Hodge指数定理(Hodge index theorem)とは、代数閉体上の滑らかで連結な射影曲面 $X$ の豊富な因子 $H$ と、$D\cdot H=0$ をみたし数値的に $0$ と同値でない因子 $D$ について、自己交点数が $D^2<0$ となるという定理である。言い換えると、数値的同値類の群を実数係数に広げた空間の上で、交点形式は符号 $(1,\rho-1)$ をもつ($\rho$ は Picard 数)。曲面の Riemann–Roch の定理から任意の標数で証明でき、$(D^2)(H^2)\le(D\cdot H)^2$ という逆向きの Cauchy–Schwarz 不等式を与える。曲線の積に当てると、有限体上の曲線の有理点の個数についての Weil の評価が導かれる。
前提知識: 曲面の交点形式とRiemann–Rochの定理, 豊富な可逆層, 数値的同値, Serre双対性
代数曲面の上では、2 つの因子 $D,E$ に整数の交点数 $D\cdot E$ が定まり、対称な双線形形式(交点形式)になる。Hodge 指数定理(Hodge index theorem)は、この形式の符号を決める定理である。豊富な因子 $H$ を 1 つとると $H^2>0$ であり、$H$ と交点数 $0$ の因子 $D$ は、数値的に $0$ と同値でない限り $D^2<0$ をみたす。すなわち、交点形式は「$H$ の方向に正、その直交補空間で負」であり、数値的同値類の群 $\operatorname{Num}(X)$ を実数係数に広げると符号 $(1,\rho-1)$ をもつ($\rho$ は Picard 数)。
この性質から、ふつうの Cauchy–Schwarz の不等式と向きが逆の不等式 $(D^2)(H^2)\le(D\cdot H)^2$ が出る。曲線の積 $C\times C$ に当てると、有限体上の曲線の有理点の個数についての Weil の評価 $|N-q-1|\le2g\sqrt q$(曲線の Riemann 予想の類似)が導かれる。
複素数体上では、Hodge 理論から同じ符号が得られる(Hodge–Riemann双線形関係)。ここで述べる代数的な証明は曲面の Riemann–Rochの定理 と Serre 双対性を使い、Hodge 理論を使わないので、任意の標数の代数閉体で成り立つ。この記事では、豊富な因子と有効因子の交点数の正値性と、Riemann–Roch による有効性を準備し、豊富性の和についての補題を示して主定理を証明し、符号と逆向きの不等式を導いて、Weil の評価まで進む。
以下、$k$ は代数閉体で、曲面 $X$ とは $k$ 上の滑らかで連結な 2 次元の射影スキームをいう。記号は 曲面の交点形式とRiemann–Rochの定理 に従う。$X$ の因子は Cartier 因子と同じで、線形同値類の群は $\operatorname{Pic}X$ である。交点数 $D\cdot E$ は線形同値類だけで決まる対称双線形形式で(同記事の定理「交点形式」の 1)、$C,D$ が共通の既約成分をもたない曲線($0$ でない有効因子)なら $C\cdot D\ge0$、とくに交わらなければ $0$ である(同 3)。$K_X$ を標準因子とすると、曲面の Riemann–Roch の定理
$$
\chi(\mathcal{O}_X(D))=\chi(\mathcal{O}_X)+\tfrac12D\cdot(D-K_X)
$$
と Serre 双対性 $h^2(\mathcal{O}_X(D))=h^0(\mathcal{O}_X(K_X-D))$ が成り立つ(同記事の定理「曲面の Riemann–Roch の定理」と節「設定と記号」)。
因子 $D$ が豊富であるとは、可逆層 $\mathcal{O}_X(D)$ が 豊富な可逆層 であること、すなわち任意の連接層 $\mathcal{F}$ に対しある $n_0$ があって、$n\ge n_0$ ならいつも $\mathcal{F}\otimes\mathcal{O}_X(nD)$ が大域切断で生成されることをいう(Har77 II §7, p. 153)。$D$ が豊富なら、ある $m\ge1$ について $mD$ は非常に豊富である(同 Theorem 7.6, p. 154)。
因子 $D$ が数値的に $0$ と同値($D\equiv0$)とは、すべての因子 $E$ について $D\cdot E=0$ となることをいう(数値的同値)。$\operatorname{Num}(X):=\operatorname{Pic}X/\{D\equiv0\}$ とおく。$\operatorname{Num}(X)$ は有限階数の自由アーベル群で(Néron–Severi の定理による。数値的同値 の節「$N^1(X)$ の構造」、Vak25 §18.4.12, p. 513。この記事では証明しない)、その階数 $\rho=\rho(X)$ を Picard 数という。交点形式は $\operatorname{Num}(X)$ の上の非退化な対称双線形形式を定める。
豊富な因子について、次の 2 つの事実を使う。どちらも 代数曲面 に証明がある。
$H$ を豊富な因子、$D$ を任意の因子とする。十分大きい $n$ について $D+nH$ は豊富である。
$H$ の豊富性を $\mathcal{F}=\mathcal{O}_X(D)$ に当てると、ある $n_0$ があり、$n\ge n_0$ なら $\mathcal{O}_X(D+nH)$ は大域切断で生成される。$n>n_0$ とし、$\mathcal{M}:=\mathcal{O}_X(D+(n-1)H)$、$\mathcal{A}:=\mathcal{O}_X(H)$ とおくと、$\mathcal{O}_X(D+nH)=\mathcal{M}\otimes\mathcal{A}$ で、$\mathcal{M}$ は大域切断で生成される。任意の連接層 $\mathcal{F}$ について、$\mathcal{F}\otimes\mathcal{A}^{\otimes j}$ は十分大きい $j$ で大域切断で生成され、$\mathcal{M}^{\otimes j}$ はすべての $j$ で大域切断で生成される。大域切断で生成される層のテンソル積は、切断の積で生成されるのでまた大域切断で生成される。よって $\mathcal{F}\otimes(\mathcal{M}\otimes\mathcal{A})^{\otimes j}$ は十分大きい $j$ で大域切断で生成され、$D+nH$ は豊富である。$\square$
$X$ を曲面、$H$ を豊富な因子とする。因子 $D$ が $D\cdot H=0$ をみたし、数値的に $0$ と同値でない($D\not\equiv0$)なら、
$$
D^2<0
$$
である。
段 1($D^2>0$ はありえない)。 $D\cdot H=0$ かつ $D^2>0$ と仮定する。lem-hit-ample-sum により、十分大きい $n$ で $H':=D+nH$ は豊富であり、$D\cdot H'=D^2+n\,D\cdot H=D^2>0$ である。代数曲面 の命題「自己交点数が正の因子の倍数」を $D$ と $H'$ に当てると、ある $m\ge1$ について $mD$ は有効因子 $E$ と線形同値である。$E=0$ なら $mD$ は $0$ と線形同値で $m^2D^2=0$ となり $D^2>0$ に反するので、$E\ne0$ である。同記事の補題「有効因子と豊富な因子の交点数」を $E$ と $H$ に当てると $m\,D\cdot H=E\cdot H>0$ となり、$D\cdot H=0$ に反する。
段 2($D^2=0$ もありえない)。 $D\cdot H=0$、$D^2=0$、$D\not\equiv0$ と仮定する。$D\cdot E\ne0$ となる因子 $E$ がある。
$$
E':=(H^2)E-(E\cdot H)H
$$
とおくと $E'\cdot H=0$ であり、$D\cdot E'=(H^2)(D\cdot E)\ne0$ である($H^2>0$ は「準備」の節で示した)。整数 $t$ について $D_t:=tD+E'$ とおくと、$D_t\cdot H=0$ で
$$
D_t^2=t^2D^2+2t\,D\cdot E'+E'^2=2t\,D\cdot E'+E'^2
$$
である。$t$ を $D\cdot E'$ と同じ符号で絶対値を十分大きくとれば $D_t^2>0$ となり、段 1 に反する。
段 1・2 により $D^2<0$ である。$\square$
段 1 は「$D^2>0$ なら $D$ か $-D$ の大きな倍が有効になる」ことを使い、有効な因子は豊富な因子と正に交わるので $D\cdot H=0$ に反する、という筋である。証明は Har77 V, Theorem 1.9(p. 364)と同じ筋である。
$X$ を曲面、$\rho$ を Picard 数とする。$\operatorname{Num}(X)\otimes\mathbb{R}$ の上の交点形式は非退化で、符号 $(1,\rho-1)$ をもつ。豊富な因子 $H$ の類 $h$ について、$h$ の直交補空間の上で交点形式は負定値である。
$V:=\operatorname{Num}(X)\otimes\mathbb{R}$ とし、$\operatorname{Num}(X)$ の $\mathbb{Z}$ 基底での交点形式のグラム行列を $G$ とする。$\operatorname{Num}(X)$ の上で形式は非退化なので、$Gx=0$ となる整数ベクトルは $0$ だけであり、$G$ は $\mathbb{Q}$ 上、したがって $\mathbb{R}$ 上でも正則である。よって形式は $V$ の上で非退化である。
$h^2>0$ なので、$V=\mathbb{R}h\oplus h^\perp$ は直交分解であり、形式は $h^\perp$ の上でも非退化である。$h^\perp$ は有理数係数の 1 次式 $x\mapsto x\cdot h$ の核なので、有理点 $h^\perp\cap(\operatorname{Num}(X)\otimes\mathbb{Q})$ が $h^\perp$ で稠密である。$0$ でない有理点 $v$ は、分母を払うと $D\cdot H=0$、$D\not\equiv0$ をみたす因子 $D$ の類の正の有理数倍なので、thm-hit-main により $v^2<0$ である。連続性から形式は $h^\perp$ の上で半負定値であり、非退化な半負定値形式は負定値である($v^2=0$ なら、半負定値形式の Cauchy–Schwarz の不等式 $(v\cdot w)^2\le(v^2)(w^2)$ により $v$ はすべての $w$ と直交する)。$h$ 方向で正、$h^\perp$($\rho-1$ 次元)で負定値なので、符号は $(1,\rho-1)$ である。$\square$
$X$ を曲面とする。
1:$D':=(H^2)D-(D\cdot H)H$ とおくと $D'\cdot H=0$ で、
$$
D'^2=(H^2)^2D^2-2(H^2)(D\cdot H)^2+(D\cdot H)^2H^2=(H^2)\bigl((H^2)(D^2)-(D\cdot H)^2\bigr)
$$
である。thm-hit-main により $D'^2\le0$ で、$D'\not\equiv0$ なら $D'^2<0$ である。$H^2>0$ なので主張が従う。
2:$D,E$ の類が $V=\operatorname{Num}(X)\otimes\mathbb{R}$ で張る部分空間 $W$ を考える。$\dim W\le1$ なら $E$ の類は $D$ の類の実数倍で等号が成り立つ。$\dim W=2$ のとき、基底 $D,E$ についての $W$ 上のグラム行列式 $(D^2)(E^2)-(D\cdot E)^2$ が正なら、$D^2>0$ と合わせて形式は $W$ の上で正定値になる。しかし cor-hit-signature により $V$ には $2$ 次元の正定値部分空間はない(あれば $h^\perp$ と $0$ でない共通部分をもち、そこで負定値性に反する)。よって行列式は $0$ 以下である。$\square$
thm-hit-main の仮定を 1 つずつ外すと、結論 $D^2<0$ は成り立たなくなる。
| 外す条件 | 反例 | 成り立たなくなること |
|---|---|---|
| $H$ が豊富(負の曲線に替える) | 1 点の爆発で $H=e$、$D=\ell$ | $D^2<0$($\ell^2=1$) |
| $H$ が豊富(自己交点数 $0$ の曲線に替える) | $\mathbb{P}^1\times\mathbb{P}^1$ で $H=f_1$、$D=f_1$ | $D^2<0$($f_1^2=0$) |
| $D\not\equiv0$(線形同値で $0$ でないに弱める) | 楕円曲線 $E_0$ について $X=E_0\times\mathbb{P}^1$、$D=p_1^*(P-O)$ | $D^2<0$($D^2=0$) |
1 行目:$e\cdot\ell=0$ で $\ell\not\equiv0$ だが $\ell^2=1>0$ である。$e$ は $e^2=-1<0$ なので、「準備」の節の $H^2>0$ により豊富でない。
2 行目:$f_1$ は有効で $f_1\cdot f_1=0$、$f_1\cdot f_2=1$ なので $f_1\not\equiv0$ だが、$D\cdot H=f_1^2=0$ かつ $D^2=0$ である。$f_1^2=0$ なので $f_1$ は豊富でない。
3 行目:$P\ne O$ を $E_0$ の閉点とし、$\mathcal{O}_{E_0}(P-O)$ は次数 $0$ で自明でない可逆層である。$p_1\colon X\to E_0$ は切断 $s(x)=(x,\infty)$ をもち $s^*p_1^*=\mathrm{id}$ なので、$D=p_1^*(P-O)$ は $0$ と線形同値でない。一方、$D=F_P-F_O$($F_x=p_1^{-1}(x)$ はファイバー)である。任意の因子 $E$ は滑らかな曲線 $A,B$ の差 $A-B$ と線形同値なので(曲面の交点形式とRiemann–Rochの定理 の補題「滑らかな曲線の差」)、同記事の定理「交点形式」の 2 により $F_x\cdot A=\deg\bigl((p_1|_A)^*\mathcal{O}_{E_0}(x)\bigr)$ を $A$ の各連結成分で足したものである。$p_1$ がその成分の上で定値なら $0$、そうでなければ $p_1|_{A_j}$ の次数(Har77 II, Proposition 6.9, p. 138)で、どちらも $x$ によらない。$B$ も同じなので $D\cdot E=0$、すなわち $D\equiv0$ であり、$D\cdot H=0$、$D^2=0$ となる。この行は、定理の仮定が「数値的に」$0$ でないことでなければならないことを示す。
$C,C'$ を滑らかで連結な射影曲線、$X=C\times C'$(曲面である)、$f_1=\{a\}\times C'$、$f_2=C\times\{b\}$($a\in C$、$b\in C'$ は閉点)とする。任意の因子 $D$ について
$$
D^2\le2\,(D\cdot f_1)(D\cdot f_2)
$$
である。
$f_1$ と $f_2$ は点 $(a,b)$ だけで横断的に交わるので $f_1\cdot f_2=1$ である($a,b$ での局所パラメータの引き戻しが $(a,b)$ の局所環の極大イデアルを生成する)。$\mathcal{O}_X(f_1)=p_1^*\mathcal{O}_C(a)$ の $f_1$ への制限は、$p_1$ が $f_1$ の上で定値なので自明で、曲面の交点形式とRiemann–Rochの定理 の定理「交点形式」の 2 により $f_1^2=0$ である。同様に $f_2^2=0$。よって $f_1,f_2$ の類は $V=\operatorname{Num}(X)\otimes\mathbb{R}$ の中で、グラム行列 $\begin{pmatrix}0&1\\1&0\end{pmatrix}$ の非退化な $2$ 次元部分空間 $W$ を張り、$W$ の符号は $(1,1)$ である。$V=W\oplus W^\perp$ で、cor-hit-signature により $W^\perp$ の符号は $(0,\rho-2)$、すなわち負定値である。$D$ の類を $\alpha f_1+\beta f_2+w$($w\in W^\perp$)と書くと $D\cdot f_1=\beta$、$D\cdot f_2=\alpha$ で、$D^2=2\alpha\beta+w^2\le2\alpha\beta$ である。$\square$
$C_0$ を有限体 $\mathbb{F}_q$ 上の滑らかで幾何学的に連結な射影曲線、$g$ をその種数、$N$ を $\mathbb{F}_q$ 有理点の個数とする。このとき
$$
|N-q-1|\le2g\sqrt q
$$
である。
要点:$k=\bar{\mathbb{F}}_q$ 上の $C=C_0\times_{\mathbb{F}_q}k$ と、$q$ 乗の Frobenius 射 $F\colon C\to C$ のグラフ $\Gamma\subset C\times C$、対角線 $\Delta$ をとると、$\Gamma\cdot\Delta=N$、$\Gamma^2=q(2-2g)$、$\Delta^2=2-2g$ である。$D=r\Gamma+s\Delta$ に prop-hit-product を当てると $g q\,r^2-(N-q-1)rs+g\,s^2\ge0$(すべての整数 $r,s$)を得て、この 2 次形式の判別式から主張が従う。
$F$ は $\mathcal{O}_{C_0}\otimes k$ の上で $u\otimes\lambda\mapsto u^q\otimes\lambda$ で定まる $k$ 射で、次数 $q$ の有限射である(Har77 IV, Example 2.4.3, p. 302 の $k$ 線形 Frobenius を繰り返したもの)。$C$ の閉点で $F$ の固定点は、$\mathbb{F}_q$ 上の射影的な埋め込みで座標が $\mathbb{F}_q$ に入る点、すなわち $C_0$ の $\mathbb{F}_q$ 有理点であり、ちょうど $N$ 個ある。
グラフの自己交点数.$\varphi\colon C\to C$ を有限射、$\Gamma_\varphi$ をそのグラフとする。$i=(\mathrm{id},\varphi)\colon C\to\Gamma_\varphi$ は同型で、$\Omega_{C\times C}=p_1^*\Omega_C\oplus p_2^*\Omega_C$(Stacks Tag 01V1)の $i$ による引き戻しは $\Omega_C\oplus\varphi^*\Omega_C$、そこから $\Omega_C$ への写像は $(a,b)\mapsto a+\varphi^\sharp(b)$($\varphi^\sharp$ は微分形式の引き戻し)である。余法完全列 $0\to\mathcal{O}(-\Gamma_\varphi)|_{\Gamma_\varphi}\to i^*\Omega_{C\times C}\to\Omega_C\to0$(Stacks Tag 06AA)の核は $\{(-\varphi^\sharp(b),b)\}\cong\varphi^*\Omega_C$ なので、$\deg\mathcal{O}(-\Gamma_\varphi)|_{\Gamma_\varphi}=\deg\varphi\cdot(2g-2)$ である(Har77 II, Proposition 6.9, p. 138 と IV, Example 1.3.3, p. 296)。曲面の交点形式とRiemann–Rochの定理 の定理「交点形式」の 2 により $\Gamma_\varphi^2=\deg\varphi\cdot(2-2g)$。$\varphi=F$ で $\Gamma^2=q(2-2g)$、$\varphi=\mathrm{id}$ で $\Delta^2=2-2g$ である。
ファイバーとの交点数.同じ定理の 2 により $\Gamma\cdot f_1=\deg(p_1^*\mathcal{O}_C(a)|_\Gamma)=\deg\mathcal{O}_C(a)=1$、$\Gamma\cdot f_2=\deg F^*\mathcal{O}_C(b)=q$、$\Delta\cdot f_1=\Delta\cdot f_2=1$ である。
$\Gamma\cdot\Delta=N$.$F$ の次数は $q>1$ なので $\Gamma\ne\Delta$ で、2 つは共通の既約成分をもたない。$\Gamma\cap\Delta$ は $F$ の固定点 $P$ の組 $(P,P)$ である。$t$ を $C_0$ の $P$ での一意化元とすると $t$ は $C$ の $P$ でも一意化元で $F^*t=t^q$ である。$u=p_1^*t$、$v=p_2^*t$ は $(P,P)$ での局所環の極大イデアルを生成する。$v-u$ は $\Delta$ の上で消え、極大イデアルの 2 乗に入らないので、$\Delta$ の局所方程式である。同様に $v-u^q$ は $\Gamma$ の局所方程式である。$(v-u,\,v-u^q)=(v-u,\,u(1-u^{q-1}))=(v-u,\,u)$ は極大イデアルなので局所交点数は $1$ で、$\Gamma\cdot\Delta=N$ である。
計算.$D=r\Gamma+s\Delta$ について $D\cdot f_1=r+s$、$D\cdot f_2=rq+s$、$D^2=r^2q(2-2g)+2rsN+s^2(2-2g)$ である。prop-hit-product の不等式 $D^2\le2(r+s)(rq+s)$ を整理すると $g q\,r^2-(N-q-1)rs+g\,s^2\ge0$ となる。左辺は斉次 2 次式なので有理数 $r,s$ でも成り立ち、連続性から実数でも成り立つ。半正定値な 2 元 2 次形式の判別式は $0$ 以下なので $(N-q-1)^2\le4g^2q$ である。
prop-hit-product と thm-hit-weil の筋は Har77 V, Exercise 1.9・1.10(p. 368)に演習として示されている。$g=1$ の楕円曲線では $|N-q-1|\le2\sqrt q$ となり、これは楕円曲線についての Hasse の定理である。この評価は Weil予想 のうち曲線の場合の Riemann 予想の類似にあたる(合同ゼータ関数)。
$k=\mathbb{C}$ のとき、交点形式は $H^2(X,\mathbb{Z})$ のカップ積を代数的な類に制限したものであり、Hodge 理論によって $H^{1,1}$ の実部の上でカップ積が符号 $(1,h^{1,1}-1)$ をもつことが示される(BHPV04 IV, Theorem 2.14, p. 143)。BHPV04 IV, Corollary 2.16(p. 143)は、これと Lefschetz の $(1,1)$ 定理から、射影的な複素曲面について、有理係数の因子 $D,E$ が $D^2>0$、$D\cdot E=0$ をみたせば $E^2\le0$ で、等号は $E$ が有理係数のホモロジーで $0$ のときに限ることを導いており、thm-hit-main はその特別な場合である。コンパクト Kähler 多様体の $(1,1)$ 類についての形と、偶数次元の中間コホモロジーの符号数の公式は Hodge–Riemann双線形関係 にある。この記事の証明は Hodge 理論を使わないので、正標数でも成り立つ。
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