一般化Bernoulli数

同義語:一般化ベルヌーイ数generalized Bernoulli numbergeneralized Bernoulli numbersBernoulli多項式ベルヌーイ多項式Bernoulli polynomial

概要

一般化Bernoulli数(generalized Bernoulli numbers)とは、導手 $f$ の原始 Dirichlet 指標 $\chi$ について $\sum_{a=1}^{f}\chi(a)te^{at}/(e^{ft}-1)=\sum_nB_{n,\chi}t^n/n!$ の係数として定まる数 $B_{n,\chi}$ のことである。$\chi$ が自明なら $n=1$ を除き Bernoulli 数に一致する。導手の倍数 $F$ について $B_{n,\chi}=F^{n-1}\sum_a\chi(a)B_n(a/F)$ と書け、指標と $n$ の偶奇が合わなければ $0$ である。Hurwitz ゼータ関数の特殊値から $L(1-n,\chi)=-B_{n,\chi}/n$ が従い、虚 2 次体の類数や $p$ 進 L 関数の出発点になる。

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{div}[0]{\mathbin{÷}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: Bernoulli数, Dirichlet指標, Riemannゼータ関数, 形式的冪級数

一般化Bernoulli数(generalized Bernoulli numbers)とは、導手 $f$ の原始 Dirichlet 指標 $\chi$ について
$$ \sum_{a=1}^{f}\chi(a)\frac{te^{at}}{e^{ft}-1}=\sum_{n=0}^{\infty}B_{n,\chi}\frac{t^n}{n!} $$
の係数として定まる数 $B_{n,\chi}$ のことである。$\chi$ が自明な指標なら、$n=1$ を除いて通常の Bernoulli数 $B_n$ に一致する。
通常の Bernoulli 数が Riemannゼータ関数 の負の整数での値 $\zeta(1-n)=-B_n/n$ を与えるのと同じように、一般化 Bernoulli 数は Dirichlet の $L$ 関数の負の整数での値を与える:
$$ L(1-n,\chi)=-\frac{B_{n,\chi}}{n}\qquad(n\ge1). $$
とくに $L(1-n,\chi)$ は $\chi$ の値を $\mathbb Q$ に添加した体に属する。この値は、円分体の類数(虚 2 次体では $h=-\frac w2B_{1,\chi}$)や、$p$ 進 $L$ 関数と Kummer の合同式の出発点になる。
この記事では、(1) Bernoulli 多項式の基本性質と分布関係式、(2) 導手の任意の倍数 $F$ を使った表示 $B_{n,\chi}=F^{n-1}\sum_{a=1}^{F}\chi(a)B_n(a/F)$、(3) 指標の偶奇と $n$ の偶奇が合わなければ $B_{n,\chi}=0$ となること、(4) Hurwitz ゼータ関数の特殊値から $L(1-n,\chi)=-B_{n,\chi}/n$ を導くこと、を証明する。

定義

Bernoulli 多項式

$\mathbb Q[X]$ 係数の 形式的冪級数 の環 $\mathbb Q[X][\![t]\!]$ で考える。Bernoulli数 の定義により $\beta(t):=\frac t{e^t-1}=\sum_nB_n\frac{t^n}{n!}$ は $\beta(t)(e^t-1)=t$ をみたす冪級数である。$\mathbb Q[X]$ は整域なので $\mathbb Q[X][\![t]\!]$ も整域で(形式的冪級数)、$0$ でない冪級数を両辺から約してよい。以下、分数の形の冪級数 $\frac{te^{Xt}}{e^t-1}$ は積 $\beta(t)e^{Xt}$ を表し、$\frac{Nt\,e^{Yt}}{e^{Nt}-1}$ は $\beta(Nt)e^{Yt}$ を表す。

Bernoulli多項式

多項式 $B_n(X)\in\mathbb Q[X]$($n\ge0$)を
$$ \frac{te^{Xt}}{e^t-1}=\sum_{n=0}^{\infty}B_n(X)\frac{t^n}{n!} $$
で定め、Bernoulli 多項式 という。

Bernoulli多項式の基本性質
  1. $B_n(X)=\sum_{i=0}^{n}\binom niB_iX^{n-i}$ である。特に $B_n(0)=B_n$、$B_0(X)=1$、$B_1(X)=X-\frac12$、$B_2(X)=X^2-X+\frac16$ である。
  2. $n\ge1$ について $B_n(X+1)-B_n(X)=nX^{n-1}$ である。特に $B_n(1)=B_n$($n\ge2$)、$B_1(1)=\frac12$ である。
  3. $B_n(1-X)=(-1)^nB_n(X)$ である。
  4. (分布関係式)正の整数 $N$ について $\displaystyle\sum_{c=0}^{N-1}B_n\Bigl(\frac{X+c}N\Bigr)=N^{1-n}B_n(X)$ である。

1.$\beta(t)e^{Xt}=\bigl(\sum_iB_i\frac{t^i}{i!}\bigr)\bigl(\sum_jX^j\frac{t^j}{j!}\bigr)$ の $t^n$ の係数に $n!$ を掛けると $\sum_{i+j=n}\frac{n!}{i!\,j!}B_iX^j$ である。$B_0=1$、$B_1=-\frac12$、$B_2=\frac16$ から具体形が従う。
2.$\beta(t)e^{(X+1)t}-\beta(t)e^{Xt}=\beta(t)(e^t-1)e^{Xt}=te^{Xt}=\sum_{n\ge1}nX^{n-1}\frac{t^n}{n!}$ で、係数を比べればよい。$X=0$ とおくと $B_n(1)=B_n+n\cdot0^{n-1}$ である($0^0=1$)。
3.$\beta(-t)=\frac{-t}{e^{-t}-1}=\frac{te^t}{e^t-1}$ である(両辺に $e^{-t}-1$ を掛けて $-t$ になることを確かめ、約す)。よって $\beta(t)e^{(1-X)t}=\beta(-t)e^{X(-t)}=\sum_nB_n(X)\frac{(-t)^n}{n!}$ で、係数を比べればよい。
4.$U:=\sum_{c=0}^{N-1}\beta(Nt)e^{(X+c)t}$、$V:=N\beta(t)e^{Xt}$ とおく。$\sum_{c=0}^{N-1}e^{ct}\,(e^t-1)=e^{Nt}-1$ と $\beta(Nt)(e^{Nt}-1)=Nt$ から $U(e^t-1)=Nte^{Xt}=V(e^t-1)$ で、$e^t-1\neq0$ を約して $U=V$ である。$\beta(Nt)e^{(X+c)t}=\beta(Nt)e^{\frac{X+c}N\cdot Nt}=\sum_nB_n\bigl(\frac{X+c}N\bigr)\frac{N^nt^n}{n!}$ なので、$U=V$ の $t^n$ の係数を比べて $N^n\sum_cB_n\bigl(\frac{X+c}N\bigr)=NB_n(X)$ を得る。$\square$

4 の分布関係式は Lan90 Chapter 2 §2 の B 3(p. 35)と同じで、証明も同じ冪級数の計算による。$N=2$、$X=0$ とおくと $B_n+B_n(\frac12)=2^{1-n}B_n$、すなわち $B_n(\frac12)=(2^{1-n}-1)B_n$ である。

一般化 Bernoulli 数

以下、$\chi$ を導手 $f$ の原始 Dirichlet 指標とし(Dirichlet指標 の定義「導手と原始指標」)、自明な指標は $f=1$、$\chi(a)=1$(すべての $a$)とみなす。$\chi(-1)=(-1)^{\delta}$ となる $\delta\in\{0,1\}$ をとり、$\delta=0$ のとき $\chi$ を 偶指標、$\delta=1$ のとき 奇指標 という。$\mathbb Q(\chi)$ で $\chi$ の値を $\mathbb Q$ に添加した体を表す。

一般化Bernoulli数

$\mathbb Q(\chi)$ 係数の冪級数の等式
$$ \sum_{a=1}^{f}\chi(a)\frac{te^{at}}{e^{ft}-1}:=\frac1f\sum_{a=1}^{f}\chi(a)\,\beta(ft)\,e^{at}=\sum_{n=0}^{\infty}B_{n,\chi}\frac{t^n}{n!} $$
で定まる $B_{n,\chi}\in\mathbb Q(\chi)$ を 一般化 Bernoulli 数 という。

$\chi$ が自明なら左辺は $\beta(t)e^t=\sum_nB_n(1)\frac{t^n}{n!}$ なので、prop-gbn-polynomial の 2 により $B_{n,1}=B_n$($n\neq1$)、$B_{1,1}=\frac12$ である。この定義は Was82(p. 30)と同じで、Lan90(Chapter 2 §2 の B 6・B 7、p. 37)は指標を原始的に限らず、法 $N$ の関数 $f$ について同じ形の和で定めている(原始的でない指標では値が変わる。下の cor-gbn-imprimitive)。

導手の倍数による表示と偶奇

法 $F$ での表示

導手の倍数による表示

$F$ を $f$ の正の倍数とすると、すべての $n\ge0$ について
$$ B_{n,\chi}=F^{n-1}\sum_{a=1}^{F}\chi(a)\,B_n\Bigl(\frac aF\Bigr) $$
が成り立つ。特に $F=f$ として $B_{n,\chi}=f^{n-1}\sum_{a=1}^{f}\chi(a)B_n(a/f)$ である。

冪級数の等式に直す

$g:=F/f$ とおく。$\beta(Ft)e^{at}=\beta(Ft)e^{\frac aF\cdot Ft}=\sum_nB_n\bigl(\frac aF\bigr)\frac{F^nt^n}{n!}$ なので、主張は冪級数の等式
$$ \frac1F\sum_{a=1}^{F}\chi(a)\,\beta(Ft)\,e^{at}=\frac1f\sum_{b=1}^{f}\chi(b)\,\beta(ft)\,e^{bt}\qquad(*) $$
の $t^n$ の係数を比べたものである(左辺の $t^n/n!$ の係数は $F^{n-1}\sum_a\chi(a)B_n(a/F)$)。
$1\le a\le F$ は $a=b+cf$($1\le b\le f$、$0\le c\le g-1$)とただ 1 通りに書け、$\chi$ は周期 $f$ をもつので $\chi(a)=\chi(b)$ である。よって
$$ \frac1F\sum_{a=1}^{F}\chi(a)\beta(Ft)e^{at}=\frac1F\sum_{b=1}^{f}\chi(b)e^{bt}\cdot\beta(Ft)\sum_{c=0}^{g-1}e^{cft} $$
である。ここで $\beta(Ft)\sum_{c=0}^{g-1}e^{cft}=g\,\beta(ft)$ が成り立つ。実際、両辺に $e^{ft}-1$ を掛けると、左辺は $\beta(Ft)(e^{Ft}-1)=Ft$、右辺は $g\cdot ft=Ft$ となり、$e^{ft}-1\neq0$ を約せばよい。したがって左辺は $\frac gF\sum_b\chi(b)e^{bt}\beta(ft)$ で、$\frac gF=\frac1f$ から $(*)$ が従う。$\square$

この定理は Was82 Proposition 4.1(p. 31)である。$F$ は導手 $f$ の倍数でなければならない(反例の表の 2 行目)。

小さな番号の値

$\chi$ を自明でない原始指標とする。

  1. $B_{0,\chi}=0$ である。
  2. $B_{1,\chi}=\dfrac1f\displaystyle\sum_{a=1}^{f}\chi(a)\,a$ である。
  3. $B_{2,\chi}=\dfrac1f\displaystyle\sum_{a=1}^{f}\chi(a)\,a^2-\sum_{a=1}^{f}\chi(a)\,a$ である。

Dirichlet指標 の定理「指標の個数と直交関係」により $\sum_{a=1}^{f}\chi(a)=0$ である。thm-gbn-multiple で $F=f$ とし、prop-gbn-polynomial の 1 の $B_0(X)=1$、$B_1(X)=X-\frac12$、$B_2(X)=X^2-X+\frac16$ を代入すると、定数項の寄与は $\sum_a\chi(a)=0$ で消え、1〜3 を得る。$\square$

偶奇による消滅

偶奇が合わないときの消滅

$n\not\equiv\delta\pmod2$ なら $B_{n,\chi}=0$ である。ただし $\chi$ が自明で $n=1$ のときは例外で、$B_{1,1}=\frac12$ である。

$\chi$ が自明なら、$\delta=0$ で、$B_{n,1}=B_n$($n\ge2$)であり、$3$ 以上の奇数 $n$ で $B_n=0$ である(Bernoulli数 の命題「漸化式・奇数番目・大きさ」の 2)。
$f>1$ とする。$\gcd(f,f)=f>1$ なので $\chi(f)=0$ であり、thm-gbn-multiple で $F=f$ とすると $B_{n,\chi}=f^{n-1}\sum_{a=1}^{f-1}\chi(a)B_n(a/f)$ である。和の添字を $a\mapsto f-a$ と取り替えると、$a$ は $1,\dots,f-1$ を一巡し、$\chi(f-a)=\chi(-a)=(-1)^{\delta}\chi(a)$、prop-gbn-polynomial の 3 により $B_n(1-a/f)=(-1)^nB_n(a/f)$ である。よって $B_{n,\chi}=(-1)^{n+\delta}B_{n,\chi}$ で、$n+\delta$ が奇数なら $B_{n,\chi}=0$ である。$\square$

同じことを母関数で見ると、定義の左辺は $\chi$ が偶なら $t$ の偶関数、奇なら奇関数である(Was82 p. 31)。

小さな導手の指標

法 $4$ の奇指標 $\chi_{-4}$($\chi(1)=1$、$\chi(3)=-1$)、法 $3$ の奇指標 $\chi_{-3}$($\chi(1)=1$、$\chi(2)=-1$)、法 $5$ の偶指標 $\chi_5$($\chi(\pm1)=1$、$\chi(\pm2)=-1$)、法 $8$ の偶指標 $\chi_8$($\chi(\pm1)=1$、$\chi(\pm3)=-1$)はどれも原始的である。$0$ にならない値を並べる(有限計算)。

$\chi$$\delta$$B_{1,\chi}$$B_{2,\chi}$$B_{3,\chi}$$B_{4,\chi}$$B_{5,\chi}$$B_{6,\chi}$
$\chi_{-4}$$1$$-\frac12$$0$$\frac32$$0$$-\frac{25}2$$0$
$\chi_{-3}$$1$$-\frac13$$0$$\frac23$$0$$-\frac{10}3$$0$
$\chi_5$$0$$0$$\frac45$$0$$-8$$0$$\frac{804}5$
$\chi_8$$0$$0$$2$$0$$-44$$0$$2166$

例えば $\chi_5$ では、cor-gbn-small の 3 で $\sum\chi(a)a^2=1-4-9+16=4$、$\sum\chi(a)a=1-2-3+4=0$ から $B_{2,\chi_5}=\frac45$ である。$\chi_{-4}$ では $B_{1,\chi}=\frac14(1-3)=-\frac12$、また $F=4$ で $B_{3,\chi}=16\bigl(B_3(\tfrac14)-B_3(\tfrac34)\bigr)=32B_3(\tfrac14)$、$B_3(X)=X^3-\frac32X^2+\frac12X$ から $B_3(\frac14)=\frac3{64}$ で、$B_{3,\chi}=\frac32$ である。

$L$ 関数の負の整数での値

Hurwitz ゼータ関数

$0< b\le1$ について、$\operatorname{Re}s>1$ で絶対収束する級数
$$ \zeta(s,b):=\sum_{m=0}^{\infty}\frac1{(m+b)^s} $$
を Hurwitz ゼータ関数 という。$\zeta(s,1)=\zeta(s)$ である。次の事実はこの記事では証明しない。

Hurwitzゼータ関数の解析接続と特殊値

$\zeta(s,b)$ は $\mathbb C\setminus\{1\}$ 上の正則関数に延びる。さらに、正の整数 $n$ について
$$ \zeta(1-n,b)=-\frac{B_n(b)}n $$
が成り立つ。

特殊値の読み方

右辺の $B_n(b)$ は Bernoulli 多項式の $b$ での値である。$b=1$ では $\zeta(1-n)=-B_n(1)/n$ となり、$n\ge2$ では $B_n(1)=B_n$ なので $\zeta(1-n)=-B_n/n$ を得る。

これは Was82 Theorem 4.2(p. 31)の後半で、証明(pp. 32–33)は $\frac{te^{(1-b)t}}{e^t-1}$ を正の実軸を回る積分路で積分し、解析接続と特殊値を同時に得る。$b=1$ では Riemannゼータ関数 の定理「全平面への解析接続と関数等式」の接続と一致する。

主定理

$\chi$ の Dirichlet $L$ 関数を $\operatorname{Re}s>1$ で $L(s,\chi):=\sum_{m\ge1}\chi(m)m^{-s}$ と定める(Dirichlet L関数)。$\chi$ が自明なら $L(s,\chi)=\zeta(s)$ である。

$L(1-n,\chi)=-B_{n,\chi}/n$

$\chi$ を導手 $f$ の原始 Dirichlet 指標とする。

  1. $\operatorname{Re}s>1$ で $L(s,\chi)=f^{-s}\sum_{a=1}^{f}\chi(a)\,\zeta\bigl(s,\frac af\bigr)$ であり、右辺により $L(s,\chi)$ は $\mathbb C\setminus\{1\}$ 上の正則関数に延びる。
  2. すべての正の整数 $n$ について
    $$ L(1-n,\chi)=-\frac{B_{n,\chi}}n $$
    が成り立つ。
Hurwitz ゼータ関数に分ける

1.$\operatorname{Re}s>1$ では級数が絶対収束するので、$m$ を $f$ で割った余りで分けて和を並べ替えてよい。$m=a+kf$($1\le a\le f$、$k\ge0$)と書くと $\chi(m)=\chi(a)$ で
$$ L(s,\chi)=\sum_{a=1}^{f}\chi(a)\sum_{k=0}^{\infty}\frac1{(a+kf)^s}=\sum_{a=1}^{f}\chi(a)\,f^{-s}\sum_{k=0}^{\infty}\frac1{(k+a/f)^s}=f^{-s}\sum_{a=1}^{f}\chi(a)\,\zeta\Bigl(s,\frac af\Bigr) $$
である。thm-gbn-hurwitz により右辺は $\mathbb C\setminus\{1\}$ 上で正則で、$\mathbb C\setminus\{1\}$ は連結なので、一致の定理により延長はただ 1 つである。
2.1 の等式に $s=1-n$ を代入し、thm-gbn-hurwitz の特殊値を使うと
$$ L(1-n,\chi)=f^{n-1}\sum_{a=1}^{f}\chi(a)\Bigl(-\frac{B_n(a/f)}n\Bigr)=-\frac1n\,f^{n-1}\sum_{a=1}^{f}\chi(a)B_n\Bigl(\frac af\Bigr) $$
である。thm-gbn-multiple を $F=f$ で使うと、右辺は $-B_{n,\chi}/n$ に等しい。$\chi$ が自明なとき($f=1$)もこの計算はそのまま成り立ち、$\zeta(1-n)=-B_n(1)/n=-B_{n,1}/n$ を与える。$\square$

この定理は Was82 Theorem 4.2(p. 31)の前半である。$\chi$ が自明なとき、$n\ge2$ では $\zeta(1-n)=-B_n/n$、$n=1$ では $\zeta(0)=-B_{1,1}=-\frac12$ となり、Bernoulli数 で述べた値と一致する。$B_{1,1}=\frac12$ という例外は、この等式を保つための規約だと見ることができる。

負の整数での値の性質

$\chi$ を導手 $f$ の原始指標とする。

  1. $L(1-n,\chi)\in\mathbb Q(\chi)$ である。特に $\chi$ が実数値なら有理数である。
  2. $\chi$ が自明でない偶指標なら $L(0,\chi)=L(-2,\chi)=L(-4,\chi)=\dots=0$、奇指標なら $L(-1,\chi)=L(-3,\chi)=\dots=0$ である。
  3. $\chi$ が奇指標なら $L(0,\chi)=-B_{1,\chi}=-\dfrac1f\displaystyle\sum_{a=1}^{f}\chi(a)\,a$ である。

1 は $B_{n,\chi}\in\mathbb Q(\chi)$ と thm-gbn-l-value から従う。2 は prop-gbn-parity と thm-gbn-l-value による(偶指標なら $n=1,3,5,\dots$、奇指標なら $n=2,4,\dots$ が $n\not\equiv\delta$ にあたる)。3 は cor-gbn-small の 2 と thm-gbn-l-value の $n=1$ の場合である。$\square$

奇指標 $\chi$ では $B_{1,\chi}\neq0$ である。これは $L(1,\bar\chi)$ が $B_{1,\chi}$ の $0$ でない定数倍であること(Was82 Theorem 4.9、p. 37)と $L(1,\bar\chi)\neq0$ から従い、初等的な証明は知られていない(同 p. 37)。この記事では証明しない。

原始的でない指標

法 $m$ の指標 $\chi$ が、導手 $f\mid m$ の原始指標 $\chi^*$ から誘導されているとする。$m$ を使って定義の和を作った数
$$ B^{(m)}_{n,\chi}:=m^{n-1}\sum_{a=1}^{m}\chi(a)\,B_n\Bigl(\frac am\Bigr) $$
は、一般には $B_{n,\chi^*}$ と一致しない。

原始的でない指標の場合

上の記号で、正の整数 $n$ について
$$ B^{(m)}_{n,\chi}=B_{n,\chi^*}\prod_{p\mid m}\bigl(1-\chi^*(p)\,p^{n-1}\bigr) $$
が成り立つ(積は $m$ を割る素数 $p$ にわたる)。

$L_m(s):=\sum_{k\ge1}\chi(k)k^{-s}$ とおく。thm-gbn-l-value の 1 の証明を法 $m$ でそのまま繰り返すと、$L_m(s)=m^{-s}\sum_{a=1}^{m}\chi(a)\zeta(s,\frac am)$ が $\mathbb C\setminus\{1\}$ 上の正則関数に延び、$L_m(1-n)=-B^{(m)}_{n,\chi}/n$ である。一方 Dirichlet指標 の命題「誘導された指標の L 関数」により、$\operatorname{Re}s>1$ で $L_m(s)=L(s,\chi^*)\prod_{p\mid m}(1-\chi^*(p)p^{-s})$ である。両辺は連結な $\mathbb C\setminus\{1\}$ 上で正則なので、一致の定理によりこの等式は $s\neq1$ で成り立つ。$s=1-n$ を代入し、thm-gbn-l-value の 2 を使えば主張を得る。$\square$

例えば $m=2$ の主指標($\chi(k)=1$、$k$ は奇数)では、$\chi^*$ は自明で $B^{(2)}_{n,\chi}=(1-2^{n-1})B_n$ である。これは分布関係式から得た $B_n(\frac12)=(2^{1-n}-1)B_n$ に $2^{n-1}$ を掛けたものと一致する。

例

法 $4$ の指標と Euler 数

$\chi=\chi_{-4}$ とする。定義の左辺は
$$ \frac{t(e^t-e^{3t})}{e^{4t}-1}=\frac{-te^t(e^{2t}-1)}{(e^{2t}-1)(e^{2t}+1)}=-\frac{t}{e^t+e^{-t}}=-\frac t2\cdot\frac1{\cosh t} $$
である(冪級数としては、両辺に $e^{4t}-1$ を掛けて比べる)。$\frac1{\cosh t}=\sum_{k\ge0}E_{2k}\frac{t^{2k}}{(2k)!}$ で Euler 数 $E_0=1$、$E_2=-1$、$E_4=5$、$E_6=-61$、$\dots$ を定めると、$t^{2k+1}$ の係数を比べて $B_{2k+1,\chi}=-\frac{2k+1}2E_{2k}$ である。thm-gbn-l-value により
$$ L(-2k,\chi_{-4})=\frac{E_{2k}}2,\qquad L(0,\chi_{-4})=\frac12,\ L(-2,\chi_{-4})=-\frac12,\ L(-4,\chi_{-4})=\frac52,\ L(-6,\chi_{-4})=-\frac{61}2 $$
となる。$L(0,\chi_{-4})=\frac12$ は、級数 $1-1+1-1+\cdots$ の Abel 和と同じ値である。

虚 2 次体の類数

虚 2 次体 $K=\mathbb Q(\sqrt d)$($d< 0$ は判別式)に対応する実指標 $\chi_d(a)=\bigl(\frac da\bigr)$ は、導手 $\lvert d\rvert$ の原始的な奇指標である。$K$ の 1 の冪根の個数を $w$ とすると、類数は
$$ h(K)=-\frac w2B_{1,\chi_d}=\frac w2L(0,\chi_d) $$
で与えられる。これは相対類数の公式 Was82 Theorem 4.17(p. 42)で、$K$ の実部分体が $\mathbb Q$、単数群が 1 の冪根だけ(単数指数 $Q=1$)の場合にあたる(この記事では証明しない)。cor-gbn-small の 2 で計算すると次のようになる(有限計算)。

$d$$-3$$-4$$-7$$-8$$-11$$-15$$-20$$-23$
$B_{1,\chi_d}$$-\frac13$$-\frac12$$-1$$-1$$-1$$-2$$-2$$-3$
$w$$6$$4$$2$$2$$2$$2$$2$$2$
$h$$1$$1$$1$$1$$1$$2$$2$$3$

$d=-23$ の類数 $3$ は イデアル類群 の例「虚 2 次体 $\mathbb{Q}(\sqrt{-23})$ の類数は $3$」と一致する。

反例と注意

外す条件・替える条件反例成り立たなくなること
$\chi$ が原始的法 $2$ の主指標、$n=2$法 $m$ で作った和 $B^{(m)}_{n,\chi}$ が $B_{n,\chi^*}$ に等しい
$F$ が $f$ の倍数$\chi_{-4}$、$F=6$、$n=1$$B_{1,\chi}=F^{0}\sum_{a=1}^{F}\chi(a)B_1(a/F)$
$\chi$ が自明でない、または $n\neq1$$\chi=1$、$n=1$$n\not\equiv\delta$ なら $B_{n,\chi}=0$
負の整数 $1-n$$s=1$、$\chi_{-4}$$L(s,\chi)$ の値が有理数
$\operatorname{Re}s>1$$s=0$、$\chi_{-4}$$L(s,\chi)$ が級数 $\sum\chi(m)m^{-s}$ の和
指標の偶奇と $n$ の偶奇が合わない$\chi_5$、$n=2$$L(1-n,\chi)=0$
反例の確認

各行を確かめる。

各行の確認を開く

1 行目:法 $2$ の主指標で作った和は $B^{(2)}_{2,\chi}=2B_2(\frac12)=2\cdot(-\frac1{12})=-\frac16$ で、$B_2=\frac16$ と異なる。cor-gbn-imprimitive の因子 $1-2^{1}=-1$ がかかっている。$L_2(s):=\sum_{k\text{ 奇数}}k^{-s}=(1-2^{-s})\zeta(s)$ なので $L_2(-1)=(1-2)\zeta(-1)=\frac1{12}$ で、これは $-B^{(2)}_{2,\chi}/2$ に等しく、$-B_2/2=-\frac1{12}$ とは異なる。

2 行目:$\chi_{-4}(1)=1$、$\chi_{-4}(3)=-1$、$\chi_{-4}(5)=1$ で、和は $(\frac16-\frac12)-(\frac36-\frac12)+(\frac56-\frac12)=0$ だが、$B_{1,\chi_{-4}}=-\frac12$ である。証明の分割 $a=b+cf$ は $F$ が $f$ の倍数であることを使っていた。

3 行目:$B_{1,1}=B_1(1)=\frac12\neq0$ である。自明な指標では定義の左辺 $\frac{te^t}{e^t-1}=\frac t{e^t-1}+t$ は偶関数でない。

4 行目:$L(1,\chi_{-4})=1-\frac13+\frac15-\cdots=\frac\pi4$ で(Dedekindゼータ関数 の系「Leibnizの級数」)、有理数でない。

5 行目:$s=0$ では級数 $1-1+1-1+\cdots$ は収束しないが、延長した値は $L(0,\chi_{-4})=\frac12$ である。

6 行目:$\chi_5$ は偶指標で $n=2$ は偶数なので消滅は起きず、$L(-1,\chi_5)=-\frac12B_{2,\chi_5}=-\frac25\neq0$ である。

注意を 2 つ挙げる。

  • $p$ 進的な性質.$B_{n,\chi}/n$ は $p$ 進的に $n$ について連続に動くように補間でき、$L_p(1-n,\chi)=-(1-\chi\omega^{-n}(p)p^{n-1})B_{n,\chi\omega^{-n}}/n$ をみたす $p$ 進 $L$ 関数 $L_p(s,\chi)$ が存在する(Was82 Theorem 5.11、p. 57。$\omega$ は Teichmüller 指標)。自明な指標に使うと Kummerの合同式 が従う(同 Corollary 5.14、p. 61)。
  • Bernoulli 分布.$\frac1nB^{(N)}_{n,f}$ を法 $N$ の関数 $f$ の「積分」とみると、分布関係式は $p$ 進測度の構成につながる(Lan90 Chapter 2 §2、pp. 35–41)。これが 岩澤理論 の $p$ 進 $L$ 関数の構成の一つの道である。

関連項目

参考文献

[1]
Lawrence C. Washington, Introduction to Cyclotomic Fields, Springer-Verlag, Graduate Texts in Mathematics 83, 1982, Chapter 4(一般化 Bernoulli 数の定義、p. 30。Bernoulli 多項式・Proposition 4.1・偶奇、p. 31。Theorem 4.2、p. 31、証明 pp. 32–33。Theorem 4.9、p. 37。Theorem 4.17、p. 42)、Chapter 5(Theorem 5.11、p. 57。Corollary 5.14、p. 61)
[2]
Serge Lang, Cyclotomic Fields I and II, Springer-Verlag, Graduate Texts in Mathematics 121, 1990, Chapter 2 §2(Bernoulli 多項式の分布関係式 B 3、p. 35。一般化 Bernoulli 多項式と数 B 6・B 7、p. 37。Bernoulli 分布、pp. 35–41)

Mathpediaは寄付と、参考文献の書籍リンク(Amazonアソシエイト)の紹介料で運営されています。 支援について / 寄付する