Hensel化(henselization)とは、局所環 $(A,\mathfrak{m},k)$ から Hensel 局所環への局所準同型の普遍的なものであり、剰余体を変えないエタール近傍の局所環の帰納極限 $A^{\mathrm{h}}$ として構成される。$A^{\mathrm{h}}$ の極大イデアルは $\mathfrak{m}A^{\mathrm{h}}$、剰余体は $k$ で、$A\to A^{\mathrm{h}}$ は忠実平坦であり、各 $n$ で $A/\mathfrak{m}^n$ を変えないので完備化も変えない。標数 $0$ の離散付値環では、完備化の元のうち商体上代数的なものの全体が Hensel 化であり、剰余体を分離閉包まで広げた狭義 Hensel 化はエタール位相での局所環を与える。
Hensel局所環 は、剰余体での単根が環の中の根に持ち上がる局所環である。完備局所環はその典型だが、完備化 $\widehat A$ は元の環 $A$ に比べて大きすぎる。たとえば $\mathbb{Z}_{(p)}$ の完備化 $\mathbb{Z}_p$ は非可算集合で、$\mathbb{Q}$ 上超越的な元を多く含む。Hensel 化(henselization)は、Hensel の補題が成り立つために「必要な根だけ」を $A$ に付け加えた、いちばん小さい Hensel 局所環である。
付け加える根は、エタール代数の点として得られる。$A$ 上のモニック多項式 $f$ と剰余体での単根 $a_0$ に対し、$(A[t]/(f))_{f'}$ はエタール代数であり、剰余体で $t\mapsto a_0$ となる点の局所環では $t$ が $a_0$ を持ち上げる根になる。こうした局所環を、剰余体が変わらないものすべてについて帰納極限にとったものが Hensel 化である。
| 問い | 答え |
|---|---|
| どう定義するか | Hensel 局所環への局所準同型についての普遍性で定める(def-henselization) |
| どう作るか | 剰余体を変えないエタール近傍の局所環の帰納極限として作る(thm-henselization-main) |
| 何が変わらないか | 極大イデアルは $\mathfrak{m}A^{\mathrm{h}}$、剰余体は $k$、$A/\mathfrak{m}^n=A^{\mathrm{h}}/\mathfrak{m}^nA^{\mathrm{h}}$、とくに完備化は同じ。$A\to A^{\mathrm{h}}$ は忠実平坦(thm-henselization-properties) |
| 具体的には何か | $\mathbb{Z}_{(p)}$ の Hensel 化は $\mathbb{Z}_p$ の元のうち $\mathbb{Q}$ 上代数的なものの全体(prop-henselization-dvr) |
剰余体まで分離閉包に広げたものが狭義 Hensel 化であり、エタール位相での茎として現れる(thm-henselization-strict)。
以下、$(A,\mathfrak{m},k)$ は局所環 $A$、その極大イデアル $\mathfrak{m}$、剰余体 $k=A/\mathfrak{m}$ を表す。記号は Hensel局所環 にそろえる。局所環 $R$ の極大イデアルを $\mathfrak{m}_R$、剰余体を $\kappa_R$ と書き、素イデアル $\mathfrak{q}$ の剰余体を $\kappa(\mathfrak{q})$ と書く。
局所環 $(A,\mathfrak{m},k)$ の Hensel 化(henselization)とは、Hensel 局所環 $A^{\mathrm{h}}$ と局所準同型 $i\colon A\to A^{\mathrm{h}}$ の組であって、次の普遍性をもつものをいう:任意の Hensel 局所環 $R$ と局所準同型 $\varphi\colon A\to R$ に対し、局所準同型 $\psi\colon A^{\mathrm{h}}\to R$ で $\varphi=\psi\circ i$ となるものがただ一つ存在する。
普遍性をもつ組は、存在すれば一意な同型を除いてただ一つである(二つの組の間に互いに逆な局所準同型が普遍性から得られる)。
局所環 $(A,\mathfrak{m},k)$ のエタール近傍とは、エタール代数 $B$ と、$\mathfrak{m}$ の上にある $B$ の素イデアル $\mathfrak{q}$ で $\kappa(\mathfrak{q})=k$ となるものの組 $(B,\mathfrak{q})$ をいう。$(B,\mathfrak{q})$ から $(C,\mathfrak{r})$ への射とは、$A$ 代数の射 $\varphi\colon B\to C$ で $\varphi^{-1}(\mathfrak{r})=\mathfrak{q}$ となるものをいう。エタール近傍とその射のなす圏を $\mathcal{N}_A$ と書く。
$(B,\mathfrak{q})$ がエタール近傍なら、$k\to B/\mathfrak{q}\subset\kappa(\mathfrak{q})=k$ なので $B/\mathfrak{q}=k$ であり、$\mathfrak{q}$ は極大イデアルである。射 $\varphi$ は局所準同型 $B_{\mathfrak{q}}\to C_{\mathfrak{r}}$ を誘導する。また $A\to B$ は $\mathfrak{q}$ で不分岐なので $\mathfrak{m}B_{\mathfrak{q}}=\mathfrak{q}B_{\mathfrak{q}}$ である(エタール射 の定義「不分岐な射」の 1)。$(A,\mathfrak{m})$ 自身もエタール近傍である。
$A\to C$ をエタールな環準同型とし、$\mu\colon C\otimes_AC\to C$ を積 $c\otimes c'\mapsto cc'$ とする。$I:=\ker\mu$ は冪等元 $e$ で生成される:$I=(e)$、$e^2=e$。
Kähler微分 の命題「対角線のイデアルによる構成」により $I/I^2\cong\Omega_{C/A}$ であり、エタール代数 の定理「エタール代数は平坦」により $\Omega_{C/A}=0$ である。よって $I=I^2$ である。$C$ は $A$ 上有限生成なので、生成元 $c_1,\dots,c_r$ をとれば $I$ は $c_j\otimes1-1\otimes c_j$ で生成される有限生成イデアルである。
$I=I^2$ で $I=(x_1,\dots,x_r)$ とする。$x_i=\sum_ja_{ij}x_j$($a_{ij}\in I$)と書けるので、行列 $1-(a_{ij})$ は列ベクトル $(x_j)$ を零にする。左から余因子行列を掛けると $\delta x_j=0$($\delta:=\det(1-(a_{ij}))$)であり、$\delta\in1+I$ である。$\delta=1-e$($e\in I$)とおくと $(1-e)I=0$ なので、$e(1-e)=0$ から $e^2=e$、また $x\in I$ について $x=ex$ から $I=(e)$ である。$\square$
$A\to C$ をエタールな環準同型、$D$ を $A$ 代数、$\varphi,\psi\colon C\to D$ を $A$ 代数の射、$\mathfrak{p}$ を $D$ の素イデアルとし、二つの合成 $C\to D\to\kappa(\mathfrak{p})$ が一致するとする。このとき $d\in D\setminus\mathfrak{p}$ があって、$\varphi$ と $\psi$ は $D\to D_d$ との合成として一致する。とくに $D$ が局所環で $\mathfrak{p}$ がその極大イデアルなら $\varphi=\psi$ である。
lem-henselization-diagonal の冪等元 $e$ の $\varphi\otimes\psi\colon C\otimes_AC\to D$ による像 $e'$ は $D$ の冪等元である。$D\to\kappa(\mathfrak{p})$ との合成 $C\otimes_AC\to\kappa(\mathfrak{p})$ は $c\otimes c'\mapsto\bar\varphi(c)\bar\psi(c')=\bar\varphi(cc')$($\bar\varphi=\bar\psi$ は仮定の合成)なので $\mu$ を経由し、$e\in\ker\mu$ を $0$ に送る。よって $e'\in\mathfrak{p}$ であり、$d:=1-e'\notin\mathfrak{p}$ である。$D_d$ では $e'd=0$ と $d$ の可逆性から $e'=0$ である。$c\in C$ について $c\otimes1-1\otimes c\in I=(e)$ なので、$\varphi(c)-\psi(c)=(\varphi\otimes\psi)(c\otimes1-1\otimes c)\in e'D$ は $D_d$ で $0$ になる。$D$ が局所環で $\mathfrak{p}$ が極大イデアルなら、$d$ は単元なので $D=D_d$ である。$\square$
$(A,\mathfrak{m},k)$ を局所環とする。
1:$(A,\mathfrak{m})$ は対象である。対象 $(B_1,\mathfrak{q}_1)$、$(B_2,\mathfrak{q}_2)$ に対し、$B:=B_1\otimes_AB_2$ はエタール $A$ 代数である(エタール代数 の命題「保存則」:底変換と合成)。$B_j\to B_j/\mathfrak{q}_j=k$ のテンソル積 $B\to k\otimes_Ak=k$ は全射で、その核 $\mathfrak{q}$ は剰余体 $k$ の素イデアルで $\mathfrak{q}_1,\mathfrak{q}_2$ の上にある。よって 2 つの包含は $(B,\mathfrak{q})$ への射である。平行な射 $\varphi,\psi$ については、合成 $B\to C\to C/\mathfrak{r}=k$ はどちらも $A$ 代数の射で、$B/\mathfrak{q}=k$ を経由する $k$ の $k$ 代数としての自己準同型なので一致する。lem-henselization-maps-agree により $d\in C\setminus\mathfrak{r}$ があって $\varphi,\psi$ は $C_d$ で一致する。$C_d$ はエタールで(同命題)、$(C_d,\mathfrak{r}C_d)$ は対象であり、$C\to C_d$ が求める $\chi$ である。
2:フィルター的な圏の上の帰納極限なので、$A^{\mathrm{h}}$ の元は $B_{\mathfrak{q}}$ の元 $x$ の像として表され、$x$ と $x'\in B'_{\mathfrak{q}'}$ が同じ元を表すのは、共通の対象への射で像が一致するときである(帰納極限)。遷移写像 $B_{\mathfrak{q}}\to C_{\mathfrak{r}}$ は局所準同型である。$x\notin\mathfrak{q}B_{\mathfrak{q}}$ なら $x$ は $B_{\mathfrak{q}}$ の単元なので像も単元である。$x\in\mathfrak{q}B_{\mathfrak{q}}$ の像は単元でない:単元なら、ある遷移先 $C_{\mathfrak{r}}$ で $xy=1$ となるが、$x$ の像は $\mathfrak{r}C_{\mathfrak{r}}$ に入るので矛盾する。よって単元でない元の全体は $\mathfrak{q}B_{\mathfrak{q}}$ たちの像の和集合 $\mathfrak{n}$ であり、フィルター性からこれはイデアルなので、$A^{\mathrm{h}}$ は極大イデアル $\mathfrak{n}$ の局所環である。$\mathfrak{q}B_{\mathfrak{q}}=\mathfrak{m}B_{\mathfrak{q}}$ なので $\mathfrak{n}=\mathfrak{m}A^{\mathrm{h}}$ で、剰余体は $\varinjlim\kappa(\mathfrak{q})=k$ である。$i$ は対象 $(A,\mathfrak{m})$ からの写像なので局所準同型である。
3:$F\in A^{\mathrm{h}}[t]$ をモニック、$a_0\in k$ を $\bar F$ の単根とする。$F$ の有限個の係数は、ある $B_{\mathfrak{q}}$ の元の像であり、分母をまとめた $s\notin\mathfrak{q}$ で $B$ を $B_s$ に取り替えれば、$B$ 上のモニックな $f$ の像としてよい。$C:=(B[t]/(f))_{f'}$ は $B$ 上エタール(エタール射 の命題「標準エタール射はエタール射である」)、したがって $A$ 上エタールである。$B\to B/\mathfrak{q}=k$ と $t\mapsto a_0$ で定まる $C\to k$ は、$\bar f(a_0)=0$、$\bar f'(a_0)\neq0$ から定義され、全射で、その核 $\mathfrak{r}$ は $\kappa(\mathfrak{r})=k$ の素イデアルで $\mathfrak{q}$ の上にある。$(B,\mathfrak{q})\to(C,\mathfrak{r})$ は射であり、$C_{\mathfrak{r}}$ で $t$ は $f$ の根で剰余類は $a_0$ である。その像 $a\in A^{\mathrm{h}}$ は $F(a)=0$、$\bar a=a_0$ を満たす。
4:$R$ を Hensel 局所環、$\varphi\colon A\to R$ を局所準同型とする。まず、各対象 $(B,\mathfrak{q})$ について、局所な $A$ 代数の射 $\beta\colon B_{\mathfrak{q}}\to R$ がただ一つあることを示す。
存在:$C:=B\otimes_AR$ はエタール $R$ 代数である。$B\to k$ と $R\to\kappa_R$ から $C\to k\otimes_A\kappa_R=\kappa_R$ が定まり、全射なので、その核 $\mathfrak{Q}$ は $\mathfrak{m}_R$ の上にある剰余体 $\kappa_R$ の素イデアルである。Hensel局所環 の命題「Hensel 局所環上のエタール代数の切断」により、$R$ 代数の射 $\tau\colon C\to R$ で $\tau^{-1}(\mathfrak{m}_R)=\mathfrak{Q}$ となるものがある。$\beta_0\colon B\to C\xrightarrow{\tau}R$ は $A$ 代数の射で、$\beta_0^{-1}(\mathfrak{m}_R)=\{b\mid b\otimes1\in\mathfrak{Q}\}=\mathfrak{q}$ である。よって $\beta_0$ は局所準同型 $\beta\colon B_{\mathfrak{q}}\to R$ に延びる。
一意性:$\beta_1,\beta_2\colon B_{\mathfrak{q}}\to R$ を局所な $A$ 代数の射とする。$B\to B_{\mathfrak{q}}$ と合成すると、$B\to R\to\kappa_R$ はどちらも核 $\mathfrak{q}$ をもち、$B/\mathfrak{q}=k\to\kappa_R$ は $\varphi$ から決まる写像なので一致する。lem-henselization-maps-agree($D=R$、$\mathfrak{p}=\mathfrak{m}_R$)により $B$ 上で一致し、局所化の普遍性から $\beta_1=\beta_2$ である。
射 $(B,\mathfrak{q})\to(C,\mathfrak{r})$ について、$C_{\mathfrak{r}}$ の射と遷移写像の合成は $B_{\mathfrak{q}}$ の局所な $A$ 代数の射なので、一意性から $B_{\mathfrak{q}}$ の射と一致する。よって射たちは両立し、局所準同型 $\psi\colon A^{\mathrm{h}}\to R$ を定め、$\psi i=\varphi$ である。逆に $\psi'$ が同じ性質をもてば、$B_{\mathfrak{q}}\to A^{\mathrm{h}}$ は局所準同型なので、$\psi'$ の各 $B_{\mathfrak{q}}$ への制限は局所な $A$ 代数の射であり、一意性から $\psi'=\psi$ である。3 と合わせて、$i\colon A\to A^{\mathrm{h}}$ は Hensel 化である。$\square$
この構成は Stacks Algebra, Lemma 10.155.1(Tag 04GN、pp. 855–856)による。普遍性の証明で使った「エタール代数の射は一点での値で決まる」という性質(lem-henselization-maps-agree)が、Hensel 化の一意性の源である。
$(A,\mathfrak{m},k)$ を局所環、$i\colon A\to A^{\mathrm{h}}$ をその Hensel 化とする。
1:エタール代数は平坦(エタール代数 の定理「エタール代数は平坦」)で、局所化も平坦なので、各 $B_{\mathfrak{q}}$ は平坦 $A$ 加群である。フィルター的な帰納極限は完全列を保つので、$A^{\mathrm{h}}$ も平坦である。局所準同型で平坦なものは忠実平坦であり(忠実平坦加群)、忠実平坦な環準同型は単射である。
2:対象 $(B,\mathfrak{q})$ について $A_n:=A/\mathfrak{m}^n$、$E:=B_{\mathfrak{q}}/\mathfrak{m}^nB_{\mathfrak{q}}$ とおく。$E$ は平坦な局所 $A_n$ 代数で、$E/\mathfrak{m}E=B_{\mathfrak{q}}/\mathfrak{q}B_{\mathfrak{q}}=k$ である。$A_n\to E$ の像を $A'$ とすると $E=A'+\mathfrak{m}E$ で、これを繰り返すと $E=A'+\mathfrak{m}^nE=A'$ なので全射である。局所準同型で平坦なので忠実平坦、よって単射である。ゆえに $A_n\cong B_{\mathfrak{q}}/\mathfrak{m}^nB_{\mathfrak{q}}$ で、帰納極限をとれば(テンソル積は帰納極限と交換する)$A_n\cong A^{\mathrm{h}}/\mathfrak{m}^nA^{\mathrm{h}}$ である。$A^{\mathrm{h}}$ の極大イデアルは $\mathfrak{m}A^{\mathrm{h}}$ なので、右辺の射影極限は $A^{\mathrm{h}}$ の完備化である。
3:$A$ が Hensel 局所環なら、恒等写像 $A\to A$ は定義の普遍性をもつ($\psi=\varphi$ がただ一つの延長)。普遍性をもつ組の一意性から $i$ は同型である。逆は $A^{\mathrm{h}}$ が Hensel 局所環であることから従う。
4:この記事では証明しない。Stacks More on Algebra, Lemma 15.46.3(Tag 06LJ、p. 1305)にあり、Noether のとき $\widehat A\to\widehat{A^{\mathrm{h}}}$ が同型であることも同じ箇所で示されている。$\square$
1 と 2 は Stacks More on Algebra, Lemma 15.46.1(Tag 07QM、p. 1304)にもある。
剰余体を分離閉包まで広げると、エタール位相での局所環が得られる。$k^{\mathrm{s}}$ を $k$ の分離閉包とする。狭義 Hensel 化の普遍性による定義は 狭義Hensel局所環 の定義「狭義Hensel化」にある。ここでは上と同じ方法でその存在を示す。
$(A,\mathfrak{m},k)$ を局所環とする。エタール $A$ 代数 $B$、$\mathfrak{m}$ の上にある素イデアル $\mathfrak{q}$、$k$ 上の体の埋め込み $\iota\colon\kappa(\mathfrak{q})\to k^{\mathrm{s}}$ の 3 つ組 $(B,\mathfrak{q},\iota)$ を対象とし、$A$ 代数の射 $\varphi\colon B\to C$ で $\varphi^{-1}(\mathfrak{r})=\mathfrak{q}$ かつ $\iota'\circ\kappa(\varphi)=\iota$ となるものを射 $(B,\mathfrak{q},\iota)\to(C,\mathfrak{r},\iota')$ とする。
要点:thm-henselization-main の証明で、剰余体の一致 $\kappa(\mathfrak{q})=k$ の代わりに埋め込み $\iota$ を持ち運べばよい。
フィルター性:$(B_1,\mathfrak{q}_1,\iota_1)$、$(B_2,\mathfrak{q}_2,\iota_2)$ に対し、$B_1\otimes_AB_2\to\kappa(\mathfrak{q}_1)\otimes_k\kappa(\mathfrak{q}_2)\xrightarrow{\iota_1\otimes\iota_2}k^{\mathrm{s}}$ の像は $k$ 上有限次元の整域なので体であり、核 $\mathfrak{q}$ は素イデアルで、像への包含を $\iota$ とすれば 2 つの包含は $(B_1\otimes_AB_2,\mathfrak{q},\iota)$ への射である。平行な射 $\varphi,\psi\colon(B,\mathfrak{q},\iota)\rightrightarrows(C,\mathfrak{r},\iota')$ では、$\iota'$ が単射なので $\kappa(\varphi)=\kappa(\psi)$、すなわち $B\to C\to\kappa(\mathfrak{r})$ が一致し、lem-henselization-maps-agree で局所化 $C_d$ をとればよい。
局所環であることと極大イデアルが $\mathfrak{m}A^{\mathrm{sh}}$ であることは thm-henselization-main の 2 と同じである。剰余体は $\iota(\kappa(\mathfrak{q}))$ たちの和集合である。$\beta\in k^{\mathrm{s}}$ の $k$ 上の最小多項式 $g$ は分離的なので、モニックな持ち上げ $\tilde g\in A[t]$ について $B:=(A[t]/(\tilde g))_{\tilde g'}$ はエタールであり、$t\mapsto\beta$ の定める $B\to k(\beta)$ の核 $\mathfrak{q}$ と包含 $\iota\colon\kappa(\mathfrak{q})=k(\beta)\subset k^{\mathrm{s}}$ が対象を与える。よって剰余体は $k^{\mathrm{s}}$ である。
Hensel 性:$F\in A^{\mathrm{sh}}[t]$ がモニックで、$\bar F$ が単根 $a_0\in k^{\mathrm{s}}$ をもつとする。thm-henselization-main の 3 と同様に $F$ を $(B,\mathfrak{q},\iota)$ の $B$ 上の $f$ の像とし、$C:=(B[t]/(f))_{f'}$ から $k^{\mathrm{s}}$ への $b\mapsto\iota(\bar b)$、$t\mapsto a_0$ の核 $\mathfrak{r}$ と、像への包含 $\iota'$ をとれば、$(C,\mathfrak{r},\iota')$ で $t$ が求める根を与える。忠実平坦性は thm-henselization-properties の 1 と同じである。
普遍性:$C:=B\otimes_AR$ から $\kappa_R$ への $b\otimes r\mapsto\alpha(\iota(\bar b))\bar r$ は全射で、その核 $\mathfrak{Q}$ の剰余体は $\kappa_R$ である。Hensel局所環 の命題「Hensel 局所環上のエタール代数の切断」で切断 $\tau$ をとれば、$B\to R$ は局所準同型 $B_{\mathfrak{q}}\to R$ に延び、剰余体上で $\alpha\circ\iota$ を誘導する。剰余体上で $\alpha\circ\iota$ を誘導する局所な $A$ 代数の射は、lem-henselization-maps-agree によりただ一つである。あとは thm-henselization-main の 4 と同じに、これらを帰納極限に集めればよい。$R$ が狭義 Hensel なら $\kappa_R$ は分離閉なので、$k\to\kappa_R$ を延長する $\alpha$ はつねに存在する。$\square$
$\kappa(\mathfrak{q})=k$ の対象 $(B,\mathfrak{q})$ に包含 $k\subset k^{\mathrm{s}}$ を添えれば 3 つ組になるので、局所準同型 $A^{\mathrm{h}}\to A^{\mathrm{sh}}$ が得られる。スキームの点の局所環の狭義 Hensel 化が構造層のエタール位相での茎になることは、狭義Hensel局所環 の定理「エタール位相の茎としての狭義Hensel化」が扱う。この構成は Stacks Algebra, Lemma 10.155.2(Tag 04GP、p. 857)による。
完備局所環($\mathbb{Z}_p$、$k[\![t]\!]$ など)と Artin 局所環は Hensel 局所環である(Hensel局所環 の例「完備局所環」)。thm-henselization-properties の 3 により、これらの Hensel 化は自分自身である。
とくに $\mathbb{Z}_{(p)}$ の Hensel 化は $\mathbb{Z}_p$ の元のうち $\mathbb{Q}$ 上代数的なものの全体であり、標数 $0$ の体 $k$ について $k[t]_{(t)}$ の Hensel 化は代数的冪級数($k(t)$ 上代数的な $k[\![t]\!]$ の元)の全体である。どちらも完備化より真に小さい:$\mathbb{Z}_p$ は非可算だが、$\mathbb{Q}$ 上代数的な数は可算個しかない。
要点:$A^{\mathrm{h}}$ の元はエタール近傍の元なので代数的であり、逆に代数的な元は整閉包の局所化というエタール近傍に入る。
1:$x\in A^{\mathrm{h}}$ を $B_{\mathfrak{q}}$ の元の像とする。$B_{\mathfrak{q}}$ は Noether 局所環で、極大イデアルは $\mathfrak{q}B_{\mathfrak{q}}=\pi B_{\mathfrak{q}}$ である。Krullの交叉定理 により $\bigcap_n\pi^nB_{\mathfrak{q}}=0$ なので、$x\neq0$ なら $x\in\pi^nB_{\mathfrak{q}}\setminus\pi^{n+1}B_{\mathfrak{q}}$ となる $n$ があり、$x=u\pi^n$($u$ は単元)である。よって $A^{\mathrm{h}}$ の $0$ でない元はすべて $u\pi^n$ の形である。$A\to A^{\mathrm{h}}$ は単射(thm-henselization-properties の 1)なので $\pi^n\neq0$ であり、$u\pi^n\cdot u'\pi^m=uu'\pi^{n+m}\neq0$ から $A^{\mathrm{h}}$ は整域である。$v(u\pi^n/u'\pi^m):=n-m$ は商体の離散付値で、$A^{\mathrm{h}}$ はその付値環である。
2(単射):thm-henselization-properties の 2 により、$j$ が誘導する $A^{\mathrm{h}}/\pi^nA^{\mathrm{h}}\to\widehat A/\pi^n\widehat A$ はどちらも $A/\pi^nA$ に同型で、同型である。よって $\ker j\subset\bigcap_n\pi^nA^{\mathrm{h}}=0$ である。
2(像は代数的):$x\in A^{\mathrm{h}}$ が対象 $(B,\mathfrak{q})$ の $b\in B$ の像とする($B_{\mathfrak{q}}$ の分母は $B$ を局所化して払える)。$B\to\widehat A\to\widehat K$ は $A$ の $0$ でない元を可逆にするので $B\otimes_AK$ を経由する。$B\otimes_AK$ はエタール $K$ 代数なので有限個の有限分離拡大体の直積である(Stacks Algebra, Lemma 10.143.4、Tag 00U3、p. 819)。よって $j(x)$ は $K$ 上代数的である。
2(代数的な元は像に入る):$y\in\widehat A$ が $K$ 上代数的とし、$L:=K(y)\subset\widehat K$ とおく。$\widehat K$ の付値 $\hat v$ の $L$ への制限を $w$ とすると、値群は $\mathbb{Z}$ で、付値環 $O_w=L\cap\widehat A$ の剰余体は $k$ である($\widehat A$ の剰余体が $k$ だから)。$L/K$ は標数 $0$ なので分離的で、$A$ の $L$ での整閉包 $C$ は有限自由 $A$ 加群である(整閉包の有限性 の系「単項イデアル整域の場合は自由加群」)。$C$ の元は $\widehat A$ 上整で $\widehat A$ は整閉なので $C\subset O_w$ であり、$\mathfrak{q}:=C\cap\mathfrak{m}_{O_w}$ は $C$ の極大イデアルで、$C_{\mathfrak{q}}$ は $O_w$ に支配される $L$ の離散付値環なので $C_{\mathfrak{q}}=O_w$ である。$C$ の $\mathfrak{m}$ の上の他の極大イデアルを含み $\mathfrak{q}$ に含まれない $g\in C$ をとると、$C_g$ の素イデアルは $(0)$ と $\mathfrak{q}C_g$ だけである。$C_g$ は平坦(捩れのない有限加群の局所化)で有限表示であり、$(0)$ では $L/K$ が分離的、$\mathfrak{q}$ では $\pi C_{\mathfrak{q}}=\mathfrak{q}C_{\mathfrak{q}}$($w(\pi)=1$)かつ $\kappa(\mathfrak{q})=k$ なので不分岐である。よって $C_g$ はエタールで、$(C_g,\mathfrak{q}C_g)$ はエタール近傍である。包含 $C_{\mathfrak{q}}=O_w\subset\widehat A$ は局所な $A$ 代数の射なので、thm-henselization-main の 4 の証明の一意性により、$C_{\mathfrak{q}}\to A^{\mathrm{h}}\xrightarrow{j}\widehat A$ に等しい。$y\in O_w$ なので $y$ は $j$ の像に入る。$\square$
| 外す条件 | 反例 | 成り立たなくなること |
|---|---|---|
| エタール近傍の剰余体が $k$ に等しい | $A=\mathbb{Z}_{(p)}$($p$ は奇素数)、$d\in\mathbb{Z}$ を $p$ を法とする平方非剰余とし、$B=A[t]/(t^2-d)$、$\mathfrak{q}=pB$ | 恒等写像と $t\mapsto-t$ の 2 つの射 $(B,\mathfrak{q})\rightrightarrows(B,\mathfrak{q})$ を等しくする射がなく、フィルター性が成り立たない |
| $B$ が $A$ 上エタール | $A=\mathbb{Z}_{(p)}$、$B=A[t]/(t^2-p)$(有限平坦)、$\mathfrak{q}=tB$ | $\kappa(\mathfrak{q})=\mathbb{F}_p$ だが $\mathfrak{m}B_{\mathfrak{q}}=t^2B_{\mathfrak{q}}\neq\mathfrak{q}B_{\mathfrak{q}}$ であり、Hensel 局所環 $\mathbb{Z}_p$ への局所準同型 $B_{\mathfrak{q}}\to\mathbb{Z}_p$ は存在しない |
| 普遍性の相手 $R$ が Hensel 局所環 | $A=R=\mathbb{Z}_{(p)}$、$\varphi=\mathrm{id}$ | $\psi\circ i=\mathrm{id}$ となる局所準同型 $\psi\colon A^{\mathrm{h}}\to A$ は存在しない |
各行は左の列の条件だけを外している。
1 行目:$t^2-d$ は $\mathbb{F}_p$ 上既約で分離的なので $B$ はエタールであり、$B/pB=\mathbb{F}_p[t]/(t^2-d)=\mathbb{F}_{p^2}$ は体なので $\mathfrak{q}=pB$ は素イデアルで、$\kappa(\mathfrak{q})=\mathbb{F}_{p^2}\neq\mathbb{F}_p$ である。$\sigma\colon t\mapsto-t$ は $\mathfrak{q}$ を保つ $A$ 代数の自己同型である。$\chi\colon B\to C$ が $\chi=\chi\sigma$ を満たせば $2\chi(t)=0$ で、$2$ は $C$ の単元($p$ は奇素数)なので $\chi(t)=0$、よって $\chi(d)=\chi(t)^2=0$ だが $d$ は $A$ の単元なので $C=0$ であり、素イデアルをもたない。
2 行目:$B$ は自由 $A$ 加群なので平坦である。$\mathfrak{q}=(p,t)B=tB$($p=t^2$)で $B/\mathfrak{q}=\mathbb{F}_p$。$\mathfrak{m}B_{\mathfrak{q}}=pB_{\mathfrak{q}}=t^2B_{\mathfrak{q}}$ は $tB_{\mathfrak{q}}$ と異なる($B_{\mathfrak{q}}$ は $t$ を一意化元とする離散付値環である)。局所準同型 $B_{\mathfrak{q}}\to\mathbb{Z}_p$ があれば $t$ の像 $s$ は $s^2=p$ を満たすが、$p$ 進付値で $2v_p(s)=1$ となり不可能である。
3 行目:$x^2-x-p^2$ は $\mathbb{F}_p$ で単根 $0$ をもつので、$A^{\mathrm{h}}$ に根 $a$ をもつ。$\psi(a)$ は $\mathbb{Z}_{(p)}$ における根になるが、Hensel局所環 の例「反例:$\mathbb{Z}_{(p)}$ は Hensel 局所環でない」によりそのような根はない。
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