Kiepertの双曲線(Kiepert hyperbola)とは、三角形 $ABC$ の各辺を底辺として底角がそろって $\theta$($-90^\circ<\theta<90^\circ$、正なら外側、負なら内側)の二等辺三角形 $A'BC$ などを立てたとき、直線 $AA'$、$BB'$、$CC'$ の交点 $K(\theta)$ が描く曲線である。3 本の直線は 1 点で交わる(内向きの特別な底角(2 つ以下)でだけ 3 本とも平行になる)。二等辺三角形でない三角形では、$K(\theta)$ は 3 頂点・重心($\theta=0^\circ$)・垂心($\theta\to\pm90^\circ$)を通る直角双曲線の上を動き、$\theta=60^\circ$ で Fermat 点(すべての角が $120^\circ$ 未満のとき)を通る。二等辺三角形では交点は対称軸の上にある。
前提知識: 三角形の重心(高校数学), 三角形の垂心, 2次曲線と2次形式, Fermat点
Fermat点 では、三角形 $ABC$ の各辺の外側に正三角形を立て、その 3 つ目の頂点 $A'$、$B'$、$C'$ ともとの頂点を結ぶと、3 本の直線 $AA'$、$BB'$、$CC'$ が 1 点で交わることを見た。正三角形は「底角が $60^\circ$ の二等辺三角形」である。底角を $60^\circ$ 以外の角にそろえても、3 本の直線は 1 点で交わるだろうか。まず座標で確かめる。
三角形 $A\left(\dfrac12,\dfrac32\right)$、$B(-1,0)$、$C(1,0)$ の各辺の外側に、底角 $45^\circ$ の二等辺三角形(直角二等辺三角形)を立てる。
(1) 辺 $BC$。底辺の中点は原点で、底辺の半分の長さは $1$、底角が $45^\circ$ なので高さは $1\cdot\tan45^\circ=1$ である。$A$ と反対側(下側)に立てるので、3 つ目の頂点は $A'(0,-1)$ である。
(2) 辺 $CA$。中点は $M\left(\dfrac34,\dfrac34\right)$ で、$\overrightarrow{CA}=\left(-\dfrac12,\dfrac32\right)$ に垂直なベクトル $\left(\dfrac32,\dfrac12\right)$ は、$M$ から $B$ と反対側を向く。高さは底辺の半分 $\dfrac12\lvert\overrightarrow{CA}\rvert$ に等しい($\tan45^\circ=1$)ので、$M$ に $\left(\dfrac32,\dfrac12\right)$ の半分を足して $B'\left(\dfrac32,1\right)$ である。
(3) 辺 $AB$。同じように計算して $C'\left(-1,\dfrac32\right)$ である。
3 本の直線の方程式は
$$
AA'\colon y=5x-1,\qquad BB'\colon y=\frac25(x+1),\qquad CC'\colon y=-\frac34(x-1)
$$
である。$AA'$ と $BB'$ の交点は、$5x-1=\dfrac25x+\dfrac25$ より $\dfrac{23}5x=\dfrac75$、$x=\dfrac7{23}$、$y=\dfrac{35}{23}-1=\dfrac{12}{23}$ である。この点を $CC'$ の式に入れると $-\dfrac34\left(\dfrac7{23}-1\right)=-\dfrac34\cdot\left(-\dfrac{16}{23}\right)=\dfrac{12}{23}$ で、$CC'$ も通る。3 本は点 $\left(\dfrac7{23},\dfrac{12}{23}\right)$ で交わる。
辺 $AB$ の中点は $\left(-\dfrac14,\dfrac34\right)$、$\overrightarrow{AB}=\left(-\dfrac32,-\dfrac32\right)$ で、これに垂直で $C$ と反対側を向くベクトルは $\left(-\dfrac32,\dfrac32\right)$ である(中点から $C(1,0)$ へのベクトル $\left(\dfrac54,-\dfrac34\right)$ との内積が $-\dfrac{15}8-\dfrac98=-3<0$)。その半分を中点に足して $C'=\left(-\dfrac14-\dfrac34,\dfrac34+\dfrac34\right)=\left(-1,\dfrac32\right)$ である。
底角を $45^\circ$ にしても 3 本は 1 点で交わった。ほかの底角でも確かめると、次のようになる。
交点は底角によって動く。底角 $45^\circ$ では $\left(\dfrac7{23},\dfrac{12}{23}\right)$、$0^\circ$ では重心 $\left(\dfrac16,\dfrac12\right)$ だった。この記事で答える問いは次の 3 つである。
| 高校の計算 | この記事の言葉 | 大学の言葉 |
|---|---|---|
| 二等辺三角形の高さ $=\tan\theta\times$(底辺の半分) | Kiepert の三角形 $A'B'C'$ | 底角 $\theta$ で動く三角形の族 |
| 2 直線の交点を連立方程式で求める | 交点 $K(\theta)$ | 重心座標 $\left(\frac1{1+t\cot A}:\cdots\right)$ |
| 2 つの式から文字 $t$ を消去する | 交点の描く 2 次曲線 | 有理曲線、直線束の対応 |
| $x^2$ と $y^2$ の係数の和が $0$ | 漸近線が直交する | 直角双曲線(2 次形式の跡が $0$) |
三角形 ABC の各辺に底角 45 度の二等辺三角形を外側に立てると、頂点と 3 つ目の頂点を結ぶ 3 本の直線(破線)が 1 点で交わる
底角を外向きと内向きの両方で扱うため、角に符号を付ける。
三角形 $ABC$ と、$-90^\circ<\theta<90^\circ$ の角 $\theta$ をとる。辺 $BC$ の垂直二等分線の上の点 $A'$ で、次を満たすものをとる。
二等辺三角形の頂点から底辺に下ろした垂線は、底辺の中点を通る。底辺の長さを $a$ とすると、高さは $\dfrac a2\tan\lvert\theta\rvert$ である。ex-kie-start はこの計算を $\theta=45^\circ$ で行った。
以下の証明では座標を使う。三角形を平行移動・回転・拡大(縮小)しても、角の大きさ、二等辺三角形であること、直線が 1 点で交わることは変わらない。そこで、辺 $BC$ を $x$ 軸の上に置き、長さを $2$ にそろえて
$$
B(-1,0),\qquad C(1,0),\qquad A(p,q)\quad(q>0)
$$
としてよい。$A\to B\to C$ は反時計回りに並ぶ。$t=\tan\theta$ とおく。$\theta$ が $-90^\circ$ から $90^\circ$ まで動くと、$t$ はすべての実数を 1 回ずつとる。
上の座標で、底角 $\theta$ の Kiepert の三角形の頂点は
$$
A'(0,\,-t),\qquad B'\left(\frac{1+p+qt}2,\ \frac{q+t-pt}2\right),\qquad C'\left(\frac{p-1-qt}2,\ \frac{q+t+pt}2\right)
$$
である。3 本の直線の方程式は
$$
AA'\colon (q+t)x=p(y+t),\qquad BB'\colon (q+t-pt)(x+1)=(3+p+qt)\,y,\qquad CC'\colon (q+t+pt)(x-1)=(p-3-qt)\,y
$$
である($A'\ne A$、$B'\ne B$、$C'\ne C$ のとき)。
要点:底角 $\lvert\theta\rvert$ の二等辺三角形の 3 つ目の頂点は、底辺の中点から底辺に垂直に(底辺の半分)$\times\lvert t\rvert$ だけ進んだ点である。反時計回りに並ぶ三角形では、辺の向きのベクトルを時計回りに $90^\circ$ 回した向きが外側なので、$\overrightarrow{BC}=(2,0)$、$\overrightarrow{CA}=(p-1,q)$、$\overrightarrow{AB}=(-1-p,-q)$ を回した $(0,-2)$、$(q,1-p)$、$(-q,1+p)$ の $\dfrac t2$ 倍を、それぞれの辺の中点に足せばよい($t$ の符号が外側・内側を決める)。直線の式は、通る点と方向ベクトルから書く。
段 1($A'$)。辺 $BC$ の中点は原点、底辺の半分の長さは $1$ で、高さは $\lvert t\rvert$ である。$t>0$ なら $A$ と反対側、つまり下側なので $A'=(0,-t)$ である。$t<0$ なら上側に高さ $-t$ で、やはり $A'=(0,-t)$、$t=0$ なら中点 $(0,0)$ である。
段 2($B'$)。ベクトル $(u,v)$ を時計回りに $90^\circ$ 回したベクトルは $(v,-u)$ である。反時計回りに並ぶ三角形では、辺を $C\to A$ の向きに進むとき、右側(時計回りに $90^\circ$ 回した側)が外側である($B\to C$ では右側が下側で、段 1 と合っている)。$\overrightarrow{CA}=(p-1,q)$ を時計回りに回すと $(q,\,1-p)$ で、この長さは $CA$ に等しい。高さは $\dfrac{CA}2\cdot\lvert t\rvert$ で、$t$ の符号で外側・内側が決まるので
$$B'=\frac{C+A}2+\frac t2(q,\,1-p)=\left(\frac{1+p}2+\frac{qt}2,\ \frac q2+\frac{t(1-p)}2\right)$$
である。
段 3($C'$)。同じく $\overrightarrow{AB}=(-1-p,-q)$ を時計回りに回すと $(-q,\,1+p)$ で、
$$C'=\frac{A+B}2+\frac t2(-q,\,1+p)=\left(\frac{p-1}2-\frac{qt}2,\ \frac q2+\frac{t(1+p)}2\right)$$
である。
段 4(直線)。点 $(x_1,y_1)$ を通り方向 $(d_1,d_2)$ の直線は $d_2(x-x_1)=d_1(y-y_1)$ である。$AA'$ は $A'(0,-t)$ を通り方向 $\overrightarrow{A'A}=(p,q+t)$ なので $(q+t)x=p(y+t)$。$BB'$ は $B(-1,0)$ を通り方向 $2\overrightarrow{BB'}=(3+p+qt,\ q+t-pt)$ なので $(q+t-pt)(x+1)=(3+p+qt)y$。$CC'$ は $C(1,0)$ を通り方向 $2\overrightarrow{CC'}=(p-3-qt,\ q+t+pt)$ なので $(q+t+pt)(x-1)=(p-3-qt)y$ である。$\square$
ex-kie-start は $p=\dfrac12$、$q=\dfrac32$、$t=1$ の場合で、式に代入すると $A'(0,-1)$、$B'\left(\dfrac32,1\right)$、$C'\left(-1,\dfrac32\right)$ となり、例の値と一致する。
三角形 $ABC$ と底角 $\theta$($-90^\circ<\theta<90^\circ$)の Kiepert の三角形 $A'B'C'$ について、3 本の直線 $AA'$、$BB'$、$CC'$ は 1 点で交わるか、3 本とも平行である($A'\ne A$、$B'\ne B$、$C'\ne C$ とする)。
上の座標では、$t=\tan\theta$ として
$$
D=qt^2+(p^2+q^2+3)t+3q
$$
とおくと、$D\ne0$ のとき 3 本は点
$$
K(\theta)=\left(\frac{p\,(qt^2+4t+q)}D,\ \frac{(q+t)^2-p^2t^2}D\right)
$$
で交わり、$D=0$ のとき 3 本は平行である。
$K(\theta)$ の式は、$AA'$ と $BB'$ の方程式を連立して解くと得られる。証明では、この点が 3 本の直線の上にあることを直接確かめる。$X=p\,(qt^2+4t+q)$、$Y=(q+t)^2-p^2t^2=(q+t-pt)(q+t+pt)$ とおくと、$K(\theta)=\left(\dfrac XD,\dfrac YD\right)$ である。
方針:lem-kie-coords の 3 本の方程式に $K(\theta)$ を代入し、両辺に $D$ を掛けた式が一致することを確かめる。平行になる条件は、方向ベクトルで調べる。
段 1($AA'$ の上にある)。$(q+t)x=p(y+t)$ に代入して $D$ を掛けると、示すことは $(q+t)X=p\,(Y+tD)$ である。左辺は
$$
(q+t)X=p\,(q+t)(qt^2+4t+q)=p\,(qt^3+q^2t^2+4t^2+5qt+q^2)
$$
である。右辺のかっこの中は
$$
Y+tD=q^2+2qt+t^2-p^2t^2+qt^3+(p^2+q^2+3)t^2+3qt=qt^3+q^2t^2+4t^2+5qt+q^2
$$
で、$p^2t^2$ の項が打ち消し合い、左辺のかっこの中と一致する。
段 2($BB'$ の上にある)。$(q+t-pt)(x+1)=(3+p+qt)y$ に代入して $D$ を掛けると、示すことは
$$
(q+t-pt)(X+D)=(3+p+qt)\,Y=(3+p+qt)(q+t-pt)(q+t+pt)
$$
である。両辺に共通の因数 $q+t-pt$ があるので、$X+D=(3+p+qt)(q+t+pt)$ を示せばよい。左辺は
$$
X+D=pqt^2+4pt+pq+qt^2+(p^2+q^2+3)t+3q=(p+1)qt^2+\bigl((p+1)(p+3)+q^2\bigr)t+(p+3)q
$$
で($p^2+4p+3=(p+1)(p+3)$)、右辺を展開すると
$$
(3+p+qt)\bigl(q+(1+p)t\bigr)=(p+3)q+(p+1)(p+3)t+q^2t+(p+1)qt^2
$$
となり、一致する。
段 3($CC'$ の上にある)。$(q+t+pt)(x-1)=(p-3-qt)y$ に代入して $D$ を掛けると、段 2 と同じく共通の因数 $q+t+pt$ をくくり出して、$X-D=(p-3-qt)(q+t-pt)$ を示せばよい。左辺は
$$
X-D=(p-1)qt^2-\bigl((p-1)(p-3)+q^2\bigr)t+(p-3)q
$$
で($4p-p^2-3=-(p-1)(p-3)$)、右辺を展開すると
$$
(p-3-qt)\bigl(q-(p-1)t\bigr)=(p-3)q-(p-1)(p-3)t-q^2t+(p-1)qt^2
$$
となり、一致する。段 1〜3 より、$D\ne0$ のとき $K(\theta)$ は 3 本の直線の上にある。
段 4($D=0$ のとき平行)。方向ベクトル $\overrightarrow{AA'}=(-p,\,-q-t)$ と $2\overrightarrow{BB'}=(3+p+qt,\ q+t-pt)$ について、$u_1v_2-u_2v_1$ を計算すると
$$
-p\,(q+t-pt)+(q+t)(3+p+qt)=-pq-pt+p^2t+3q+pq+q^2t+3t+pt+qt^2=D
$$
である。同じく $\overrightarrow{AA'}$ と $2\overrightarrow{CC'}=(p-3-qt,\ q+t+pt)$ では $-D$ になる。$D=0$ なら、$AA'$ は $BB'$ とも $CC'$ とも平行で、3 本は平行である。$D\ne0$ なら $AA'$ と $BB'$ は平行でないので、交点はただ 1 つで、それが $K(\theta)$ である。$\square$
$X-D=pqt^2+4pt+pq-qt^2-(p^2+q^2+3)t-3q=(p-1)qt^2+(4p-p^2-q^2-3)t+(p-3)q$ で、$4p-p^2-3=-(p^2-4p+3)=-(p-1)(p-3)$ から $4p-p^2-q^2-3=-\bigl((p-1)(p-3)+q^2\bigr)$ である。右辺は $(p-3)\cdot q-(p-3)(p-1)t-qt\cdot q+qt\cdot(p-1)t$ を並べたものである。
$p=\dfrac12$、$q=\dfrac32$ では、$X$、$Y$、$D$ を 4 倍して
$$
K(\theta)=\left(\frac{3t^2+8t+3}{2(3t^2+11t+9)},\ \frac{3(t+1)(t+3)}{2(3t^2+11t+9)}\right)
$$
となる。
(1) $t=1$($\theta=45^\circ$)で $\left(\dfrac{14}{46},\dfrac{24}{46}\right)=\left(\dfrac7{23},\dfrac{12}{23}\right)$ で、ex-kie-start と一致する。
(2) $t=0$($\theta=0^\circ$)で $\left(\dfrac3{18},\dfrac9{18}\right)=\left(\dfrac16,\dfrac12\right)$ で、重心である。
(3) $t=-1$($\theta=-45^\circ$)で $\left(\dfrac{-2}{2},\dfrac{0}{2}\right)=(-1,0)$ で、頂点 $B$ である。この三角形では $\angle B=45^\circ$ である。
$\angle B=45^\circ$ なので、内向きに底角 $45^\circ$ の二等辺三角形を立てると、辺 $BC$ の上の三角形の頂点 $A'$ は $\angle A'BC=45^\circ=\angle ABC$ から半直線 $BA$ の上にきて、直線 $AA'$ は直線 $AB$ になる。同じく辺 $AB$ の上の頂点 $C'$ は半直線 $BC$ の上にきて、直線 $CC'$ は直線 $BC$ になる。3 本はどれも $B$ を通る。
thm-kie-concur で $D=0$ となる $\theta$ は負である。$D$ を $t$ の 2 次式と見ると、係数 $q$、$p^2+q^2+3$、$3q$ はどれも正なので、$t\ge0$ では $D>0$ である。外向き($\theta\ge0$)では、3 本はいつも 1 点で交わる。$D=0$ となる $t$ の個数も調べておく。判別式は $(p^2+q^2+3)^2-12q^2=\bigl(p^2+(q-\sqrt3)^2\bigr)\bigl(p^2+(q+\sqrt3)^2\bigr)$ で、正三角形($p=0$、$q=\sqrt3$)以外では正なので、$D=0$ となる $t$ は 2 つある。ただし二等辺三角形では、そのうち 1 つで $A'=A$(または $B'=B$、$C'=C$)となり直線が決まらない。たとえば $AB=AC$($p=0$)では $D=(t+q)(qt+3)$ で、$t=-q$ のとき $A'=(0,q)=A$ である。したがって 3 本が平行になる底角は、二等辺三角形でなければ 2 つ、二等辺三角形では 1 つ(正三角形では $0$ 個)である。
$\theta$ を動かしたときの $K(\theta)$ の軌跡を求める。$t$ を含む 2 本の直線の方程式から $t$ を消去すると、$x,y$ だけの式が残る。
lem-kie-coords の座標で、$D\ne0$ となるすべての $\theta$ について、$K(\theta)$ は 2 次曲線
$$
\Phi(x,y):=pq\,x^2+(q^2-p^2-3)\,xy-pq\,y^2+4p\,y-pq=0
$$
の上にある。この曲線は 3 頂点 $A,B,C$、重心 $G$、垂心 $H$ を通る。さらに三角形 $ABC$ が二等辺三角形でなければ、この曲線は 2 本の漸近線が直交する双曲線(直角双曲線)である。これを三角形 $ABC$ の Kiepert の双曲線 という。
方針:段 1 で $t$ を消去して $\Phi=0$ を導く。段 2 で 5 点を代入し、段 3〜4 で直角双曲線であることを示す。
段 1($t$ の消去)。$K(\theta)=(x,y)$ は $AA'$ と $BB'$ の上にある。2 本の方程式を $t$ について整理すると
$$
t\,(x-p)=py-qx,\qquad t\,M=N,\qquad M:=(1-p)(x+1)-qy,\quad N:=(3+p)y-q(x+1)
$$
である($BB'$ の式 $(q+t-pt)(x+1)=(3+p+qt)y$ の $t$ を含む項を左辺に集めた)。1 つ目の式の両辺に $M$ を掛け、2 つ目の式を使うと
$$
(py-qx)M=t\,(x-p)M=(x-p)\,tM=(x-p)N
$$
となる。両辺を展開する。
$$
(py-qx)M=p(1-p)xy+p(1-p)y-pq\,y^2-q(1-p)x^2-q(1-p)x+q^2xy
$$
$$
(x-p)N=(3+p)xy-q\,x^2-q\,x-p(3+p)y+pq\,x+pq
$$
左の式から右の式を引くと、$x^2$ の係数は $-q(1-p)+q=pq$、$xy$ の係数は $p-p^2+q^2-3-p=q^2-p^2-3$、$y^2$ の係数は $-pq$、$x$ の係数は $-q+pq+q-pq=0$、$y$ の係数は $p-p^2+3p+p^2=4p$、定数項は $-pq$ である。よって $\Phi(x,y)=0$ である。
段 2(5 点を通る)。$B(-1,0)$、$C(1,0)$ では $\Phi=pq-pq=0$ である。$A(p,q)$ では
$$
\Phi(p,q)=pq\bigl(p^2+(q^2-p^2-3)-q^2+4-1\bigr)=0
$$
である。重心 $G\left(\dfrac p3,\dfrac q3\right)$ では
$$
\Phi\left(\frac p3,\frac q3\right)=pq\left(\frac{p^2+(q^2-p^2-3)-q^2}9+\frac43-1\right)=pq\left(-\frac13+\frac13\right)=0
$$
である。垂心は $H\left(p,\dfrac{1-p^2}q\right)$ である($A$ からの垂線は $x=p$、$B$ からの垂線は $\overrightarrow{CA}=(p-1,q)$ に垂直な直線 $(p-1)(x+1)+qy=0$ で、$x=p$ を入れて $y=\dfrac{1-p^2}q$)。代入すると
$$
\Phi(H)=p^3q+\frac{(q^2-p^2-3)p(1-p^2)}q-\frac{p(1-p^2)^2}q+\frac{4p(1-p^2)}q-pq
$$
で、分母 $q$ の 3 項をまとめると $\dfrac{p(1-p^2)}q\bigl(q^2-p^2-3-(1-p^2)+4\bigr)=\dfrac{p(1-p^2)}q\cdot q^2=pq(1-p^2)$ である。残りの $p^3q-pq=pq(p^2-1)$ と合わせて $\Phi(H)=0$ である。
段 3(漸近線が直交する)。二等辺三角形でないとき、$AB\ne AC$ なので $p\ne0$ である($AB^2-AC^2=(p+1)^2-(p-1)^2=4p$)。$\Phi$ を $pq$ で割って
$$
F(x,y):=x^2+\beta\,xy-y^2+\varepsilon\,y-1,\qquad \beta=\frac{q^2-p^2-3}{pq},\quad \varepsilon=\frac4q
$$
とおく。2 次の部分 $x^2+\beta xy-y^2$ が $0$ になる向き、つまり傾き $m$ の直線 $y=mx$ で $1+\beta m-m^2=0$ となる $m$ は、判別式 $\beta^2+4>0$ から 2 つあり、解と係数の関係から積は $-1$ である。2 本の向きは直交する。
段 4(つぶれない)。2次曲線と2次形式 と同じく、平行移動で 1 次の項を消す。$F$ を $x$、$y$ で偏微分した $2x+\beta y$、$\beta x-2y+\varepsilon$ がともに $0$ になる点(中心)は $x_0=-\dfrac{\beta\varepsilon}{4+\beta^2}$、$y_0=\dfrac{2\varepsilon}{4+\beta^2}$ で、$x=x_0+X$、$y=y_0+Y$ と置きかえると
$$
X^2+\beta XY-Y^2=-F(x_0,y_0),\qquad F(x_0,y_0)=\frac{\varepsilon^2}{4+\beta^2}-1=\frac{\varepsilon^2-4-\beta^2}{4+\beta^2}
$$
となる。さらに
$$
\varepsilon^2-4-\beta^2=-\frac{\bigl(CA^2-BC^2\bigr)\bigl(AB^2-BC^2\bigr)}{p^2q^2}
$$
である($BC^2=4$、$CA^2=(p-1)^2+q^2$、$AB^2=(p+1)^2+q^2$)。二等辺三角形でなければ右辺は $0$ でないので、$F(x_0,y_0)\ne0$ である。段 3 の 2 つの傾きを $m_1,m_2$ とすると $X^2+\beta XY-Y^2=-(Y-m_1X)(Y-m_2X)$ なので、曲線は $(Y-m_1X)(Y-m_2X)=F(x_0,y_0)$ で、右辺は $0$ でない。これは直交する 2 直線 $Y=m_1X$、$Y=m_2X$ を漸近線とする双曲線である。$\square$
(1) 中心での値。$x_0=-\dfrac\beta2y_0$ を使うと $x_0^2+\beta x_0y_0-y_0^2=\dfrac{\beta^2}4y_0^2-\dfrac{\beta^2}2y_0^2-y_0^2=-\dfrac{4+\beta^2}4y_0^2=-\dfrac{\varepsilon^2}{4+\beta^2}$ で、$\varepsilon y_0=\dfrac{2\varepsilon^2}{4+\beta^2}$ なので、$F(x_0,y_0)=\dfrac{\varepsilon^2}{4+\beta^2}-1$ である。平行移動すると 1 次の項が消え(中心で偏微分が $0$ だから)、2 次の部分は変わらない。
(2) 因数分解。$\varepsilon^2-4-\beta^2=\dfrac{16p^2-4p^2q^2-(q^2-p^2-3)^2}{p^2q^2}$ である。$(p^2+q^2-3)^2-(q^2-p^2-3)^2=2p^2\cdot(2q^2-6)=4p^2q^2-12p^2$ を使うと、分子は $16p^2-4p^2q^2-(p^2+q^2-3)^2+4p^2q^2-12p^2=4p^2-(p^2+q^2-3)^2$ で、2 乗の差として $-(p^2+q^2-3-2p)(p^2+q^2-3+2p)$ になる。$p^2-2p+q^2-3=(p-1)^2+q^2-4=CA^2-BC^2$、$p^2+2p+q^2-3=AB^2-BC^2$ である。
$p=\dfrac12$、$q=\dfrac32$ の三角形では、$pq=\dfrac34$、$q^2-p^2-3=-1$ なので $\Phi=\dfrac34x^2-xy-\dfrac34y^2+2y-\dfrac34$ で、4 倍して
$$
3x^2-4xy-3y^2+8y-3=0
$$
である。$K\left(45^\circ\right)=\left(\dfrac7{23},\dfrac{12}{23}\right)$ を代入すると、$23^2$ 倍して $3\cdot49-4\cdot84-3\cdot144+8\cdot12\cdot23-3\cdot529=147-336-432+2208-1587=0$ である。重心 $G\left(\dfrac16,\dfrac12\right)$ では $\dfrac1{12}-\dfrac13-\dfrac34+4-3=0$、垂心 $H\left(\dfrac12,\dfrac12\right)$ では $\dfrac34-1-\dfrac34+4-3=0$ である。
中心は $\left(\dfrac8{13},\dfrac{12}{13}\right)$ で、そこでの値は $F(x_0,y_0)=\dfrac3{13}\ne0$ である。漸近線の傾きは $m=\dfrac{-2\pm\sqrt{13}}3$ で、積は $-1$ である。
$\beta=-\dfrac43$、$\varepsilon=\dfrac83$、$4+\beta^2=\dfrac{52}9$ から、$x_0=-\dfrac{\beta\varepsilon}{4+\beta^2}=\dfrac{32}9\cdot\dfrac9{52}=\dfrac8{13}$、$y_0=\dfrac{2\varepsilon}{4+\beta^2}=\dfrac{16}3\cdot\dfrac9{52}=\dfrac{12}{13}$、$F(x_0,y_0)=\dfrac{64}{52}-1=\dfrac3{13}$ である。2 次の部分の傾きは $1-\dfrac43m-m^2=0$、つまり $3m^2+4m-3=0$ の解である。
三角形 ABC の Kiepert の双曲線(青)。底角を -80 度から 80 度まで 10 度ごとに変えた交点 K(赤い点)が双曲線の上に並び、頂点 A、B、C、重心 G、垂心 H、Fermat 点も双曲線の上にある。灰色の破線は直交する 2 本の漸近線
thm-kie-concur の $K(\theta)$ で、特別な $\theta$ に対応する点を並べる。$\theta\to\pm90^\circ$ は $t\to\pm\infty$ で、$K(\theta)$ の式の分子と分母を $t^2$ で割って極限をとると $\left(p,\dfrac{1-p^2}q\right)=H$ になる。
| 底角 $\theta$ | 立てる二等辺三角形 | 3 本の直線 | 交点 $K(\theta)$ |
|---|---|---|---|
| $0^\circ$ | つぶれて辺の中点 | 中線 | 重心 $G$ |
| $30^\circ$ | 外側の正三角形の中心 | 頂点と中心を結ぶ直線 | 外側の正三角形の中心による点 |
| $60^\circ$ | 外側の正三角形 | 頂点と 3 つ目の頂点を結ぶ直線 | Fermat 点(すべての角が $120^\circ$ 未満のとき) |
| $\pm90^\circ$(極限) | 高さが限りなく大きい | 垂線に近づく | 垂心 $H$ |
| $-\angle B$($\angle B<90^\circ$ のとき) | 内側、$A'$ が直線 $AB$ の上 | $AA'$ が直線 $AB$ | 頂点 $B$ |
| $D=0$ となる負の角(二等辺三角形でなければ 2 つ) | 内側 | 平行 | なし |
頂点 $A$、$C$ についても同じで、$\theta=-\angle A$ で $K=A$、$\theta=-\angle C$ で $K=C$ である。どれも $t=-\tan\angle B$ のように書ける。$\angle B>90^\circ$ の鈍角のときは $-\tan\angle B=\tan(180^\circ-\angle B)$ なので、外向きの底角 $\theta=180^\circ-\angle B$ で $K=B$ となり、$\angle B=90^\circ$ のときは垂心 $H$ が $B$ に一致する。
$\overrightarrow{CA}=(1,1)$ と $\overrightarrow{CB}=(-2,0)$ のなす角が $\angle C=135^\circ$ である。$p=2$、$q=1$、$t=\tan45^\circ=1$ を代入すると $X=2(1+4+1)=12$、$Y=(1+1)^2-4=0$、$D=1+8+3=12$ で、$K(45^\circ)=(1,0)=C$ である。外向きに底角 $45^\circ$ の二等辺三角形を立てると、3 本が頂点 $C$ で交わる。
thm-kie-concur と thm-kie-hyperbola の仮定を外すと何が崩れるかを並べる。
| 外す条件 | 反例 | 成り立たなくなること |
|---|---|---|
| 3 つの底角が等しい | $AA'$、$BB'$ は底角 $45^\circ$、$CC'$ だけ底角 $0^\circ$(中線) | 3 本が 1 点で交わる |
| 二等辺三角形でない | $A(0,2)$、$B(-1,0)$、$C(1,0)$ | 交点の軌跡が直角双曲線になる |
ex-kie-start の三角形で、$A'$、$B'$ は底角 $45^\circ$ のまま、$C'$ だけを底角 $0^\circ$、つまり辺 $AB$ の中点 $\left(-\dfrac14,\dfrac34\right)$ にする。$AA'$ と $BB'$ の交点は ex-kie-start と同じ $\left(\dfrac7{23},\dfrac{12}{23}\right)$ である。一方、直線 $CC'$ は $C(1,0)$ と $\left(-\dfrac14,\dfrac34\right)$ を通るので $y=-\dfrac35(x-1)$ で、$x=\dfrac7{23}$ では
$$
y=-\frac35\left(\frac7{23}-1\right)=\frac{48}{115}\ne\frac{60}{115}=\frac{12}{23}
$$
である。3 本は 1 点で交わらない。thm-kie-concur の証明の段 2 と段 3 は、3 つの頂点の $t$ が同じであることを使っている。
$AB=AC$ の二等辺三角形 $A(0,2)$、$B(-1,0)$、$C(1,0)$ では $p=0$、$q=2$ である。thm-kie-concur の式で $X=0$、$Y=(2+t)^2$、$D=2t^2+7t+6=(2t+3)(t+2)$ なので
$$
K(\theta)=\left(0,\ \frac{t+2}{2t+3}\right)
$$
で($t\ne-2$。$t=-2$ では $A'=(0,2)=A$ となり直線 $AA'$ が決まらない)、交点はすべて対称軸 $x=0$ の上にある。$t=0$ で $\left(0,\dfrac23\right)=G$、$t\to\pm\infty$ で $\left(0,\dfrac12\right)=H$ である。
thm-kie-hyperbola の $\Phi$ は $p=0$ で $\Phi=(q^2-3)\,xy=xy$ となり、$\Phi=0$ は 2 本の直線 $x=0$(対称軸)と $y=0$(辺 $BC$ を含む直線)である。2 本は直交しているが、双曲線ではない。$BA=BC$ や $CA=CB$ の二等辺三角形でも、thm-kie-hyperbola の証明の段 4 の値 $F(x_0,y_0)$ が $0$ になり、曲線は直交する 2 本の直線につぶれる。
底角をそろえないと、2 本の直線の交点(赤)を 3 本目の直線(中線)が通らない(右下は交点の付近の拡大)
二等辺三角形では、底角をいろいろに変えた交点(点)がすべて対称軸の上に並ぶ
thm-kie-concur の $K(\theta)$ の式は、座標の置き方に依存していて、3 つの頂点の役割が対等に見えない。頂点の重み付きの平均で書くと、対等な形になる。
$\cot$ を $\dfrac1{\tan}$ として、$t=\tan\theta$ について
$$
w_A=\frac1{1+t\cot A},\qquad w_B=\frac1{1+t\cot B},\qquad w_C=\frac1{1+t\cot C}
$$
とおくと
$$
K(\theta)=\frac{w_AA+w_BB+w_CC}{w_A+w_B+w_C}
$$
である(分母が $0$ でないとき。lem-kie-coords の座標で $\cot A=\dfrac{p^2+q^2-1}{2q}$、$\cot B=\dfrac{p+1}q$、$\cot C=\dfrac{1-p}q$ を代入し、thm-kie-concur の式と一致することを計算で確かめられる)。比 $(w_A:w_B:w_C)$ を点の 重心座標 という(Cevaの定理(高校数学))。
この形では、特別な点がすぐ読める。$t=0$ では $(1:1:1)$ で重心 $G$、$t\to\pm\infty$ では $(\tan A:\tan B:\tan C)$ で垂心 $H$(垂心の重心座標、三角形の五心)、$t=-\tan A$ では $w_A$ の分母が $0$ になり、比は $(1:0:0)$、つまり頂点 $A$ に近づく。
3 本が 1 点で交わる理由も見える。$A'$ の重心座標は、$w_B:w_C$ にあたる比が $(1+t\cot C):(1+t\cot B)$ となる(この記事では計算を省く)。重心座標の第 2・第 3 成分の比が一定の点の集まりは $A$ を通る直線なので、$K(\theta)$ も $A'$ も、$A$ を通る同じ直線の上にある。$B$、$C$ についても同じで、対等な式 1 つが 3 本の直線すべての上にある。
鋭角三角形で $0^\circ<\theta<90^\circ$ とする。このとき直線 $AA'$ は辺 $BC$ と $B$、$C$ 以外の点で交わる($\theta$ が $0^\circ$ から $90^\circ$ へ増えると、$AA'$ の向きは中線の向きから垂線の向きへ動き、鋭角三角形ではどちらも角 $A$ の内部にある。この記事ではこの点の細部を証明しない)。三角形 $ABA'$ で正弦定理を使うと $\dfrac{BA'}{\sin\angle BAA'}=\dfrac{AA'}{\sin\angle ABA'}$ で、$\angle ABA'=\angle B+\theta$ である。三角形 $ACA'$ でも $\dfrac{CA'}{\sin\angle CAA'}=\dfrac{AA'}{\sin(\angle C+\theta)}$ である。$BA'=CA'$ なので、2 式から
$$\frac{\sin\angle BAA'}{\sin\angle A'AC}=\frac{\sin(\angle B+\theta)}{\sin(\angle C+\theta)}$$
である。$B$、$C$ でも同じ式を作って 3 つを掛けると、分子と分母が打ち消し合って $1$ になる。三角関数形のCevaの定理 により 3 本は 1 点で交わる。この証明は、Ceva 線の足が辺の上にくる場合にしか使えない。鈍角三角形や $\theta<0$ も含めて示すために、本文では座標を使った。
Wei26 には、Kiepert の双曲線について次のことが述べられている(この記事では証明しない)。2 つの Fermat 点($\theta=\pm60^\circ$ の交点)と 2 つの Napoleon 点($\theta=\pm30^\circ$ の交点)を通ること。直角双曲線で、その中心が Kiepert の中心と呼ばれる点であること。等角共役(等角共役)で移すと Brocard 軸と呼ばれる直線になること。前の 2 つのうち、双曲線の上にあることは thm-kie-concur と thm-kie-hyperbola に含まれている。
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