連続束

同義語:continuous latticeway-below関係way-below relationScott位相Scott topology連続フレーム局所コンパクトロケール代数的束Hofmann–Lawson双対

概要

連続束(continuous lattice)とは、各元 $b$ が、$b$ のずっと下にある元($b$ 以上の上限をもつどんな有向集合もその元以上の成員を含む元)全体の上限になっている完備束のことである。有限な束、冪集合、閉区間 $[0,1]$ は連続束である。各点がコンパクト近傍の基をもつ空間の開集合の束は連続束であり、分配的な連続束は局所コンパクトなロケールのフレームにあたる。Hofmann–Lawson により、分配的な連続束はコンパクト近傍の基をもつ sober 空間と双対に対応する。

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{div}[0]{\mathbin{÷}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: 束, 有向集合, コンパクト空間, フレーム(順序論), sober空間

連続束(continuous lattice)とは、各元がそれより「ずっと下にある」元たちの上限になっている完備束のことである。ここで $a$ が $b$ のずっと下にある($a\ll b$)とは、$b$ 以上の上限をもつどんな有向集合も、すでにある 1 つの元が $a$ 以上になっていることをいう。有限な束、冪集合、閉区間 $[0,1]$ は連続束である。D. S. Scott が近似による計算の意味論のために導入した(Sco71)。
連続束の代表例は位相空間の開集合の束である。開集合 $U$ が $V$ のずっと下にあることは、$U$ と $V$ の間にコンパクト集合を挟めることにほぼ等しく、各点がコンパクト近傍の基をもつ空間の開集合の束は連続束になる。この記事の主定理はこの事実であり、それを完全に証明する。あわせて、ずっと下にある関係(way-below 関係)の基本性質、補間性、Scott 位相の開基を証明し、局所コンパクトでない空間 $\mathbb Q$ の開集合の束が連続でないことを示す。sober 空間については、開集合の束が連続であることと局所コンパクト性が同値になり、分配的な連続束と局所コンパクトな sober 空間が双対に対応する(Hofmann–Lawson)。この双対は所在を示して述べる。

定義

完備束 $L$ の部分集合 $D$ が 有向 であるとは、空でなく、任意の $d_1,d_2\in D$ に対し $d_1,d_2\le d$ となる $d\in D$ があることをいう。

way-below 関係と連続束

$L$ を完備束とする。

  1. $a,b\in L$ について、$b\le\bigvee D$ となる任意の有向集合 $D$ に対し $a\le d$ となる $d\in D$ があるとき、$a\ll b$ と書き、$a$ は $b$ の ずっと下にある(way below)という。$\ll$ を way-below 関係 という。
  2. $\Downarrow b:=\{a\in L\mid a\ll b\}$ とおく。すべての $b\in L$ について $b=\bigvee\Downarrow b$ となるとき、$L$ を 連続束 という。
  3. $k\ll k$ となる元 $k$ を コンパクト元 という。すべての元がそれ以下のコンパクト元の上限になっているとき、$L$ を 代数的束 という。

この定義は HL78 §1(p. 286)、GvG Definition 7.10 の直後(p. 198)のものである。Sco71 は way-below 関係を、後で定義する Scott 位相を使って「$b$ が $\{z\mid a\le z\}$ の内部に属する」と定めている(p. 6)。連続束ではこの 2 つの定め方は一致する(prop-cl-scott-basis の後の注意)。

有限部分族による言い換え

完備束 $L$ で $a\ll b$ であることは、$b\le\bigvee S$ となる任意の部分集合 $S$ に対し、有限部分集合 $E\subset S$ で $a\le\bigvee E$ となるものがあることと同値である。

$a\ll b$ とし、$b\le\bigvee S$ とする。$S$ の有限部分集合 $E$ の上限 $\bigvee E$ 全体の集合 $D$ は有向で($E=\emptyset$ なら $\bigvee E=0$)、$\bigvee D=\bigvee S\ge b$ である。よって $a\le\bigvee E$ となる $E$ がある。逆に右の条件を仮定し、$D$ を $b\le\bigvee D$ となる有向集合とする。有限部分集合 $E\subset D$ で $a\le\bigvee E$ となるものがあり、$D$ は有向なので $E$ の元すべての上界 $d\in D$ がある($E=\emptyset$ なら $D$ の任意の元)。$a\le\bigvee E\le d$ である。$\square$

この言い換えから、有限な束では $a\ll b$ と $a\le b$ は同値であり、有限な束はすべて連続束(代数的束)である(Sco71 Proposition 2.8、p. 10)。

way-below 関係の基本性質

完備束 $L$ の元について次が成り立つ。

  1. $a\ll b$ ならば $a\le b$ である。
  2. $a'\le a\ll b\le b'$ ならば $a'\ll b'$ である。
  3. $0\ll b$ である。
  4. $a\ll c$ かつ $b\ll c$ ならば $a\vee b\ll c$ である。
    したがって $\Downarrow b$ は $0$ を含み結びで閉じており、有向である。

1:1 元集合 $D=\{b\}$ は有向で $b\le\bigvee D$ なので、$a\le b$ である。
2:$D$ を $b'\le\bigvee D$ となる有向集合とすると $b\le\bigvee D$ なので、$a\le d$ となる $d\in D$ があり、$a'\le a\le d$ である。
3:有向集合は空でないので、その任意の元 $d$ について $0\le d$ である。
4:$D$ を $c\le\bigvee D$ となる有向集合とする。$a\le d_1$、$b\le d_2$ となる $d_1,d_2\in D$ があり、有向性から $d_1,d_2\le d$ となる $d\in D$ がある。$a\vee b\le d$ である。$\square$

関係 $\ll$ は一般には反射的でない。$a\ll a$ となるのはコンパクト元だけである。

例

冪集合

集合 $S$ の冪集合 $\mathcal P(S)$ で、$A\ll B$ となるのは $A$ が $B$ の有限部分集合のときである。実際、$A$ が有限で $A\subset B\subset\bigcup_i D_i$ なら、$A$ の各元は有限個の $D_i$ に入り、有向性から 1 つの $D_i$ に $A$ 全体が入る。逆に $A\ll B$ なら、$B$ の有限部分集合全体という有向集合の和が $B$ なので、$A$ はある有限部分集合に含まれる。コンパクト元は有限集合であり、どの集合も有限部分集合の和なので、$\mathcal P(S)$ は代数的束である。

閉区間

$[0,1]$(通常の順序)は完備束であり、$a\ll b$ となるのは $a=0$ または $a< b$ のときである。実際、$0< a< b$ なら $b\le\sup D$ となる有向集合 $D$ は $a$ より大きい元を含む。$0< a=b$ のときは $D=\{b-1/n\mid n\ge 1/b\}$ が $\sup D=b$ だが $a$ 以上の元を含まないので $a\not\ll b$ である。$b=\sup\{a\mid a< b\}$ なので $[0,1]$ は連続束である。コンパクト元は $0$ だけなので、代数的束ではない。

部分群の束

群 $G$ の部分群全体は包含について完備束をなす。部分群の有向族の和集合は部分群なので、有向族の上限は和集合である。有限生成部分群 $H$ は、有向族の上限に含まれれば生成元のそれぞれがある成員に入り、有向性から 1 つの成員に含まれるのでコンパクト元である。どの部分群もそれに含まれる有限生成部分群の上限なので、部分群の束は代数的束である。

補間性と Scott 位相

補間性

$L$ を連続束とする。$a\ll b$ ならば、$a\ll c\ll b$ となる $c\in L$ がある。

$D:=\{x\in L\mid \text{ある } y \text{ で } x\ll y\ll b\}$ とおく。prop-cl-way-below の 3 から $0\in D$ である。$x_1\ll y_1\ll b$、$x_2\ll y_2\ll b$ なら、$y:=y_1\vee y_2\ll b$(同 4)で、$x_j\ll y_j\le y$ から $x_j\ll y$(同 2)なので $x_1\vee x_2\ll y$ であり、$x_1\vee x_2\in D$ である。よって $D$ は有向である。連続性を 2 回使うと
$$ \bigvee D=\bigvee_{y\ll b}\ \bigvee\{x\mid x\ll y\}=\bigvee_{y\ll b}y=b $$
である。$a\ll b=\bigvee D$ なので、$a\le x$ となる $x\in D$ があり、$x\ll y\ll b$ となる $y$ について $a\ll y\ll b$(同 2)である。$\square$

Scott 位相

完備束 $L$ の部分集合 $U$ が Scott 開 であるとは、$U$ が上に閉じていて($u\in U$、$u\le v$ なら $v\in U$)、有向集合 $D$ について $\bigvee D\in U$ ならば $D\cap U\neq\emptyset$ となることをいう。Scott 開集合の全体は位相をなし、これを Scott 位相 という。

Scott 位相は Sco71(p. 5)が導入した。Scott 位相の特殊化の順序は元の順序と一致する(GvG §7.1、p. 195)。2 元の鎖 $\{0< 1\}$ の Scott 位相は Sierpinski空間 である。

Scott 位相の開基

$L$ を連続束とする。$a\in L$ に対し $\Uparrow a:=\{x\in L\mid a\ll x\}$ は Scott 開であり、$\{\Uparrow a\}_{a\in L}$ は Scott 位相の開基である。

$\Uparrow a$ が上に閉じていることは prop-cl-way-below の 2 による。$D$ を有向集合とし $a\ll\bigvee D$ とする。thm-cl-interpolation により $a\ll c\ll\bigvee D$ となる $c$ があり、$c\le d$ となる $d\in D$ があるので、$a\ll d$、すなわち $d\in\Uparrow a$ である。よって $\Uparrow a$ は Scott 開である。
$U$ を Scott 開集合、$x\in U$ とする。$\Downarrow x$ は有向で(prop-cl-way-below)、連続性から $\bigvee\Downarrow x=x\in U$ なので、$a\in U$ となる $a\ll x$ がある。$x\in\Uparrow a$ であり、$U$ は上に閉じているので $\Uparrow a\subset\{y\mid a\le y\}\subset U$ である。$\square$

Scott による way-below 関係の定め方との一致を確かめておく。完備束で $b$ が $\{z\mid a\le z\}$ の Scott 位相での内部 $W$ に属するとき、$b\le\bigvee D$ となる有向集合 $D$ について、$W$ は上に閉じているので $\bigvee D\in W$ であり、Scott 開性から $d\in W$ となる $d\in D$ があり、$a\le d$ である。よって $a\ll b$ である。逆に連続束で $a\ll b$ なら、$\Uparrow a$ は $b$ を含み $\{z\mid a\le z\}$ に含まれる Scott 開集合なので、$b$ はその内部に属する。
例えば $[0,1]$ の Scott 開集合は $\emptyset$、$[0,1]$、半開区間 $(a,1]$($0\le a< 1$)である。$T_0$ 空間 $D$ が 入射的 であるとは、空間 $Y$ の部分空間 $X$ から $D$ への連続写像がつねに $Y$ 全体へ連続に延長できることをいう(Sco71 Definition 1.1、p. 2)。入射的な $T_0$ 空間は、Scott 位相を入れた連続束にちょうど一致する(Sco71 Theorem 2.12、p. 10)。この記事ではこれを証明しない。

開集合の束

位相空間 $X$ の開集合全体 $\mathcal O(X)$ は包含について完備束であり、上限は和集合である。lem-cl-finite から、$\mathcal O(X)$ で $U\ll V$ となるのは、$V$ の任意の開被覆から有限個を選んで $U$ を覆えるときである。
コンパクト性に Hausdorff 性は含めない(コンパクト空間 の定義)。点 $x$ の近傍でコンパクトなものを $x$ の コンパクト近傍 という。$X$ の各点 $x$ と $x$ の各開近傍 $V$ に対し、$V$ に含まれる $x$ のコンパクト近傍があるとき、$X$ は コンパクト近傍の基をもつ という(HL78 Definition 3.5、p. 293 の locally quasicompact)。Hausdorff 空間では、これは 局所コンパクト空間 であることと同値である(局所コンパクト空間 の定理「コンパクト近傍の同値な形」)。

コンパクト近傍の基をもつ空間の開集合の束

$X$ を位相空間とする。

  1. 開集合 $U,V$ とコンパクト集合 $Q$ について $U\subset Q\subset V$ ならば、$\mathcal O(X)$ で $U\ll V$ である。
  2. $X$ がコンパクト近傍の基をもつならば、$\mathcal O(X)$ は連続束であり、$U\ll V$ となるのは $U\subset Q\subset V$ となるコンパクト集合 $Q$ があるときに限る。

1.$V\subset\bigcup_iW_i$ を開集合による被覆とする。$Q\subset V$ はコンパクトなので、有限個の $W_{i_1},\dots,W_{i_n}$ で覆われ、$U\subset Q\subset W_{i_1}\cup\cdots\cup W_{i_n}$ である。lem-cl-finite により $U\ll V$ である。
2.開集合 $V$ と点 $x\in V$ をとる。仮定から $x$ のコンパクト近傍 $K_x\subset V$ があり、その内部を $W_x$ とすると $x\in W_x\subset K_x\subset V$ である。1 により $W_x\ll V$ である。よって
$$ V=\bigcup_{x\in V}W_x\subset\bigcup\{W\in\mathcal O(X)\mid W\ll V\}\subset V $$
であり(最後の包含は prop-cl-way-below の 1)、$V=\bigvee\Downarrow V$ である。したがって $\mathcal O(X)$ は連続束である。
$U\ll V$ とする。上の $\{W_x\}_{x\in V}$ は $V$ の開被覆なので、lem-cl-finite により有限個の点 $x_1,\dots,x_n$ で $U\subset W_{x_1}\cup\cdots\cup W_{x_n}$ となる。$Q:=K_{x_1}\cup\cdots\cup K_{x_n}$ は有限個のコンパクト集合の和なのでコンパクトであり、$U\subset Q\subset V$ である。逆は 1 である。$\square$

とくに、局所コンパクト Hausdorff 空間($\mathbb R^n$、多様体など)の開集合の束は連続束である。Hausdorff でない空間でも、有限空間や可換環のスペクトルはコンパクト近傍の基をもつので、開集合の束は連続束である。可換環のスペクトルでは、コンパクトな開集合 $D(f)$ が開基をなす(Spectral space)。コンパクトな開集合からなる開基をもつ $T_0$ 空間の開集合の束は、代数的束である(HL78 Theorem 5.3、p. 300)。
主定理の逆向きは、sober 空間については成り立つ。

  • sober 空間 $X$ について、$\mathcal O(X)$ が連続束であることと、$X$ がコンパクト近傍の基をもつことは同値である(HL78 Corollary 4.6、p. 299)。Hausdorff 空間については、$\mathcal O(X)$ が連続束であることと $X$ が局所コンパクトであることが同値である(HL78 Corollary 4.7、p. 299。そこでは Day–Kelly と Isbell に帰されている)。
  • 一般の空間 $X$ について、$\mathcal O(X)$ が連続束であることは、各点 $p$ の開近傍 $U$ に対し、$p$ を含む開集合 $V\subset U$ で「$U$ の任意の開被覆から有限個を選んで $V$ を覆える」ものがあること(core-compact)と同値である(HL78 Definition 4.1・Proposition 4.2、p. 297)。core-compact だがコンパクト近傍の基をもたない(sober でない)空間がある(HL78 §7)。
    この記事ではこれらの逆向きの主張を証明しない。
有理数の開集合の束は連続でない

$\mathbb Q$(通常の位相)の開集合の束 $\mathcal O(\mathbb Q)$ で $U\ll\mathbb Q$ となる開集合は $\emptyset$ だけである。したがって $\bigvee\Downarrow\mathbb Q=\emptyset\neq\mathbb Q$ であり、$\mathcal O(\mathbb Q)$ は連続束でない。
実際、空でない開集合 $U$ は、ある有理数 $s< t$ について $(s,t)\cap\mathbb Q$ を含む。無理数 $r\in(s,t)$ をとり、$n\ge1$ について
$$ V_n:=\{q\in\mathbb Q\mid |q-r|>1/n\} $$
とおく。$V_n$ は開集合で、$n$ について増加し、$r$ が無理数なので $\bigcup_nV_n=\mathbb Q$ である。$\{V_n\}$ は有向集合で上限は $\mathbb Q$ だが、$U$ は $r$ にいくらでも近い有理数を含むので、どの $V_n$ にも含まれない。よって $U\not\ll\mathbb Q$ である。$\mathbb Q$ は Hausdorff だが局所コンパクトでないので、この例は HL78 Corollary 4.7 とも合う。

連続フレームと局所コンパクトなロケール

開集合の束はフレームである(フレーム(順序論))。連続束が分配的であれば、自動的にフレームになる。

分配的な連続束はフレーム

連続束 $L$ で、有限個の元について分配律 $a\wedge(b\vee c)=(a\wedge b)\vee(a\wedge c)$ が成り立てば、$L$ はフレームである。すなわち、任意の $a$ と $S\subset L$ について $a\wedge\bigvee S=\bigvee_{s\in S}(a\wedge s)$ が成り立つ。

段 1(有向集合について).$D$ を有向集合とする。$a\wedge d\le a\wedge\bigvee D$ なので $\bigvee_{d\in D}(a\wedge d)\le a\wedge\bigvee D$ である。逆向きを示す。$x\ll a\wedge\bigvee D$ とすると、$x\ll\bigvee D$(prop-cl-way-below の 2)なので $x\le d$ となる $d\in D$ があり、$x\le a$(同 1)と合わせて $x\le a\wedge d$ である。連続性から
$$ a\wedge\bigvee D=\bigvee\Downarrow\Bigl(a\wedge\bigvee D\Bigr)\le\bigvee_{d\in D}(a\wedge d) $$
である。
段 2(一般の集合について).$S$ の有限部分集合 $E$ の上限 $\bigvee E$ 全体を $D$ とすると、$D$ は有向で $\bigvee D=\bigvee S$ である。段 1 と有限の分配律から
$$ a\wedge\bigvee S=\bigvee_{E}\Bigl(a\wedge\bigvee E\Bigr)=\bigvee_{E}\ \bigvee_{s\in E}(a\wedge s)=\bigvee_{s\in S}(a\wedge s) $$
である。$\square$

連続束であるフレームを 連続フレーム といい、フレームが連続フレームであるロケールを 局所コンパクトなロケール という。この呼び方は thm-cl-open-sets と、sober 空間についてのその逆(HL78 Corollary 4.6)に由来する。Hofmann と Lawson は、分配的な連続束 $L$ の素元の空間 $\operatorname{Spec}L$ がコンパクト近傍の基をもつ sober 空間であり、$L\cong\mathcal O(\operatorname{Spec}L)$ となることを示した(HL78 要旨、p. 285、Proposition 9.5、p. 309)。とくに連続フレームは空間的である。さらに次の双対が成り立つ。

Hofmann–Lawson の双対

分配的な連続束と任意の上限を保つ束準同型の圏は、コンパクト近傍の基をもつ sober 空間と連続写像の圏と反対に同値である。対応は $L\mapsto\operatorname{Spec}L$ と $X\mapsto\mathcal O(X)$ で与えられる。

双対の読み方

位相空間の側の「コンパクト近傍の基をもつ」という条件が、束の側では「連続束である」という条件に対応する。連続束では各元が、それより遙かに小さい元の上限として近似される。この近似が、空間の各点の近傍をコンパクト近傍で近似することにあたる。

この定理は HL78 Theorem 9.6(p. 309)であり、この記事では証明しない。sober空間 の定理「sober 空間と空間的フレームの双対」を、局所コンパクトな側に制限したものにあたる。局所コンパクトなロケール $A$ と任意のロケール $B$ について、ロケールの圏の中で関数空間(冪対象)$B^A$ が構成できることが知られている(Joh83 §4、p. 49)。

反例と注意

表の各行は、1 つの条件を外すか替えたときに起こることを示す。

外す条件・替える条件反例成り立たなくなること
完備性有理数の全体 $\mathbb Q$(通常の順序)上限が存在しないことがあり、定義が意味をもたない
コンパクト近傍の基$\mathcal O(\mathbb Q)$(ex-cl-rationals)$\Downarrow\mathbb Q=\{\emptyset\}$ で、連続束でない
代数性$[0,1]$(ex-cl-interval)連続束だがコンパクト元が $0$ だけで、代数的束でない
$\ll$ の反射性$[0,1]$ の $1/2$$1/2\le1/2$ だが $1/2\not\ll1/2$
分配性5 元の菱形束 $M_3$有限なので連続束だが、分配的でなくフレームでない
反例の確認

表のうち本文で示していない行を確かめる。

各行の確認を開く

1 行目:$\{q\in\mathbb Q\mid q^2< 2\}$ は $\mathbb Q$ の中に上限をもたない。

4 行目:ex-cl-interval で $0< a=b$ の場合を示した。$D=\{1/2-1/n\mid n\ge2\}$ は上限 $1/2$ の有向集合だが、$1/2$ 以上の元を含まない。

5 行目:$M_3=\{0,a,b,c,1\}$($a,b,c$ は互いに比較できず、どの 2 つの結びも $1$、交わりも $0$)は有限なので lem-cl-finite の後の注意により連続束である。$a\wedge(b\vee c)=a$、$(a\wedge b)\vee(a\wedge c)=0$ なので分配律が成り立たず、フレームでない(フレーム(順序論) の注意「反例:完備束でもフレームとは限らない」)。したがって $M_3$ はどの位相空間の開集合の束とも同型でない。

注意を 2 つ挙げる。

  • 連続束と完全分配束.完備束 $L$ で、部分集合の族 $\{A_i\}$ について「上限の下限」$\bigwedge_i\bigvee A_i$ がつねに選択関数ごとの「下限の上限」に等しいものを完全分配束という(GvG Definition 7.20、p. 200)。$a\le\bigvee S$ となる任意の部分集合 $S$ がつねに $b$ 以上の元を含むとき $b\lll a$ と書くと、$b\lll a$ ならば $b\ll a$ であり、Raney の定理により完全分配束はすべての $a$ が $a=\bigvee\{b\mid b\lll a\}$ をみたす完備束である(GvG Definition 7.23・Theorem 7.24、p. 202)。したがって完全分配束は連続束である。$\ll$ を $\lll$ に強めた条件なので、2 つの概念は区別する。$\Omega$ と $\operatorname{Pt}$ の双対は、完全分配的なフレームと、Scott 位相を入れた連続な有向完備半順序集合(ドメイン)との双対に制限される(GvG Theorem 7.21、p. 200–201)。
  • 連続性はコンパクト性の局所版.thm-cl-open-sets により、開集合の束の way-below 関係は「間にコンパクト集合を挟める」ことである。$\mathcal O(X)$ の最大元 $X$ がコンパクト元であることは $X$ がコンパクトであることにほかならない。連続束の条件は、各元をそのようなコンパクトな近似で下から近づけられることを要求している。

関連項目

参考文献

[1]
Dana Scott, Continuous lattices, Oxford University Computing Laboratory, Programming Research Group, Technical Monograph PRG-7, Oxford University Computing Laboratory, Programming Research Group, Technical Monograph PRG-7 (1971)。Definition 1.1(入射的空間、p. 2)、§2(Scott 位相、p. 5。way-below 関係と Definition 2.3、p. 6)、Proposition 2.8(有限な束、p. 10)、Theorem 2.12(入射的空間と連続束、p. 10)
[2]
Karl H. Hofmann, Jimmie D. Lawson, The spectral theory of distributive continuous lattices, Trans. Amer. Math. Soc., Trans. Amer. Math. Soc. 246 (1978), 285–310。要旨(p. 285)、§1(way-below 関係と連続束、p. 286)、Definition 3.5(locally quasicompact、p. 293)、Definition 4.1・Proposition 4.2(core-compact、p. 297)、Corollary 4.6・4.7(sober 空間・Hausdorff 空間での同値、p. 299)、Theorem 5.3(代数的束、p. 300)、§7(core-compact だが locally quasicompact でない例)、Proposition 9.5・Theorem 9.6(双対、p. 309)
[3]
Mai Gehrke, Sam van Gool, Topological Duality for Distributive Lattices: Theory and Applications, arXiv:2203.03286, arXiv:2203.03286v5(2023-04-05。Cambridge University Press から刊行される本の著者公開版)。§7.1(Scott 位相と特殊化の順序、p. 195)、Definition 7.10 の直後(way-below 関係、p. 198)、Definition 7.20・Theorem 7.21(完全分配束とドメインの双対、p. 200–201)、Definition 7.23・Theorem 7.24(Raney の定理、p. 202)
[4]
Peter T. Johnstone, The point of pointless topology, Bull. Amer. Math. Soc., Bull. Amer. Math. Soc. (N.S.) 8 (1983), 41–53。§4、p. 49(局所コンパクトなロケールを指数とする関数ロケール)

Mathpediaは寄付と、参考文献の書籍リンク(Amazonアソシエイト)の紹介料で運営されています。 支援について / 寄付する