蝶の定理(butterfly theorem)とは、円の弦 $PQ$ の中点 $M$ を通る 2 本の弦 $AB$、$CD$(直線 $PQ$ とも互いとも異なる直線の上)をとり、直線 $AD$、$BC$ が直線 $PQ$ と交わる点を $X$、$Y$ とすると $MX=MY$ となる、という定理である。$M$ を原点、$PQ$ を $x$ 軸にとると円の式に $x$ の 1 次の項がないことから、解と係数の関係で示せる。$M$ が弦の中点でないときは、符号つきの長さで $\frac1{\overline{MX}}+\frac1{\overline{MY}}=\frac1{\overline{MP}}+\frac1{\overline{MQ}}$ が成り立つ。円を楕円などの 2 次曲線に替えても、$M$ が弦の中点で曲線の上になければ $MX=MY$ である。
前提知識: 解と係数の関係, 円と直線の位置関係, 加法定理, 方べきの定理(高校数学)
円の弦 $PQ$ の中点 $M$ を通るように、さらに 2 本の弦 $AB$、$CD$ を引く。4 点 $A$、$B$、$C$、$D$ を「たすき掛け」に結んだ直線 $AD$、$BC$ は、直線 $PQ$ とどこで交わるだろうか。この問いに答える定理を 蝶の定理 という(主張は Wei26 で確かめられる)。
円 $x^2+(y-3)^2=25$、つまり $x^2+y^2-6y-16=0$(中心 $(0,3)$、半径 $5$)を考える。
(1) 弦 $PQ$。$y=0$ を代入すると $x^2=16$ なので、$P(-4,0)$、$Q(4,0)$ で、中点は原点 $M(0,0)$ である。
(2) 弦 $AB$。直線 $y=\dfrac13x$ を代入すると $x^2+\dfrac19x^2-2x-16=0$、$9$ 倍して $10x^2-18x-144=0$、$2$ で割って
$$
5x^2-9x-72=(x+3)(5x-24)=0
$$
なので、$A(-3,-1)$、$B\left(\dfrac{24}5,\dfrac85\right)$ である。
(3) 弦 $CD$。直線 $x=0$ を代入すると $y^2-6y-16=(y+2)(y-8)=0$ なので、$C(0,-2)$、$D(0,8)$ である。
(4) 直線 $AD$ は $(-3,-1)$ と $(0,8)$ を通るので傾きは $3$、式は $y=3x+8$ である。$y=0$ とおくと $X\left(-\dfrac83,0\right)$ である。直線 $BC$ は $(0,-2)$ と $\left(\dfrac{24}5,\dfrac85\right)$ を通るので傾きは $\dfrac{\frac85+2}{\frac{24}5}=\dfrac{18}{24}=\dfrac34$、式は $y=\dfrac34x-2$ である。$y=0$ とおくと $Y\left(\dfrac83,0\right)$ である。
$MX=MY=\dfrac83$ で、$M$ は線分 $XY$ の中点になっている。
(5) 組み方を変えて、直線 $AC$ と $BD$ をとる。直線 $AC$ は $(-3,-1)$ と $(0,-2)$ を通るので $y=-\dfrac13x-2$ で、$y=0$ とおくと $X'(-6,0)$ である。直線 $BD$ は $\left(\dfrac{24}5,\dfrac85\right)$ と $(0,8)$ を通るので $y=-\dfrac43x+8$ で、$Y'(6,0)$ である。$X'$、$Y'$ は弦 $PQ$ の外(延長の上)にあるが、やはり $MX'=MY'=6$ である。
弦 PQ の中点 M を通る 2 本の弦 AB、CD。直線 AD と BC が PQ と交わる点 X、Y は M から等しい距離にある
組を変えた直線 AC と BD は、PQ の延長の上の X′、Y′ で交わり、ここでも M から等しい距離にある
この記事で答える問いは次の 3 つである。
| 高校の計算 | この記事の言葉 | 大学の言葉 |
|---|---|---|
| 直線と円の交点の 2 次方程式 | 原点を通る直線の上の媒介変数 $t$(lem-bf-param) | 極座標、射影直線の上の点 |
| 解と係数の関係 | $\dfrac1{t_A}+\dfrac1{t_B}$ が方向だけで決まる | 2 次式の係数の比 |
| 2 点を通る直線の $x$ 切片 | $\dfrac1x$ の式(lem-bf-intercept) | — |
| 4 点を通る円と直線の組 | 別証(2 次曲線の束) | 4 点を通る 2 次曲線の族と対合 |
この記事では、$M$ を原点、直線 $PQ$ を $x$ 軸にとる。$P(-p,0)$、$Q(p,0)$($p>0$)とし、円の中心を $(a,b)$ とすると、$P$、$Q$ は中心から等しい距離にあるので $(a+p)^2+b^2=(a-p)^2+b^2$、展開して $4ap=0$、つまり $a=0$ である。中心は $y$ 軸の上にあり、円の方程式は $x^2+(y-k)^2=r^2$、展開して
$$
x^2+y^2-2ky+f=0\qquad(f=k^2-r^2)
$$
の形になる。$x$ の 1 次の項がないことが鍵である。$y=0$ を代入すると $x^2+f=0$ で、解が $\pm p$ なので $f=-p^2<0$ である。ex-bf-start では $k=3$、$f=-16$、$p=4$ である。
原点を通る直線は、向き $\alpha$($x$ 軸の正の向きから測った角、$0^\circ\le\alpha<180^\circ$)を決めると、点 $t(\cos\alpha,\sin\alpha)$($t$ は実数)の集まりとして表せる。$\lvert t\rvert$ は原点からの距離で、$t$ の符号は原点のどちら側にあるかを表す。
円 $x^2+y^2-2ky+f=0$($f\ne0$)と、原点を通る向き $\alpha$ の直線が 2 点 $t_1(\cos\alpha,\sin\alpha)$、$t_2(\cos\alpha,\sin\alpha)$ で交わるとする。このとき $t_1$、$t_2$ は $0$ でなく
$$
t_1+t_2=2k\sin\alpha,\qquad t_1t_2=f,\qquad \frac1{t_1}+\frac1{t_2}=\frac{2k\sin\alpha}f
$$
である。
点 $t(\cos\alpha,\sin\alpha)$ を円の方程式に代入すると、$\cos^2\alpha+\sin^2\alpha=1$ から
$$
t^2-2k\sin\alpha\cdot t+f=0
$$
となる。交点の $t_1$、$t_2$ はこの 2 次方程式の 2 つの解なので、解と係数の関係 により $t_1+t_2=2k\sin\alpha$、$t_1t_2=f$ である。$f\ne0$ なので $t_1$、$t_2$ は $0$ でなく、$\dfrac1{t_1}+\dfrac1{t_2}=\dfrac{t_1+t_2}{t_1t_2}=\dfrac{2k\sin\alpha}f$ である。$\square$
原点 M を通る直線の上の点を t(cos α, sin α) で表す。t の符号は M のどちら側かを表す
$t_1t_2=f$ は、原点 $M$ を通る弦が $M$ で分けられる 2 つの部分の長さの積が、弦の向きによらず $\lvert f\rvert=p^2=MP\cdot MQ$ になることを言っている。これは 方べきの定理(高校数学) の、円の内部の点についての形である。$\dfrac1{t_1}+\dfrac1{t_2}$ は、2 つの交点を求めなくても、直線の向き $\alpha$ と円の係数だけで決まる。これがこの記事の計算の中心である。
ex-bf-start の弦 $AB$ は直線 $y=\dfrac13x$ の上にあり、向き $\alpha$ は $\cos\alpha=\dfrac3{\sqrt{10}}$、$\sin\alpha=\dfrac1{\sqrt{10}}$ を満たす。$A(-3,-1)=-\sqrt{10}\left(\dfrac3{\sqrt{10}},\dfrac1{\sqrt{10}}\right)$ なので $t_A=-\sqrt{10}$、$B\left(\dfrac{24}5,\dfrac85\right)=\dfrac{8\sqrt{10}}5\left(\dfrac3{\sqrt{10}},\dfrac1{\sqrt{10}}\right)$ なので $t_B=\dfrac{8\sqrt{10}}5$ である。
$$
t_At_B=-\sqrt{10}\cdot\frac{8\sqrt{10}}5=-16=f,\qquad t_A+t_B=\frac{3\sqrt{10}}5=2\cdot3\cdot\frac1{\sqrt{10}}=2k\sin\alpha
$$
で、lem-bf-param のとおりである。弦 $CD$ は $y$ 軸($\alpha=90^\circ$)の上にあり、$t_C=-2$、$t_D=8$ で、$t_Ct_D=-16$、$t_C+t_D=6=2\cdot3\cdot\sin90^\circ$ である。
次に、2 点を結ぶ直線が $x$ 軸と交わる点を、$t$ と向きで表す。
原点を通る異なる 2 本の直線(向き $\alpha$、$\beta$、$\alpha\ne\beta$)の上に、それぞれ原点と異なる点 $U=u(\cos\alpha,\sin\alpha)$、$V=v(\cos\beta,\sin\beta)$ をとる。直線 $UV$ が $x$ 軸と点 $(x,0)$ で交わり、$x\ne0$ ならば
$$
\frac1x=\frac1{\sin(\beta-\alpha)}\left(\frac{\sin\beta}u-\frac{\sin\alpha}v\right)
$$
である。
段 1($x$ 切片の式)。2 点 $(x_1,y_1)$、$(x_2,y_2)$($y_1\ne y_2$)を通る直線は $(y_2-y_1)(X-x_1)-(x_2-x_1)(Y-y_1)=0$ である。$Y=0$ とおいて $X$ について解くと
$$
X=x_1-\frac{(x_2-x_1)y_1}{y_2-y_1}=\frac{x_1y_2-x_2y_1}{y_2-y_1}
$$
である。直線 $UV$ が $x$ 軸と 1 点で交わるので $x$ 軸に平行でなく、$y_1\ne y_2$ である。
段 2(代入)。$x_1=u\cos\alpha$、$y_1=u\sin\alpha$、$x_2=v\cos\beta$、$y_2=v\sin\beta$ を代入すると、分子は加法定理(加法定理)により
$$
uv(\cos\alpha\sin\beta-\sin\alpha\cos\beta)=uv\sin(\beta-\alpha)
$$
で、分母は $v\sin\beta-u\sin\alpha$ である。よって $x=\dfrac{uv\sin(\beta-\alpha)}{v\sin\beta-u\sin\alpha}$ である。
段 3(逆数)。$x\ne0$ なので分子 $uv\sin(\beta-\alpha)\ne0$ で、逆数をとって分子を $uv$ で割ると
$$
\frac1x=\frac{v\sin\beta-u\sin\alpha}{uv\sin(\beta-\alpha)}=\frac1{\sin(\beta-\alpha)}\left(\frac{\sin\beta}u-\frac{\sin\alpha}v\right)
$$
である。$\square$
円の弦 $PQ$ の中点を $M$ とする。$M$ を通る 2 本の弦 $AB$、$CD$ を、どちらも直線 $PQ$ とは異なる直線の上に、互いに異なる直線の上にとる。直線 $AD$、$BC$ が直線 $PQ$ と交わるとし、その交点を $X$、$Y$ とすると
$$
MX=MY
$$
であり、$M$ は線分 $XY$ の中点である。直線 $AC$、$BD$ が直線 $PQ$ と交わるときも、その交点を $X'$、$Y'$ とすると同じく $MX'=MY'$ である。
方針:$M$ を原点、直線 $PQ$ を $x$ 軸にとり、$X$、$Y$ の $x$ 座標の逆数を lem-bf-intercept で書く。2 つを足すと、lem-bf-param の $\dfrac1{t_1}+\dfrac1{t_2}$ が現れて $0$ になる。
段 1(座標)。「準備」の節のとおり、円は $x^2+y^2-2ky+f=0$、$f=-p^2\ne0$ と書ける。弦 $AB$ の向きを $\alpha$、弦 $CD$ の向きを $\beta$ とする。2 本は $PQ$ と異なる直線なので $\sin\alpha\ne0$、$\sin\beta\ne0$ で、互いに異なる直線なので $\alpha\ne\beta$、つまり $\sin(\beta-\alpha)\ne0$ である。
$$
A=t_A(\cos\alpha,\sin\alpha),\quad B=t_B(\cos\alpha,\sin\alpha),\quad C=t_C(\cos\beta,\sin\beta),\quad D=t_D(\cos\beta,\sin\beta)
$$
と書く。lem-bf-param により $t_A$、$t_B$、$t_C$、$t_D$ は $0$ でない。
段 2($X$、$Y$ は $M$ と異なる)。$X=M$ とすると、直線 $AD$ が $M$ を通り、$D$ が直線 $AM$、つまり直線 $AB$ の上にあることになる。直線 $AB$ と円の共有点は $A$、$B$ だけなので $D=A$ または $D=B$ となる。$D$ は直線 $CD$ の上にもあり、直線 $AB$ と $CD$ の共有点は $M$ だけなので $D=M$ となるが、$M$ は円の内部にあって円の上にないので矛盾する。同じく $Y\ne M$ である。$X$、$Y$ の $x$ 座標を $x_X$、$x_Y$ とすると、どちらも $0$ でない。
段 3(逆数を書く)。lem-bf-intercept を $U=A$、$V=D$ に使うと
$$
\frac1{x_X}=\frac1{\sin(\beta-\alpha)}\left(\frac{\sin\beta}{t_A}-\frac{\sin\alpha}{t_D}\right)
$$
である。$U=B$、$V=C$ に使うと
$$
\frac1{x_Y}=\frac1{\sin(\beta-\alpha)}\left(\frac{\sin\beta}{t_B}-\frac{\sin\alpha}{t_C}\right)
$$
である。
段 4(足す)。2 式を足して、lem-bf-param の $\dfrac1{t_A}+\dfrac1{t_B}=\dfrac{2k\sin\alpha}f$、$\dfrac1{t_C}+\dfrac1{t_D}=\dfrac{2k\sin\beta}f$ を代入すると
$$
\frac1{x_X}+\frac1{x_Y}=\frac1{\sin(\beta-\alpha)}\left(\sin\beta\cdot\underbrace{\left(\frac1{t_A}+\frac1{t_B}\right)}_{=\frac{2k\sin\alpha}f}-\sin\alpha\cdot\underbrace{\left(\frac1{t_C}+\frac1{t_D}\right)}_{=\frac{2k\sin\beta}f}\right)=\frac{2k\sin\alpha\sin\beta-2k\sin\alpha\sin\beta}{f\sin(\beta-\alpha)}=0
$$
である。
段 5(結論)。$\dfrac1{x_Y}=-\dfrac1{x_X}$ なので $x_Y=-x_X$ で、$X$ と $Y$ は原点 $M$ について対称である。よって $MX=MY$ である。$AC$、$BD$ の組は、段 3・段 4 で $t_C$ と $t_D$ の役割を入れかえた計算になり、段 4 の式は $t_C$、$t_D$ について対称なので、同じく $MX'=MY'$ である。$\square$
ex-bf-start の値で段 3 を確かめる。$t_A=-\sqrt{10}$、$\sin\alpha=\dfrac1{\sqrt{10}}$、$\cos\alpha=\dfrac3{\sqrt{10}}$、$\beta=90^\circ$、$t_D=8$ で、$\sin(\beta-\alpha)=\cos\alpha=\dfrac3{\sqrt{10}}$ なので
$$
\frac1{x_X}=\frac{\sqrt{10}}3\left(\frac1{-\sqrt{10}}-\frac1{8\sqrt{10}}\right)=\frac{\sqrt{10}}3\cdot\left(-\frac9{8\sqrt{10}}\right)=-\frac38
$$
となり、$x_X=-\dfrac83$ である。ex-bf-start の (4) と一致する。
証明では、円の中心の位置 $k$ は最後に消えた。消えた理由は、$\dfrac1{t_A}+\dfrac1{t_B}$ が $\sin\alpha$ に比例し、$\dfrac1{t_C}+\dfrac1{t_D}$ が $\sin\beta$ に比例することにある。$M$ が中点でないと、方程式に $x$ の 1 次の項が入り、この比例が崩れる。次の節でそれを調べる。
$M$ が弦 $PQ$ の中点でない場合も、同じ計算で等式が得られる。直線 $PQ$ の上の点を $M$ からの符号つきの長さ($x$ 座標)で表し、$\overline{MX}$ などと書く。
円の弦 $PQ$ の上の点 $M$($M\ne P$、$M\ne Q$)を通る 2 本の弦 $AB$、$CD$ を、thm-bf-main と同じ条件でとり、直線 $AD$、$BC$ が直線 $PQ$ と交わるとして、その交点を $X$、$Y$ とする。このとき
$$
\frac1{\overline{MX}}+\frac1{\overline{MY}}=\frac1{\overline{MP}}+\frac1{\overline{MQ}}
$$
である。$M$ が中点なら右辺は $0$ で、thm-bf-main になる。
要点:$M$ を原点、$PQ$ を $x$ 軸にとると、円は $x^2+y^2+dx+ey+f=0$($f\ne0$)と書ける。prf-bf-main と同じ計算で、左辺も右辺も $-\dfrac df$ になる。
段 1(右辺)。$y=0$ を代入した $x^2+dx+f=0$ の 2 つの解が $\overline{MP}$、$\overline{MQ}$ で、解と係数の関係から $\dfrac1{\overline{MP}}+\dfrac1{\overline{MQ}}=\dfrac{-d}f$ である。$M$ は $P$、$Q$ と異なるので $f=\overline{MP}\cdot\overline{MQ}\ne0$ である。
段 2($t$ の和)。点 $t(\cos\alpha,\sin\alpha)$ を代入すると $t^2+(d\cos\alpha+e\sin\alpha)t+f=0$ なので、$\dfrac1{t_A}+\dfrac1{t_B}=-\dfrac{d\cos\alpha+e\sin\alpha}f$、同じく $\dfrac1{t_C}+\dfrac1{t_D}=-\dfrac{d\cos\beta+e\sin\beta}f$ である。
段 3(左辺)。prf-bf-main の段 3 の 2 式を足して段 2 を代入すると、$e$ を含む項は $\sin\beta\sin\alpha-\sin\alpha\sin\beta=0$ で消え、
$$\frac1{\overline{MX}}+\frac1{\overline{MY}}=\frac{-d(\sin\beta\cos\alpha-\sin\alpha\cos\beta)}{f\sin(\beta-\alpha)}=\frac{-d\sin(\beta-\alpha)}{f\sin(\beta-\alpha)}=-\frac df$$
である。段 1 と比べて等式を得る。$X$、$Y$ が $M$ と異なることは prf-bf-main の段 2 と同じである。$\square$
ex-bf-start の円 $x^2+y^2-6y-16=0$ で、弦 $PQ$ の上の点 $M(1,0)$ をとる。$M$ は中点ではない。$M$ を通る弦を 2 本とる。
(1) 直線 $y=2(x-1)$ と円の交点は $A(0,-2)$、$B(4,6)$、直線 $y=\dfrac34(x-1)$ と円の交点は $C(5,3)$、$D\left(-\dfrac75,-\dfrac95\right)$ である。
(2) 直線 $AD$ は $y=-\dfrac17x-2$ で $X(-14,0)$、直線 $BC$ は $y=-3(x-4)+6$ で $Y(6,0)$ である。$M$ からの符号つきの長さは $\overline{MX}=-15$、$\overline{MY}=5$ で、$MX\ne MY$ である。
(3) 一方、$\overline{MP}=-5$、$\overline{MQ}=3$ で
$$
\frac1{-15}+\frac15=\frac2{15},\qquad \frac1{-5}+\frac13=\frac2{15}
$$
となり、cor-bf-general の等式は成り立つ。
$y=2x-2$ を代入すると $x^2+(2x-2)^2-6(2x-2)-16=5x^2-20x=0$ で、$x=0,4$ である。$y=\dfrac34(x-1)$ を代入して $16$ 倍すると $16x^2+9(x-1)^2-72(x-1)-256=25x^2-90x-175=0$、$5$ で割って $5x^2-18x-35=(x-5)(5x+7)=0$ で、$x=5,-\dfrac75$ である。
M が弦 PQ の中点でないときは、X と Y は M から等しい距離にない
prf-bf-main で円の方程式について使ったのは、「$y=0$ とおいた式に $x$ の 1 次の項がない」ことと、「$t$ の 2 次方程式の 1 次の係数が $\sin\alpha$ に比例し、定数項が向きによらない」ことだった。$x^2$、$y^2$ の係数が等しいことは使っていない。したがって円以外の 2 次曲線でも同じ証明が通る。
楕円などの 2 次曲線 $\Gamma$ の弦 $PQ$ の中点を $M$ とし、$M$ は $\Gamma$ の上にないとする。$M$ を通る $\Gamma$ の 2 本の弦 $AB$、$CD$ を thm-bf-main と同じ条件でとり、直線 $AD$、$BC$ が直線 $PQ$ と交わるとして、その交点を $X$、$Y$ とすると、$MX=MY$ である。
要点:$M$ を原点、$PQ$ を $x$ 軸にとり、$\Gamma$ を $ax^2+bxy+cy^2+dx+ey+f=0$ と書く。$y=0$ とおいた $ax^2+dx+f=0$ は 2 つの解 $\pm p$ をもつので $a\ne0$ で($a=0$ なら解は 1 つまで)、解と係数の関係から $d=0$ で、$M$ が $\Gamma$ の上にないので $f\ne0$ である。点 $t(\cos\alpha,\sin\alpha)$ を代入すると $(a\cos^2\alpha+b\cos\alpha\sin\alpha+c\sin^2\alpha)t^2+e\sin\alpha\cdot t+f=0$ で、弦 $AB$ の 2 つの端点を与えるので $t^2$ の係数は $0$ でない。解と係数の関係から $\dfrac1{t_A}+\dfrac1{t_B}=-\dfrac{e\sin\alpha}f$ で、やはり $\sin\alpha$ に比例する。あとは prf-bf-main の段 2〜段 5 と同じである($\dfrac{2k}f$ を $-\dfrac ef$ に替え、段 2 の「直線 $AB$ と $\Gamma$ の共有点は $A$、$B$ だけ」は $t$ の 2 次方程式の解が 2 つまでであることから従う)。$\square$
楕円 $x^2+4(y-1)^2=20$、つまり $x^2+4y^2-8y-16=0$ を考える。$y=0$ で $x^2=16$ なので $P(-4,0)$、$Q(4,0)$、中点は原点 $M$ である。
(1) 直線 $y=\dfrac32x$ を代入すると $10x^2-12x-16=0$、つまり $5x^2-6x-8=(x-2)(5x+4)=0$ で、$A(2,3)$、$B\left(-\dfrac45,-\dfrac65\right)$ である。直線 $y=-\dfrac12x$ を代入すると $2x^2+4x-16=0$、つまり $x^2+2x-8=(x+4)(x-2)=0$ で、$C(-4,2)$、$D(2,-1)$ である。
(2) 直線 $AD$ は $x=2$ なので $X(2,0)$ である。直線 $BC$ は $\left(-\dfrac45,-\dfrac65\right)$ と $(-4,2)$ を通り、傾きは $\dfrac{2+\frac65}{-4+\frac45}=\dfrac{\frac{16}5}{-\frac{16}5}=-1$ で、式は $y=-x-2$、$Y(-2,0)$ である。$MX=MY=2$ である。
楕円でも、弦 PQ の中点 M を通る 2 本の弦から作った X、Y は M から等しい距離にある
ここまでの結果を場合ごとにまとめる。
| 場合 | $X$、$Y$ についての結論 | ボックス |
|---|---|---|
| 円、$M$ が弦 $PQ$ の中点 | $MX=MY$ | thm-bf-main、ex-bf-start |
| 円、$M$ が中点でない | $\dfrac1{\overline{MX}}+\dfrac1{\overline{MY}}=\dfrac1{\overline{MP}}+\dfrac1{\overline{MQ}}$ | cor-bf-general、ex-bf-general |
| 楕円などの 2 次曲線、$M$ が中点 | $MX=MY$ | cor-bf-conic、ex-bf-ellipse |
| 4 点が同じ円の上にない | 一般に $MX\ne MY$ | ex-bf-cx-offcircle |
2曲線の交点を通る図形(束) では、4 点を通る 2 次曲線がすべて、2 つの 2 次曲線の式の 1 次結合で書けることを紹介した(定理「4 点を通る 2 次曲線の束」。同記事では証明せず、文献を挙げている)。この定理を認めると、蝶の定理は計算をほとんどせずに示せる。
要点:円の式 $S$、2 直線 $AB$、$CD$ の式の積 $G$、2 直線 $AD$、$BC$ の式の積 $H$ は、どれも 4 点 $A$、$B$、$C$、$D$ で $0$ になる 2 次式なので、束の定理から $H=\lambda S+\mu G$ と書ける。$y=0$ とおくと、$S$ は $x^2+f$、$G$ は $x^2$ の定数倍になり、どちらも $x$ の 1 次の項がない。したがって $H$ に $y=0$ を代入した式にも $x$ の 1 次の項がなく、その 2 つの解 $x_X$、$x_Y$ の和は $0$ である。
段 1(3 つの 2 次式)。$M$ を原点、$PQ$ を $x$ 軸にとり、円を $S=x^2+y^2-2ky+f$ とする。直線 $AB$、$CD$ は原点を通るので $p_1x+q_1y=0$、$p_2x+q_2y=0$ と書け、$G=(p_1x+q_1y)(p_2x+q_2y)$ とおく。直線 $AD$、$BC$ の 1 次式の積を $H$ とする。$S$、$G$、$H$ はどれも $A$、$B$、$C$、$D$ で $0$ になり、$x^2$、$xy$、$y^2$ の係数が同時に $0$ ではない。4 点は同じ円の上の異なる点なので、1 本の直線の上にはない。
段 2(束の定理)。$G$ は原点で $0$ になるが $S$ は原点で $f\ne0$ なので、$S$ と $G$ は定数倍の関係にない。束の定理により、$H=\lambda S+\mu G$ となる実数 $\lambda$、$\mu$ がある。
段 3($y=0$ とおく)。$S(x,0)=x^2+f$、$G(x,0)=p_1p_2x^2$ なので $H(x,0)=(\lambda+\mu p_1p_2)x^2+\lambda f$ で、$x$ の 1 次の項がない。直線 $AD$、$BC$ はそれぞれ $x$ 軸と $X$、$Y$ で 1 回ずつ交わるので、$H(x,0)$ は $x_X$、$x_Y$ を解にもつ 2 次式で、解と係数の関係から $x_X+x_Y=0$ である。$\square$
ex-bf-start で、直線 $AD$ は $3x-y+8=0$、直線 $BC$ は $3x-4y-8=0$、直線 $AB$ は $x-3y=0$、直線 $CD$ は $x=0$ である。$H=(3x-y+8)(3x-4y-8)$、$S=x^2+y^2-6y-16$、$G=x(x-3y)$ とすると
$$
H=4S+5G
$$
が成り立つ。$y=0$ とおくと $H(x,0)=4(x^2-16)+5x^2=9x^2-64$ で、$x$ の 1 次の項がなく、解は $x=\pm\dfrac83$ である。
$H$ を展開すると $9x^2-15xy+4y^2-24y-64$ である。$\lambda S+\mu G=(\lambda+\mu)x^2-3\mu xy+\lambda y^2-6\lambda y-16\lambda$ と係数を比べると、$y^2$ の係数から $\lambda=4$、$xy$ の係数から $\mu=5$ で、$x^2$ の係数 $\lambda+\mu=9$、$y$ の係数 $-6\lambda=-24$、定数項 $-16\lambda=-64$ もすべて合う。
2 つの証明を比べる。
| 解と係数の関係による証明(prf-bf-main) | 束による別証(prf-bf-pencil) | |
|---|---|---|
| 使う道具 | 媒介変数 $t$、加法定理、解と係数の関係 | 4 点を通る 2 次曲線の束の定理 |
| 証明の完結 | この記事の中で完結する | 束の定理を認めて使う |
| 楕円への拡張 | cor-bf-conic | $S$ を楕円の式に替えるだけ |
| 中点でない場合 | cor-bf-general の等式まで得られる | $S(x,0)$ に 1 次の項が残る |
thm-bf-main の仮定を外すと何が崩れるかを並べる。
| 外す条件 | 反例 | 成り立たなくなること |
|---|---|---|
| $M$ は弦 $PQ$ の中点 | ex-bf-general の $M(1,0)$ | $MX=MY$ |
| 4 点 $A$、$B$、$C$、$D$ が同じ円の上 | $D$ を円の外の点 $(0,6)$ に替える | $MX=MY$ |
| $X$、$Y$ を「たすき掛け」の組からとる | 直線 $AD$ と直線 $BD$ の交点を比べる | $MX=MY$ |
$M$ が中点でない場合は ex-bf-general で見た($\overline{MX}=-15$、$\overline{MY}=5$)。
ex-bf-start の $A(-3,-1)$、$B\left(\dfrac{24}5,\dfrac85\right)$、$C(0,-2)$ はそのままにして、$D$ を $y$ 軸の上の点 $D'(0,6)$ に替える。$D'$ は $0+36-36-16=-16\ne0$ なので円の上にない。直線 $AD'$ は $(-3,-1)$ と $(0,6)$ を通るので $y=\dfrac73x+6$ で、$y=0$ とおくと $X\left(-\dfrac{18}7,0\right)$ である。直線 $BC$ は変わらず $Y\left(\dfrac83,0\right)$ である。$MX=\dfrac{18}7\ne\dfrac83=MY$ となる。4 点が同じ円の上にないと、lem-bf-param の $t_C t_D=f$ が成り立たず、証明の段 4 が使えない。
ex-bf-start で、直線 $AD$ と $PQ$ の交点 $X\left(-\dfrac83,0\right)$ と、直線 $BD$ と $PQ$ の交点 $Y'(6,0)$ を比べると $MX=\dfrac83\ne6=MY'$ である。蝶の定理は、4 点を $\{A,D\}$ と $\{B,C\}$、または $\{A,C\}$ と $\{B,D\}$ のように、同じ弦の端点が別の組に入るように分けたときの主張である。
prf-bf-pencil の要点の計算は、$H$ を束のどの 2 次曲線 $\lambda S+\mu G$ に替えても成り立つ。つまり、4 点 $A$、$B$、$C$、$D$ を通る 2 次曲線が直線 $PQ$ と 2 点で交わるなら、その 2 点はいつも $M$ について対称である。円そのもの(交点 $P$、$Q$)も、2 直線の組 $AD\cup BC$(交点 $X$、$Y$)も、$AC\cup BD$(交点 $X'$、$Y'$)も、この族の一員である。直線 $PQ$ の上の変換 $x\mapsto-x$ は 2 回続けるともとにもどる(対合)。4 点を通る 2 次曲線の族は、直線の上に 1 つの対合を定め、交点の組はその対合で入れかわる組になっている。$M$ が中点でないときは、cor-bf-general の関係 $\dfrac1x+\dfrac1{x'}=-\dfrac df$ で結ばれる組になり、これも 2 回続けるともとにもどる 1 次分数変換 $x\mapsto x'=\dfrac{x}{-\frac dfx-1}$ で表せる(調和点列 の対合と同じ形の変換)。
$y$ 座標だけを定数倍する変換 $(x,y)\mapsto(x,cy)$($c>0$)は、直線を直線に、交点を交点に移し、$x$ 軸の上の点を動かさない。ex-bf-ellipse の楕円 $x^2+4(y-1)^2=20$ は、円 $x^2+(y'-2)^2=20$ を $(x,y')\mapsto\left(x,\dfrac{y'}2\right)$ で写した像である($y=\dfrac{y'}2$ を代入すると $x^2+(2y-2)^2=20$)。円について蝶の定理が成り立てば、この変換で弦・交点・$x$ 軸の上の距離がそのまま移るので、楕円についても成り立つ。一般の楕円も、回転・平行移動と、軸の方向の定数倍を組み合わせて円に移せる(2次曲線と2次形式)。これらの変換は直線を直線に、交点を交点に移し、同じ直線の上の線分の比(とくに中点)を保つ。こうした変換を アフィン変換 という。弦の中点 $M$ も、$M$ が線分 $XY$ の中点であることも保たれるので、円の蝶の定理から楕円の蝶の定理が従う。
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