、可算個の有限集合の合併が高々可算であること)、prf-second-countable-metric-construction(分離関数の選択)。
従属選択公理を要するもの:prf-second-countable-urysohnの二進有理数ごとの開集合の構成。各段階の挿入は有限個だが、次の段階に現れる候補が前の段階での選び方に依存する再帰なので、各段階の選択を独立に行う可算選択公理だけではそのままでは整合する列が得られない。
選択公理を使わないもの:prf-second-countable-implicationsの第1可算性の向き、prf-second-countable-metric-equivalenceの 2 $\implies$ 1。prf-second-countable-normalはprop-second-countable-implicationsと Lindelöf空間 の引用だけからなり、それ自身では選択を行わない。

本記事の可算性公理の扱いは、おおむね標準的な教科書 Mun00・Engelking89 と講義ノート UCR08、および形式化された記述 MLTop26 に従う。

関連項目

参考文献

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