直径に対する円周角(angle in a semicircle)とは、直径 $AB$ を、円周上の $A,B$ と異なる点 $P$ から見込む角 $\angle APB$ で、つねに $90^\circ$ になる。中心と $P$ を結んでできる 2 つの二等辺三角形と、内角の和から示せる。逆に、直線 $AB$ の上にない点 $P$ で $\angle APB=90^\circ$ なら、$P$ は $AB$ を直径とする円の上にある。内積では $(\vec p-\vec a)\cdot(\vec p-\vec b)=|\vec p-\vec m|^2-r^2$($M$ は $AB$ の中点、$r=AB/2$)が成り立ち、符号から円の内部では鈍角、外部では鋭角になる。
前提知識: 三角形の内角の和, 三角形の合同条件, 三平方の定理, ベクトルの内積(高校数学)
円(Euclid幾何学)の中心を通る弦を 直径 という。中学では「直径の両端と、円周上の別の点を結ぶと、その点の角は直角になる」と習う。半円の弧の上の点から直径を見込むと直角に見える、という意味で「半円に対する円周角は直角」ともいう。Thales の定理とよばれることもある。まず座標で角を計算して、この主張を確かめる。
原点 $O$ を中心とする半径 $5$ の円 $x^2+y^2=25$ と、直径の両端 $A(-5,0)$、$B(5,0)$ をとる。円周上の点 $P$ について、ベクトル $\overrightarrow{PA}$、$\overrightarrow{PB}$ の内積を計算する。内積が $0$ なら $\angle APB=90^\circ$ である(ベクトルの内積(高校数学))。
(1) $P_1(3,4)$。$3^2+4^2=25$ なので円周上にある。$\overrightarrow{P_1A}=(-8,-4)$、$\overrightarrow{P_1B}=(2,-4)$ で、内積は $(-8)\cdot2+(-4)\cdot(-4)=-16+16=0$ である。
(2) $P_2(-4,3)$。$\overrightarrow{P_2A}=(-1,-3)$、$\overrightarrow{P_2B}=(9,-3)$ で、内積は $-9+9=0$ である。
(3) $P_3(0,-5)$。$\overrightarrow{P_3A}=(-5,5)$、$\overrightarrow{P_3B}=(5,5)$ で、内積は $-25+25=0$ である。
3 つとも $\angle APB=90^\circ$ である。長さでも確かめる。(1) では $P_1A^2=64+16=80$、$P_1B^2=4+16=20$ で、$P_1A^2+P_1B^2=100=AB^2$ である。三平方の定理の逆により、三角形 $P_1AB$ は $P_1$ を直角とする直角三角形である。
逆向きの例を見る。$C(0,0)$、$A(12,0)$、$B(0,5)$ を頂点とする三角形は、$C$ の角が直角で、斜辺は $AB=\sqrt{144+25}=13$ である。斜辺の中点 $M$ は $\left(6,\dfrac52\right)$ で、
$$
MC=\sqrt{6^2+\left(\frac52\right)^2}=\sqrt{36+\frac{25}4}=\sqrt{\frac{169}4}=\frac{13}2
$$
である。$MA=MB=\dfrac{13}2$ でもあるので、$C$ は $M$ を中心とする半径 $\dfrac{13}2$ の円、つまり $AB$ を直径とする円の上にある。直角の頂点は、斜辺を直径とする円の上にある。
円 x²+y²=25 の直径 AB を、円周上の 3 点 P₁(3, 4)、P₂(−4, 3)、P₃(0, −5) から見込むと、どれも直角になる
この記事で答える問いは次の 4 つである。
| 高校の事実 | この記事の言葉 | 大学の言葉 |
|---|---|---|
| 半円に対する円周角は直角 | $(\vec p-\vec a)\cdot(\vec p-\vec b)=0$ | 内積で定まる球面 |
| 直角三角形の外心は斜辺の中点 | 直角に見込む点は直径の円の上 | 同値な言い換え(逆) |
| 円の内部なら鈍角、外部なら鋭角 | $(\vec p-\vec a)\cdot(\vec p-\vec b)$ の符号 | 方べき、2 次関数の符号 |
| 空間で直角に見込む点 | $AB$ を直径とする球面 | 内積空間の球面 |
円の中心を $O$、半径を $r$ とする。直径 $AB$ は中心 $O$ を通るので、$O$ は線分 $AB$ の中点で、$OA=OB=r$ である。直線 $AB$ の上で $O$ からの距離が $r$ の点は $A$ と $B$ の 2 つだけなので、円周上の $A,B$ 以外の点は直線 $AB$ の上にない。したがって、そのような点 $P$ をとると $A,B,P$ は三角形をつくる。
$AB$ を円の直径とし、$P$ を円周上の $A,B$ と異なる点とする。このとき $\angle APB=90^\circ$ である。
方針:中心 $O$ と $P$ を結ぶと、三角形 $APB$ は 2 つの二等辺三角形(三角形の合同条件) $OAP$、$OBP$ に分かれる。底角を $a,b$ とおき、三角形 $APB$ の内角の和を $a,b$ で表す。
段 1(2 つの二等辺三角形)。$O$ は円の中心なので $OA=OP=r$、$OB=OP=r$ である。三角形 $OAP$ は $OA=OP$ の二等辺三角形なので、底角は等しい。$\angle OAP=\angle OPA=a$ とおく。同じく三角形 $OBP$ で $\angle OBP=\angle OPB=b$ とおく。
段 2($P$ の角)。$O$ は線分 $AB$ の中点で、$A$ でも $B$ でもない。三角形 $APB$ の辺 $AB$ の内部の点 $O$ と頂点 $P$ を結ぶ線分 $PO$ は、角 $APB$ を 2 つに分ける。したがって
$$
\angle APB=\angle APO+\angle OPB=a+b
$$
である。
段 3($A$ と $B$ の角)。$O$ は線分 $AB$ の上にあるので、半直線 $AO$ と半直線 $AB$ は同じである。よって $\angle PAB=\angle PAO=a$ である。同じく $\angle PBA=\angle PBO=b$ である。
段 4(内角の和)。三角形 $APB$ の内角の和は $180^\circ$ である(三角形の内角の和)。段 2・段 3 から
$$
a+b+(a+b)=180^\circ,\qquad 2(a+b)=180^\circ,\qquad a+b=90^\circ
$$
である。段 2 により $\angle APB=a+b=90^\circ$ である。$\square$
中心 O と P を結ぶと、三角形 APB は二等辺三角形 OAP(底角 a)と OBP(底角 b)に分かれる。内角の和から a + b = 90° が出る
証明で使ったのは、二等辺三角形の底角が等しいことと、三角形の内角の和が $180^\circ$ であることの 2 つだけである。図 2 のように、$P$ の角が $a$ と $b$ に分かれ、三角形の 3 つの角が $a$、$b$、$a+b$ になることが要点である。
thm-thd-main の図で $\angle PAB=25^\circ$ とする。
直径 $AB=13$ の円の周上に、$AP=5$ となる点 $P$ をとる。thm-thd-main により $\angle APB=90^\circ$ なので、三平方の定理から
$$
BP=\sqrt{13^2-5^2}=\sqrt{169-25}=\sqrt{144}=12
$$
である。$P$ から直径 $AB$ に下ろした垂線の長さを $h$ とすると、三角形 $APB$ の面積を 2 通りに書いて $\dfrac12\cdot5\cdot12=\dfrac12\cdot13\cdot h$ なので、$h=\dfrac{60}{13}$ である。
thm-thd-main は、「円周角は、同じ弧に対する中心角の半分」という円周角の定理で、弧が半円(中心角 $180^\circ$)の場合にあたる。逆に、円周角の定理の教科書の証明(円周角の定理)は、$P$ を通る直径を引いて、直径を 1 辺とする円周角の計算に帰着させる。その計算は prf-thd-main の段 1〜段 3 と同じ、二等辺三角形の底角と外角の計算である。この記事は、その出発点の場合を詳しく見るものである。複素数で見ると、直角に見込むことは、見込む数 $\dfrac{b-p}{a-p}$ が純虚数になることである。この見方は 円周角の定理(高校数学) の例「直径の両端を見込む角」で扱っている。
ex-thd-start-midpoint では、直角の頂点が斜辺を直径とする円の上にあった。これはいつでも成り立つ。
相異なる 2 点 $A,B$ と、直線 $AB$ の上にない点 $P$ について、$\angle APB=90^\circ$ ならば、$P$ は $AB$ を直径とする円の上にある。すなわち、線分 $AB$ の中点を $M$ とすると $MP=MA=MB$ である。
方針:$M$ を通り $PB$ に平行な直線を引くと、それが辺 $PA$ の垂直二等分線になることを示す。垂直二等分線の上の点は両端から等距離なので、$MP=MA$ が出る。
段 1(辺 $PA$ の中点)。$M$ を通り直線 $PB$ に平行な直線が、辺 $PA$ と交わる点を $N$ とする。三角形 $APB$ で $MN\parallel BP$ なので、平行線と線分の比により $AN:NP=AM:MB=1:1$ である(平行線と線分の比)。よって $N$ は辺 $PA$ の中点で、$AN=NP$ である。
段 2(垂直)。$\angle APB=90^\circ$ なので $PB\perp PA$ である。$MN\parallel PB$ なので $MN\perp PA$ でもある。
段 3(合同)。三角形 $MNA$ と三角形 $MNP$ で、$AN=PN$(段 1)、$MN$ は共通、$\angle MNA=\angle MNP=90^\circ$(段 2)である。2 辺とその間の角がそれぞれ等しいので、2 つの三角形は合同であり(三角形の合同条件)、$MA=MP$ である。
段 4(まとめ)。$M$ は線分 $AB$ の中点なので $MA=MB=\dfrac{AB}2$ である。段 3 と合わせて $MP=MA=MB$ であり、$P$ は $M$ を中心とする半径 $\dfrac{AB}2$ の円、つまり $AB$ を直径とする円の上にある。$\square$
thm-thd-main と thm-thd-converse を合わせると、直線 $AB$ の上にない点 $P$ について、「$\angle APB=90^\circ$」と「$P$ は $AB$ を直径とする円の上にある」は同値である。三角形の言葉では次のようになる。
直角三角形の 3 つの頂点を通る円(外接円)の中心は斜辺の中点であり、外接円の半径は斜辺の長さの半分である。
三角形 $APB$ で $\angle APB=90^\circ$ とし、斜辺 $AB$ の中点を $M$ とする。thm-thd-converse により $MA=MB=MP=\dfrac{AB}2$ である。$M$ は 3 つの頂点から等距離にあるので、3 頂点を通る円の中心である。3 頂点を通る円はただ 1 つなので(3 辺の垂直二等分線の交点が中心になる。三角形の外心)、外接円の中心は $M$ で、半径は $\dfrac{AB}2$ である。$\square$
直角をはさむ 2 辺が $6$ と $8$ の直角三角形の斜辺は $\sqrt{36+64}=10$ で、cor-thd-circumcenter により外接円の半径は $R=5$ である。一方、長さ $6$ の辺の向かいの角を $\alpha$ とすると $\sin\alpha=\dfrac6{10}=\dfrac35$ で、
$$
\frac{6}{\sin\alpha}=\frac{6}{3/5}=10=2R
$$
である。辺とその向かいの角の正弦の比が外接円の直径に等しいという正弦定理(正弦定理(高校数学))の、直角三角形の場合になっている。正弦定理の証明では、一般の三角形でも直径を 1 辺とする直角三角形をつくって、この場合に帰着させる。
ex-thd-start-coords では、角が直角であることを内積が $0$ になることで確かめた。点 $A,B,P$ の位置ベクトルを $\vec a,\vec b,\vec p$ とすると、$\overrightarrow{PA}=\vec a-\vec p$、$\overrightarrow{PB}=\vec b-\vec p$ なので、$P\ne A,B$ のとき
$$
\angle APB=90^\circ\iff(\vec p-\vec a)\cdot(\vec p-\vec b)=0
$$
である(両方のベクトルに $-1$ を掛けても内積は変わらない)。この式を展開すると、円の方程式が現れる。
相異なる 2 点 $A,B$ の中点を $M$、$r:=\dfrac{AB}2$ とする。平面のすべての点 $P$ について
$$
(\vec p-\vec a)\cdot(\vec p-\vec b)=|\vec p-\vec m|^2-r^2
$$
が成り立つ。したがって、$(\vec p-\vec a)\cdot(\vec p-\vec b)=0$ を満たす点 $P$ の全体は、$AB$ を直径とする円(中心 $M$、半径 $r$)である。
方針:$\vec p-\vec a$ と $\vec p-\vec b$ を、中点 $M$ を経由して書き直すと、「和と差の積」の形になる。
段 1(書き直す)。$\vec m=\dfrac{\vec a+\vec b}2$ なので、$\vec u:=\vec m-\vec a=\dfrac{\vec b-\vec a}2$ とおくと $\vec m-\vec b=\dfrac{\vec a-\vec b}2=-\vec u$ である。よって
$$
\vec p-\vec a=(\vec p-\vec m)+\vec u,\qquad \vec p-\vec b=(\vec p-\vec m)-\vec u
$$
である。
段 2(内積を展開する)。$\vec w:=\vec p-\vec m$ とおく。内積の分配法則と $\vec w\cdot\vec u=\vec u\cdot\vec w$ から
$$
(\vec w+\vec u)\cdot(\vec w-\vec u)=\vec w\cdot\vec w-\vec w\cdot\vec u+\vec u\cdot\vec w-\vec u\cdot\vec u=|\vec w|^2-|\vec u|^2
$$
である。
段 3(まとめ)。$|\vec u|=\dfrac{|\vec b-\vec a|}2=\dfrac{AB}2=r$ なので、段 1・段 2 から $(\vec p-\vec a)\cdot(\vec p-\vec b)=|\vec p-\vec m|^2-r^2$ である。右辺が $0$ になるのは $|\vec p-\vec m|=r$、つまり $P$ が中心 $M$、半径 $r$ の円の上にあるときであり、かつそのときに限る。$\square$
$A$ と $B$ 自身もこの式を満たす($\vec p=\vec a$ なら左辺の片方の因子が $\vec 0$ になる)ので、円の全体がちょうど式の解になる。$P\ne A,B$ の点については、式が $0$ であることは $\angle APB=90^\circ$ と同じである。したがって thm-thd-vector 1 つで、thm-thd-main とその逆 thm-thd-converse の両方が出る。証明の中身は、数の式 $(w+u)(w-u)=w^2-u^2$ と同じ計算である。
$A(1,2)$、$B(5,4)$ とする。$x,y$ がどちらも整数の点 $P$ で $\angle APB=90^\circ$ となるものをすべて求める。
thm-thd-vector により、そのような $P$ は ex-thd-eq (1) の円 $(x-3)^2+(y-3)^2=5$ の上の $A,B$ 以外の点である。整数の 2 乗の和で $5$ になるのは $1+4$ と $4+1$ だけなので、$(x-3,y-3)$ は $(\pm1,\pm2)$、$(\pm2,\pm1)$ の 8 通りである。点は $(4,5),(4,1),(2,5),(2,1),(5,4),(5,2),(1,4),(1,2)$ で、$A(1,2)$、$B(5,4)$ を除いた 6 点
$$
(1,4),\ (2,1),\ (2,5),\ (4,1),\ (4,5),\ (5,2)
$$
が答である。1 つ確かめると、$P(4,1)$ では $\overrightarrow{PA}=(-3,1)$、$\overrightarrow{PB}=(1,3)$ で、内積は $-3+3=0$ である。
$P$ が円周上にないときは、$(\vec p-\vec a)\cdot(\vec p-\vec b)$ の符号が角の大きさを教える。
$AB$ を直径とする円を $\Gamma$ とし、$P$ を直線 $AB$ の上にない点とする。
方針:$\cos\angle APB$ を内積で表し、thm-thd-vector の右辺の符号と比べる。
$P$ は $A,B$ と異なるので $PA>0$、$PB>0$ で、
$$
\cos\angle APB=\frac{\overrightarrow{PA}\cdot\overrightarrow{PB}}{PA\cdot PB}=\frac{(\vec p-\vec a)\cdot(\vec p-\vec b)}{PA\cdot PB}=\frac{|\vec p-\vec m|^2-r^2}{PA\cdot PB}
$$
である(2 つ目の等号は、2 つのベクトルに $-1$ を掛けても内積が変わらないことによる)。分母は正なので、$\cos\angle APB$ の符号は $|\vec p-\vec m|^2-r^2$ の符号と同じである。$P$ が $\Gamma$ の内部にあることは $|\vec p-\vec m|< r$、外部にあることは $|\vec p-\vec m|>r$ と同じである。$0^\circ<\angle APB<180^\circ$ の範囲では、余弦が負なら鈍角、$0$ なら直角、正なら鋭角である。$\square$
ex-thd-eq (1) の $A(1,2)$、$B(5,4)$ と円 $(x-3)^2+(y-3)^2=5$ で調べる。
(1) $P(3,5)$:中心からの距離の 2 乗は $0+4=4<5$ で、円の内部にある。$\overrightarrow{PA}=(-2,-3)$、$\overrightarrow{PB}=(2,-1)$ で、内積は $-4+3=-1$ である。これは $|\vec p-\vec m|^2-r^2=4-5=-1$ と一致する。$\cos\angle APB=\dfrac{-1}{\sqrt{13}\sqrt5}=-\dfrac1{\sqrt{65}}$ で、$\angle APB\approx97.13^\circ$(鈍角)である。
(2) $P(0,0)$:中心からの距離の 2 乗は $9+9=18>5$ で、円の外部にある。$\overrightarrow{PA}=(1,2)$、$\overrightarrow{PB}=(5,4)$ で、内積は $5+8=13=18-5$ である。$\cos\angle APB=\dfrac{13}{\sqrt5\sqrt{41}}=\dfrac{13}{\sqrt{205}}$ で、$\angle APB\approx24.78^\circ$(鋭角)である。
(3) $P(1,4)$:円の上にあり、ex-thd-lattice のとおり $\angle APB=90^\circ$ である。
A(1, 2)、B(5, 4) を直径の両端とする円。円周上の (1, 4) からは 90°、内部の (3, 5) からは約 97.1°、外部の (0, 0) からは約 24.8° に見える
thm-thd-vector の右辺 $|\vec p-\vec m|^2-r^2$ は、点 $P$ の円 $\Gamma$ に関する 方べき とよばれる量で、円の方程式 $(x-3)^2+(y-3)^2-5=0$ の左辺に $P$ の座標を代入した値でもある。$P$ が円の外部にあれば、$P$ から $\Gamma$ に引いた接線の長さの 2 乗に等しい。方べきの性質は 方べきの定理(高校数学) で扱う。thm-thd-vector は、「$P$ から直径の両端へのベクトルの内積は方べきに等しい」と読める。また、余弦定理(高校数学) でも、三角形の 1 つの角が鋭角・直角・鈍角であることを、頂点が向かいの辺を直径とする円の外部・周上・内部にあることと結びつけている。そこでは座標で計算しており、cor-thd-inside-outside は同じことを内積で示したものである。
$P$ が直線 $AB$ の上にあって $A,B$ と異なる場合も、角を $0^\circ$ 以上 $180^\circ$ 以下で測れば cor-thd-inside-outside の形のまま成り立つ。線分 $AB$ の内部の点(円の内部にある)では $\angle APB=180^\circ$、線分の外の点(円の外部にある)では $\angle APB=0^\circ$ である。
円の中心を $O$、半径を $r$ とし、円周上の点 $T$ をとる。$T$ を通り半径 $OT$ に垂直な直線を、$T$ における円の 接線 という。接線の上の $T$ 以外の点 $X$ では、三角形 $OTX$ が $T$ を直角とする直角三角形なので $OX^2=OT^2+TX^2>r^2$ であり、$X$ は円の外部にある。したがって接線と円の共有点は $T$ だけである(接線のくわしい性質は 円と直線の位置関係 と 接弦定理 で扱う)。
円の外の点 $P$ から引いた接線の接点を $T$ とすると、$\angle OTP=90^\circ$ である。逆に、円周上の点 $T$ で $\angle OTP=90^\circ$ となるものがあれば、直線 $PT$ は $T$ における接線である。$O$ も $P$ も円周上にないので $T\ne O,P$ であり、thm-thd-main と thm-thd-converse により、$\angle OTP=90^\circ$ は「$T$ は $OP$ を直径とする円の上にある」と同じである。つまり、接点は、もとの円と $OP$ を直径とする円の交点である。Euclid『原論』第 III 巻の命題 31(半円に対する角は直角)への注で、Heath はこれが命題 17(円の外の点から接線を引く作図)の別の作図になることを述べている(Hea56)。
円 $x^2+y^2=5$ に、点 $P(5,0)$ から接線を引く。$P$ は $5^2+0^2=25>5$ なので円の外部にある。
段 1($OP$ を直径とする円)。$O(0,0)$、$P(5,0)$ を直径の両端とする円は、thm-thd-vector により $x(x-5)+y\cdot y=0$、つまり $x^2+y^2-5x=0$ である。
段 2(交点)。接点 $T(x,y)$ は $x^2+y^2=5$ と $x^2+y^2-5x=0$ をともに満たす。1 つ目から 2 つ目を引くと $5x=5$、つまり $x=1$ である。$x^2+y^2=5$ に代入して $y^2=4$、$y=\pm2$ である。接点は $T_1(1,2)$、$T_2(1,-2)$ である。
段 3(確かめる)。$T_1$ では $\overrightarrow{T_1O}=(-1,-2)$、$\overrightarrow{T_1P}=(4,-2)$ で、内積は $-4+4=0$ なので $OT_1\perp PT_1$ である。接線 $PT_1$ は 2 点 $(5,0)$、$(1,2)$ を通る直線 $x+2y=5$ で、原点からの距離は $\dfrac{5}{\sqrt{1+4}}=\sqrt5$、つまり半径に等しい。同じく $PT_2$ は $x-2y=5$ である。
段 4(接線の長さ)。$PT_1^2=4^2+2^2=20$ で、$PT_1=2\sqrt5$ である。これは三平方の定理 $PT_1^2=OP^2-OT_1^2=25-5$ とも合っている。
円 x²+y²=5 の外の点 P(5, 0) から引いた 2 本の接線。OP を直径とする円(破線)ともとの円の交点 T₁(1, 2)、T₂(1, −2) が接点になる
2 つの円の交点を求めるとき、方程式を引き算して 1 次式を得た。この 1 次式 $x=1$ は、2 つの接点を通る直線(極線)である。この見方は 円の接線と極線 で扱う。また、接線が何本引けるかを 2 つの円の交わり方として数える見方は、2円の位置関係と共通接線 で使う。
thm-thd-vector の証明で使ったのは、内積の分配法則と交換法則、$|\vec w|^2=\vec w\cdot\vec w$ だけである。これらは空間ベクトルでも成り立つので、同じ証明が空間でもそのまま通る。
空間の相異なる 2 点 $A,B$ の中点を $M$、$r:=\dfrac{AB}2$ とする。空間のすべての点 $P$ について $(\vec p-\vec a)\cdot(\vec p-\vec b)=|\vec p-\vec m|^2-r^2$ が成り立つ。したがって、$A,B$ と異なる点 $P$ について、$\angle APB=90^\circ$ であることと、$P$ が中心 $M$、半径 $r$ の球面($AB$ を直径とする球面)の上にあることは同値である。
方針:prf-thd-vector の段 1〜段 3 を、空間ベクトルで読み直す。
段 1。$\vec u:=\vec m-\vec a$、$\vec w:=\vec p-\vec m$ とおくと、$\vec p-\vec a=\vec w+\vec u$、$\vec p-\vec b=\vec w-\vec u$ である($\vec m-\vec b=-\vec u$ は平面の場合と同じ計算)。
段 2。空間ベクトルの内積も分配法則と交換法則を満たすので、$(\vec w+\vec u)\cdot(\vec w-\vec u)=|\vec w|^2-|\vec u|^2$ である。$|\vec u|=r$ なので恒等式が成り立つ。
段 3。$P\ne A,B$ のとき、$\overrightarrow{PA}$、$\overrightarrow{PB}$ は $\vec 0$ でないので、$\angle APB=90^\circ$ は $(\vec a-\vec p)\cdot(\vec b-\vec p)=0$、つまり $(\vec p-\vec a)\cdot(\vec p-\vec b)=0$ と同じであり、恒等式によりこれは $|\vec p-\vec m|=r$ と同じである。$\square$
$A(1,0,2)$、$B(3,4,0)$ とする。$P(x,y,z)$ について $(\vec p-\vec a)\cdot(\vec p-\vec b)=0$ は
$$
(x-1)(x-3)+y(y-4)+(z-2)z=0
$$
である。展開すると $x^2+y^2+z^2-4x-4y-2z+3=0$ で、平方完成すると
$$
(x-2)^2+(y-2)^2+(z-1)^2=4+4+1-3=6
$$
である。中心は $AB$ の中点 $(2,2,1)$、半径の 2 乗は $\dfrac{AB^2}4=\dfrac{4+16+4}4=6$ で合っている。
この球面の上の点 $P(1,1,-1)$($(-1)^2+(-1)^2+(-2)^2=6$)で角を確かめる。$\overrightarrow{PA}=(0,-1,3)$、$\overrightarrow{PB}=(2,3,1)$ で、内積は $0-3+3=0$ なので、$\angle APB=90^\circ$ である。平面では直角に見込む点は円をつくったが、空間では球面をつくる。
ここから先は、大学で学ぶ内容の紹介である。
| 外した仮定 | 崩れる主張 | ボックス |
|---|---|---|
| $P$ が円周上にある | $\angle APB=90^\circ$ | ex-thd-inout |
| 弦 $AB$ が中心を通る(直径である) | 円周上の $A,B$ 以外の点 $P$ について $\angle APB=90^\circ$ | ex-thd-not-diameter |
| 平面の上で考える | 直径の両端を、円周上の点から見込む角は $90^\circ$ | ex-thd-sphere-counter |
円 $x^2+y^2=25$ の弦 $AB$ を、$A(-4,-3)$、$B(4,-3)$ とする。中点 $(0,-3)$ は中心 $(0,0)$ と異なるので、$AB$ は直径ではない。
原点 $O$ を中心とする半径 $1$ の球面の上で考える。2 点を球面に沿って最短で結ぶ道は、中心を通る平面で切った切り口の円(大円)の弧である。北極 $N(0,0,1)$ から球面に沿った距離(中心角で測る)が $45^\circ$ の点の集まりを、$N$ を中心とする「円」とみなす。この「円」は、点 $\left(\dfrac{\cos\lambda}{\sqrt2},\dfrac{\sin\lambda}{\sqrt2},\dfrac1{\sqrt2}\right)$($\lambda$ は経度)の全体である。
経度 $0^\circ$ の点 $A\left(\dfrac1{\sqrt2},0,\dfrac1{\sqrt2}\right)$ と経度 $180^\circ$ の点 $B\left(-\dfrac1{\sqrt2},0,\dfrac1{\sqrt2}\right)$ は、$N$ を通る大円($xz$ 平面の切り口)の上で $N$ の両側に $45^\circ$ ずつ離れている。つまり $AB$ はこの「円」の中心 $N$ を通る「直径」である。経度 $90^\circ$ の点 $P\left(0,\dfrac1{\sqrt2},\dfrac1{\sqrt2}\right)$ から見込む角を計算する。
球面の上の点 $P$ における角 $\angle APB$ は、$P$ から $A$、$B$ へ向かう大円の弧が $P$ で出ていく向きのなす角である。$P$ から $A$ への大円の弧が $P$ で出ていく向きは、$\overrightarrow{OA}$ から $\overrightarrow{OP}$ 方向の成分を除いたベクトル $\vec t_A:=\overrightarrow{OA}-(\overrightarrow{OA}\cdot\overrightarrow{OP})\overrightarrow{OP}$ である。$\overrightarrow{OA}\cdot\overrightarrow{OP}=\dfrac12$ なので
$$
\vec t_A=\left(\frac1{\sqrt2},-\frac1{2\sqrt2},\frac1{2\sqrt2}\right),\qquad \vec t_B=\left(-\frac1{\sqrt2},-\frac1{2\sqrt2},\frac1{2\sqrt2}\right)
$$
である($\overrightarrow{OB}\cdot\overrightarrow{OP}=\dfrac12$ も同じ)。$\vec t_A\cdot\vec t_B=-\dfrac12+\dfrac18+\dfrac18=-\dfrac14$、$|\vec t_A|^2=|\vec t_B|^2=\dfrac12+\dfrac18+\dfrac18=\dfrac34$ なので
$$
\cos\angle APB=\frac{-1/4}{3/4}=-\frac13,\qquad \angle APB\approx109.47^\circ
$$
である。「直径」を「円」の上の点から見込む角は $90^\circ$ にならず、鈍角になる。prf-thd-main の段 4 は、三角形の内角の和が $180^\circ$ であることを使った。球面の三角形では内角の和が $180^\circ$ より大きくなる(球面三角形の面積)ので、この段が使えない。
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