Peter–Weylの定理

同義語:Peter-Weylの定理Peter–Weyl theoremペーター–ワイルの定理

概要

Peter–Weylの定理(Peter–Weyl theorem)とは、コンパクト群 $G$ の有限次元表現の行列係数の線形結合が連続関数全体 $C(G)$ で一様に稠密で、$L^2(G)$ でも稠密であるという定理であり、正規化した既約ユニタリ表現の行列係数は $L^2(G)$ の正規直交基底をなす。その結果 $L^2(G)$ は既約表現 $\pi$ ごとの $V_\pi\otimes V_\pi^*$ の直交直和に分かれ、無限次元の Hilbert 空間の上のユニタリ表現も有限次元の既約表現の直交直和に分かれるので、既約なユニタリ表現は有限次元である。証明には畳み込みで作ったコンパクトな自己共役作用素のスペクトル分解を使う。円周群では Fourier 級数の完全性にあたり、コンパクト Lie 群が行列の群の閉部分群として実現できることも従う。

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{div}[0]{\mathbin{÷}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: コンパクト群, Haar測度, Hilbert空間, コンパクト作用素

円周 $\mathbb{T}$ の上の 2 乗可積分関数は、指数関数 $e^{im\theta}$ の和に展開できる(Fourier級数)。Peter–Weyl の定理は、これを任意のコンパクト群へ広げる定理である。可換でない群では 1 次元の指数関数だけでは足りず、有限次元の既約表現を行列で書いたときの成分(行列係数)を使う。定理は次の三つを主張する。

  • 行列係数の線形結合は連続関数を一様に近似し、$L^2(G)$ で稠密である。
  • $L^2(G)$ は、既約表現 $\pi$ ごとの $d_\pi^2$ 次元の部分空間 $V_\pi\otimes V_\pi^*$ の直交直和に分かれる($d_\pi$ は $\pi$ の次元)。
  • 無限次元の Hilbert 空間の上のユニタリ表現も有限次元の既約表現の直交直和に分かれ、とくに既約なユニタリ表現は有限次元である。
    この記事では、群の上の畳み込みで作った積分作用素がコンパクトな自己共役作用素であることを使い、そのスペクトル分解から三つを証明する。応用として、コンパクト Lie 群が行列の群の閉部分群として実現できることを示し、例として円周群と $\mathrm{SU}(2)$ の場合を書き下す。

記号と設定

$G$ をコンパクト群(Hausdorff でコンパクトな位相群)とし、$dx$ を全体の測度が $1$ の Haar 測度とする。$dx$ は左右の平行移動と $x\mapsto x^{-1}$ で不変である(コンパクト群 の節「Haar 測度による平均」)。$L^2(G)$ の内積は $\langle f,h\rangle=\int_G\overline{f(x)}h(x)\,dx$(第 2 変数について線形)とする。

ユニタリ表現と行列係数
  1. Hilbert 空間 $H\neq\{0\}$ と、群準同型 $\rho\colon G\to\{H\text{ のユニタリ作用素}\}$ で、各 $v\in H$ について $g\mapsto\rho(g)v$ が連続(強連続)なものを $G$ のユニタリ表現という。$\rho(G)$ で保たれる閉部分空間を不変部分空間といい、$\{0\}$ と $H$ 以外にないとき $\rho$ は既約であるという。
  2. 有限次元の複素ベクトル空間 $V$ の上の連続な表現 $\pi\colon G\to GL(V)$(コンパクト群 の定義「有限次元表現」)について、$V$ に内積を一つ固定し、$u,v\in V$ に対する連続関数 $c_{u,v}(x):=\langle u,\pi(x)v\rangle$ を $\pi$ の行列係数という。正規直交基底 $(e_i)$ をとると $\pi_{ij}(x):=\langle e_i,\pi(x)e_j\rangle$ は $\pi(x)$ の表現行列の成分である。
  3. 有限次元の連続な表現すべての行列係数の線形結合全体を $\mathcal{A}(G)$ と書く。有限次元の既約ユニタリ表現の同値類ごとに代表 $\pi\colon G\to U(V_\pi)$ を一つ選んだ全体を $\widehat G$、$d_\pi:=\dim V_\pi$ とする。

有限次元の表現は不変な内積をもち、既約表現の直和に分かれる(コンパクト群 の定理「ユニタリ化と完全可約性」)。同値な表現の行列係数は互いの線形結合で書けるので、$\mathcal{A}(G)$ は $\pi\in\widehat G$ の成分 $\pi_{ij}$ で張られる。さらに Schur の直交関係(コンパクト群 の定理「Schur の直交関係」)
$$ \int_G\pi_{ij}(x)\overline{\pi'_{kl}(x)}\,dx=\frac{\delta_{\pi\pi'}\,\delta_{ik}\,\delta_{jl}}{d_\pi}\qquad(\pi,\pi'\in\widehat G) $$
が成り立つ。$L^2(G)$ には右正則表現 $(R(g)f)(x):=f(xg)$ と左正則表現 $(L(g)f)(x):=f(g^{-1}x)$ がある。どちらも Haar 測度の不変性によりユニタリで、強連続である(Kna16a Proposition 6.19、p. 237)。

畳み込みによる積分作用素

主定理の証明に使う二つの補題を先に示す。
$\varphi\in C(G)$ と $f\in L^2(G)$ の畳み込みを
$$ (\varphi*f)(x):=\int_G\varphi(y)f(y^{-1}x)\,dy=\int_G\varphi(xy^{-1})f(y)\,dy $$
と定める(2 つ目の等号は $y\mapsto xy^{-1}$ の置き換えと測度の不変性による)。$\varphi^\dagger(x):=\overline{\varphi(x^{-1})}$ とおく。

畳み込み作用素の性質

$\varphi\in C(G)$ とし、$T_\varphi f:=\varphi*f$ とおく。

  1. $T_\varphi$ は核 $k(x,y)=\varphi(xy^{-1})$ の積分作用素で、Hilbert–Schmidt ノルムは $\|\varphi\|_2$ である。とくに $T_\varphi$ は $L^2(G)$ 上のコンパクト作用素である。
  2. $T_\varphi f$ は連続関数であり、$\sup_x\lvert(T_\varphi f)(x)\rvert\le\|\varphi\|_2\|f\|_2$ である。
  3. すべての $g\in G$ について $T_\varphi R(g)=R(g)T_\varphi$ である。
  4. $\varphi^\dagger=\varphi$ なら $T_\varphi$ は自己共役である。
  5. 単位元 $e$ の開近傍 $U$ ごとに、$\varphi_U\ge0$、$\varphi_U^\dagger=\varphi_U$、$\int\varphi_U\,dx=1$、$U$ の外で $0$ となる $\varphi_U\in C(G)$ がある。$U$ を小さくすると、$f\in C(G)$ なら $\varphi_U*f\to f$ は一様に、$f\in L^2(G)$ なら $L^2$ で成り立つ。

要点:核が $G\times G$ 上で連続なことと、Haar 測度の不変性による計算である。

詳しい証明を開く

1:$\int\!\!\int\lvert\varphi(xy^{-1})\rvert^2\,dx\,dy=\int\!\!\int\lvert\varphi(x)\rvert^2\,dx\,dy=\|\varphi\|_2^2$ なので、Hilbert–Schmidt作用素 の定理「積分作用素との一致」により $T_\varphi$ は Hilbert–Schmidt ノルム $\|\varphi\|_2$ の Hilbert–Schmidt 作用素であり、同記事の定理「Hilbert–Schmidt作用素の基本性質」の 3 によりコンパクトである。

2:Cauchy–Schwarz の不等式と $\int\lvert\varphi(xy^{-1})\rvert^2dy=\|\varphi\|_2^2$ から上の評価が出る。連続性:$\varepsilon>0$ に対し、$ab^{-1}\in W$ なら $\lvert\varphi(a)-\varphi(b)\rvert<\varepsilon$ となる $e$ の開近傍 $W$ がある(Kna16a Proposition 6.6、p. 219)。$xx'^{-1}\in W$ なら $(xy^{-1})(x'y^{-1})^{-1}=xx'^{-1}\in W$ なので、$\lvert(T_\varphi f)(x)-(T_\varphi f)(x')\rvert\le\varepsilon\|f\|_1\le\varepsilon\|f\|_2$ である。

3:$(T_\varphi R(g)f)(x)=\int\varphi(xy^{-1})f(yg)\,dy$ で $y$ を $yg^{-1}$ に置き換えると $\int\varphi(xgy^{-1})f(y)\,dy=(T_\varphi f)(xg)$ となる。

4:$\overline{k(y,x)}=\overline{\varphi(yx^{-1})}=\varphi^\dagger(xy^{-1})=k(x,y)$ なので、Fubini の定理により $\langle T_\varphi f,h\rangle=\langle f,T_\varphi h\rangle$ である。

5:逆元をとる写像は同相なので、$V:=U\cap U^{-1}$ は $V=V^{-1}\subset U$ となる $e$ の開近傍である。コンパクト Hausdorff 空間は正規なので、Urysohnの補題 により $0\le\psi\le1$、$\psi(e)=1$、$V$ の外で $0$ となる $\psi\in C(G)$ がある。$\psi(x)+\psi(x^{-1})$ は $e$ の近くで正なので積分は正であり(空でない開集合の Haar 測度は正)、積分で割ったものを $\varphi_U$ とする。$f\in C(G)$ なら $(\varphi_U*f)(x)-f(x)=\int_V\varphi_U(y)\bigl(f(y^{-1}x)-f(x)\bigr)dy$ で、$y\in V$ なら $(y^{-1}x)x^{-1}=y^{-1}\in V\subset U$ なので、$U$ を Kna16a Proposition 6.6 の近傍の中にとれば一様に $\varepsilon$ 以下である。$\varphi_U*f=\int\varphi_U(y)\,L(y)f\,dy$ なので $\|\varphi_U*f\|_2\le\|\varphi_U\|_1\|f\|_2=\|f\|_2$ であり、$C(G)$ は $L^2(G)$ で稠密なので(Sal20 Theorem 4.15、p. 121)、$L^2$ の場合は $\varepsilon/3$ の議論で従う。$\square$

有限次元の右不変部分空間

$E\subset L^2(G)$ を有限次元の部分空間で、$R(g)E\subset E$($g\in G$)を満たし、各元が連続関数を代表にもつものとする。このとき $E\subset\mathcal{A}(G)$ である。

要点:$E$ の上の $R$ を行列で書き、単位元での値を読む。

詳しい証明を開く

$E$ の基底 $f_1,\dots,f_m$(連続な代表)をとり、$R(g)f_j=\sum_i\sigma_{ij}(g)f_i$ と書く。$\sigma$ は $E$ の上の表現で、$g\mapsto R(g)f_j$ が $L^2$ で連続なので、$E$ の上の線形な座標関数を通して各 $\sigma_{ij}$ は連続である。両辺は $x$ の連続関数で $L^2$ の元として等しいので、すべての $x$ で $f_j(xg)=\sum_i\sigma_{ij}(g)f_i(x)$ が成り立つ(差が $0$ でない点の近くの開集合は正の測度をもつ)。$x=e$ とおくと $f_j(g)=\sum_if_i(e)\sigma_{ij}(g)$ であり、右辺は有限次元表現 $\sigma$ の行列成分の線形結合なので $f_j\in\mathcal{A}(G)$ である。$\square$

主定理

Peter–Weylの定理

$G$ をコンパクト群とする。

  1. $\mathcal{A}(G)$ は $C(G)$ で一様ノルムについて稠密であり、$L^2(G)$ でも稠密である。
  2. $\{\sqrt{d_\pi}\,\pi_{ij}\mid\pi\in\widehat G,\ 1\le i,j\le d_\pi\}$ は $L^2(G)$ の正規直交基底である。言い換えると、$V_\pi^*$ を $V_\pi$ の双対空間(双対基底が正規直交になる内積を入れる)として
    $$ \Phi\colon\widehat{\bigoplus_{\pi\in\widehat G}}V_\pi\otimes V_\pi^*\to L^2(G),\qquad\Phi(v\otimes\lambda)(x):=\sqrt{d_\pi}\,\lambda\bigl(\pi(x)v\bigr) $$
    はユニタリ作用素であり、$R(h)\Phi=\Phi\circ(\pi(h)\otimes1)$、$L(g)\Phi=\Phi\circ(1\otimes\pi^*(g))$ を満たす。ここで $\pi^*(g)\lambda:=\lambda\circ\pi(g)^{-1}$ は反傾表現である。
  3. $G$ の任意のユニタリ表現 $\rho\colon G\to U(H)$ について、$H$ は有限次元の既約な不変部分空間の直交直和(Hilbert直和)である。とくに、既約なユニタリ表現は有限次元である。
1:一様稠密性

要点:$f$ を $\varphi*f$ で近似し、$\varphi*f$ を自己共役コンパクト作用素 $T_\varphi$ の固有空間の有限和で一様に近似する。固有空間は有限次元で右不変なので、行列係数でできている。
$f\in C(G)$ と $\varepsilon>0$ をとる。lem-pw-convolution の 5 により $\sup\lvert\varphi*f-f\rvert<\varepsilon$ となる $\varphi=\varphi_U$ をとり、$T:=T_\varphi$ とおく。lem-pw-convolution の 1・4 により $T$ はコンパクトな自己共役作用素なので、コンパクト作用素 の定理「自己共役コンパクト作用素のスペクトル分解」により
$$ L^2(G)=\ker T\oplus\widehat{\bigoplus_{\lambda\neq0}}E_\lambda,\qquad\dim E_\lambda<\infty $$
($E_\lambda$ は固有値 $\lambda$ の固有空間、$\lambda$ は高々可算個)と直交分解される。lem-pw-convolution の 3 により各 $E_\lambda$ は $R$ で不変であり、$h\in E_\lambda$ は $h=\lambda^{-1}Th$ なので同じ補題の 2 により連続な代表をもつ。よって lem-pw-finite-invariant により $E_\lambda\subset\mathcal{A}(G)$ である。
$P_\lambda$ を $E_\lambda$ への直交射影とする。有限個の固有値の集合 $S$ について $Tf=\sum_\lambda\lambda P_\lambda f$ と $\sum_{\lambda\in S}\lambda P_\lambda f\in\mathcal{A}(G)$ の差は $T\bigl(\sum_{\lambda\notin S}P_\lambda f\bigr)$ なので、lem-pw-convolution の 2 により
$$ \sup_x\Bigl\lvert(\varphi*f)(x)-\sum_{\lambda\in S}\lambda(P_\lambda f)(x)\Bigr\rvert\le\|\varphi\|_2\Bigl\|\sum_{\lambda\notin S}P_\lambda f\Bigr\|_2 $$
である。右辺は $S$ を大きくすると $0$ に近づくので、$\mathcal{A}(G)$ の元で $\sup\lvert f-a\rvert<2\varepsilon$ となる $a$ がある。$L^2$ での稠密性は、$\|\cdot\|_2\le\sup\lvert\cdot\rvert$(全体の測度が $1$)と $C(G)$ の $L^2(G)$ での稠密性(Sal20 Theorem 4.15、p. 121)から従う。$\square$

2:正規直交基底と分解

要点:Schur の直交関係で正規直交系であり、1 によりその線形包が稠密である。

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Schur の直交関係により族は正規直交系で、その線形包は $\mathcal{A}(G)$ に等しい。1 により稠密なので、Hilbert空間 の定理「完全正規直交系の特徴づけとParsevalの等式」により正規直交基底である。$V_\pi$ の正規直交基底 $(e_j)$ の双対基底を $(e_i^*)$、$e_i^*(w)=\langle e_i,w\rangle$ とすると、$\Phi(e_j\otimes e_i^*)=\sqrt{d_\pi}\,\pi_{ij}$ なので、$\Phi$ は正規直交基底 $(e_j\otimes e_i^*)$ をこの基底へ写し、ユニタリである。$R(h)\Phi(v\otimes\lambda)(x)=\sqrt{d_\pi}\lambda(\pi(x)\pi(h)v)$、$L(g)\Phi(v\otimes\lambda)(x)=\sqrt{d_\pi}\lambda(\pi(g)^{-1}\pi(x)v)$ から二つの等式が出る。$\square$

3:ユニタリ表現の分解

要点:$0$ でない $v$ を関数 $h\in\mathcal{A}(G)$ で「平均」した $\rho(h)v$ が $0$ でなくなるように $h$ を選ぶと、$h$ の左平行移動が張る有限次元空間から有限次元の不変部分空間ができる。あとは Zorn の補題で直交する既約部分空間を集める。

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$f\in C(G)$ に対し、$u\mapsto\int f(x)\langle u,\rho(x)v\rangle dx$ は有界な共役線形汎関数なので、Riesz の表現定理により $\langle u,\rho(f)v\rangle=\int_Gf(x)\langle u,\rho(x)v\rangle\,dx$ となる有界作用素 $\rho(f)$ が定まり、$\|\rho(f)\|\le\|f\|_1$ である。

段 1.$v\neq0$ とする。$\lvert\langle u,\rho(\varphi_U)v-v\rangle\rvert\le\int\varphi_U(x)\lvert\langle u,\rho(x)v-v\rangle\rvert dx$ から $\|\rho(\varphi_U)v-v\|\le\sup_{x\in U}\|\rho(x)v-v\|$ であり、強連続性により $U$ を小さくすると $0$ に近づく。よって $\rho(\varphi)v\neq0$ となる $\varphi=\varphi_U$ がある。1 により $\sup\lvert\varphi-h\rvert<\|\rho(\varphi)v\|/(2\|v\|)$ となる $h\in\mathcal{A}(G)$ をとると、$\|\rho(\varphi)v-\rho(h)v\|\le\|\varphi-h\|_1\|v\|$ から $\rho(h)v\neq0$ である。

段 2.$h$ は有限個の $\pi\in\widehat G$ の成分の線形結合なので、それらの $M_\pi$($\pi_{ij}$ の張る空間)の和 $S$ に入る。$\pi_{ij}(g^{-1}x)=\sum_k\pi_{ik}(g^{-1})\pi_{kj}(x)$ なので $S$ は有限次元で $L$ で不変である。$s\in S$ について $\langle u,\rho(g)\rho(s)v\rangle=\int s(x)\langle u,\rho(gx)v\rangle dx=\int s(g^{-1}y)\langle u,\rho(y)v\rangle dy$ なので $\rho(g)\rho(s)v=\rho(L(g)s)v$ である。よって $W:=\{\rho(s)v\mid s\in S\}$ は $0$ でない有限次元の不変部分空間であり、次元が最小の $0$ でない不変部分空間をとれば既約である。

段 3.互いに直交する有限次元の既約な不変部分空間の族を包含で順序づけると、鎖の和は上界なので、Zornの補題 により極大な族がある。その和の閉包を $K$ とする。$\rho(g)^*=\rho(g^{-1})$ なので $K^\perp$ も閉じた不変部分空間である。$K^\perp\neq\{0\}$ なら、$\rho$ を $K^\perp$ に制限して段 1・2 を当てると $K^\perp$ の中に有限次元の既約な不変部分空間があり、極大性に反する。よって $H=K$ である。$\rho$ が既約なら、族の各部分空間は $0$ でない閉じた不変部分空間なので $H$ に等しく、$H$ は有限次元である。$\square$

2 の左辺の $\widehat\bigoplus$ は Hilbert 直和を表す。$V_\pi\otimes V_\pi^*$ の像 $M_\pi$ は $\pi$ の行列係数 $\pi_{ij}$ の張る $d_\pi^2$ 次元の空間であり、右正則表現 $R$ のもとでは $\pi$ を $d_\pi$ 個並べた直和、左正則表現 $L$ のもとでは $\pi^*$ を $d_\pi$ 個並べた直和である。したがって $R$ には各 $\pi\in\widehat G$ がちょうどその次元 $d_\pi$ と同じ回数だけ現れる。$f\in L^2(G)$ の展開の係数でノルムを書く式(Plancherel の公式)は Plancherelの定理 で扱う。
1 の証明は Stone–Weierstrass の定理を使わない。コンパクト群 の定理「Peter–Weyl の定理(行列係数の稠密性)」では、まず点の分離を示してから Stone–Weierstrassの定理 で一様稠密性を出している。逆にこの記事の 1 からは、$C(G)$ の関数が点を分離すること(Urysohnの補題)により、$x\neq y$ なら $\pi(x)\neq\pi(y)$ となる $\pi\in\widehat G$ があることが従う。証明の組み立ては Kna16a Theorem 6.31・Corollary 6.32(pp. 252–254)、Theorem 6.34・Corollary 6.35(pp. 259–260)と同じ道具(Hilbert–Schmidt 作用素と $\rho(f)$)による。

コンパクト Lie 群は行列の群である

コンパクトLie群の忠実な有限次元表現

$G$ をコンパクトな Lie群 とする。単射な連続準同型 $\pi\colon G\to U(n)\subset GL_n(\mathbb{C})$ があり、像 $\pi(G)$ は $GL_n(\mathbb{C})$ の閉部分群で、$\pi$ は $G$ から $\pi(G)$ への位相群の同型である。

要点:既約表現の核の有限個の共通部分は閉部分群の減少列で、次元か連結成分の個数が減るので有限で止まる。止まったところで共通部分が $\{e\}$ になる。

詳しい証明を開く

有限個の $\pi_1,\dots,\pi_r\in\widehat G$ について $N(\pi_1,\dots,\pi_r):=\bigcap_s\ker\pi_s$ は $G$ の閉部分群なので、Lie群 の定理「閉部分群定理(Cartan)」により部分多様体で、コンパクトな Lie 群である。コンパクトな多様体の連結成分は開かつコンパクトなので有限個である。閉部分群 $N'\subsetneq N$ の次元が同じなら、$N'$ は $N$ の同じ次元の部分多様体なので $N$ の開集合であり、$N$ の連結成分のいくつかの和になるから、連結成分の個数は $N$ より少ない。よって(次元、連結成分の個数)は真に小さくなるたびに辞書式順序で減り、無限に減り続けることはない。したがって $N:=N(\pi_1,\dots,\pi_r)$ がそれ以上小さくならない有限個の $\pi_s$ がある。$g\in N$、$g\neq e$ なら、前の節の終わりで述べた点の分離により $\pi(g)\neq I$ となる $\pi\in\widehat G$ があり、$N(\pi_1,\dots,\pi_r,\pi)\subsetneq N$ となって矛盾する。よって $N=\{e\}$ で、$\pi:=\pi_1\oplus\cdots\oplus\pi_r$ は $n=\sum d_{\pi_s}$ 次のユニタリ表現として単射である。コンパクト空間から Hausdorff 空間への連続な単射は像への同相写像で、像はコンパクトなので閉である。$\square$

閉部分群定理により $\pi(G)$ は $GL_n(\mathbb{C})$ の閉部分群として Lie 群になる。Lie 群であることは外せない。$p$ 進整数環 $\mathbb{Z}_p$ はコンパクト群だが、単射な連続準同型 $\mathbb{Z}_p\to U(n)$ をもたない(下の反例の表)。一般のコンパクト群については、すべての $\pi\in\widehat G$ を並べた $\prod_\pi U(d_\pi)$ への埋め込みがある(コンパクト群 の系「行列群への埋め込み」)。

例

円周群の場合

$\mathbb{T}=\{z\in\mathbb{C}\mid\lvert z\rvert=1\}$ は可換なので、既約表現は 1 次元で、指標 $\chi_m(z)=z^m$($m\in\mathbb{Z}$)で尽くされる(Pontryagin双対 の定理「整数・円周・実数の双対群」)。$z=e^{i\theta}$ と書くと $dx=d\theta/2\pi$ で、thm-pw-main は次のようになる。

主定理$G=\mathbb{T}$ での内容
1三角多項式 $\sum_{\lvert m\rvert\le M}c_me^{im\theta}$ は周期 $2\pi$ の連続関数を一様に近似する
2$\{e^{im\theta}\}_{m\in\mathbb{Z}}$ は $L^2(\mathbb{T},d\theta/2\pi)$ の正規直交基底で、各 $V_\pi\otimes V_\pi^*$ は 1 次元
3$\mathbb{T}$ のユニタリ表現は 1 次元の不変部分空間の直交直和で、各部分空間には $z$ が $z^m$ 倍で作用する

2 は Fourier級数 の $L^2$ での完全性であり、Parseval の等式 $\frac1{2\pi}\int_0^{2\pi}\lvert f\rvert^2d\theta=\sum_m\lvert c_m\rvert^2$ を与える。

有限群の場合

有限群 $G$ に離散位相を入れると $L^2(G)$ は $\lvert G\rvert$ 次元で、thm-pw-main の 2 の基底の個数を数えて $\sum_{\pi\in\widehat G}d_\pi^2=\lvert G\rvert$ を得る。たとえば 3 次対称群 $S_3$ の既約表現は自明な表現・符号・2 次元の表現の三つで、$1+1+4=6$ である。$S_3$ は可換でないので 1 次元の表現だけでは $L^2(S_3)$ を張れない。

$\mathrm{SU}(2)=\left\{\begin{pmatrix}\alpha&-\bar\beta\\\beta&\bar\alpha\end{pmatrix}\ \middle|\ \lvert\alpha\rvert^2+\lvert\beta\rvert^2=1\right\}$(特殊ユニタリ群)では、既約表現を具体的に書き下せる。$V_n$ を $z_1,z_2$ の $n$ 次斉次多項式全体($\dim V_n=n+1$)とし、$z={}^t(z_1,z_2)$ について $(\pi_n(g)P)(z):=P(g^{-1}z)$ と定める。$t_\theta:=\operatorname{diag}(e^{i\theta},e^{-i\theta})$ とおく。

$\mathrm{SU}(2)$ の既約表現の分類
  1. 各 $\pi_n$($n\ge0$)は既約である。
  2. $g$ の固有値を $e^{\pm i\theta}$($0<\theta<\pi$)とすると、$\pi_n$ の指標は $\chi_n(g)=\dfrac{\sin(n+1)\theta}{\sin\theta}$ である($g=\pm I$ では $(\pm1)^n(n+1)$)。
  3. $\mathrm{SU}(2)$ の有限次元既約表現は、ちょうど一つの $\pi_n$ と同値である。したがって
    $$ L^2(\mathrm{SU}(2))=\widehat{\bigoplus_{n\ge0}}V_n\otimes V_n^*,\qquad\dim(V_n\otimes V_n^*)=(n+1)^2. $$

要点:1 は対角行列と回転の作用で単項式を移し合う。3 は、類関数の積分を $\theta$ の積分に直す公式と、$\sin k\theta$ の直交性による。

詳しい証明を開く

1:$t_\theta^{-1}z=(e^{-i\theta}z_1,e^{i\theta}z_2)$ なので、単項式 $z_1^kz_2^{n-k}$ は $\pi_n(t_\theta)$ の固有値 $e^{i(n-2k)\theta}$ の固有ベクトルである。$\theta=\pi/(n+1)$ ではこの $n+1$ 個の固有値は相異なるので、不変部分空間 $W\neq\{0\}$ は、そこに含まれる単項式で張られる。$r_\alpha:=\begin{pmatrix}\cos\alpha&-\sin\alpha\\\sin\alpha&\cos\alpha\end{pmatrix}\in\mathrm{SU}(2)$ について $\pi_n(r_\alpha)(z_1^kz_2^{n-k})=(z_1\cos\alpha+z_2\sin\alpha)^k(-z_1\sin\alpha+z_2\cos\alpha)^{n-k}$ の $z_1^n$ の係数 $\cos^k\alpha(-\sin\alpha)^{n-k}$ は $0<\alpha<\pi/2$ で $0$ でないので、$z_1^n\in W$ である。さらに $\pi_n(r_\alpha)z_1^n=(z_1\cos\alpha+z_2\sin\alpha)^n$ はすべての単項式を $0$ でない係数で含むので、$W=V_n$ である。

2:$g$ は $\mathrm{SU}(2)$ の中で $t_\theta$ と共役であり(特殊ユニタリ群 の命題「$\mathrm{SU}(n)$ の中の共役」)、指標は共役で変わらない。$\chi_n(t_\theta)=\sum_{k=0}^ne^{i(n-2k)\theta}$ を等比数列の和として計算すればよい。

3(積分の公式):$g$ を $(\operatorname{Re}\alpha,\operatorname{Im}\alpha,\operatorname{Re}\beta,\operatorname{Im}\beta)\in S^3\subset\mathbb{R}^4$ と同一視する。上の形の行列全体 $Q$ は実 4 次元の線形空間で、$\det X$ は $X$ の座標の 2 乗和であり、$X\neq0$ なら $X/\sqrt{\det X}\in\mathrm{SU}(2)$ である。よって $a,b\in\mathrm{SU}(2)$ について $X\mapsto aXb$ は $Q$ から $Q$ への線形写像で $\det$ を保つので $O(4)$ の元であり、$S^3$ の正規化した表面積測度 $\sigma$ を保つ。よって $\sigma$ は左不変な確率測度で、Haar測度 の定理「コンパクト群のHaar測度の一意性」により $dx=\sigma$ である。座標を $(\cos\theta,\ \omega\sin\theta)$($0\le\theta\le\pi$、$\omega\in S^2$)と書くと表面積要素は $\sin^2\theta\,d\theta\,d\omega$ で、全表面積は $2\pi^2$ である。$g$ の固有値は $e^{\pm i\theta}$($\cos\theta=\operatorname{Re}\alpha$)なので、類関数(共役で不変な関数)$f\in C(\mathrm{SU}(2))$ について

$\displaystyle\int_{\mathrm{SU}(2)}f\,dx=\frac{2}{\pi}\int_0^\pi f(t_\theta)\sin^2\theta\,d\theta$

である。3(分類):既約表現 $\pi$ がどの $\pi_n$ とも同値でないとする。$\pi$ を $\{t_\theta\}\cong\mathbb{T}$ に制限すると 1 次元の表現 $e^{im\theta}$ の和に分かれるので、$\varphi(\theta):=\chi_\pi(t_\theta)$ は三角多項式である。$w=\begin{pmatrix}0&-1\\1&0\end{pmatrix}\in\mathrm{SU}(2)$ について $wt_\theta w^{-1}=t_{-\theta}$ なので $\varphi$ は偶関数で $\cos m\theta$ の和であり、$\varphi(\theta)\sin\theta=\sum_{k\ge1}b_k\sin k\theta$(有限和)と書ける。同値でない既約表現の指標は直交するので(コンパクト群 の節「Schur の直交関係」の末尾)、積分の公式と 2 から $0=\int\chi_\pi\overline{\chi_n}\,dx=\frac2\pi\int_0^\pi\varphi(\theta)\sin\theta\,\sin(n+1)\theta\,d\theta=b_{n+1}$ がすべての $n\ge0$ で成り立つ。よって $\varphi(\theta)\sin\theta\equiv0$ で、$0<\theta<\pi$ で $\varphi=0$、連続性から $d_\pi=\varphi(0)=0$ となり矛盾する。$\pi_n$ どうしは次元が違うので同値でない。分解は thm-pw-main の 2 による。$\square$

$\mathrm{SU}(2)$ は完全群なので(特殊ユニタリ群 の定理「$\mathrm{SU}(n)$ は完全群」)、1 次元の表現は自明なものだけである。ex-pw-finite の $S_3$ と同じく、行列係数の空間を張るには次元が 2 以上の既約表現が要る。類関数に限ると、指標 $\chi_n$ は類関数のなす $L^2$ の閉部分空間の正規直交基底であり(完全性はこの記事では証明しない)、積分の公式によりこれは $\{\sqrt{2/\pi}\,\sin(n+1)\theta\}_{n\ge0}$ が $L^2([0,\pi],d\theta)$ の正規直交基底であることに対応する。

条件を外したときの反例

外す条件反例成り立たなくなること
群のコンパクト性(thm-pw-main の 3)$(\mathbb{R},+)$ の $L^2(\mathbb{R})$ 上の右正則表現$0$ でない有限次元の不変部分空間がなく、有限次元の既約部分空間の直交直和にならない
群のコンパクト性(thm-pw-main の 2)$(\mathbb{R},+)$ と Lebesgue 測度有限次元の既約ユニタリ表現の $0$ でない行列係数が $L^2$ に入らない
次元が 2 以上の表現を使うこと(thm-pw-main の 1)$\mathrm{SU}(2)$ の 1 次元の表現だけ行列係数の線形包が定数だけになり、稠密でない
Lie 群であること(cor-pw-lie)$p$ 進整数環 $\mathbb{Z}_p$単射な連続準同型 $G\to U(n)$ がない
反例の確かめ
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1 行目:$W\subset L^2(\mathbb{R})$ が $0$ でない有限次元の不変部分空間なら、$R$ の $W$ への制限は可換群の有限次元ユニタリ表現なので、互いに可換なユニタリ作用素 $R(t)|_W$ は共通の固有ベクトル $f\neq0$ をもち(一つの作用素の固有空間はほかの作用素で保たれるので、$\dim W$ についての帰納法による)、$R(t)f=c(t)f$($t\in\mathbb{R}$、$\lvert c(t)\rvert=1$)となる。Fourier 変換をとると Plancherelの定理 により、各 $t$ について $(e^{2\pi it\xi}-c(t))\widehat f(\xi)=0$ がほとんどすべての $\xi$ で成り立つ。$t$ を可算個の有理数にわたらせると、ある零集合の外のすべての $\xi$ で「$\widehat f(\xi)\neq0$ ならすべての有理数 $t$ で $e^{2\pi it\xi}=c(t)$」となる。そのような $\xi\neq\xi'$ が二つあれば、すべての有理数 $t$ で $e^{2\pi it(\xi-\xi')}=1$ となるが、$0< t<1/\lvert\xi-\xi'\rvert$ ではこれは成り立たない。よって $\widehat f\neq0$ となる点は(零集合を除いて)高々 1 点で、$\widehat f=0$ がほとんど至る所で成り立ち、$f=0$ となって矛盾する。

2 行目:$\mathbb{R}$ は可換なので、有限次元の既約ユニタリ表現は 1 次元で(1 行目と同じく、互いに可換なユニタリ作用素の共通の固有ベクトルが不変な 1 次元部分空間を張るため)、行列係数は $\lvert\chi\rvert=1$ の定数倍であり、$\int_{\mathbb{R}}\lvert\chi\rvert^2dx=\infty$ である。$L^2(\mathbb{R})$ の分解は、和ではなく積分の形の Plancherelの定理 になる。

3 行目:$\mathrm{SU}(2)$ は完全群なので、連続準同型 $\mathrm{SU}(2)\to\mathbb{C}^\times$ は交換子部分群 $=\mathrm{SU}(2)$ の上で $1$ である。行列係数は定数だけで、定数でない連続関数(たとえば $g\mapsto\operatorname{Re}\alpha$)を近似できない。

4 行目:$A\in U(n)$、$A\neq I$ が固有値 $e^{i\theta}$($0<\lvert\theta\rvert\le\pi$)をもつとする。$k$ を $k\lvert\theta\rvert\ge\pi/2$ となる最小の正の整数とすると $k\lvert\theta\rvert<\pi/2+\lvert\theta\rvert\le3\pi/2$ なので $\lvert e^{ik\theta}-1\rvert\ge\sqrt2$ であり、$\|A^k-I\|\ge\sqrt2$ となる。よって $B:=\{A\mid\|A-I\|<\sqrt2\}$ に含まれる部分群は $\{I\}$ だけである。連続準同型 $\pi\colon\mathbb{Z}_p\to U(n)$ について $\pi^{-1}(B)$ は $0$ の開近傍なので、ある $m$ で部分群 $p^m\mathbb{Z}_p$ を含み、$\pi(p^m\mathbb{Z}_p)=\{I\}$ である。$p^m\mathbb{Z}_p\neq\{0\}$ なので $\pi$ は単射でない。

関連項目

参考文献

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