関数の増減と極値(monotonicity and local extrema)とは、導関数の符号から増加・減少を決め、極大・極小と最大・最小を読み取る方法である。区間で連続で内部で $f'(x)>0$ なら $f$ はその区間で増加する(平均値の定理による。区間でないと成り立たないことがある)。$f$ が開区間の点 $a$ で極値をとり $a$ で微分可能なら $f'(a)=0$ である(Fermat の定理)が、逆は成り立たず、$x^3$ は $f'(0)=0$ でも $x=0$ で極値をとらない。$f$ が $a$ で連続で $a$ の前後で $f'$ の符号が正から負に変われば極大、負から正に変われば極小である。閉区間で連続な関数の最大値・最小値は、端点、微分できない点、$f'=0$ の点の値を比べて求まる。$f'(a)=0$、$f''(a)>0$ なら極小である(2 階の判定)。
前提知識: 微分係数と導関数の定義(高校数学), 平均値の定理, 区間, 連続関数
数学 II では、3 次関数のグラフを描くときに増減表を作る。導関数 $f'(x)$ の符号を調べ、$f'(x)>0$ の範囲では「増加(↗)」、$f'(x)<0$ の範囲では「減少(↘)」と書き、向きが変わる点で極大・極小を読む。まず、この手順を例で確かめる。
$f(x)=x^3-3x$ とする。導関数は
$$
f'(x)=3x^2-3=3(x+1)(x-1)
$$
である。$f'(x)=0$ となるのは $x=-1$ と $x=1$ のときである。$f'(x)$ の符号は、2 つの因数 $x+1$、$x-1$ の符号で決まる。
| $x$ | $\cdots$ | $-1$ | $\cdots$ | $1$ | $\cdots$ |
|---|---|---|---|---|---|
| $f'(x)$ | $+$ | $0$ | $-$ | $0$ | $+$ |
| $f(x)$ | ↗ | 極大 $2$ | ↘ | 極小 $-2$ | ↗ |
$y=x^3-3x$ のグラフ(上)と導関数 $y=3x^2-3$ のグラフ(下)。導関数が正の範囲(赤)でグラフが上り、負の範囲(青)でグラフが下ることと、符号が変わる $x=\pm1$ で極値をとることを見る図。
同じ $f(x)=x^3-3x$ を $-2\le x\le3$ で考える。ex-mle-cubic-table の増減表に両端を付け加え、値を計算する。
$$
f(-2)=-8+6=-2,\quad f(-1)=2,\quad f(1)=-2,\quad f(3)=27-9=18.
$$
この 4 つの値のうち最大は $18$、最小は $-2$ である。したがって最大値は $18$($x=3$)、最小値は $-2$($x=-2$ と $x=1$)である(図3)。
極大値 $2$ は最大値ではない。極大は「その点の近くで一番高い」という意味で、区間全体で一番高いとは限らないからである。
2次関数の最大・最小 では、同じ関数を $-2\le x\le2$ で考え、微分を使わずに因数分解で最大値 $2$ と最小値 $-2$ を求めた。ここでは導関数の符号から同じ種類の問題を解いている。
左は $y=x^3$。原点で接線は水平だが、グラフは原点を通って上り続け、極値をとらない。右は $y=|x|$。原点でとがっていて微分できないが、極小になっている。
3 つの例から、次の問いが出てくる。
| 高校の計算 | この記事での見方 | ボックス |
|---|---|---|
| $f'>0$ の範囲で ↗ | 平均値の定理から出る「区間での増加」 | thm-mle-monotone |
| 極値の点で $f'=0$ | 内部の極値点では微分係数が $0$(極値についての Fermat の定理) | thm-mle-fermat |
| 増減表で $+\to-$ なら極大 | 導関数の符号の変化による判定(1 階の判定) | thm-mle-first-test |
| 端点と極値を比べて最大・最小 | 最大点・最小点は端点か臨界点 | thm-mle-candidates |
| $f''(a)>0$ なら極小 | 2 階の判定、多変数では Hesse 行列 | prop-mle-second-test、ex-mle-hesse |
$I$ を区間とし、$f$ を $I$ で定義された関数とする。
$f$ を、点 $a$ を含むある開区間で定義された関数とする。
$0<|x-a|<\delta$ は「$x$ が $a$ から $\delta$ 未満の距離にあり、$a$ そのものではない」という意味である。極大は $a$ の近くだけ を見た性質であり、遠くにもっと高い点があってもかまわない。
広い意味の極大は大学の教科書でよく使われる(Leb26 Definition 4.2.1 の relative maximum はこちらである)。定数関数 $f(x)=5$ では、どの点も広い意味の極大かつ広い意味の極小だが、def-mle-local-extremum の意味の極値はどこにもない。
数学 II では「$f'(x)>0$ なら増加」をグラフの接線の傾きから直観的に認めて使う。ここでは、それを数学 III の平均値の定理から証明する。
$I$ を区間とし、$f$ は $I$ で連続で、$I$ の端点以外のすべての点で微分可能とする。
方針:$I$ の 2 点 $x< y$ をとり、$[x,y]$ で平均値の定理を使って、$f(y)-f(x)$ の符号を $f'$ の符号から読む。
段 1(平均値の定理が使えること)。$x< y$ を $I$ の 2 点とする。$I$ は区間なので、$x$ と $y$ の間の数はすべて $I$ に属する。すなわち $[x,y]$ は $I$ に含まれる。$f$ は $I$ で連続なので $[x,y]$ で連続である。$x< t< y$ を満たす $t$ は、$I$ の中で $x$ より大きく $y$ より小さいので、$I$ の端点ではない。仮定から $f$ は $t$ で微分可能である。したがって $f$ は $(x,y)$ で微分可能である。
段 2(平均値の定理)。rem-mle-premises の 1 により
$$
f(y)-f(x)=f'(c)(y-x)
$$
となる $c$ が $x< c< y$ の範囲にある。段 1 と同じ理由で $c$ は $I$ の端点ではない。
段 3(1 の場合)。仮定から $f'(c)>0$ であり、$y-x>0$ である。正の数どうしの積は正なので $f(y)-f(x)>0$、すなわち $f(x)< f(y)$ である。$x< y$ は $I$ の任意の 2 点だったので、$f$ は $I$ で増加する。
段 4(2 の場合)。$f'(c)<0$、$y-x>0$ なので積は負であり、$f(y)-f(x)<0$、すなわち $f(x)>f(y)$ である。$\square$
同じ定理は 平均値の定理による差の評価 でも、平均値の定理の帰結として示している。
$f'$ が $0$ になる点が有限個だけあっても、増加は保たれる。
$I$ を区間とし、$f$ は $I$ で連続、$I$ の端点以外の点で微分可能とする。$I$ の端点以外の点のうち有限個の点 $c_1< c_2<\cdots< c_k$ を除いて $f'(x)>0$ ならば、$f$ は $I$ で増加する。
方針:例外の点で区間を小区間に分け、各小区間で thm-mle-monotone を使い、不等式をつなぐ。
段 1。$x< y$ を $I$ の 2 点とする。$c_1,\dots,c_k$ のうち $x< c_i< y$ を満たすものを小さい順に $d_1<\cdots< d_m$ とする($m=0$ でもよい)。$d_0:=x$、$d_{m+1}:=y$ とおく。
段 2。各 $j=0,1,\dots,m$ について、閉区間 $[d_j,d_{j+1}]$ は $I$ に含まれる。その端点以外の点 $t$($d_j< t< d_{j+1}$)は $I$ の端点でなく、例外の点 $c_i$ でもない($x$ と $y$ の間の例外の点は $d_1,\dots,d_m$ だけで、$t$ はそのどれとも異なる)。よって $f'(t)>0$ である。$f$ は $[d_j,d_{j+1}]$ で連続なので、thm-mle-monotone の 1 をこの閉区間に使うと $f(d_j)< f(d_{j+1})$ である。
段 3。段 2 の不等式を $j=0$ から $j=m$ までつなぐと
$$
f(x)=f(d_0)< f(d_1)<\cdots< f(d_{m+1})=f(y)
$$
となる。$\square$
thm-mle-monotone の逆は成り立たない。$g(x)=x^3$ は増加するが $g'(0)=0$ なので、「増加するなら $f'>0$」は誤りである。正しいのは「増加するなら $f'\ge0$」である(Leb26 Proposition 4.2.7、4.2.8)。
$f$ は点 $a$ を含むある開区間 $J$ で定義され、$a$ で微分可能とする。$f$ が $a$ で広い意味の極大または広い意味の極小になるならば、$f'(a)=0$ である。特に、def-mle-local-extremum の意味の極値をとる点でも $f'(a)=0$ である。
方針:$a$ の右と左で差分商 $\frac{f(x)-f(a)}{x-a}$ の符号を調べる。右からの極限は $0$ 以下、左からの極限は $0$ 以上になり、どちらも $f'(a)$ に等しいので $f'(a)=0$ となる。
段 1(広い意味の極大のとき、差分商の符号)。ある $\delta>0$ があって、$|x-a|<\delta$ を満たす $J$ の点 $x$ で $f(x)\le f(a)$ である。必要なら $\delta$ を小さくとり直して、$a-\delta< x< a+\delta$ の範囲が $J$ に含まれるようにする。すると、$|x-a|<\delta$ を満たすすべての $x$ で $f(x)-f(a)\le0$ である。
Fermat の定理は、極値をとる点の候補を $f'(a)=0$ の解にしぼる。しかし逆は成り立たない(ex-mle-two-surprises の 1)。また、仮定の「開区間の中の点」と「微分可能」は外せない(ex-mle-endpoint、ex-mle-two-surprises の 2)。大学では、$f'(c)=0$ となる点 $c$ を $f$ の臨界点という(Leb26 §4.2.1、Lemma 4.2.2 の後)。
増減表で「$+$ から $-$ に変わる点が極大」と読むのは、次の定理を使っていることになる。
$f$ は点 $a$ で連続とし、ある $\delta>0$ について $a-\delta< x< a$ と $a< x< a+\delta$ の範囲で微分可能とする($a$ そのものでは微分可能でなくてもよい)。
方針:$a$ の左側の閉区間 $[x,a]$ と右側の閉区間 $[a,x]$ で thm-mle-monotone を使う。$a$ で微分可能でなくても、$a$ は小区間の端点なので問題にならない。
段 1(左側の閉区間で使えること)。$a-\delta< x< a$ とする。$x\le t< a$ の点 $t$ では $f$ は微分可能なので連続であり(rem-mle-premises の 3)、$t=a$ では仮定から連続である。よって $f$ は $[x,a]$ で連続である。端点以外の点 $x< t< a$ では微分可能である。右側の閉区間 $[a,x]$($a< x< a+\delta$)についても同じである。
段 2(1 の証明)。左側:$[x,a]$ の端点以外で $f'>0$ なので、thm-mle-monotone の 1 により $f$ は $[x,a]$ で増加し、$f(x)< f(a)$ である。右側:$[a,x]$ の端点以外で $f'<0$ なので、thm-mle-monotone の 2 により $f$ は $[a,x]$ で減少し、$f(a)>f(x)$ である。どちらの場合も $f(x)< f(a)$ なので、$0<|x-a|<\delta$ で $f(x)< f(a)$ となり、$x=a$ で極大である。
段 3(2 の証明)。段 2 と同じ議論で不等号の向きが逆になり、$0<|x-a|<\delta$ で $f(x)>f(a)$ となる。
段 4(3 の証明)。両側とも $f'>0$ とする。段 2 の左側の議論から $a-\delta< x< a$ で $f(x)< f(a)$、右側では $[a,x]$ で増加するので $a< x< a+\delta$ で $f(x)>f(a)$ である。$a$ のどんな近くにも $f(a)$ より小さい値と大きい値の両方があるので、広い意味の極大でも広い意味の極小でもない。両側とも $f'<0$ のときも同じである。$\square$
| $x$ | $\cdots$ | $0$ | $\cdots$ | $3$ | $\cdots$ |
|---|---|---|---|---|---|
| $f'(x)$ | $-$ | $0$ | $-$ | $0$ | $+$ |
| $f(x)$ | ↘ | $0$ | ↘ | 極小 $-27$ | ↗ |
増減表を作るときは、$f'(x)=0$ の点だけでなく、微分できない点も表に入れる。$|x|$ のような点で極値をとることがあるからである。
$\alpha<\beta$ とし、$f$ は閉区間 $[\alpha,\beta]$ で連続とする。このとき $f$ は $[\alpha,\beta]$ で最大値と最小値をとる。さらに、最大値または最小値をとる点 $c$ は、次のどれかである。
方針:存在は最大値・最小値の定理から得る。最大点が内部にあって微分可能なら、そこは広い意味の極大なので Fermat の定理が使える。
段 1(存在)。rem-mle-premises の 2 により、$f$ は $[\alpha,\beta]$ で最大値 $M$ と最小値 $m$ をとる。
段 2(最大点が内部にあるとき)。$f(c)=M$、$\alpha< c<\beta$ とし、$f$ は $c$ で微分可能とする。開区間 $J:=(\alpha,\beta)$ は $c$ を含み、$J$ のすべての点 $x$ で $f(x)\le M=f(c)$ である。よって $f$ を $J$ に制限した関数は $c$ で広い意味の極大になる($\delta$ として $c-\alpha$ と $\beta-c$ の小さいほうをとればよい)。thm-mle-fermat により $f'(c)=0$ である。
段 3(まとめ)。最大値をとる点 $c$ は、端点であるか(1)、内部にあって微分できない点であるか(2)、内部にあって微分できる点であるかのどれかで、最後の場合は段 2 により $f'(c)=0$ である(3)。最小値については、$-f$ の最大値を考えれば同じ結論が出る。$\square$
$y=x^3-3x$ の $-2\le x\le3$ の部分(太線)。候補は両端と $f'=0$ の 2 点の計 4 点で、最大値は右端、最小値は左端と極小点の 2 か所でとる。極大値 $2$ は最大値でないことを見る図。
$f'(a)=0$ の点で第 2 次導関数 $f''(a)$ の符号を見ると、多くの場合、増減表を作らずに極大か極小かが分かる。
$f$ は点 $a$ を含むある開区間で微分可能で、$f'$ が $a$ で微分可能とする。$f'(a)=0$ とする。
方針:$f''(a)$ は差分商 $\frac{f'(x)-f'(a)}{x-a}=\frac{f'(x)}{x-a}$ の極限である。極限が正なら、$a$ の近くでこの商が正なので、$f'(x)$ は $x-a$ と同じ符号をもつ。あとは thm-mle-first-test を使う。
段 1(差分商が正になる範囲)。$L:=f''(a)>0$ とする。$f'(a)=0$ なので
$$
L=\lim_{x\to a}\frac{f'(x)-f'(a)}{x-a}=\lim_{x\to a}\frac{f'(x)}{x-a}
$$
である。極限の定義(極限とε-δ)で誤差の許容幅を $\frac L2$ にとると、ある $\delta>0$ があって、$0<|x-a|<\delta$ ならば
$$
\Bigl|\frac{f'(x)}{x-a}-L\Bigr|<\frac L2
$$
である。このとき $\frac{f'(x)}{x-a}>L-\frac L2=\frac L2>0$ となる。$\delta$ は、$f$ が微分可能な開区間に $a-\delta< x< a+\delta$ が収まるように、必要なら小さくとり直しておく。
段 2($f'$ の符号)。段 1 から、$0<|x-a|<\delta$ で $f'(x)$ と $x-a$ は同じ符号である。すなわち $a-\delta< x< a$ で $f'(x)<0$、$a< x< a+\delta$ で $f'(x)>0$ である。
段 3(1 階の判定)。$f$ は $a$ で微分可能なので連続である。段 2 と thm-mle-first-test の 2 により、$f$ は $x=a$ で極小になる。これが 1 である。
段 4(2 の場合)。$f''(a)<0$ なら、$-f$ について $(-f)'(a)=0$、$(-f)''(a)>0$ である。1 により $-f$ は $a$ で極小、すなわち $f$ は $a$ で極大になる。$\square$
この形の判定は Leb26 Proposition 4.3.3 と Exercise 4.3.11 にある(そこでは広い意味でない極小を strict relative minimum と呼んでいる)。
$f''(a)=0$ のときは、この判定では何も分からない。ex-mle-second-zero で見るように、極小にも極大にも、どちらでもない場合にもなりうる。そのときは増減表(thm-mle-first-test)に戻る。$f''$ の符号はグラフの凹凸も表す。凹凸と変曲点は 接線・法線と曲線の凹凸 で扱う。
この記事の定理の仮定を 1 つずつ外すと、結論が崩れる。
| 外した仮定 | 崩れる主張 | ボックス |
|---|---|---|
| 定義域が区間(thm-mle-monotone) | $f'>0$ なら増加 | ex-mle-not-interval |
| 区間の各点で $f'>0$(1 点だけでは足りない) | $a$ の近くで増加 | ex-mle-one-point |
| $a$ が開区間の中の点(thm-mle-fermat) | 極値の点で $f'(a)=0$ | ex-mle-endpoint |
| $a$ で微分可能(thm-mle-fermat) | 極値の点で $f'(a)=0$ | ex-mle-two-surprises の 2 |
| (逆向きの主張) | $f'(a)=0$ なら極値 | ex-mle-two-surprises の 1 |
| $f''(a)\ne0$(prop-mle-second-test) | 2 階の判定で極大・極小が決まる | ex-mle-second-zero |
| 区間が端点を含む(thm-mle-candidates) | 最大値の存在 | ex-mle-open-interval |
$f(x)=-\dfrac1x$ を $x\ne0$ で考える。$f'(x)=\dfrac1{x^2}>0$ がすべての点で成り立つ。しかし $-1<1$ で $f(-1)=1>-1=f(1)$ なので、$f$ は定義域全体では増加しない。
満たす性質:定義域のすべての点で微分可能で $f'>0$。満たさない性質:定義域が区間であること($0$ が抜けている)。破る主張:thm-mle-monotone の結論。証明の段 1 で「$[x,y]$ が定義域に含まれる」を使ったが、$x=-1$、$y=1$ ではそれが成り立たない。$x<0$ だけ、$x>0$ だけの区間にそれぞれ制限すれば、thm-mle-monotone によりどちらでも増加する。
$g(x)=x+2x^2\sin\dfrac1x$($x\ne0$)、$g(0)=0$ とする。
段 1($g'(0)=1$)。$x\ne0$ で $\dfrac{g(x)-g(0)}{x-0}=1+2x\sin\dfrac1x$ であり、$\bigl|2x\sin\frac1x\bigr|\le2|x|$ なので、$x\to0$ でこれは $1$ に近づく。よって $g'(0)=1>0$ である。
段 2($0$ のすぐ近くに減る部分がある)。$x\ne0$ では $g'(x)=1+4x\sin\dfrac1x-2\cos\dfrac1x$ である。$x_k=\dfrac1{2k\pi}$($k=1,2,3,\dots$)では $\sin\frac1{x_k}=\sin2k\pi=0$、$\cos\frac1{x_k}=1$ なので $g'(x_k)=1-2=-1<0$ である。$g'$ は $x\ne0$ で連続なので、$x_k$ を含むある小さい区間で $g'<0$ となり、thm-mle-monotone によりそこで $g$ は減少する。$x_k$ は $k$ を大きくするといくらでも $0$ に近づくので、$0$ を含むどんな開区間にも減少する部分がある。数値で見ると、$x_1=0.159\ldots$ の近くで $g(0.15)=0.1668\ldots>g(0.17)=0.1474\ldots$ である。
満たす性質:$g$ は微分可能で $g'(0)>0$。満たさない性質:$0$ を含む区間の各点で $g'>0$ であること。破る主張:「$g'(0)>0$ なら $0$ の近くで増加」。thm-mle-monotone が区間のすべての点での符号を仮定するのは、このためである。
$f(x)=x$ を閉区間 $[0,1]$ で考える。最大値は $x=1$ での $f(1)=1$ である。しかし $f'(1)=1\ne0$ である(左からの差分商はつねに $1$)。
満たす性質:$f$ は微分可能で、$x=1$ で区間の最大値をとる。満たさない性質:$1$ を含む開区間で $f(x)\le f(1)$ となること($1$ の右側の点は区間に入っていない)。破る主張:thm-mle-fermat の結論。thm-mle-candidates で端点を別に候補に入れるのは、このためである。
3 つの関数 $x^4$、$-x^4$、$x^3$ は、どれも $x=0$ で $f'(0)=0$、$f''(0)=0$ である($(x^4)''=12x^2$、$(x^3)''=6x$)。
$f(x)=x^3-3x$ を $-2< x<3$(端点を含まない)で考える。
段 1(最小値はある)。ex-mle-cubic-interval により、$-2\le x\le3$ で $f(x)\ge-2$ である。$x=1$ は $-2< x<3$ に含まれ、$f(1)=-2$ なので、最小値は $-2$ である。
段 2(どの値も $18$ 未満)。$f(x)-2=(x+1)^2(x-2)$(ex-mle-delta の 1)なので、$x<1$ では $x-2<0$ から $f(x)\le2$ である。$1\le x\le3$ では $f'(x)=3(x+1)(x-1)$ は $x=1$ 以外で正なので、prop-mle-finite-zeros により $f$ は $[1,3]$ で増加し、$1\le x<3$ で $f(x)< f(3)=18$ である。
段 3(最大値はない)。範囲の点 $x$ を 1 つとる。$x\ge1$ なら、$x':=\frac{x+3}2$ は $x< x'<3$ を満たす範囲の点で、段 2 の増加から $f(x')>f(x)$ である。$x<1$ なら、$f(x)\le2< f(2.5)=15.625-7.5=8.125$ である。どちらの場合も $f(x)$ より大きい値があるので、$f(x)$ は最大値ではない。値は $x$ を $3$ に近づけると $18$ に近づくが、$18$ にはならない。
満たす性質:連続、有界な区間。満たさない性質:区間が端点を含むこと。破る主張:thm-mle-candidates の「最大値が存在する」。
2 変数の関数 $f(x,y)$ でも、極値の点では「どの方向の傾きも $0$」になる。$x$ だけを動かしたときの微分(偏微分)$f_x$ と、$y$ だけを動かしたときの微分 $f_y$ の両方が $0$ になる点を、$f$ の臨界点という。臨界点が極小か極大かを見分けるのが、2 階の判定の 2 変数版である。
次の 2 つの関数はどちらも原点 $(0,0)$ で $f_x=f_y=0$ となる。原点で極小になるかどうかを調べる。
1:$y$ を定数とみて $x$ について平方完成すると
$$
F(x,y)=\Bigl(x+\frac y2\Bigr)^2+\frac34y^2
$$
である(右辺を展開すると $x^2+xy+\frac{y^2}4+\frac{3y^2}4$)。2 つの項はどちらも $0$ 以上で、両方が $0$ になるのは $y=0$ かつ $x+\frac y2=0$、すなわち $(x,y)=(0,0)$ のときだけである。よって原点以外で $F>0=F(0,0)$ であり、原点で極小である。
2:直線 $y=x$ の上では $G(x,x)=x^2+3x^2+x^2=5x^2$ で、原点が最小である。直線 $y=-x$ の上では $G(x,-x)=x^2-3x^2+x^2=-x^2$ で、原点が最大である。原点のどんな近くにも $G>0$ の点と $G<0$ の点があるので、原点は極大でも極小でもない。このような点を鞍点という(馬の鞍の形から)。$\square$
2 階の偏導関数を並べた行列
$$
H=\begin{pmatrix}f_{xx}&f_{xy}\\ f_{xy}&f_{yy}\end{pmatrix}
$$
を Hesse行列 という。臨界点で $f_{xx}>0$ かつ $\det H=f_{xx}f_{yy}-f_{xy}^2>0$ ならば、2 回連続微分可能な関数では、その点は極小である(Leb26b Exercise 8.6.7 は臨界点が原点の場合である。平行移動すれば一般の点でも同じである。本記事では証明しない)。2 次式 $ax^2+2bxy+cy^2$ では、$ac-b^2<0$ なら原点が鞍点になる(2 次形式の分類。2次曲線と2次形式)。
ex-mle-hesse では、$F$ の $H$ は $\begin{pmatrix}2&1\\ 1&2\end{pmatrix}$ で $\det H=4-1=3>0$、$G$ の $H$ は $\begin{pmatrix}2&3\\ 3&2\end{pmatrix}$ で $\det H=4-9=-5<0$ である。高校の平方完成で見た「極小」と「鞍点」が、行列式の符号で判定できる(図4)。1 変数の $f''(a)$ の符号(prop-mle-second-test)は、$1\times1$ の Hesse 行列の符号にあたる。平方完成が $\det H$ と結びつく理由は、2 次形式の分類として 2次曲線と2次形式 で扱う。
左は $x^2+xy+y^2$ の等高線で、原点を囲む楕円になり原点が極小であることを見る。右は $x^2+3xy+y^2$ の等高線で双曲線になり、直線 $y=x$ の上では増え、$y=-x$ の上では減る鞍点であることを見る図。
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