出口道の∞圏

同義語:出口道出口道の圏出口単体exit-path ∞-categoryexit pathexit-path category

概要

出口道の∞圏(exit-path ∞-category)とは、層別空間 $X$ に対して、点を対象とし、低い層から出て出た瞬間から高い層に留まる道(出口道)を射、そのホモトピーを高次の射とする∞圏である。Lurie は、単体の各面の開いた部分が鎖に沿った層に入る特異単体の全体 $\operatorname{Sing}^A(X)$ を定め、層別が円錐的ならこれが準圏であり、同値な射は 1 つの層の中の道であることを示した。層別が自明なら $\operatorname{Sing}(X)$、すなわち基本∞亜群であり、単体複体では面の半順序集合の脈体と同値である。例えば原点で分けた $\mathbb{C}$ では、ホモトピー圏は始対象と自己同型群 $\mathbb{Z}$ をもつ対象からなる。円錐的でない層別では内部ホーンが埋まらないことがある。

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{div}[0]{\mathbin{÷}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: 層別空間, ∞圏, Kan複体, 特異単体的集合

出口道の∞圏(exit-path ∞-category)は、層別空間 $X$ に対して、点を対象とし、「低い層から出発し、出た瞬間から高い層に留まる道」(出口道)を射とし、出口道のホモトピーを高次の射とする∞圏である。層別が自明なら、すべての道が出口道であり、出口道の∞圏は特異単体的集合 $\operatorname{Sing}X$、すなわち $X$ の基本∞亜群になる。層別が自明でなければ、高い層から低い層へ戻る射がないので、∞亜群ではない。
この構成は MacPherson の構想に由来し、Treumann が 2 圏として、Lurie が準圏として定式化した(HA17 Remark A.6.1、p. 1428、HPT24 §0.1、p. 1)。出口道の∞圏が重要なのは、層別空間の上の構成可能層が、出口道の∞圏からの関手と同じものになるからである(exodromy)。局所系が基本群の表現と同じものであること(局所系)の、層別空間への一般化である。
この記事では、Lurie の単体的なモデル $\operatorname{Sing}^A(X)$ を定義し、円錐的な層別ならそれが∞圏になるという定理を引用する。写像空間が出口道の空間であることを証明し、主定理として、開錐の出口道の∞圏がリンクの出口道の∞圏の左錐になることを証明する。系として、原点で分けた $\mathbb R^n$ と $\mathbb C$ の出口道の∞圏を計算し、単体複体の場合を扱ったうえで、円錐的でない層別では∞圏にならない例を示す。

出口道の単体的集合

位相的 $n$ 単体を $|\Delta^n|=\{(t_0,\dots,t_n)\mid t_i\ge0,\ \sum_it_i=1\}$ とし、位相空間 $X$ の特異単体的集合を $\operatorname{Sing}X$ と書く(特異単体的集合)。$A$ を半順序集合とし、$(X,s)$ を $A$-層別空間とする。

出口道の単体的集合

$\operatorname{Sing}X$ の $n$ 単体 $\sigma\colon|\Delta^n|\to X$ が出口単体であるとは、$A$ の鎖 $a_0\le a_1\le\dots\le a_n$ があって、各 $i$ について、$t_i\neq0$ となる点 $(t_0,\dots,t_i,0,\dots,0)$ がすべて $X_{a_i}$ に写ることをいう。出口単体の全体を $\operatorname{Sing}^A(X)\subset\operatorname{Sing}X$ と書く。1 単体、すなわち道 $\gamma\colon[0,1]\to X$ が出口単体であることは、$a\le b$ があって $\gamma(0)\in X_a$、$\gamma((0,1])\subset X_b$ となることであり、このような道を出口道という。

これは HA17 Definition A.6.2(p. 1428)である。条件は、$n$ 単体の頂点 $0,\dots,i$ で張られる面から頂点 $0,\dots,i-1$ で張られる面を除いた部分が、層 $X_{a_i}$ に入ることを言っている。$i$ 番目の頂点は $t_i\neq0$ を満たすので、鎖は $a_i=s(\sigma(e_i))$($e_i$ は $i$ 番目の頂点)として一意に決まる。面と退化はこの条件を保つので、$\operatorname{Sing}^A(X)$ は単体的部分集合であり、$\sigma\mapsto(a_0\le\dots\le a_n)$ は単体的写像 $\operatorname{Sing}^A(X)\to N(A)$ を与える($N(A)$ は $A$ の脈体。同 Remark A.6.3)。

Lurie の定理

$X$ が円錐的な $A$-層別空間なら、次が成り立つ。

  1. 射影 $\operatorname{Sing}^A(X)\to N(A)$ は内部ファイブレーションである。
  2. $\operatorname{Sing}^A(X)$ は∞圏(準圏)である。
  3. $\operatorname{Sing}^A(X)$ の射(出口道)が同値であることと、道が 1 つの層に含まれることは同値である。
定理の読み方

出口道は、$A$ の順序で低い層から高い層へ向かう道だけである。3 は、層をまたぐ出口道は同値にならず、同値な射は 1 つの層の中の道に限られることを述べる。これにより、$\operatorname{Sing}^A(X)$ は通常の特異単体的集合と違って、層別の情報を向き付きで保つ∞圏になる。円錐的という仮定は、各点の近傍が錐の形をしていることを要求するもので、内部ホーンを充填する次の証明の方針で使われる。

これは HA17 Theorem A.6.4(p. 1428)である。この記事では証明しない。証明は、内部ホーンの充填を、鎖に現れる層の個数についての帰納法で構成する。最も低い層 $X_{a_0}$ の点のまわりの錐の近傍 $Z\times C(Y)$ を使い、ホーンの像を錐の中へ押し込んでから、より少ない層をもつ $X\setminus X_{a_0}$ の上で帰納法の仮定を使って埋める(同 pp. 1429–1434)。$X$ が円錐的なとき、$\operatorname{Sing}^A(X)$ を $X$ の出口道の∞圏という(同 Remark A.6.5、p. 1429)。

基本的な性質

層ごとのファイバーと自明な層別
  1. $a\in A$ について、$\operatorname{Sing}^A(X)$ の $a$ の上のファイバー $\operatorname{Sing}^A(X)\times_{N(A)}\{a\}$ は $\operatorname{Sing}(X_a)$ に等しい。
  2. 自明な層別($A$ が 1 点)では $\operatorname{Sing}^A(X)=\operatorname{Sing}X$ であり、これは Kan複体 で、そのホモトピー圏は $X$ の基本亜群である。
  3. $x\in X_a$、$y\in X_b$ で $a\not\le b$ なら、$x$ から $y$ への出口道はない。

要点:定値の鎖 $a\le\dots\le a$ の上の出口単体は $X_a$ に値をとる特異単体そのものであり、1 点の半順序集合では条件は空になる。

詳しい証明を開く

1:鎖がすべて $a$ なら、条件は「$|\Delta^n|$ のすべての点が $X_a$ に写る」ことと同じである(どの点も、最後の $0$ でない座標をもつ)。よってファイバーの $n$ 単体は $|\Delta^n|\to X_a$ と 1 対 1 に対応する。

2:鎖の条件は空なので $\operatorname{Sing}^A(X)=\operatorname{Sing}X$ である。これが Kan 複体であることは Kan複体の定理「特異単体的集合は Kan 複体である」、ホモトピー圏が基本亜群であることは ∞圏のホモトピー圏の例「Kan複体の基本亜群」による。

3:出口道 $\gamma$ の鎖は $s(\gamma(0))\le s(\gamma(1))$ を満たす。$\square$

したがって $\operatorname{Sing}^A(X)$ は、各層の基本∞亜群 $\operatorname{Sing}(X_a)$ を、低い層から高い層へ向かう可逆でない射でつないだものである。写像空間は、端点を固定した出口道の空間で計算できる。$x\in X_a$、$y\in X_b$ について、連続写像 $\gamma\colon[0,1]\to X$ で $\gamma(0)=x$、$\gamma(1)=y$、$\gamma((0,1])\subset X_b$ を満たすものの全体にコンパクト開位相を入れた空間を $\mathcal P_X(x,y)$ と書く。$\gamma(\tau)$ は $\tau$ が小さいとき開集合 $X_{\ge a}$ に入るので、$a\not\le b$ なら $\mathcal P_X(x,y)=\emptyset$ である。

写像空間は出口道の空間である

∞圏の定義「写像空間のモデル」の右写像空間について、自然な同型
$$ \operatorname{Hom}^R_{\operatorname{Sing}^A(X)}(x,y)\cong\operatorname{Sing}\mathcal P_X(x,y) $$
がある。自然とは、層別写像 $f\colon X\to X'$ が誘導する $\operatorname{Sing}^A(f)$ が、右辺では道の合成 $\gamma\mapsto f\circ\gamma$ に対応することをいう。

要点:$|\Delta^{n+1}|$ は $|\Delta^n|\times[0,1]$ の $|\Delta^n|\times\{1\}$ を 1 点につぶした商空間なので、最初の面を $x$ に写す $(n+1)$ 単体は、$|\Delta^n|$ で径数づけた道の族と同じものである。

詳しい証明を開く

右写像空間の $n$ 単体は、$\operatorname{Sing}^A(X)$ の $(n+1)$ 単体 $\sigma$ で、頂点 $0,\dots,n$ の面を定値 $x$ に、頂点 $n+1$ を $y$ に写すものである(その鎖は $a,\dots,a,b$)。$q\colon|\Delta^n|\times[0,1]\to|\Delta^{n+1}|$、$q(w,u)=((1-u)w,u)$ は、コンパクト空間から Hausdorff 空間への連続な全射なので商写像であり、$|\Delta^n|\times\{1\}$ を頂点 $n+1$ につぶし、それ以外では単射である。出口単体の条件は、$t_{n+1}\neq0$ の点、すなわち $q(|\Delta^n|\times(0,1])$ が $X_b$ に写ることであり、$t_{n+1}=0$ の点は定値 $x\in X_a$ に写るので残りの条件は自動的に満たされる。よって $\sigma\mapsto\sigma\circ q$ は、右写像空間の $n$ 単体と、連続写像 $\tau\colon|\Delta^n|\times[0,1]\to X$ で $\tau(w,0)=x$、$\tau(w,1)=y$、$\tau(w,u)\in X_b$($u>0$)を満たすものとの全単射である。$[0,1]$ はコンパクトな Hausdorff 空間なので、指数法則によりこれは連続写像 $|\Delta^n|\to\mathcal P_X(x,y)$、すなわち $\operatorname{Sing}\mathcal P_X(x,y)$ の $n$ 単体と 1 対 1 に対応する。右写像空間の面・退化は $\sigma$ の頂点 $0,\dots,n$ についての面・退化であり、$|\Delta^n|$ の面・退化に対応するので、この全単射は単体的集合の同型である。自然性は構成から明らかである。$\square$

HA17 Theorem A.6.10 の証明(p. 1435)も、写像空間をこの道の空間と同一視している。$a=b$ なら $\mathcal P_X(x,y)$ は層 $X_a$ の中の道の空間であり、prop-ep-fibre の 1 と合う。

開錐の出口道の∞圏

単体的集合 $K$ の左錐 $K^{\triangleleft}:=\Delta^0\star K$ は、$K$ に新しい頂点 $c$(錐点)を付け加え、$c$ から $K$ の単体へ向かう単体を足した単体的集合である(HTT09 Notation 1.2.8.4、p. 41)。$K^{\triangleleft}$ の $n$ 単体は、$-1\le i\le n$ と $K$ の $(n-i-1)$ 単体 $\tau$ の組 $(i,\tau)$ であり($K_{-1}$ は 1 点、$i=-1$ は $K$ の単体)、最初の $i+1$ 個の頂点が錐点にある単体を表す。$K$ が∞圏なら $K^{\triangleleft}$ も∞圏である(同 Proposition 1.2.8.3、p. 41)。定義から、$K^{\triangleleft}$ の右写像空間は次のとおりである:$x,y\in K$ なら $\operatorname{Hom}^R_{K^\triangleleft}(x,y)=\operatorname{Hom}^R_K(x,y)$、$\operatorname{Hom}^R_{K^\triangleleft}(c,y)$ と $\operatorname{Hom}^R_{K^\triangleleft}(c,c)$ は 1 点 $\Delta^0$(各次元に単体がただ 1 つ)、$\operatorname{Hom}^R_{K^\triangleleft}(y,c)=\emptyset$。すなわち錐点は始対象である。
開錐 $C(Y)$ は 層別空間の定義「開錐」のとおりとし、点を $*$ と $(y,t)$($t>0$)で表す。

開錐の出口道の∞圏

$Y$ を円錐的な $A$-層別空間とし、$K:=\operatorname{Sing}^A(Y)$ とする。$K^{\triangleleft}$ の $n$ 単体 $(i,\tau)$ に、$u:=t_0+\dots+t_i$ として
$$ F(i,\tau)(t_0,\dots,t_n):=\begin{cases}*&(u=1)\\ \Bigl(\tau\bigl(\tfrac{(t_{i+1},\dots,t_n)}{1-u}\bigr),\ 1-u\Bigr)&(u< 1)\end{cases} $$
を対応させると、$F\colon K^{\triangleleft}\to\operatorname{Sing}^{A^\triangleleft}(C(Y))$ は∞圏の同値である。すなわち、開錐の出口道の∞圏は、リンクの出口道の∞圏の左錐と同値である。

$F$ が出口単体を与える単体的写像であること。 $u\to1$ のとき第 2 成分 $1-u$ は $0$ に近づき、頂点 $*$ の近傍は $Y\times(0,\varepsilon)$ を含むので、$F(i,\tau)$ は連続である。鎖を $-\infty$($i+1$ 個)に $\tau$ の鎖を続けたものとする。最後の $0$ でない座標の番号 $k$ が $k\le i$ の点では $u=1$ で、像は層 $-\infty$ の点 $*$ である。$k>i$ の点では $u< 1$ で、$\tau$ に入れる座標の最後の $0$ でない番号は $k-i-1$ なので、$\tau$ の値は $\tau$ の鎖の対応する層に入り、第 2 成分が正なので像も同じ層に入る。よって $F(i,\tau)$ は出口単体である。面と退化は、錐点の側の頂点を消す(または重ねる)か $\tau$ の側の頂点を消す(または重ねる)かのどちらかで、式は重心座標で書かれているので両辺で一致する。$i=-1$ のとき $F(\tau)=(\tau,1)$ なので、$F$ の $K$ への制限は、埋め込み $j\colon Y\to C(Y)$、$j(y)=(y,1)$ が誘導する $\operatorname{Sing}^A(j)$ である。
両辺が∞圏であること。 $C(Y)$ は円錐的である(層別空間の命題「円錐性の遺伝」の 3)ので、thm-ep-lurie により右辺は∞圏である。左辺は上に述べたとおり∞圏である。以下、圏同値(∞圏)の定理「充満忠実性と本質的全射性」により、$F$ が本質的全射かつ充満忠実(充満忠実関手(∞圏))であることを示す。写像空間は右写像空間で計算し、lem-ep-hom で道の空間に書き換える。
本質的全射。 右辺の対象は $*=F(c)$ と $(y,r)$ である。道 $\rho(\tau)=(y,1+\tau(r-1))$ は層 $Y_{s(y)}\times\mathbb R_{>0}$ の中にあるので、thm-ep-lurie の 3 により $F(y)=(y,1)$ から $(y,r)$ への同値である。
$x,y\in K$ のとき。 $(x,1)$ から $(y,1)$ への出口道は、層 $-\infty$ より高い層から出発するので頂点 $*$ を通らず、開集合 $Y\times\mathbb R_{>0}$ の中にある。$Y\times\mathbb R_{>0}$ は積の位相をもち、層別は $Y$ の成分で決まるので
$$ \mathcal P_{C(Y)}\bigl((x,1),(y,1)\bigr)\cong\mathcal P_Y(x,y)\times\Omega,\qquad\Omega:=\{\rho\colon[0,1]\to\mathbb R_{>0}\mid\rho(0)=\rho(1)=1\} $$
であり、$F$ が写像空間に誘導する写像は、lem-ep-hom の自然性により $\gamma\mapsto(\gamma,1)$($1$ は定値の道)に対応する。$\Omega$ は $\rho_s:=(1-s)\rho+s$ により定値の道に可縮なので、これはホモトピー同値であり、$\operatorname{Sing}$ をとっても Kan 複体のホモトピー同値である。
$c$ から $y\in K$ へ。 左辺の右写像空間は 1 点である。右辺では、$\mathcal P:=\mathcal P_{C(Y)}(*,(y,1))$ が可縮であることを示す。$b:=s(y)$ とすると、$\gamma\in\mathcal P$ は $\tau>0$ で $\gamma(\tau)=(\eta(\tau),r(\tau))\in Y_b\times\mathbb R_{>0}$ と書け、$\eta(1)=y$、$r(1)=1$ であり、$\{*\}\cup Y\times(0,\varepsilon)$ が $*$ の開近傍であることから $\tau\to0$ で $r(\tau)\to0$ である。$s\in[0,1]$ について
$$ H(\gamma,s)(\tau):=\bigl(\eta(\max(\tau,s)),\ (1-s)\,r(\tau)+s\tau\bigr)\quad(\tau>0),\qquad H(\gamma,s)(0):=* $$
とおく。$\tau>0$ で値は $Y_b\times\mathbb R_{>0}$ に入り、$\tau=1$ で $(y,1)$ なので $H(\gamma,s)\in\mathcal P$ であり、$H(\gamma,0)=\gamma$、$H(\gamma,1)$ は $\gamma$ によらない道 $\tau\mapsto(y,\tau)$ である。連続性は $(\gamma,s,\tau)\mapsto H(\gamma,s)(\tau)$ の連続性に帰着する(指数法則)。$\tau>0$ の点の近くでは、評価写像 $(\gamma,\tau)\mapsto\gamma(\tau)$ の連続性から従う。$(\gamma,s,0)$ の近くでは、$*$ の開近傍 $\{*\}\cup Y\times(0,\varepsilon)$ が与えられたとき、評価写像の連続性と $\gamma(0)=*$ から、$(\gamma',\tau')$ が $(\gamma,0)$ に近ければ $\gamma'(\tau')\in\{*\}\cup Y\times(0,\varepsilon/2)$ となるので、$\tau'< \varepsilon/2$ なら第 2 成分は $\varepsilon$ より小さい。よって $H$ は連続で、$\mathcal P$ は可縮である。可縮な空間の $\operatorname{Sing}$ は可縮な Kan 複体なので、$\Delta^0\to\operatorname{Sing}\mathcal P$ はホモトピー同値である。
残りの場合。 $y\in K$ から $c$ へは、左辺の右写像空間は空であり、右辺も層 $s(y)$ から層 $-\infty$ への出口道はないので空である。$c$ から $c$ へは、両辺とも 1 点である(層 $\{*\}$ の中の道は定値の道だけである)。以上で $F$ は充満忠実かつ本質的全射であり、∞圏の同値である。$\square$

$C(Y)$ の頂点は出口道の∞圏の始対象であり、頂点からどの点へも出口道が「本質的にただ 1 つ」ある。一方、リンクの側の点どうしの射は、$Y$ の出口道そのものである。

原点で分けた Euclid 空間

$\mathbb R^n$($n\ge1$)を原点とその補集合に分けた $[1]$-層別について、$\operatorname{Sing}^{[1]}(\mathbb R^n)\simeq\operatorname{Sing}(S^{n-1})^{\triangleleft}$ である。とくに次が成り立つ。

  1. $n=1$ なら、$\operatorname{Sing}^{[1]}(\mathbb R)$ は半順序集合 $Q=\{c,-,+\}$($c< -$、$c< +$)の脈体 $N(Q)$ と同値である。
  2. $n=2$、すなわち $(\mathbb C,\{0\})$ のホモトピー圏は、対象 $c$ と $o$ をもち、$\operatorname{Hom}(c,o)$ が 1 点、$\operatorname{End}(o)\cong\mathbb Z$、$\operatorname{Hom}(o,c)=\emptyset$ である圏と同値である。

要点:$\mathbb R^n$ は層別を保って $C(S^{n-1})$ と同相なので、主定理を自明に層別された $S^{n-1}$ に使う。

詳しい証明を開く

$*\mapsto0$、$(y,t)\mapsto ty$ は $C(S^{n-1})$ から $\mathbb R^n$ への層別を保つ同相写像である(層別空間の節「開錐と円錐的な層別」)。層別を保つ同相写像は出口単体の全体を同型に写すので、$\operatorname{Sing}^{[1]}(\mathbb R^n)\cong\operatorname{Sing}^{\{1\}^\triangleleft}(C(S^{n-1}))$ である。自明な層別は円錐的なので(層別空間の命題「円錐性の遺伝」の 2)、thm-ep-cone が使える。

1:$S^0$ は 2 点の離散空間なので、$|\Delta^m|\to S^0$ はすべて定値であり、$\operatorname{Sing}(S^0)=\Delta^0\sqcup\Delta^0$ である。その左錐は、錐点から 2 つの頂点へ辺を 1 本ずつ張った $N(Q)$ にほかならない。

2:$K:=\operatorname{Sing}(S^1)$ とする。$K^{\triangleleft}$ のホモトピー圏は、右写像空間の連結成分を見ると、$hK$ に始対象 $c$ を付け加えた圏である($c$ から各対象への射はただ 1 つで、$K$ の対象から $c$ への射はない。合成 $c\to x\to y$ は唯一の射 $c\to y$ である)。$hK$ は $S^1$ の基本亜群であり(prop-ep-fibre の 2)、$S^1$ は弧状連結なので、1 つの対象 $o$ と自己同型群 $\pi_1(S^1)\cong\mathbb Z$ からなる 1 対象の亜群と同値である(亜群の定理「連結な亜群は自己同型群と圏同値である」、基本群の定理「円周の基本群」)。$\square$

2 の圏は、$\mathbb C\setminus\{0\}$ の点どうしの射が基本群 $\mathbb Z$ で数えられ、原点からの射は向きによらずただ 1 つであることを表している。$n\ge3$ では $S^{n-1}$ が単連結なのでホモトピー圏は $[1]$ と同値になるが、∞圏としては $\mathbb R^n\setminus\{0\}$ の点の自己写像空間が $S^{n-1}$ の閉路の空間と同値で、$\pi_{n-2}$ が $\pi_{n-1}(S^{n-1})\cong\mathbb Z$ となって可縮でない(球面のホモトピー群)ので、$\Delta^1$ とは同値でない。また、$\operatorname{Sing}(S^{n-1})^{\triangleleft}$ の幾何学的実現は錐なので可縮であり、$\mathbb R^n$ が可縮であることと合う。一般に、exodromy の定理の仮定の下で包含 $\operatorname{Sing}^A(X)\to\operatorname{Sing}X$ は弱ホモトピー同値である(HA17 Corollary A.9.4、p. 1457)。射を可逆にしてしまうと層別の情報は消え、層別は射の向きに記録されている。

単体複体と円錐的でない層別

単体複体の出口道の∞圏

$K=(V,S)$ を有限単体複体とし、$|K|$ に開単体への $S$-層別を入れる(層別空間の例「層別の例」の 2)。射影 $\operatorname{Sing}^S(|K|)\to N(S)$ は∞圏の同値である。

要点:出口道の空間は、端点を結ぶ折れ線への直線ホモトピーで可縮になる。

詳しい証明を開く

$|K|$ の層別は円錐的なので(層別空間の定理「単体複体の層別は円錐的である」)、thm-ep-lurie により左辺は∞圏である。各層 $\sigma^\circ$ は空でないので射影は本質的全射である。$x\in\sigma^\circ$、$y\in\sigma'^\circ$ とする。$N(S)$ の右写像空間は、$\sigma\subset\sigma'$ なら 1 点、そうでなければ空である。lem-ep-hom により左辺の写像空間は $\operatorname{Sing}\mathcal P(x,y)$ で、$\sigma\not\subset\sigma'$ なら $\mathcal P(x,y)=\emptyset$ である。$\sigma\subset\sigma'$ なら、$\mathbb R^V$ の中で $h(\gamma,s)(\tau):=(1-s)\gamma(\tau)+s((1-\tau)x+\tau y)$ とおく。$\tau>0$ では $\gamma(\tau)$ と $(1-\tau)x+\tau y$ の台はどちらも $\sigma'$ なので、その凸結合も台が $\sigma'$ の $|K|$ の点である。$\tau=0$ では $x$、$\tau=1$ では $y$ なので、$h$ は $\mathcal P(x,y)$ の中の、$\gamma$ から線分の道への連続な変形であり、$\mathcal P(x,y)$ は空でなく可縮である。よって射影は写像空間のホモトピー同値を誘導する。$\square$

これは HA17 Theorem A.6.10(p. 1435)の有限の場合である。層がすべて可縮なので、出口道の∞圏は半順序集合 $S$ と同値になる。cor-ep-euclid の 1 は、$\mathbb R$ の層がすべて可縮なので同じ形になる。2 のように可縮でない層があると、半順序集合の脈体とは同値にならない。
円錐性の仮定は外せない。

反例:出口道の単体的集合が∞圏にならない層別

$\mathbb R$ を $X_0=(-\infty,0]$、$X_1=(0,\infty)$ に分けた $[1]$-層別(円錐的でない。層別空間の例「反例:円錐的でない層別」)では、$\operatorname{Sing}^{[1]}(\mathbb R)$ は∞圏でない。

$\alpha(\tau):=-1+\tau$ は $X_0$ の中の道なので、$-1$ から $0$ への出口道である。$\beta(\tau):=\tau$ は $\beta(0)=0\in X_0$、$\beta((0,1])\subset X_1$ なので、$0$ から $1$ への出口道である。この 2 本は内部ホーン $\Lambda^2_1\to\operatorname{Sing}^{[1]}(\mathbb R)$ を定める。これを埋める出口単体 $\sigma\colon|\Delta^2|\to\mathbb R$ があったとすると、鎖は $0\le0\le1$ であり、$t_2\neq0$ の点は $X_1$ に写る。辺 $\delta(u):=\sigma(1-u,0,u)$ は $\delta(0)=-1$ で、$u>0$ なら $\delta(u)>0$ となるが、これは $\delta$ の $u=0$ での連続性に反する。よって $\Lambda^2_1$ は埋まらない。$\square$

$-1$ から $1$ への出口道がないのに、$-1\to0$ と $0\to1$ は合成できるはずだ、という食い違いが起きている。それでもこの層別の構成可能層は、$[1]=\{0< 1\}$ からの関手と同じものになる(exodromy の命題「円錐的でない層別での exodromy」)。出口道の∞圏を、単体的集合でなく構成可能層の圏から内在的に定めれば、円錐的でない層別にも出口道の∞圏が定まる(HPT24 Definition 2.2.10、p. 17)。この例では、それは円錐的な細分 $(-\infty,0)\sqcup\{0\}\sqcup(0,\infty)$ の出口道の∞圏 $N(Q)$ で射 $c\to-$ を可逆にしたもの、すなわち $\Delta^1$ である(同 Theorem 0.3.1 の 3、p. 3)。

関連する結果

  • 円錐的でない場合への拡張。 Haine–Porta–Teyssier は、構成可能層の圏が原子的に生成されるなどの条件を満たす層別空間(exodromic な層別空間)について、出口道の∞圏を構成可能層の原子的な対象の反対圏として定めた(HPT24 Definition 2.2.10、p. 17)。円錐的で層が局所的に弱可縮なら、これは Lurie の $\operatorname{Sing}^A(X)$ と同値である(同 Example 2.2.13、p. 17、Recollection 5.5.1、p. 56)。コンパクトな劣解析的層別空間では、出口道の∞圏は有限な∞圏である(同 Theorem 0.4.2、p. 4)。
  • 円錐的に滑らかな層別空間。 Ayala–Francis–Rozenblyum は、円錐的に滑らかな層別空間について出口道の∞圏を完備 Segal 空間として構成し、Lurie のものと一致することと、層別空間から∞圏への関手として充満忠実であることを示した(AFR17 pp. 10–11)。
  • 層別ホモトピー仮説。 出口道の構成は、層とリンクでの弱ホモトピー同値を逆にした $P$-層別空間のホモトピー論と、$P$ への保守的な関手をもつ∞圏のホモトピー論との同値を与える(Hai23 の要旨、p. 1)。
  • Seifert–van Kampen の定理。 円錐的な層別空間の開被覆で、各点を含む開集合の族が弱可縮な脈体をもつものについて、$\operatorname{Sing}^A(X)$ は $\operatorname{Sing}^A(U)$ たちの $\infty$圏の圏での余極限である(HA17 Theorem A.7.1、p. 1436)。

反例

外す条件反例成り立たなくなること
層別が円錐的であること$\mathbb R=(-\infty,0]\sqcup(0,\infty)$(ex-ep-nonconical)$\operatorname{Sing}^A(X)$ が∞圏であること(内部ホーンの充填)
層別が自明であること原点で分けた $\mathbb R$(cor-ep-euclid の 1)出口道の∞圏が∞亜群であること($+$ から $c$ への射がない)
層が可縮であること原点で分けた $\mathbb C$(cor-ep-euclid の 2)出口道の∞圏が半順序集合の脈体と同値であること(prop-ep-simplicial)
射の向きを保つこと(射を可逆にする)原点で分けた $\mathbb C$層別の情報が残ること(実現は $\mathbb C$ と同じく可縮)

2 行目の $\mathbb R$ は連結なのに、$+$ の側の点から原点への出口道はない。3 行目では、$\mathbb C\setminus\{0\}$ の点の自己同型が $\mathbb Z$ だけあり、どの半順序集合の脈体とも同値にならない(半順序集合の脈体では自己写像空間は 1 点である)。

関連項目

参考文献

[3]
Peter J. Haine, Mauro Porta, Jean-Baptiste Teyssier, Exodromy beyond conicality, arXiv:2401.12825, 2024, 頁は arXiv:2401.12825v2 による。§0.1(p. 1)、Theorem 0.3.1(p. 3)、Theorem 0.4.2(p. 4)、Definition 2.2.10・Example 2.2.13(p. 17)、Recollection 5.5.1(p. 56)
[4]
David Ayala, John Francis, Nick Rozenblyum, A stratified homotopy hypothesis, arXiv:1502.01713, 2017, 頁は arXiv:1502.01713v4 による。序の各節の概要(pp. 10–11)
[5]
Peter J. Haine, On the homotopy theory of stratified spaces, arXiv:1811.01119, 2023, 頁は arXiv:1811.01119v6 による。要旨(p. 1)

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