Mordell–Weilの定理

同義語:有限基底定理Mordell–Weil theorem

概要

Mordell–Weilの定理(Mordell–Weil theorem)とは、代数体 $K$ 上の楕円曲線 $E$ について、$K$ 有理点の群 $E(K)$ が有限生成アーベル群であるという定理で、$E(K)\cong E(K)_{\mathrm{tors}}\times\mathbb{Z}^r$ の階数 $r$ が定まる。$K=\mathbb{Q}$ の場合を Mordell が、一般の代数体の場合を Weil が示し、Weil の結果は Jacobi 多様体、さらに一般のアーベル多様体に及ぶ。証明は、$E(K)/2E(K)$ の有限性(弱 Mordell–Weil の定理)と、高さによる降下の議論からなる。種数 2 以上の曲線の有理点の有限性(Mordell 予想、Faltings の定理)とは別の定理である。

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{div}[0]{\mathbin{÷}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: 楕円曲線, 有理点

楕円曲線 $y^2=x^3-36x$ の有理点 $(-3,9)$ から弦と接線の作図を繰り返すと、分母がどんどん大きくなる有理点が次々に得られる。Mordell–Weil の定理は、どれほど多くの有理点があっても、それらはすべて有限個の点から弦と接線の作図(群の演算)で得られる、と主張する。すなわち代数体 $K$ 上の楕円曲線 $E$ について、$K$ 有理点の群 $E(K)$ は有限生成アーベル群である。証明は 2 つの部分からなる。1 つは $E(K)/2E(K)$ が有限であること(弱 Mordell–Weil の定理)で、点を「2 で割れるかどうか」を平方類で判定する写像によって示される。もう 1 つは、点の複雑さを測る高さ関数を使って、$M/2M$ の有限性を $M$ の有限生成性に持ち上げる降下の議論である。この記事では、$\mathbb{Q}$ 上で 2 等分点がすべて有理的な曲線について弱 Mordell–Weil の定理と降下の補題を証明し、高さの評価は文献を用いて有限生成性を導き、階数の上界と例を計算する。

主張

Mordell–Weil の定理

$K$ を代数体、$E$ を $K$ 上の楕円曲線とする。$K$ 有理点の群 $E(K)$ は有限生成アーベル群である。したがって
$$ E(K)\cong E(K)_{\mathrm{tors}}\times\mathbb{Z}^r $$
と書ける。ここで $E(K)_{\mathrm{tors}}$ は有限位数の点全体のなす有限群、$r\ge0$ は整数で、$r$ を $E(K)$ の(あるいは $E$ の)階数(rank)という。

出典と一般化

$K=\mathbb{Q}$ の場合は Mordell(1922 年)が、一般の代数体の場合は Weil(1928 年)が証明した(Mil06 第 IV 章の冒頭、p.101。$\mathbb{Q}$ 上の 3 次曲線の形の言明は第 I 章 Theorem 2.1、p.20)。Weil は同時に、代数体 $K$ 上の滑らかな射影曲線 $C$ について $\operatorname{Pic}^0(C)$ が有限生成であることを示しており、これは $C$ の Jacobi多様体 $J$ について $J(K)$ が有限生成であることにあたる(同所)。さらに一般に、代数体上のアーベル多様体 $A$ について $A(K)$ は有限生成である(アーベル多様体 の本文の Mordell–Weil の定理の言明)。一般の代数体上の楕円曲線に対する証明は Mil06 第 IV 章 §3(Theorem 3.1:Selmer 群の有限性、p.110)と §4(Proposition 4.13 と Remark 4.12、p.125–126)に譲る。この記事では、次の節で述べる特別な曲線について $K=\mathbb{Q}$ の場合を、高さの評価を文献に依って証明する(thm-mw-special)。

有限生成アーベル群は、有限群と $\mathbb{Z}^r$ の直積に分解する(有限生成加群 の $\mathbb{Z}$ 加群の場合)ので、上の分解は有限生成性から直ちに従う。階数 $r$ と記号 $E(K)_{\mathrm{tors}}$ は 楕円曲線 の定理「Mordell–Weil の定理」と同じである。$K=\mathbb{Q}$ のときの $E(\mathbb{Q})_{\mathrm{tors}}$ の候補は Mazur の定理で 15 種に限られる(楕円曲線 の注意「Mordell–Weil の定理の出典」)が、階数 $r$ を必ず求める算法は知られていない。

以下で扱う曲線

以下、特に断らない限り、$e_1,e_2,e_3$ を相異なる整数として
$$ E\colon\ y^2=f(x)=(x-e_1)(x-e_2)(x-e_3) $$
を考える。右辺は重根をもたないので $E$ は $\mathbb{Q}$ 上の楕円曲線である(楕円曲線 の命題「滑らかさと判別式」。短い Weierstrass 形にするには $x$ を $x+(e_1+e_2+e_3)/3$ に置き換えればよい)。位数 $2$ の点は
$$ T_1=(e_1,0),\qquad T_2=(e_2,0),\qquad T_3=(e_3,0) $$
の 3 つで、$O$ とあわせて $E[2]\cong\mathbb{Z}/2\times\mathbb{Z}/2$ をなし、すべて $\mathbb{Q}$ 有理点である(楕円曲線 の命題「位数 2 の点」)。とくに $T_1+T_2=T_3$ である。さらに
$$ D:=(e_1-e_2)(e_2-e_3)(e_3-e_1)\ne0 $$
とおき、$D$ を割る素数の個数を $s$ とする。3 つの整数のうち 2 つは偶奇が一致するので $2\mid D$ であり、$s\ge1$ である。

2 等分点がすべて $\mathbb{Q}$ 有理的な楕円曲線は、$y^2=(x-\alpha)(x-\beta)(x-\gamma)$($\alpha,\beta,\gamma\in\mathbb{Q}$ 相異なる)と書け、共通の分母 $u$ で $(x,y)\mapsto(u^2x,u^3y)$ と変数を取り替えれば係数は整数になる。この取り替えは有理点の群の同型を与えるので、整数の $e_i$ に限っても一般性は失われない。

降下の補題

最初の部分は群論である。$M/2M$ が有限であるだけでは $M$ は有限生成とは限らない(ex-mw-q-additive)。足りない分を補うのが、次の性質をもつ「高さ」である。

降下の補題

$M$ をアーベル群とし、$M/2M$ は有限であるとする。関数 $h\colon M\to\mathbb{R}$ が次の 3 つの性質をもつならば、$M$ は有限生成である。

  1. 任意の実数 $B$ について $\{P\in M\mid h(P)\le B\}$ は有限集合である。
  2. 任意の $Q\in M$ について定数 $C_Q$ があり、すべての $P\in M$ で $h(P+Q)\le2h(P)+C_Q$ が成り立つ。
  3. 定数 $C$ があり、すべての $P\in M$ で $h(2P)\ge4h(P)-C$ が成り立つ。

要点:$M/2M$ の代表元を引いて $2$ で割る操作を繰り返すと、性質 2・3 により高さがほぼ半分ずつ減り、有限回で $P$ によらない値 $B$ 以下になる。したがって $M$ は、代表元と、高さ $B$ 以下の有限個の元とで生成される。

詳しい証明を開く

$Q_1,\dots,Q_m\in M$ を $M/2M$ の代表系とし、性質 2 の定数を $C':=\max_iC_{-Q_i}$ とおく。任意の $P\in M$ をとる。$P$ はある $i_1$ について $P=2P_1+Q_{i_1}$ と書け、$P_1$ も $P_1=2P_2+Q_{i_2}$ と書け、これを繰り返して $P_{j-1}=2P_j+Q_{i_j}$($j=1,2,\dots$、$P_0:=P$)を得る。性質 3 と性質 2 から $$4h(P_j)\le h(2P_j)+C=h(P_{j-1}-Q_{i_j})+C\le2h(P_{j-1})+C'+C$$ すなわち $h(P_j)\le\frac12h(P_{j-1})+\frac{C'+C}4$ である。これを $n$ 回使うと $$h(P_n)\le\frac1{2^n}h(P)+\frac{C'+C}4\Bigl(1+\frac12+\cdots+\frac1{2^{n-1}}\Bigr)\le\frac1{2^n}h(P)+\frac{C'+C}2$$ となる。$n$ を $2^{-n}h(P)\le1$ となるように大きくとると、$h(P_n)\le B:=1+\frac{C'+C}2$ である。一方、定め方から $$P=2^nP_n+\sum_{j=1}^n2^{j-1}Q_{i_j}$$ である。よって $M$ は、$Q_1,\dots,Q_m$ と有限集合 $\{R\in M\mid h(R)\le B\}$(性質 1)の元で生成される。$B$ は $P$ によらないので、これで $M$ が有限生成であることが示された。$\square$

証明の要は、点 $P$ を「$2$ で割って代表元を引く」たびに高さがほぼ半分になり、有限回で一定の高さ以下に落ちることである。この論法は Fermat の無限降下法と同じ型で、「降下」の名はここから来ている(Mil06 第 IV 章冒頭の NOTES、p.102)。

反例:$(\mathbb{Q},+)$

加法群 $M=(\mathbb{Q},+)$ では $2M=M$ なので $M/2M=0$ は有限である。しかし $M$ は有限生成でない。実際、有限個の有理数 $a_1/b,\dots,a_k/b$(共通の分母 $b\ge1$)で生成される部分群の元はすべて分母が $b$ を割るので、$1/(2b)$ を含まない。したがって「$M/2M$ が有限なら $M$ は有限生成」という含意は成り立たず、lem-mw-descent の性質 1〜3 のような追加の情報が要る(Mil06 第 IV 章冒頭、p.101)。$(\mathbb{Q},+)$ は 1〜3 をすべて満たす関数 $h$ をもたない(もてば補題により有限生成になってしまう)。

弱 Mordell–Weil の定理

$E(\mathbb{Q})/2E(\mathbb{Q})$ の有限性を示す。鍵は、点 $P$ が $2E(\mathbb{Q})$ に入るかどうかを、$x(P)-e_i$ が平方数かどうかで判定できることである。この節の前半(def-mw-phi〜prop-mw-phi-hom)は、$\mathbb{Q}$ に限らず標数が $2$ でない任意の体 $K$ と、相異なる $e_1,e_2,e_3\in K$ について成り立つ。$K^\times/K^{\times2}$ は $0$ でない元を平方数の違いを除いて見た群で、どの元も 2 乗すると単位元になる。

平方類への写像 $\varphi$

$K$ を標数が $2$ でない体、$e_1,e_2,e_3\in K$ を相異なる元、$E\colon y^2=(x-e_1)(x-e_2)(x-e_3)$ とする。写像
$$ \varphi=(\varphi_1,\varphi_2,\varphi_3)\colon E(K)\to(K^\times/K^{\times2})^3 $$
を、$\varphi(O)=(1,1,1)$ とし、$P=(x,y)\in E(K)$ に対しては
$$ \varphi_i(P):=\begin{cases}x-e_i&(x\ne e_i),\\(e_i-e_j)(e_i-e_k)&(x=e_i)\end{cases}\qquad(\{i,j,k\}=\{1,2,3\}) $$
の平方類と定める。たとえば $\varphi(T_1)=\bigl((e_1-e_2)(e_1-e_3),\ e_1-e_2,\ e_1-e_3\bigr)$ である。

$x=e_i$ のときの約束は、$x-e_i=0$ が平方類をもたないことを補うもので、prop-mw-phi-hom の証明(直線との交わりで $x-e_i$ の積をとる議論)がそのまま通るように選んである。$\varphi(P)$ の 3 成分の積は常に平方類である。実際 $x\ne e_1,e_2,e_3$ なら積は $f(x)=y^2$ であり、$P=T_1$ なら積は $\bigl((e_1-e_2)(e_1-e_3)\bigr)^2$ である。

半分の点の公式

$K$、$e_i$、$E$ を def-mw-phi のとおりとし、$P=(x_0,y_0)\in E(K)$ とする。$s_1,s_2,s_3\in K$ が
$$ s_i^2=x_0-e_i\quad(i=1,2,3),\qquad s_1s_2s_3=y_0 $$
を満たすとき、
$$ Q_s:=\bigl(x_0+s_1s_2+s_1s_3+s_2s_3,\ (s_1+s_2)(s_1+s_3)(s_2+s_3)\bigr) $$
は $E(K)$ の点で、$2Q_s=P$ を満たす。さらに 2 つの符号を変えた組について
$$ Q_{(s_1,-s_2,-s_3)}=Q_s+T_1,\qquad Q_{(-s_1,s_2,-s_3)}=Q_s+T_2,\qquad Q_{(-s_1,-s_2,s_3)}=Q_s+T_3 $$
が成り立つ。

要点:$A=s_1+s_2$、$B=s_1+s_3$、$C=s_2+s_3$ とおくと $x(Q_s)-e_1=AB$、$x(Q_s)-e_2=AC$、$x(Q_s)-e_3=BC$、$y(Q_s)=ABC$ となり、$Q_s$ は $E$ 上の点で、そこでの接線の傾きは $s_1+s_2+s_3$ である。これを接線による 2 倍の公式に入れると $2Q_s=(x_0,y_0)$ が出る。後半は、$T_1$ を通る直線と $E$ の交わりから得られる式 $(x-e_1)(x(R+T_1)-e_1)=(e_1-e_2)(e_1-e_3)$ を $R=Q_s$ に使う。

詳しい証明を開く

$A:=s_1+s_2$、$B:=s_1+s_3$、$C:=s_2+s_3$ とおく。$A=0$ なら $s_1^2=s_2^2$、すなわち $e_1=e_2$ となって矛盾するので、$A,B,C$ はどれも $0$ でない。$Q_s=(x_1,y_1)$ と書くと $y_1=ABC\ne0$ で、$e_i=x_0-s_i^2$ から $$x_1-e_1=s_1^2+s_1s_2+s_1s_3+s_2s_3=AB,\qquad x_1-e_2=AC,\qquad x_1-e_3=BC$$ である。よって $f(x_1)=(ABC)^2=y_1^2$ となり、$Q_s\in E(K)$ である。

$Q_s$ での接線の傾きは $\lambda=f'(x_1)/(2y_1)$ で、$f'(x_1)=(x_1-e_2)(x_1-e_3)+(x_1-e_1)(x_1-e_3)+(x_1-e_1)(x_1-e_2)=ABC(A+B+C)$ だから $$\lambda=\frac{A+B+C}2=s_1+s_2+s_3$$ である。接線 $y=\lambda(x-x_1)+y_1$ を $y^2=f(x)$ に代入した 3 次式 $f(x)-(\lambda(x-x_1)+y_1)^2$ の根は $x_1,x_1,x(2Q_s)$ で、$x^2$ の係数を比べると $2x_1+x(2Q_s)=e_1+e_2+e_3+\lambda^2$ である(楕円曲線 の定義「弦と接線による加法」の一般形)。$e_1+e_2+e_3=3x_0-(s_1^2+s_2^2+s_3^2)$、$\lambda^2=s_1^2+s_2^2+s_3^2+2(s_1s_2+s_1s_3+s_2s_3)$ を代入すると $$x(2Q_s)=3x_0+2(s_1s_2+s_1s_3+s_2s_3)-2x_1=x_0$$ である。$y$ 座標は $y(2Q_s)=-\bigl(\lambda(x_0-x_1)+y_1\bigr)=\lambda(x_1-x_0)-y_1$ で、恒等式 $(s_1+s_2)(s_1+s_3)(s_2+s_3)=(s_1+s_2+s_3)(s_1s_2+s_1s_3+s_2s_3)-s_1s_2s_3$ により $$y(2Q_s)=(s_1+s_2+s_3)(s_1s_2+s_1s_3+s_2s_3)-ABC=s_1s_2s_3=y_0$$ となる。よって $2Q_s=P$ である。

後半を $T_1$ について示す($T_2,T_3$ も同じ)。点 $R=(x,y)\in E$($x\ne e_1$)と $T_1$ を通る直線 $y=\mu(t-e_1)$($\mu=y/(x-e_1)$)の 3 番目の交点を $R'$ とすると $R+T_1=-R'$ である。$f(t)-\mu^2(t-e_1)^2=(t-e_1)\bigl((t-e_2)(t-e_3)-\mu^2(t-e_1)\bigr)$ の根が $e_1,x,x(R')$ だから $(t-e_2)(t-e_3)-\mu^2(t-e_1)=(t-x)(t-x(R'))$ で、$t=e_1$ を代入して $$(x-e_1)\bigl(x(R+T_1)-e_1\bigr)=(e_1-e_2)(e_1-e_3),\qquad y(R+T_1)=-\mu\bigl(x(R')-e_1\bigr)=-\frac{y\,(e_1-e_2)(e_1-e_3)}{(x-e_1)^2}$$ を得る。$R=Q_s$ とすると $x-e_1=AB$、$(e_1-e_2)(e_1-e_3)=(s_2^2-s_1^2)(s_3^2-s_1^2)=A(s_2-s_1)\cdot B(s_3-s_1)$ だから $$x(Q_s+T_1)=e_1+(s_2-s_1)(s_3-s_1)=x_0+s_2s_3-s_1s_2-s_1s_3,\qquad y(Q_s+T_1)=-C(s_2-s_1)(s_3-s_1)$$ であり、これは $Q_{(s_1,-s_2,-s_3)}$ の座標の式 $\bigl(x_0+s_2s_3-s_1s_2-s_1s_3,\ (s_1-s_2)(s_1-s_3)(-s_2-s_3)\bigr)$ に一致する。$\square$

補題の $s_i$ のうち 1 つは $0$ でもよい。$P=T_1$ のときは $s_1=0$ で、$s_2^2=e_1-e_2$、$s_3^2=e_1-e_3$ となる。

$\varphi$ は準同型で、核は $2E(K)$

def-mw-phi の $\varphi$ は群の準同型であり、その核は $2E(K)$ に等しい。したがって $\varphi$ は単射準同型
$$ E(K)/2E(K)\hookrightarrow\{(d_1,d_2,d_3)\in(K^\times/K^{\times2})^3\mid d_1d_2d_3=1\} $$
を誘導する。

要点:$P+Q+R=O$ なら $P,Q,R$ は 1 本の直線 $y=\lambda x+\nu$ と $E$ の交点で、$f(t)-(\lambda t+\nu)^2=(t-x_P)(t-x_Q)(t-x_R)$ に $t=e_i$ を代入すると $\varphi_i(P)\varphi_i(Q)\varphi_i(R)$ が平方類 $1$ であることが分かる(2 等分点での約束は、この計算がそのまま通るように選んである)。核については、$\varphi(P)=1$ なら $x(P)-e_i$ がすべて平方なので lem-mw-halving の $s_i$ がとれ、$P=2Q_s$ となる。

詳しい証明を開く

準同型であること:$(K^\times/K^{\times2})^3$ のどの元も 2 乗すると $1$ で、$-P$ は $P$ と $x$ 座標が同じだから $\varphi(-P)=\varphi(P)$ である。そこで、$P+Q+R=O$ となる $P,Q,R\in E(K)$ について $\varphi(P)\varphi(Q)\varphi(R)=1$ を示せば、$\varphi(P+Q)=\varphi(-R)=\varphi(R)=\varphi(P)\varphi(Q)$ が従う。

どれかが $O$ なら、たとえば $R=O$ で $Q=-P$ となり、$\varphi(P)\varphi(-P)=\varphi(P)^2=1$ である。どれも $O$ でなければ、$P,Q,R$ は縦でない直線 $y=\lambda x+\nu$ と $E$ の交点(重複度込み)で、 $$f(t)-(\lambda t+\nu)^2=(t-x_P)(t-x_Q)(t-x_R)$$ が成り立つ。第 1 成分について示す(第 2・第 3 成分も同じ)。$x_P,x_Q,x_R$ がどれも $e_1$ でなければ、$t=e_1$ を代入して $(x_P-e_1)(x_Q-e_1)(x_R-e_1)=(\lambda e_1+\nu)^2$ となり、左辺が $0$ でないので右辺は $0$ でない平方である。1 つが $e_1$、たとえば $P=T_1$ なら、直線は $T_1$ を通るので $\lambda e_1+\nu=0$ であり、両辺を $t-e_1$ で割って $t=e_1$ を代入すると $(e_1-e_2)(e_1-e_3)=(x_Q-e_1)(x_R-e_1)$ となる。これは $\varphi_1(P)\varphi_1(Q)\varphi_1(R)=1$ にほかならない。$T_1$ での接線は縦の直線($y=0$ で $f'(e_1)\ne0$)なので、$P,Q,R$ のうち 2 つ以上が $T_1$ になることはない。

核:$\varphi(2Q)=\varphi(Q)^2=1$ だから $2E(K)\subset\ker\varphi$ である。逆に $P\ne O$ で $\varphi(P)=1$ とする。$P$ が $T_1,T_2,T_3$ でなければ、$x_0-e_i$ はすべて $K$ の平方で、$s_i\in K$ を $s_i^2=x_0-e_i$ ととれる。$(s_1s_2s_3)^2=f(x_0)=y_0^2$ なので、必要なら $s_1$ の符号を変えて $s_1s_2s_3=y_0$ とできる。$P=T_1$ なら、$e_1-e_2$、$e_1-e_3$ が平方なので $s_1=0$、$s_2^2=e_1-e_2$、$s_3^2=e_1-e_3$ ととれ、$s_1s_2s_3=0=y_0$ である($T_2,T_3$ も同じ)。どちらの場合も lem-mw-halving により $P=2Q_s$、$Q_s\in E(K)$ である。

最後に、$\varphi(P)$ の 3 成分の積が平方類であることは def-mw-phi の直後に確かめた。$\square$

ここからは $K=\mathbb{Q}$、$e_i\in\mathbb{Z}$ とする。$\mathbb{Q}^\times/\mathbb{Q}^{\times2}$ の元は、平方因子をもたない $0$ でない整数でただ 1 通りに代表される。素数 $p$ について $\operatorname{ord}_p$ を $p$ 進付値($p$ で割れる回数)とすると、$\operatorname{ord}_p(d)\bmod2$ は平方類 $d$ だけで決まる。

像は $D$ の素因数で書ける

$p$ を $D$ を割らない素数とすると、すべての $P\in E(\mathbb{Q})$ と $i=1,2,3$ について $\operatorname{ord}_p\varphi_i(P)$ は偶数である。したがって $\varphi(E(\mathbb{Q}))$ は
$$ H_D:=\{(d_1,d_2,d_3)\in G_D^3\mid d_1d_2d_3=1\},\qquad G_D:=\langle-1,\ p\ (p\mid D)\rangle\subset\mathbb{Q}^\times/\mathbb{Q}^{\times2} $$
に含まれる。$G_D$ の位数は $2^{s+1}$、$H_D$ の位数は $2^{2s+2}$ である。

要点:$a_i=\operatorname{ord}_p(x-e_i)$ の和は $2\operatorname{ord}_p(y)$ で偶数である。$p\nmid D$ なら、$a_i$ は「3 つとも等しい負の数」か「高々 1 つだけが正で残りは $0$」のどちらかなので、どれも偶数になる。

詳しい証明を開く

$P=O$ なら明らかである。$P=T_1$ なら $\varphi(T_1)$ の成分 $(e_1-e_2)(e_1-e_3)$、$e_1-e_2$、$e_1-e_3$ はどれも $D$ の約数の積で、$p$ で割れない($T_2,T_3$ も同じ)。

$P=(x,y)$、$x\ne e_1,e_2,e_3$ とし、$a_i:=\operatorname{ord}_p(x-e_i)$ とおく。$(x-e_1)(x-e_2)(x-e_3)=y^2$ だから $a_1+a_2+a_3=2\operatorname{ord}_p(y)$ は偶数である。$\operatorname{ord}_p(x)<0$ なら、$e_i$ は整数なので $a_1=a_2=a_3=\operatorname{ord}_p(x)$ となり、$3a_1$ が偶数だから各 $a_i$ は偶数である。$\operatorname{ord}_p(x)\ge0$ なら各 $a_i\ge0$ で、2 つが正になることはない($a_i,a_j>0$ なら $p$ は $(x-e_j)-(x-e_i)=e_i-e_j$ を割り、$p\mid D$ に反する)。よって 2 つは $0$ で、残りの 1 つも和の偶奇から偶数である。

平方類 $d\in\mathbb{Q}^\times/\mathbb{Q}^{\times2}$ で、$D$ を割らないすべての $p$ について $\operatorname{ord}_p(d)$ が偶数のものは、平方因子をもたない代表 $\pm\prod_{p\mid D}p^{\varepsilon_p}$($\varepsilon_p\in\{0,1\}$)をもつので $G_D$ に入り、その個数は $2^{s+1}$ である。$H_D$ では $d_1,d_2$ を自由に選ぶと $d_3=d_1d_2$ が決まるので、位数は $2^{2(s+1)}$ である。$\square$

弱 Mordell–Weil の定理(2 等分点が有理的な場合)

$E\colon y^2=(x-e_1)(x-e_2)(x-e_3)$($e_i$ は相異なる整数)について、$\varphi$ は単射準同型 $E(\mathbb{Q})/2E(\mathbb{Q})\hookrightarrow H_D$ を誘導する。とくに $E(\mathbb{Q})/2E(\mathbb{Q})$ は有限で、その位数は $2^{2s+2}$ 以下である。

prop-mw-phi-hom を $K=\mathbb{Q}$ で使うと、$\varphi$ は単射準同型 $E(\mathbb{Q})/2E(\mathbb{Q})\hookrightarrow(\mathbb{Q}^\times/\mathbb{Q}^{\times2})^3$ を誘導し、prop-mw-image によりその像は $H_D$ に入る。$\square$

$\mathbb{Q}^\times/\mathbb{Q}^{\times2}$ 自体は無限群(相異なる素数の類は互いに異なる)なので、有限性はすべて prop-mw-image の付値の議論から来ている。同じ議論は、一般の代数体 $K$ と一般の $n$ について $E(K)/nE(K)$ が有限であるという形に拡張される(Mil06 第 IV 章の Theorem (weak finite basis)、p.101、と §3)。この場合は $K$ を大きくして $n$ 等分点と $1$ の $n$ 乗根を含めてから、イデアル類群の有限性と単数群の有限生成性を使う。

高さ

点の「複雑さ」を分母・分子の大きさで測る。$0$ でない有理数 $t$ を既約分数 $u/v$($v\ge1$)で書き、$H(t):=\max(\lvert u\rvert,\lvert v\rvert)$、$H(0):=1$ とおく。$c:=(e_1+e_2+e_3)/3$ として、$P=(x,y)\in E(\mathbb{Q})$ の素朴な高さを
$$ h(P):=\log H(x-c)\quad(P\ne O),\qquad h(O):=0 $$
と定める。$x-c$ は、$E$ を短い Weierstrass 形 $Y^2=X^3+aX+b$($X=x-c$、$Y=y$、$a,b\in\mathbb{Q}$)に直したときの $X$ 座標である。$H\ge1$ なので $h\ge0$ である。

素朴な高さの性質

$h\colon E(\mathbb{Q})\to\mathbb{R}$ は lem-mw-descent の性質 1〜3 をもつ。すなわち、(1) 任意の $B$ について $h(P)\le B$ となる点は有限個、(2) 定数 $C_0$ があって $h(P+Q)\le2h(P)+2h(Q)+C_0$、(3) 定数 $A$ があって $\lvert h(2P)-4h(P)\rvert\le A$ が、すべての $P,Q\in E(\mathbb{Q})$ で成り立つ。

高さの性質の出典と (1) の証明
  1. は直接示せる。$H(t)\le e^B$ となる有理数 $t$ は分子・分母の組が有限個しかないので有限個であり、1 つの $X$ 座標に対応する点は $Y=\pm\sqrt{X^3+aX+b}$ の高々 2 点である(Mil06 第 IV 章 Lemma 4.3、p.120)。(3) は Mil06 Proposition 4.4(p.120–121)で、2 倍の点の $X$ 座標が $X(P)$ の 4 次の同次式の比 $F(X,1)/G(X,1)$ で与えられ、$F,G$ が共通根をもたない($X^3+aX+b$ とその導関数が共通根をもたない)ことから、終結式を使って示される。(2) は Mil06 Lemma 4.10(p.124)の不等式 $H(P+Q)H(P-Q)\le C\cdot H(P)^2H(Q)^2$ から、$H(P-Q)\ge1$ を使って対数をとれば得られる($C_0=\log C$)。これらの証明は係数の評価の計算で、ここでは割愛する。$\mathbb{Q}$ 上の点は分子・分母が整数で書けるので、素朴な高さがそのまま使える。一般の代数体では付値の積の形で高さを定める(同 Remark 4.12、p.125)。
  1. の「4 倍」は、2 倍の点の $X$ 座標が $X(P)$ の 4 次式の比であることの反映である。(3) の下からの評価だけで lem-mw-descent の性質 3 になり、(2) で $C_Q:=2h(Q)+C_0$ とおけば性質 2 になる。

定理の証明($\mathbb{Q}$ 上で 2 等分点がすべて有理的な場合)

Mordell–Weil の定理(2 等分点が有理的な場合)

$e_1,e_2,e_3$ を相異なる整数とすると、$E\colon y^2=(x-e_1)(x-e_2)(x-e_3)$ の有理点の群 $E(\mathbb{Q})$ は有限生成である。

$M=E(\mathbb{Q})$ とする。thm-mw-weak により $M/2M$ は有限である。prop-mw-height により、素朴な高さ $h$ は lem-mw-descent の性質 1〜3 を満たす(性質 2 は $C_Q=2h(Q)+C_0$、性質 3 は $C=A$ とする)。よって lem-mw-descent により $M$ は有限生成である。$\square$

証明の中で使った事実のうち、lem-mw-descent・lem-mw-halving・prop-mw-phi-hom・prop-mw-image はこの記事で完全に証明し、高さの性質 (2)(3) だけを出典に依った。

2-降下による階数の上界

thm-mw-special の $E$ について、階数を $r$ とすると
$$ \#\bigl(E(\mathbb{Q})/2E(\mathbb{Q})\bigr)=2^{r+2}=\#\varphi(E(\mathbb{Q}))\le2^{2s+2} $$
が成り立つ。とくに $r\le2s$ であり、$\varphi(E(\mathbb{Q}))$ の位数が分かれば $r$ が決まる。

$E(\mathbb{Q})\cong T\times\mathbb{Z}^r$($T=E(\mathbb{Q})_{\mathrm{tors}}$)と書くと $E(\mathbb{Q})/2E(\mathbb{Q})\cong T/2T\times(\mathbb{Z}/2)^r$ である。有限群 $T$ 上の 2 倍写像の核 $T[2]$ と余核 $T/2T$ は位数が等しい($\#T=\#T[2]\cdot\#2T$ による)。$T[2]=E(\mathbb{Q})[2]=\{O,T_1,T_2,T_3\}$ は位数 $4$ なので、$\#(E(\mathbb{Q})/2E(\mathbb{Q}))=4\cdot2^r$ である。thm-mw-weak により $\varphi$ は $E(\mathbb{Q})/2E(\mathbb{Q})$ から像への全単射を与えるので等号 $2^{r+2}=\#\varphi(E(\mathbb{Q}))$ が成り立ち、像は位数 $2^{2s+2}$ の $H_D$ に含まれる。$\square$

Mil06 の Proposition 5.5(p.129)は同じ上界 $r\le2\cdot\#\{p\mid2\Delta\}$ を述べ、Proposition 5.6(p.129–130)は還元の型を使ってこれを改良している(そこでの $\Delta$ は 3 次式 $f$ の判別式 $D^2$ で、$2\mid D$ なので $2\Delta$ と $D$ の素因数の集合は同じである)。

例

$y^2=x^3-x$ の階数は $0$

$E\colon y^2=x^3-x=(x+1)x(x-1)$ で $(e_1,e_2,e_3)=(-1,0,1)$ とする。$D=(-1)(-1)(2)=2$、$s=1$ で、cor-mw-rank-bound の上界は $r\le2$ である。像を詳しく調べると $r=0$ が分かる。2 等分点の像は
$$ \varphi(O)=(1,1,1),\quad\varphi(T_1)=(2,-1,-2),\quad\varphi(T_2)=(1,-1,-1),\quad\varphi(T_3)=(2,1,2) $$
の 4 つである。$P=(x,y)$($x\ne0,\pm1$)について次の 2 つの制約がある。

  • 符号:$x+1>x>x-1$ で、積 $y^2$ は正だから、符号の組は $(+,+,+)$($x>1$)か $(+,-,-)$($-1< x<0$)である。
  • 2 進付値:$a=\operatorname{ord}_2(x+1)$、$b=\operatorname{ord}_2(x)$、$c=\operatorname{ord}_2(x-1)$ の偶奇の組は $(0,0,0)$ か $(1,0,1)$ である。

したがって $\varphi(P)=(d_1,d_2,d_3)$($d_i\in\{\pm1,\pm2\}$)は $d_1\in\{1,2\}$、$d_2\in\{\pm1\}$、$d_3=d_1d_2$ を満たし、候補は 4 つしかない。これは 2 等分点の像と一致するので $\#\varphi(E(\mathbb{Q}))=4=2^{r+2}$、すなわち $r=0$ である。

2 進付値の偶奇の確認を開く

$a+b+c=2\operatorname{ord}_2(y)$ は偶数である。$\operatorname{ord}_2(x)<0$ なら $a=b=c$ で、$3a$ が偶数だから $(0,0,0)$ である。$b>0$ なら $\operatorname{ord}_2(x\pm1)=0$ で $a=c=0$、$b$ は偶数だから $(0,0,0)$ である。$b=0$($x$ の分子と分母がともに奇数)なら $a,c\ge1$ であるが、$(x+1)-(x-1)=2$ なので $a,c$ がともに $2$ 以上になることはなく、一方は $1$ である。$a+c$ は偶数だから他方は奇数で、偶奇の組は $(1,0,1)$ である。

有限位数の点については、Lutz–Nagell の定理($y^2=X^3+aX+b$、$a,b\in\mathbb{Z}$ の有限位数の点 $(X,y)$ は整数座標で、$y=0$ か $y$ が $4a^3+27b^2$ を割る。Mil06 第 II 章 Theorem 5.1、p.64)を使う。ここでは $4a^3+27b^2=-4$ なので $y\ne0$ なら $y^2\in\{1,4,16\}$ であるが、$x^3-x=(x-1)x(x+1)$ は連続 3 整数の積で $3$ の倍数なので、どれにも等しくない。よって $E(\mathbb{Q})=\{O,T_1,T_2,T_3\}\cong\mathbb{Z}/2\times\mathbb{Z}/2$ である(Mil06 第 IV 章 Example 5.7、p.130。楕円曲線 の例「曲線 $y^2=x^3-x$ と虚数乗法」)。合同数 の系「合同数の判定条件」により、これは $1$ が合同数でないことと同値である。

合同数の曲線 $y^2=x^3-36x$

$E\colon y^2=x^3-36x$ で $(e_1,e_2,e_3)=(-6,0,6)$ とする。$D=(-6)(-6)(12)=2^4\cdot3^3$、$s=2$ で、上界は $r\le4$ である。点 $P=(-3,9)$(面積 $6$ の直角三角形 $3,4,5$ に対応する点。合同数 の定理「直角三角形と曲線の点の対応」)と 2 等分点の像を平方因子のない代表で書くと
$$ \varphi(T_1)=(2,-6,-3),\quad\varphi(T_2)=(6,-1,-6),\quad\varphi(T_3)=(3,6,2),\quad\varphi(P)=(3,-3,-1) $$
である(たとえば $\varphi_1(T_1)=(-6-0)(-6-6)=72\equiv2$、$\varphi_3(P)=-3-6=-9\equiv-1$)。$\varphi(P)$ は 2 等分点の像 4 つのどれとも異なるので、$\varphi(E(\mathbb{Q}))$ は位数 $8$ 以上の群であり、cor-mw-rank-bound から $2^{r+2}\ge8$、すなわち $r\ge1$ である。これは 合同数 の系「合同数なら三角形は無数にある」とも整合する($6$ は合同数で、$P$ は無限位数の点である)。像がちょうど位数 $8$ で $r=1$ であることは、局所的な条件で像の候補を絞る Selmer 群の計算で確かめられる。

$y^2=x^3+1$:2 等分点が 1 つだけの曲線

$E\colon y^2=x^3+1=(x+1)(x^2-x+1)$ では、$x^2-x+1$ が $\mathbb{Q}$ 上既約なので、$\mathbb{Q}$ 有理的な 2 等分点は $(-1,0)$ だけである。この曲線には thm-mw-special の証明はそのままでは使えないが、thm-mw-main は成り立ち、実際 $E(\mathbb{Q})$ は $(2,3)$ で生成される位数 $6$ の巡回群である(楕円曲線 の例「曲線 $y^2=x^3+1$ と位数 $6$ の点」)。このとき $E(\mathbb{Q})/2E(\mathbb{Q})\cong\mathbb{Z}/2$ で、cor-mw-rank-bound の式 $\#(E(\mathbb{Q})/2E(\mathbb{Q}))=2^{r+2}$ は成り立たない($2^{r}\cdot\#E(\mathbb{Q})[2]=2^0\cdot2$ になる)。一般の曲線では、$\#(E(\mathbb{Q})/2E(\mathbb{Q}))=2^r\cdot\#E(\mathbb{Q})[2]$ である。

反例

外す条件反例成り立たなくなること
高さ(lem-mw-descent の性質 1〜3)$(\mathbb{Q},+)$$M/2M$ が有限なら $M$ は有限生成
$K$ が代数体$E(\mathbb{R})$、$E(\mathbb{C})$、$E(\mathbb{Q}_p)$$E(K)$ は有限生成
曲線が滑らか$y^2=x^3$ の特異点を除いた部分有理点の群は有限生成
捩れ部分を無視して $M/2M$ の位数を読む$\mathbb{Z}/2\times\mathbb{Z}/2$ と $\mathbb{Z}/2\times\mathbb{Z}$$M/2M$ の位数から階数が決まる
反例の確認

1 行目は ex-mw-q-additive で確かめた。

2 行目:有限生成アーベル群は可算集合である。$E(\mathbb{C})$ はトーラス $\mathbb{C}/\Lambda$ と同じ濃度で非可算であり(楕円曲線 の定理「一意化定理」)、$E\colon y^2=f(x)$ の $E(\mathbb{R})$ は、$e_1,e_2,e_3$ のどれよりも大きいすべての実数 $x$ について $f(x)>0$ だから $y=\sqrt{f(x)}$ の点を含み、非可算である。$E(\mathbb{Q}_p)$ も非可算である。

$E(\mathbb{Q}_p)$ が非可算であることの確認を開く

$e_i\in\mathbb{Z}$ とし、$u\in1+8p\mathbb{Z}_p$、$x=p^{-4}u$ とおく。$f(x)=x^3\bigl(1-\sigma_1x^{-1}+\sigma_2x^{-2}-\sigma_3x^{-3}\bigr)$($\sigma_k$ は $e_i$ の基本対称式)で、$x^{-1}=p^4u^{-1}\in8p\mathbb{Z}_p$ だから括弧の中は $1+8p\mathbb{Z}_p$ に入る。$1+8p\mathbb{Z}_p$ の元は $\mathbb{Z}_p$ の平方である(p進数、Hensel の補題。$p=2$ では $1+16\mathbb{Z}_2\subset1+8\mathbb{Z}_2$ の元が平方であることを使う)。$x^3=p^{-12}u^3$ で $u^3\in1+8p\mathbb{Z}_p$ も平方なので、$f(x)$ は $\mathbb{Q}_p$ の平方であり、$(x,\pm\sqrt{f(x)})\in E(\mathbb{Q}_p)$ である。$u$ は非可算個あるので $E(\mathbb{Q}_p)$ は非可算である。

3 行目:$C\colon y^2=x^3$ は Weierstrass 方程式の形をしているが特異点 $(0,0)$ をもち、楕円曲線ではない。特異点を除いた部分は弦と接線の法則で群になり、$(x,y)\mapsto x/y$ で $(\mathbb{Q},+)$ と同型になる(楕円曲線 の例「反例:尖点をもつ 3 次曲線 $y^2=x^3$」、Mil06 第 I 章 Remark 2.2、p.20)。$(\mathbb{Q},+)$ は有限生成でないので、滑らかさを外すと結論が成り立たない。

4 行目:$M=\mathbb{Z}/2\times\mathbb{Z}/2$($y^2=x^3-x$ の $E(\mathbb{Q})$、ex-mw-x3-minus-x)と $M'=\mathbb{Z}/2\times\mathbb{Z}$ はどちらも $M/2M\cong(\mathbb{Z}/2)^2$ であるが、階数は $0$ と $1$ である。$\#(M/2M)=2^r\cdot\#M[2]$ なので、$M[2]$(楕円曲線では $E(\mathbb{Q})[2]$)を知らなければ $M/2M$ の位数から $r$ は決まらない。cor-mw-rank-bound で $r$ が読めるのは、2 等分点がすべて有理的で $\#E(\mathbb{Q})[2]=4$ と分かっているからである。

注意

  • Mordell 予想との区別:Mordell は 1922 年の同じ論文で、種数 $2$ 以上の曲線の有理点は有限個であると予想し、これは Faltings(1983 年)が証明した(Mil06 第 I 章、p.20)。これは Mordell–Weil の定理とは別の定理で、有理点の「群が有限生成」ではなく「集合が有限」を主張する。種数 $1$ の楕円曲線では有理点が無限にありうる(ex-mw-x3-minus-36x)。
  • 定理は有限生成性を述べるだけで、生成元を求める方法を与えない。lem-mw-descent の証明は、$M/2M$ の代表系と高さの定数が分かれば生成元の候補を有限個に絞るが、$E(\mathbb{Q})/2E(\mathbb{Q})$ そのものを求めることが難しい。thm-mw-weak で得られるのは $\varphi(E(\mathbb{Q}))$ を含む群 $H_D$ であり、実際の像を決めるには、各 $\mathbb{Q}_p$ と $\mathbb{R}$ の上の局所的な条件で候補を絞る(Selmer 群)必要がある。候補と実際の像の差は Tate–Shafarevich群 で測られる(Tate–Shafarevich群 の定理「Selmer 群と Tate–Shafarevich 群の完全列」)。
  • $E(K)$ を Mordell–Weil 群ともいう(Mil06 第 IV 章 §5 の脚注、p.126)。
  • 高さについて:$h$ は 2 倍でほぼ 4 倍になるので、$\hat h(P):=\lim_{n\to\infty}h(2^nP)/4^n$ が存在し、$E(\mathbb{Q})$ 上の 2 次形式になる(Néron–Tate の高さ。Mil06 第 IV 章 Theorem 4.7・Proposition 4.9、p.122–123)。$\hat h(P)=0$ となるのは $P$ が有限位数のときに限る。Mordell–Weil の定理の一般の証明はこの $\hat h$ を使って書くこともできる。

関連項目

参考文献

Mathpediaは寄付と、参考文献の書籍リンク(Amazonアソシエイト)の紹介料で運営されています。 支援について / 寄付する