Conway's 99-graph problem(Conway の 99 グラフ問題)とは、各辺がちょうど 1 つの三角形に含まれ、隣接しない各 2 頂点がちょうど 1 つの四角形の対角線になるような $99$ 頂点の単純グラフは存在するか、という John H. Conway の懸賞問題である。この条件は「隣接する 2 頂点の共通近傍が 1 個、隣接しない 2 頂点の共通近傍が 2 個」と言い換えられ、そのようなグラフは自動的に正則になるので、問題はパラメータ $(99,14,1,2)$ の強正則グラフの存在問題と同値である。隣接行列の固有値の整数性から $(n,k,1,2)$ 型の候補は $n=9,99,243,6273,494019$ の 5 組に限られ、$9$ 頂点と $243$ 頂点の例は知られているが、$99$ 頂点の場合は 2026 年 9 月の時点で未解決である。
前提知識: グラフ, 単純グラフ, 次数(グラフ), 閉路, 隣接行列, 固有値
本記事のグラフはすべて有限な単純グラフ(ループも多重辺もない無向グラフ)とする。グラフ $G=(V,E)$ の 2 頂点 $u,v$ が隣接する($uv\in E$)とき $u\sim v$ と書き、$u$ に隣接する頂点全体を $N(u)$、$u$ と $v$ の共通近傍の個数を $|N(u)\cap N(v)|$ で表す。
次を満たす $99$ 頂点の単純グラフ $G=(V,E)$ は存在するか。
$n$ 頂点の単純グラフ $G$ がパラメータ $(n,k,\lambda,\mu)$ の強正則グラフ(strongly regular graph、$\mathrm{srg}(n,k,\lambda,\mu)$)であるとは、$G$ が完全グラフでも辺のないグラフでもなく、次を満たすことをいう。
条件 1 は「隣接する 2 頂点の共通近傍がちょうど 1 個」、条件 2 は「隣接しない 2 頂点の共通近傍がちょうど 2 個」と言い換えられる(prop-conway-99-reformulation)。共通近傍の個数がこのように隣接・非隣接だけで決まるグラフが強正則グラフであり、強正則グラフのパラメータは隣接行列の固有値を通して強い整数条件を受ける。$\lambda=1,\ \mu=2$ の場合、その整数条件を満たすパラメータは $5$ 組しかなく(thm-conway-99-feasible)、そのうち $9$ 頂点と $243$ 頂点の例は知られている一方、$99$ 頂点の場合が最小の未解決の場合である(2026年9月時点。rem-conway-99-status 参照)。Conway の問題は、この「次に小さい場合」を、強正則グラフの言葉を使わずに述べたものである。
単純グラフ $G$ について次が成り立つ。
$G$ を単純グラフとし、隣接する任意の 2 頂点はちょうど $\lambda$ 個、隣接しない任意の相異なる 2 頂点はちょうど $\mu$ 個の共通近傍をもつとする。$\mu\ge2$ ならば $G$ は正則である。
$A$ を $G$ の隣接行列、$D$ を各頂点の次数 $d(v)$ を対角成分にもつ対角行列、$I$ を単位行列、$J$ を全成分 $1$ の行列とする。$(A^2)_{vw}=\sum_uA_{vu}A_{uw}$ は $v,w$ の共通近傍の個数なので、仮定により
$$A^2=D+\lambda A+\mu(J-I-A)$$
が成り立つ。$A$ は $A^2$ と可換であり、$A$ は $A$ 自身および $I$ と可換なので、$A(D+\mu J)=(D+\mu J)A$ を得る。$(AJ)_{vw}=\sum_uA_{vu}=d(v)$、$(JA)_{vw}=\sum_uA_{uw}=d(w)$ に注意して両辺の $(v,w)$ 成分を比べると
$$A_{vw}d(w)+\mu d(v)=d(v)A_{vw}+\mu d(w),\qquad\text{すなわち}\qquad(A_{vw}-\mu)(d(w)-d(v))=0.$$
$A_{vw}\in\{0,1\}$ かつ $\mu\ge2$ なので $A_{vw}-\mu\ne0$ であり、すべての $v,w$ について $d(v)=d(w)$ となる。$\square$
prop-conway-99-regularity の仮定 $\mu\ge2$ は外せない。$m\ge2$ 個の三角形を 1 つの頂点 $c$ で貼り合わせた風車グラフ(friendship graph、頂点数 $2m+1$)では、隣接する 2 頂点の共通近傍はちょうど 1 個、隣接しない 2 頂点の共通近傍はちょうど 1 個($c$ のみ)であるから $\lambda=\mu=1$ を満たすが、$c$ の次数は $2m$、他の頂点の次数は $2$ で正則ではない。すなわち「共通近傍数が隣接・非隣接だけで決まる」ことは、$\mu=1$ のとき「正則」を含意しない。
$\mathrm{srg}(n,k,\lambda,\mu)$ が存在すれば
$$k(k-\lambda-1)=(n-k-1)\mu.$$
頂点 $v$ を固定し、$N(v)$ の頂点と $V\setminus(N(v)\cup\{v\})$ の頂点を結ぶ辺の本数を 2 通りに数える。$u\in N(v)$ の近傍は $v$、$u$ と $v$ の共通近傍 $\lambda$ 個、および残りの $k-\lambda-1$ 個からなり、残りは $v$ にも $N(v)$ にも属さない($N(v)$ に属せば $u,v$ の共通近傍になる)。よって本数は $k(k-\lambda-1)$ である。一方 $w\notin N(v)\cup\{v\}$ は $v$ と隣接しないので $N(v)$ の中にちょうど $\mu$ 個の近傍をもち、本数は $(n-k-1)\mu$ である。$\square$
$99$ 頂点の単純グラフ $G$ が def-conway-99-problem の条件 1・2 を満たすことと、$G$ が $\mathrm{srg}(99,14,1,2)$ であることは同値である。したがって Conway の 99 グラフ問題は「$\mathrm{srg}(99,14,1,2)$ は存在するか」という問題と同じである。
$G$ が条件 1・2 を満たすとする。prop-conway-99-reformulation により、隣接する 2 頂点の共通近傍はちょうど $1$ 個、隣接しない相異なる 2 頂点の共通近傍はちょうど $2$ 個である。$G$ は完全グラフではない(完全グラフ $K_{99}$ では各辺が $97$ 個の三角形に含まれる)し、辺のないグラフでもない(辺がなければ非隣接対を対角線とする四角形は存在しない)。prop-conway-99-regularity($\mu=2$)により $G$ は $k$-正則であり、prop-conway-99-parameter-relation から $k(k-2)=2(98-k)$、すなわち $k^2=196$、$k=14$ を得る。よって $G$ は $\mathrm{srg}(99,14,1,2)$ である。
逆に $G$ が $\mathrm{srg}(99,14,1,2)$ ならば、$\lambda=1$、$\mu=2$ と prop-conway-99-reformulation により条件 1・2 が成り立つ。$\square$
頂点集合を $\mathbb{Z}/3\mathbb{Z}\times\mathbb{Z}/3\mathbb{Z}$ とし、$(a,b)$ と $(c,d)$ を「$a=c$ または $b=d$(ただし両方ではない)」のとき隣接させる($3\times3$ の盤上のルークの動きのグラフ)。各頂点は同じ行に $2$ 個、同じ列に $2$ 個の近傍をもつので $4$-正則である。同じ行の 2 頂点 $(a,b),(a,c)$ の共通近傍は、その行の残りの 1 点 $(a,d)$ だけである(列を共有する頂点 $(x,b)$ は $(a,c)$ と隣接しない)。行も列も異なる $(a,b),(c,d)$ の共通近傍は $(a,d)$ と $(c,b)$ のちょうど $2$ 個である。よってこれは $\mathrm{srg}(9,4,1,2)$ であり、prop-conway-99-reformulation により、$9$ 頂点で def-conway-99-problem の条件 1・2 を満たす。
このグラフは位数 $9$ の Paleyグラフ(有限体 $\mathbb{F}_9$ の元を頂点とし、差が $0$ でない平方元のとき隣接させるグラフ)と同型である。実際 $\mathbb{F}_9=\mathbb{F}_3[i]$($i^2=-1$)の $0$ でない平方元は $1^2=1$、$i^2=-1$、$(1+i)^2=-i$、$(1-i)^2=i$ の $4$ 個 $\{\pm1,\pm i\}$ であり、$x-y\in\{\pm1,\pm i\}$ とは $x=a+bi$、$y=c+di$ が「$b=d$ かつ $a\ne c$」または「$a=c$ かつ $b\ne d$」を満たすことにほかならない。
$\mathrm{srg}(243,22,1,2)$ は存在する。三元 Golay 符号($\mathbb{F}_3^{11}$ の $[11,6,5]$ 完全符号)の $3^5=243$ 個の剰余類を頂点とし、2 つの剰余類が重み $1$ のベクトルだけ異なる代表元をもつとき隣接させたグラフ(剰余類グラフ)がその例であり、Berlekamp–van Lint–Seidel グラフと呼ばれる。
$\mathrm{srg}(n,k,1,2)$ が存在するならば、$4k-7=m^2$ となる正の奇数 $m$ があり、$m$ は $63$ の約数で $m\ge3$、したがって
$$(n,k)\in\{(9,4),\ (99,14),\ (243,22),\ (6273,112),\ (494019,994)\}$$
のいずれかである。
$G$ を $\mathrm{srg}(n,k,1,2)$、$A$ をその隣接行列とする。$G$ は辺をもつので $k\ge1$ であり、辺 $uv$ は共通近傍をもつので $k\ge2$ である。$G$ は完全グラフでないので非隣接対が存在し、prop-conway-99-parameter-relation から
$$n-1=k+\frac{k(k-2)}{2}=\frac{k^2}{2}.$$
$A$ は実対称行列なので $\mathbb{R}^n$ の正規直交基底で対角化できる。全成分 $1$ のベクトル $\boldsymbol{j}$ は $A\boldsymbol{j}=k\boldsymbol{j}$ を満たし、$A$ は対称なので $\boldsymbol{j}$ の直交補空間 $\boldsymbol{j}^\perp$(次元 $n-1$)を保つ。prf-conway-99-regularity と同じ計算で $A^2=kI+A+2(J-I-A)$ であり、$x\in\boldsymbol{j}^\perp$ に対しては $Jx=0$ なので、$x$ が固有値 $\theta$ の固有ベクトルなら
$$\theta^2=k+\theta-2-2\theta,\qquad\text{すなわち}\qquad\theta^2+\theta-(k-2)=0$$
を得る。よって $\boldsymbol{j}^\perp$ 上の $A$ の固有値は $r=\dfrac{-1+\sqrt{4k-7}}{2}$ と $s=\dfrac{-1-\sqrt{4k-7}}{2}$ に限られ($k\ge2$ より $4k-7>0$)、それぞれの重複度を $f,g$ とすると $f+g=n-1$ である。$A$ の対角成分は $0$ なので、トレースを考えて
$$k+fr+gs=0.$$
まず $4k-7$ が平方数でないとすると $\sqrt{4k-7}$ は無理数であり、$fr+gs=-\dfrac{f+g}{2}+\dfrac{(f-g)\sqrt{4k-7}}{2}=-k$ が有理数であることから $f=g$、したがって $n-1=2f$ かつ $-(n-1)/2=-k$、すなわち $n-1=2k$ となる。$n-1=k^2/2$ と合わせると $k=4$ となるが、このとき $4k-7=9$ は平方数で矛盾する。ゆえに $4k-7=m^2$ となる正の整数 $m$ があり、$m$ は奇数で $k=(m^2+7)/4$、$r=(m-1)/2$、$s=-(m+1)/2$ である。
このとき $fr+gs=\dfrac{(f-g)m}{2}-\dfrac{f+g}{2}=-k$ から
$$(f-g)m=(n-1)-2k=\frac{k^2}{2}-2k=\frac{k(k-4)}{2}=\frac{(m^2+7)(m^2-9)}{32}$$
を得る。両辺を $32$ 倍すると $32(f-g)m=(m^2+7)(m^2-9)$ なので、$m$ は $(m^2+7)(m^2-9)$ を割り切る。$(m^2+7)(m^2-9)\equiv7\cdot(-9)=-63\pmod m$ なので $m$ は $63$ を割り切り、$m\in\{1,3,7,9,21,63\}$ である。$m=1$ では $k=2$、$n=3$ となり $G$ は完全グラフ $K_3$ になって定義に反する。残りの $m=3,7,9,21,63$ が $k=4,14,22,112,994$、$n=1+k^2/2=9,99,243,6273,494019$ を与える。$\square$
thm-conway-99-feasible の 5 組では $f=\dfrac{n-1}{2}+\dfrac{(f-g)}{2}$ も実際に非負整数になり($(f,g)=(4,4),(54,44),(132,110),(3280,2992),(250914,243104)$)、固有値による条件だけではこれらを除外できない。$m=1$ の $K_3$ は、非隣接対が存在しないため条件 2 が空虚に成り立つだけの自明な場合である。
2026 年 9 月 19 日の時点で、$\mathrm{srg}(9,4,1,2)$ と $\mathrm{srg}(243,22,1,2)$ の存在は知られている一方、$\mathrm{srg}(99,14,1,2)$、$\mathrm{srg}(6273,112,1,2)$、$\mathrm{srg}(494019,994,1,2)$ の存在・非存在はいずれも未解決である(BroTab のパラメータ表では存在未定を示す「?」が付けられている)。$99$ 頂点の場合が Conway の懸賞問題であり、条件を充足可能性問題に符号化して計算機で探索する試みもあるが、2026 年 4 月の時点でも解決には至っていない(Ker26)。
本記事の「未解決」「知られている」は上記の時点のものである。問題が解決された場合は、thm-conway-99-equivalence と thm-conway-99-feasible は変わらず、rem-conway-99-status の記述だけを更新すればよい。
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