3次曲面

同義語:三次曲面cubic surface3次曲面上の27本の直線

概要

3次曲面(cubic surface)とは、射影空間 $\mathbb{P}^3$ の中で 3 次斉次多項式 1 つの零点として定まる曲面である。代数閉体上で特異点をもたない 3 次曲面は、方程式によらずちょうど 27 本の直線を含み、滑らかさ・次数 3・代数閉体のどれを外してもこの数にはならない。標数 2 でなければ、直線 $L$ を含む平面のうち曲面との交わりが 3 本の直線に分かれるものはちょうど 5 枚で、$L$ と交わる直線は 10 本あり、このことから直線を 1 本含めば全部で 27 本であることが従う。滑らかな 3 次曲面は平面の 6 点(どの 3 点も同一直線上になく、6 点が同一の 2 次曲線上にない)のブローアップとして得られ、27 本の直線の配置の対称性の群は Weyl 群 $W(E_6)$ である。

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{div}[0]{\mathbin{÷}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: 射影空間, 超曲面, 2次形式, ブローアップ

3 次曲面(cubic surface)は、射影空間 $\mathbb{P}^3$ の中で 4 変数の 3 次斉次多項式 1 つの零点として定まる曲面である。2 次曲面 $xy=zw$ には直線が無数にあるが、3 次曲面では、特異点をもたない限り、直線の本数が方程式によらずちょうど 27 本に決まる。1849 年の Cayley と Salmon によるこの発見は、代数幾何学の古典的な出発点の 1 つである。
この記事では、代数閉体 $k$ の上で 3 次曲面と滑らかさを定義し、Fermat の 3 次曲面などの例を見たあと、$k$ の標数が 2 でないときに次の 2 つを証明する。

  1. 滑らかな 3 次曲面 $X$ の直線 $L$ を含む平面のうち、$X$ との交わりが 3 本の直線に分かれるものはちょうど 5 枚あり、$L$ と交わる $X$ の直線はちょうど 10 本である。
  2. 直線を 1 本含む滑らかな 3 次曲面は、ちょうど 27 本の直線を含む。
    証明は、$L$ を含む平面の族の上で「残りの 2 次曲線」が退化する場所を 5 次の判別式で数える古典的な方法による。最後に、平面 $\mathbb{P}^2$ の 6 点のブローアップとしての記述と、27 本の直線の配置の対称性(Weyl 群 $W(E_6)$)を紹介する。
    以下、$k$ は代数閉体、$\mathbb{P}^3=\mathbb{P}^3_k$ の斉次座標を $x_0,x_1,x_2,x_3$ または $x,y,z,w$ と書く。$S=k[x_0,\dots,x_3]$ の $d$ 次斉次部分を $S_d$ とし、$F\in S$ の偏導関数を $\partial_iF:=\partial F/\partial x_i$ と書く。

定義

3 次曲面と滑らかさ

$0\ne F\in S_3$ について、$X=V_+(F)\subset\mathbb{P}^3$ を($F$ を定数倍の違いを除いて固定して)3 次曲面という。$p\in X$ が特異点であるとは、$\partial_0F,\dots,\partial_3F$ がすべて $p$ で $0$ になることをいう。特異点をもたない 3 次曲面を滑らか(非特異)という。滑らかな点 $p\in X$ で、平面
$$ T_pX:=V_+\Bigl(\sum_{i=0}^3\partial_iF(p)\,x_i\Bigr) $$
を $X$ の $p$ での接平面という。$\mathbb{P}^3$ の直線 $M$ が $M\subset X$ をみたすとき、$M$ を $X$ の直線という。

斉次多項式の Euler の等式 $\sum_ix_i\partial_iF=3F$ により、$p\in X$ なら $\sum_ip_i\partial_iF(p)=0$ なので、$p\in T_pX$ である。この特異点の定義は、超曲面 の特異点の計算(Jacobiの判定法)を 3 次曲面に当てはめたものである。

直線は接平面に入る

$X$ を 3 次曲面、$p\in X$ を滑らかな点、$M\subset X$ を $p$ を通る直線とすると、$M\subset T_pX$ である。

直線に沿って微分する

$M$ の $p$ 以外の点 $[v]$ をとると、$M$ の点は $[p+tv]$($t\in k$)と $[v]$ である。$F(p+tv)=0$ が $t$ の多項式として恒等的に成り立つので、$t$ の 1 次の係数 $\sum_iv_i\partial_iF(p)$ は $0$ である。よって $[v]\in T_pX$ であり、$p\in T_pX$ と合わせて、$p$ と $[v]$ を通る直線 $M$ は平面 $T_pX$ に含まれる。$\square$

滑らかな 3 次曲面は平面を含まない

$X=V_+(F)$ が滑らかな 3 次曲面ならば $F$ は既約多項式であり、とくに $X$ は平面を含まない。

2 つの成分の交点は特異点

$F=GH$($\deg G,\deg H\ge1$)と分解したとする。$V_+(G)$ と $V_+(H)$ は $\mathbb{P}^3$ の 2 次元の代数的集合なので、射影次元定理により交わる(Har77 I, Theorem 7.2、p. 48)。交点 $p$ では $\partial_iF(p)=G(p)\partial_iH(p)+H(p)\partial_iG(p)=0$ なので、$p$ は特異点である。平面 $V_+(h)$ を含むなら $h\mid F$ となるので、この場合に当たる。$\square$

例

Fermat の 3 次曲面と 27 本の直線

$k$ の標数が 3 でないとき、$X:=V_+(x_0^3+x_1^3+x_2^3+x_3^3)$ は滑らかである。実際、$\partial_iF=3x_i^2$ がすべて $0$ になるのは $x_0=\dots=x_3=0$ のときだけである。
$1$ の 3 乗根 $\zeta$ は 3 個ある($t^3-1$ は標数 3 でなければ重根をもたない)。$\{0,1,2,3\}$ を 2 個ずつの組 $\{i,j\},\{k,l\}$ に分ける分け方 3 通りと、3 乗根 $\zeta,\zeta'$ の組 9 通りについて($i< j$、$k< l$ とし、$L^{kl,ij}_{\zeta',\zeta}$ は $L^{ij,kl}_{\zeta,\zeta'}$ と同じものとする)、直線
$$ L^{ij,kl}_{\zeta,\zeta'}:=V_+(x_i+\zeta x_j,\ x_k+\zeta'x_l) $$
は $X$ に含まれる。$x_i=-\zeta x_j$ から $x_i^3=-x_j^3$、同様に $x_k^3=-x_l^3$ となるからである。これらの $27$ 本は互いに異なる。同じ分け方の中では方程式の係数が違い、分け方が違うと、たとえば $x_0+\zeta x_1$ と $x_2+\zeta'x_3$ の 1 次結合で $x_0+\alpha x_2$ の形のものはないからである。下の thm-cs-27-lines により、これが $X$ の直線のすべてである(標数 2 のときは Vak25 Theorem 27.0.1 による)。
$\{i,j\}$ と $\zeta$ を固定すると、$\zeta'$ を動かした 3 本 $L^{ij,kl}_{\zeta,\zeta'}$ はすべて点 $\{x_i+\zeta x_j=0,\ x_k=x_l=0\}$ を通る。$\{i,j\}$ の選び方 6 通りと $\zeta$ の 3 通りから、3 本の直線が通る点が 18 個得られる。このような点を Eckardt 点という。3 本の直線は、lem-cs-line-tangent によりその点での接平面 $x_i+\zeta x_j=0$ に含まれる。

特異点をもつ 3 次曲面
  1. 錐:$k$ の標数が 3 でないとき、$F=x_0^3+x_1^3+x_2^3$ の定める $X$ は、平面 $x_3=0$ の中の滑らかな平面3次曲線 $E$ の各点と頂点 $v=[0:0:0:1]$ を結ぶ直線の和集合である。$v$ ではすべての偏導関数が $0$ なので、$v$ は特異点であり、$X$ は無数の直線を含む。
  2. Cayley の 3 次曲面:$F=x_1x_2x_3+x_0x_2x_3+x_0x_1x_3+x_0x_1x_2$ の定める曲面は、4 つの座標点 $e_0,\dots,e_3$ で偏導関数がすべて $0$ になる(各項が $e_i$ の座標の 0 を 2 つ以上含む)。6 本の稜 $V_+(x_i,x_j)$ と、3 本の直線 $V_+(x_0+x_1,x_2+x_3)$、$V_+(x_0+x_2,x_1+x_3)$、$V_+(x_0+x_3,x_1+x_2)$ を含む。たとえば $x_1=-x_0$、$x_3=-x_2$ を代入すると $x_0x_2^2-x_0x_2^2+x_0^2x_2-x_0^2x_2=0$ である。

1 本の直線と交わる直線

$X=V_+(F)$ を滑らかな 3 次曲面、$L\subset X$ を直線とする。座標を $L=V_+(z,w)$ となるようにとる。$F$ は $L$ 上で $0$ なので、$x,y$ だけの単項式を含まない。以下 $k$ の標数は $2$ でないとし、
$$ F=Ax^2+2Bxy+Cy^2+2Dx+2Ey+G\qquad(A,B,C\in k[z,w]_1,\ D,E\in k[z,w]_2,\ G\in k[z,w]_3) $$
と書く。$L$ を含む平面は $\Pi_{(\lambda:\mu)}:=\{\mu z=\lambda w\}$($(\lambda:\mu)\in\mathbb{P}^1$)であり、$[x:y:u]\mapsto[x:y:\lambda u:\mu u]$ により $\mathbb{P}^2\cong\Pi_{(\lambda:\mu)}$ で、$L$ は $u=0$ に当たる。$A,\dots,G$ の斉次性から
$$ F(x,y,\lambda u,\mu u)=u\,Q_{(\lambda,\mu)}(x,y,u),\qquad Q_{(\lambda,\mu)}=Ax^2+2Bxy+Cy^2+2Dxu+2Eyu+Gu^2 $$
(係数は $(\lambda,\mu)$ での値)である。lem-cs-irreducible により $Q_{(\lambda,\mu)}\ne0$ なので、$X\cap\Pi=L\cup C_\Pi$($C_\Pi:=V_+(Q_{(\lambda,\mu)})$ は平面の 2 次曲線)となる。$C_\Pi$ を残りの 2 次曲線という。その対称行列の行列式
$$ \Delta(\lambda,\mu):=\det\begin{pmatrix}A&B&D\\B&C&E\\D&E&G\end{pmatrix} $$
は、$0$ でなければ $(\lambda,\mu)$ の 5 次の斉次式である(どの項も次数が $1+1+3=1+2+2=5$)。代数閉体上で、$C_\Pi$ が退化する(2 本の直線か二重直線になる)ことは $\Delta(\lambda,\mu)=0$ と同値である(2次形式 の階数による分類)。

$L$ を含む 5 枚の平面

標数 $2$ でない代数閉体上の滑らかな 3 次曲面 $X$ と直線 $L\subset X$ について、次が成り立つ。

  1. $\Delta$ は $0$ でない 5 次式で、その根はすべて単根である。したがって、残りの 2 次曲線が退化する $L$ を含む平面はちょうど 5 枚ある。
  2. そのような平面 $\Pi$ では、$X\cap\Pi$ は相異なる 3 本の直線 $L,L',L''$ の和集合である。
退化する平面ごとに局所的に計算する

座標の取り替え:$L$ を保つ座標の取り替え、すなわち $(z,w)$ の 1 次変換と、$x\mapsto p_{11}x+p_{12}y+r_1(z,w)$、$y\mapsto p_{21}x+p_{22}y+r_2(z,w)$($\det(p_{ij})\ne0$、$r_i$ は 1 次式)で、$\Delta$ は前者では平面の族の径数の 1 次変換を受け、後者では対称行列が $P^{\mathsf T}MP$($P$ の行列式は $\det(p_{ij})$)に変わるので $\Delta$ は $0$ でない定数倍になる。$F$ の定数倍も $\Delta$ を定数倍するだけである。よって、根とその重複度はこのような取り替えで変わらない。
$\Delta$ の根を 1 つとり、取り替えで $(1:0)$、すなわち $\Pi=\{w=0\}$ とする。$\Pi$ の座標を $x,y,z$ とすると $F(x,y,z,0)=z\,Q_0$ で、$Q_0$ は退化した 2 次形式なので 1 次式の積 $Q_0=l_1l_2$ に分解する。
(a) $z,l_1,l_2$ は互いに比例しない。 比例する組があれば $F(x,y,z,0)=l^2m$($l,m$ は $x,y,z$ の 1 次式)と書け、$F=l^2m+wH$($H\in S_2$)となる。直線 $N:=V_+(l,w)$ の上では $w$ 以外の変数についての偏導関数はすべて $0$ で、$\partial_wF=H$ である。$H|_N$ は $N\cong\mathbb{P}^1$ 上の 2 次形式なので $N$ 上に零点をもち、そこは $X$ の特異点になる。これは矛盾である。よって $X\cap\Pi$ は相異なる 3 本の直線 $L=V_+(z,w)$、$V_+(l_1,w)$、$V_+(l_2,w)$ の和集合で、2 が示された。
(b) 根は単根である。 $\Delta(1,t)=\det(M_0+tM_1+t^2M_2+t^3M_3)$($M_j$ は $t^j$ の係数の行列)と展開すると、$\det M_0=0$ で、$t$ の係数は $\operatorname{tr}(\operatorname{adj}(M_0)M_1)$ である($\operatorname{adj}$ は余因子行列)。3 本の直線の位置で場合を分ける。

2 つの場合の計算

三角形の場合($z,l_1,l_2$ が 1 次独立):$x,y$ を $l_1,l_2$ に取り替えて $F(x,y,z,0)=xyz$ とできる。このとき $M_0$ は $(1,2)$・$(2,1)$ 成分だけが $\frac12$ で、$\operatorname{adj}(M_0)$ の成分は $(3,3)$ 成分 $-\frac14$ だけである。よって $t$ の係数は $-\frac14(M_1)_{33}=-\frac14g$、$g$ は $F$ の $z^2w$ の係数である。一方 $F=xyz+wH$ と書くと、点 $p=[0:0:1:0]$ で $\partial_xF,\partial_yF,\partial_zF$ は $0$ で、$\partial_wF(p)=H(p)=g$ である。$X$ は $p$ で滑らかなので $g\ne0$ である。

3 本が 1 点を通る場合($z,l_1,l_2$ が 1 次従属):共通の点は $L$ 上にある。$x$ を $l_1$ に取り替え、$z$ を定数倍すれば $F(x,y,z,0)=xz(x-z)$ とできる。このとき $Q_0=x^2-xz$ で、$M_0$ の $0$ でない成分は $(1,1)$ 成分 $1$ と $(1,3)$・$(3,1)$ 成分 $-\frac12$ である。第 2 行と第 2 列が $0$ なので、$\operatorname{adj}(M_0)$ の成分は $(2,2)$ 成分 $-\frac14$ だけで、$t$ の係数は $-\frac14(M_1)_{22}=-\frac14c$、$c$ は $F$ の $y^2w$ の係数である。$F=x^2z-xz^2+wH$ と書くと、点 $p=[0:1:0:0]$ で $\partial_xF,\partial_yF,\partial_zF$ は $0$ で、$\partial_wF(p)=H(p)=c$ である。滑らかさから $c\ne0$ である。


どちらの場合も $\Delta(1,t)$ の $t$ の係数は $0$ でなく、$(1:0)$ は単根である。とくに $\Delta$ は恒等的に $0$ ではない(恒等的に $0$ なら、すべての点が根になり、単根であることに反する)。$0$ でない 5 次の 2 変数斉次式は、代数閉体上で重複度込みでちょうど 5 個の根を $\mathbb{P}^1$ にもつので、単根が 5 個ある。$\square$

$L$ と交わる 10 本の直線

thm-cs-five-planes の仮定のもとで、$L$ と交わる $X$ の直線($L$ 以外)はちょうど 10 本あり、5 組 $\{L_1,L_1'\},\dots,\{L_5,L_5'\}$ に分かれる。$L_i$ と $L_i'$ は交わり、$i\ne j$ のとき $L_i\cup L_i'$ の直線と $L_j\cup L_j'$ の直線は交わらない。

交わる直線は退化する平面に入る

$L$ と交わる直線 $M\ne L$ は、$L$ と $M$ の張る平面 $\Pi$ に含まれ、$X\cap\Pi=L\cup C_\Pi$ の成分なので $C_\Pi$ の成分である。$C_\Pi$ が直線を含むのは $C_\Pi$ が退化するときだけなので、$\Pi$ は thm-cs-five-planes の 5 枚のどれかで、$M$ はその $L',L''$ の一方である。異なる 2 枚の平面は $L$ でしか交わらないので、10 本は互いに異なる。
$\Pi_i\ne\Pi_j$ の直線 $M_i\subset\Pi_i$、$M_j\subset\Pi_j$ が点 $q$ で交わったとする。$q\notin L$ なら $q\in\Pi_i\cap\Pi_j=L$ となって矛盾する。$q\in L$ なら、lem-cs-line-tangent により $L,M_i,M_j\subset T_qX$ で、$T_qX$ は $L$ と $M_i$ を含むので $\Pi_i$ に等しく、同様に $\Pi_j$ にも等しい。これも矛盾である。$\square$

27 本の直線

27 本の直線

$k$ を標数 $2$ でない代数閉体とする。直線を含む滑らかな 3 次曲面 $X\subset\mathbb{P}^3$ は、ちょうど 27 本の直線を含む。

三角形の 3 辺から数える

直線 $L\subset X$ をとり、thm-cs-five-planes の平面 $\Pi$ を 1 枚とって $X\cap\Pi=L\cup L'\cup L''$ とする。
$X$ の直線 $M$ が $\Pi$ に含まれなければ、$M\cap\Pi$ は 1 点で、それは $X\cap\Pi$ の点なので、$M$ は $L,L',L''$ のどれかと交わる。$\Pi$ に含まれる $X$ の直線は $L,L',L''$ だけである。
cor-cs-ten-lines を $L$ に使うと、$L$ と交わる直線は 10 本で、そのうち $\Pi$ に含まれるのは $L',L''$ の 2 本、残りの 8 本は $\Pi$ に含まれない。$L',L''$ についても同じである($L'$ に cor-cs-ten-lines を使うと、$\Pi$ の中で $L'$ と交わる直線は $L,L''$ である)。したがって直線の本数は $3+8+8+8=27$ 以下で、等号は、$\Pi$ に含まれない直線 $M$ が 2 本の辺と同時に交わらないことと同値である。
$M\not\subset\Pi$ が $L$ と $L'$ に交わったとする。交点が異なる 2 点なら、その 2 点を通る $M$ は $\Pi$ に含まれ、矛盾する。同じ点 $q\in L\cap L'$ なら、lem-cs-line-tangent により $L,L',M\subset T_qX$ で、$L$ と $L'$ を含む平面は $\Pi$ だけなので $T_qX=\Pi$、よって $M\subset\Pi$ となって矛盾する。ほかの組も同じである。よってちょうど 27 本である。$\square$

滑らかな 3 次曲面が必ず直線を含むことは、この記事では証明しない。代数閉体上の滑らかな 3 次曲面がちょうど 27 本の直線を含むこと(標数によらない)が Vak25 Theorem 27.0.1(p. 758)にあり、§27.2(pp. 760–763)は標数 3 でない場合に、3 次曲面と直線の組の空間から 3 次曲面の空間への射が滑らかな曲面の上で次数 27 の有限エタール射であることを使って証明している。この存在と thm-cs-27-lines を合わせると、標数 2, 3 でない代数閉体上のすべての滑らかな 3 次曲面がちょうど 27 本の直線を含む。

交わる直線と交わらない直線の数

thm-cs-27-lines の仮定のもとで、$X$ の各直線は、ほかの 10 本の直線と交わり、16 本の直線と交わらない。とくに、互いに交わらない 2 本の直線が存在する。

$27-1-10=16$ である。$X$ の直線はどれも自己交点数 $-1$ の $\mathbb{P}^1$、すなわち $(-1)$ 曲線である(Castelnuovoの収縮定理 の例「3 次曲面の直線」)。

平面の 6 点のブローアップ

$P_1,\dots,P_6\in\mathbb{P}^2$ を、どの 3 点も同一直線上になく、6 点すべてが同一の 2 次曲線上にはない点とする。$P_1,\dots,P_6$ を通る平面 3 次曲線の線型系は 4 次元のベクトル空間に対応し、それが $\mathbb{P}^2$ の 6 点のブローアップ $X$ を $\mathbb{P}^3$ の滑らかな 3 次曲面として埋め込む(Har77 V, Corollary 4.7、p. 400)。逆に、代数閉体上のすべての滑らかな 3 次曲面はこの形に表せる(Vak25 Theorem 27.0.2(p. 758)、§27.3 で証明。Har77 V, Remark 4.7.1(p. 401)にも言明がある)。とくに滑らかな 3 次曲面は有理多様体である。
この記述で、27 本の直線は次のように書ける(Har77 V, Theorem 4.9、p. 402)。$E_i$ を $P_i$ の例外曲線、$F_{ij}$ を $P_i,P_j$ を通る直線の固有変換、$G_j$ を $P_j$ 以外の 5 点を通る 2 次曲線の固有変換とする。どの 2 本が交わるかは次の表のとおりである(Har77 V, Remark 4.10.1、p. 404)。

直線本数交わる直線
$E_i$6$F_{ij}$($j\ne i$)と $G_j$($j\ne i$)
$F_{ij}$15$E_i,E_j$、$G_i,G_j$、$\{k,l\}\cap\{i,j\}=\emptyset$ となる $F_{kl}$
$G_j$6$E_i$($i\ne j$)と $F_{ij}$($i\ne j$)

どの直線もちょうど 10 本と交わり、cor-cs-skew と一致する。たとえば $E_1$ と交わる 10 本は 5 組 $\{F_{1j},G_j\}$($j=2,\dots,6$)に分かれ、各組は交わる。これが cor-cs-ten-lines の 5 組で、$E_1$ を含む 5 枚の平面はそれぞれ $E_1,F_{1j},G_j$ を含む。$E_1,\dots,E_6$ と $G_1,\dots,G_6$ の 12 本は、$E_i$ どうし・$G_j$ どうしは交わらず $E_i$ と $G_j$ が $i\ne j$ のときだけ交わる配置をなし、Schläfli の二重六(double-six)と呼ばれる(Har77 V, Remark 4.9.1、p. 403)。
27 本の直線の集合の置換で、交わるかどうかの関係を保つものの全体は位数 $51840$ の群をなす。互いに交わらない 6 本の順序付きの組を選ぶ方法が $27\cdot16\cdot10\cdot6\cdot2$ 通りで、それが群の位数に等しい(Har77 V, Proposition 4.10 と p. 405 の議論)。この群は $E_6$ 型のルート系のWeyl群 $W(E_6)$ に同型である(Har77 V p. 405、Vak25 Remark 27.2.5(p. 764)。この記事では証明しない)。最初の 2 つの因子 $27$ と $16$ は cor-cs-skew の数である。

反例:条件を外すと成り立たないこと

thm-cs-27-lines の結論「ちょうど 27 本」は、曲面が滑らかであること、次数が 3 であること、体が代数閉であることのどれを外しても成り立たない。

外す条件反例成り立たなくなること
滑らかex-cs-singular の 1 の錐 $x_0^3+x_1^3+x_2^3=0$直線が無数にある
次数が 3滑らかな 2 次曲面 $xy=zw$直線 $V_+(x-az,\ w-ay)$($a\in k$)が無数にある
代数閉体$\mathbb{R}$ 上の Fermat の 3 次曲面実数の係数で定義される直線は 3 本しかない
反例の確かめ

1 行目の錐は 3 次で、代数閉体上で定義され、頂点と $E$ の点を結ぶ直線を含むが、頂点で特異である。2 行目は滑らかで(偏導関数 $y,x,-w,-z$ が同時に $0$ になるのは原点だけ)、$x=az$、$w=ay$ を代入すると $azy-zay=0$ である。3 行目:$\mathbb{C}$ 上の 27 本は ex-cs-fermat の $L^{ij,kl}_{\zeta,\zeta'}$ で、複素共役は $L^{ij,kl}_{\zeta,\zeta'}$ を $L^{ij,kl}_{\bar\zeta,\bar\zeta'}$ に移す。実数の係数で定義される直線は共役で動かない直線なので、$\zeta,\zeta'$ がともに実数、すなわち $\zeta=\zeta'=1$ のものだけで、分け方ごとに 1 本、計 3 本である。曲面は滑らかで次数は 3 である。

関連項目

参考文献

[2]
Robin Hartshorne, Algebraic Geometry, Graduate Texts in Mathematics 52, Springer, 1977, I, Theorem 7.2(p. 48、射影次元定理)。V, Corollary 4.7(p. 400)、Remark 4.7.1(p. 401)、Theorem 4.9(p. 402、27 本の直線)、Remark 4.9.1(p. 403、二重六)、Proposition 4.10(p. 403)、Remark 4.10.1(p. 404、交わりの関係)、p. 405(配置の自己同型群の位数と W(E_6))

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