和と積分の差

同義語:difference between sums and integrals

概要

和と積分の差(difference between sums and integrals)とは、$D_n=\sum_{k=1}^nf(k)-\int_1^nf(x)\,dx$ で、$f$ が $[1,\infty)$ で連続かつ減少し $0$ 以上なら、$D_n$ は減少しながら収束し、極限 $D$ が $0\le D\le f(1)$、$0\le D_n-D\le f(n)$ を満たす。$f(k+1)\le\int_k^{k+1}f\le f(k)$ から従う。系として級数 $\sum f(k)$ と積分 $\int_1^nf$ が同時に収束・発散するという積分判定法と、Euler の定数 $\gamma=\lim(H_n-\log n)$ の存在と $0<\gamma<1$ が従う。$f$ が増加するか負の値に下がり続けると差が発散し、単調でなければ和と積分は別々に収束・発散しうる。

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: 定積分, 数列の極限, 単調関数, はさみうちの原理, 対数関数, 広義積分

和 $\sum_{k=1}^nf(k)$ と積分 $\int_1^nf(x)\,dx$ は、$f$ のグラフの下の「階段」と「曲線」の面積なので、近い値になる。しかし一致はしない。では、その差はどれくらいの大きさで、$n$ を大きくするとどうなるのか。この記事では、$f$ が減少して $0$ 以上の値をとる関数なら、差は $n\to\infty$ で一定の値に収束することを証明する。そこから、級数が収束するかどうかを積分で判定する方法(積分判定法)と、Euler の定数 $\gamma=0.5772\cdots$ が得られる。この記事は 積分と和の類似 から始まる 5 本の記事の 3 本目である。前の 和と積分の対応表 では和と積分の計算規則が似ていることを見た。この記事では、値がどれだけずれるかを調べる。

高校での出発点

和と積分の差を、3 つの関数で計算してみる。

平方数の逆数の和

$f(x)=\frac1{x^2}$ とする。和は $\sum_{k=1}^n\frac1{k^2}=1+\frac14+\frac19+\cdots+\frac1{n^2}$、積分は
$$ \int_1^n\frac{dx}{x^2}=\left[-\frac1x\right]_1^n=1-\frac1n $$
である。差を計算すると(小数第 5 位まで)

$n$$10$$100$$1000$
和$1.54977$$1.63498$$1.64393$
積分$0.9$$0.99$$0.999$
差$0.64977$$0.64498$$0.64493$

で、差は $0.64493\cdots$ に近づいていくように見える。

調和数と対数

$f(x)=\frac1x$ とする。和は調和数 $H_n=1+\frac12+\cdots+\frac1n$、積分は $\int_1^n\frac{dx}x=\log n$ である。

$n$$1$$2$$10$$100$$1000$$10^6$
$H_n-\log n$$1$$0.80685$$0.62638$$0.58221$$0.57772$$0.57722$

和も積分も限りなく大きくなるが、差は減りながら $0.5772\cdots$ に近づいていくように見える。

平方根の和

$f(x)=\sqrt x$ とする。積分は $\int_1^n\sqrt x\,dx=\left[\frac23x^{3/2}\right]_1^n=\frac23\left(n^{3/2}-1\right)$ である。

$n$$100$$10000$
$\sum_{k=1}^n\sqrt k$$671.46$$666716.46$
$\frac23(n^{3/2}-1)$$666.00$$666666.00$
差$5.46$$50.46$

こちらは差がどんどん大きくなる。$n$ を $100$ 倍にすると差はおよそ $10$ 倍になっている。

はじめの 2 つの $f$ は減少し、3 つ目は増加する。この違いが、差が収束するかどうかを分けている。この記事で答える問いは次のとおりである。

  1. 和と積分は、どれだけ違いうるか。→ prop-dsi-compare
  2. $f$ が減少するなら、差は必ず収束するか。→ thm-dsi-difference
  3. 級数 $\sum f(k)$ が収束するかどうかを、積分で判定できるか。→ cor-dsi-integral-test
  4. $H_n-\log n$ の極限は何か。どの範囲にあるか。→ cor-dsi-euler
  5. 仮定(減少、$0$ 以上)を外すと何が起きるか。→ ex-dsi-increasing〜ex-dsi-spikes
    高校の計算大学の概念ボックス
    長方形と曲線の面積を比べて不等式を作る和と積分の比較prop-dsi-compare
    $H_n-\log n$ の極限Euler の定数 $\gamma$cor-dsi-euler
    $\sum\frac1{k^2}$ が $2$ を超えないことを示す積分判定法cor-dsi-integral-test
    減少し下に有界な数列は収束する実数の連続性prf-dsi-difference

和と積分の比較

まず、1 つの小区間の上で、和の 1 項と積分を比べる。この記事では、区間の上で連続な関数の定積分と、その 3 つの性質(定数の積分 $\int_a^bc\,dx=c(b-a)$、区間についての加法性、単調性「$f\le g$ なら $\int_a^bf\le\int_a^bg$」)を、証明せずに使う(連続関数の定積分が定まることとこれらの性質は 区分求積と積分の定義 で扱う)。

和と積分の比較

$f$ は区間 $[m,n]$($m< n$ は整数)で連続で、減少する($x\le y$ ならば $f(x)\ge f(y)$)とする。

  1. $m\le k\le n-1$ の整数 $k$ について $f(k+1)\le\int_k^{k+1}f(x)\,dx\le f(k)$ である。
  2. $\displaystyle\sum_{k=m+1}^nf(k)\le\int_m^nf(x)\,dx\le\sum_{k=m}^{n-1}f(k)$ である。
1 つの小区間で比べて足す

方針:小区間 $[k,k+1]$ の上で $f$ を両端の値ではさみ、積分する。それを足す。
1 について。$k\le x\le k+1$ のとき、$f$ は減少するので $f(k+1)\le f(x)\le f(k)$ である。左辺と右辺は $x$ によらない定数である。積分の単調性により、この不等式を $[k,k+1]$ で積分しても向きは変わらない。定数の積分は「定数 × 幅 $1$」なので
$$ f(k+1)\le\int_k^{k+1}f(x)\,dx\le f(k) $$
である。
2 について。1 の不等式を $k=m,m+1,\dots,n-1$ について足す。左辺の和は $f(m+1)+\cdots+f(n)=\sum_{k=m+1}^nf(k)$、右辺の和は $f(m)+\cdots+f(n-1)=\sum_{k=m}^{n-1}f(k)$ である。真ん中は、区間についての加法性により $\int_m^{m+1}f+\cdots+\int_{n-1}^nf=\int_m^nf$ である。$\square$

高校数学の記事 積分の評価 にも同じ命題があり、そこではほかの見積もりにも使っている。図 1 で見ると、幅 $1$ の長方形を左端の高さ $f(k)$ で立てると曲線からはみ出し、右端の高さ $f(k+1)$ で立てると曲線の下に入る。
y=1/x と、高さ 1/k(k=1,…,6)の長方形。赤い部分は、x=k から x=k+1 までの各小区間で長方形が曲線からはみ出す部分(隙間)である。赤い部分の面積の合計は H_6−log 7 で、和と積分の差 D_7 から最後の項 f(7) を除いたものである y=1/x と、高さ 1/k(k=1,…,6)の長方形。赤い部分は、x=k から x=k+1 までの各小区間で長方形が曲線からはみ出す部分(隙間)である。赤い部分の面積の合計は H_6−log 7 で、和と積分の差 D_7 から最後の項 f(7) を除いたものである

調和数を対数ではさむ

$f(x)=\frac1x$ は $x\ge1$ で連続で減少する。prop-dsi-compare の 2 の右の不等式を $m=1$ と $n+1$ で使うと
$$ \log(n+1)=\int_1^{n+1}\frac{dx}x\le\sum_{k=1}^n\frac1k=H_n $$
である(命題の $n$ に当たる $n+1$ は、$n\ge1$ なら $1$ より大きいので、命題の仮定を満たす)。左の不等式を $n\ge2$ として $m=1$ と $n$ で使うと $\sum_{k=2}^n\frac1k\le\int_1^n\frac{dx}x=\log n$、つまり $H_n-1\le\log n$ である。$n=1$ は命題の仮定 $m< n$ からはみ出すが、$H_1=1=1+\log1$ なので、この不等式は直接成り立つ(等号)。まとめて、すべての正の整数 $n$ について
$$ \log(n+1)\le H_n\le1+\log n $$
である。$n=10$ なら $\log11=2.39790$、$H_{10}=2.92897$、$1+\log10=3.30259$ で、たしかにはさまれている。

平方数の逆数の和は 2 を超えない

$f(x)=\frac1{x^2}$ は $x\ge1$ で連続で減少する。$n\ge2$ として、prop-dsi-compare の 2 の左の不等式を $m=1$ と $n$ で使うと
$$ \sum_{k=2}^n\frac1{k^2}\le\int_1^n\frac{dx}{x^2}=1-\frac1n $$
である。両辺に $k=1$ の項 $1$ を足すと $\sum_{k=1}^n\frac1{k^2}\le2-\frac1n<2$ である。$n=1$ では、左辺は $1$、右辺は $2-\frac11=1$ で、直接成り立つ(等号)。$n=10$ なら和は $1.54977$、上からの評価は $1.9$ である。

主定理:減少関数では差が収束する

prop-dsi-compare は、和と積分の差が $f(1)$ くらいの大きさにとどまることを示している。ここから一歩進めて、差そのものが収束することを示す。
証明では、実数の次の性質を使う。

  • 減少し、下に有界な数列は収束する($a_1\ge a_2\ge\cdots$ で、すべての $n$ について $a_n\ge c$ となる定数 $c$ があれば、$(a_n)$ は収束する)。
    これは「実数の連続性」と呼ばれる性質の 1 つの形で、高校では証明せずに認めて使う。極限を $a$ とすると $a\ge c$ である。
和と積分の差の収束

$f$ は区間 $[1,\infty)$ で連続で、減少し、すべての $x\ge1$ で $f(x)\ge0$ とする。正の整数 $n$ について
$$ D_n:=\sum_{k=1}^nf(k)-\int_1^nf(x)\,dx $$
とおく。このとき次が成り立つ。

  1. $D_1\ge D_2\ge D_3\ge\cdots$($D_n$ は減少する)。
  2. すべての $n$ について $f(n)\le D_n\le f(1)$。
  3. $D_n$ は収束する。極限を $D$ とすると $0\le D\le f(1)$ であり、すべての $n$ について $0\le D_n-D\le f(n)$ である。
隙間の面積を足していく

方針:$D_n$ を「小区間ごとの隙間 $f(k)-\int_k^{k+1}f$」の和で書き、prop-dsi-compare の 1 で各隙間の大きさを押さえる。
段 1($D_n$ は減少する)。定義から
$$ D_n-D_{n+1}=\left(\sum_{k=1}^nf(k)-\int_1^nf\right)-\left(\sum_{k=1}^{n+1}f(k)-\int_1^{n+1}f\right) $$
である。和の部分は $f(n+1)$ だけが違い、積分の部分は加法性により $\int_1^{n+1}f-\int_1^nf=\int_n^{n+1}f$ だけ違う。よって
$$ D_n-D_{n+1}=\int_n^{n+1}f(x)\,dx-f(n+1) $$
である。prop-dsi-compare の 1($k=n$)により右辺は $0$ 以上なので、$D_n\ge D_{n+1}$ である。
段 2(下からの評価 $D_n\ge f(n)$)。加法性により $\int_1^nf=\sum_{k=1}^{n-1}\int_k^{k+1}f$ である($n=1$ なら両辺とも $0$)。和の方から最後の項 $f(n)$ を分けて書くと
$$ D_n=\sum_{k=1}^{n-1}\left(f(k)-\int_k^{k+1}f(x)\,dx\right)+f(n) $$
である。prop-dsi-compare の 1 により、かっこの中はどれも $0$ 以上である。よって $D_n\ge f(n)$ である。
段 3(上からの評価 $D_n\le f(1)$)。今度は和の方から最初の項 $f(1)$ を分け、$f(k)$($k=2,\dots,n$)を小区間 $[k-1,k]$ と組にすると
$$ D_n=f(1)-\sum_{k=2}^n\left(\int_{k-1}^kf(x)\,dx-f(k)\right) $$
である。prop-dsi-compare の 1($k-1$ で使う)により、かっこの中はどれも $0$ 以上である。よって $D_n\le f(1)$ である。
段 4(収束)。段 1 から $(D_n)$ は減少する。段 2 と $f(n)\ge0$ から、すべての $n$ で $D_n\ge0$ なので、下に有界である。実数の連続性により $D_n$ は収束する。極限 $D$ は、すべての $D_n$ が $0$ 以上なので $D\ge0$ であり、減少する数列の極限なので $D\le D_1=f(1)$ である。
段 5(収束の速さ)。$n$ と正の整数 $p$ について、段 1 の式を $n,n+1,\dots,n+p-1$ で足すと
$$ D_n-D_{n+p}=\sum_{k=n}^{n+p-1}\left(\int_k^{k+1}f(x)\,dx-f(k+1)\right) $$
である。prop-dsi-compare の 1 の右の不等式 $\int_k^{k+1}f\le f(k)$ を使うと、右辺は
$$ \sum_{k=n}^{n+p-1}\bigl(f(k)-f(k+1)\bigr)=f(n)-f(n+p)\le f(n) $$
以下である(真ん中は途中の項が打ち消し合う望遠鏡和で、最後は $f(n+p)\ge0$ を使った)。つまり $0\le D_n-D_{n+p}\le f(n)$ である(左の不等式は段 1 から)。$p\to\infty$ とすると $D_{n+p}\to D$ なので、$0\le D_n-D\le f(n)$ である。$\square$

段 2・段 3 の「隙間」は、図 1 の赤い部分の面積である。段 3 の見方では、$D_n$ は「最初の長方形の面積 $f(1)$ から、曲線と右端の高さの長方形の間の部分を引いたもの」である。
区間の始まりを $1$ ではなく整数 $m$ にしても、つまり $f$ が $[m,\infty)$ で連続・減少・$0$ 以上で、$D_n=\sum_{k=m}^nf(k)-\int_m^nf(x)\,dx$($n\ge m$)とおいても、同じ証明で同じ結論(2 と 3 の $f(1)$ を $f(m)$ に替えたもの)が成り立つ。

定理を $\frac{1}{x}$ と $\frac{1}{x^2}$ で確かめる
  • $f(x)=\frac1x$ では $D_n=H_n-\log n$ である。ex-dsi-harmonic の表で $D_1=1\ge D_2=0.80685\ge D_{10}=0.62638\ge\cdots$ と減っている。2 の評価は、$n=10$ で $f(10)=0.1\le0.62638\le f(1)=1$ である。
  • $f(x)=\frac1{x^2}$ では $D_n=\sum_{k=1}^n\frac1{k^2}-\left(1-\frac1n\right)$ である。$D_1=1$、$D_2=1+\frac14-\frac12=0.75$、$D_3=1+\frac14+\frac19-\frac23=0.69444$ と減っていく。3 の極限 $D$ は $0.64493\cdots$ である(ex-dsi-inverse-squares)。
    図 2 は、3 つの関数について $D_n$ を $n=1$ から $40$ まで描いたものである。どれも $D_1=f(1)=1$ から減りながら、破線の極限に近づいていく。

f(x)=1/x、1/x^2、1/√x についての D_n(点)と、その極限(破線)。どれも D_1=1 から減少して収束する f(x)=1/x、1/x^2、1/√x についての D_n(点)と、その極限(破線)。どれも D_1=1 から減少して収束する

2 つの系:積分判定法と Euler の定数

thm-dsi-difference から、すぐに 2 つの結果が出る。

積分による級数の収束判定

$f$ は $[1,\infty)$ で連続で、減少し、$0$ 以上とする。$S_n:=\sum_{k=1}^nf(k)$、$I_n:=\int_1^nf(x)\,dx$ とおく。このとき

  • 数列 $(S_n)$ が収束する(級数 $\sum_{k=1}^\infty f(k)$ が収束する)ことと、数列 $(I_n)$ が収束することは同値である。
  • 収束するとき、$I:=\lim I_n$ について $I\le\sum_{k=1}^\infty f(k)\le f(1)+I$ である。
差が収束するので片方の収束がもう片方に移る

thm-dsi-difference の $D_n$ を使うと、定義から $S_n=I_n+D_n$、$I_n=S_n-D_n$ である。$D_n$ は収束する(定理の 3)。
$(I_n)$ が収束するなら、$S_n=I_n+D_n$ は収束する 2 つの数列の和なので収束し、$\lim S_n=I+D$ である。$(S_n)$ が収束するなら、$I_n=S_n-D_n$ は収束する 2 つの数列の差なので収束する。
収束するとき、定理の 3 の $0\le D\le f(1)$ から $I\le I+D\le I+f(1)$ である。$\square$

$f\ge0$ なので $I_n$ は $n$ について増加する。したがって「$(I_n)$ が収束する」は「$(I_n)$ が上に有界」と同じである。また、実数 $X$ が $n\le X\le n+1$ なら $I_n\le\int_1^Xf\le I_{n+1}$ なので、$(I_n)$ が収束することは、広義積分 $\int_1^\infty f(x)\,dx=\lim_{X\to\infty}\int_1^Xf(x)\,dx$ が収束することと同じである(広義積分)。積分判定法は Leb26 の Proposition 5.5.13 にもある。
調和級数の発散の別証明や、比較判定法・比判定法のように積分を使わない収束判定法は 無限級数の和と収束判定 で扱う。

$p$ 乗の逆数の級数

$p>0$ とし、$f(x)=\frac1{x^p}$ とする。$f$ は $x\ge1$ で連続で、減少し、正である。積分は
$$ I_n=\int_1^n\frac{dx}{x^p}=\begin{cases}\dfrac{1-n^{1-p}}{p-1}&(p\ne1)\\[2mm]\log n&(p=1)\end{cases} $$
である。

  • $p>1$ なら $n^{1-p}=\frac1{n^{p-1}}\to0$ なので $I_n\to\frac1{p-1}$ である。cor-dsi-integral-test により $\sum\frac1{k^p}$ は収束し、$\frac1{p-1}\le\sum_{k=1}^\infty\frac1{k^p}\le1+\frac1{p-1}$ である。$p=2$ なら $1\le\sum\frac1{k^2}\le2$ で、実際の値 $\frac{\pi^2}6=1.64493\cdots$(Basel問題)はこの間にある。
  • $p=1$ なら $I_n=\log n\to\infty$ なので、$\sum\frac1k$ は発散する(調和級数)。
  • $0< p<1$ なら $n^{1-p}\to\infty$ なので $I_n\to\infty$ で、$\sum\frac1{k^p}$ は発散する。$p=\frac12$ では $\sum\frac1{\sqrt k}$ が発散する。
    $p\le0$ のときは、項 $\frac1{k^p}=k^{-p}$ が $0$ に近づかないので、級数は発散する。$p<0$ なら $f(x)=x^{-p}$ は増加するので、定理は使えない。$p=0$ では $f(x)=1$ で、これは連続で、減少し(この記事の「減少」は $x\le y$ ならば $f(x)\ge f(y)$ という広い意味である)、$0$ 以上なので、定理が使える。実際 $D_n=n-(n-1)=1$ で収束し、和 $n$ も積分 $n-1$ も発散する。積分判定法のとおりである。
ゆっくり発散する級数

$f(x)=\frac1{x\log x}$ を $x\ge2$ で考える。$x\log x$ は $x\ge2$ で正で増加するので、$f$ は連続で、減少し、正である。$(\log(\log x))'=\frac1{\log x}\cdot\frac1x$ なので
$$ \int_2^n\frac{dx}{x\log x}=\log(\log n)-\log(\log2) $$
であり、$n\to\infty$ で限りなく大きくなる。定理のあとの注意と同じく始まりを $2$ にした積分判定法(cor-dsi-integral-test の証明は、始まりを $2$ にしてもそのまま使える)により、$\sum_{k=2}^\infty\frac1{k\log k}$ は発散する。
ただし、発散はきわめてゆっくりである。

$n$$10$$100$$10^4$$10^6$
$\sum_{k=2}^n\frac1{k\log k}$$1.64991$$2.32294$$3.01501$$3.42047$
$\log\log n-\log\log2$$1.20055$$1.89369$$2.58684$$2.99230$
差$0.44936$$0.42925$$0.42817$$0.42817$

差は $0$ と $f(2)=\frac1{2\log2}=0.72135$ の間にあり、thm-dsi-difference のとおり収束していく。$10^6$ 項足しても和は $3.5$ に届かない。

Euler の定数の存在

極限
$$ \gamma:=\lim_{n\to\infty}\left(H_n-\log n\right) $$
が存在し、すべての正の整数 $n$ について
$$ 0\le H_n-\log n-\gamma\le\frac1n $$
である。さらに $1-\log2\le\gamma\le\frac32-\log2$ であり、とくに $0<\gamma<1$ である。$\gamma$ を Euler の定数(Euler–Mascheroni の定数)という。

定理を $\frac{1}{x}$ に使う

$f(x)=\frac1x$ は $[1,\infty)$ で連続で、減少し、正である。$D_n=H_n-\int_1^n\frac{dx}x=H_n-\log n$ なので、thm-dsi-difference の 3 により極限 $\gamma$ が存在し、$0\le D_n-\gamma\le f(n)=\frac1n$ である。
範囲について。定理の 1 から $\gamma\le D_2=1+\frac12-\log2=\frac32-\log2$ である。また、上で示した $D_2-\gamma\le\frac12$ から $\gamma\ge D_2-\frac12=1-\log2$ である。
最後に $0<\gamma<1$ を示す。$e=2.718\cdots$ なので $2< e<4$ である。$e>2$ から $\log2<\log e=1$ なので $1-\log2>0$ である。$e<4$ から $\sqrt e<2$、つまり $\frac12=\log\sqrt e<\log2$ なので $\frac32-\log2<1$ である。よって $0<1-\log2\le\gamma\le\frac32-\log2<1$ である。$\square$

Euler の定数を数値ではさむ

cor-dsi-euler の不等式 $H_n-\log n-\frac1n\le\gamma\le H_n-\log n$ を使うと

$n$$2$$10$$1000$
下からの評価 $H_n-\log n-\frac1n$$0.30685$$0.52638$$0.57672$
上からの評価 $H_n-\log n$$0.80685$$0.62638$$0.57772$

となり、$n=1000$ で $0.5767\le\gamma\le0.5778$ まで分かる。実際の値は $\gamma=0.5772156649\cdots$ である。$n=2$ の行が、cor-dsi-euler の $1-\log2\le\gamma\le\frac32-\log2$ である。

Euler の定数の存在は 調和級数 の記事でも、$H_n-\log n$ と $H_n-\log(n+1)$ で直接はさむ方法で証明している。ここでは一般の減少関数についての定理の特別な場合として得た。$\gamma$ が有理数かどうかは、分かっていない(Leb26 Exercise 5.4.6 (b) の問題文の中で述べられている)。
図 1 の赤い隙間を左にずらし、すべて $0\le x-k\le1$ の範囲に集めたのが図 3 である。$k$ 番目の隙間は、高さ $\frac1{k+1}$ から $\frac1k$ の帯の中にあるので、隙間どうしは重ならず、1 辺 $1$ の正方形に収まる。隙間の面積の合計が $D_n$ の極限 $\gamma$ なので、図からも $\gamma<1$ が分かる。
y=1/x の隙間(k=1〜40)を左にずらして 1 辺 1 の正方形に集めた図。隙間は重ならず、面積の合計(0.5650)は 1 より小さい y=1/x の隙間(k=1〜40)を左にずらして 1 辺 1 の正方形に集めた図。隙間は重ならず、面積の合計(0.5650)は 1 より小さい
図 3 では、どの隙間も、その帯の半分より少し多くを占めているように見える。実際 $\gamma>\frac12$ であることは、Euler–Maclaurinの公式(高校数学) で示す。

例:差の極限を使って和を見積もる

平方数の逆数:差の極限と誤差

$f(x)=\frac1{x^2}$ では、$\sum_{k=1}^\infty\frac1{k^2}=\frac{\pi^2}6$ であることが知られている(Basel問題。ここでは証明しない)。$\int_1^n\frac{dx}{x^2}=1-\frac1n\to1$ なので、差の極限は $D=\frac{\pi^2}6-1=0.64493\cdots$ である。thm-dsi-difference の 3 から $0\le D_n-D\le\frac1{n^2}$ のはずである。実際

$n$$10$$100$$1000$
$D_n-D$$0.0048337$$0.0000498$$0.0000005$
$\frac1{n^2}$$0.01$$0.0001$$0.000001$

で、たしかに $\frac1{n^2}$ 以下である。表の $D_n-D$ はおよそ $\frac1{2n^2}$ で、定理の上からの評価のほぼ半分になっている(その理由は Euler–Maclaurinの公式(高校数学) で分かる)。

平方根の逆数:発散する級数でも差は収束する

$f(x)=\frac1{\sqrt x}$ では $\int_1^n\frac{dx}{\sqrt x}=\left[2\sqrt x\right]_1^n=2\sqrt n-2$ なので
$$ D_n=\sum_{k=1}^n\frac1{\sqrt k}-2\sqrt n+2 $$
である。ex-dsi-p-series($p=\frac12$)により $\sum\frac1{\sqrt k}$ は発散するが、差 $D_n$ は thm-dsi-difference により収束する。数値は

$n$$1$$10$$100$$10000$
$D_n$$1$$0.69644$$0.58960$$0.54465$

で、極限は $0.53964\cdots$ である(数値計算による。この値は Riemann ゼータ関数の値 $\zeta\left(\frac12\right)$ に $2$ を足したものに等しいことが知られているが、ここでは扱わない)。

平方根の逆数の和の整数部分

$S=\sum_{k=1}^{10000}\frac1{\sqrt k}$ の整数部分を、電卓を使わずに求める。
$f(x)=\frac1{\sqrt x}$ に thm-dsi-difference を使う。$n=10000$ では $\int_1^{10000}\frac{dx}{\sqrt x}=2\sqrt{10000}-2=198$ なので $S=198+D_{10000}$ である。
下からの評価。定理の 2 から $D_{10000}\ge f(10000)=\frac1{100}$ なので $S\ge198.01$ である。
上からの評価。定理の 2 の $D_n\le f(1)=1$ だけでは $S\le199$ となり、$S=199$ の可能性が残る。そこで prf-dsi-difference の段 3 の式を使う。段 3 の和の各項は $0$ 以上なので、$k=2$ の項だけを残すと
$$ D_n\le f(1)-\left(\int_1^2\frac{dx}{\sqrt x}-f(2)\right)=1-\left(2\sqrt2-2-\frac1{\sqrt2}\right)=3-\frac{3\sqrt2}2 $$
である($2\sqrt2-\frac1{\sqrt2}=\frac{4-1}{\sqrt2}=\frac3{\sqrt2}=\frac{3\sqrt2}2$)。$\sqrt2>1.4$ なので $3-\frac{3\sqrt2}2<3-2.1=0.9$ である。よって $S<198.9$ である。
まとめると $198.01\le S<198.9$ なので、$S$ の整数部分は $198$ である。実際の値は $S=198.5446\cdots$ である。

反例:仮定を外すと

thm-dsi-difference の仮定は「連続」「減少」「$0$ 以上」である。減少と $0$ 以上を外すと、次のように結論が崩れる。

外した仮定例崩れる主張ボックス
減少(増加する)$f(x)=x$、$\sqrt x$$D_n$ が収束するex-dsi-increasing
$0$ 以上$f(x)=-x$$D_n$ が収束するex-dsi-negative
減少(振動する)$f(x)=\sin^2\pi x$積分判定法(和は収束、積分は発散)ex-dsi-oscillating
減少(とがった山)整数点の三角形の山積分判定法(積分は収束、和は発散)ex-dsi-spikes
反例:増加する関数では差が発散する

$f(x)=x$ は連続で $0$ 以上だが、増加する。
$$ D_n=\sum_{k=1}^nk-\int_1^nx\,dx=\frac{n(n+1)}2-\frac{n^2-1}2=\frac{n+1}2 $$
であり、$n\to\infty$ で限りなく大きくなる。prf-dsi-difference の段 1 の $D_n-D_{n+1}=\int_n^{n+1}f-f(n+1)$ は、増加する $f$ では $0$ 以下になり、$D_n$ は増えていく。ex-dsi-sqrt の $f(x)=\sqrt x$ でも、差は $5.46$($n=100$)、$50.46$($n=10000$)と増えていく。

反例:負の値をとると差が発散することがある

$f(x)=-x$ は連続で減少するが、$x\ge1$ で負の値をとる。
$$ D_n=-\frac{n(n+1)}2-\int_1^n(-x)\,dx=-\frac{n(n+1)}2+\frac{n^2-1}2=-\frac{n+1}2 $$
であり、$n\to\infty$ で限りなく小さくなる。prf-dsi-difference の段 2 の下からの評価 $D_n\ge f(n)=-n$ は成り立つが、$f(n)$ 自体が下に有界でないので、段 4 が使えない。
なお、定数 $c$ を足した関数 $f+c$ では、和は $nc$、積分は $(n-1)c$ だけ変わるので、$D_n$ はちょうど $c$ だけ変わる。したがって「$0$ 以上」は「下に有界」(ある定数 $c$ ですべての $x$ について $f(x)\ge c$)に弱めてもよい。たとえば $f(x)=\frac1x-1$ では $D_n=H_n-\log n-1\to\gamma-1$ である。$f(x)=-x$ は下に有界でない。

反例:振動する関数では積分判定法が成り立たない

$f(x)=\sin^2\pi x$ は連続で $0$ 以上だが、減少しない。すべての整数 $k$ で $\sin k\pi=0$ なので $f(k)=0$ であり、$\sum_{k=1}^nf(k)=0$ である。一方 $\sin^2\pi x=\frac{1-\cos2\pi x}2$ から
$$ \int_1^n\sin^2\pi x\,dx=\left[\frac x2-\frac{\sin2\pi x}{4\pi}\right]_1^n=\frac{n-1}2 $$
である。級数 $\sum f(k)$ は($0$ に)収束するのに、積分は限りなく大きくなる。cor-dsi-integral-test の「級数が収束すれば積分も収束する」が崩れている。$D_n=-\frac{n-1}2$ も発散する。

反例:とがった山では積分が収束しても和が発散する

$k=2,3,4,\dots$ について、点 $x=k$ を頂点とし、高さ $1$、底辺が $\left[k-\frac1{k^2},\ k+\frac1{k^2}\right]$ の三角形の山を考える。つまり
$$ g_k(x)=\begin{cases}1-k^2|x-k|&\left(|x-k|\le\frac1{k^2}\right)\\ 0&(\text{それ以外})\end{cases} $$
とする。$\frac1{k^2}\le\frac14$ なので、山どうしは重ならない。$f:=g_2+g_3+g_4+\cdots$ とおくと(各 $x$ で $0$ でない項は多くても 1 つ)、$f$ は $[1,\infty)$ で連続で $0$ 以上だが、減少しない。
和:$f(1)=0$、$k\ge2$ で $f(k)=1$ なので、$\sum_{k=1}^nf(k)=n-1$ であり、発散する。
積分:$k$ 番目の山の面積は $\frac12\times\frac2{k^2}\times1=\frac1{k^2}$ である。$\int_1^nf$ は、$k=2,\dots,n-1$ の山の全体と、$k=n$ の山の左半分の面積の和なので
$$ \int_1^nf(x)\,dx=\sum_{k=2}^{n-1}\frac1{k^2}+\frac1{2n^2}\le\sum_{k=2}^n\frac1{k^2}\le1-\frac1n<1 $$
である(2 つ目の不等号は ex-dsi-inverse-squares-bound の途中の式)。$f\ge0$ なので $\int_1^nf$ は $n$ について増加し、上に有界なので収束する。
積分は収束するのに、和は発散する。cor-dsi-integral-test の「積分が収束すれば級数も収束する」が崩れている。和は整数点の値しか見ないので、整数点だけ高い山があると、積分と和がかけ離れる。

さらに先へ

  • $f(x)=\frac1x$ では $D_n-D=H_n-\log n-\gamma$ が $n=10$ で $0.0492$、$n=100$ で $0.0050$ であり、ex-dsi-inverse-squares-limit の表と合わせると、$D_n-D$ はほぼ $\frac{f(n)}2$ である。これは偶然ではなく、Euler–Maclaurin の公式から分かる。たとえば $H_n=\log n+\gamma+\frac1{2n}-\frac1{12n^2}+\cdots$ となる(Euler–Maclaurinの公式(高校数学))。そこでは、和と積分を 1 つの式で書く Stieltjes積分(高校数学) の見方が出発点になる。
  • 大学向けの記事 積分判定法・Eulerの定数 では、この記事の 2 つの系を大学の解析学の中で扱う。
  • $f$ が増加する場合でも、Euler–Maclaurin の公式を使えば和と積分の差を精密に表せる。$f(x)=\log x$ の場合が $\log n!$ の見積もり、つまり Stirling の公式である(階乗の大きさの見積もり)。
  • $s>1$ について $\zeta(s)=\sum_{k=1}^\infty\frac1{k^s}$ を Riemannゼータ関数 という。ex-dsi-p-series は、この級数が $s>1$ で収束することを示している。

関連項目

参考文献

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