レムニスケート

同義語:Bernoulliのレムニスケートlemniscate

概要

レムニスケート(lemniscate)とは、$a>0$ に対し、2 点 $\left(\pm\frac{a}{\sqrt2},0\right)$ からの距離の積が $\frac{a^2}{2}$ である点の集まりで、直交座標では $(x^2+y^2)^2=a^2(x^2-y^2)$、極座標では $r^2=a^2\cos2\theta$ と表される 8 の字の曲線である。原点を中心とする半径 $a$ の円に関して直角双曲線 $x^2-y^2=a^2$ を反転すると、原点を除いたレムニスケートになる。全長は広義積分 $4a\int_0^1\frac{dt}{\sqrt{1-t^4}}=5.2441\ldots\times a$ で、$4a$ 以上 $8a$ 以下である。この被積分関数の原始関数は初等関数では表せない。距離の積を別の値にした曲線(Cassini の卵形線)は原点を通らない。

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{div}[0]{\mathbin{÷}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: 極座標と極方程式, 円に関する反転, 媒介変数表示と曲線の長さ, 2次曲線の焦点と準線

高校での出発点:2 点からの距離の積が一定の点

2 点 $F_1$、$F_2$ からの距離の 和 が一定の点の集まりは楕円、距離の 差 が一定の点の集まりは双曲線である(2次曲線の焦点と準線)。では、距離の 積 が一定の点の集まりはどんな図形になるだろうか。
$F_1\left(-\dfrac1{\sqrt2},0\right)$、$F_2\left(\dfrac1{\sqrt2},0\right)$ とし、$PF_1\cdot PF_2=\dfrac12$ となる点 $P$ を探す。積の値 $\dfrac12$ は、2 点の中点(原点 $O$)での積 $OF_1\cdot OF_2=\dfrac1{\sqrt2}\cdot\dfrac1{\sqrt2}$ に合わせた。

距離の積が $\dfrac12$ になる点
  1. 原点 $O$:$OF_1\cdot OF_2=\dfrac1{\sqrt2}\cdot\dfrac1{\sqrt2}=\dfrac12$ である。
  2. 点 $(1,0)$:距離は $1+\dfrac1{\sqrt2}$ と $1-\dfrac1{\sqrt2}$ で、積は $1-\dfrac12=\dfrac12$ である。
  3. 点 $P\left(\dfrac{\sqrt6}4,\dfrac{\sqrt2}4\right)$:
    $$ PF_2^2=\left(\frac{\sqrt6}4-\frac{\sqrt2}2\right)^2+\frac2{16}=\frac6{16}-\frac{\sqrt{12}}4+\frac12+\frac2{16}=1-\frac{\sqrt3}2 $$
    で、同じ計算で $PF_1^2=1+\dfrac{\sqrt3}2$ である。よって $(PF_1\cdot PF_2)^2=\left(1+\dfrac{\sqrt3}2\right)\left(1-\dfrac{\sqrt3}2\right)=1-\dfrac34=\dfrac14$、$PF_1\cdot PF_2=\dfrac12$ である。
  4. $y$ 軸の上の点 $(0,y)$($y\ne0$):距離はどちらも $\sqrt{\dfrac12+y^2}$ で、積は $\dfrac12+y^2>\dfrac12$ である。原点以外の $y$ 軸の点は条件を満たさない。

条件を満たす点をすべて集めると、図 1 のような横向きの 8 の字になる。これを レムニスケート という。
2 点 F1、F2 からの距離の積が 1/2 の点の集まり。原点 O で交差する 8 の字で、点 P は y 座標が最大の点 2 点 F1、F2 からの距離の積が 1/2 の点の集まり。原点 O で交差する 8 の字で、点 P は y 座標が最大の点
極座標と極方程式 の注意「レムニスケートは距離の積が一定の点の集まり」で見たように、この図形は極方程式 $r^2=\cos2\theta$ で表される。この記事で答える問いは次の 3 つである。

  1. レムニスケートは、よく知っている曲線からどう作れるか。→ thm-lemn-inversion
  2. レムニスケートの全長はいくらか。→ thm-lemn-length
  3. 距離の積の値を変えるとどうなるか。→ ex-lemn-cx-cassini
    高校の計算この記事の言葉大学の言葉
    距離の積 $PF_1\cdot PF_2$レムニスケートの定義Cassini の卵形線の特別な場合
    $x=\dfrac{X}{X^2+Y^2}$、$y=\dfrac{Y}{X^2+Y^2}$円に関する反転直角双曲線の反転曲線
    曲線の長さ $\displaystyle\int\sqrt{x'^2+y'^2}\,dt$全長 $4a\displaystyle\int_0^1\frac{dt}{\sqrt{1-t^4}}$楕円積分とレムニスケート定数

定義と、3 通りの式

レムニスケート

$a>0$ とし、$F_1\left(-\dfrac a{\sqrt2},0\right)$、$F_2\left(\dfrac a{\sqrt2},0\right)$ とする。$PF_1\cdot PF_2=\dfrac{a^2}2$ を満たす点 $P$ 全体の集まりを レムニスケート(lemniscate、Bernoulli のレムニスケート)という。$F_1$、$F_2$ をその 焦点 という。

積の値 $\dfrac{a^2}2$ は、焦点の中点 $O$ での積 $\dfrac a{\sqrt2}\cdot\dfrac a{\sqrt2}$ に等しい。つまり、レムニスケートは焦点の中点を通るように積の値を決めた曲線である。

レムニスケートの直交座標と極座標の式

点 $P(x,y)$ がレムニスケート(def-lemn)の上にあることは、次のそれぞれと同値である。
(1) $\left(x^2+y^2\right)^2=a^2\left(x^2-y^2\right)$。
(2) $P$ が原点であるか、または $P$ の極座標 $(r,\theta)$($r>0$)が $r^2=a^2\cos2\theta$ を満たす。

距離の 2 乗の積を展開する

段 1((1))。$c=\dfrac a{\sqrt2}$ とおく($2c^2=a^2$)。$(x\mp c)^2+y^2=\left(x^2+y^2+c^2\right)\mp2cx$ なので、和と差の積の公式から
$$ PF_1^2\cdot PF_2^2=\left(x^2+y^2+c^2\right)^2-4c^2x^2=\left(x^2+y^2\right)^2+2c^2\left(x^2+y^2\right)+c^4-4c^2x^2=\left(x^2+y^2\right)^2-2c^2\left(x^2-y^2\right)+c^4 $$
である。$2c^2=a^2$、$c^4=\dfrac{a^4}4$ だから、$PF_1^2\cdot PF_2^2=\dfrac{a^4}4$ は $\left(x^2+y^2\right)^2=a^2\left(x^2-y^2\right)$ と同値である。距離の積は $0$ 以上なので、$PF_1\cdot PF_2=\dfrac{a^2}2$ はその 2 乗が $\dfrac{a^4}4$ であることと同値である。
段 2((2))。原点は (1) を満たす。原点以外の点を $x=r\cos\theta$、$y=r\sin\theta$($r>0$)と書くと、$x^2+y^2=r^2$、$x^2-y^2=r^2\left(\cos^2\theta-\sin^2\theta\right)=r^2\cos2\theta$ なので、(1) は $r^4=a^2r^2\cos2\theta$ となる。$r>0$ で割って $r^2=a^2\cos2\theta$ を得る。逆もこの計算を逆にたどればよい。

prop-lemn-equations (2) で原点を別に扱ったのは、原点では極座標の $\theta$ が決まらないからである。原点は、$\theta=\dfrac\pi4$ として $r=0$ を $r^2=a^2\cos2\theta$ に代入した点と考えてもよい。以下では、極座標と極方程式 と同じく $r\ge0$ の約束で、レムニスケートを極方程式 $r^2=a^2\cos2\theta$ で表す。

形を読む

$a=1$ のとき、$r^2=\cos2\theta$ の点を並べる。

$\theta$$0$$\dfrac\pi{12}$$\dfrac\pi8$$\dfrac\pi6$$\dfrac\pi4$
$r^2=\cos2\theta$$1$$\dfrac{\sqrt3}2$$\dfrac{\sqrt2}2$$\dfrac12$$0$
$r$$1$$0.9306\ldots$$0.8409\ldots$$0.7071\ldots$$0$
  1. 向き:$r^2=\cos2\theta\ge0$ が必要なので、点があるのは $-\dfrac\pi4\le\theta\le\dfrac\pi4$(右の輪)と $\dfrac{3\pi}4\le\theta\le\dfrac{5\pi}4$(左の輪)の向きだけである。
  2. 大きさ:$r^2=\cos2\theta\le1$ なので、どの点も原点からの距離が $1$ 以下で、距離 $1$ になるのは $(\pm1,0)$ だけである。一般の $a$ では、どの点も原点から距離 $a$ 以下で、$(\pm a,0)$ で距離 $a$ になる。
  3. いちばん高い点:$y^2=r^2\sin^2\theta=\cos2\theta\sin^2\theta=\left(1-2\sin^2\theta\right)\sin^2\theta$ である。$s=\sin^2\theta$ とおくと $(1-2s)s=-2\left(s-\dfrac14\right)^2+\dfrac18$ なので、$y^2$ は $s=\dfrac14$、つまり $\theta=\dfrac\pi6$ で最大値 $\dfrac18$ をとる。いちばん高い点は $\left(\dfrac{\sqrt6}4,\dfrac{\sqrt2}4\right)$ で、ex-lemn-start (3) の点 $P$ である。高さ $\dfrac{\sqrt2}4=\dfrac1{2\sqrt2}$ は、横幅の半分 $1$ の約 $0.354$ 倍である。
  4. 面積:極座標で表された図形の面積 の例「公式を使う面積の計算」で、$a=1$ のとき 2 つの輪を合わせた面積が $1$ と求めた。一般の $a$ では各点を原点から $a$ 倍した図形なので、面積は $a^2$ である。

レムニスケートは $x$ 軸と $y$ 軸の両方について対称である(prop-lemn-equations (1) の式で $x$ を $-x$ に、$y$ を $-y$ に変えても式が変わらない)。

主定理 1:直角双曲線を反転するとレムニスケート

円に関する反転 で扱ったように、中心 $O$、半径 $a$ の円に関する反転は、$O$ と異なる点 $P$ を、半直線 $OP$ の上で $OP\cdot OP'=a^2$ となる点 $P'$ に移す。$O$ を原点とすると、座標では
$$ P=(x,y)\ \longmapsto\ P'=\left(\frac{a^2x}{x^2+y^2},\ \frac{a^2y}{x^2+y^2}\right) $$
で、反転を 2 回続けるともとの点にもどる(円に関する反転 の命題「反転の基本的な性質」)。極座標で書くと、向き $\theta$ は変えずに、原点からの距離 $r$ を $\dfrac{a^2}r$ に変える写像である:$(r,\theta)\longmapsto\left(\dfrac{a^2}r,\theta\right)$。
漸近線が直交する双曲線 $x^2-y^2=a^2$ を 直角双曲線 という。

直角双曲線の反転はレムニスケート

$a>0$ とする。中心 $O$(原点)、半径 $a$ の円に関する反転は、直角双曲線 $x^2-y^2=a^2$ を、レムニスケート $\left(x^2+y^2\right)^2=a^2\left(x^2-y^2\right)$ から原点を除いた図形に移す。この対応は 1 対 1 で、双曲線の右の枝($x>0$)は右の輪に、左の枝は左の輪に移る。

極座標で距離を逆数にする

段 1(双曲線の極座標の式)。双曲線 $x^2-y^2=a^2$ は原点を通らない($0-0\ne a^2$)。その点を極座標 $(r,\theta)$($r>0$)で書くと、$x^2-y^2=r^2\cos2\theta$ なので、双曲線の式は
$$ r^2\cos2\theta=a^2 $$
となる。右辺が正なので $\cos2\theta>0$ であり、$r^2=\dfrac{a^2}{\cos2\theta}$ である。
段 2(像はレムニスケートの上)。双曲線の点 $(r,\theta)$ の反転は $(\rho,\theta)$、$\rho=\dfrac{a^2}r$ である。段 1 から
$$ \rho^2=\frac{a^4}{r^2}=a^4\cdot\frac{\cos2\theta}{a^2}=a^2\cos2\theta $$
で、$\rho>0$ なので、像は原点以外のレムニスケートの点である(prop-lemn-equations (2))。
段 3(レムニスケートのどの点も像になる)。原点以外のレムニスケートの点 $(\rho,\theta)$ をとると、$\rho^2=a^2\cos2\theta$、$\rho>0$ なので $\cos2\theta=\dfrac{\rho^2}{a^2}>0$ である。この点を反転した点 $\left(r,\theta\right)$、$r=\dfrac{a^2}\rho$ は
$$ r^2\cos2\theta=\frac{a^4}{\rho^2}\cdot\frac{\rho^2}{a^2}=a^2 $$
を満たすので双曲線の上にあり、反転を 2 回続けるともとにもどるから、その像が $(\rho,\theta)$ である。
段 4(1 対 1 と枝の行き先)。反転は 2 回続けるともとにもどるので、違う 2 点を同じ点に移さない。よって双曲線の点とレムニスケートの原点以外の点は 1 対 1 に対応する。反転は向き $\theta$ を変えないので、右の枝($-\dfrac\pi4<\theta<\dfrac\pi4$ の向きにある)は同じ向きの右の輪に、左の枝は左の輪に移る。$\square$

双曲線の点を反転する

$a=1$ とする。双曲線 $x^2-y^2=1$ の点は、正の数 $s$ を使って $\left(\dfrac{s+s^{-1}}2,\ \dfrac{s-s^{-1}}2\right)$ と書ける($x^2-y^2=\dfrac{\left(s+s^{-1}\right)^2-\left(s-s^{-1}\right)^2}4=\dfrac{4}{4}=1$)。

$s$双曲線の点 $P$$x^2+y^2$反転した点 $P'$
$1$$(1,0)$$1$$(1,0)$
$2$$\left(\dfrac54,\dfrac34\right)$$\dfrac{17}8$$\left(\dfrac{10}{17},\dfrac6{17}\right)$
$3$$\left(\dfrac53,\dfrac43\right)$$\dfrac{41}9$$\left(\dfrac{15}{41},\dfrac{12}{41}\right)$
$10$$\left(\dfrac{101}{20},\dfrac{99}{20}\right)$$\dfrac{10001}{200}$$\left(\dfrac{1010}{10001},\dfrac{990}{10001}\right)$

たとえば $s=2$ では $x^2+y^2=\dfrac{25}{16}+\dfrac9{16}=\dfrac{34}{16}=\dfrac{17}8$ なので、$P'=\left(\dfrac54\cdot\dfrac8{17},\ \dfrac34\cdot\dfrac8{17}\right)=\left(\dfrac{10}{17},\dfrac6{17}\right)$ である。これがレムニスケートの上にあることを確かめる:$x^2+y^2=\dfrac{100+36}{289}=\dfrac{136}{289}=\dfrac8{17}$、$x^2-y^2=\dfrac{100-36}{289}=\dfrac{64}{289}$ で、$\left(\dfrac8{17}\right)^2=\dfrac{64}{289}$ である。
頂点 $(1,0)$ は反転の円の上にあるので動かない。$s$ が大きくなると、双曲線の点は漸近線 $y=x$ に沿って遠ざかり、反転した点は原点に近づく($s=10$ で $(0.1009\ldots,\ 0.0989\ldots)$)。その向きは $45^\circ$ に近づく。レムニスケートが原点を直線 $y=\pm x$ の向きに通るのは、双曲線が漸近線 $y=\pm x$ に近づくことを反転で見たものである。

直角双曲線 x^2−y^2=1(青)、反転の円(灰色の破線)、その反転のレムニスケート(赤)。同じ色の点は同じ半直線の上にあって反転で対応し、頂点 (1,0) は動かない 直角双曲線 x^2−y^2=1(青)、反転の円(灰色の破線)、その反転のレムニスケート(赤)。同じ色の点は同じ半直線の上にあって反転で対応し、頂点 (1,0) は動かない
図 2 のとおり、双曲線の頂点の近くはレムニスケートの端 $(\pm a,0)$ の近くに、双曲線の遠くの部分は原点の近くに移る。双曲線は無限に遠くまで伸びているが、反転するとその遠い部分が原点の 1 点に集まって、閉じた 8 の字になる。

主定理 2:全長

円の長さは $\pi$ で表される。レムニスケートの全長を、媒介変数表示と曲線の長さ の長さの公式で求める。そのために、原点からの距離を媒介変数にとる。

原点からの距離で表した媒介変数表示

$a>0$ とする。$0\le t\le1$ に対して
$$ x(t)=a\,t\sqrt{\frac{1+t^2}2},\qquad y(t)=a\,t\sqrt{\frac{1-t^2}2} $$
とおくと、点 $\bigl(x(t),y(t)\bigr)$ は、レムニスケート $r^2=a^2\cos2\theta$ の第 1 象限の部分($0\le\theta\le\dfrac\pi4$ の部分)を、原点($t=0$)から $(a,0)$($t=1$)まで 1 回ずつ通る。原点からの距離は $at$ である。さらに $0\le t<1$ で
$$ x'(t)^2+y'(t)^2=\frac{a^2}{1-t^4} $$
が成り立つ。

半角の公式で向きを消す

段 1(曲線の上にあること)。$x^2+y^2=a^2t^2\left(\dfrac{1+t^2}2+\dfrac{1-t^2}2\right)=a^2t^2$ なので、原点からの距離は $r=at$ である。$x^2-y^2=a^2t^2\cdot t^2=a^2t^4$ で、$\left(x^2+y^2\right)^2=a^4t^4=a^2\left(x^2-y^2\right)$ だから、点はレムニスケートの上にある。$x\ge0$、$y\ge0$ なので第 1 象限にある。
段 2(1 回ずつ通ること)。第 1 象限の点 $(r,\theta)$($0\le\theta\le\dfrac\pi4$、$r=a\sqrt{\cos2\theta}$)に対して $t=\dfrac ra=\sqrt{\cos2\theta}$ とおくと、半角の公式から
$$ \cos^2\theta=\frac{1+\cos2\theta}2=\frac{1+t^2}2,\qquad \sin^2\theta=\frac{1-\cos2\theta}2=\frac{1-t^2}2 $$
なので、$x=r\cos\theta=x(t)$、$y=r\sin\theta=y(t)$ である。$\theta$ が $0$ から $\dfrac\pi4$ まで増えると $\cos2\theta$ は $1$ から $0$ まで減るので、$t$ は $1$ から $0$ まで 1 回ずつ値をとる。
段 3(速さ)。$0\le t<1$ で微分すると
$$ x'(t)=a\left(\sqrt{\frac{1+t^2}2}+\frac{t^2}{\sqrt{2\left(1+t^2\right)}}\right)=\frac{a\left(1+2t^2\right)}{\sqrt{2\left(1+t^2\right)}},\qquad y'(t)=\frac{a\left(1-2t^2\right)}{\sqrt{2\left(1-t^2\right)}} $$
である($y'$ も同じ計算で、$t^2$ の前の符号が変わる)。よって
$$ x'^2+y'^2=\frac{a^2}2\left(\frac{\left(1+2t^2\right)^2}{1+t^2}+\frac{\left(1-2t^2\right)^2}{1-t^2}\right)=\frac{a^2}2\cdot\frac{\left(1+2t^2\right)^2\left(1-t^2\right)+\left(1-2t^2\right)^2\left(1+t^2\right)}{1-t^4} $$
である。分子を展開すると $\left(1+3t^2-4t^6\right)+\left(1-3t^2+4t^6\right)=2$ なので、$x'^2+y'^2=\dfrac{a^2}{1-t^4}$ である。$\square$

$t=1$(点 $(a,0)$)では $y'(t)$ の分母が $0$ になり、式が使えない。点 $(a,0)$ でレムニスケートの接線は縦($y$ 軸に平行)になるからである。そこで、$t=1$ の近くを別に扱う。

レムニスケートの全長

レムニスケート $r^2=a^2\cos2\theta$($a>0$)の全長 $L$ は、広義積分
$$ L=4a\int_0^1\frac{dt}{\sqrt{1-t^4}} $$
に等しい。この広義積分は収束し、$4a\le L\le8a$ である。数値では $L=5.24411\ldots\times a$ である。

端の近くを切り分けて極限をとる

段 1(4 等分)。レムニスケートは $x$ 軸と $y$ 軸について対称なので、4 つの象限の部分は互いに合同で、同じ長さをもつ。第 1 象限の部分の長さを $L_1$ とすると $L=4L_1$ である。
段 2(端を除いた長さ)。$0< T<1$ とする。lem-lemn-param の媒介変数表示は $0\le t\le T$ で微分可能で導関数が連続なので、媒介変数表示と曲線の長さ の定理「曲線の長さの公式」により、$t=0$ から $t=T$ までの部分の長さは
$$ L_1(T)=\int_0^T\sqrt{x'^2+y'^2}\,dt=a\int_0^T\frac{dt}{\sqrt{1-t^4}} $$
である。
段 3(残りの短い部分)。$t=T$ から $t=1$ までの残りの部分の長さを $R(T)$ とすると、長さの加法性(媒介変数表示と曲線の長さ の補題「長さの加法性」)により $L_1=L_1(T)+R(T)$ である。$T\ge\dfrac1{\sqrt2}$ のとき、$T\le t<1$ で $x'(t)>0$、$y'(t)\le0$ なので、この部分では $x$ は増え続け、$y$ は減り続ける。このような部分の長さは、$x$ の増えた量と $y$ の減った量の和以下である。部分を折れ線で近似したとき、各線分の長さは(三平方の定理と $\sqrt{p^2+q^2}\le\lvert p\rvert+\lvert q\rvert$ から)$x$ の変化の大きさと $y$ の変化の大きさの和以下である。$x$ も $y$ も向きを変えずに動くので、変化の大きさを全部の線分で足すと、それぞれ端から端までの変化の大きさになる。曲線の長さは折れ線の長さの上限なので、同じ上界をもつ。
よって $0\le R(T)\le\bigl(a-x(T)\bigr)+y(T)$ で、$T\to1$ のとき右辺は $(a-a)+0=0$ に近づく。
段 4(極限)。$L_1(T)=L_1-R(T)$ なので、$T\to1$ のとき $L_1(T)\to L_1$ である。これは広義積分 $a\displaystyle\int_0^1\frac{dt}{\sqrt{1-t^4}}$ が収束して、その値が $L_1$ であることを意味する。よって $L=4L_1=4a\displaystyle\int_0^1\frac{dt}{\sqrt{1-t^4}}$ である。
段 5(上下の評価)。$0\le t<1$ で $1-t^4=(1-t)(1+t)\left(1+t^2\right)$ であり、$1\le(1+t)\left(1+t^2\right)\le4$ なので
$$ \frac1{2\sqrt{1-t}}\le\frac1{\sqrt{1-t^4}}\le\frac1{\sqrt{1-t}} $$
である。$\displaystyle\int_0^T\frac{dt}{\sqrt{1-t}}=\Bigl[-2\sqrt{1-t}\Bigr]_0^T=2-2\sqrt{1-T}$ で、$T\to1$ のとき $2$ に近づく。よって
$$ 1\le\int_0^1\frac{dt}{\sqrt{1-t^4}}\le2 $$
となり、$4a\le L\le8a$ である。数値の $5.24411\ldots\times a$ は、計算機で積分を数値計算した値である。$\square$

レムニスケートの第 1 象限の部分(赤)を、原点からの距離 t で表した図。t=1 の点 (1,0) で接線が縦になる レムニスケートの第 1 象限の部分(赤)を、原点からの距離 t で表した図。t=1 の点 (1,0) で接線が縦になる

全長を円と比べる

$a=1$ とする。レムニスケートは半径 $1$ の円の中にあり(ex-lemn-shape (2))、全長は $5.2441\ldots$ である。半径 $1$ の円周は $2\pi=6.2831\ldots$ なので、その約 $0.83$ 倍である。
円の $\dfrac14$ の長さも同じ形の積分で書ける。単位円の第 1 象限の部分を $(\sqrt{1-t^2},\ t)$($0\le t\le1$)と表すと、速さは $\dfrac1{\sqrt{1-t^2}}$ で、長さは
$$ \int_0^1\frac{dt}{\sqrt{1-t^2}}=\frac\pi2=1.5707\ldots $$
である($t=\sin\varphi$ と置換すると $\displaystyle\int_0^{\pi/2}d\varphi$ になる)。レムニスケートでは根号の中の $t^2$ が $t^4$ に変わり、$\displaystyle\int_0^1\frac{dt}{\sqrt{1-t^4}}=1.3110\ldots$ となる。$1-t^4\ge1-t^2$ なので、レムニスケートの方が小さい。

図 4 は被積分関数 $\dfrac1{\sqrt{1-t^4}}$ のグラフで、$t=1$ に近づくと限りなく大きくなるが、prf-thm-lemn-length の段 5 の 2 つの関数にはさまれていて、下の面積は有限($1.3110\ldots$)である。
被積分関数 1/√(1−t⁴)(赤)は、1/√(1−t)(青の破線)と 1/(2√(1−t))(緑の点線)の間にある。赤の下の面積が 1/4 の弧の長さ(a=1) 被積分関数 1/√(1−t⁴)(赤)は、1/√(1−t)(青の破線)と 1/(2√(1−t))(緑の点線)の間にある。赤の下の面積が 1/4 の弧の長さ(a=1)
$\dfrac1{\sqrt{1-t^4}}$ の原始関数は、初等関数(多項式・指数関数・対数関数・三角関数とその逆関数を、四則演算と合成で組み合わせた関数)では表せない。この事実は 初等関数で表せない原始関数 で扱う(この記事では証明しない)。そのため、積分の値は原始関数に代入して求めることができず、全長を表すのに名前のついた定数が使われる(rem-lemn-constant)。

距離の和・差・積

2 点 $F_1(-c,0)$、$F_2(c,0)$($c>0$)からの距離で決まる曲線を比べる。距離の積が一定の点の集まり $PF_1\cdot PF_2=b^2$($b>0$)を Cassini の卵形線 という。レムニスケートは $b=c$ の場合である(def-lemn で $c=\dfrac a{\sqrt2}$、$b^2=\dfrac{a^2}2$)。

楕円双曲線Cassini の卵形線レムニスケート
条件$PF_1+PF_2=2p$($p>c$)$\lvert PF_1-PF_2\rvert=2p$($0< p< c$)$PF_1\cdot PF_2=b^2$$PF_1\cdot PF_2=c^2$
中点 $O$ を通るか通らない通らない$b=c$ のときだけ通る通る(交差する)
$y$ 軸との共有点2 点なし$b< c$ ではなし、$b>c$ では 2 点原点だけ
直交座標の式2 次2 次4 次4 次

Cassini の卵形線の式は、prf-prop-lemn-equations の段 1 と同じ展開で $\left(x^2+y^2\right)^2-2c^2\left(x^2-y^2\right)+c^4=b^4$ となる。図 5 は $c^2=\dfrac12$ で積の値を変えたものである。
焦点 (±1/√2, 0) からの距離の積が 0.25、0.5、0.75、1 の点の集まり。0.5 のときがレムニスケート(赤)で、0.25 では 2 つの卵形に分かれ、0.75 と 1 では 1 つの閉じた曲線になる 焦点 (±1/√2, 0) からの距離の積が 0.25、0.5、0.75、1 の点の集まり。0.5 のときがレムニスケート(赤)で、0.25 では 2 つの卵形に分かれ、0.75 と 1 では 1 つの閉じた曲線になる

例と反例

主定理の条件を外すと何が崩れるかを並べる。

外す条件反例成り立たなくなること
距離の積を焦点の中点での値 $c^2$ にする積を $\dfrac14$ や $\dfrac34$ にする($c^2=\dfrac12$)原点で交差する 8 の字になる
反転の中心を双曲線の中心にとる頂点 $(1,0)$ を中心に反転する像がレムニスケートになる
双曲線が直角双曲線$x^2-\dfrac{y^2}4=1$ を反転する像がレムニスケートになる
反例:積の値を変える

$c^2=\dfrac12$ とし、$PF_1\cdot PF_2=b^2$ の曲線を調べる。式は $\left(x^2+y^2\right)^2-\left(x^2-y^2\right)+\dfrac14=b^4$ である。原点では左辺が $\dfrac14$ なので、原点を通るのは $b^4=\dfrac14$、つまり $b^2=\dfrac12$(レムニスケート)のときだけである。
(1) $b^2=\dfrac14$。$y=0$ とおくと $\left(x^2-\dfrac12\right)^2=\dfrac1{16}$ で、$x^2=\dfrac34$ または $\dfrac14$、つまり $x=\pm\dfrac{\sqrt3}2,\ \pm\dfrac12$ である。$x=0$ とおくと $\left(y^2+\dfrac12\right)^2=\dfrac1{16}$ で、$y^2=-\dfrac14$ または $y^2=-\dfrac34$ となり、どちらも解がない。曲線は $y$ 軸と交わらないので、$x>0$ の部分と $x<0$ の部分に分かれる(図 5 の青の 2 つの卵形。どちらの部分も $x$ 軸と 2 点で交わる)。
(2) $b^2=\dfrac34$。$y=0$ では $x^2=\dfrac54$($x^2=-\dfrac14$ は解でない)、$x=0$ では $y^2=\dfrac14$、$y=\pm\dfrac12$ である。曲線は $y$ 軸と交わるが原点は通らない。図 5 の緑の破線のように、原点を囲む 1 つの閉じた曲線になる。
どちらも原点で交差する 8 の字ではない。距離の積の値を焦点の中点での値 $c^2$ に合わせたことが、8 の字になるための条件だった。

反例:反転の中心を頂点にとる

$a=1$ とし、双曲線 $x^2-y^2=1$ を、頂点 $C(1,0)$ を中心とする半径 $1$ の円に関して反転する。$s=1.1$ の双曲線の点(ex-lemn-inversion の書き方)は $P\left(\dfrac{221}{220},\dfrac{21}{220}\right)$ で、$C$ との距離は
$$ CP=\frac{\sqrt{1^2+21^2}}{220}=\frac{\sqrt{442}}{220}=0.0955\ldots $$
である。反転した点 $P'$ は $CP\cdot CP'=1$ を満たすので、$CP'=10.46\ldots$ である。$s$ を $1$ に近づけると $P$ は $C$ に近づき、$CP'$ はいくらでも大きくなる。像は有界でない(図 6)。
一方、レムニスケート $r^2=a^2\cos2\theta$ のどの点も原点から距離 $a$ 以下にあり(ex-lemn-shape (2))、拡大・縮小・回転・平行移動した図形も有界である。よって、この像はどんな大きさ・位置のレムニスケートでもない。thm-lemn-inversion では、双曲線の中心(原点)が双曲線の上になく、双曲線の遠い部分だけが中心の近くに集まった。

反例:直角でない双曲線を反転する

双曲線 $x^2-\dfrac{y^2}4=1$(漸近線 $y=\pm2x$ は直交しない)を単位円に関して反転する。像の点を $(u,v)$ とすると、もとの点は $\left(\dfrac u{u^2+v^2},\dfrac v{u^2+v^2}\right)$ なので、代入して $\left(u^2+v^2\right)^2$ を掛けると、像の式は
$$ \left(u^2+v^2\right)^2=u^2-\frac{v^2}4 $$
である。極座標では $r^2=\cos^2\theta-\dfrac14\sin^2\theta=\dfrac38+\dfrac58\cos2\theta$ で、点があるのは $\tan^2\theta\le4$ の向きである。これもレムニスケートに似た 8 の字(図 7 の赤)だが、次のようにして、どんな大きさ・位置のレムニスケートでもないことが分かる。
理由の要点:図形の面積と直径(最も離れた 2 点の距離)$d$ の比 $\dfrac{\text{面積}}{d^2}$ は拡大・縮小・回転・平行移動で変わらない。レムニスケートではこの比が $\dfrac14$ だが、この像では $0.3325\ldots$ である。

比の計算を開く

図形の「面積」と「最も離れた 2 点の距離(直径)$d$」の比 $\dfrac{\text{面積}}{d^2}$ は、拡大・縮小・回転・平行移動で変わらない(面積は $\lambda^2$ 倍、長さは $\lambda$ 倍になる)。レムニスケート $r^2=a^2\cos2\theta$ では、面積は $a^2$(ex-lemn-shape (4))、どの点も原点から $a$ 以下なので 2 点の距離は $2a$ 以下で、$(\pm a,0)$ で $2a$ になるから $d=2a$ である。比は $\dfrac{a^2}{4a^2}=\dfrac14$ である。

この像では $r^2\le1$ で $(\pm1,0)$ を通るので $d=2$ である。$\tan\alpha=2$($0<\alpha<\dfrac\pi2$)とすると、右の輪は $-\alpha\le\theta\le\alpha$ の部分で、極座標で表された図形の面積 の公式から、2 つの輪の面積は $$2\cdot\frac12\int_{-\alpha}^{\alpha}\left(\frac38+\frac58\cos2\theta\right)d\theta=\frac34\alpha+\frac58\sin2\alpha=\frac34\alpha+\frac12=1.3303\ldots $$である($\sin2\alpha=\dfrac{2\tan\alpha}{1+\tan^2\alpha}=\dfrac45$、$\alpha=1.1071\ldots$)。比は $\dfrac{1.3303\ldots}4=0.3325\ldots\ne\dfrac14$ なので、この像はレムニスケートではない。

双曲線(青)を頂点 (1,0) を中心とする円(灰色の破線)で反転した像(赤)は、頂点の近くの点が遠くへ移るので有界でない 双曲線(青)を頂点 (1,0) を中心とする円(灰色の破線)で反転した像(赤)は、頂点の近くの点が遠くへ移るので有界でない
双曲線 x^2−y^2/4=1 を単位円で反転した像(赤)と、レムニスケート(灰色の破線)。原点で交差する向きが違う 双曲線 x^2−y^2/4=1 を単位円で反転した像(赤)と、レムニスケート(灰色の破線)。原点で交差する向きが違う

大学数学で見る:レムニスケート定数と楕円積分

レムニスケート定数

thm-lemn-length の積分の 2 倍
$$ 2\int_0^1\frac{dt}{\sqrt{1-t^4}}=2.62205\ldots $$
を レムニスケート定数 という。全長はこの数の $2a$ 倍($5.24411\ldots\times a$)である。ex-lemn-length で見たように、同じ形の積分 $2\displaystyle\int_0^1\frac{dt}{\sqrt{1-t^2}}$ は $\pi$ で、半径 $1$ の円の半周の長さである。Wei26 は、レムニスケート定数がレムニスケートに対して、円に対する $\pi$ と同じような役割を果たすと述べている。

楕円積分と、研究の歴史

$\sqrt{1-t^4}$ のように、根号の中が重根をもたない 3 次・4 次の多項式である積分を 楕円積分 という(初等関数で表せない原始関数)。Wei26 によれば、レムニスケートの一般的な性質は G. Fagnano が 1750 年に見いだし、Euler と Gauss によるレムニスケートの弧長の研究が、のちの楕円関数の研究につながった。同じ頁によれば、この曲線を lemniscus(ラテン語で「垂れ下がるリボン」)と呼んだのは Jakob Bernoulli(1694 年)で、Bernoulli は、この曲線が Cassini が 1680 年に記述していた卵形線の特別な場合であることを知らなかった。

さらに先へ

  • 反転で曲線がきれいに移る例はほかにもある。焦点を極とする放物線 $r=\dfrac1{1-\cos\theta}$(極座標と極方程式 の例「2 次曲線を極方程式で表す」)を単位円で反転すると、距離が逆数になって $r=1-\cos\theta$、つまりカージオイドになる(カージオイド の $r=a(1+\cos\theta)$ を $180^\circ$ 回転した形)。
  • 極方程式 $r=\cos2\theta$ の正葉曲線(正葉曲線)も 8 の字に似た花びらをもつが、$r\ge0$ の約束で残る 2 枚の花びらの面積は合わせて $\dfrac\pi4=0.785\ldots$ で、レムニスケート(面積 $1$)とは別の曲線である。
  • 極方程式で、向きが増えると距離が一定の割合で増える曲線が次に読む 対数螺旋 である。

関連項目

参考文献

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