数値的同値(numerical equivalence)とは、射影スキーム $X$ の上の 2 つの可逆層(または因子)が $X$ のすべての曲線の上で同じ次数をもつことであり、数値的同値類の群 $N^1(X)$ は Picard 群の商として有限生成自由アーベル群になる。曲線との交叉数がすべて $0$ の可逆層はあらゆる交叉数に寄与しないので、交叉数・豊富性・nef 性は数値的同値類だけで決まり、非特異射影曲面ではすべての因子との交叉数が $0$ という定義と一致する。数値的同値は線型同値・代数的同値より粗く、曲線の上では次数が等しいことにあたり、Enriques 曲面の標準因子のように代数的同値でない例がある。
射影多様体の上の 2 つの可逆層(あるいは因子)は、どの曲線の上でも同じ次数をもつとき数値的同値であるという。数値的同値は、因子に対する古典的な同値関係(線型同値・代数的同値・数値的同値)のうちで最も粗く、交叉数だけを見る同値関係である。粗い分だけ扱いやすく、数値的同値類の群 $N^1(X)$ は有限生成自由アーベル群になり、その実係数化 $N^1(X)_\mathbb{R}$ は有限次元の実ベクトル空間として、豊富な因子や nef 因子のなす錐の舞台になる。
この記事では、射影スキームの上の可逆層の数値的同値と、$1$ 次元サイクルの数値的同値を定義し、曲線との交叉数がすべて $0$ の可逆層はあらゆる交叉数に寄与しないこと、数値的同値が引き戻しで保たれること、曲面では「すべての因子との交叉数が $0$」という定義と一致することを証明する。曲線の上では数値的同値は次数が等しいことにほかならず、種数が正の曲線では線型同値よりも真に粗い。
この記事を通して $k$ を体、$X$ を $k$ 上の射影スキームとする。$X$ の曲線とは、$1$ 次元の整な閉部分スキームのことをいう。曲線 $C$ の上の可逆層 $\mathcal{N}$ の次数を
$$
\deg_C\mathcal{N}:=\chi(C,\mathcal{N})-\chi(C,\mathcal{O}_C)
$$
で定める($\chi$ は層コホモロジーの Euler 標数)。$X$ の可逆層 $\mathcal{L}$ については $\deg_C\mathcal{L}:=\deg_C(\mathcal{L}|_C)$ と書く。これは交叉数 $(\mathcal{L}\cdot C)$ に等しく(交叉数 の命題「1 次元の台をもつ層の交叉数」)、交叉数の多重線型性(同記事の定理「交叉数の対称性と多重線型性」)により $\mathcal{L}\mapsto\deg_C\mathcal{L}$ は群準同型 $\operatorname{Pic}(X)\to\mathbb{Z}$ である。
可逆層 $\mathcal{L}$ が数値的に自明(numerically trivial)であるとは、$X$ のすべての曲線 $C$ について $\deg_C\mathcal{L}=0$ となることをいう。2 つの可逆層 $\mathcal{L},\mathcal{L}'$ は、$\mathcal{L}\otimes\mathcal{L}'^\vee$ が数値的に自明であるとき数値的同値(numerically equivalent)であるといい、$\mathcal{L}\equiv\mathcal{L}'$ と書く。Cartier 因子 $D,D'$ は $\mathcal{O}_X(D)\equiv\mathcal{O}_X(D')$ のとき数値的同値であるという。数値的に自明な可逆層の類は $\operatorname{Pic}(X)$ の部分群をなし、その商を
$$
N^1(X):=\operatorname{Pic}(X)/\{\text{数値的に自明な可逆層}\}
$$
と書く。$N^1(X)$ の階数を $X$ の Picard 数といい、$\rho(X)$ と書く。
$X$ の曲線を基底とする自由アーベル群を $Z_1(X)$ とし、$\mathcal{L}\in\operatorname{Pic}(X)$ と $z=\sum a_iC_i\in Z_1(X)$ に対し $(\mathcal{L}\cdot z):=\sum a_i\deg_{C_i}\mathcal{L}$ とおく。$z$ が数値的同値で $0$ であるとは、すべての $\mathcal{L}$ について $(\mathcal{L}\cdot z)=0$ となることをいい、その商を $N_1(X)$ と書く。
定義により、交叉数は双線型写像 $N^1(X)\times N_1(X)\to\mathbb{Z}$ を誘導し、これは両側で非退化である(左の元がすべての右の元と $0$ を与えるなら左の元は $0$、逆も同様)。$X$ が代数閉体上の非特異射影多様体なら、余次元 $q$ の任意のサイクルについて Chow 環の交叉積を使った数値的同値が定義される(代数的サイクル の定義「代数的同値・ホモロジー同値・数値的同値」の 3)。因子と曲線の交叉積の次数は $\deg_C\mathcal{O}_X(D)$ に等しい($D$ を $C$ を含まない有効因子の差に取り替えれば、Har77 Appendix A の公理 A7(p. 427)による)ので、余次元 $1$ のサイクルと $1$ 次元のサイクルについては、そこでの定義はここでの定義と同じ同値関係を与える。
可逆層の同型類(線型同値類)は、曲線の上では次数という整数と、$\operatorname{Pic}^0$ という連続的なパラメータの組で決まる。数値的同値は、この連続的なパラメータを忘れて、各曲線での次数という離散的な情報だけを残す。たとえば楕円曲線 $E$ の上の可逆層 $\mathcal{O}_E(P-O)$ は、$P$ を動かすと互いに線型同値でない可逆層の族を作るが、どれも次数 $0$ で数値的に自明である。こうして $\operatorname{Pic}(X)$ の大きな連続部分が消え、$N^1(X)$ は有限生成の格子になる。
もう 1 つの見方は双対性である。$N^1(X)$ は因子の、$N_1(X)$ は曲線の「交叉数で区別できる部分」であり、交叉数がちょうど 2 つを双対にする。位相幾何に例えれば、$N^1(X)_\mathbb{R}$ と $N_1(X)_\mathbb{R}$ はコホモロジー $H^2$ とホモロジー $H_2$ の中の代数的な部分にあたり($k=\mathbb{C}$ なら交叉数は第 1 Chern 類の値に一致する。交叉数 の「補足」)、豊富性や nef 性といった正値性は、この有限次元の空間の中の錐で記述される。
$X=\mathbb{P}^n_k$ では $\operatorname{Pic}(X)\cong\mathbb{Z}$ で $\mathcal{O}(1)$ が生成元である(Picard群 の例「射影空間の場合」)。直線 $\ell$ の上で $\deg_\ell\mathcal{O}(d)=d$ だから、$\mathcal{O}(d)$ が数値的に自明なのは $d=0$ のときに限り、$N^1(\mathbb{P}^n)=\operatorname{Pic}(\mathbb{P}^n)\cong\mathbb{Z}$、$\rho=1$ である。
$C$ を $k$ 上の整な射影曲線とすると、$C$ に含まれる曲線は $C$ 自身だけなので、可逆層 $\mathcal{L}$ が数値的に自明であることと $\deg_C\mathcal{L}=0$ は同値である。$k$ が代数閉体で $C$ が非特異なら、閉点 $P$ について $\deg_C\mathcal{O}_C(P)=\chi(\mathcal{O}_P)=1$ だから次数は全射で、$N^1(C)\cong\mathbb{Z}$ である。$C$ の種数が正なら、異なる 2 点 $P\ne Q$ について $\mathcal{O}_C(P-Q)$ は数値的に自明だが、$P$ と $Q$ は線型同値でない(線型同値 の定理「有理曲線の判定」)。したがって数値的同値は線型同値より真に粗い。
$k$ を代数閉体、$X=\mathbb{P}^1\times\mathbb{P}^1$ とし、2 つの直線族の代表を $\ell_1=\{a\}\times\mathbb{P}^1$、$\ell_2=\mathbb{P}^1\times\{b\}$ とする。$\operatorname{Pic}(X)\cong\mathbb{Z}^2$ は $\mathcal{O}(\ell_1),\mathcal{O}(\ell_2)$ で生成され、交叉数は $\ell_1^2=\ell_2^2=0$、$\ell_1\cdot\ell_2=1$ である(曲面の交点形式とRiemann–Rochの定理 の例「$\mathbb{P}^1\times\mathbb{P}^1$」)。$\mathcal{O}(a\ell_1+b\ell_2)$ の $\ell_2$、$\ell_1$ 上の次数は $a$、$b$ だから、数値的に自明なのは $a=b=0$ のときに限り、$N^1(X)=\operatorname{Pic}(X)\cong\mathbb{Z}^2$、$\rho=2$ である。交叉形式の行列は $\begin{pmatrix}0&1\\1&0\end{pmatrix}$ であり、符号数 $(1,1)$ をもつ(Hodge指数定理)。
複素数体上の Enriques 曲面 $S$ の標準因子 $K_S$ は $2K_S\sim0$ をみたすので、任意の曲線 $C$ について $2\deg_C\mathcal{O}(K_S)=0$、すなわち $K_S$ は数値的に自明である。しかし $K_S$ は代数的同値で $0$ でない(代数的同値 の例「反例:数値的同値だが代数的同値でない因子」)。数値的同値は代数的同値よりも真に粗い。
$k$ を代数閉体、$X=V_+(xy)\subset\mathbb{P}^2_k$ を 2 本の直線 $C_1=\{x=0\}$、$C_2=\{y=0\}$ の和とし、$C_1$ 上の点 $P$、$C_2$ 上の点 $Q$ を交点 $(0:0:1)$ と異なるようにとる。$X$ は $P,Q$ で非特異なので $P,Q$ は有効 Cartier 因子であり、$\mathcal{L}:=\mathcal{O}_X(P-Q)$ とおく。$\mathcal{L}|_{C_1}=\mathcal{O}_{C_1}(P)$、$\mathcal{L}|_{C_2}=\mathcal{O}_{C_2}(-Q)$ だから $\deg_{C_1}\mathcal{L}=1$、$\deg_{C_2}\mathcal{L}=-1$ で、$\mathcal{L}$ は数値的に自明でない。一方 $X$ 全体での $\chi(\mathcal{L})-\chi(\mathcal{O}_X)=(\mathcal{L}\cdot\mathcal{O}_X)$ は、交叉数 の命題「1 次元の台をもつ層の交叉数」により $\deg_{C_1}\mathcal{L}+\deg_{C_2}\mathcal{L}=0$ である。曲線が既約でないと、全体の次数が $0$ でも数値的に自明とは限らない。
$k$ を標数 $2$ でない体とし、$X=V_+(xy-z^2)\subset\mathbb{P}^3_k$(2 次錐、頂点 $(0:0:0:1)$)とする。頂点を通る直線 $\ell=\{x=z=0\}$ は Weil 因子であるが Cartier 因子ではない(Cartier因子 の例「反例:2次錐の上の直線」)。$\ell$ は曲線なので可逆層の次数 $\deg_\ell\mathcal{L}$ は定まるが、$\mathcal{O}_X(\ell)$ は可逆層でないので、「すべての因子 $E$ について $D\cdot E=0$」という条件の相手 $E$ に Weil 因子 $\ell$ を取ることはできない。prop-ne-surface が使う「曲線=因子」という同一視が崩れるのはこの点だけである。相手を Cartier 因子に限れば、この錐では $\operatorname{Pic}(X)=\mathbb{Z}\cdot\mathcal{O}_X(1)$ である。実際、$\operatorname{Cl}(X)=\mathbb{Z}\ell$ で、超平面切断 $H=X\cap\{x=0\}$ は $2\ell$ に線型同値である(Har77 II, Exercise 6.5 (c)(1), p. 147。$X\cap\{x=0\}$ は $\ell$ を重複度 $2$ で含み、$X\setminus\ell\cong\mathbb{A}^2$ である)。$X$ は正規なので $\operatorname{Pic}(X)\to\operatorname{Cl}(X)$ は単射であり(Cartier因子 の定理「CartierからWeilへ」の 2)、像は $\mathcal{O}_X(1)$ の像 $2\ell$ を含み $\ell$ を含まないから、$2\mathbb{Z}\ell$ に等しい(奇数倍 $(2m+1)\ell$ が Cartier なら $\ell=(2m+1)\ell-mH$ も Cartier になる)。したがって、Cartier 因子 $D$ について「すべての曲線で次数 $0$」と「すべての Cartier 因子 $E$ で $D\cdot E=0$」はどちらも $D$ の類が $0$ であることと同値であり、2 つの条件は一致する。
| 外す条件 | 反例 | 成り立たなくなること |
|---|---|---|
| 曲線が既約(ex-ne-curve の「次数 $0$ なら数値的に自明」) | 交わる 2 直線 $xy=0$ 上の $\mathcal{O}(P-Q)$ | 全体の次数は $0$ なのに数値的に自明でない |
曲線との交叉数がすべて $0$ という条件は、$1$ 次元の情報しか見ていないように見える。しかし実際には、高い次元の部分多様体との交叉数もすべて $0$ になる。
$\mathcal{L}$ を $X$ の数値的に自明な可逆層とする。$n\ge1$、$\dim\operatorname{Supp}\mathcal{F}\le n$ の任意の連接層 $\mathcal{F}$ と任意の可逆層 $\mathcal{L}_2,\dots,\mathcal{L}_n$ について
$$
(\mathcal{L}\cdot\mathcal{L}_2\cdots\mathcal{L}_n\cdot\mathcal{F})=0
$$
である。したがって交叉数 $(\mathcal{L}_1\cdots\mathcal{L}_n\cdot\mathcal{F})$ は各 $\mathcal{L}_i$ の数値的同値類だけで決まり、多重線型写像 $N^1(X)^n\to\mathbb{Z}$ を定める。
$n$ についての帰納法で示す。$n=1$ のとき、$\operatorname{Supp}\mathcal{F}$ の $1$ 次元の既約成分を $C_1,\dots,C_t$、その生成点での $\mathcal{F}$ の茎の長さを $\ell_j$ とすると、交叉数 の命題「1 次元の台をもつ層の交叉数」により
$$
(\mathcal{L}\cdot\mathcal{F})=\sum_{j=1}^t\ell_j\,\deg_{C_j}\mathcal{L}=0
$$
である。
$n\ge2$ とし、$n-1$ では主張が成り立つとする。$S$ を $\mathcal{F}$ の随伴点の集合とする。交叉数 の補題「随伴点を避ける切断」を $\mathcal{L}_n$ と $\mathcal{O}_X$ に当てはめ、十分大きい $N$ をとると、$\mathcal{A}:=\mathcal{L}_n(N)$ と $\mathcal{B}:=\mathcal{O}_X(N)$ は $S$ のどの点でも消えない切断 $s_\mathcal{A}$、$s_\mathcal{B}$ をもち、$\mathcal{L}_n\cong\mathcal{A}\otimes\mathcal{B}^\vee$ である。交叉数の多重線型性(交叉数 の定理「交叉数の対称性と多重線型性」)により
$$
(\mathcal{L}\cdot\mathcal{L}_2\cdots\mathcal{L}_n\cdot\mathcal{F})=(\mathcal{L}\cdot\mathcal{L}_2\cdots\mathcal{L}_{n-1}\cdot\mathcal{A}\cdot\mathcal{F})-(\mathcal{L}\cdot\mathcal{L}_2\cdots\mathcal{L}_{n-1}\cdot\mathcal{B}\cdot\mathcal{F})
$$
である。交叉数 の補題「制限の公式」により、右辺の第 1 項は $(\mathcal{L}\cdot\mathcal{L}_2\cdots\mathcal{L}_{n-1}\cdot\mathcal{F}/s_\mathcal{A}\mathcal{F})$ に等しく、$\dim\operatorname{Supp}(\mathcal{F}/s_\mathcal{A}\mathcal{F})\le n-1$ だから、帰納法の仮定によりこれは $0$ である。第 2 項も同様に $0$ である。
後半:$\mathcal{L}_1\equiv\mathcal{L}_1'$ なら、多重線型性により 2 つの交叉数の差は $(\mathcal{L}_1\otimes\mathcal{L}_1'^\vee\cdot\mathcal{L}_2\cdots\mathcal{L}_n\cdot\mathcal{F})$ であり、前半により $0$ である。対称性により他の変数でも同じである。$\square$
この定理とその証明は Vak25 Proposition 20.1.6(p. 578)にあり、同書は $X$ が固有な場合の文献も挙げている。帰結として、$n$ 次元の閉部分多様体 $V$ に対する $(\mathcal{L}^n\cdot V)$ は $\mathcal{L}$ の数値的同値類だけで決まる。Nakai–Moishezon の判定法は「すべての閉部分多様体 $V$ について $(\mathcal{L}^{\dim V}\cdot V)>0$ なら $\mathcal{L}$ は豊富」という形をしている(Vak25 Theorem 20.4.1, p. 589)ので、豊富な可逆層であることは数値的同値類だけで決まる性質である(同 Remarks 20.4.2)。すべての曲線 $C$ で $\deg_C\mathcal{L}\ge0$ となる可逆層を nef(numerically effective)といい(Vak25 Definition 18.4.13, p. 513)、nef であることも定義から数値的同値類だけで決まる。
$\pi\colon Y\to X$ を $k$ 上の射影スキームの間の射、$\mathcal{L}$ を $X$ の可逆層とする。$Y$ の曲線 $C'$ の像 $\pi(C')$ が曲線 $C$ なら $\pi|_{C'}\colon C'\to C$ は有限全射で
$$
\deg_{C'}\pi^*\mathcal{L}=[K(C'):K(C)]\,\deg_C\mathcal{L}
$$
であり、$\pi(C')$ が 1 点なら $\deg_{C'}\pi^*\mathcal{L}=0$ である。とくに $\mathcal{L}$ が数値的に自明なら $\pi^*\mathcal{L}$ も数値的に自明であり、$\pi^*$ は準同型 $N^1(X)\to N^1(Y)$ を誘導する。
$C'$ は $k$ 上射影的で $X$ は分離的だから、$\pi|_{C'}\colon C'\to X$ は射影射であり(Har77 II, Exercise 4.9, p. 107)、像 $\pi(C')$ は既約な閉集合で次元は $1$ 以下である。
像が 1 点 $x$ のとき:$C'$ は被約だから $\pi|_{C'}$ は $\operatorname{Spec}\kappa(x)$ を経由し(Har77 II, Exercise 3.11 (d), p. 92)、$\pi^*\mathcal{L}|_{C'}$ は $\operatorname{Spec}\kappa(x)$ 上の可逆層、すなわち自明な層の引き戻しなので $\mathcal{O}_{C'}$ と同型であり、次数は $0$ である。
像が曲線 $C$(被約な構造をもつ整な閉部分スキーム)のとき:$C'$ は被約なので、同じ理由で $\pi|_{C'}$ は $C$ を経由し、$f\colon C'\to C$ は射影的で全射である。$C$ の閉点の上のファイバーは $C'$ の真の閉集合(全体なら像が 1 点)なので有限集合である。$C'$ の閉点は閉点に移るので、$C$ の生成点の上のファイバーは $C'$ の生成点だけである。よって $f$ のファイバーはすべて有限であり、射影的でファイバーが有限な射は有限射である(Har77 III, Exercise 11.2, p. 280)。有限射はアフィン射なので $H^i(C',\mathcal{G})=H^i(C,f_*\mathcal{G})$(Har77 III, Exercise 4.1, p. 222)であり、射影公式 $f_*(f^*\mathcal{N})\cong f_*\mathcal{O}_{C'}\otimes\mathcal{N}$(Har77 II, Exercise 5.1 (d), p. 124)から、$\mathcal{N}:=\mathcal{L}|_C$ について
$$
\deg_{C'}f^*\mathcal{N}=\chi(C,f_*\mathcal{O}_{C'}\otimes\mathcal{N})-\chi(C,f_*\mathcal{O}_{C'})=-(\mathcal{N}^\vee\cdot f_*\mathcal{O}_{C'})=(\mathcal{N}\cdot f_*\mathcal{O}_{C'})
$$
である(交叉数は $C$ の上でとり、最後の等号は多重線型性による)。$f_*\mathcal{O}_{C'}$ は台が $C$ の連接層で、生成点での茎は $K(C)$ 上 $[K(C'):K(C)]$ 次元のベクトル空間 $K(C')$ である。交叉数 の命題「1 次元の台をもつ層の交叉数」により右辺は $[K(C'):K(C)](\mathcal{N}\cdot C)=[K(C'):K(C)]\deg_C\mathcal{L}$ である。
最後の主張は、$Y$ のどの曲線 $C'$ についても上の 2 つの場合のどちらかで $\deg_{C'}\pi^*\mathcal{L}=0$ となることによる。$\square$
$\pi^*$ と押し出し $\pi_*\colon Z_1(Y)\to Z_1(X)$($C'\mapsto[K(C'):K(C)]\,C$、像が点なら $0$)について、上の式は $(\pi^*\mathcal{L}\cdot z)=(\mathcal{L}\cdot\pi_*z)$($z\in Z_1(Y)$)という射影公式の形をしている。したがって $\pi_*$ も $N_1(Y)\to N_1(X)$ を誘導し、$\pi^*$ と $\pi_*$ は交叉数の対について互いに双対である。
$k$ を代数閉体、$X$ を $k$ 上の非特異射影曲面とする。交叉理論 の定理「交叉形式の符号」の前の説明や Har77 V §1(p. 364)では、因子 $D$ が数値的同値で $0$ であることを「すべての因子 $E$ について $D\cdot E=0$」で定義する。曲面の交点数 $D\cdot E$ は、交叉数 で $n=2$、$\mathcal{F}=\mathcal{O}_X$ とした $(\mathcal{O}_X(D)\cdot\mathcal{O}_X(E))$ と同じ式で定義される(曲面の交点形式とRiemann–Rochの定理 の定義「交点数」)。
$X$ を代数閉体上の非特異射影曲面、$D$ を因子とする。$D$ が def-ne-numerical-equivalence の意味で数値的に自明であることと、すべての因子 $E$ について $D\cdot E=0$ であることは同値である。
$X$ は非特異なので、曲線 $C\subset X$ は素因子であり、有効 Cartier 因子で、その閉部分スキームは被約な $C$ である(Cartier因子 の定理「CartierからWeilへ」と系「正規スキーム上の有効性とイデアル層」)。$X$ は整なので $\mathcal{O}_X$ の随伴点は生成点だけであり、$C$ の標準切断はそこで消えない。交叉数 の補題「制限の公式」により
$$
D\cdot C=(\mathcal{O}_X(D)\cdot C\cdot\mathcal{O}_X)=(\mathcal{O}_X(D)\cdot\mathcal{O}_C)=\deg_C\mathcal{O}_X(D)
$$
である。したがって、すべての $E$ で $D\cdot E=0$ なら、とくに $E=C$ として $D$ は数値的に自明である。逆に $D$ が数値的に自明なら、任意の因子 $E=\sum n_iC_i$($C_i$ は曲線)について、交点数の双線型性から $D\cdot E=\sum n_i\deg_{C_i}\mathcal{O}_X(D)=0$ である。$\square$
したがって曲面では $N^1(X)$ は Har77 V, Remark 1.9.1 の $\operatorname{Num}X$ と同じものであり、交叉形式は $N^1(X)$ の上の非退化な対称双線型形式を与える。その符号数が $(1,\rho-1)$ であることが Hodge の指数定理である(交叉理論 の定理「交叉形式の符号」、Hodge指数定理)。
$N^1(X)$ は捩れをもたないアーベル群である。
$m\ge1$ と可逆層 $\mathcal{L}$ について $\mathcal{L}^{\otimes m}$ が数値的に自明なら、すべての曲線 $C$ で $m\deg_C\mathcal{L}=\deg_C\mathcal{L}^{\otimes m}=0$ であり、$\deg_C\mathcal{L}$ は整数だから $0$ である。よって $\mathcal{L}$ は数値的に自明である。$\square$
さらに $N^1(X)$ は有限生成である。これは、代数的同値類の群 $\operatorname{NS}(X)$(Néron–Severi群)が有限生成であるという Néron–Severi の定理(基底の定理)と、代数的同値ならば数値的同値であること(後述)から従い、$N^1(X)$ は $\operatorname{NS}(X)$ の商として有限生成であり、捩れをもたないので階数 $\rho(X)$ の自由アーベル群になる(Vak25 §18.4.12, p. 513、Har77 V, Exercise 1.7, p. 367)。
因子に対する同値関係は、細かい順に
$$
\text{線型同値}\ \Longrightarrow\ \text{代数的同値}\ \Longrightarrow\ \text{数値的同値}
$$
と並ぶ。最初の含意は 代数的同値 の命題「有理同値ならば代数的同値」にある(Har77 V, Exercise 1.7 (b))。2 番目の含意は、平坦な曲線の族の上で可逆層の次数が一定であることによる(Vak25 Corollary 24.7.3, p. 719、曲面の場合は 代数的同値 の命題「曲面上の交叉数の不変性」と Har77 V, Exercise 1.7 (c))。どちらの逆も成り立たない(ex-ne-curve、ex-ne-enriques)。非特異射影多様体では、数値的同値と代数的同値の差は $\operatorname{NS}(X)$ の捩れ部分群にちょうど一致する(Matsusaka の定理。代数的同値 の定理「同値関係の階層」の 2)。
高い余次元のサイクルについては、数値的同値はホモロジー同値より粗く、両者が一致するかどうかは Grothendieck の標準予想 D の内容である(代数的同値 の注意「階層の出典」)。
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