Krein–Šmulianの定理

同義語:Krein-Šmulianの定理Krein–Smulianの定理Banach–Dieudonné–Krein–Šmulianの定理Krein–Šmulian theorem

概要

Krein–Šmulianの定理(Krein–Šmulian theorem)とは、実 Banach 空間 $X$ の双対 $X^*$ の凸集合 $C$ について、すべての正の整数 $n$ で半径 $n$ の閉球との交わり $C\cap nB^*$ が弱スター閉なら、$C$ 自身も弱スター閉であるという定理である。ノルムで閉じた凸集合は弱スター閉とは限らないが、この定理により判定はコンパクトな閉球の中の問題に帰着する。系として、部分空間の弱スター閉性は単位球との交わりで決まり、線形汎関数の弱スター連続性は単位球への制限で決まる。凸性と $X$ の完備性は外せない。

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{div}[0]{\mathbin{÷}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: 弱スター位相, Banach–Alaogluの定理, Hahn–Banachの定理

Banach 空間 $X$ の凸集合については、ノルムで閉じていれば弱位相でも閉じている(Mazurの補題 の定理「凸集合の強閉と弱閉」)。ところが双対 $X^*$ の弱スター位相 $\sigma(X^*,X)$ では、ノルムで閉じた凸集合が弱スター閉になるとは限らない(ex-ks-c0)。それでは、凸集合が弱スター閉であるかどうかはどう判定すればよいか。
Krein–Šmulian の定理 は、各閉球との交わりが弱スター閉であれば十分だと答える。閉球は弱スター位相でコンパクトなので(Banach–Alaogluの定理)、判定はコンパクト集合の中の問題に帰着する。Bre11 ではこの定理を Banach–Dieudonné–Krein–Šmulian の定理と呼んでいる。この記事で Krein–Šmulian の定理と呼ぶのは、上の弱スター閉性の判定である。
以下、$X$ は実 Banach 空間、$X^*$ はその連続双対とし、$r\ge0$ に対し $rB^*=\{\varphi\in X^*:\|\varphi\|\le r\}$、$B_X=\{x\in X:\|x\|\le1\}$ と書く。弱スター位相で閉じた集合を弱スター閉集合という。

定理の主張

Krein–Šmulianの定理

$X$ を実 Banach 空間とし、$C\subset X^*$ を凸集合とする。すべての正の整数 $n$ について $C\cap nB^*$ が弱スター閉なら、$C$ は弱スター閉である。

逆向きと証明の配置

逆向きは明らかである。各 $nB^*$ は弱スター閉なので(弱スター位相 の命題「双対ノルムの下半連続性」)、$C$ が弱スター閉なら $C\cap nB^*$ も弱スター閉である。定理の証明は、二つの補題を準備したうえで節「定理の証明」の最後に与える。

ノルムで閉じていることだけでは足りないことを、次の例で確かめておく。

$\ell^\infty$ の中の $c_0$

$X=\ell^1$ とすると、ℓp空間 の定理「$\ell^p$ と $c_0$ の双対」により $X^*$ は $\ell^\infty$ と同一視され、$\xi\in\ell^\infty$ は $a\mapsto\sum_ka_k\xi_k$ に対応する。このとき $c_0\subset\ell^\infty$ はノルムで閉じた部分空間であるが、弱スター閉でない。さらに $c_0\cap B^*$ も弱スター閉でない。
実際、$\xi\in\ell^\infty$ に対し $P_N\xi=(\xi_1,\dots,\xi_N,0,0,\dots)\in c_0$ とおくと、$\|P_N\xi\|_\infty\le\|\xi\|_\infty$ であり、各 $a\in\ell^1$ について
$$ \Bigl|\sum_ka_k\xi_k-\sum_ka_k(P_N\xi)_k\Bigr|\le\|\xi\|_\infty\sum_{k>N}|a_k|\to0\quad(N\to\infty) $$
である。よって $P_N\xi$ は $\xi$ に弱スター収束する。$\xi=(1,1,\dots)$ とすると $P_N\xi\in c_0\cap B^*$ で、極限 $\xi$ は $c_0$ に属さない。

この例は定理と矛盾しない。$c_0\cap B^*$ がすでに弱スター閉でないからである。定理の仮定は球との交わりの 弱スター 閉性であり、ノルム閉性ではない。

定理の証明

証明の中心は、$0$ を含まない凸集合 $C$ を、ノルムが $0$ に近づく点列 $(x_j)$ での値で $C$ から $0$ を切り離すことにある。値の列 $(\varphi(x_j))_j$ は $c_0$ に属するので、問題は $c_0$ の中での凸集合の分離に移り、そこで Hahn–Banach の定理が使える。
まず、仮定から半径が整数でない球についても同じことが言える。$r\ge0$ に対し整数 $n\ge r$ を取ると $C\cap rB^*=(C\cap nB^*)\cap rB^*$ なので、$C\cap rB^*$ は弱スター閉であり、弱スターコンパクトな $rB^*$(Banach–Alaogluの定理 の定理「Banach–Alaoglu の定理」)の閉部分集合として弱スターコンパクトである。有限集合 $G\subset X$ に対し
$$ P(G)=\{\varphi\in X^*:\varphi(x)\le1\ (x\in G)\} $$
とおく($P(\emptyset)=X^*$)。各 $\varphi\mapsto\varphi(x)$ は弱スター連続なので、$P(G)$ は弱スター閉である。

零に近づく点列による切り離し

$C\subset X^*$ を凸集合とし、すべての正の整数 $n$ について $C\cap nB^*$ は弱スター閉で、$C\cap B^*=\emptyset$ であるとする。このとき、$\|x_j\|\to0$ を満たす $X$ の点列 $(x_j)$ で、すべての $\varphi\in C$ について $\sup_j\varphi(x_j)>1$ となるものが存在する。

有限集合 $F_1,F_2,\dots\subset X$ を、$F_k\subset\frac1kB_X$ であって、すべての $n\ge0$ について
$$ (R_n)\qquad C\cap(n+1)B^*\cap P(F_1\cup\dots\cup F_n)=\emptyset $$
となるように帰納的に選ぶ。$(R_0)$ は仮定 $C\cap B^*=\emptyset$ そのものである。
$n\ge1$ とし、$F_1,\dots,F_{n-1}$ が $(R_{n-1})$ を満たすように選ばれているとする。$G=F_1\cup\dots\cup F_{n-1}$ とおき、有限集合 $F\subset\frac1nB_X$ に対して
$$ K_F=C\cap(n+1)B^*\cap P(G)\cap P(F) $$
とおく。どの $F$ についても $K_F\ne\emptyset$ であると仮定して矛盾を導く。$K_F$ は弱スターコンパクトな $C\cap(n+1)B^*$ の弱スター閉部分集合であり、$K_F\cap K_{F'}\supset K_{F\cup F'}\ne\emptyset$ だから、族 $\{K_F\}$ は有限交叉性をもつ。コンパクト性により、すべての $K_F$ に属する $\varphi$ がある。$\varphi\in C\cap(n+1)B^*\cap P(G)$ であり、さらに一点集合 $F=\{x\}$ を考えると、$\|x\|\le1/n$ を満たすすべての $x$ で $\varphi(x)\le1$ である。$-x$ にも使えば $|\varphi(x)|\le1$ なので、
$$ \|\varphi\|=n\sup_{\|x\|\le1/n}|\varphi(x)|\le n $$
となる。すると $\varphi\in C\cap nB^*\cap P(G)$ となり、$(R_{n-1})$ に反する。したがってある有限集合 $F_n\subset\frac1nB_X$ で $K_{F_n}=\emptyset$ となり、これが $(R_n)$ である。
こうして得た有限集合 $F_1,F_2,\dots$ の元を、$F_1$ の元、$F_2$ の元、…の順に並べて点列 $(x_j)$ とする(元が有限個しかなければ、後に $0$ を並べる)。各 $k$ について、$F_1\cup\dots\cup F_k$ の元は有限個なので、十分先の $x_j$ は $m>k$ の $F_m$ の元か $0$ であり、$\|x_j\|\le1/k$ となる。よって $\|x_j\|\to0$ である。$\varphi\in C$ を取り、$\|\varphi\|\le n+1$ となる $n$ を選ぶと、$(R_n)$ により $\varphi\notin P(F_1\cup\dots\cup F_n)$ である。すなわち、ある $x_j$ で $\varphi(x_j)>1$ となる。

一点での値による切り離し

lem-ks-sequence の仮定のもとで $C\ne\emptyset$ とする。このとき、$x\in X$ で、すべての $\varphi\in C$ について $\varphi(x)\ge1$ となるものが存在する。

lem-ks-sequence の点列 $(x_j)$ を取り、$M=\sup_j\|x_j\|$ とおく。$\varphi\in X^*$ に対し $T\varphi=(\varphi(x_j))_{j\ge1}$ とおく。$|\varphi(x_j)|\le\|\varphi\|\,\|x_j\|\to0$ なので $T\varphi\in c_0$ であり、$T\colon X^*\to c_0$ は線形で $\|T\varphi\|_\infty\le M\|\varphi\|$ を満たす。
$U=\{u\in c_0:\|u\|_\infty<1\}$ は開凸集合で、$T(C)$ は空でない凸集合である。$\varphi\in C$ なら $\sup_j\varphi(x_j)>1$ なので $\|T\varphi\|_\infty>1$ であり、$U\cap T(C)=\emptyset$ である。Hahn–Banachの定理 の定理「Hahn–Banachの定理(第一幾何形)」により、$0$ でない連続線形汎関数 $\ell$ と実数 $\alpha$ で、$\ell(u)<\alpha\le\ell(T\varphi)$($u\in U$、$\varphi\in C$)となるものがある。ℓp空間 の定理「$\ell^p$ と $c_0$ の双対」により、$\ell(u)=\sum_ja_ju_j$ となる $a\in\ell^1$ があり、$\|a\|_1=\|\ell\|>0$ である。$\sup_{u\in U}\ell(u)=\|\ell\|$ なので $\alpha\ge\|a\|_1$ である。
$\sum_j|a_j|\,\|x_j\|\le M\|a\|_1<\infty$ であり、$X$ は完備なので、級数 $y=\sum_ja_jx_j$ は $X$ で収束する。$\varphi\in X^*$ は連続なので $\varphi(y)=\sum_ja_j\varphi(x_j)=\ell(T\varphi)$ である。よって $\varphi\in C$ なら $\varphi(y)\ge\alpha\ge\|a\|_1$ であり、$x=y/\|a\|_1$ が求める元である。

二つの補題から定理を導く。

$C=\emptyset$ なら明らかなので、$C\ne\emptyset$ とする。$\psi\in X^*\setminus C$ を取り、$\psi$ の弱スター近傍で $C$ と交わらないものを作る。
$D=C-\psi=\{\varphi-\psi:\varphi\in C\}$ とおく。$D$ は空でない凸集合で $0\notin D$ である。$r\ge0$ に対し、整数 $N\ge r+\|\psi\|$ を取ると、$\varphi\in C$ かつ $\|\varphi-\psi\|\le r$ なら $\|\varphi\|\le N$ だから
$$ D\cap rB^*=\bigl((C\cap NB^*)\cap(\psi+rB^*)\bigr)-\psi $$
である。平行移動 $\varphi\mapsto\varphi+\psi$ は弱スター位相についての同相写像なので、$D\cap rB^*$ は弱スター閉であり、$rB^*$ の閉部分集合として弱スターコンパクトである。
$d=\inf\{\|\theta\|:\theta\in D\}>0$ を示す。$d=0$ なら、各 $k$ で $D\cap\frac1kB^*$ は空でない弱スターコンパクト集合で、$k$ について減少する。有限交叉性によりそれらの共通部分は空でなく、その元 $\theta$ は $\|\theta\|=0$、すなわち $0\in D$ となって矛盾する。
$E=\frac2dD$ とおく。$E$ は凸で、$\theta\in E$ なら $\|\theta\|\ge2$ なので $E\cap B^*=\emptyset$ である。また $E\cap nB^*=\frac2d\bigl(D\cap\frac{nd}2B^*\bigr)$ はスカラー倍(弱スター位相についての同相写像)による弱スター閉集合の像なので弱スター閉である。lem-ks-c0 を $E$ に使うと、$x\in X$ で、すべての $\theta\in E$ について $\theta(x)\ge1$ となるものがある。$\theta=\frac2d(\varphi-\psi)$($\varphi\in C$)と書けば、
$$ \varphi(x)\ge\psi(x)+\frac d2\qquad(\varphi\in C) $$
である。したがって $O=\{\varphi\in X^*:\varphi(x)<\psi(x)+d/2\}$ は $\psi$ を含む弱スター開集合で、$C$ と交わらない。$\psi\in X^*\setminus C$ は任意だったので、$X^*\setminus C$ は弱スター開であり、$C$ は弱スター閉である。

$X$ の完備性を使ったのは、lem-ks-c0 で級数 $\sum_ja_jx_j$ の収束を得るところだけである。この仮定は外せない(ex-ks-incomplete)。

系

定理を部分空間と線形汎関数に当てはめると、次の形になる。

部分空間の弱スター閉性

$X$ を実 Banach 空間、$M\subset X^*$ を線形部分空間とする。$M$ が弱スター閉であるための必要十分条件は、$M\cap B^*$ が弱スター閉であることである。

必要性は定理の後で述べたとおりである。十分性:$M$ は部分空間なので $M\cap nB^*=n(M\cap B^*)$ であり、スカラー倍 $\varphi\mapsto n\varphi$ は弱スター位相についての同相写像だから、$M\cap nB^*$ は弱スター閉である。$M$ は凸なので thm-ks が使える。

可分な場合の点列による判定

$X$ を可分な実 Banach 空間、$C\subset X^*$ を凸集合とする。$C$ が弱スター閉であるための必要十分条件は、$C$ の点列が弱スター収束するとき、その極限がつねに $C$ に属することである。

必要性は、弱スター収束する点列の極限が閉包に属することから従う。十分性を示す。$n$ を正の整数とする。$X$ は可分なので、$nB^*$ の上の弱スター位相はある距離 $d$ で定まる(弱スター位相 の命題「可分な空間の双対閉球」)。$\varphi\in nB^*$ が $nB^*$ の中で $C\cap nB^*$ の閉包に属するとする。$d$ について $\varphi$ を中心とする半径 $1/k$ の球から $\varphi_k\in C\cap nB^*$ を選ぶと、$\varphi_k$ は $\varphi$ に弱スター収束するので、仮定により $\varphi\in C$ である。よって $C\cap nB^*$ は $nB^*$ の中で閉じており、$nB^*$ は弱スター閉なので $X^*$ の中でも弱スター閉である。thm-ks により $C$ は弱スター閉である。

証明で可分性を使ったのは、閉球の上の弱スター位相を距離で書き、閉包を点列でたどるところだけである。距離化と点列の関係は 弱位相の距離化可能性 で扱う。

弱スター連続な線形汎関数の判定

$X$ を実 Banach 空間、$\Phi\colon X^*\to\mathbb R$ を線形汎関数とする。次は同値である。

  1. $\Phi$ は弱スター連続である。
  2. $\Phi$ の $B^*$ への制限は、$B^*$ の弱スター位相について連続である。
    このとき、$\Phi(\varphi)=\varphi(x)$($\varphi\in X^*$)となる $x\in X$ がただ一つ存在する。

1 ⇒ 2 は明らかである。2 ⇒ 1 を示す。$\Phi(\varphi)=n\Phi(\varphi/n)$ であり、$\varphi\mapsto\varphi/n$ は $nB^*$ から $B^*$ への弱スター位相についての同相写像なので、$\Phi$ の $nB^*$ への制限も連続である。よって $\ker\Phi\cap nB^*$ は $nB^*$ の中で閉じており、$nB^*$ が弱スター閉なので $X^*$ の中でも弱スター閉である。$\ker\Phi$ は部分空間なので、thm-ks により弱スター閉である。
$\Phi=0$ なら明らかなので、$\Phi(\psi)=1$ となる $\psi$ を取る。$\psi\notin\ker\Phi$ で $\ker\Phi$ は弱スター閉なので、有限個の $x_1,\dots,x_m\in X$ と $\varepsilon>0$ で、$V=\{\varphi:|\varphi(x_i)|<\varepsilon\ (i\le m)\}$ について $(\psi+V)\cap\ker\Phi=\emptyset$ となるものがある。$\varphi\in V$ なら $|\Phi(\varphi)|<1$ である。実際、$|\Phi(\varphi)|\ge1$ なら $\varphi'=-\varphi/\Phi(\varphi)$ も $V$ に属し、$\Phi(\psi+\varphi')=1-1=0$ となって矛盾する。$t>0$ について $tV$ の上で $|\Phi|< t$ なので、$\Phi$ は $0$ で弱スター連続であり、線形性から各点で連続である。
最後の主張は 弱スター位相 の命題「弱スター連続な線形汎関数」による。一意性は、$\varphi(x)=\varphi(x')$ がすべての $\varphi\in X^*$ で成り立てば $x=x'$ となること(連続双対空間 の定理「点でノルムを実現する汎関数」を $x-x'$ に使う)による。

$X^{**}$ の元 $\Phi$ に当てはめると、$\Phi$ が評価写像 $J\colon X\to X^{**}$ の像に属することは、$\Phi$ の $B^*$ への制限が弱スター連続であることと同値になる。反射性(反射的Banach空間)を調べるとき、$X^{**}$ の元を閉単位球の上だけで調べればよいということである。

仮定を外すと成り立たなくなること

反例:凸でない集合

$X=\ell^2$ とし、Rieszの表現定理 により $X^*$ を $\ell^2$ と同一視する。$y\in\ell^2$ は $x\mapsto\langle y,x\rangle$ に対応し、弱スター位相は $\ell^2$ の弱位相に対応する。$A=\{\sqrt n\,e_n:n\ge1\}$ とおくと、各 $n$ について $A\cap nB^*$ は有限集合なので弱スター閉である。しかし $0$ は $A$ の弱閉包に属し、$0\notin A$ なので、$A$ は弱スター閉でない(弱位相の距離化可能性 の例「$\ell^2$ の集合 $\{\sqrt n\,e_n\}$」)。$A$ は凸でない。

反例:完備でない空間

$X=c_{00}$(有限個の座標だけが $0$ でない実数列の空間)に上限ノルムを入れる。$X$ は $c_0$ で稠密なので(ℓp空間 の命題「有限列の稠密性」)、$X$ 上の連続線形汎関数は $c_0$ 上に一意に延長され、ℓp空間 の定理「$\ell^p$ と $c_0$ の双対」により $X^*$ は $\ell^1$ と等長に同一視される。$a\in\ell^1$ は $x\mapsto\langle a,x\rangle=\sum_ka_kx_k$ に対応する。
$$ M=\Bigl\{a\in\ell^1:\sum_{k=1}^\infty\frac{a_k}k=0\Bigr\} $$
は部分空間で、各 $n$ について $M\cap nB^*$ は弱スター閉であるが、$M$ は弱スター閉でない。
$M$ が弱スター閉でないこと:$a^N=e_1-Ne_N$($N\ge2$)は $1-N\cdot\frac1N=0$ より $M$ に属する。$x\in c_{00}$ を固定すると、$N$ が $x$ の台より大きければ $\langle a^N,x\rangle=x_1=\langle e_1,x\rangle$ である。よって $a^N$ は $e_1$ に弱スター収束するが、$e_1\notin M$ である。
$M\cap nB^*$ が弱スター閉であること:$a\in nB^*\setminus M$ を取り、$s=\sum_ka_k/k\ne0$ とおく。$n/(N+1)<|s|/3$ となる $N$ を取り、$z=\sum_{k\le N}e_k/k\in c_{00}$、$O=\{b:|\langle b-a,z\rangle|<|s|/3\}$ とおく。$\|b\|_1\le n$ なら($b=a$ の場合も含めて)$\bigl|\sum_kb_k/k-\langle b,z\rangle\bigr|\le\sum_{k>N}|b_k|/k\le n/(N+1)<|s|/3$ である。したがって $b\in O\cap nB^*$ なら
$$ \Bigl|\sum_k\frac{b_k}k-s\Bigr|\le\Bigl|\sum_k\frac{b_k}k-\langle b,z\rangle\Bigr|+|\langle b-a,z\rangle|+\Bigl|\langle a,z\rangle-s\Bigr|<|s| $$
となり、$b\notin M$ である。よって $nB^*\setminus M$ は $nB^*$ の中で開いており、$M\cap nB^*$ は弱スター閉な $nB^*$ の閉部分集合である。
この例で prf-ks が使えないのは、lem-ks-c0 の級数 $\sum_ja_jx_j$ が $c_{00}$ の中で収束するとは限らないからである。実際、$M$ は $\ell^1$ 上の $0$ でない線形汎関数 $a\mapsto\sum_ka_k/k$ の核なので、$M$ を含む部分空間は $M$ か $\ell^1$ に限る。$M$ の弱スター閉包は $M$ を含む部分空間で $M$ と異なるので、$\ell^1$ 全体である。

外す条件反例成り立たなくなること
$C$ の凸性$\ell^2$ の $\{\sqrt n\,e_n\}$(ex-ks-nonconvex)$C$ の弱スター閉性
$X$ の完備性$c_{00}$ の部分空間 $M$(ex-ks-incomplete)$C$ の弱スター閉性
球との交わりの弱スター閉性をノルム閉性に弱める$\ell^\infty$ の中の $c_0$(ex-ks-c0)$C$ の弱スター閉性

文献

定理は Bre11 の第 3 章の Comments の 2(p. 79)に Theorem 3.33 として述べられ、証明は Problem 11(pp. 450–451)の誘導として与えられている。この記事の lem-ks-sequence は Problem 11 の A の構成を、帰納法の条件 $(R_n)$ の形にまとめ直したものである。lem-ks-c0 と prf-ks は Problem 11 の B に当たる。

関連項目

参考文献

[1]
Haim Brezis, Functional Analysis, Sobolev Spaces and Partial Differential Equations, Springer, 2011, 第 3 章 Comments の 2:Theorem 3.33(p. 79)、Problem 11(pp. 450–451)

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