p進数体(field of p-adic numbers)とは、有理数体 $\mathbb{Q}$ を素数 $p$ の $p$ 進絶対値について完備化した体 $\mathbb{Q}_p$ である。Ostrowski の定理により、$\mathbb{Q}$ の完備化は実数体 $\mathbb{R}$ とすべての $\mathbb{Q}_p$ で尽きる。$\mathbb{Q}_p$ は局所コンパクトで順序が入らず、乗法群は $p$ が奇素数なら $\mathbb{Z}\times\mathbb{Z}/(p-1)\mathbb{Z}\times\mathbb{Z}_p$ に同型で、平方類は $4$ 個($p=2$ では $8$ 個)ある。自己同型は恒等写像だけで、異なる素数の $p$ 進数体は同型でない。代数閉包は無限次で完備でなく、その完備化 $\mathbb{C}_p$ は代数閉体である。
素数 $p$ を 1 つ固定する。有理数体 $\mathbb Q$ を $p$ 進絶対値について完備化した体が p進数体(field of $p$-adic numbers)$\mathbb Q_p$ である。構成・$p$ 進展開・$p$ 進整数環 $\mathbb Z_p$ の性質は p進数・p進整数 の記事が扱う。この記事は、でき上がった体 $\mathbb Q_p$ そのものを 1 つの数学的対象として眺め、次の問いに答える。
以下、$v_p$ を $p$ 進付値、$|x|_p=p^{-v_p(x)}$($|0|_p=0$)を $p$ 進絶対値とする(p進付値)。
距離 $d_p(x,y)=|x-y|_p$ についての有理数体 $\mathbb Q$ の完備化を p進数体 といい、$\mathbb Q_p$ と書く。$\mathbb Q_p$ は体であり、$|\cdot|_p$ は $\mathbb Q_p$ 上の絶対値に一意に連続に延長され、$\mathbb Q_p$ はこの絶対値について完備である(p進数 の記事の命題「絶対値と体構造の延長」)。$0$ でない $x\in\mathbb Q_p$ について $v_p(x)\in\mathbb Z$ を $|x|_p=p^{-v_p(x)}$ で定め、
$$
\mathbb Z_p=\{x\in\mathbb Q_p\mid |x|_p\le1\},\qquad \mathbb Z_p^\times=\{x\in\mathbb Q_p\mid |x|_p=1\}
$$
とおく。
$\mathbb Z_p$ は $\mathbb Q_p$ の部分環で、その単元群が $\mathbb Z_p^\times$ である(p進数 の記事の系「$p$ 進整数の単元判定」)。$\mathbb Q_p$ の元は、$\mathbb Z_p$ の元を $p$ の冪で割ったものとしてすべて書ける。
1:$n=v_p(x)$、$u=p^{-n}x$ とおくと $|u|_p=p^{n}|x|_p=1$ なので $u\in\mathbb Z_p^\times$ である。$x=p^nu=p^mu'$($u,u'\in\mathbb Z_p^\times$)なら、絶対値をとって $p^{-n}=p^{-m}$、よって $n=m$、$u=u'$ である。
2:1 により $x=p^nu$ である。$n\ge0$ なら $x\in\mathbb Z_p$、$n<0$ なら $x=u/p^{-n}$ なので、$\mathbb Q_p=\mathbb Z_p[1/p]$ である。$\mathbb Z_p$ は体 $\mathbb Q_p$ の部分環なので整域で、その分数体 $F$ は $\mathbb Q_p$ の部分体と同一視できる。$\mathbb Z_p\subset F$ かつ $1/p\in F$ だから $\mathbb Q_p=\mathbb Z_p[1/p]\subset F\subset\mathbb Q_p$ となり、$F=\mathbb Q_p$ である。
$\mathbb Q_p$ は 局所体 の記事の意味の局所体である(同記事の例「$p$ 進数体」:剰余体は $\mathbb F_p$、一意化元は $p$)。位相については次が基本である。
$\mathbb R$ は「差が小さい」という近さで $\mathbb Q$ を完備化した体であり、$\mathbb Q_p$ は「差が $p$ の高い冪で割り切れる」という近さで完備化した体である。どちらも $\mathbb Q$ を稠密に含み、$\mathbb Q$ の方程式の解の有無を $\mathbb Q$ の外で調べる舞台になる。しかし 2 つの体の形はまったく違う。$\mathbb R$ は連結で順序が入り、$\mathbb Q_p$ は完全不連結で順序が入らない。$\mathbb R$ の乗法群は符号と正の数の積 $\{\pm1\}\times\mathbb R_{>0}$ に分かれ、$\mathbb Q_p$ の乗法群は付値と 1 の冪根と「$1$ に近い単元」の積に分かれる。
| 観点 | $\mathbb R$ | $\mathbb Q_p$ |
|---|---|---|
| 絶対値 | アルキメデス的 | 非アルキメデス的(強三角不等式) |
| 連結性 | 連結 | 完全不連結 |
| 単位球 $\{\lvert x\rvert\le1\}$ | $[-1,1]$、環でない | $\mathbb Z_p$、部分環 |
| 順序 | 入る | 入らない(prop-qp-not-orderable) |
| 乗法群 | $\{\pm1\}\times\mathbb R_{>0}\cong\mathbb Z/2\times\mathbb R$ | $\mathbb Z\times\mathbb Z/(p-1)\times\mathbb Z_p$($p$ 奇素数) |
| 平方類の個数 $\lvert K^\times/(K^\times)^2\rvert$ | $2$ | $4$($p$ 奇素数)、$8$($p=2$) |
| 代数閉包との関係 | $[\mathbb C:\mathbb R]=2$ | $[\overline{\mathbb Q_p}:\mathbb Q_p]=\infty$ |
| 自己同型 | 恒等写像のみ | 恒等写像のみ(thm-qp-automorphism) |
表の $\mathbb Q_p$ の列のうち、順序・乗法群・平方類・代数閉包・自己同型の行は以下の節で証明する。
体 $K$ の絶対値とは、写像 $|\cdot|\colon K\to\mathbb R_{\ge0}$ で、次の (i)(ii)(iii) を満たすものをいう。
(i) $|x|=0$ となるのは $x=0$ のときに限る。
(ii) $|xy|=|x|\,|y|$。
(iii) $|x+y|\le|x|+|y|$。
さらに (iii) より強い $|x+y|\le\max\{|x|,|y|\}$ を満たすとき非アルキメデス的といい、そうでないときアルキメデス的という。$x\ne0$ ならつねに $|x|=1$ となる絶対値を自明な絶対値という。2 つの絶対値 $|\cdot|_1,|\cdot|_2$ は、ある実数 $t>0$ があって $K$ のすべての $x$ について $|x|_2=|x|_1^{\,t}$ となるとき同値であるという。
(ii) から $|1|=|1|^2$、$|1|\ne0$ なので $|1|=1$ であり、$|-1|^2=|1|=1$ から $|-1|=1$ である。同値な絶対値は同じ距離の位相を定め、同じ Cauchy 列と同じ $0$ に収束する列をもつ($|x_n|_1\to0$ と $|x_n|_1^{\,t}\to0$ は同値)。したがって同値な絶対値についての完備化は同じ体になる。
$\mathbb Q$ の上では、通常の絶対値 $|\cdot|_\infty$ と、各素数 $p$ の $p$ 進絶対値 $|\cdot|_p$ が絶対値である。$p\ne q$ なら $|p|_p=p^{-1}<1$ だが $|p|_q=1$ なので、$|\cdot|_p$ と $|\cdot|_q$ は同値でない。$|\cdot|_\infty$ はアルキメデス的($|1+1|_\infty=2>\max\{|1|_\infty,|1|_\infty\}$)なので、どの $|\cdot|_p$ とも同値でない。
$\mathbb Q$ の自明でない絶対値 $|\cdot|$ について、次のどちらか一方がちょうど成り立つ。
同値な絶対値は同じ位相と同じ完備化を与えるので、この定理は $\mathbb Q$ の完備化が(自明でない絶対値については)実数体 $\mathbb R$ と各素数 $p$ の $\mathbb Q_p$ に限ることを意味する。2 つの主張が「ちょうど一方」であるのは、アルキメデス的か否かが同値な絶対値の間で変わらないことと、$p\ne q$ なら $|\cdot|_p$ と $|\cdot|_q$ が同値でないことによる。「自明でない」という仮定は必要で、自明な絶対値($x\ne0$ なら $|x|=1$)はどちらにも当てはまらない。
アルキメデス的な場合(主張 1)はこの記事では証明しない。$|n|$ を $n$ の $m$ 進表記と三角不等式で評価し、$n$ を $n^k$ に替えて $k$ 乗根をとる議論で示される(Con26 Theorem 1、pp. 1–2。詳しくは Ostrowskiの定理 の記事)。$p$ 進数体に直接かかわる非アルキメデス的な場合を、ここで完全に証明する。
$|\cdot|$ を $\mathbb Q$ の自明でない非アルキメデス的な絶対値とする。このとき素数 $p$ と実数 $t>0$ がただ 1 組あって、すべての $x\in\mathbb Q$ について $|x|=|x|_p^{\,t}$ となる。
要点:非アルキメデス性から整数の絶対値は $1$ 以下で、絶対値が $1$ より小さい整数は $\mathbb Z$ の $0$ でない素イデアル $p\mathbb Z$ をなす。$|p|=p^{-t}$ とおけば、$p$ と互いに素な整数の絶対値は $1$ なので $|x|=|x|_p^{\,t}$ となる。
段 1(整数の絶対値は $1$ 以下).$|0|=0$、$|1|=1$ である。$n\ge1$ で $|n-1|\le1$ なら、非アルキメデス性により $|n|=|(n-1)+1|\le\max\{|n-1|,1\}\le1$ である。帰納法ですべての $n\ge0$ について $|n|\le1$ であり、$|-n|=|-1|\,|n|=|n|$ から負の整数でも成り立つ。
段 2(素数 $p$ の取り出し).$I=\{n\in\mathbb Z\mid |n|<1\}$ とおく。$a,b\in I$ なら $|a+b|\le\max\{|a|,|b|\}<1$、$m\in\mathbb Z$ なら段 1 から $|ma|=|m|\,|a|<1$ なので、$I$ は $\mathbb Z$ のイデアルである。$|1|=1$ なので $1\notin I$ である。$ab\in I$ なら $|a|\,|b|<1$ であり、段 1 から $|a|,|b|\le1$ なので、$|a|<1$ または $|b|<1$ である。よって $I$ は素イデアルである。もし $I=\{0\}$ なら、$0$ でない整数はすべて $|n|=1$ となり、$x=a/b$ について $|x|=|a|/|b|=1$ となって $|\cdot|$ は自明になる。よって $I\ne\{0\}$ であり、$\mathbb Z$ の $0$ でない素イデアルとして $I=p\mathbb Z$($p$ は素数)と書ける。
段 3(値の決定).$0<|p|<1$ なので、$|p|=p^{-t}$ となる実数 $t>0$ がただ 1 つある。$p$ で割り切れない整数 $m$ は $I$ に属さないので $|m|=1$ である。$0$ でない $x\in\mathbb Q$ を $x=p^k\,a/b$($k=v_p(x)$、$a,b$ は $p$ で割り切れない整数)と書くと $$|x|=|p|^k\frac{|a|}{|b|}=p^{-kt}=\bigl(p^{-v_p(x)}\bigr)^t=|x|_p^{\,t}$$ である。$x=0$ でも両辺は $0$ である。
段 4(一意性).$|\cdot|=|\cdot|_p^{\,t}=|\cdot|_q^{\,s}$ なら、$p$ での値を比べて $p^{-t}=|p|_q^{\,s}$ となる。$q\ne p$ なら右辺は $1$ で、$t>0$ に反する。よって $q=p$ であり、$p^{-t}=p^{-s}$ から $t=s$ である。
$\mathbb Q$ を自明でない絶対値について完備化して得られる体は、$\mathbb R$ か、ある素数 $p$ についての $\mathbb Q_p$ である。非アルキメデス的な絶対値からは、必ずある $\mathbb Q_p$ が得られる。
thm-qp-ostrowski により、自明でない絶対値は $|\cdot|_\infty$ またはある $|\cdot|_p$ と同値である。同値な絶対値は同じ Cauchy 列と同じ $0$ に収束する列をもつので、Cauchy 列の同値類として作る完備化は同じ体になる。$|\cdot|_\infty$ についての完備化は $\mathbb R$、$|\cdot|_p$ についての完備化は定義により $\mathbb Q_p$ である。非アルキメデス的な場合は prop-qp-ostrowski-nonarch だけから従う。
こうして、$\mathbb Q$ の「素点」は、素数 $p$ と、無限素点と呼ばれる $\infty$(通常の絶対値)で尽きる。すべての素点の絶対値をまとめると、$0$ でない有理数 $r$ について $|r|_\infty\prod_p|r|_p=1$ が成り立つ(p進付値 の記事の定理「積公式」)。有理数の問題を $\mathbb R$ とすべての $\mathbb Q_p$ で調べる考え方(局所大域原理、Hasse–Minkowskiの定理)は、この完全な一覧に支えられている。
局所体 の記事の系「乗法群の分解」を $\mathbb Q_p$ に当てはめると、Teichmüller 代表元のなす群 $\mu_{p-1}=\{\zeta\in\mathbb Q_p\mid \zeta^{p-1}=1\}$(位数 $p-1$ の巡回群)と $U^{(1)}=1+p\mathbb Z_p$ を使って、群の同型
$$
\mathbb Z\times\mu_{p-1}\times(1+p\mathbb Z_p)\xrightarrow{\ \sim\ }\mathbb Q_p^\times,\qquad (n,\zeta,u)\mapsto p^n\zeta u
$$
が得られる。1 つ目の因子は付値 $v_p$、2 つ目は法 $p$ の剰余類($\mathbb F_p^\times$ の持ち上げ)を表す。残る問題は、$1$ に近い単元の群 $1+p\mathbb Z_p$ がどんな群かである。答えは、$p$ が奇素数なら加法群 $\mathbb Z_p$ そのものである。
$p=2$ では $\mu_1=\{1\}$ なので、上の分解は $\mathbb Q_2^\times\cong\mathbb Z\times(1+2\mathbb Z_2)$ となる。$1+2\mathbb Z_2=\mathbb Z_2^\times$ はさらに $\{\pm1\}$ と $1+4\mathbb Z_2$ に分かれる。以下、$p$ に応じて
$$
q=\begin{cases}p&(p\text{ が奇素数}),\\ 4&(p=2),\end{cases}\qquad
g=\begin{cases}1+p&(p\text{ が奇素数}),\\ 5&(p=2)\end{cases}
$$
とおく。$g=1+q$ である。
$k\ge1$ とし、$p=2$ なら $k\ge2$ とする。$x=1+p^kt$($t\in\mathbb Z_p^\times$)なら、$x^p=1+p^{k+1}t'$、$t'\in\mathbb Z_p^\times$、$t'\equiv t\pmod p$ と書ける。
要点:二項展開 $x^p=1+p^{k+1}t+\cdots$ の残りの項がすべて $p^{k+2}$ で割り切れることを確かめる。
二項定理により $$x^p=1+p\cdot p^kt+\sum_{i=2}^{p-1}\binom pi p^{ik}t^i+p^{pk}t^p$$ である。$2\le i\le p-1$ では $\binom pi$ は $p$ で割り切れ、$ik\ge2k\ge k+1$ なので、その項は $p^{k+2}\mathbb Z_p$ に属する。最後の項は、$pk\ge k+2$、すなわち $k(p-1)\ge2$ のとき $p^{k+2}\mathbb Z_p$ に属する。$p$ が奇素数なら $p-1\ge2$、$p=2$ なら仮定 $k\ge2$ から、これは成り立つ($p=2$ では中間の和は空である)。よって $x^p=1+p^{k+1}(t+ps)$($s\in\mathbb Z_p$)であり、$t'=t+ps$ は $t$ と法 $p$ で合同なので単元である。
$g=1+q$ にこの補題を $j$ 回使うと、各 $j\ge0$ について
$$
g^{p^j}=1+qp^j t_j,\qquad t_j\in\mathbb Z_p^\times
$$
となる。たとえば $p=2$ では $5^{2^j}-1$ はちょうど $2^{j+2}$ で割り切れ、$p=3$ では $4^{3^j}-1$ はちょうど $3^{j+1}$ で割り切れる。
写像 $\mathbb Z\to1+q\mathbb Z_p$、$a\mapsto g^a$ は、連続な群の同型
$$
\mathbb Z_p\xrightarrow{\ \sim\ }1+q\mathbb Z_p,\qquad a\mapsto g^a
$$
に一意に延長される。この同型は、各 $j\ge0$ について $p^j\mathbb Z_p$ を $1+qp^j\mathbb Z_p$ の上に移す。
段 1(延長の構成).$H_j=1+qp^j\mathbb Z_p$ は $\mathbb Z_p^\times$ の部分群である($(1+qp^ja)(1+qp^jb)\in H_j$、$(1+qp^ja)^{-1}=1-qp^ja(1+qp^ja)^{-1}\in H_j$)。上の式から $g^{p^j}\in H_j$ なので、整数 $m,n$ が $m\equiv n\pmod{p^j}$ を満たせば $g^{m}g^{-n}=(g^{p^j})^{(m-n)/p^j}\in H_j$、すなわち $|g^m-g^n|_p\le|qp^j|_p$ である($|g^n|_p=1$ を使う)。$a\in\mathbb Z_p$ に収束する整数列 $(a_n)$ をとると(p進数 の記事の命題「$p$ 進整数は整数の閉包である」)、$(a_n)$ は $p$ 進 Cauchy 列なので $(g^{a_n})$ も Cauchy 列であり、$\mathbb Q_p$ の完備性により収束する。極限は列の取り方によらない(2 つの列を交互に並べた列も $a$ に収束する)。これを $g^a$ と定める。$m\equiv n\pmod{p^j}$ なら $|g^m-g^n|_p\le|qp^j|_p$ という評価は極限でも保たれるので、$a\mapsto g^a$ は連続で、整数での値は通常の冪に一致し、連続な延長はこれしかない($\mathbb Z$ は $\mathbb Z_p$ で稠密)。$g^{a+b}=g^ag^b$ は整数で成り立ち、両辺が連続なので $\mathbb Z_p$ でも成り立つ。$H_0=1+q\mathbb Z_p$ は閉集合なので、像は $H_0$ に含まれる。同様に $a\in p^j\mathbb Z_p$ なら $g^a\in H_j$ である。
段 2(単射).$a\ne0$ とし、$a=p^ju$($j=v_p(a)$、$u\in\mathbb Z_p^\times$)と書く。$u\equiv u_0\pmod p$ となる整数 $u_0$($p\nmid u_0$、$u_0\ge1$)をとり、$u=u_0+pw$($w\in\mathbb Z_p$)とおく。段 1 から $g^{p^{j+1}w}\in H_{j+1}$ である。一方、二項定理により
$$
\bigl(g^{p^j}\bigr)^{u_0}=(1+qp^jt_j)^{u_0}\equiv1+u_0\,qp^jt_j\pmod{qp^{j+1}}
$$
である(2 次以上の項は $(qp^j)^2$ で割り切れ、$qp^j$ は $p$ で割り切れる)。よって $g^a=(g^{p^j})^{u_0}g^{p^{j+1}w}\equiv1+u_0qp^jt_j\not\equiv1\pmod{qp^{j+1}}$ であり、$g^a\ne1$ である。
段 3(全射).$N\ge1$ とする。$H_0$ の元を法 $qp^N$ で見た剰余類 $1+qs$($s$ は法 $p^N$ の剰余類)は $p^N$ 個あり、有限群 $H_0/H_N$ をなす。$g^{p^N}\in H_N$ かつ $g^{p^{N-1}}=1+qp^{N-1}t_{N-1}\notin H_N$ なので、$g$ の $H_0/H_N$ での位数は $p^N$ の約数で $p^{N-1}$ を割らないもの、すなわち $p^N$ であり、$g$ は $H_0/H_N$ を生成する。よって任意の $y\in H_0$ について、整数 $m$ があって $y\equiv g^m\pmod{qp^N}$ となる。$N$ は任意なので、$\{g^m\mid m\in\mathbb Z\}$ は $H_0$ で稠密である。一方、像 $g^{\mathbb Z_p}$ はコンパクト空間 $\mathbb Z_p$ の連続像なのでコンパクト、したがって閉集合である。稠密な閉集合は全体なので、像は $H_0$ である。$p^j\mathbb Z_p$ の像が $H_j$ であることは、$g$ の代わりに $g^{p^j}=1+qp^jt_j$ を使って同じ議論をすればよい($H_j/H_{j+N}$ は位数 $p^N$ で、$g^{p^j}$ が生成する)。
位相群として次の同型がある。
$$
\mathbb Q_p^\times\cong\mathbb Z\times\mathbb Z/(p-1)\mathbb Z\times\mathbb Z_p\quad(p\text{ が奇素数}),\qquad
\mathbb Q_2^\times\cong\mathbb Z\times\mathbb Z/2\mathbb Z\times\mathbb Z_2 .
$$
ここで $\mathbb Z_p$ は加法群、$\mathbb Z$ には離散位相を入れる。とくに $\mathbb Z_p^\times\cong\mathbb Z/(p-1)\mathbb Z\times\mathbb Z_p$($p$ 奇素数)、$\mathbb Z_2^\times=\{\pm1\}\times(1+4\mathbb Z_2)\cong\mathbb Z/2\mathbb Z\times\mathbb Z_2$ である。
$p$ が奇素数なら、冒頭の分解の $\mu_{p-1}$ は位数 $p-1$ の巡回群、$1+p\mathbb Z_p$ は thm-qp-principal-units により $\mathbb Z_p$ に同型である。
$p=2$ では $\mathbb Q_2^\times\cong\mathbb Z\times\mathbb Z_2^\times$($x=2^nu$)である。$u\in\mathbb Z_2^\times$ は法 $4$ で $1$ か $3$ に合同なので、$u$ か $-u$ のちょうど一方が $1+4\mathbb Z_2$ に属する。よって写像 $\{\pm1\}\times(1+4\mathbb Z_2)\to\mathbb Z_2^\times$、$(\varepsilon,w)\mapsto\varepsilon w$ は全射で、$\varepsilon w=1$ なら $\varepsilon\equiv1\pmod 4$ から $\varepsilon=1$、$w=1$ なので単射である。$1+4\mathbb Z_2\cong\mathbb Z_2$ は主定理による。
位相について:$\mathbb Z_p^\times$ への写像 $\mu_{p-1}\times\mathbb Z_p\to\mathbb Z_p^\times$($p=2$ では $\{\pm1\}\times\mathbb Z_2\to\mathbb Z_2^\times$)は連続な全単射で、定義域はコンパクト、値域は Hausdorff なので同相写像である。$\mathbb Q_p^\times=\bigsqcup_{n\in\mathbb Z}p^n\mathbb Z_p^\times$ は開集合 $p^n\mathbb Z_p^\times$ の交わらない和なので、$\mathbb Z$ の因子には離散位相が対応する。
この分解から、$\mathbb Q_p^\times$ の有限位数の元は $\mu_{p-1}$($p$ 奇素数)または $\{\pm1\}$($p=2$)に限ることも分かる。$\mathbb Z$ と $\mathbb Z_p$ にはねじれ(有限位数の $0$ でない元)がないからである。とくに $\mathbb Q_p$ に含まれる 1 の冪根は、$p$ が奇素数なら $1$ の $(p-1)$ 乗根だけ、$p=2$ なら $\pm1$ だけである。
$x=p^nu\in\mathbb Q_p^\times$($n\in\mathbb Z$、$u\in\mathbb Z_p^\times$)とする。
要点:加法的に書けば平方数の群は $2A$ なので、cor-qp-multiplicative-structure の各因子で $A/2A$ を計算する。$p$ が奇素数なら $2$ は $\mathbb Z_p$ の単元なので $\mathbb Z_p$ の因子は消え、$p=2$ では $\mathbb Z_2/2\mathbb Z_2$ が残る。
加法的に書いたアーベル群 $A$ について、平方数の群は $2A$ に当たるので、$A/2A$ を因子ごとに計算すればよい。
$p$ が奇素数のとき、cor-qp-multiplicative-structure により $A=\mathbb Z\times\mathbb Z/(p-1)\mathbb Z\times\mathbb Z_p$ である。$\mathbb Z/2\mathbb Z$ は $\mathbb Z$ の因子の商であり、$p-1$ は偶数なので $(\mathbb Z/(p-1)\mathbb Z)/2(\mathbb Z/(p-1)\mathbb Z)\cong\mathbb Z/2\mathbb Z$、$2$ は $\mathbb Z_p$ の単元なので $2\mathbb Z_p=\mathbb Z_p$ である。よって $A/2A\cong(\mathbb Z/2\mathbb Z)^2$ である。$x=p^n\zeta w$($\zeta\in\mu_{p-1}$、$w\in1+p\mathbb Z_p$)が平方数であることは、$n$ が偶数で $\zeta$ が $\mu_{p-1}$ の平方数であることと同値である($w$ はつねに平方数)。還元写像は $\mu_{p-1}\cong\mathbb F_p^\times$ を与え、$u=\zeta w\equiv\zeta\pmod p$ なので、$\zeta$ が平方数であることは $u\bmod p$ が $\mathbb F_p$ の平方数であることと同値である。$1,\varepsilon,p,\varepsilon p$ は $(n\bmod 2,\ u\bmod p\text{ が平方数か})$ の 4 通りの組を 1 回ずつ実現するので、代表元である。単元の部分は Henselの補題 の記事の命題「奇素数での単元の平方根」と一致する。
$p=2$ のとき、$A=\mathbb Z\times\mathbb Z/2\mathbb Z\times\mathbb Z_2$ で $A/2A\cong(\mathbb Z/2\mathbb Z)^3$ である。$x=2^n\cdot\pm w$($w\in1+4\mathbb Z_2$)が平方数であることは、$n$ が偶数で、符号が $+$ で、$w\in(1+4\mathbb Z_2)^2$ であることと同値である。thm-qp-principal-units で $j=1$ とすると、$w=5^a$ が平方数である($a\in2\mathbb Z_2$)ことと $w\in1+8\mathbb Z_2$ は同値である。$-1\equiv7$、$\pm5\equiv5,3\pmod 8$ なので、単元 $u$ が平方数であることは $u\equiv1\pmod 8$ と同値である。$\pm1,\pm5$ は単元の 4 つの類 $1,7,5,3\pmod 8$ を表し、それに $2$ を掛けたものが $n$ 奇数の類を表す。
平方類が有限個であることから、2 次拡大の個数が数えられる。標数 $0$ の体 $K$ の 2 次拡大は $K(\sqrt d)$($d\in K^\times$ は平方数でない)の形であり、$K(\sqrt d)=K(\sqrt{d'})$ となるのは $d'/d$ が平方数のときに限る。実際 $\sqrt{d'}=a+b\sqrt d$($a,b\in K$)なら、2 乗して $d'=a^2+b^2d+2ab\sqrt d$ となり、$\sqrt d\notin K$ から $ab=0$ である。$b=0$ なら $d'=a^2$ が平方数になって仮定に反するので、$a=0$、$d'=b^2d$ である。したがって $\mathbb Q_p$ の 2 次拡大は、同型を除いて $p$ が奇素数なら $3$ 個、$p=2$ なら $7$ 個ある(平方類の個数から $1$ を引いたもの)。
どの素数 $p$ についても、$-1$ は $\mathbb Q_p$ の平方数の有限和である。したがって $\mathbb Q_p$ には体の順序が入らない。
$p$ が奇素数なら、$1-p\equiv1\pmod p$ は cor-qp-square-classes により平方数 $y^2$($y\in\mathbb Z_p^\times$)である。すると $-1=(p-1)\cdot(1/y)^2$ は $(1/y)^2$ を $p-1$ 個足したものである。$p=2$ なら $1-8=-7\equiv1\pmod8$ が平方数 $y^2$ で、$-1=7\cdot(1/y)^2$ は $(1/y)^2$ を $7$ 個足したものである。順序体では平方数は $0$ 以上なのでその和も $0$ 以上だが、$-1<0$ である。よって順序は入らない。
$p\ne q$ を素数とする。$\mathbb Q_p$ と $\mathbb Q_q$ は体として同型でない。また $\mathbb Q_p$ は $\mathbb R$ とも $\mathbb C$ とも同型でない。
要点:同型は $\mathbb Q$ を固定するので、$\mathbb Q_p$ では平方数で $\mathbb Q_q$ では平方数でない整数を中国剰余定理で作れば矛盾する。$\mathbb R$ とは順序、$\mathbb C$ とは代数閉性で区別する。
体の同型 $\varphi\colon\mathbb Q_p\to\mathbb Q_q$ は $1$ を $1$ に移すので、$\mathbb Q$ の各元を固定する。整数 $a$ を中国剰余定理で次のように選ぶ:$p$ が奇素数なら $a\equiv1\pmod p$、$p=2$ なら $a\equiv1\pmod 8$ とし、同時に、$q$ が奇素数なら $a$ を法 $q$ の平方数でない剰余類に、$q=2$ なら $a\equiv3\pmod 8$ にとる(法 $p$ または $8$ と、法 $q$ または $8$ は互いに素である)。cor-qp-square-classes により、$a$ は $\mathbb Q_p$ の平方数 $y^2$ だが、$\mathbb Q_q$ の単元であって平方数ではない。ところが $\varphi(y)^2=\varphi(a)=a$ となり矛盾する。
$\mathbb R$ には順序が入るので、prop-qp-not-orderable により $\mathbb Q_p\not\cong\mathbb R$ である。$\mathbb C$ は代数閉体だが、$X^2-p$ は $\mathbb Q_p$ に根をもたない(根 $y$ があれば $2v_p(y)=1$)ので、$\mathbb Q_p\not\cong\mathbb C$ である。
$\mathbb Q_p$ の体の自己同型は恒等写像だけである。連続性は仮定しない。
段 1(単元の特徴づけ).$x\in\mathbb Q_p^\times$ について次が同値であることを示す。
(i) $x\in\mathbb Z_p^\times$。
(ii) $p$ と互いに素な無限に多くの正の整数 $n$ について、$x^{p-1}$ は $\mathbb Q_p$ で $n$ 乗根をもつ。
(i) ⇒ (ii):$x$ が単元なら、$\mathbb F_p^\times$ の元の $(p-1)$ 乗は $1$ なので(Fermatの小定理。$p=2$ では $p-1=1$ で $x\equiv1\pmod2$)、$a:=x^{p-1}\in1+p\mathbb Z_p$ である。$p$ と互いに素な $n$ について $f(X)=X^n-a$ とおくと、$f(1)=1-a\equiv0\pmod p$、$f'(1)=n\not\equiv0\pmod p$ なので、Henselの補題 の記事の定理「Hensel の補題:単純根の持ち上げ」により $f$ は $\mathbb Z_p$ に根をもつ。よって $p$ と互いに素なすべての $n$ について $n$ 乗根がある。
(ii) ⇒ (i):$k=v_p(x)\ne0$ とする。$y^n=x^{p-1}$ なら $nv_p(y)=(p-1)k$ なので、$n$ は $0$ でない整数 $(p-1)k$ の約数である。そのような $n$ は有限個しかないので (ii) は成り立たない。
段 2(付値が保たれる).$\sigma$ を $\mathbb Q_p$ の体の自己同型とする。(ii) は体の演算だけで書かれた性質なので $\sigma$ で保たれ($y^n=x^{p-1}$ なら $\sigma(y)^n=\sigma(x)^{p-1}$)、段 1 により $\sigma(\mathbb Z_p^\times)\subset\mathbb Z_p^\times$ である。また $\sigma(p)=p$ である。$x=p^ku$($u\in\mathbb Z_p^\times$)なら $\sigma(x)=p^k\sigma(u)$ なので $v_p(\sigma(x))=v_p(x)$、すなわち $|\sigma(x)|_p=|x|_p$ である。
段 3(結論).段 2 から $|\sigma(x)-\sigma(y)|_p=|\sigma(x-y)|_p=|x-y|_p$ なので $\sigma$ は連続である。$\sigma$ は $\mathbb Q$ の各元を固定し、$\mathbb Q$ は $\mathbb Q_p$ で稠密なので、$\sigma$ は恒等写像である。
$\mathbb R$ の自己同型も恒等写像だけである(正の数が平方数として代数的に特徴づけられ、順序が保たれるため)。$\mathbb Q_p$ ではその役割を、「$1$ に近い単元は $p$ と互いに素な指数の冪根をもつ」という性質が果たしている。一方、$\mathbb C$ には複素共役という恒等写像でない自己同型がある。
$\mathbb Q_p$ は代数閉体でない(上の $X^2-p$)。$\mathbb R$ は 2 次拡大 $\mathbb C$ で代数閉になるが、$\mathbb Q_p$ ではそうはいかない。以下、$\overline{\mathbb Q_p}$ を $\mathbb Q_p$ の代数閉包とする。$\mathbb Q_p$ の有限次拡大 $L$ には、$L^\times$ から $\mathbb Z$ への全射で $\mathbb Q_p^\times$ 上では $e\,v_p$ となる離散付値 $w$ がただ 1 つあり(局所体 の記事の定理「標数0の局所体と有限次拡大」の 1)、$|x|=p^{-w(x)/e}$ は $|\cdot|_p$ を延長する絶対値である。一意性から、有限次拡大ごとの延長は互いに整合し、$\overline{\mathbb Q_p}$ 全体の非アルキメデス的な絶対値 $|\cdot|$ が 1 つ定まる。
要点:$X^n-p$ の根の絶対値は $p^{-1/n}$ なので、次数 $d$ の因子の定数項の絶対値は $p^{-d/n}$ になり、$\mathbb Q_p$ の元の絶対値が $p$ の整数冪であることと合わない。
1:$X^n-p=g(X)h(X)$、$g$ はモニックで次数 $d$、$0< d< n$、係数は $\mathbb Q_p$ とする。$X^n-p$ の根 $\beta$ は $\beta^n=p$ を満たすので $|\beta|^n=|p|_p=p^{-1}$、すなわち $|\beta|=p^{-1/n}$ である。$g$ の定数項は $g$ の $d$ 個の根(重複込み)の積の $\pm1$ 倍なので $|g(0)|=p^{-d/n}$ である。一方 $g(0)\in\mathbb Q_p^\times$ なので $|g(0)|$ は $p$ の整数冪であり、$d/n$ は整数になる。これは $0< d< n$ に反する。よって $X^n-p$ は既約で、$\overline{\mathbb Q_p}$ は次数 $n$ の部分拡大をすべての $n$ についてもつ。
2:$r=m/n$($n\ge1$)とし、$\beta^n=p$ となる $\beta$ をとると $|\beta^{-m}|=p^{m/n}$ である。よって $w(x):=-\log_p|x|$ の値の集合は $\mathbb Q$ 全体を含み、$w$ の値の群は $c\mathbb Z$($c>0$)の形にならない。$|\cdot|$ が離散付値 $w'$ から $|x|=C^{-w'(x)}$($C>1$)の形で得られるなら、$w$ の値の群は $(\log_pC)\mathbb Z$ になるはずなので、そのような離散付値はない(局所体 の記事の例「反例:$p$ 進数体の代数閉包」も参照)。
$\overline{\mathbb Q_p}$ は $|\cdot|$ について完備でない。この記事では証明しない(Con20 p. 2、Remark 2 に続く段落。$|c_i|_p=1$ で $\mathbb Q_p$ 上の次数が限りなく大きくなる $c_i\in\overline{\mathbb Q_p}$ を係数にした級数 $\sum c_ip^i$ を適切に選び、極限の $p$ 進展開と比べて矛盾を導く、という証明の方針を述べている)。そこで $\overline{\mathbb Q_p}$ をさらに完備化した体を $\mathbb C_p$ と書く(p進複素数体)。$\mathbb C_p$ は、完備化の一般的な構成(p進数 の記事の命題「絶対値と体構造の延長」の証明は、$\mathbb Q$ を非アルキメデス的な絶対値をもつ体に替えても、値が $p$ の整数冪であるという最後の主張を除いてそのまま通る。延長した絶対値も強三角不等式を満たす)により、$\overline{\mathbb Q_p}$ を稠密に含む完備な体である。
$\mathbb C_p$ 係数の次数 $1$ 以上の多項式は、$\mathbb C_p$ に根をもつ。
要点:係数を $\overline{\mathbb Q_p}$ の元で近似した多項式 $g_k$ の根 $\beta_k$ を、$|\beta_{k+1}-\beta_k|< p^{-k/n}$ となるように選び、その極限を $f$ の根にする。
$f(X)=X^n+a_{n-1}X^{n-1}+\dots+a_0$($a_i\in\mathbb C_p$、$n\ge1$)としてよい。
段 1(係数を小さくする).$0$ でない $c\in\mathbb Q_p$ について $c^nf(X/c)=X^n+ca_{n-1}X^{n-1}+\dots+c^na_0$ であり、この多項式の根 $\gamma$ から $f$ の根 $\gamma/c$ が得られる。$|c|_p$ を十分小さくとれば、係数はすべて絶対値 $1$ 以下になる。以下 $|a_i|\le1$ とする。
段 2(整な係数の多項式の根).$h(X)=X^n+b_{n-1}X^{n-1}+\dots+b_0$ で $|b_i|\le1$ なら、$h$ の根 $\beta$ は $|\beta|\le1$ を満たす。実際 $|\beta|>1$ なら、$i< n$ について $|b_i\beta^i|\le|\beta|^i<|\beta|^n$ なので、強三角不等式の等号の場合から $|h(\beta)|=|\beta|^n\ne0$ となる。
段 3(近似列).$\overline{\mathbb Q_p}$ は $\mathbb C_p$ で稠密なので、各 $k\ge1$ についてモニック多項式 $g_k(X)=X^n+\sum_{i< n}c^{(k)}_iX^i$($c^{(k)}_i\in\overline{\mathbb Q_p}$)で、すべての $i$ について $|c^{(k)}_i-a_i|< p^{-k}$ となるものがとれる。とくに $|c^{(k)}_i|\le1$ であり、$|c^{(k+1)}_i-c^{(k)}_i|< p^{-k}$ である。$\overline{\mathbb Q_p}$ は代数閉体なので $g_k$ は 1 次式の積に分解する。$g_1$ の根 $\beta_1$ を 1 つとる。$\beta_k$($g_k$ の根、$|\beta_k|\le1$)が決まったとき、 $$|g_{k+1}(\beta_k)|=|g_{k+1}(\beta_k)-g_k(\beta_k)|=\Bigl|\sum_{i< n}\bigl(c^{(k+1)}_i-c^{(k)}_i\bigr)\beta_k^{\,i}\Bigr|< p^{-k}$$ である。$g_{k+1}(\beta_k)=\prod_{j=1}^n(\beta_k-\gamma_j)$($\gamma_j$ は $g_{k+1}$ の根)なので、ある $j$ で $|\beta_k-\gamma_j|< p^{-k/n}$ となる。この $\gamma_j$ を $\beta_{k+1}$ とする。段 2 から $|\beta_{k+1}|\le1$ である。
段 4(極限).$|\beta_{k+1}-\beta_k|< p^{-k/n}\to0$ なので、強三角不等式により $(\beta_k)$ は Cauchy 列であり、$\mathbb C_p$ の完備性から極限 $\beta$ をもつ。$|\beta_k|\le1$ と $$|f(\beta_k)|=|f(\beta_k)-g_k(\beta_k)|=\Bigl|\sum_{i< n}\bigl(a_i-c^{(k)}_i\bigr)\beta_k^{\,i}\Bigr|< p^{-k}$$ から $f(\beta_k)\to0$ であり、$f$ は連続なので $f(\beta)=0$ である。
こうして $\mathbb Q_p\subset\overline{\mathbb Q_p}\subset\mathbb C_p$ の 3 段で、完備かつ代数閉な体に到達する。$\mathbb R\subset\mathbb C$ の 1 段で済む実数の場合と違い、途中の $\overline{\mathbb Q_p}$ は無限次で完備でなく、$\mathbb C_p$ は $\overline{\mathbb Q_p}$ より真に大きい。$\mathbb C_p$ は $p$ 進解析や $p$ 進 Hodge 理論の舞台になる。
次の表は、$\mathbb Q_p$ の性質を支える条件を外したときに何が崩れるかをまとめたものである。
| 外す条件 | 反例 | 成り立たなくなること |
|---|---|---|
| 完備性 | $\mathbb Q$ と $\lvert\cdot\rvert_5$ | Cauchy 列の収束($\sqrt{-1}\in\mathbb Q_5$ に収束する有理数列) |
| $1+q\mathbb Z_p$ の $q$ を $4$ にすること($p=2$) | $1+2\mathbb Z_2=\mathbb Z_2^\times$ | $\mathbb Z_2$ への同型($-1$ は位数 $2$ の元で、$\mathbb Z_2$ にはねじれがない) |
| $p$ が奇素数 | $p=2$ | 平方類が $4$ 個であること($8$ 個になる) |
| 代数閉性 | $\mathbb Q_p$ | $X^2-p$ の根の存在 |
| 代数拡大で止めること | $\overline{\mathbb Q_p}$ | 完備性(完備化 $\mathbb C_p$ が必要) |
| 絶対値の離散性 | $\overline{\mathbb Q_p}$ | 値が $p^{\mathbb Z}$ に入ること($p^{1/n}$ が現れる) |
thm-qp-principal-units は $p=2$ で $q=4$ としている。$q=2$、$g=3$ とすると主張は偽である。$1+2\mathbb Z_2=\mathbb Z_2^\times$ は $-1$(位数 $2$)を含むが、加法群 $\mathbb Z_2$ の $0$ でない元はすべて無限位数なので、$1+2\mathbb Z_2\not\cong\mathbb Z_2$ である。証明の中で破れるのは lem-qp-power-p で、$k=1$ の $x=3=1+2$ では $x^2=9=1+2^3$ となり、「$1$ 桁だけ近づく」($1+2^2t'$、$t'$ 単元)が成り立たない。この例は条件「$p=2$ なら $k\ge2$」を外すと補題の含意が破れることを示す。
$\mathbb Q$ は $|\cdot|_5$ について完備でない。$\mathbb Q_5$ に $i^2=-1$ となる $i$ があり(ex-qp-square-roots)、$\mathbb Q$ は $\mathbb Q_5$ で稠密なので $i$ に収束する有理数列がとれるが、その極限は $\mathbb Q$ にない(有理数の 2 乗は負にならない)。$X^2+1$ は法 $5$ で単純根 $2$ をもつが、$\mathbb Q$ には根がない。したがって「法 $p$ の単純根は $p$ 進絶対値をもつ体の中の根に持ち上がる」という Hensel の補題の含意は、完備性を外すと破れる。詳しくは 局所体 の記事の例「反例:有理数体と $p$ 進付値」。
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