完全不連結空間(totally disconnected space)とは、非空の連結部分集合がすべて一点集合である位相空間である。離散空間や有理数空間、超距離空間が例となるが、完全不連結でも離散とは限らない。この性質は任意の部分空間と積位相を入れた直積に保たれる。
部分集合 $A\subset X$ には、$A\cap U$($U$ は $X$ の開集合)を開集合とする相対位相を入れる。$A$ が連結であるとは、$A$ を互いに交わらない二つの非空な相対開集合の和に分けられないことをいう。本稿では空集合も連結とする。
位相空間 $X$ が完全不連結空間(totally disconnected space)であるとは、$X$ の非空な連結部分集合がすべて一点集合であることをいう。「全不連結空間」とも呼ぶ。すなわち、連結な $A\subset X$ と $x,y\in A$ に対して必ず $x=y$ となる。
空空間も完全不連結である。一点空間も連結かつ完全不連結であり、この二つの性質が常に対立するわけではない。
点 $x$ の連結成分は、$x$ を含む最大の連結部分集合である。これは $x$ を含む連結部分集合をすべて合わせた集合として得られる。したがって完全不連結性は「各点の連結成分がその一点だけ」という条件とも同値である。定義と連結成分との対応は StacksTD26、MathlibTD26 で確認できる。
二点以上ある空間については、「空間全体が一度は分かれる」という非連結性よりも、どの部分を取り出しても二点以上からなる連結な塊が残らないことを要求する。ただし、各点が開集合になって孤立するとは限らない。有理数空間がその違いを示す。
異なる任意の二点 $x,y\in X$ に対して、$x$ を含み $y$ を含まない開閉集合 $U\subset X$ が存在すれば、$X$ は完全不連結である。開閉集合とは、その集合と補集合がともに開である集合をいう。この二点分離の条件を完全分離(totally separated)という。MathlibTD26
部分集合 $A$ が異なる二点 $x,y$ を含むとする。条件を満たす $U$ を取れば、$A\cap U$ と $A\cap(X\setminus U)$ は互いに交わらない相対開集合で、和は $A$ である。前者は $x$、後者は $y$ を含むので両方とも非空であり、$A$ は連結ではない。よって非空の連結部分集合は一点に限られる。$\square$
ここでは完全分離を完全不連結の定義そのものとはせず、上の十分条件として用いる。零次元性との同値や、分離公理を加えた特徴づけは本稿の対象外である。
すべての部分集合が開である空間を離散空間という。そのすべての部分集合は補集合も開なので開閉集合である。異なる二点 $x,y$ は $\{x\}$ とその補集合で分けられるため、離散空間は完全不連結である。
$\mathbb Q$ に通常の実数直線からの相対位相を入れる。$a< b$ を有理数とし、無理数 $c$ を $a< c< b$ となるように取る。例えば $c=a+(b-a)/\sqrt2$ とすればよい。$\mathbb Q\cap(-\infty,c)$ と $\mathbb Q\cap(c,\infty)$ は互いに補集合で、ともに相対開である。従って二点を開閉集合で分けられ、$\mathbb Q$ は完全不連結である。
一方、任意の $q\in\mathbb Q$ と $\varepsilon>0$ に対し、正整数 $n$ を $1/n<\varepsilon$ となるように取れば、$q+1/n$ は $q$ と異なる有理数で $|q+1/n-q|<\varepsilon$ を満たす。したがって一点集合は開でなく、$\mathbb Q$ は離散空間ではない。StacksTD26
距離 $d$ が強三角不等式 $d(x,z)\leq\max\{d(x,y),d(y,z)\}$ を満たすとき、これを超距離という。距離の開球は $B(x,r)=\{z:d(x,z)< r\}$($r>0$)である。超距離空間の各開球は閉でもあり、空間は完全不連結になる。MathlibUltraTD26
$z\notin B(x,r)$ とする。もし $w\in B(z,r)\cap B(x,r)$ なら、強三角不等式から $d(x,z)\leq\max\{d(x,w),d(w,z)\}< r$ となり矛盾する。従って各 $z$ の開近傍 $B(z,r)$ は球の補集合に含まれ、補集合は開である。開球は開閉集合となる。
異なる二点 $x,y$ には $r=d(x,y)>0$ と取ると、$B(x,r)$ は $x$ を含み $y$ を含まない。開閉集合による判定を適用できる。$\square$
通常の実数直線の部分空間 $X=[0,1]\cup[2,3]$ は非連結である。実際、$[0,1]=X\cap(-1,3/2)$ と $[2,3]=X\cap(3/2,4)$ が非空の相対開分割を与える。しかし部分集合 $[0,1]$ は二点以上を含む連結な区間なので、$X$ は完全不連結ではない。
この例は「非連結なら完全不連結」を否定し、上の有理数空間の例は「完全不連結なら離散」を否定する。
完全不連結空間 $X$ の任意の部分空間 $Y\subset X$ は完全不連結である。MathlibTD26
$A\subset Y$ に $Y$ から相対位相を入れたときの開集合は、$A\cap(Y\cap U)=A\cap U$($U$ は $X$ の開集合)の形である。従ってこれは $X$ から直接入れる相対位相と同じである。$Y$ 内で非空かつ連結な $A$ は $X$ 内でも同じ連結部分集合なので、一点集合となる。$\square$
集合 $I$ を添字とする完全不連結空間の族 $(X_i)_{i\in I}$ の直積 $P=\prod_{i\in I}X_i$ は、積位相に関して完全不連結である。積位相は、有限個の座標だけを各因子の開集合へ制限する集合を基として定まる位相である。MathlibTD26
非空の連結部分集合 $A\subset P$ を取る。各座標射影 $\pi_i\colon P\to X_i$ は連続、すなわち開集合の逆像が開である。実際、その逆像は一座標だけを制限する基本開集合である。
像 $\pi_i(A)$ が二つの非空な相対開集合へ分割できれば、$A$ 内でその逆像を取ることにより $A$ も同様に分割されてしまう。よって $\pi_i(A)$ は連結であり、各 $X_i$ の完全不連結性から一点集合となる。従って $A$ のどの二点もすべての座標が等しく、同じ点である。
積が空なら結論は定義から従う。$I=\emptyset$ の空積は一点空間なので、この場合も含まれる。$\square$
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