超特異楕円曲線(supersingular elliptic curve)とは、標数 $p>0$ の体上の楕円曲線 $E$ のうち、$\bar k$ 有理点の $p$ 捩れ部分群 $E[p]$ が自明なもの、すなわち $p$ 倍写像が純非分離になるものをいう。そうでない($E[p]\cong\mathbb{Z}/p$ の)楕円曲線は通常という。超特異性は Hasse 不変量が $0$、Frobenius の双対同種写像が非分離、自己準同型環が四元数環の極大整環(Deuring)と同値で、$j$ 不変量は $\mathbb{F}_{p^2}$ に入る。$y^2=x^3-x$ は $p\equiv3\pmod4$ で超特異である。$p$ 進 Tate 加群が消え、Weil コホモロジーの係数体を $\mathbb{Q}_p$ や $\mathbb{R}$ にとれない理由を与える。
前提知識: 楕円曲線, 同種写像, 有限体, Frobenius写像, Tate加群, 四元数環
超特異楕円曲線は、標数 $p>0$ の体の上の楕円曲線のうち、$p$ 捩れ点がまったく無いものである。標数 $0$ では $n$ 捩れ点は常に $n^2$ 個あるが、標数 $p$ では $p$ 捩れ点の個数が $p$ 個か $1$ 個(単位元のみ)かの 2 通りに分かれ、後者が超特異である。この違いは $p$ 倍写像の分離性、Frobenius の振る舞い、自己準同型環の大きさ、$p$ 進 Tate 加群の階数にそのまま反映される。
定義は $\bar k$ 上の点で述べているので、超特異性は基礎体の拡大で変わらない。$E[p]$ は群スキーム $\ker[p]$(位数 $p^2$)の $\bar k$ 有理点の群であり、超特異のときはその有理点が単位元だけになる(rem-supersingular-group-scheme)。prop-supersingular-p-torsion で示すように $E[p]$ は $0$ か $\mathbb{Z}/p$ のいずれかであり、超特異性は「すべての $r\ge1$ について $E[p^r]=0$」とも「$p$ 倍写像 $[p]$ が純非分離」とも言い換えられる。
$p$ が奇素数のとき、Weierstrass方程式を平方完成して $y^2=f(x)$($f$ は相異なる根をもつ 3 次式)の形にとれる(Sil09 III.1)。この形から超特異性を読み取る量が次の Hasse 不変量である。
$A(E)$ は方程式に依存するが、lem-supersingular-hasse-transform により、方程式を取り替えると $A(E)$ は $k^\times$ の元の $p-1$ 乗倍だけ変わる。したがって $A(E)=0$ かどうかは $E$ だけで決まり、これが超特異性と同値である(thm-supersingular-hasse-criterion、thm-supersingular-hasse-general)。層コホモロジーの言葉では、$A(E)$ は絶対 Frobenius が 1 次元 $k$ ベクトル空間 $H^1(E,\mathcal{O}_E)$ に引き起こす $p$ 線形写像を基底について表した値である(Har77 IV 演習 4.15)。この記事ではより初等的な上の係数を定義に採る。
以下で繰り返し使う同種写像と Frobenius の基本事実をまとめておく。言明の一部は 楕円曲線 の記事にもある。証明は Sil09 に譲る。
$k$ を標数 $p>0$ の体、$E,E'$ を $k$ 上の楕円曲線、$\omega$ を $E$ の不変微分(不変微分)とする。
1 は Sil09 II.2 と III.4.10、2 は II.2.11 と II.2.12、3 は III.5.2、III.5.3 と II.4.2、4 は III.6.1 と III.6.2、5 は III.6.4、6 は III.9.4、7 は V.1.1 による。$E[p^r]$ の構造($\mathbb{Z}/p^r$ か $0$)は Sil09 III.6.4 にもあるが、この記事では prop-supersingular-p-torsion で 1、2、4 から導く。
楕円曲線の $p$ 倍写像は常に次数 $p^2$ であるが、標数 $p$ では Frobenius $\phi_p$ を因子としてもつため必ず非分離で、核の $\bar k$ 有理点は $p^2$ 個より少ない。核が $p$ 個の点をもつのが通常、単位元だけなのが超特異である。超特異な曲線では「$p$ 倍」の情報が有理点の側に現れず、群スキーム $\ker[p]$ の被約でない部分に隠れる。その代わり自己準同型環は最大限に大きく(四元数環の極大整環)、$p$ 進の Tate 加群は消え、$\ell$ 進($\ell\ne p$)の Tate 加群だけが階数 $2$ を保つ。この非対称性が $p$ 進係数のコホモロジー理論の作り方を縛る(prop-supersingular-serre-argument)。
以下の例では、奇素数 $p$ に対する判定 thm-supersingular-hasse-criterion($E$ が超特異 $\iff$ $A(E)=0$)を使う。二項係数 $\binom{m}{i}$($0\le i\le m< p$)は $p$ で割れないことに注意する(分子・分母に現れる階乗はすべて $p$ より小さい整数の積)。
$p$ を奇素数、$E\colon y^2=x^3-x$ を $\mathbb{F}_p$ 上の楕円曲線とする(判別式は $64\ne0$)。$E$ が超特異であるための必要十分条件は $p\equiv3\pmod4$ である。
実際、$m=(p-1)/2$ とおくと $(x^3-x)^m=x^m(x^2-1)^m$ なので、$x^{p-1}=x^{2m}$ の係数は $(x^2-1)^m$ における $x^m$ の係数である。$(x^2-1)^m$ は $x$ の偶数次の項しかもたないから、$m$ が奇数、すなわち $p\equiv3\pmod4$ なら $A(E)=0$ で $E$ は超特異である。$m=2k$ が偶数、すなわち $p\equiv1\pmod4$ なら $A(E)=\binom{m}{k}(-1)^k\ne0$ で $E$ は通常である。
$p\equiv3\pmod4$ のとき、prop-supersingular-quaternion-example で $\operatorname{End}(E)$ が非可換であることを直接確かめる。$p=3$ では $x^3-x$ は $\mathbb{F}_3$ 上恒等的に $0$ なので $E(\mathbb{F}_3)=\{O,(0,0),(1,0),(2,0)\}$、$\#E(\mathbb{F}_3)=4=3+1$ で、prop-supersingular-finite-field とも整合する。
$p\ge5$ を素数、$E\colon y^2=x^3+1$ を $\mathbb{F}_p$ 上の楕円曲線とする(判別式は $-432=-2^4\cdot3^3$ で、$p\ne2,3$ なら零でない。$p=3$ では $x^3+1=(x+1)^3$ となり曲線は特異である)。$E$ が超特異であるための必要十分条件は $p\equiv2\pmod3$ である。
実際、$(x^3+1)^m=\sum_{i=0}^m\binom{m}{i}x^{3i}$ なので、$x^{p-1}$ の係数が零でないのは $3i=p-1$ をみたす $i$ があるとき、すなわち $p\equiv1\pmod3$ のときに限り、そのとき $A(E)=\binom{m}{(p-1)/3}\ne0$ である($(p-1)/3\le m$)。$p\equiv2\pmod3$ なら $A(E)=0$ で超特異である。
$p\equiv2\pmod3$ のときは点の個数も直接数えられる。$3\nmid p-1$ なので $x\mapsto x^3$ は $\mathbb{F}_p$ の全単射であり、$y^2=x^3+1$ の $\mathbb{F}_p$ 上の解の個数は $y^2=x+1$ の解の個数 $p$ に等しい。よって $\#E(\mathbb{F}_p)=p+1$、$a_p=0$ である。
$k$ を標数 $2$ の体、$E$ を一般の Weierstrass 方程式 $y^2+a_1xy+a_3y=x^3+a_2x^2+a_4x+a_6$ で与えられた $k$ 上の楕円曲線とする。$E$ が超特異であることと $j$ 不変量(j不変量)が $j(E)=0$ をみたすことは同値である。
実際、点 $P=(x_0,y_0)$ の逆元は $-P=(x_0,-y_0-a_1x_0-a_3)$ なので(Sil09 III.2.3)、$P\in E[2]\setminus\{O\}$ であることは $2y_0+a_1x_0+a_3=0$、標数 $2$ では $a_1x_0+a_3=0$ と同値である。$a_1\ne0$ なら $x_0:=a_3/a_1$ とおき、$y$ についての方程式 $y^2=x_0^3+a_2x_0^2+a_4x_0+a_6$($a_1x_0+a_3=0$ により $y$ の 1 次の項は消える)の根 $y_0\in\bar k$ をとれば $(x_0,y_0)\in E[2]$ は単位元でない点であり、$E$ は通常である。$a_1=0$ なら、標数 $2$ の判別式の公式から $\Delta=a_3^4$ となるので滑らかさより $a_3\ne0$ で、$a_1x_0+a_3=a_3\ne0$ は決して零にならないから $E[2]=0$、$E$ は超特異である。一方 $c_4=b_2^2-24b_4=a_1^4$ なので $j=c_4^3/\Delta=a_1^{12}/\Delta$ であり、$j=0$ と $a_1=0$ は同値である。
標数 $3$ の有限体上では、方程式を $y^2=x^3+a_2x^2+a_4x+a_6$ の形にとれ(Sil09 付録 A)、$m=1$ なので $A(E)$ は $f(x)$ の $x^2$ の係数 $a_2$ である。標数 $3$ では $c_4=b_2^2-24b_4=a_2^2$、$j=a_2^6/\Delta$ なので、thm-supersingular-hasse-criterion により、超特異であることと $j=0$ は同値である。一般の標数 $3$ の体では thm-supersingular-hasse-general を使えば同じ結論になる。
$p$ を奇素数、$m=(p-1)/2$、$H_p(t):=\sum_{i=0}^m\binom{m}{i}^2t^i$ とする。prop-supersingular-legendre により、$\lambda\in\bar{\mathbb{F}}_p\setminus\{0,1\}$ に対し Legendre 形の曲線 $E_\lambda\colon y^2=x(x-1)(x-\lambda)$ が超特異であることと $H_p(\lambda)=0$ は同値である。
$p\equiv1\pmod4$ とし、$E\colon y^2=x^3-x$ を $\bar{\mathbb{F}}_p$ 上で考える。ex-supersingular-x3-minus-x により $E$ は通常である。$i\in\mathbb{F}_p$ を $i^2=-1$ なる元とすると $[i]\colon(x,y)\mapsto(-x,iy)$ は $E$ の位数 $4$ の自己同型で、$\mathbb{Z}[i]\subset\operatorname{End}(E)$ である。prop-supersingular-ordinary-commutative により $\operatorname{End}(E)$ は可換なので $\operatorname{End}(E)\otimes\mathbb{Q}$ は虚 2 次体、したがって $\mathbb{Q}(i)$ に等しく、四元数環にはならない。
この例は次の 2 つの含意が逆には成り立たないことを示す。第 1 に、$j(E)=1728\in\mathbb{F}_p$ であるが $E$ は超特異でない。すなわち thm-supersingular-deuring の「超特異なら $j\in\mathbb{F}_{p^2}$」の逆は偽である。第 2 に、$E$ は虚数乗法(虚数乗法)をもつが超特異でない。超特異性は自己準同型環が可換でないほど大きいことであり、虚数乗法をもつだけでは足りない。
$k$ を標数 $0$ の体とすると、任意の素数 $p$ と $k$ 上の楕円曲線 $E$ に対し $E[p]\cong\mathbb{Z}/p\times\mathbb{Z}/p$ である(thm-supersingular-isogeny-facts の 5)。したがって条件 $E[p]=0$ は標数 $0$ では決して満たされず、自己準同型環が四元数環になることもない(Sil09 III.9.4)。$\mathbb{Q}$ 上の楕円曲線 $y^2=x^3-x$ の還元が超特異になるのは $p\equiv3\pmod4$ の素数においてであり、超特異性は曲線でなく素数ごとの性質である。
$k$ を標数 $p>0$ の体、$E$ を $k$ 上の楕円曲線、$\phi_p\colon E\to E^{(p)}$ を $p$ 乗 Frobenius、$\hat\phi_p\colon E^{(p)}\to E$ をその双対同種写像とする。
thm-supersingular-isogeny-facts の 4 により $[p]=\hat\phi_p\circ\phi_p$ であり、1 により
$$
\deg_s[p]=\deg_s\hat\phi_p\cdot\deg_s\phi_p=\deg_s\hat\phi_p
$$
である(2 により $\deg_s\phi_p=1$)。$\deg\hat\phi_p=\deg\phi_p=p$ は素数なので、$\deg_s\hat\phi_p$ は $1$ か $p$ である。$E[p]=\ker[p]$ の位数は $\deg_s[p]$ に等しいから(1)、$\#E[p]\in\{1,p\}$ であり、1 が示された。同時に、$E[p]=0\iff\deg_s\hat\phi_p=1\iff\hat\phi_p$ が非分離($\deg\hat\phi_p=p$ が素数なので非分離と純非分離は同じ)$\iff\deg_s[p]=1\iff[p]$ が純非分離、すなわち (i)、(iv)、(v) の同値が従う。
$[p^r]=[p]^r$($r$ 回合成)なので $\#E[p^r]=\deg_s[p^r]=(\deg_s[p])^r$ である。$\deg_s[p]=1$ なら $E[p^r]=0$ がすべての $r$ で成り立ち、$\deg_s[p]=p$ なら $\#E[p^r]=p^r\ne1$ がすべての $r$ で成り立つ。これで (i)、(ii)、(iii) の同値が従い、2 が示された。
3 を示す。$E$ が通常なら $E[p]\cong\mathbb{Z}/p$ で $\#E[p^r]=p^r$ である。$E[p^r]$ は位数 $p^r$ の有限アーベル群で、その $p$ 捩れ部分群 $E[p^r][p]=E[p]$ は位数 $p$ の巡回群である。有限アーベル $p$ 群は巡回群の直積に分解し(有限アーベル群の基本定理)、その $p$ 捩れ部分群の位数は直積因子の個数だけ $p$ の冪になるから、$E[p^r]$ は直積因子を 1 個しかもたず、巡回群 $\mathbb{Z}/p^r$ に同型である。
有限体上では、超特異性は Frobenius の跡が $p$ で割れることと同値になる。
$E$ を有限体 $\mathbb{F}_q$($q=p^r$)上の楕円曲線、$\phi=\phi_q$ を $q$ 乗 Frobenius 自己準同型、$a_q=q+1-\#E(\mathbb{F}_q)$ とする。
1 を示す。$\omega$ を $E$ の不変微分とすると、thm-supersingular-isogeny-facts の 2、3 により $(1-\phi)^*\omega=\omega-\phi^*\omega=\omega\ne0$ なので $1-\phi$ は分離的で、$\#\ker(1-\phi)=\deg(1-\phi)$ である。$\ker(1-\phi)$ は $\phi$ の固定点、すなわち座標が $\mathbb{F}_q$ に入る点の集合 $E(\mathbb{F}_q)$ だから $\deg(1-\phi)=\#E(\mathbb{F}_q)$ である。一方 4 により
$$
[\deg(1-\phi)]=\widehat{(1-\phi)}\circ(1-\phi)=(1-\hat\phi)(1-\phi)=1-(\phi+\hat\phi)+\hat\phi\phi=[1+q]-(\phi+\hat\phi)
$$
である。よって $\phi+\hat\phi=[1+q-\#E(\mathbb{F}_q)]=[a_q]$ となる。
2 を示す。1 により $\hat\phi=[a_q]-\phi$ であり、3 により $\hat\phi^*\omega=a_q\omega-\phi^*\omega=a_q\omega$ である。したがって $\hat\phi$ が分離的であることと $p\nmid a_q$ は同値である。他方、$[q]=\hat\phi\circ\phi$ と $\phi$ の純非分離性から $\deg_s\hat\phi=\deg_s[q]=(\deg_s[p])^r$ であり、prop-supersingular-p-torsion により $\deg_s[p]\in\{1,p\}$ なので、$\deg_s\hat\phi$ は $1$ か $q=\deg\hat\phi$ である。ゆえに $\hat\phi$ は分離的か純非分離かのいずれかで、$\hat\phi$ が分離的 $\iff\deg_s[p]=p\iff E$ が通常である。まとめると、$E$ が超特異 $\iff\hat\phi$ が非分離 $\iff p\mid a_q$ であり、(i) と (ii) は同値である。(ii) と (iii) は $a_q=q+1-\#E(\mathbb{F}_q)\equiv1-\#E(\mathbb{F}_q)\pmod p$ から同値である。
3 を示す。$p\ge5$ なら $2\sqrt p< p$ なので、Hasse の定理(thm-supersingular-isogeny-facts の 7)により $|a_p|\le2\sqrt p< p$ である。したがって $p\mid a_p$ は $a_p=0$、すなわち $\#E(\mathbb{F}_p)=p+1$ と同値である。
$q=p^2$ では $a_q\in\{0,\pm p,\pm2p\}$ が超特異に対応し、$\#E(\mathbb{F}_{p^2})=p^2+1$ に限らない。たとえば $\mathbb{F}_p$ 上の超特異曲線($p\ge5$、$a_p=0$)を $\mathbb{F}_{p^2}$ 上で見ると $\phi_p^2=[-p]$ なので $a_{p^2}=-2p$、$\#E(\mathbb{F}_{p^2})=(p+1)^2$ である。
$p$ を奇素数、$m=(p-1)/2$ とする。まず Hasse 不変量が方程式の取り替えでどう変わるかを見る。
$k$ を標数 $p$ の体とする。$E\colon y^2=f(x)$ を $u\in k^\times$、$r\in k$ による座標変換 $x=u^2x'+r$、$y=u^3y'$ で $E\colon y'^2=f'(x')$、$f'(x')=u^{-6}f(u^2x'+r)$ に書き直すと、
$$
A'=u^{-(p-1)}A
$$
が成り立つ。ここで $A=[x^{p-1}]f(x)^m$、$A'=[x'^{p-1}]f'(x')^m$ である。$y^2=f(x)$ の形を保つ Weierstrass 座標変換はこの形のものに限るので、$A(E)=0$ かどうかは方程式によらず $E$ だけで決まる。
$g:=f^m$ とおく。$\deg g=3m=3(p-1)/2<2p-1$ である。$f'^m=u^{-6m}g(u^2x'+r)=u^{-3(p-1)}g(u^2x'+r)$ なので、$g(u^2x'+r)$ における $x'^{p-1}$ の係数を求めればよい。$g=\sum_jg_jx^j$ と書くと
$$
g(u^2x'+r)=\sum_jg_j\sum_{i=0}^{j}\binom{j}{i}u^{2i}r^{j-i}x'^i
$$
であり、$x'^{p-1}$ の係数は $\sum_{j\ge p-1}g_j\binom{j}{p-1}u^{2(p-1)}r^{j-p+1}$ である。$p-1< j\le3m<2p-1$ のとき $j=p+j_0$($0\le j_0< p-1$)と書け、$\mathbb{F}_p$ 上で $(1+X)^{p+j_0}=(1+X^p)(1+X)^{j_0}$ の $X^{p-1}$ の係数は、$(1+X)^{j_0}$ の $X^{p-1}$ の係数($j_0< p-1$ なので $0$)と $X^p$ 倍の項からの寄与(負の次数なので $0$)の和で $0$ である。すなわち $\binom{j}{p-1}\equiv0\pmod p$ である。よって $j=p-1$ の項だけが残り、$x'^{p-1}$ の係数は $g_{p-1}u^{2(p-1)}=Au^{2(p-1)}$ となる。ゆえに $A'=u^{-3(p-1)}u^{2(p-1)}A=u^{-(p-1)}A$ である。
最後の主張は、一般の Weierstrass 座標変換 $x=u^2x'+r$、$y=u^3y'+su^2x'+t$ が $a_1=a_3=0$ を保つ条件が $ua_1'=a_1+2s=2s$、$u^3a_3'=a_3+ra_1+2t=2t$ から $s=t=0$ であること(Sil09 III.1 の変換公式、$p$ は奇素数)による。
$q=p^r$ とする。
1 を示す。$i=0$ なら和は $q\cdot1=0$ である。$i\ge1$ とし、$\gamma$ を巡回群 $\mathbb{F}_q^\times$ の生成元とする。$(q-1)\mid i$ なら $x\ne0$ で $x^i=1$ なので和は $q-1=-1$ である。$(q-1)\nmid i$ なら $\gamma^i\ne1$ で、$S:=\sum_{x\in\mathbb{F}_q^\times}x^i$ は $\gamma^iS=\sum_x(\gamma x)^i=S$ をみたすから $S=0$ である。
2 を $r$ についての帰納法で示す。$r=1$ は自明である。$r\ge2$ とし、$h(y):=\prod_{i=1}^{r-1}g_i(y^{p^{i-1}})$ とおくと、左辺の多項式は $g_0(x)h(x^p)$ であり、$x^{q-1}$ の係数は $\sum_{j+pl=q-1}[x^j]g_0\cdot[y^l]h$ である。$j\equiv q-1\equiv-1\pmod p$ と $0\le j\le\deg g_0<2p-1$ から $j=p-1$ に限られ、そのとき $l=(q-p)/p=p^{r-1}-1$ である。よって左辺は $[x^{p-1}]g_0\cdot[y^{p^{r-1}-1}]h$ に等しく、$h$ に帰納法の仮定($r-1$ 個の多項式 $g_1,\dots,g_{r-1}$ と $q'=p^{r-1}$)を適用して主張を得る。
$p$ を奇素数、$E\colon y^2=f(x)$ を有限体 $\mathbb{F}_q$($q=p^r$)上の楕円曲線とする。$E$ が超特異であるための必要十分条件は $A(E)=[x^{p-1}]f(x)^{(p-1)/2}=0$ である。さらに $\mathbb{F}_q$ の元として
$$
\#E(\mathbb{F}_q)=1-A(E)^{(q-1)/(p-1)}
$$
が成り立つ。
$q$ は奇数である。$c\in\mathbb{F}_q$ に対し $y^2=c$ の $\mathbb{F}_q$ における解の個数は $1+c^{(q-1)/2}$ である。実際 $c=0$ なら $1$ 個、$c\ne0$ なら $\mathbb{F}_q^\times$ が位数 $q-1$(偶数)の巡回群であることから、$c$ が平方なら $c^{(q-1)/2}=1$ で解は $2$ 個、平方でなければ $c^{(q-1)/2}=-1$ で解は $0$ 個である。よって無限遠点(無限遠点)を加えて、$\mathbb{F}_q$ の元として
$$
\#E(\mathbb{F}_q)=1+\sum_{x\in\mathbb{F}_q}\bigl(1+f(x)^{(q-1)/2}\bigr)=1+\sum_{x\in\mathbb{F}_q}f(x)^{(q-1)/2}
$$
である。$f(x)^{(q-1)/2}=\sum_ic_ix^i$ の次数は $3(q-1)/2<2(q-1)$ なので、lem-supersingular-power-sum の 1 により $\sum_xf(x)^{(q-1)/2}=\sum_ic_i\sum_xx^i=-c_{q-1}$ であり、
$$
\#E(\mathbb{F}_q)=1-\bigl[x^{q-1}\bigr]f(x)^{(q-1)/2}
$$
を得る。次に $g:=f^m$ とおくと $(q-1)/2=m(1+p+\cdots+p^{r-1})$ なので $f^{(q-1)/2}=\prod_{i=0}^{r-1}g^{p^i}$ であり、標数 $p$ では $g^{p^i}(x)=g^{(p^i)}(x^{p^i})$($g^{(p^i)}$ は $g$ の係数を $p^i$ 乗した多項式)である。$\deg g^{(p^i)}=3m<2p-1$ なので lem-supersingular-power-sum の 2 により
$$
\bigl[x^{q-1}\bigr]f^{(q-1)/2}=\prod_{i=0}^{r-1}\bigl[x^{p-1}\bigr]g^{(p^i)}=\prod_{i=0}^{r-1}A(E)^{p^i}=A(E)^{(q-1)/(p-1)}
$$
である。これで点の個数の公式が示された。特に $A(E)^{(q-1)/(p-1)}=1-\#E(\mathbb{F}_q)\in\mathbb{F}_p$ である。
最後に、$a_q=q+1-\#E(\mathbb{F}_q)\equiv A(E)^{(q-1)/(p-1)}\pmod p$ なので、$p\mid a_q$ と $A(E)^{(q-1)/(p-1)}=0$、すなわち $A(E)=0$ は同値である。prop-supersingular-finite-field の 2 により、これは $E$ が超特異であることと同値である。
$\bar{\mathbb{F}}_p$ 上の楕円曲線はある有限体上定義されるので、この定理は $\bar{\mathbb{F}}_p$ 上のすべての楕円曲線の超特異性を判定する。一般の体に対する形は次のとおりである。
$p$ を奇素数、$k$ を標数 $p$ の体、$E\colon y^2=f(x)$ を $k$ 上の楕円曲線とする。$E$ が超特異であるための必要十分条件は $A(E)=0$ である。同値な言い換えとして、$E$ が超特異であることと、絶対 Frobenius が $H^1(E,\mathcal{O}_E)$ に引き起こす $p$ 線形写像が零であることは同値である。
超特異性も $A(E)=0$ も $k$ を $\bar k$ に取り替えても変わらないので、$k$ が代数閉体(代数閉体)の場合に帰着する。その場合の証明は Har77 IV 演習 4.15(絶対 Frobenius の $H^1(E,\mathcal{O}_E)$ への作用が零であることと $[p]$ の純非分離性との同値、およびその作用を開被覆で計算して $x^{p-1}$ の係数に至る部分)に譲る。Sil09 V.4.1(a) は有限体上の形で、本記事の thm-supersingular-hasse-criterion はそれと同じ点の個数による証明である。
$p$ を奇素数、$m=(p-1)/2$、
$$
H_p(t):=\sum_{i=0}^m\binom{m}{i}^2t^i\in\mathbb{F}_p[t]
$$
とする。$\lambda\in\bar{\mathbb{F}}_p\setminus\{0,1\}$ に対し、Legendre 形の楕円曲線 $E_\lambda\colon y^2=x(x-1)(x-\lambda)$ が超特異であることと $H_p(\lambda)=0$ は同値である。
$f(x)=x(x-1)(x-\lambda)$ に対し $f^m=x^m(x-1)^m(x-\lambda)^m$ なので、$x^{p-1}=x^{2m}$ の係数は $(x-1)^m(x-\lambda)^m$ における $x^m$ の係数である。二項展開により
$$
\bigl[x^m\bigr](x-1)^m(x-\lambda)^m=\sum_{i+j=m}\binom{m}{i}(-1)^{m-i}\binom{m}{j}(-\lambda)^{m-j}=\sum_{i=0}^m\binom{m}{i}\binom{m}{m-i}(-1)^{m-i}(-\lambda)^{i}=(-1)^mH_p(\lambda)
$$
である。よって $A(E_\lambda)=(-1)^mH_p(\lambda)$ であり、$\lambda$ はある有限体に入るから thm-supersingular-hasse-criterion により主張が従う。
$H_p(t)$ は $\bar{\mathbb{F}}_p$ に重根をもたない(Sil09 V.4.1(c))。その $m$ 個の根はすべて $\mathbb{F}_{p^2}$ に入る(超特異曲線が $\mathbb{F}_{p^2}$ 上のモデルで $2$ 捩れ点がすべて $\mathbb{F}_{p^2}$ 有理的なものをもつことによる。本記事は確かめていない)。$\lambda\mapsto j(E_\lambda)=2^8(\lambda^2-\lambda+1)^3/(\lambda^2(\lambda-1)^2)$ は一般に $6$ 対 $1$($j=0,1728$ では例外)なので、超特異な $j$ 不変量の個数を数えれば thm-supersingular-count の 2 が得られる。
以下、$\operatorname{End}(E)$ は $\bar k$ 上の自己準同型環 $\operatorname{End}_{\bar k}(E)$ を表す。
$k$ を標数 $p>0$ の完全体(完全体)、$E$ を $k$ 上の楕円曲線とする。
1 の証明は Sil09 V.3.1 に譲る。(i) と (ii) の同値は prop-supersingular-p-torsion の 2 から従う($[p^r]=\hat\phi_{p^r}\circ\phi_{p^r}$ から $\deg_s\hat\phi_{p^r}=(\deg_s[p])^r$)。(iv) から (i) は prop-supersingular-ordinary-commutative で示す。(i) から (iv) と $j(E)\in\mathbb{F}_{p^2}$ は、$\ell\ne p$ に対する次数 $\ell^n$ の同種写像の列と $j$ の有限性を組み合わせる Sil09 V.3.1 の議論による。2 の分岐の位置と極大性は Deuring Deu41 による(Sil09 III.9.4 は $B$ が定符号、すなわち $B\otimes\mathbb{R}$ が Hamilton の四元数体であることまでを与える)。3 は 1 の (iii) と、$j$ 不変量が $\mathbb{F}_{p^2}$ に入る曲線が $\mathbb{F}_{p^2}$ 上のモデルをもつこと(Sil09 III.1.4(c))による。具体的な曲線については prop-supersingular-quaternion-example で $B$ を明示する。
$k$ を標数 $p>0$ の体、$E$ を $k$ 上の通常楕円曲線とする。
1 を示す。prop-supersingular-p-torsion の 3 により $E[p^r]\cong\mathbb{Z}/p^r$ である。$p$ 倍写像 $E[p^{r+1}]\to E[p^r]$ の像は位数 $p^r$ の部分群なので全射であり、射影極限(射影極限)$T_pE:=\varprojlim_rE[p^r]$ は、各段の生成元を順に持ち上げて $\mathbb{Z}/p^r$ の標準的な系と同一視することにより $\mathbb{Z}_p$ に同型で、$\operatorname{End}(T_pE)\cong\mathbb{Z}_p$ は可換である。$\psi\in\operatorname{End}(E)$ は $[p^r]$ と可換なので $E[p^r]$ を保ち、$\psi\mapsto(\psi|_{E[p^r]})_r$ は環準同型 $\operatorname{End}(E)\to\operatorname{End}(T_pE)$ を定める。$\alpha,\beta\in\operatorname{End}(E)$ に対し $\gamma:=\alpha\beta-\beta\alpha$ は可換環 $\mathbb{Z}_p$ で $0$ に写るから、すべての $r$ について $E[p^r]\subset\ker\gamma$ である。$\gamma\ne0$ なら $\#\ker\gamma=\deg_s\gamma$ は有限だが $\#E[p^r]=p^r$ は有界でないので矛盾する。よって $\gamma=0$ で $\operatorname{End}(E)$ は可換であり、thm-supersingular-isogeny-facts の 6 の 3 つの場合のうち非可換な四元数環は除かれる。対偶をとれば後半が従う。
2 を示す。$\phi:=\phi_q$、$a:=a_q$ とおく。prop-supersingular-finite-field の 1 により $\hat\phi=[a]-\phi$ なので、$[q]=\hat\phi\phi$ から $\phi^2-[a]\phi+[q]=0$ が $\operatorname{End}(E)$ で成り立つ。まず $\phi\notin\mathbb{Z}$、すなわち $\phi$ が $[n]$ の形でないことを示す。$\phi=[n]$ なら $n^2=\deg\phi=q$ から $p\mid n$ で、$\hat\phi=[n]$ は $[n]^*\omega=n\omega=0$ により非分離となるが、prop-supersingular-finite-field の証明で見たように $E$ が通常なら $\hat\phi$ は分離的である。よって $\phi\notin\mathbb{Z}$ である。次に判別式 $a^2-4q$ を考える。Hasse の定理により $a^2-4q\le0$ である。$a^2=4q$ なら $a=2n$ は偶数で、$(\phi-[n])^2=\phi^2-[a]\phi+[n^2]=\phi^2-[a]\phi+[q]=0$ となる。$\operatorname{End}(E)$ は整域なので $\phi=[n]$ となり矛盾する。したがって $a^2-4q<0$ で、$X^2-aX+q$ は $\mathbb{Q}$ 上既約(既約多項式)であり、$X\mapsto\phi$ は体 $\mathbb{Q}[X]/(X^2-aX+q)$(虚 2 次体)から $\operatorname{End}(E)\otimes\mathbb{Q}$ への単位的環準同型を定める。体からの単位的環準同型は単射なので、$\operatorname{End}(E)\otimes\mathbb{Q}$ は虚 2 次体 $\mathbb{Q}(\phi)$ を含む。1 により $\operatorname{End}(E)\otimes\mathbb{Q}$ の $\mathbb{Q}$ 上の次元は $2$ 以下なので、$\operatorname{End}(E)\otimes\mathbb{Q}=\mathbb{Q}(\phi)$ である。
$p\equiv3\pmod4$ を素数、$E\colon y^2=x^3-x$ を $\mathbb{F}_p$ 上の楕円曲線、$\phi=\phi_p$ を $p$ 乗 Frobenius 自己準同型、$i\in\mathbb{F}_{p^2}$ を $i^2=-1$ なる元、$[i]\colon(x,y)\mapsto(-x,iy)$ とする。このとき $\operatorname{End}(E)$ において
$$
[i]^2=[-1],\qquad\phi^2=[-p],\qquad\phi[i]=-[i]\phi
$$
が成り立ち、$\operatorname{End}(E)\otimes\mathbb{Q}$ は $1,[i],\phi,[i]\phi$ を基底とする 4 次元の非可換 $\mathbb{Q}$ 代数、すなわち四元数環 $\bigl(\tfrac{-1,\,-p}{\mathbb{Q}}\bigr)$ である。
$[i]$ は $E$ の方程式を保つ $\mathbb{F}_{p^2}$ 上の射で $O$ を固定するので自己準同型であり、$[i]^2(x,y)=(x,i^2y)=(x,-y)=-(x,y)$ から $[i]^2=[-1]$ である。$a+bi\mapsto[a]+b[i]$ は環準同型 $\mathbb{Z}[i]\to\operatorname{End}(E)$ を与え、$\mathbb{Q}(i)$ が体で $1\mapsto1$ なので $\mathbb{Q}(i)\to\operatorname{End}(E)\otimes\mathbb{Q}$ は単射である。
$\phi^2=[-p]$ を示す。$p\ge7$ なら ex-supersingular-x3-minus-x と prop-supersingular-finite-field の 3 により $a_p=0$ であり、$p=3$ でも同じ例で $\#E(\mathbb{F}_3)=4$、$a_3=0$ である。よって prop-supersingular-finite-field の 1 により $\hat\phi=-\phi$ で、$\phi^2=-\phi\hat\phi=-[p]$ である。
$\phi[i]=-[i]\phi$ を示す。$p\equiv3\pmod4$ なので $(p-1)/2$ は奇数で、$i^p=i\cdot(i^2)^{(p-1)/2}=(-1)^{(p-1)/2}i=-i$ である(同じ理由で $-1$ は $\mathbb{F}_p$ の平方非剰余であり、$i\notin\mathbb{F}_p$)。したがって
$$
\phi([i](x,y))=\phi(-x,iy)=\bigl((-x)^p,i^py^p\bigr)=(-x^p,-iy^p)=[-i]\phi(x,y)=-[i]\phi(x,y)
$$
である($-(x',y')=(x',-y')$ に注意)。
最後に $1,[i],\phi,[i]\phi$ の $\mathbb{Q}$ 上の一次独立性を示す。$u+v\phi=0$($u,v\in\mathbb{Q}(i)$)で $v\ne0$ とすると $\phi=-v^{-1}u\in\mathbb{Q}(i)$ は $[i]$ と可換になるが、$\phi[i]=-[i]\phi$ から $2[i]\phi=0$、整域性により $\phi=0$ となり矛盾する。よって $v=0$、さらに $u=0$ であり、$\mathbb{Q}(i)\oplus\mathbb{Q}(i)\phi$ は $4$ 次元である。thm-supersingular-isogeny-facts の 6 により $\operatorname{End}(E)\otimes\mathbb{Q}$ の次元は $4$ 以下なので等号が成り立ち、$\alpha=[i]$、$\beta=\phi$ が $\alpha^2=-1$、$\beta^2=-p$、$\alpha\beta=-\beta\alpha$ をみたすから、これは四元数環 $\bigl(\tfrac{-1,-p}{\mathbb{Q}}\bigr)$ である。
同じ議論を $y^2=x^3+1$($p\equiv2\pmod3$、$p\ge5$)に $[\zeta]\colon(x,y)\mapsto(\zeta x,y)$($\zeta$ は $1$ の原始 3 乗根、$\zeta^p=\zeta^{-1}$)と $\phi$ について行えば、$\operatorname{End}(E)\otimes\mathbb{Q}\cong\bigl(\tfrac{-3,-p}{\mathbb{Q}}\bigr)$ が得られる。いずれの場合も $\mathbb{Z}[i,\phi]$ や $\mathbb{Z}[\zeta,\phi]$ は $\operatorname{End}(E)$ の部分環にすぎず、$\operatorname{End}(E)$ 自身が極大整環であることは thm-supersingular-deuring の 2 による。
$p$ を素数とする。
証明は Sil09 V.4.1(c) と Deuring Deu41、Eichler Eic38 に譲る。2 は 1 から従う。$j\ne0,1728$ の曲線は $\#\operatorname{Aut}(E)=2$、$j=1728$($p\ge5$)では $4$、$j=0$($p\ge5$)では $6$ であり(Sil09 III.10.1)、$j=0$ が超特異なのは $p\equiv2\pmod3$、$j=1728$ が超特異なのは $p\equiv3\pmod4$ のときである(ex-supersingular-x3-plus-1、ex-supersingular-x3-minus-x)。$p=2,3$ では超特異曲線は $j=0$ の 1 個で(ex-supersingular-char-2-3)、$\#\operatorname{Aut}(E)$ はそれぞれ $24$、$12$ であり、質量公式 $1/24$、$2/24$ と整合する。質量公式は $B_{p,\infty}$ の極大整環の類数公式であり、超特異楕円曲線の同型類が極大整環の左イデアル類と対応することから得られる。
$k$ を標数 $p>0$ の体、$E$ を $k$ 上の楕円曲線とし、素数 $\ell$ に対し $T_\ell E:=\varprojlim_rE[\ell^r]$(推移写像は $\ell$ 倍)とする。
1 は thm-supersingular-isogeny-facts の 5 から従う($E[\ell^{r+1}]\to E[\ell^r]$ は位数を比べて全射なので $\varprojlim_r(\mathbb{Z}/\ell^r)^2=\mathbb{Z}_\ell^2$ である。Tate加群 の記事の楕円曲線の例、Sil09 III.7.1)。2 について、$E$ が超特異なら prop-supersingular-p-torsion の 2 によりすべての $E[p^r]$ が $0$ なので $T_pE=0$ である。$E$ が通常なら prop-supersingular-ordinary-commutative の証明の冒頭で見たとおり $T_pE\cong\mathbb{Z}_p$ である。
超特異楕円曲線では $\ell$ 進の Tate 加群が階数 $2$ をもつのに対し $p$ 進の Tate 加群は消える。$T_\ell E$ から作られる $\ell$ 進コホモロジー(ℓ進コホモロジー)$H^1$ が階数 $2$ をもつのに対し、同じ作り方を $p$ で行うと階数 $0$ にしかならないことが、$p$ 進係数のコホモロジー理論(結晶コホモロジー)を別に作る動機の 1 つである。しかも、どのような理論を作るにせよ係数体を $\mathbb{Q}_p$ にはできないことが、次の自己準同型環の性質から従う。
$E$ を $\bar{\mathbb{F}}_p$ 上の超特異楕円曲線、$K$ を $\mathbb{Q}_p$ または $\mathbb{R}$ に体として埋め込める体とする。このとき単位的な環準同型 $\operatorname{End}(E)\to M_2(K)$ も単位的な反準同型 $\operatorname{End}(E)\to M_2(K)$ も存在しない。特に $\operatorname{End}(E)$ は、$2$ 次元 $\mathbb{Q}_p$ ベクトル空間にも $2$ 次元 $\mathbb{R}$ ベクトル空間にも階数 $2$ の自由 $\mathbb{Z}_p$ 加群にも、$1$ が恒等写像として作用するようには作用しない。
証明は Weilコホモロジー の記事(可除環から $2$ 次行列環への単位的準同型が存在しないことの補題と、係数体への制約の定理)に譲る。要点は、$B=\operatorname{End}(E)\otimes\mathbb{Q}$ について thm-supersingular-deuring の 2 により $B\otimes_{\mathbb{Q}}K$ が可除環 $B\otimes_{\mathbb{Q}}\mathbb{Q}_p$ または $B\otimes_{\mathbb{Q}}\mathbb{R}$ の部分環、したがって $K$ 上 $4$ 次元の可除環になることである。単位的準同型 $B\otimes_{\mathbb{Q}}K\to M_2(K)$ は単射で次元を比べて同型になるが、$M_2(K)$ は零因子(零因子)をもつので矛盾する。
Weil コホモロジー(Weilコホモロジー)$H^*$ は関手的で、楕円曲線 $E$ に対し $H^1(E)$ は係数体 $K$ 上 $2$ 次元であり、$\operatorname{End}(E)$ は $H^1(E)$ に単位的な反準同型で作用する。したがって prop-supersingular-serre-argument により、$\bar{\mathbb{F}}_p$ 上の多様体に対する Weil コホモロジーの係数体は $\mathbb{Q}_p$ にも $\mathbb{R}$ にも(したがって $\mathbb{Q}$ にも)埋め込めない。$\ell$ 進コホモロジー($\ell\ne p$、係数 $\mathbb{Q}_\ell$)がこの制限に抵触しないのは $B\otimes\mathbb{Q}_\ell\cong M_2(\mathbb{Q}_\ell)$ だからであり、結晶コホモロジーの係数体 $W(\bar{\mathbb{F}}_p)[1/p]$(Wittベクトル)が $B\otimes\mathbb{Q}_{p^2}\cong M_2(\mathbb{Q}_{p^2})$ という分裂の起きる体を含むこととも整合する。この観察は Serre によるもので、Grothendieck の結晶コホモロジーの構想の論文 Gro68 1.7 に記録されている。
$k$ を標数 $p$ の代数閉体とする。$\ker[p]$ は位数 $p^2$ の有限群スキームで、$E$ が通常なら $\ker[p]\cong\mu_p\times\mathbb{Z}/p$(乗法的部分とエタール部分の積)、超特異なら $\ker[p]$ は連結で、$\alpha_p$ の $\alpha_p$ による分裂しない拡大である(Mum70 §15 の $p$ 階数の議論による。本記事は確かめていない)。定義に現れる $E[p]=\ker[p](k)$ はそのエタール部分の点であり、超特異のとき $\ker[p]$ にエタール部分が無いことが $E[p]=0$ に当たる。形式群(形式群)$\hat E$ の言葉では、$E$ が通常なら $\hat E$ の高さは $1$、超特異なら $2$ である(Sil09 第 IV 章 §7)。$g$ 次元アーベル多様体(アーベル多様体)$A$ では $A[p](k)\cong(\mathbb{Z}/p)^r$($0\le r\le g$)となり、$r$ を $A$ の $p$ 階数という。楕円曲線の超特異性は $p$ 階数 $0$ に当たる。これらの構造は Dieudonné 加群(Dieudonné加群とBarsotti–Tate群)と $H^1_{dR}(E)$ の Hodge フィルトレーションに移して調べられる。
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