合同式と余りの世界は、整数を正の整数 $n$ で割った余りで計算する合同式 $a\equiv b\pmod n$(差 $a-b$ が $n$ で割り切れること)を扱う 4 本の記事への案内である。高校で使う余りの計算を大学の概念と対応させ、読む順番を示す。① 合同式の計算規則では余りどうしの和・差・積・累乗が余りだけで決まる理由を、② 合同式の割り算と逆元では $\gcd(a,n)=1$ のときに限り法 $n$ で $a$ の逆元があることを、③ Fermatの小定理と冪の余りでは素数 $p$ と $p\nmid a$ について $a^{p-1}\equiv1\pmod p$ を、④ 冪の余りの周期と元の位数では $\gcd(a,n)=1$ のとき累乗の余りの周期が $\varphi(n)$ を割ることを証明する。
前提知識: 整数, 除法の原理
「100 日後は何曜日か」「$2^{100}$ を $7$ で割った余りはいくつか」「一の位はどうくり返すか」。高校で出会うこうした問題は、どれも 割った余りだけで計算する ことで解ける。この記事は、余りの計算(合同式)を扱う 4 本の記事への案内である。合同式の定義を短く述べたあと、高校の計算と大学の概念の対応を表にし、どの順番で何を読めばよいかを示す。
以下、$n$ は正の整数とする。
整数 $a,b$ について、差 $a-b$ が $n$ で割り切れるとき、$a$ と $b$ は $n$ を法として合同 であるといい、
$$
a\equiv b\pmod n
$$
と書く。この形の式を 合同式 といい、$n$ を 法 という。
$a\equiv b\pmod n$ であることは、「$a$ と $b$ を $n$ で割った余りが等しい」ことと同じである。この言いかえの証明は 合同式の計算規則 にある。
今日が月曜日なら、$100=7\cdot14+2$ なので、100 日後は 98 日後(月曜日)の 2 日後で水曜日である。日数は $100\equiv2\pmod 7$ と置き換えてよい。
$2^{100}$ を $7$ で割った余りは、$2^3=8\equiv1\pmod 7$ と $100=3\cdot33+1$ を使うと
$$
2^{100}=\left(2^3\right)^{33}\cdot2\equiv1^{33}\cdot2=2\pmod 7
$$
と求まる。$2^3$ を余りの $1$ に置き換えてよい理由が、合同式の計算規則 の主題である。
図 1 は、法 $7$ で余りが同じ整数を時計の同じ位置に並べたものである。同じ位置にある整数どうしは $7$ を法として合同である。
図1:法 7 の余りの時計。同じ位置にある整数どうしは 7 を法として合同である
高校で使う余りの計算の技法は、大学では次の概念の特別な場合として整理される。右の列は、その内容を扱う記事である。
| 高校の計算 | 大学の概念 | 記事 |
|---|---|---|
| 余りが同じ数を同じとみなす | 同値関係・剰余類 | 合同式の計算規則 |
| 余りどうしで足し算・掛け算をする | 剰余環 $\mathbb{Z}/n\mathbb{Z}$ の演算 | 合同式の計算規則 |
| 余りで場合分けする | $\mathbb{Z}/n\mathbb{Z}$ の元を全部調べる | 合同式の計算規則 |
| 掛けて $1$ になる数を掛ける | 逆元(単元) | 合同式の割り算と逆元 |
| 互除法を逆にたどって $ax+ny=1$ を解く | Bézout の等式 | 合同式の割り算と逆元 |
| 素数の法なら $0$ 以外で割れる | 体 $\mathbb{F}_p$ | 合同式の割り算と逆元 |
| $a,2a,\dots,(p-1)a$ の余りは並べ替え | 単元の置換 | Fermatの小定理と冪の余り |
| $a^{p-1}$ を $1$ に置き換える | Fermat の小定理 | Fermatの小定理と冪の余り |
| 累乗の余りの周期 | 元の位数 | 冪の余りの周期と元の位数 |
| 周期は $p-1$ の約数 | 群の Lagrangeの定理 | 冪の余りの周期と元の位数 |
4 本は、前の記事の結果を後の記事で使うように並んでいる。はじめて学ぶときは ① から順に読むとよい。各記事は、使う前の記事の結果を短く言い直してあるので、必要な記事だけを読むこともできる。
| 疑問 | 答える記事 |
|---|---|
| 余りどうしで計算してよいのはなぜか | ① 合同式の計算規則 |
| 指数も法 $n$ で置き換えてよいか(答:いけない) | ①、③(素数 $p$ なら法 $p-1$ で置き換えてよい)、④(位数を法として置き換えてよい) |
| 合同式で割り算をしてよいのはいつか | ② 合同式の割り算と逆元 |
| $3x\equiv5\pmod 7$ のような式をどう解くか | ② |
| $a^{p-1}$ が $p$ を法として $1$ になるのはなぜか | ③ Fermatの小定理と冪の余り |
| 累乗の余りの周期は何を割るか | ④ 冪の余りの周期と元の位数 |
| 合成数を法とすると何が変わるか | ②(割り算)、③($a^{n-1}\equiv1$ が崩れることがある)、④(周期) |
数学オリンピックの問題も 2 問扱っている。国際数学オリンピック(2005 年)第 4 問は「$p-2$ 乗は逆元」という見方で解けるので ③ に、国際数学オリンピック(1999 年)第 4 問は位数を最小の素因数で押さえる問題なので ④ に置いた。どちらも「高校数学で解く」と「大学数学で見ると」を並べている。
合同式は等式とよく似ているが、等式でできることが何でもできるわけではない。4 本の記事の内容を、使うときの注意としてまとめておく。
どの注意も、「法と互いに素かどうか」「法が素数かどうか」で結果が変わる。この 2 つの条件が、4 本の記事を通じてくり返し現れる。
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