Regiomontanusの最大角問題(Regiomontanus' angle maximization problem)とは、目の高さの水平な直線 $\ell$ から高さ $a$、$b$($0<a<b$)にある鉛直な線分 $UV$ を、$\ell$ の上で水平距離 $x>0$ の点 $X$ から見込む角 $\varphi(x)=\angle UXV$ が最大になる位置を求める問題である。$\tan\varphi(x)=\frac{b-a}{x+ab/x}$ と相加平均・相乗平均の不等式から、$\varphi$ は $x=\sqrt{ab}$ でただ 1 つの最大をとり、最大の角は $\sin\varphi=\frac{b-a}{a+b}$ を満たす。最大の位置は、$U$、$V$ を通り $\ell$ に接する円の接点である。
前提知識: 相加平均と相乗平均, 加法定理から積和・和積・合成・正接の公式を導く, 方べきの定理(高校数学), 正弦定理(高校数学), 円周角の定理(高校数学)
壁に縦長の絵が掛かっている。絵の下端は目の高さより $1$ だけ上、上端は $9$ だけ上にある(長さの単位は m でも何でもよい)。壁に近づきすぎると絵を真下から見上げることになり、離れすぎると絵は小さく見える。絵が最も大きく見えるのは、壁からどれだけ離れたときだろうか。
「大きく見える」を、絵の下端と上端を目から見込む角の大きさで測る。目の高さの水平な直線を $\ell$ とし、$\ell$ が壁と交わる点を原点 $O$、壁を $y$ 軸にとる。絵の下端は $U(0,1)$、上端は $V(0,9)$、目は $X(x,0)$($x>0$)である。
$\alpha=\angle OXV$、$\beta=\angle OXU$ とする。三角形 $OXV$、$OXU$ は $O$ で直角なので、$\tan\alpha=\dfrac9x$、$\tan\beta=\dfrac1x$ である。$U$ は線分 $OV$ の上にあるので、見込む角は $\varphi=\angle UXV=\alpha-\beta$ である。正接の差の公式 $\tan(\alpha-\beta)=\dfrac{\tan\alpha-\tan\beta}{1+\tan\alpha\tan\beta}$ を使うと
$$
\tan\varphi=\frac{\dfrac9x-\dfrac1x}{1+\dfrac9x\cdot\dfrac1x}=\frac{\dfrac8x}{\dfrac{x^2+9}{x^2}}=\frac{8x}{x^2+9}
$$
である。たとえば $x=3$ では $\tan\varphi=\dfrac{24}{18}=\dfrac43$、$x=1$ では $\tan\varphi=\dfrac8{10}=\dfrac45$ である。いくつかの $x$ で計算すると、次の表になる(角は小数第 3 位で四捨五入)。
| $x$ | $1$ | $1.5$ | $2$ | $3$ | $4.5$ | $6$ | $9$ |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| $\tan\varphi$ | $\dfrac45$ | $\dfrac{16}{15}$ | $\dfrac{16}{13}$ | $\dfrac43$ | $\dfrac{16}{13}$ | $\dfrac{16}{15}$ | $\dfrac45$ |
| $\varphi$ | $38.66^\circ$ | $46.85^\circ$ | $50.91^\circ$ | $53.13^\circ$ | $50.91^\circ$ | $46.85^\circ$ | $38.66^\circ$ |
表の中では $x=3$ で角が最も大きい。しかも、$x=1$ と $x=9$、$x=1.5$ と $x=6$、$x=2$ と $x=4.5$ で角が等しい。どの組も積が $9$ である。
絵の下端 U(0,1) と上端 V(0,9) を、目の高さの直線 ℓ の上の 3 点 x=1, 3, 9 から見込む角。x=3 で最も大きく、x=1 と x=9 では等しい
この記事で答える問いは次の 3 つである。
| 高校の計算 | この記事の言葉 | 図形の言葉 |
|---|---|---|
| 正接の差の公式 | 見込む角の正接 $\dfrac{(b-a)x}{x^2+ab}$ | 2 つの直角三角形の角の差 |
| 相加平均と相乗平均 | 最大になる位置 $x=\sqrt{ab}$ | $U,V$ を通り $\ell$ に接する円の接点 |
| $x$ と $\dfrac{ab}x$ で値が等しい | 見込む角の対称性 | 同じ円が $\ell$ と交わる 2 点 |
| 最大の角の正弦 $\dfrac{b-a}{a+b}$ | 最大の角 | 接する円の半径 $\dfrac{a+b}2$ |
以下では、ex-rgm-start の $1$ と $9$ を文字に置きかえる。
$0< a< b$ とし、座標平面の $x$ 軸を $\ell$、$y$ 軸の 2 点を $U(0,a)$、$V(0,b)$ とする。$x>0$ に対し、点 $X(x,0)$ と線分 $UV$ の両端を結んでできる角 $\angle UXV$ を、$X$ から線分 $UV$ を 見込む角 といい、$\varphi(x)$ と書く。
$\ell$ は目の高さの水平な直線、線分 $UV$ は目より高い所にある絵や像を表す。$a>0$ は「下端が目の高さより上にある」という仮定である。
def-rgm-angle の設定で、すべての $x>0$ について $0^\circ<\varphi(x)<90^\circ$ であり、
$$
\tan\varphi(x)=\frac{(b-a)x}{x^2+ab}
$$
である。
$\alpha=\angle OXV$、$\beta=\angle OXU$ とおく。三角形 $OXV$ と $OXU$ は $O$ で直角な直角三角形で、$OX=x$、$OV=b$、$OU=a$ だから
$$
\tan\alpha=\frac bx,\qquad \tan\beta=\frac ax
$$
である。直角三角形の直角でない角なので $0^\circ<\beta<90^\circ$、$0^\circ<\alpha<90^\circ$ である。$0< a< b$ なので $U$ は線分 $OV$ の内部にあり、半直線 $XU$ は角 $\angle OXV$ の内部にある。よって $\varphi(x)=\angle UXV=\alpha-\beta$ である。$\tan\beta<\tan\alpha$ で、正接は $0^\circ$ から $90^\circ$ の間で増加するので $\beta<\alpha$、したがって $0^\circ<\alpha-\beta<90^\circ$ である。
加法定理から積和・和積・合成・正接の公式を導く の命題「正接の加法定理と $t=\tan\frac{\theta}{2}$ による式」の 1 で $\beta$ を $-\beta$ に置きかえると($\tan(-\beta)=-\tan\beta$)、$\tan(\alpha-\beta)=\dfrac{\tan\alpha-\tan\beta}{1+\tan\alpha\tan\beta}$ である($\alpha$、$\beta$、$\alpha-\beta$ はどれも $0^\circ$ と $90^\circ$ の間にあるので、余弦は $0$ でない)。代入して、分母と分子に $x^2$ を掛けると
$$
\tan\varphi(x)=\frac{\dfrac bx-\dfrac ax}{1+\dfrac{ab}{x^2}}=\frac{(b-a)x}{x^2+ab}
$$
である。$\square$
直線 $XU$、$XV$ の傾きは $-\dfrac ax$、$-\dfrac bx$ なので、この式は 2直線のなす角 の正接の公式に 2 つの傾きを入れたものと同じ形である。
lem-rgm-tan の分母と分子を $x$ で割ると
$$
\tan\varphi(x)=\frac{b-a}{x+\dfrac{ab}x}
$$
となる。分子 $b-a$ は $x$ によらない正の数なので、分母 $x+\dfrac{ab}x$ が小さいほど $\tan\varphi(x)$ は大きい。分母の最小は、相加平均と相乗平均の不等式で求まる。
def-rgm-angle の設定で、次が成り立つ。
(1) $\varphi(x)$ は $0< x\le\sqrt{ab}$ で増加し、$x\ge\sqrt{ab}$ で減少する。特に、$\varphi(x)$ が最大になる $x$ は $x=\sqrt{ab}$ ただ 1 つである。
(2) 最大の角 $\varphi_{\max}=\varphi\left(\sqrt{ab}\right)$ は
$$
\tan\varphi_{\max}=\frac{b-a}{2\sqrt{ab}},\qquad \sin\varphi_{\max}=\frac{b-a}{a+b}
$$
を満たす。
方針:$g(x)=x+\dfrac{ab}x$ とおくと $\tan\varphi(x)=\dfrac{b-a}{g(x)}$ である。$g$ の増減と最小値を調べ、正接から角にもどす。
段 1($g$ の最小値)。$x>0$、$\dfrac{ab}x>0$ なので、相加平均と相乗平均 の定理「2 数の相加相乗平均の不等式」により
$$
g(x)=x+\frac{ab}x\ge2\sqrt{x\cdot\frac{ab}x}=2\sqrt{ab}
$$
で、等号は $x=\dfrac{ab}x$、つまり $x^2=ab$、$x=\sqrt{ab}$ のときだけ成り立つ。
段 2($g$ の増減)。$0< s< t$ とすると
$$
g(s)-g(t)=(s-t)+ab\left(\frac1s-\frac1t\right)=(s-t)+\frac{ab(t-s)}{st}=\frac{(t-s)(ab-st)}{st}
$$
である。$t-s>0$、$st>0$ なので、$g(s)-g(t)$ の符号は $ab-st$ の符号と同じである。$t\le\sqrt{ab}$ なら $st< t^2\le ab$ なので $g(s)>g(t)$ で、$g$ は $0< x\le\sqrt{ab}$ で減少する。$s\ge\sqrt{ab}$ なら $st>s^2\ge ab$ なので $g(s)< g(t)$ で、$g$ は $x\ge\sqrt{ab}$ で増加する。
段 3(正接の増減)。$b-a>0$ で $g(x)>0$ なので、$\tan\varphi(x)=\dfrac{b-a}{g(x)}$ は $g(x)$ が小さいほど大きい。段 2 から、$\tan\varphi(x)$ は $0< x\le\sqrt{ab}$ で増加し、$x\ge\sqrt{ab}$ で減少する。
段 4(角にもどす)。lem-rgm-tan により $\varphi(x)$ はいつも $0^\circ$ と $90^\circ$ の間にあり、この範囲で正接は増加する。つまり $\varphi(s)<\varphi(t)$ と $\tan\varphi(s)<\tan\varphi(t)$ は同じことである。よって $\varphi(x)$ も $0< x\le\sqrt{ab}$ で増加し、$x\ge\sqrt{ab}$ で減少する。$x\ne\sqrt{ab}$ なら $\varphi(x)<\varphi\left(\sqrt{ab}\right)$ なので、最大になる点は $x=\sqrt{ab}$ だけである。これで (1) が示された。
段 5(最大の角の値)。段 1 の等号から $\tan\varphi_{\max}=\dfrac{b-a}{2\sqrt{ab}}$ である。$1+\tan^2\varphi=\dfrac1{\cos^2\varphi}$ を使うと
$$
\frac1{\cos^2\varphi_{\max}}=1+\frac{(b-a)^2}{4ab}=\frac{4ab+(b-a)^2}{4ab}=\frac{(a+b)^2}{4ab}
$$
で、$\cos\varphi_{\max}>0$ だから $\cos\varphi_{\max}=\dfrac{2\sqrt{ab}}{a+b}$ である。よって
$$
\sin\varphi_{\max}=\tan\varphi_{\max}\cos\varphi_{\max}=\frac{b-a}{2\sqrt{ab}}\cdot\frac{2\sqrt{ab}}{a+b}=\frac{b-a}{a+b}
$$
である。これで (2) が示された。$\square$
thm-rgm-main の式で計算すると、次のようになる。
| $(a,b)$ | 最大の位置 $x=\sqrt{ab}$ | $\tan\varphi_{\max}=\dfrac{b-a}{2\sqrt{ab}}$ | $\sin\varphi_{\max}=\dfrac{b-a}{a+b}$ | $\varphi_{\max}$ |
|---|---|---|---|---|
| $(1,9)$ | $3$ | $\dfrac86=\dfrac43$ | $\dfrac8{10}=\dfrac45$ | $53.13^\circ$ |
| $(2,5)$ | $\sqrt{10}\approx3.1623$ | $\dfrac3{2\sqrt{10}}\approx0.4743$ | $\dfrac37$ | $25.38^\circ$ |
| $(3,4)$ | $2\sqrt3\approx3.4641$ | $\dfrac1{4\sqrt3}\approx0.1443$ | $\dfrac17$ | $8.21^\circ$ |
$(1,9)$ は ex-rgm-start の絵で、表で見当をつけた $x=3$ が本当に最大の位置であり、最大の角は $\tan\varphi=\dfrac43$ を満たす角(約 $53.13^\circ$)である。
3 つの (a,b) について、見込む角 φ(x) を度で表したグラフ。どれも x=√(ab) で最大になり、その前で増加、後で減少する
$g(x)=x+\dfrac{ab}x$ で $x$ を $\dfrac{ab}x$ に置きかえると $\dfrac{ab}x+x$ で、同じ値である。したがって
$$
\varphi(x)=\varphi\left(\frac{ab}x\right)\qquad(x>0)
$$
である。ex-rgm-start の表で、積が $9$ の 2 つの位置の角が等しかったのはこのためである。最大の位置 $\sqrt{ab}$ は、この対応で自分自身に移る唯一の点である。図形としての理由は prop-rgm-circle の後で述べる。
同じ最大は微分でも求まる。関数の増減と極値 の方法で、正接を $x$ の関数として調べる。
$f(x)=\dfrac{(b-a)x}{x^2+ab}$ とおく。商の微分法により
$$
f'(x)=(b-a)\cdot\frac{(x^2+ab)-x\cdot2x}{(x^2+ab)^2}=\frac{(b-a)(ab-x^2)}{(x^2+ab)^2}
$$
である。$b-a>0$ で分母は正なので、$f'(x)$ の符号は $ab-x^2$ の符号と同じである。$0< x<\sqrt{ab}$ で正、$x>\sqrt{ab}$ で負だから、$f$ は $x=\sqrt{ab}$ で最大になる。ex-rgm-start($a=1$、$b=9$)なら $f'(x)=\dfrac{8(9-x^2)}{(x^2+9)^2}$ で、$f'(2)=\dfrac{40}{169}>0$、$f'(4)=-\dfrac{56}{625}<0$ である。
$X$ を $\ell$ の上で動かすと、3 点 $U$、$V$、$X$ を通る円(三角形 $UXV$ の外接円)も動く。見込む角は、この円の半径で決まる。
def-rgm-angle の設定で、$x>0$ に対し、3 点 $U$、$V$、$X(x,0)$ を通る円を $\Gamma_x$、その半径を $\rho(x)$ とする。
(1) $\sin\varphi(x)=\dfrac{b-a}{2\rho(x)}$ である。
(2) $\rho(x)\ge\dfrac{a+b}2$ であり、等号が成り立つのは、$\Gamma_x$ が $\ell$ に $X$ で接するときだけである。
(3) $\Gamma_x$ が $\ell$ に $X$ で接するのは、$x=\sqrt{ab}$ のときだけである。
したがって、$\varphi(x)$ が最大になるのは、$U$、$V$ を通り $\ell$ に接する円の接点 $T\left(\sqrt{ab},0\right)$ に $X$ があるときである。
段 1((1) 正弦定理)。三角形 $UXV$ の外接円の半径が $\rho(x)$ で、角 $X$ に向かい合う辺は $UV=b-a$ である。正弦定理(高校数学) の定理「正弦定理」により $\dfrac{UV}{\sin\varphi(x)}=2\rho(x)$ なので、$\sin\varphi(x)=\dfrac{b-a}{2\rho(x)}$ である。
段 2((2) 中心の位置)。$\Gamma_x$ の中心 $C$ は $U$ と $V$ から等しい距離にあるので、線分 $UV$ の垂直二等分線の上にある。$UV$ は $y$ 軸の上にあるので、垂直二等分線は水平な直線 $y=\dfrac{a+b}2$ で、$C$ の $y$ 座標は $\dfrac{a+b}2$ である。$C$ から $\ell$($x$ 軸)までの距離は $\dfrac{a+b}2$ である。$X$ は $\ell$ の上の点なので、$\rho(x)=CX$ は $C$ から $\ell$ までの距離以上である(点から直線への垂線の長さは、その点と直線の上の点を結ぶ線分の長さのうちで最小)。よって $\rho(x)\ge\dfrac{a+b}2$ である。等号は $X$ が $C$ から $\ell$ に下ろした垂線の足であるとき、つまり半径 $CX$ が $\ell$ に垂直なときだけ成り立つ。半径が直線に垂直であることは、その直線が円に $X$ で接することと同じである。
段 3((3) 接点の位置)。$\Gamma_x$ が $\ell$ に $X$ で接するとする。原点 $O$ は直線 $UV$ の上で、$U$、$V$ の両方より下にあるので、円 $\Gamma_x$ の外部にある。方べきの定理(高校数学) の系「接線の長さ」を、$O$ を通る直線 $UV$ と接線 $\ell$ に使うと $OU\cdot OV=OX^2$、つまり $ab=x^2$ で、$x=\sqrt{ab}$ である。逆に $x=\sqrt{ab}$ のとき、中心 $\left(\sqrt{ab},\dfrac{a+b}2\right)$、半径 $\dfrac{a+b}2$ の円は、$U$ までの距離の 2 乗が
$$
ab+\left(\frac{a+b}2-a\right)^2=ab+\frac{(b-a)^2}4=\frac{(a+b)^2}4
$$
で $U$ を通り、同じく $V$ も通り、$X\left(\sqrt{ab},0\right)$ で $\ell$ に接する。3 点を通る円はただ 1 つなので、これが $\Gamma_{\sqrt{ab}}$ である。
段 4(最大)。lem-rgm-tan により $\varphi(x)$ は $0^\circ$ と $90^\circ$ の間にあり、この範囲で正弦は増加する。(1) により、$\varphi(x)$ が大きいことと $\rho(x)$ が小さいことは同じである。(2)(3) により $\rho(x)$ が最小になるのは $x=\sqrt{ab}$ のときだけなので、$\varphi(x)$ が最大になるのも $x=\sqrt{ab}$ のときだけである。$\square$
最大の角では $\rho=\dfrac{a+b}2$ なので、(1) から $\sin\varphi_{\max}=\dfrac{b-a}{a+b}$ で、thm-rgm-main の (2) と一致する。
ex-rgm-start($a=1$、$b=9$)では、垂直二等分線は $y=5$ である。
(1) 接点 $T(3,0)$ を通る円は、中心 $(3,5)$、半径 $5$ である。$\sin\varphi_{\max}=\dfrac{8}{2\cdot5}=\dfrac45$ である。
(2) $X(1,0)$ を通る円の中心を $(h,5)$ とすると、$U(0,1)$ と $X$ から等しい距離にあることから $h^2+16=(1-h)^2+25$ で、$h=5$ である。半径は $\rho=\sqrt{5^2+4^2}=\sqrt{41}$ で、$\sin\varphi(1)=\dfrac{8}{2\sqrt{41}}=\dfrac4{\sqrt{41}}\approx0.625$、$\varphi(1)\approx38.66^\circ$ である。$\sqrt{41}>5$ なので、$T$ から見るより角は小さい。
(3) (2) の円は、$\ell$ と $X(1,0)$ のほかに $X'(9,0)$ でも交わる($(x-5)^2+25=41$ から $x=1,9$)。
赤は U、V を通り ℓ に T(3,0) で接する半径 5 の円、青の破線は U、V、X(1,0) を通る半径 √41 の円で、ℓ と X'(9,0) でも交わる
ex-rgm-circle の (3) が、rem-rgm-symmetric の図形としての理由である。$X$ を通る円 $\Gamma_x$ は、$\ell$ ともう 1 点 $X'(x',0)$ で交わる。$O$ から見た方べきを 2 通りに書くと $OX\cdot OX'=OU\cdot OV=ab$ なので、$x'=\dfrac{ab}x$ である。$X$ と $X'$ は同じ円の、弦 $UV$ に関して同じ側の弧の上にあるので、円周角の定理(高校数学) により $\angle UXV=\angle UX'V$ である。$X=X'$ となるのは、$\ell$ が円に接するとき、つまり最大の位置だけである。
3 通りの解き方を並べる。
| 相加平均と相乗平均 | 微分 | 円 | |
|---|---|---|---|
| 調べる量 | $\tan\varphi=\dfrac{b-a}{x+\frac{ab}x}$ の分母 | $\tan\varphi$ の導関数 | 外接円の半径 $\rho(x)$ |
| 最大の位置の見つけ方 | 等号の条件 $x=\dfrac{ab}x$ | $f'(x)=0$ | 接する円の接点(方べき) |
| 増減まで分かるか | 分かる(prf-rgm-main の段 2) | 分かる($f'$ の符号) | 最大の位置だけ |
| 最大の角の形 | $\tan\varphi_{\max}=\dfrac{b-a}{2\sqrt{ab}}$ | 同左 | $\sin\varphi_{\max}=\dfrac{b-a}{a+b}$ |
| 対称性 $x\leftrightarrow\dfrac{ab}x$ | 分母の式の形 | 見えにくい | 同じ円が $\ell$ と交わる 2 点 |
thm-rgm-main の仮定を外すと、何が崩れるかを並べる。
| 外す条件 | 反例 | 成り立たなくなること |
|---|---|---|
| $0< a$(下端が目の高さより上) | $a=0$、$b=4$ | 最大の角がある |
| $\ell$ が線分 $UV$ と交わらない | $U(0,-1)$、$V(0,4)$ | 最大の角がある |
| $U$、$V$ が同じ鉛直線の上 | $U(0,1)$、$V(1,9)$ | 最大の位置が $x=\sqrt{ab}$($a$、$b$ は高さ) |
$a=0$、$b=4$ とすると、$U$ は原点 $O$ で、見込む角は直角三角形 $OXV$ の角 $\angle OXV$ である。$\tan\varphi(x)=\dfrac4x$ は $x$ が小さいほど大きく、$\varphi(1)\approx75.96^\circ$、$\varphi(0.1)\approx88.57^\circ$、$\varphi(0.01)\approx89.86^\circ$ と $90^\circ$ に近づく。どの $x>0$ に対しても $\varphi\left(\dfrac x2\right)>\varphi(x)$ なので、最大の角はない。thm-rgm-main の式で $a=0$ とすると最大の位置は $x=0$ になるが、そこでは目が絵の下端に重なり、角が定まらない。
$U(0,-1)$、$V(0,4)$ とする(目の高さ $\ell$ が線分 $UV$ と交わる)。$\alpha=\angle OXV$、$\beta=\angle OXU$ とすると、今度は $U$ と $V$ が $\ell$ の反対側にあるので、見込む角は $\varphi(x)=\alpha+\beta$ である。$\tan\alpha=\dfrac4x$、$\tan\beta=\dfrac1x$ はどちらも $x$ が小さいほど大きいので、$\varphi(x)$ も $x$ が小さいほど大きい。$x=2$ では $\tan\alpha\tan\beta=1$ なので $\alpha+\beta=90^\circ$ である。$\varphi(0.6)\approx140.5^\circ$ で、$x\to0$ で $\varphi(x)$ は $180^\circ$ に近づく。最大の角はなく、lem-rgm-tan の「$\varphi<90^\circ$」も成り立たない。
$\tan\alpha=2$、$\tan\beta=\dfrac12$ で、$\tan\beta=\dfrac1{\tan\alpha}=\tan(90^\circ-\alpha)$ である。$\beta$ と $90^\circ-\alpha$ はどちらも $0^\circ$ と $90^\circ$ の間にあり、この範囲で正接は増加するので $\beta=90^\circ-\alpha$ である。
下端 $U(0,1)$、上端 $V(1,9)$ の傾いた線分を、$\ell$ の点 $X(x,0)$ から見込むとする。高さは $1$ と $9$ で ex-rgm-start と同じだが、見込む角を数値で最大にすると、最大の位置は $x\approx2.8983$(角 $\approx59.054^\circ$)で、$x=3$ での角 $\approx59.036^\circ$ より大きい。最大の位置は $\sqrt{1\cdot9}=3$ ではない。
この位置は、$U$、$V$ を通り $\ell$ に接する円の接点になっている。直線 $UV$($y=8x+1$)は $\ell$ と $P\left(-\dfrac18,0\right)$ で交わり、方べきの定理(方べきの定理(高校数学) の系「接線の長さ」)から、接点 $T$ は $PT^2=PU\cdot PV$ を満たす。
$$
PU=\sqrt{\frac1{64}+1}=\frac{\sqrt{65}}8,\qquad PV=\sqrt{\frac{81}{64}+81}=\frac{9\sqrt{65}}8,\qquad PT=\sqrt{\frac{9\cdot65}{64}}=\frac{3\sqrt{65}}8
$$
なので、$T$ の $x$ 座標は $-\dfrac18+\dfrac{3\sqrt{65}}8\approx2.8983$ で、数値で求めた最大の位置と一致する。thm-rgm-main の $\sqrt{ab}$ は、$P$ が原点 $O$ になる($UV$ が鉛直)場合の $PT=\sqrt{PU\cdot PV}$ である。傾いた場合にも接点で最大になることは、この記事では証明しない。
目の高さが U と V の間にあるとき、ℓ の点が U、V の間に近づくほど見込む角は大きくなり、180 度に近づく
傾いた線分 UV を見込む角は、U、V を通り ℓ に接する赤い円の接点 x≈2.898 で最大になり、x=3 ではない
prop-rgm-circle の証明は、見込む角 $\varphi$ の大きさで点を分ける見方をしている。
平面の点 $Y$ のうち、$y$ 軸の右側にあって線分 $UV$ を一定の角 $\theta$($0^\circ<\theta<180^\circ$)で見込む点の集まりは、$U$、$V$ を通る 1 つの円の、$y$ 軸の右側の弧である(円周角の定理(高校数学) とその逆)。$\theta$ を大きくすると、prop-rgm-circle の (1) により円の半径 $\dfrac{b-a}{2\sin\theta}$ が変わり($\theta<90^\circ$ の範囲では小さくなり)、弧は線分 $UV$ に近づく。この弧を、見込む角という関数の 等高線 と見ることができる。
$\ell$ の上で見込む角を最大にすることは、$\ell$ と共有点をもつ等高線のうちで、角が最も大きいものを探すことである。角を大きくしていくと、等高線の弧は $\ell$ と 2 点で交わる状態から、$\ell$ に接する状態を経て、$\ell$ と離れる。最大は、等高線が $\ell$ に接する点で起こる。
このように「制約の曲線(ここでは直線 $\ell$)の上で関数を最大にする点では、関数の等高線が制約の曲線に接する」という考え方は、大学で学ぶ多変数の関数の条件つき極値(Lagrange の未定乗数法)の出発点である。この記事ではその一般論には立ち入らない。
def-rgm-angle で $a=4$、$b=9$ とする。見込む角が最大になる位置 $x$ と、最大の角の正接・正弦を求めよ。また、$x=4$ のときの見込む角と等しい角で見える、もう 1 つの位置を求めよ。
thm-rgm-main により最大の位置は $x=\sqrt{4\cdot9}=6$ で、$\tan\varphi_{\max}=\dfrac{9-4}{2\cdot6}=\dfrac5{12}$、$\sin\varphi_{\max}=\dfrac{9-4}{4+9}=\dfrac5{13}$ である(約 $22.62^\circ$)。$5$、$12$、$13$ は直角三角形の 3 辺になっていて、$\cos\varphi_{\max}=\dfrac{12}{13}=\dfrac{2\sqrt{ab}}{a+b}$ とも合う。rem-rgm-symmetric により、$x=4$ と同じ角で見えるのは $x=\dfrac{36}4=9$ である。実際、$\tan\varphi(4)=\dfrac{5\cdot4}{16+36}=\dfrac{20}{52}=\dfrac5{13}$、$\tan\varphi(9)=\dfrac{5\cdot9}{81+36}=\dfrac{45}{117}=\dfrac5{13}$ である。
縦の長さが $2$ の絵を、下端が目の高さより $a$($a>0$)だけ上になるように掛ける。最もよい位置から見たときの見込む角 $\varphi_{\max}$ を $a$ で表し、$a$ が小さいほど $\varphi_{\max}$ が大きいことを示せ。
$b=a+2$ なので、thm-rgm-main の (2) から $\sin\varphi_{\max}=\dfrac{2}{2a+2}=\dfrac1{a+1}$ である。$a$ が小さいほど $\dfrac1{a+1}$ は大きく、$\varphi_{\max}$ は $0^\circ$ と $90^\circ$ の間にあってこの範囲で正弦は増加するので、$\varphi_{\max}$ も大きい。たとえば $a=1$ なら $\sin\varphi_{\max}=\dfrac12$ で $\varphi_{\max}=30^\circ$(位置は $x=\sqrt3$)、$a=3$ なら $\sin\varphi_{\max}=\dfrac14$(約 $14.48^\circ$、位置は $x=\sqrt{15}$)である。$a\to0$ では $\sin\varphi_{\max}\to1$ で、ex-rgm-cx-zero のように最大の角は $90^\circ$ に近づく。
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