Hurwitzの自己同型定理(Hurwitz's automorphisms theorem)とは、種数 $g\ge2$ のコンパクトで連結なリーマン面 $X$ の自己同型群は有限で、その位数が $84(g-1)$ 以下であるという定理である。有限性は、自己同型が Weierstrass 点の有限集合を並べ替えることと、恒等写像でない自己同型の固定点が $2g+2$ 個以下であることから従う。上界は、有限群による商写像に Riemann–Hurwitz の公式を当て、分岐の指数から決まる正の数の最小値が $1/42$ であることから得られ、等号は商が種数 $0$ で分岐の指数が $2,3,7$ のときに限る。種数 $3$ の Klein の 4 次曲線が上界を達成する。
前提知識: リーマン面, Riemann–Hurwitzの公式, 種数, Weierstrass点
Riemann 球面 $\mathbb{P}^1$ の自己同型は 1 次分数変換の全体で、無限群である。複素トーラス $\mathbb{C}/\Lambda$ も平行移動という無限個の自己同型をもつ。ところが種数 $g\ge2$ のコンパクトなリーマン面では、自己同型(自分自身への双正則写像)は有限個しかなく、その個数は種数だけで決まる上界
$$
\lvert\operatorname{Aut}(X)\rvert\le84(g-1)
$$
をもつ。これが Hurwitz の自己同型定理 である。
証明は 2 段に分かれる。まず、自己同型は Weierstrass点 の有限集合を並べ替えるので、群が有限であることが分かる。次に、有限群 $G$ で割った商 $X\to X/G$ に Riemann–Hurwitzの公式 を当てると、
$$
\frac{2g-2}{\lvert G\rvert}=2h-2+\sum_{i=1}^{s}\Bigl(1-\frac1{m_i}\Bigr)
$$
という等式が得られる($h$ は商の種数、$m_i$ は分岐の指数)。右辺が正のときにとりうる最小値が $1/42$ であることから $84(g-1)$ が出てくる。最小値を与えるのは商が $\mathbb{P}^1$ で分岐の指数が $(2,3,7)$ の場合で、種数 $3$ の Kleinの4次曲線がこの上界を達成する。
この記事では、$X$ はコンパクトで連結なリーマン面、$g$ はその種数とする。$X$ から $X$ への双正則写像の全体は合成について群をなし、これを $\operatorname{Aut}(X)$ と書く。$G\subset\operatorname{Aut}(X)$ を部分群、$x\in X$ とするとき、$G_x:=\{\sigma\in G\mid\sigma(x)=x\}$ を $x$ の固定部分群、$Gx:=\{\sigma(x)\mid\sigma\in G\}$ を軌道という。局所分岐指数 $e_x(f)$、写像の次数の記号は Riemann–Hurwitzの公式 と同じである。
$g\ge2$ とする。
1 は thm-ha-finite、2 と 3 は thm-ha-bound である(証明はそれぞれの箱の直後)。$\square$
$\sigma\in\operatorname{Aut}(X)$ が恒等写像でなければ、$\sigma$ の固定点は高々 $2g+2$ 個である。
$\sigma\ne\mathrm{id}$ なので $\sigma(P)\ne P$ となる点 $P$ がある。Riemann の不等式(Riemann–Rochの定理 の系「Riemann の不等式」)から $\ell((g+1)P)\ge2$ なので、$P$ だけに $g+1$ 位以下の極をもつ定数でない有理型関数 $f$ がある。$h:=f-f\circ\sigma$ とおく。$f\circ\sigma$ の極は $\sigma^{-1}(P)$ だけにあり、$\sigma^{-1}(P)\ne P$ なので、$f\circ\sigma$ は $P$ で正則である。$f$ は $P$ に極をもつから $h\ne0$ であり、$h$ の極は $P$ と $\sigma^{-1}(P)$ に高々 $g+1$ 位ずつで、極の位数の和は $2g+2$ 以下である。
$Q$ を $\sigma$ の固定点とする。$P$ は固定点でないので $Q\ne P$ であり、$\sigma^{-1}(P)$ も固定点でない(固定点なら $\sigma^{-1}(P)=P$ となる)ので $Q\ne\sigma^{-1}(P)$ である。よって $h$ は $Q$ で正則で、$h(Q)=f(Q)-f(\sigma(Q))=0$ となる。$h$ が定数なら固定点はない。定数でなければ、零点の個数は重複度込みで極の位数の和に等しい(因子 の定理「コンパクトなリーマン面上の主因子の次数」)ので $2g+2$ 以下であり、固定点はそれ以下である。$\square$
$\mathbb{P}^1$ の 1 次分数変換は高々 $2=2\cdot0+2$ 個、複素トーラスの $z\mapsto-z$ は $4=2\cdot1+2$ 個の固定点をもち、超楕円曲線の超楕円対合はちょうど $2g+2$ 個の固定点をもつ(超楕円曲線 の命題「超楕円対合とその固定点」)。上界 $2g+2$ は改良できない。
$g\ge2$ なら $\operatorname{Aut}(X)$ は有限群である。
$W$ を $X$ の Weierstrass 点の集合とする。$g\ge2$ なので $W$ は有限で、$2g+2\le\lvert W\rvert$ である(Weierstrass点 の系「Weierstrass 点の個数」)。$\sigma\in\operatorname{Aut}(X)$ について、$u\mapsto u\circ\sigma^{-1}$ は $P$ だけにちょうど $n$ 位の極をもつ関数を $\sigma(P)$ だけにちょうど $n$ 位の極をもつ関数に写す全単射なので、$P$ と $\sigma(P)$ の空隙値は等しい。よって $\sigma(W)=W$ であり、準同型 $\rho\colon\operatorname{Aut}(X)\to\operatorname{Sym}(W)$ が得られる。$\operatorname{Sym}(W)$ は有限なので、核 $G_0:=\ker\rho$ が有限であることを示せばよい。
$P\in W$ を 1 つとり、$n$ を $P$ の最小の非空隙値とする($1$ は空隙値で、空隙値は $g$ 個なので $2\le n\le g+1$)。$\ell((n-1)P)=1$、$\ell(nP)=2$ なので、$P$ だけにちょうど $n$ 位の極をもつ関数 $f$ をとると $L(nP)$ は $1,f$ で張られる。$\sigma\in G_0$ なら $\sigma(P)=P$ なので $f\circ\sigma$ も $P$ だけにちょうど $n$ 位の極をもち、$f\circ\sigma=af+b$($a\ne0$)と書ける。$Q\in W\setminus\{P\}$ では $\sigma(Q)=Q$ なので $f(Q)=af(Q)+b$ である。$f$ は次数 $n$ の写像 $X\to\mathbb{P}^1$ なので各値を高々 $n$ 回しかとらず、$\lvert W\setminus\{P\}\rvert\ge2g+1>n$ だから、$f$ は $W\setminus\{P\}$ で相異なる 2 つの値 $c_1\ne c_2$ をとる。$z\mapsto az+b$ が $c_1,c_2$ を固定するので $a=1$、$b=0$、すなわち $f\circ\sigma=f$ である。
そこで $A:=\{\sigma\in\operatorname{Aut}(X)\mid f\circ\sigma=f\}$ とおくと $G_0\subset A$ である。相異なる $2g+3$ 個の値 $c\in\mathbb{C}$ をとり、それらの $f$ によるファイバーの和集合を $S$ とする。$S$ は有限で $\lvert S\rvert\ge2g+3$ であり、$A$ の元は各ファイバー $f^{-1}(c)$ をそれ自身に写すので、$A$ は $S$ に作用する。$S$ の点をすべて固定する $\sigma\in A$ は $2g+3$ 個以上の固定点をもつから、lem-ha-fixed により $\sigma=\mathrm{id}$ である。よって $A\to\operatorname{Sym}(S)$ は単射で、$A$ も $G_0$ も有限である。$\square$
$G\subset\operatorname{Aut}(X)$ を有限部分群とする。
要点:固定部分群の作用を平均して線形化し、商の座標を $z^m$ で与える。
1:$x$ を中心とする局所座標 $w$ をとる。$\sigma\in G_x$ は $x$ を固定する双正則写像なので、$w\circ\sigma=\chi(\sigma)w+(w\text{ の 2 次以上の項})$、$\chi(\sigma)\ne0$ と書け、連鎖律から $\chi(\sigma\tau)=\chi(\sigma)\chi(\tau)$ である。$G_x$ で不変な $x$ の近傍で$$z:=\frac1m\sum_{\tau\in G_x}\chi(\tau)^{-1}\,(w\circ\tau)$$とおくと、$z=w+(\text{2 次以上の項})$ なので $z$ は $x$ の近くで局所座標であり、$\tau\mapsto\tau\sigma$ と和をとり直して $z\circ\sigma=\chi(\sigma)z$ を得る。$\chi(\sigma)=1$ なら $\sigma$ は $x$ の近傍で恒等写像で、一致の定理 により $\sigma=\mathrm{id}$ である。よって $\chi$ は $G_x$ から $\mathbb{C}^\times$ の有限部分群への同型で、$\mathbb{C}^\times$ の有限部分群は 1 の冪根のなす巡回群だから、$G_x$ は巡回群で、生成元は $z\mapsto\zeta z$ と書ける。
2:$\sigma\ne\mathrm{id}$ の固定点は孤立している(1 で作った座標で $\zeta z=z$ となるのは $z=0$ だけ)。$X$ はコンパクトなので各 $\sigma$ の固定点は有限個であり、$G$ は有限である。
3:$\pi$ による開集合の像 $\pi(V)$ は $\pi^{-1}(\pi(V))=\bigcup_\sigma\sigma(V)$ が開なので開であり、$\pi$ は開写像である。各 $x$ について、1 で作った座標 $z$ が定義された $G_x$ 不変な近傍 $U_x$ を、$\sigma\notin G_x$ なら $\sigma(U_x)\cap U_x=\emptyset$ となるように小さくとる($\sigma(x)\ne x$ となる $\sigma$ は有限個)。すると $\pi(U_x)\cong U_x/G_x$ であり、$\varphi_x:=z^m$ は $\pi(U_x)$ から $\mathbb{C}$ の開集合への同相写像を与える($z^m=z'^m$ は $z'=\zeta^jz$ と同値)。$U_x$ の中で固定部分群が自明でない点は $x$ だけなので、$\pi(x)$ 以外の点では、別の点を中心とする座標 $\varphi_{x'}$ との座標変換は正則な関数の合成である。中心どうしが重なるのは $x'\in Gx$ のときで、そのとき座標変換は連続で中心の 1 点を除いて正則だから、Riemann の除去可能特異点定理により正則である。異なる軌道は、$G$ 不変な互いに交わらない近傍で分けられるので、$Y$ はハウスドルフであり、$X$ の像としてコンパクトかつ連結である。
この座標で $\pi$ は $z\mapsto z^m$ と書けるので、$\pi$ は正則で $e_x(\pi)=m=\lvert G_x\rvert$ である。ファイバー $\pi^{-1}(\pi(x))=Gx$ は $\lvert G\rvert/\lvert G_x\rvert$ 点からなり、軌道の点の固定部分群は互いに共役($G_{\sigma x}=\sigma G_x\sigma^{-1}$)で位数が等しい。局所分岐指数の和は $(\lvert G\rvert/m)\cdot m=\lvert G\rvert$ なので、$\pi$ の次数は $\lvert G\rvert$ である。$\square$
$G\subset\operatorname{Aut}(X)$ を有限部分群、$h$ を $Y=X/G$ の種数、$y_1,\dots,y_s$ を $\pi$ の分岐値とし、$y_i$ の上の点の局所分岐指数を $m_i\ge2$ とする。このとき
$$
2g-2=\lvert G\rvert\Bigl(2h-2+\sum_{i=1}^s\Bigl(1-\frac1{m_i}\Bigr)\Bigr)
$$
である。
prop-ha-quotient の 3 により、$y_i$ の上の点は $\lvert G\rvert/m_i$ 個で、どれも局所分岐指数 $m_i$ をもつ(したがって $m_i$ は $y_i$ だけで決まる)。分岐値の上にない点では局所分岐指数は $1$ である。Riemann–Hurwitzの公式 の定理「Riemann–Hurwitzの公式」から
$$
2g-2=\lvert G\rvert(2h-2)+\sum_{i=1}^s\frac{\lvert G\rvert}{m_i}(m_i-1)
$$
であり、これを整理すればよい。$\square$
整数 $h\ge0$、$s\ge0$、$m_1,\dots,m_s\ge2$ について
$$
R:=2h-2+\sum_{i=1}^s\Bigl(1-\frac1{m_i}\Bigr)
$$
とおく。$R>0$ なら $R\ge1/42$ であり、等号は $h=0$、$s=3$、$\{m_1,m_2,m_3\}=\{2,3,7\}$ のときに限る。
各項 $1-1/m_i$ は $1/2$ 以上 $1$ 未満である。$h\ge1$ なら、$h\ge2$ で $R\ge2$、$h=1$ で $R=\sum(1-1/m_i)>0$ から $s\ge1$、$R\ge1/2$ である。以下 $h=0$ とする。$s\le2$ なら $R<-2+2=0$ である。$s\ge5$ なら $R\ge-2+5/2=1/2$ である。$s=4$ なら、すべての $m_i=2$ のとき $R=0$ なので、少なくとも 1 つは $3$ 以上で $R\ge-2+3/2+2/3=1/6$ である。
$s=3$ で $m_1\le m_2\le m_3$ とすると $R=1-(1/m_1+1/m_2+1/m_3)$ である。$m_1\ge3$ なら、$(3,3,3)$ は $R=0$ なので $R\ge1-(1/3+1/3+1/4)=1/12$ である。$m_1=2$、$m_2\ge4$ なら、$(2,4,4)$ は $R=0$ なので $R\ge1-(1/2+1/4+1/5)=1/20$ である。$m_1=2$、$m_2=3$ なら $R=1/6-1/m_3$ で、$R>0$ は $m_3\ge7$ と同値であり、$R\ge1/6-1/7=1/42$、等号は $m_3=7$ に限る。$m_2=2$ なら $R=-1/m_3<0$ である。どの場合も $R\ge1/42$ で、等号は $(2,3,7)$ に限る。$\square$
$g\ge2$ とし、$G\subset\operatorname{Aut}(X)$ を部分群とする。$\lvert G\rvert\le84(g-1)$ であり、等号は $X/G$ が種数 $0$ で、分岐値が 3 つ、その上の局所分岐指数が $2,3,7$ であるときに限る。
thm-ha-finite により $G$ は有限である。lem-ha-rh の右辺の括弧を $R$ とおくと $2g-2=\lvert G\rvert R$ で、$g\ge2$ から $R>0$ である。lem-ha-min により $R\ge1/42$ なので、$\lvert G\rvert=(2g-2)/R\le42(2g-2)=84(g-1)$ である。等号は $R=1/42$ と同値であり、lem-ha-min の等号の条件から主張の形になる。$\square$
lem-ha-min の証明から、$R$ の小さい値と、それに対応する $\lvert G\rvert/(g-1)=2/R$ が次のように分かる(いずれも $h=0$、$s=3$)。
| 分岐の指数 | $R$ | $\lvert G\rvert$ |
|---|---|---|
| $(2,3,7)$ | $1/42$ | $84(g-1)$ |
| $(2,3,8)$ | $1/24$ | $48(g-1)$ |
| $(2,4,5)$ | $1/20$ | $40(g-1)$ |
| $(2,3,9)$ | $1/18$ | $36(g-1)$ |
| $(2,3,10)$ | $1/15$ | $30(g-1)$ |
| $(2,3,12)$、$(2,4,6)$、$(3,3,4)$ | $1/12$ | $24(g-1)$ |
$(2,3,11)$ は $R=5/66$、$\lvert G\rvert=132(g-1)/5$ を与える。したがって $\lvert G\rvert>24(g-1)$ なら、商は $\mathbb{P}^1$ で分岐の指数は $(2,3,m)$($7\le m\le11$)か $(2,4,5)$ である。
$X\subset\mathbb{P}^2$ を $x^3y+y^3z+z^3x=0$ で定まる曲線とする。$X$ は滑らかな平面 4 次曲線で、種数は $3$ である(Elk99 §2.1、p. 63。種数は次数 $4$ の平面曲線の公式 $(4-1)(4-2)/2$ による)。$\zeta:=e^{2\pi i/7}$ について
$$
(x:y:z)\mapsto(\zeta x:\zeta^4y:\zeta^2z),\qquad(x:y:z)\mapsto(y:z:x)
$$
は方程式を保つ(第 1 の写像で各項は $\zeta^7=\zeta^{14}=1$ 倍される)ので、位数 $7$ と位数 $3$ の自己同型を与える。$\operatorname{Aut}(X)$ の位数は $168$ であり(Kleinの4次曲線 の定理「自己同型群」)、位数 $168$ の単純群 $\operatorname{PSL}_2(\mathbb{F}_7)$ と同型である(Elk99 Introduction と §2.1、pp. 51・63。同型はこの記事では証明しない)。$168=84(3-1)$ なので thm-ha-bound の等号が成り立つ。thm-ha-bound の等号の条件から、$X\to X/\operatorname{Aut}(X)$ は $\mathbb{P}^1$ への写像で、分岐の指数は $2,3,7$ である。上の位数 $7$ の自己同型は 3 点 $(1:0:0)$、$(0:1:0)$、$(0:0:1)$ を固定し、これらはいずれも $X$ の上にある。
$g\ge2$、$n:=2g+2$ とし、$X$ を $y^2=x^n-1$ の滑らかな射影モデルとする(超楕円曲線)。$\varepsilon:=e^{2\pi i/n}$ について
$$
\alpha\colon(x,y)\mapsto(\varepsilon x,\,y),\qquad\beta\colon(x,y)\mapsto\Bigl(\frac1x,\,\frac{iy}{x^{g+1}}\Bigr),\qquad\iota\colon(x,y)\mapsto(x,-y)
$$
は自己同型である($\beta$ では $(iy/x^{g+1})^2=-(x^n-1)/x^n=x^{-n}-1$)。これらが生成する群 $G$ は、$x$ 座標に $x\mapsto\varepsilon^jx$、$x\mapsto\varepsilon^j/x$($2n$ 個の 1 次分数変換)として作用し、それぞれに $y$ の符号の 2 通りが対応するので、$\lvert G\rvert=4n=8(g+1)$ である。$8(g+1)\le84(g-1)$ は $g\ge2$ で成り立つ。$g=2$ では $\lvert G\rvert=24$ であるが、種数 $2$ の曲線の自己同型群の位数は $48$ 以下で、$84$ にはとどかない(Elk99 §2.2、pp. 69–70。この記事では証明しない)。
$G\to\bar G$($x$ 座標への作用)の核は $\{\mathrm{id},\iota\}$ で、$\bar G$ は $x\mapsto\varepsilon^jx$、$x\mapsto\varepsilon^j/x$ の $2n$ 個からなる。固定部分群が自明でない点を調べる。(i) 点 $(0,\pm i)$:$\bar G$ で $0$ を固定するのは回転 $x\mapsto\varepsilon^jx$ の $n$ 個で、その持ち上げのうち $(0,i)$ を固定するのは $\alpha^j$ だけなので、固定部分群は $\langle\alpha\rangle$(位数 $n$)である。$\beta$ は $x=0$ と $x=\infty$ を入れ替えるので、無限遠の 2 点も同じ軌道に入る。(ii) 根の上の点 $(\varepsilon^j,0)$:$\bar G$ で $\varepsilon^j$ を固定するのは恒等写像と反転 $x\mapsto\varepsilon^{2j}/x$ で、$y=0$ なのでどちらの持ち上げも 2 つとも点を固定し、固定部分群の位数は $4$ である。(iii) $x_0^n=-1$ を満たす $x_0$ の上の点:$x_0^2=\varepsilon^{2k+1}$ と書け、$\bar G$ で $x_0$ を固定するのは恒等写像と反転 $x\mapsto\varepsilon^{2k+1}/x$ である。$y_0^2=-2\ne0$ なので反転の 2 つの持ち上げ $\tau,\iota\tau$ のちょうど一方が $(x_0,y_0)$ を固定し、固定部分群の位数は $2$ である。$\bar G$ の反転の固定点は $x^2=\varepsilon^j$ の点だけで、$j$ が偶数なら (ii)、奇数なら (iii) に入るので、ほかの点の固定部分群は自明である。(i)〜(iii) の点はそれぞれ 1 つの軌道をなす(回転で移り合う)ので、分岐の指数は $(n,4,2)$ で、$R=-2+\bigl(1-\frac1n\bigr)+\frac34+\frac12=\frac14-\frac1{2g+2}=\frac{2g-2}{8(g+1)}$ となり、lem-ha-rh の $2g-2=\lvert G\rvert R$ は $\lvert G\rvert=8(g+1)$ と一致する。
| 外す条件 | 反例 | 成り立たなくなること |
|---|---|---|
| $g\ge2$($g=1$ にする) | 複素トーラス $\mathbb{C}/\Lambda$ | $\operatorname{Aut}(X)$ が有限 |
| $g\ge2$($g=0$ にする) | Riemann 球面 $\mathbb{P}^1$ | $\operatorname{Aut}(X)$ が有限 |
| 基礎体が $\mathbb{C}$(代数曲線として正標数の体の上で考える) | 標数 $p\ge5$ の $y^2=x^p-x$ | $\lvert\operatorname{Aut}(X)\rvert\le84(g-1)$ |
1 行目:$c\in\mathbb{C}$ について平行移動 $[z]\mapsto[z+c]$ は双正則写像で、$c\notin\Lambda$ なら恒等写像でない。$\mathbb{C}/\Lambda$ の点ごとに異なる自己同型が得られるので $\operatorname{Aut}(X)$ は無限群である。平行移動は固定点をもたないので、lem-ha-fixed とは矛盾しない。thm-ha-finite の証明が使えないのは、種数 $1$ では Weierstrass 点が存在しない(空隙列はどの点でも $1$ だけ)からである。
2 行目:1 次分数変換 $z\mapsto az+b$($a\ne0$)はすべて $\mathbb{P}^1$ の自己同型である。
3 行目:代数閉体 $k$(標数 $p\ge5$)の上の超楕円曲線 $y^2=x^p-x$ は、$x^p-x$ が重根をもたない(微分が $-1$)奇数次の多項式なので種数 $g=(p-1)/2$ である。成分が $\mathbb{F}_p$ の元で $ad-bc\ne0$ となる $a,b,c,d$ について $x':=(ax+b)/(cx+d)$ とおくと、$(ax+b)^p=ax^p+b$ などから $x'^p-x'=(ad-bc)(x^p-x)/(cx+d)^{p+1}$ となる。$\delta^2=ad-bc$ となる $\delta\in k$ をとると、$(x,y)\mapsto\bigl(x',\,\delta y/(cx+d)^{(p+1)/2}\bigr)$ は関数体の自己同型を与えるので、曲線の自己同型である。$x$ への作用は $\mathrm{PGL}_2(\mathbb{F}_p)$(位数 $p(p^2-1)$)の元を与え、各元に $y$ の符号の 2 通りが対応するので、少なくとも $2p(p^2-1)$ 個の自己同型がある(ちょうどこの個数であることは Roquette による。Har77 第 IV 章 演習 2.5 の注、p. 306)。$p=5$ では $g=2$、$2p(p^2-1)=240>84=84(g-1)$ である。同じ注によれば、$p>g+1$ ならこの曲線を除いて $84(g-1)$ の上界は成り立つ。
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