収縮定理(極小モデル理論)(contraction theorem)とは、複素数体上の滑らかな射影多様体 $X$ の $K_X$ 負の端射線 $R$ に対して、類が $R$ に入る曲線だけを点に潰す正規射影多様体への射 $\varphi_R\colon X\to Y$($\varphi_{R*}\mathcal{O}_X=\mathcal{O}_Y$)が一意に存在するという定理である。Picard 数は $1$ 減り、錐定理と基点自由定理から導かれる。収縮は森ファイバー空間、因子収縮、小収縮の 3 種類に分かれ、小収縮では $K_Y$ が $\mathbb{Q}$ Cartier でなくなるのでフリップが必要になる。曲面では $(-1)$ 曲線の縮約、$\mathbb{P}^1$ 束の射影、$\mathbb{P}^2$ から 1 点への射に限られる。
収縮定理(contraction theorem)は、複素数体上の滑らかな射影多様体 $X$ の曲線の錐の、標準因子 $K_X$ との交点数が負の端射線 $R$ のそれぞれについて、$R$ に類が入る曲線だけをちょうど点に潰す射 $\varphi_R\colon X\to Y$ が存在する、という定理である。錐定理 が「どの曲線を潰せばよいか」を数値的に指定するのに対し、収縮定理はその指定どおりに潰す射を実際に与える。極小モデル理論の各段階はこの射で進む。
曲面では、$K_X$ 負の端射線の収縮は $(-1)$ 曲線の縮約(Castelnuovoの収縮定理)、$\mathbb{P}^1$ 束の射影、$\mathbb{P}^2$ から 1 点への射のどれかになる。高次元では、$\dim Y<\dim X$ の森ファイバー空間、因子を潰す因子収縮、余次元 $2$ 以上の集合だけを潰す小収縮の 3 種類に分かれ、最後の場合に $K_Y$ が $\mathbb{Q}$ Cartier でなくなることが フリップ(双有理幾何学) の必要を生む。
定理の核心は 基点自由定理 と錐定理の有理性で、これらはこの記事では証明しない。この 2 つから収縮定理を導く議論、3 種類の分類とそれぞれの性質、曲面の場合の完全な記述を証明する。
以下、多様体は複素数体上の整な分離的有限型スキームとし、曲線は 1 次元の整な閉部分スキームとする。$N_1(X)$、$\overline{NE}(X)$、端射線、$K_X$ 負の端射線の定義は 錐定理 の定義「曲線の錐」「端射線」のとおりである。$N^1(X)$ は Cartier 因子の数値的同値類の実ベクトル空間で、次元が Picard 数 $\rho(X)$ である。
正規射影多様体の間の全射 $\varphi\colon X\to Y$ で $\varphi_*\mathcal{O}_X=\mathcal{O}_Y$ をみたすものを収縮(contraction)という。$X$ の曲線 $C$ で $\varphi(C)$ が 1 点になるものを、$\varphi$ が潰す曲線という。
$\overline{NE}(X)$ の端射線 $R$ について、$\varphi$ が潰す曲線がちょうど $[C]\in R$ をみたす曲線 $C$ であるとき、$\varphi$ を $R$ の収縮といい、$\varphi_R$ と書く。
$\varphi_*\mathcal{O}_X=\mathcal{O}_Y$ から $\varphi$ のファイバーは連結である(Stein分解 の定理「Stein 分解の存在と性質」)。収縮は、潰す曲線で決まる。
$\varphi\colon X\to Y$ を収縮、$\psi\colon X\to Z$ を射影多様体 $Z$ への射とする。$\varphi$ が潰す曲線をすべて $\psi$ も潰すなら、射 $\theta\colon Y\to Z$ で $\psi=\theta\circ\varphi$ となるものがただ 1 つ存在する。
$\varphi$ のファイバー $G$ は連結な射影スキームなので、$G$ の 2 点は $G$ の曲線の鎖で結べる。各曲線は $\varphi$ が潰すので $\psi$ も潰し、$\psi$ は $G$ の上で定値である。よって写像 $\theta$ で $\psi=\theta\circ\varphi$ となるものが一意に定まる。$\varphi$ は全射な閉写像なので $Y$ の位相は $X$ の商位相であり、$\theta$ は連続である。層の射は $\mathcal{O}_Z\to\psi_*\mathcal{O}_X=\theta_*\varphi_*\mathcal{O}_X=\theta_*\mathcal{O}_Y$ で与えられる。$\square$
2 つの収縮 $\varphi\colon X\to Y$、$\varphi'\colon X\to Y'$ が同じ曲線を潰すなら、同型 $\theta\colon Y\to Y'$ で $\varphi'=\theta\circ\varphi$ となるものがある。とくに端射線 $R$ の収縮は同型を除いて一意である。
lem-ct-factor を両向きに当てると $\theta\colon Y\to Y'$、$\theta'\colon Y'\to Y$ が得られ、$\theta'\circ\theta\circ\varphi=\varphi$ である。lem-ct-factor の一意性から $\theta'\circ\theta=\mathrm{id}_Y$ で、同様に $\theta\circ\theta'=\mathrm{id}_{Y'}$ である。$\square$
$X$ を滑らかな射影多様体、$R$ を $\overline{NE}(X)$ の $K_X$ 負の端射線、$C_0$ を $[C_0]\in R$ なる曲線とする。このとき $R$ の収縮 $\varphi_R\colon X\to Y$ が存在し、同型を除いて一意である。さらに次が成り立つ。
$C_0$ は存在する(錐定理により $R$ は有理曲線の類で張られる)。
証明に使う 2 つの入力を、$B=0$ の形で述べる。どちらもこの記事では証明しない。射 $\pi$ について、$\pi$ が点に潰す曲線との交点数がすべて $0$ 以上の因子を $\pi$ ネフ という。$\pi$ 豊富は 豊富な可逆層 の注意「射に関する豊富性」の意味である。
$X$ を滑らかな射影多様体、$\pi\colon X\to S$ を多様体 $S$ の上への射、$D$ を $\pi$ ネフな Cartier 因子とし、ある実数 $a>0$ で $aD-K_X$ が $\pi$ 豊富であるとする。このとき十分大きいすべての $m$ で $\pi^*\pi_*\mathcal{O}_X(mD)\to\mathcal{O}_X(mD)$ は全射である。
$X$ を滑らかな射影多様体、$R$ を $K_X$ 負の端射線とする。ネフな Cartier 因子 $H$ で $\overline{NE}(X)\cap H^\perp=R$ をみたすものが存在する。
要点:支持因子 $H$ に $K_X$ 負性を足すと $aH-K_X$ が豊富になり、基点自由性から $|mH|$ の射が得られる。その Stein 分解が求める収縮である。性質の 1 は $\varphi_R$ の上での基点自由性による。
段階 1:$aH-K_X$ の豊富性。thm-ct-support の $H$ と、豊富な因子 $A$ をとる。$S:=\{z\in\overline{NE}(X)\mid A\cdot z=1\}$ はコンパクトである(錐定理 の補題「錐の切り口のコンパクト性」)。$R\cap S$ は 1 点 $r$ で、$K_X\cdot r<0$ である。$r$ の $S$ の中の開近傍 $W$ で $K_X$ が負になるものをとる。$S\setminus W$ はコンパクトで $H>0$ なので、$a>0$ を十分大きくとれば $S\setminus W$ の上で $aH-K_X>0$ である。$W$ の上でも $H\ge0$、$-K_X>0$ から $aH-K_X>0$ である。よって $aH-K_X$ は $\overline{NE}(X)\setminus\{0\}$ の上で正で、Kleimanの判定法(豊富性) により豊富である。
段階 2:射の構成。thm-ct-bpf($S$ は 1 点)により、$|mH|$ に基点のない $m\ge1$ がある。対応する射を $\psi\colon X\to\mathbb{P}^M$、その Stein 分解を $X\xrightarrow{\varphi}Y\xrightarrow{g}\psi(X)$ とする。$g$ は有限射で、$\psi(X)$ は射影多様体なので $Y$ は射影的であり、$\varphi_*\mathcal{O}_X=\mathcal{O}_Y$ である。$X$ は正規なので $Y$ も正規である(Stein分解 の命題「正規化としての Stein 分解」)。曲線 $C$ について、$g$ が有限なので $\varphi(C)$ が 1 点であることと $\psi(C)$ が 1 点であることは同値で、これは $mH\cdot C=0$、すなわち $[C]\in\overline{NE}(X)\cap H^\perp=R$ と同値である。$\varphi$ は $R$ の収縮である。一意性は cor-ct-unique である。
段階 3:$\mathcal{L}$ の下降。$\mathbb{P}^M$ の $\mathcal{O}(1)$ の $Y$ への引き戻しを $\mathcal{A}_Y$ とすると、$\mathcal{A}_Y$ は $Y$ の豊富な可逆層で $\mathcal{O}_X(mH)\cong\varphi^*\mathcal{A}_Y$ である。$m(aH-K_X)$ は豊富で、$\varphi$ のファイバーの上では $mH$ は自明なので、$-K_X$ は各ファイバーの上で豊富である。$\mathcal{L}\cdot C_0=0$ なら $\varphi$ が潰す曲線 $C$ はすべて $\mathcal{L}\cdot C=0$ をみたす。$\varphi$ の各ファイバーの上で $\mathcal{L}\otimes\mathcal{O}(-K_X)$ は $\mathcal{O}(-K_X)$ と数値的に同値なので、やはり豊富であり(Kleimanの判定法(豊富性))、EGA3 定理 4.7.1(p. 145。この記事では証明しない)により $\mathcal{L}\otimes\mathcal{O}(-K_X)$ は $\varphi$ 豊富である。$\mathcal{L}$ は $\varphi$ ネフなので、thm-ct-bpf($\pi=\varphi$、$a=1$)により十分大きい $n$ で $\mathcal{L}^{\otimes n}$ と $\mathcal{L}^{\otimes(n+1)}$ は $\varphi$ の上で切断で生成される。
$\mathcal{M}$ を $\varphi$ の上で切断で生成され、$\varphi$ が潰す曲線との交点数が $0$ の可逆層とする。点 $y\in Y$ のアフィン近傍 $V$ をとると、$\varphi^{-1}(V)$ の上の有限個の切断が $\mathcal{M}$ を生成し、射 $\varphi^{-1}(V)\to\mathbb{P}^r$ を定める。この射はファイバー $G=\varphi^{-1}(y)$ の曲線を潰すので、$G$ の連結性から $G$ の点をすべて 1 点 $p$ へ送る。$p$ で $0$ でない 1 次形式の引き戻しを $t$ とすると、$t$ は $\varphi^{-1}(V)$ の上の切断で、$G$ のどの点でも消えない(消えないことは点ごとの条件なので、$G$ が被約でなくてもよい)。$t$ の零点の集合の像は閉集合で $y$ を含まないので、$V$ を小さくとれば $t$ は $\varphi^{-1}(V)$ で消えない。よって $\mathcal{M}|_{\varphi^{-1}(V)}$ は自明で、$\mathcal{M}_Y:=\varphi_*\mathcal{M}$ は可逆層、$\mathcal{M}\cong\varphi^*\mathcal{M}_Y$ である。これを $\mathcal{L}^{\otimes n}$、$\mathcal{L}^{\otimes(n+1)}$ に当てて差をとると $\mathcal{L}\cong\varphi^*\mathcal{L}_Y$ である。
段階 4:完全列と Picard 数。$\varphi^*\mathcal{N}$ が自明なら、射影公式から $\mathcal{N}\cong\mathcal{N}\otimes\varphi_*\mathcal{O}_X=\varphi_*\varphi^*\mathcal{N}\cong\mathcal{O}_Y$ である。$\varphi^*\mathcal{N}\cdot C_0=0$ と 1 を合わせて 2 を得る。3:$Y$ の曲線は $X$ の曲線の像なので、射影公式により $\varphi^*\colon N^1(Y)\to N^1(X)$ は単射である。像は $[C_0]^\perp$ に含まれ、$[C_0]^\perp$ は可逆層の類で張られる($[C_0]$ は整数値の 1 次形式で、$0$ でない)ので、1 により像は $[C_0]^\perp$ に等しい。$\square$
逆向きに、与えられた収縮が端射線の収縮であることは、次で確かめられる。
$X$ を滑らかな射影多様体、$\varphi\colon X\to Y$ を収縮とし、$\rho(Y)=\rho(X)-1$ で、$\varphi$ が潰す曲線 $C_0$ で $K_X\cdot C_0<0$ なるものがあるとする。このとき $R=\mathbb{R}_{\ge0}[C_0]$ は $K_X$ 負の端射線で、$\varphi=\varphi_R$ である。
$A$ を $Y$ の豊富な因子とし、$F:=\overline{NE}(X)\cap(\varphi^*A)^\perp$ とおく。$\varphi^*A$ はネフなので、$z_1+z_2\in F$($z_i\in\overline{NE}(X)$)なら $z_i\in F$ である。$z\in F$ と $Y$ の因子 $D$ について、十分小さい $\varepsilon>0$ で $A\pm\varepsilon D$ は豊富なので $\varphi^*(A\pm\varepsilon D)\cdot z\ge0$ で、$\varphi^*D\cdot z=0$ である。よって $F$ は $\varphi^*N^1(Y)$ の直交補空間に含まれる。$\varphi^*$ は単射なので、この直交補空間の次元は $\rho(X)-\rho(Y)=1$ で、$[C_0]\ne0$ が張る。$\overline{NE}(X)$ は直線を含まないので $F=\mathbb{R}_{\ge0}[C_0]$ である。曲線 $C$ を $\varphi$ が潰すことと $\varphi^*A\cdot C=0$、すなわち $[C]\in F$ は同値である。$\square$
$\varphi\colon X\to Y$ が双有理のとき、例外集合 $\operatorname{Exc}(\varphi)$ を $\varphi$ が局所同型でない点の集合とする。$Y$ が正規なので、これは $\varphi$ のファイバーの正の次元の成分の和集合であり、$\varphi$ が潰す曲線の和集合である(Zariskiの主定理)。正規多様体の $\mathbb{Q}$ 分解性とは、すべての Weil因子 の正の倍数が Cartier因子 であることをいう。
$X$ を次元 $n$ の滑らかな射影多様体、$\varphi=\varphi_R\colon X\to Y$ を $K_X$ 負の端射線 $R$ の収縮とする。次のちょうど 1 つが成り立つ。
ファイバー型の $\varphi$ を森ファイバー空間という($\dim Y=0$ の場合を含む)。極小モデル理論では、因子収縮なら $X$ を $Y$ に置き換えて続け、小収縮なら $Y$ の上の フリップ(双有理幾何学) に置き換え、森ファイバー空間に達したら終わる(双有理幾何学 の節「極小モデル理論の手順」)。
要点:例外因子 $E$ があれば、$\varphi$ の像の次元だけ切った曲面の上で Hodge 指数定理から $E\cdot C<0$ となる潰れる曲線 $C$ が見つかる。$R$ の曲線はすべて $E$ に入るので $\operatorname{Exc}(\varphi)=E$ である。$\mathbb{Q}$ 分解性と $K_Y$ の非 Cartier 性は thm-ct-main の 1 と余次元 $2$ の延長から従う。
ファイバー型.$\dim Y< n$ とする。標数 $0$ なので一般のファイバー $F$ は滑らかで、連結なので多様体である。$F$ の法束は自明なので $K_F=K_X|_F$ である。$-K_X$ は各ファイバーの上で豊富(prf-ct-main の段階 3)なので $-K_F$ は豊富である。$\dim Y=n$ なら、$\varphi$ は全射で一般に有限で、$\varphi_*\mathcal{O}_X=\mathcal{O}_Y$ から次数 $1$ なので双有理である。
因子があれば既約.$\varphi$ が双有理で、$\operatorname{Exc}(\varphi)$ が素因子 $E$ を含むとする。$E\to\varphi(E)$ が一般に有限なら $\varphi(E)$ は $Y$ の素因子で、$Y$ は正規なので有理写像 $\varphi^{-1}$ はその生成点で定義され、$\varphi$ は $E$ の生成点で局所同型になり矛盾する。よって $d:=\dim\varphi(E)\le n-2$ である。
$H_Y$ を $Y$ の非常に豊富な因子、$A$ を $X$ の非常に豊富な因子とする。$|\varphi^*H_Y|$ と $|A|$ は基点がないので、Bertini の定理(Bertiniの定理)により一般の元 $D_1,\dots,D_d\in|\varphi^*H_Y|$ と $A_1,\dots,A_{n-d-2}\in|A|$ の交わり $T$ は滑らかな曲面である。$\varphi(E)$ は一般の超平面 $d$ 枚と空でない有限集合で交わるので、$E\cap T$ は空でない曲線で、$\varphi$ はそれを有限個の点へ送る。$\operatorname{Exc}(\varphi)$ の既約成分 $W$ について、$\dim\varphi(W)< d$ なら $W$ は $D_i$ の交わりと交わらず、そうでなければ次元が $d$ 下がるので、$\operatorname{Exc}(\varphi)\cap T$ の次元は $1$ 以下である。$E$ と交わる $T$ の連結成分 $T_0$ をとると、$T_0\not\subset\operatorname{Exc}(\varphi)$ なので $T_0$ の上で $\varphi$ は一般に単射で、$M:=\varphi^*H_Y|_{T_0}$ は $M^2>0$ をみたす。$D:=E|_{T_0}$ は $0$ でない有効因子で、その成分は $\varphi$ が潰すので $M\cdot D=0$ である。曲面の交点形式の符号は $(1,\rho-1)$ なので(Hodge指数定理、Har77 V 定理 1.9・注意 1.9.1)、$M^\perp$ は負定値である。$A\cdot D>0$ より $D\not\equiv0$ なので $D^2<0$ であり、$D$ のある成分 $C$ で $D\cdot C<0$、すなわち $E\cdot C<0$ である。$C$ は $\varphi$ が潰す曲線なので $[C]\in R$ で、$E\cdot C_0<0$ である。
すると $[C']\in R$ なる曲線 $C'$ はすべて $E\cdot C'<0$ をみたし、$C'\subset E$ である。したがって $\operatorname{Exc}(\varphi)\subset E$、すなわち $\operatorname{Exc}(\varphi)=E$ である。$\operatorname{Exc}(\varphi)$ が素因子を含まなければ、余次元は $2$ 以上である。これで 3 種類が尽きる。
因子収縮の $\mathbb{Q}$ 分解性.$\Gamma$ を $Y$ の素因子、$\Gamma'$ をその固有変換とする。$X$ は滑らかなので $\Gamma'$ は Cartier である。$t:=-(\Gamma'\cdot C_0)/(E\cdot C_0)\in\mathbb{Q}$ とし、$mt\in\mathbb{Z}$ なる $m\ge1$ をとると、$\mathcal{L}:=\mathcal{O}_X(m\Gamma'+mtE)$ は $\mathcal{L}\cdot C_0=0$ をみたす。thm-ct-main の 1 により $\mathcal{L}\cong\varphi^*\mathcal{L}_Y$ である。$\varphi$ は $X\setminus E\to Y\setminus\varphi(E)$ の同型で、この上で $\mathcal{L}_Y$ は $\mathcal{O}_Y(m\Gamma)$ に等しい。$Y$ は正規で $\varphi(E)$ の余次元は $2$ 以上なので、$\mathcal{O}_Y(m\Gamma)\cong\mathcal{L}_Y$ は可逆層である。
小収縮.$mK_Y$ が Cartier($m\ge1$)だとする。$Z:=\operatorname{Exc}(\varphi)$ の余次元は $2$ 以上で、$X\setminus Z\cong Y\setminus\varphi(Z)$ の上で $\varphi^*\mathcal{O}_Y(mK_Y)$ と $\mathcal{O}_X(mK_X)$ は一致する。$X$ は滑らかなので全体でも一致し、$mK_X\cdot C_0=\varphi^*\mathcal{O}_Y(mK_Y)\cdot C_0=0$ となって $K_X\cdot C_0<0$ に反する。$\square$
滑らかな $X$ の収縮には、曲線の長さを含む次の不等式が知られている(Wis98 Theorem 3.2, p. 10。この記事では証明しない)。$\operatorname{Exc}(\varphi)$ の既約成分 $W$ と、$W$ の一般の点を通り類が $R$ に入る有理曲線 $C$ についての $-K_X\cdot C$ の最小値 $\ell_W$ について
$$
2\dim W-\dim\varphi(W)\ge n+\ell_W-1.
$$
$\ell_W\ge1$ なので、$n=3$ で $W$ が曲線、$\varphi(W)$ が点なら $2\ge3$ となって矛盾する。よって滑らかな 3 次元多様体に小収縮はない。小収縮が現れるのは滑らかな場合には $n\ge4$ からである(ex-ct-small)。
$X'$ を滑らかな射影多様体、$Z\subset X'$ を余次元 $c\ge2$ の滑らかな閉部分多様体、$\varphi\colon X=\operatorname{Bl}_ZX'\to X'$ をブローアップ、$E$ を例外因子、$\ell$ を $\varphi$ のファイバー $\mathbb{P}^{c-1}$ の中の直線とする。$\operatorname{Pic}X=\varphi^*\operatorname{Pic}X'\oplus\mathbb{Z}E$、$K_X=\varphi^*K_{X'}+(c-1)E$(Har77 II 演習 8.5)と $E\cdot\ell=-1$ から、$\rho(X)=\rho(X')+1$、$K_X\cdot\ell=-(c-1)<0$ である。prop-ct-recognize により $\varphi$ は $\mathbb{R}_{\ge0}[\ell]$ の収縮で、因子収縮である。
$Y$ を滑らかな射影多様体、$\mathcal{E}$ を階数 $r+1$($r\ge1$)の局所自由層、$\pi\colon X=\mathbb{P}(\mathcal{E})\to Y$ を射影束、$\ell$ をファイバーの中の直線とする。$\rho(X)=\rho(Y)+1$(射影束のPicard群)で、ファイバーの法束が自明なので $K_X\cdot\ell=-(r+1)<0$ である。$\pi$ はファイバー型の収縮である。たとえば $\mathbb{P}^2\times\mathbb{P}^1$ には $K_X$ 負の端射線が 2 本あり、2 つの射影がその収縮である。$\mathbb{P}^n$ から 1 点への射($\rho=1$)も森ファイバー空間である。
$\mathbb{P}^2\times\mathbb{P}^1\subset\mathbb{P}^5$ をSegre埋め込みとし、$Y\subset\mathbb{P}^6$ をその頂点 $v$ の射影錐とする。$Y$ は次元 $4$ の正規多様体である。点 $p\in\mathbb{P}^2$ に平面 $P_p:=\langle v,\{p\}\times\mathbb{P}^1\rangle\subset Y$ を対応させ、$X:=\{(y,p)\mid y\in P_p\}\subset Y\times\mathbb{P}^2$ とおく。$\pi\colon X\to\mathbb{P}^2$ は階数 $3$ のベクトル束 $\mathcal{O}\oplus\mathcal{O}(-1)^{\oplus2}$ の 1 次元部分空間のなす射影束で、$X$ は滑らかで $\rho(X)=2$ である。第 1 射影 $\varphi\colon X\to Y$ は $v$ の外で同型で、$\sigma:=\varphi^{-1}(v)=\{v\}\times\mathbb{P}^2$ は余次元 $2$ で、法束は $\mathcal{O}(-1)^{\oplus2}$ である。
$\ell\subset\sigma$ を直線とすると、随伴公式 $K_\sigma=(K_X+\det N_\sigma)|_\sigma$ から $-3=K_X\cdot\ell-2$、すなわち $K_X\cdot\ell=-1<0$ である。$M:=\varphi^*\mathcal{O}_Y(1)$ はネフで、$\pi$ のファイバーの直線 $f$ について $M\cdot f=1$、$M\cdot\ell=0$ である。$\dim N_1(X)=2$ なので $\overline{NE}(X)\cap M^\perp$ は半直線 $\mathbb{R}_{\ge0}[\ell]$ で、これは端射線である。$\varphi$ が潰す曲線はちょうど $\sigma$ の曲線で、$\varphi$ はこの端射線の小収縮である。$\mathbb{P}^2\times\{q\}$ の錐 $\Gamma\subset Y$ の固有変換を $\Gamma'$、直線 $L\subset\mathbb{P}^2$ の逆像を $\pi^{-1}(L)$ とすると、$L\times\mathbb{P}^1$ を含む超平面の切り口から $M\sim\Gamma'+\pi^{-1}(L)$ なので $\Gamma'\cdot\ell=-1\ne0$ で、$\Gamma$ は $\mathbb{Q}$ Cartier でない。$\mathbb{P}^2\times\{q\}$ の錐を $q\in\mathbb{P}^1$ で束ねた $X^+\to Y$($\{v\}\times\mathbb{P}^1$ の法束は $\mathcal{O}(-1)^{\oplus3}$)がフリップを与える。
曲面では、3 種類は完全に分かる。小収縮は起こらない。
$X$ を滑らかな射影曲面、$R$ を $K_X$ 負の端射線、$\varphi=\varphi_R\colon X\to Y$ をその収縮とする。次のどれかが成り立つ。
要点:$\dim Y=2$ なら thm-ct-types の例外因子は負の曲線で、$K_X$ 負なので $(-1)$ 曲線である。$\dim Y=1$ ならファイバーの成分はみな比例するのでファイバーは既約で、随伴公式の偶奇から被約な $\mathbb{P}^1$ である。$\dim Y=0$ なら $-K_X$ は豊富で $\rho=1$、有理曲面の不変量から $\mathbb{P}^2$ である。
$\dim Y=2$.$\operatorname{Exc}(\varphi)$ は曲線を含むので、thm-ct-types の 2 により既約な曲線 $C$ で、$R=\mathbb{R}_{\ge0}[C]$ である。$M$ を $Y$ の豊富な因子の引き戻しとすると $M^2>0$、$M\cdot C=0$ で、$C\not\equiv0$ なので交点形式の符号から $C^2<0$ である。$K_X\cdot C<0$ と合わせて、$C$ は $(-1)$ 曲線である(錐定理 の系「$K_X$ 負の負曲線は $(-1)$ 曲線」)。Castelnuovoの収縮定理 の縮約 $\pi\colon X\to Y'$ は $C$ だけを潰す収縮である。cor-ct-unique により $Y\cong Y'$ で、$Y$ は滑らかである。
$\dim Y=1$.$Y$ は正規な曲線なので滑らかで、thm-ct-main の 3 から $\rho(X)=2$ である。一般のファイバー $F$ は thm-ct-types の 1 により滑らかで $K_X\cdot F<0$、$F^2=0$ なので、随伴公式 $2g(F)-2=K_X\cdot F$ から $F\cong\mathbb{P}^1$、$K_X\cdot F=-2$ である。任意のファイバー $G$ の成分 $C$ は $\varphi$ が潰すので $[C]\in R$ で、$[F]\in R$ に比例する。よって成分どうしの交点数はすべて $0$ である。$G$ は連結なので成分は 1 つで、$G=aC$($a\ge1$)である。$-2=K_X\cdot G=aK_X\cdot C$ で、$C^2=0$ と随伴公式 $K_X\cdot C+C^2=2p_a(C)-2$ から $K_X\cdot C$ は偶数である。よって $a=1$、$K_X\cdot C=-2$、$p_a(C)=0$ で、$C\cong\mathbb{P}^1$ である(双有理幾何学 の補題「算術種数 0 の整曲線」)。
$\dim Y=0$.すべての曲線の類が $R$ に入るので $\rho(X)=1$ で、$-K_X$ は $\overline{NE}(X)\setminus\{0\}$ の上で正、したがって豊富である。小平の消滅定理 により $H^1(X,\mathcal{O}_X)=H^1(X,K_X+(-K_X))=0$ である。$2K_X$ は豊富な因子との交点数が負なので $P_2(X)=0$ である。有理曲面 の定理「有理曲面の判定」により $X$ は有理曲面で、同じ記事の定理「標準因子の自己交点数と Picard 数」から $K_X^2=10-\rho(X)=9$、よって $X\cong\mathbb{P}^2$ である。$\square$
| 外す条件 | 反例 | 成り立たなくなること |
|---|---|---|
| $R$ の $K_X$ 負性 | 平面 3 次曲線の上の $12$ 点(下の確かめで指定)を爆発した曲面の 3 次曲線の固有変換 $C$($K_X\cdot C=3$) | 端射線 $\mathbb{R}_{\ge0}[C]$ の収縮の存在 |
| $R$ が端射線であること | $\mathbb{P}^1\times\mathbb{P}^1$ の対角線 $\Delta$ の半直線($K_X\cdot\Delta=-4$) | 半直線の収縮の存在 |
| 収縮の条件 $\varphi_*\mathcal{O}_X=\mathcal{O}_Y$ | $\mathbb{P}^1\times\mathbb{P}^1\to\mathbb{P}^1$ と 2 乗写像 $\mathbb{P}^1\to\mathbb{P}^1$ の合成 | 潰す曲線による一意性 |
$K_X$ 負性.$\Gamma\subset\mathbb{P}^2$ を滑らかな 3 次曲線とし、変曲点を原点とする群法則で $\mathbb{Z}$ 上 1 次独立な $12$ 点 $p_1,\dots,p_{12}\in\Gamma$ をとる($\Gamma(\mathbb{C})\cong\mathbb{C}/\Lambda$ は $\mathbb{Z}$ 上無限階数である)。$X$ をこの $12$ 点の爆発、$H$ を直線の引き戻し、$E_i$ を例外曲線、$C\sim3H-\sum_iE_i$ を $\Gamma$ の固有変換とする。$C^2=9-12=-3$、$K_X=-3H+\sum_iE_i$ から $K_X\cdot C=-9+12=3>0$ である。錐定理 の定理「負の曲線は端射線を張る」により $\mathbb{R}_{\ge0}[C]$ は端射線である。
$X$ から射影多様体への定値でない射 $\varphi$ で $C$ を 1 点に潰すものがないことを示す。$A$ を豊富な因子とすると、$D:=\varphi^*A\sim dH-\sum_ia_iE_i$ は $0$ でなく、$D|_C$ は自明である。$C\cong\Gamma$ の上で $H|_C$ は超平面切断、$E_i|_C=p_i$ なので、$3d=\sum_ia_i$ で、群法則の和をとると $\sum_ia_ip_i=0$ である。1 次独立性から $a_i=0$、$d=0$ となり、$D\sim0$ に反する。
端射線.$l,m$ を 2 方向のファイバーの類とすると $\overline{NE}(\mathbb{P}^1\times\mathbb{P}^1)=\mathbb{R}_{\ge0}l+\mathbb{R}_{\ge0}m$、$[\Delta]=l+m$ で、$\mathbb{R}_{\ge0}[\Delta]$ は端射線でない。$\Delta$ を潰す射 $\varphi$ について、$\varphi^*A\equiv al+bm$($a,b\ge0$)で $\varphi^*A\cdot\Delta=a+b=0$ なので $\varphi^*A\equiv0$、$\varphi$ は定値である。
$\varphi_*\mathcal{O}_X=\mathcal{O}_Y$.$p\colon\mathbb{P}^1\times\mathbb{P}^1\to\mathbb{P}^1$ を第 1 射影、$s\colon\mathbb{P}^1\to\mathbb{P}^1$ を $x\mapsto x^2$ とする。$p$ と $s\circ p$ は同じ曲線($p$ のファイバー)を潰すが、$s$ は同型でない。$(s\circ p)_*\mathcal{O}=s_*\mathcal{O}_{\mathbb{P}^1}$ は階数 $2$ である。
Fuj10 Theorem 1.1 の (4)(p. 2)は、正規多様体 $X$、有効 $\mathbb{R}$ 因子 $B$ で $K_X+B$ が $\mathbb{R}$ Cartier なもの、射影射 $X\to S$ について、非対数標準的な部分と交わらない $(K_X+B)$ 負の面 $F$ の収縮が $S$ の上に存在することを述べる。thm-ct-main の $\varphi_R$ の存在はその $B=0$、$S$ が 1 点、$F$ が半直線の場合である。極小モデル理論で途中の多様体に特異点を許すのは、3 次元でも滑らかな極小モデルをもたない例があるからである(BCHM08 §1, p. 3)。
Mathpediaは寄付と、参考文献の書籍リンク(Amazonアソシエイト)の紹介料で運営されています。 支援について / 寄付する