Chevalley–Warningの定理(Chevalley–Warning theorem)とは、有限体 $\mathbb{F}_q$(標数 $p$)上の多項式 $f_1,\dots,f_r$ の次数の和が変数の個数 $n$ より小さければ、共通零点の個数が $p$ で割り切れるという定理である。定数項がすべて $0$ なら自明でない共通零点も存在し(Chevalley の定理)、有限体は $C_1$ 体であり、3 変数以上の 2 次形式はつねに $0$ でない零点をもつ。証明は、零点の指示関数を $\prod(1-f_i^{q-1})$ と表し、次数の低い多項式の値の総和が $0$ になることによる。Erdős–Ginzburg–Ziv の定理などの組合せ論にも応用される。
有限体 $\mathbb{F}_q$ の上で、多項式の連立方程式の解がいくつあるかを正確に数えるのは一般に難しい。ところが、変数の個数が多項式の次数の和より多いという条件だけで、解の個数が標数 $p$ で割り切れることが分かる。これが Chevalley–Warning の定理 である。
とくに、定数項をもたない多項式の連立方程式は、自明な解 $(0,\dots,0)$ をもつので、解の個数が $p$ の倍数であることから自明でない解ももつ(Chevalley の定理)。たとえば $\mathbb{F}_q$ 上の 3 変数以上の 2 次形式はつねに自明でない零点をもち、有限体は $C_1$ 体(準代数閉体)である。証明は、有限体の各元の冪の和が $0$ になるという 1 つの計算に帰着する。応用として、$2n-1$ 個の整数から和が $n$ で割り切れる $n$ 個を選べるという Erdős–Ginzburg–Ziv の定理を証明する。
以下、$p$ を素数、$q$ を $p$ の冪とし、$\mathbb{F}_q$ を $q$ 個の元からなる有限体とする。$\mathbb{F}_q$ の標数は $p$ である。多項式 $f\in\mathbb{F}_q[x_1,\dots,x_n]$ の(全)次数を $\deg f$ と書き、$0$ でない定数の次数は $0$ とする。零多項式の次数も、ここでは便宜上 $0$ とする。
$f_1,\dots,f_r\in\mathbb{F}_q[x_1,\dots,x_n]$ が
$$
\deg f_1+\dots+\deg f_r< n
$$
を満たすとする。共通零点の集合を $V=\{a\in\mathbb{F}_q^{\,n}\mid f_1(a)=\dots=f_r(a)=0\}$ とおくと、その元の個数 $\lvert V\rvert$ は $p$ で割り切れる。
証明(prf-cw-main)は、$V$ の指示関数を多項式 $\prod_i(1-f_i^{\,q-1})$ で表し、その値を $\mathbb{F}_q^{\,n}$ 全体で足し合わせる。次数の条件から総和は $0$ になり(lem-cw-low-degree-sum)、それが $\lvert V\rvert$ を $\mathbb{F}_q$ の元とみたものに等しい。
thm-cw-main の仮定に加えて、$f_1,\dots,f_r$ の定数項がすべて $0$ であるとする。このとき、$f_1,\dots,f_r$ は $(0,\dots,0)$ でない共通零点をもつ。より詳しく、共通零点は少なくとも $p$ 個ある。
$(0,\dots,0)\in V$ なので $\lvert V\rvert\ge1$ である。thm-cw-main により $p\mid\lvert V\rvert$ なので $\lvert V\rvert\ge p\ge2$ である。$\square$
$r=1$、$f_1$ が次数 $d\ge1$ の斉次多項式の場合が「$d< n$ なら $0$ でない零点がある」という主張であり、これは有限体が $C_1$ 体(準代数閉体、Tsenの定理 の記事の定義「$C_1$ 体」)であることを意味する(GS06 Theorem 6.2.6, p. 142)。cor-cw-chevalley は、その連立方程式版(同書 Remarks 6.2.2 の 2(p. 141)と Remarks 6.2.9 の 1(p. 143)で言う $C_1'$ の性質:次数 $d_1,\dots,d_r\ge1$ の斉次多項式の組は $d_1+\dots+d_r< n$ なら $0$ でない共通零点をもつ)を含む。
$\mathbb{F}_q$ の元 $a$ について、$a^{q-1}$ は $a\neq0$ なら $1$、$a=0$ なら $0$ である。したがって $1-f(x)^{q-1}$ は「$f(x)=0$ のとき $1$、そうでないとき $0$」という関数を表す多項式になり、解の個数はこの関数の値の総和(を $\mathbb{F}_q$ の中で見たもの)として読み取れる。
一方、$\mathbb{F}_q^{\,n}$ 上の関数の値の総和は、多項式の中のただ 1 つの単項式しか見ていない。各変数の次数が $q-1$ 以下の多項式 $P$ について、lem-cw-power-sum から
$$
\sum_{a\in\mathbb{F}_q^{\,n}}P(a)=(-1)^n\times\bigl(P\text{ の }x_1^{q-1}x_2^{q-1}\cdots x_n^{q-1}\text{ の係数}\bigr)
$$
が成り立つ(各単項式の和は $S_{e_1}\cdots S_{e_n}$ で、$e_j\le q-1$ なら $e_j=q-1$ のときだけ $S_{e_j}=-1$、それ以外は $0$)。この単項式の次数は $n(q-1)$ である。Chevalley–Warning の定理の条件「次数の和 $< n$」は、指示関数を表す多項式の次数が $n(q-1)$ に届かず、この係数が $0$ になることを保証している。
整数 $k\ge0$ について、$S_k:=\sum_{a\in\mathbb{F}_q}a^k$ とおく($0^0=1$ と約束する)。このとき
$$
S_k=\begin{cases}-1&(k\ge1\text{ かつ }q-1\mid k),\\0&(\text{それ以外}).\end{cases}
$$
$k=0$ なら $S_0=q\cdot1=0$ である($q$ は標数 $p$ の倍数)。以下 $k\ge1$ とすると、$0^k=0$ なので $S_k=\sum_{a\in\mathbb{F}_q^\times}a^k$ である。
有限体 の記事の定理「有限体の乗法群の構造」により、$\mathbb{F}_q^\times$ は位数 $q-1$ の巡回群である。その生成元を $g$ とする。
$q-1\mid k$ なら、どの $a\in\mathbb{F}_q^\times$ も $a^{q-1}=1$ を満たすので $a^k=1$ であり、$S_k=(q-1)\cdot1=-1$ である。
$q-1\nmid k$ なら $g^k\neq1$ である。$a\mapsto ga$ は $\mathbb{F}_q^\times$ の全単射なので
$$
g^kS_k=\sum_{a\in\mathbb{F}_q^\times}(ga)^k=\sum_{b\in\mathbb{F}_q^\times}b^k=S_k
$$
であり、$(g^k-1)S_k=0$、$g^k-1\neq0$ から $S_k=0$ である。$\square$
$P\in\mathbb{F}_q[x_1,\dots,x_n]$ の次数が $n(q-1)$ より小さければ、
$$
\sum_{a\in\mathbb{F}_q^{\,n}}P(a)=0
$$
である。
和は $P$ について線形なので、$P$ が単項式 $x_1^{e_1}\cdots x_n^{e_n}$($e_1+\dots+e_n< n(q-1)$)の場合に示せばよい。このとき
$$
\sum_{a\in\mathbb{F}_q^{\,n}}a_1^{e_1}\cdots a_n^{e_n}=\prod_{j=1}^n\Bigl(\sum_{a_j\in\mathbb{F}_q}a_j^{e_j}\Bigr)=S_{e_1}\cdots S_{e_n}
$$
である($0^0=1$ の約束は、$x_j$ を含まない単項式の値が $1$ であることと合っている)。指数の和が $n(q-1)$ より小さいので、ある $j$ で $e_j< q-1$ である。このとき $e_j=0$ でも $1\le e_j< q-1$ でも、lem-cw-power-sum により $S_{e_j}=0$ であり、積は $0$ である。$\square$
$d_i:=\deg f_i$ とし、
$$
P:=\prod_{i=1}^r\bigl(1-f_i^{\,q-1}\bigr)\in\mathbb{F}_q[x_1,\dots,x_n]
$$
とおく。
$P$ は $V$ の指示関数である。 $a\in V$ なら各因子は $1-0=1$ なので $P(a)=1$ である。$a\notin V$ なら、ある $i$ で $f_i(a)\neq0$ であり、$\mathbb{F}_q^\times$ の位数は $q-1$ なので $f_i(a)^{q-1}=1$、その因子が $0$ になって $P(a)=0$ である。したがって
$$
\sum_{a\in\mathbb{F}_q^{\,n}}P(a)=\lvert V\rvert\cdot1\quad(\mathbb{F}_q\text{ の元として})
$$
である。
$P$ の次数は低い。 $\deg(1-f_i^{\,q-1})\le(q-1)d_i$ なので
$$
\deg P\le(q-1)(d_1+\dots+d_r)<(q-1)n
$$
である。よって lem-cw-low-degree-sum により左辺の和は $0$ である。
以上から $\lvert V\rvert\cdot1=0$ が $\mathbb{F}_q$ で成り立つ。$\mathbb{F}_q$ の標数は $p$ なので、これは $p\mid\lvert V\rvert$ を意味する。$\square$
証明が示すのは $\lvert V\rvert\cdot1=0$ という $\mathbb{F}_q$ の中の等式なので、得られるのは $p$ での割り切れ方である。$q$ での割り切れ方はこの議論からは出てこない。
GS06 Theorem 6.2.6(p. 142)は、$r=1$ で $f$ が次数 $d< n$ の斉次多項式の場合を、Warning にならって「$\deg f< n$ なら零点の個数は $p$ で割り切れる」ことを示して証明している。同書 Remarks 6.2.9 の 1(p. 143)は、有限体が $C_1'$ の性質をもつことも同様に示せると述べ、証明を演習としている。上の証明は、連立方程式の解の個数についての主張を、指示関数 $P$ を使って直接示したものである。
要点:1 は cor-cw-chevalley の $r=1$、$d=2<3\le n$ の場合で、2 と 3 は 1 を 3 変数の形に当てはめる。
1:$2< n$ なので cor-cw-chevalley からただちに従う。
2:$q$ が偶数なら Frobenius 写像 $x\mapsto x^2$ は $\mathbb{F}_q$ の単射な自己準同型で、有限集合なので全射であり、どの元も平方($a=b^2+0^2$)である。$q$ が奇数とし、$a\in\mathbb{F}_q$ をとる。1 により $x^2+y^2-az^2=0$ は $0$ でない解 $(x,y,z)$ をもつ。$z\neq0$ なら $a=(x/z)^2+(y/z)^2$ である。$z=0$ なら $x^2=-y^2$ で $(x,y)\neq(0,0)$ なので $y\neq0$ であり、$c:=x/y$ は $c^2=-1$ を満たす。このとき $a=\bigl(\frac{a+1}2\bigr)^2-\bigl(\frac{a-1}2\bigr)^2=\bigl(\frac{a+1}2\bigr)^2+\bigl(c\,\frac{a-1}2\bigr)^2$ である。
3:1 により $ax^2+by^2-z^2=0$ は $0$ でない解をもつので、四元数環 の記事の定理「分裂の判定」の 4 ⇒ 1 により $(a,b)_{\mathbb{F}_q}$ は分裂する。$\square$
3 は 四元数環 の記事の定理「有限体上の四元数環はすべて分裂する」の別証明になっている。
斉次多項式の零点は、射影空間の点として数えることもできる。
$f_1,\dots,f_r\in\mathbb{F}_q[x_1,\dots,x_n]$ を次数 $1$ 以上の斉次多項式とし、$\deg f_1+\dots+\deg f_r< n$ とする。射影空間 $\mathbb{P}^{n-1}(\mathbb{F}_q)$ の点で $f_1,\dots,f_r$ がすべて $0$ になるもの($0$ でない共通零点を $\mathbb{F}_q^\times$ 倍の違いで同一視したもの)の個数を $M$ とすると、$M\equiv1\pmod p$ である。とくに $M\ge1$ である。
斉次多項式の零点の集合は $\mathbb{F}_q^\times$ 倍で閉じているので、$V\setminus\{0\}$ は $q-1$ 個ずつの元からなる類に分かれ、$\lvert V\rvert-1=(q-1)M$ である。thm-cw-main により $\lvert V\rvert\equiv0\pmod p$、また $q-1\equiv-1\pmod p$ なので、$-1\equiv-M\pmod p$、すなわち $M\equiv1\pmod p$ である。$\square$
たとえば $\mathbb{F}_q$ 上の射影平面の円錐曲線(3 変数の 2 次形式の零点)や、$\mathbb{P}^4$ の中の 2 つの 2 次超曲面の交わり(5 変数、次数の和 $4$)は、つねに $\mathbb{F}_q$ 有理点をもつ。ex-cw-counts の 1 では $M=(9-1)/2=4$ で、たしかに $4\equiv1\pmod3$ である。より一般に、有限体が $C_1$ 体であることと、$C_1$ 体の Brauer 群が $0$ であること(GS06 Proposition 6.2.3, p. 141、Tsenの定理 の記事の定理「$C_1$ 体の Brauer 群」)から、有限体上の中心的斜体は可換であるという Wedderburnの小定理 が再び得られる(GS06 Remark 6.2.7, pp. 142–143)。この記事では後者の議論を証明しない。また、有限体が $C_1$ 体であることは Kummer完全列 の例「命題が使える体」でも使われている。
$n\ge1$ を整数とする。任意の $2n-1$ 個の整数 $a_1,\dots,a_{2n-1}$(重複を許す)の中から、和が $n$ で割り切れる $n$ 個を選べる。
段 1($n=p$ が素数の場合). $\mathbb{F}_p$ 上の $2p-1$ 変数の 2 つの多項式
$$
f_1=\sum_{i=1}^{2p-1}x_i^{\,p-1},\qquad f_2=\sum_{i=1}^{2p-1}a_ix_i^{\,p-1}
$$
を考える($a_i$ は法 $p$ の像)。次数の和は $2(p-1)=2p-2<2p-1$ で、定数項は $0$ なので、cor-cw-chevalley により $0$ でない共通零点 $x=(x_i)$ がある。$I:=\{i\mid x_i\neq0\}$ とおくと $I\neq\emptyset$ で、$x_i^{p-1}$ は $i\in I$ なら $1$、それ以外は $0$ である。よって
$$
f_1(x)=\lvert I\rvert\cdot1=0,\qquad f_2(x)=\sum_{i\in I}a_i=0\quad(\mathbb{F}_p\text{ で})
$$
となる。$1\le\lvert I\rvert\le2p-1$ かつ $p\mid\lvert I\rvert$ なので $\lvert I\rvert=p$ であり、$\{a_i\}_{i\in I}$ が求める $p$ 個である。
段 2($m$ と $n$ で成り立てば $mn$ で成り立つ). $2mn-1$ 個の整数が与えられたとする。残りが $2m-1$ 個以上ある限り、$m$ での主張から、和が $m$ で割り切れる $m$ 個を取り除ける。$k$ 組取り除いたあとの残りは $2mn-1-km$ 個で、これが $2m-1$ 以上であるのは $k\le2n-2$ のときなので、互いに交わらない $m$ 個組 $T_1,\dots,T_{2n-1}$ が得られる。$T_j$ の和を $mb_j$($b_j\in\mathbb{Z}$)とおく。$n$ での主張により、$b_1,\dots,b_{2n-1}$ から和が $n$ で割り切れる $n$ 個 $b_{j_1},\dots,b_{j_n}$ を選べる。$T_{j_1}\cup\dots\cup T_{j_n}$ は $mn$ 個の整数からなり、その和 $m(b_{j_1}+\dots+b_{j_n})$ は $mn$ で割り切れる。
段 3. $n=1$ では主張は自明である。$n\ge2$ は素数の積なので、段 1 と段 2 からすべての $n$ で成り立つ。$\square$
$2n-1$ を $2n-2$ に減らすと成り立たない。$0$ を $n-1$ 個、$1$ を $n-1$ 個並べると、どの $n$ 個を選んでも $0$ と $1$ が少なくとも 1 個ずつ含まれるので、和は $1$ 以上 $n-1$ 以下で $n$ の倍数にならない。
thm-cw-main と cor-cw-chevalley の仮定を 1 つずつ外すと、次のように結論が成り立たなくなる。
| 外す条件 | 反例 | 成り立たなくなること |
|---|---|---|
| 次数の和が変数の個数より小さい(等しくする) | $\mathbb{F}_3$ 上の $x^2+y^2$($n=d=2$) | 解の個数が $p$ で割り切れること(解は $(0,0)$ の $1$ 個)と、$0$ でない零点の存在 |
| 体が有限 | $\mathbb{R}$ 上の $x^2+y^2+z^2$ | $0$ でない零点の存在 |
| 定数項が $0$(cor-cw-chevalley) | $\mathbb{F}_3$ 上の 3 変数の $x_1^2-2$ | 零点の存在(解は $0$ 個で、$0$ は $3$ で割り切れるので thm-cw-main とは矛盾しない) |
1 行目:$\mathbb{F}_3$ の平方は $0,1$ なので、$x^2+y^2=0$ なら $x^2=-y^2$ で、$y\neq0$ なら $-1=(x/y)^2$ が平方になるが、$-1=2$ は $\mathbb{F}_3$ の平方でない。よって解は $(0,0)$ だけである。2 行目:実数の平方の和が $0$ なら各項が $0$ である。次数 $2<3$ は満たしている。3 行目:$2$ は $\mathbb{F}_3$ の平方でないので $x_1^2=2$ は解をもたない。次数 $2<3$ は満たしているが、定数項 $-2$ が $0$ でない。
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