平面の円の詰め込み(circle packing in the plane)とは、同じ半径の円を、どの 2 つの内部も共有点をもたないように平面に並べることである。大きな正方形の中で円がおおう面積の割合の極限を密度という。中心が格子(平行でない 2 つのベクトルの整数係数の和の全体)をなす詰め込みの密度は、格子の最短距離を $d$、基本平行四辺形の面積を $D$ とすると $\frac{\pi d^2}{4D}$ である。最短のベクトルと、それと平行でないものの中で最短のベクトルのなす角は $60^\circ$ 以上 $120^\circ$ 以下になり、ここから $D\ge\frac{\sqrt3}{2}d^2$ が従う。よって格子の詰め込みの密度は $\frac{\pi}{2\sqrt3}\approx0.907$ 以下で、等号は六角格子のときに限る。
前提知識: ベクトルの内積(高校数学), 1次変換と行列式:面積の拡大率, 正多角形の敷き詰め
同じ大きさの硬貨をたくさん用意して、机の上に重ならないように並べる。すき間をなるべく少なくするには、どう並べればよいだろうか。すぐに思いつく並べ方は 2 つある。縦横にまっすぐそろえる並べ方と、1 段ごとに半分ずらして、下の段の 2 枚のくぼみに次の段の硬貨を落とす並べ方である。どちらの並べ方で、机のどれだけの割合が硬貨でおおわれるかを計算してみる。
半径 $\dfrac12$ の円を、座標平面の点 $(m,n)$($m,n$ は整数)を中心にして並べる。となりの中心の距離は $1$ で、半径の和 $\dfrac12+\dfrac12=1$ に等しいので、となりの円はちょうど接し、重ならない。
1 辺 $1$ の正方形 $0\le x\le1$、$0\le y\le1$ を見る。この正方形の中には、4 つの頂点を中心とする円の $\dfrac14$ ずつが入る(頂点の角は $90^\circ$ なので、円の $\dfrac{90^\circ}{360^\circ}=\dfrac14$ が入る)。合わせると円 $1$ 個分で、面積は $\pi\left(\dfrac12\right)^2=\dfrac\pi4$ である。平面はこの正方形を平行移動したもので敷き詰められるので、円がおおう割合は
$$
\frac{\pi/4}{1}=\frac\pi4\approx0.785
$$
である。
半径 $\dfrac12$ の円を、$\vec u=(1,0)$、$\vec v=\left(\dfrac12,\dfrac{\sqrt3}2\right)$ として、点 $m\vec u+n\vec v$($m,n$ は整数)を中心にして並べる。$n$ を 1 つ増やすと、中心は右に $\dfrac12$、上に $\dfrac{\sqrt3}2$ ずれる。つまり 1 段ごとに半分ずらして、段の間隔を $\dfrac{\sqrt3}2$ にした並べ方である。$\lvert\vec v\rvert=\sqrt{\dfrac14+\dfrac34}=1$ なので、となりの段の円もちょうど接する。
$\vec u$ と $\vec v$ が作る平行四辺形(4 つの頂点は $\vec 0$、$\vec u$、$\vec u+\vec v$、$\vec v$)を見る。2 辺の長さは $1$、なす角は $60^\circ$ なので、面積は
$$
1\cdot1\cdot\sin60^\circ=\frac{\sqrt3}2
$$
である。この平行四辺形の 4 つの角は $60^\circ$、$120^\circ$、$60^\circ$、$120^\circ$ で、和は $360^\circ$ である。4 つの頂点を中心とする円から、それぞれ角の大きさの分だけ扇形が入るので、合わせて円 $1$ 個分、面積 $\dfrac\pi4$ が入る。円がおおう割合は
$$
\frac{\pi/4}{\sqrt3/2}=\frac{\pi}{2\sqrt3}\approx0.907
$$
である。
縦横にそろえた並べ方。オレンジの正方形 1 つに円 1 個分が入る
1 段ごとに半分ずらした並べ方。オレンジの平行四辺形 1 つに円 1 個分が入る
図 1 と図 2 を比べると、ずらした並べ方の方がすき間が小さい。数でも $0.785<0.907$ である。どちらの計算も「1 つの平行四辺形に円 1 個分が入り、その平行四辺形で平面を敷き詰められる」ことを使った。ずらした並べ方では、中心どうしを結ぶと正三角形の敷き詰めになる(正多角形の敷き詰め)。1 つの円のまわりに 6 つの円が接し、その 6 つの中心が正六角形の頂点になるので、六角形の並べ方 と呼ぶ。
この記事で答える問いは次の 3 つである。
| 高校の計算 | この記事の言葉 | 大学の言葉 |
|---|---|---|
| 2 つのベクトル $\vec u,\vec v$ の整数倍の和 | 格子 | 階数 $2$ の格子 $\mathbb{Z}\vec u+\mathbb{Z}\vec v$ |
| 平行四辺形の面積 $\lvert u_1v_2-u_2v_1\rvert$ | 基本平行四辺形の面積 | 格子の行列式(共体積) |
| 円がおおう割合 | 密度 | 詰め込みの密度 |
| いちばん短いベクトルを選ぶ | 短い基底 | 2 元 2 次形式の簡約 |
平面の 2 つのベクトル $\vec u=(u_1,u_2)$、$\vec v=(v_1,v_2)$ が平行でない($\vec 0$ でなく、一方が他方の実数倍でない)とする。整数 $m,n$ を使って $m\vec u+n\vec v$ と書けるベクトル全体を、$\vec u,\vec v$ で 生成される格子 といい、$L$ で表す。$L$ のベクトルを原点から描いた終点を 格子点 という。
$L$ が $\vec u,\vec v$ で生成されるとき、組 $(\vec u,\vec v)$ を $L$ の 基底 という。4 点 $\vec 0$、$\vec u$、$\vec u+\vec v$、$\vec v$ を頂点とする平行四辺形を、基底 $(\vec u,\vec v)$ の 基本平行四辺形 といい、その面積を
$$
D=\lvert u_1v_2-u_2v_1\rvert
$$
で表す。
面積の式 $\lvert u_1v_2-u_2v_1\rvert$ は、行列 $\begin{pmatrix}u_1&v_1\\u_2&v_2\end{pmatrix}$ の行列式の絶対値で、1次変換と行列式:面積の拡大率 で扱った。内積を使うと
$$
D=\sqrt{\lvert\vec u\rvert^2\lvert\vec v\rvert^2-(\vec u\cdot\vec v)^2}=\lvert\vec u\rvert\lvert\vec v\rvert\sin\theta
$$
とも書ける($\theta$ は $\vec u$ と $\vec v$ のなす角。ベクトルの内積(高校数学))。
$(m,n)=(m-n)\vec u+n\vec w$ で、$m-n$ も $n$ も整数なので、正方形格子のどの点も $\vec u,\vec w$ の整数係数の和で書ける。逆に $\vec u,\vec w$ の整数係数の和は座標が整数の点である。面積は $\lvert1\cdot1-0\cdot1\rvert=1$ である。
硬貨の並べ方を、平面全体に続く並べ方として言い直す。円は内部も含めて考える(円板)。半径 $r$ の 2 つの円の中心の距離を $\ell$ とすると、2 つの円の内部が共有点をもたないのは $\ell\ge 2r$ のときで、$\ell=2r$ のときにちょうど接する(2円の位置関係と共通接線)。
半径 $r$ の円を、どの 2 つの内部も共有点をもたないように、平面に無限個並べたものを、半径 $r$ の 円の詰め込み という。中心どうしの距離がどれも $2r$ 以上であることと同じである。
正の数 $R$ に対して、正方形 $-R\le x\le R$、$-R\le y\le R$ を $Q_R$ とし、$Q_R$ のうち円でおおわれている部分の面積を $A(R)$ とする。$R$ を限りなく大きくしたときの極限
$$
\lim_{R\to\infty}\frac{A(R)}{(2R)^2}
$$
があるとき、これを詰め込みの 密度 という。
中心の全体が 1 つの格子 $L$ の格子点の全体であるような詰め込みを、$L$ による 格子の詰め込み という。
ex-cpk-square と ex-cpk-hex は、正方形格子と六角格子による格子の詰め込みである。そこで計算した割合が、この定義の密度と一致することを次の命題で示す。$Q_R$ の中の格子点の個数を $N(R)$ で表す。
格子 $L$ の基底 $(\vec u,\vec v)$ の基本平行四辺形の面積を $D$ とする。
(1) $\displaystyle\lim_{R\to\infty}\frac{N(R)\,D}{(2R)^2}=1$ である。特に、$D$ は基底の選び方によらず、格子 $L$ だけで決まる。
(2) $L$ による半径 $r$ の格子の詰め込みの密度は
$$
\frac{\pi r^2}{D}
$$
である。
要点:基本平行四辺形を格子のベクトルで平行移動すると、平面がすき間も重なりもなく敷き詰められる(図 3)。$\delta=\lvert\vec u\rvert+\lvert\vec v\rvert$ とすると、$Q_R$ の中の格子点に付いた $N(R)$ 個の平行四辺形は $Q_{R+\delta}$ に入り、$Q_{R-\delta}$ をおおう。よって
$$
(2R-2\delta)^2\le N(R)\,D\le(2R+2\delta)^2
$$
で、$(2R)^2$ で割ってはさみうちの原理を使うと (1) を得る。(2) は、$Q_R$ の中の円の個数が $N(R)$ とほぼ等しいことから従う。
段 1(敷き詰め)。$\vec u,\vec v$ は平行でないので、平面のどの点 $\vec x$ もただ 1 通りに $\vec x=a\vec u+b\vec v$($a,b$ は実数)と書ける。$m$ を $a$ 以下の最大の整数、$n$ を $b$ 以下の最大の整数とし、$s=a-m$、$t=b-n$ とおくと $0\le s<1$、$0\le t<1$ で、$\vec x=(m\vec u+n\vec v)+(s\vec u+t\vec v)$ である。そこで $P=\{s\vec u+t\vec v\mid 0\le s<1,\ 0\le t<1\}$ とおくと、どの点も、ある格子のベクトル $\vec w=m\vec u+n\vec v$ について $\vec w+P$ に入り、その $\vec w$ はただ 1 つである($a,b$ がただ 1 通りに決まり、$m,n$ はそこから決まる)。つまり平行四辺形 $\vec w+P$($\vec w\in L$)は平面を重なりなく敷き詰める。どれも面積は $D$ である。
段 2(平行四辺形の大きさ)。$\vec w+P$ の点 $\vec w+s\vec u+t\vec v$ と $\vec w$ の距離は $\lvert s\vec u+t\vec v\rvert\le s\lvert\vec u\rvert+t\lvert\vec v\rvert<\delta$ である。
段 3(上からの評価)。$\vec w\in Q_R$ ならば、段 2 により $\vec w+P$ の点の座標は $\vec w$ の座標から $\delta$ 未満しかずれないので、$\vec w+P$ は $Q_{R+\delta}$ に入る。これらの $N(R)$ 個の平行四辺形は重ならないので、面積の和を比べて $N(R)\,D\le(2R+2\delta)^2$ である。
段 4(下からの評価)。$R>\delta$ とする。$Q_{R-\delta}$ の点 $\vec x$ は段 1 によりある $\vec w+P$ に入り、段 2 により $\vec w$ と $\vec x$ の距離は $\delta$ 未満なので、$\vec w$ の座標は $\vec x$ の座標から $\delta$ 未満しかずれず、$\vec w\in Q_R$ である。よって $Q_{R-\delta}$ は $N(R)$ 個の平行四辺形でおおわれ、$(2R-2\delta)^2\le N(R)\,D$ である。
段 5((1) の結論)。段 3・4 を $(2R)^2$ で割ると $\left(1-\dfrac\delta R\right)^2\le\dfrac{N(R)\,D}{(2R)^2}\le\left(1+\dfrac\delta R\right)^2$ で、両端は $R\to\infty$ で $1$ に近づくので、はさみうちの原理により (1) が成り立つ。$N(R)$ は格子 $L$ だけで決まる数なので、$D=\displaystyle\lim_{R\to\infty}\frac{(2R)^2}{N(R)}$ も $L$ だけで決まる。
段 6((2))。$R>r$ とする。中心が $Q_{R-r}$ にある円は $Q_R$ に含まれ、互いに内部が重ならないので $A(R)\ge N(R-r)\,\pi r^2$ である。$Q_R$ と共有点をもつ円は中心が $Q_{R+r}$ にあるので $A(R)\le N(R+r)\,\pi r^2$ である。$(2R)^2$ で割って書き直すと
$$\frac{N(R-r)D}{(2(R-r))^2}\cdot\frac{(R-r)^2}{R^2}\cdot\frac{\pi r^2}{D}\le\frac{A(R)}{(2R)^2}\le\frac{N(R+r)D}{(2(R+r))^2}\cdot\frac{(R+r)^2}{R^2}\cdot\frac{\pi r^2}{D}$$
で、(1) により両端は $\dfrac{\pi r^2}{D}$ に近づく。はさみうちの原理により密度は $\dfrac{\pi r^2}D$ である。$\square$
平行四辺形を格子のベクトルで平行移動すると平面が敷き詰められる。青い正方形 Q_R の中の格子点(赤)に付いた平行四辺形(オレンジ)は、Q_R をほぼおおう
prop-cpk-density (2) により、密度を大きくするには、基本面積 $D$ に比べて円を大きくすればよい。しかし円は重なってはいけない。格子の詰め込みで円が重ならない条件を、格子の言葉で書く。
$L$ の $\vec 0$ でないベクトルの長さの最小値を $d$ とし、$L$ の 最短距離 と呼ぶ(最小値があることは次の節の lem-cpk-finite で示す)。2 つの格子点 $\vec p,\vec q$ の差 $\vec p-\vec q$ も $L$ のベクトルなので、格子点どうしの距離はどれも $d$ 以上で、ちょうど $d$ になる組もある。よって半径 $r$ の円が重ならないのは $2r\le d$、つまり $r\le\dfrac d2$ のときである。いちばん大きい $r=\dfrac d2$ をとると、密度は
$$
\frac{\pi (d/2)^2}{D}=\frac{\pi d^2}{4D}
$$
になる。以下、格子 $L$ の詰め込みといえば、この半径 $\dfrac d2$ のものを指す。
長方形の格子 1×2 による詰め込み。縦に大きなすき間が残る
なす角 75° のひし形の格子による詰め込み。正方形の並べ方より詰まっている
ここまでの例では、なす角を $90^\circ$、$75^\circ$、$60^\circ$ と小さくするにつれて密度が大きくなった。では、$60^\circ$ より小さくしたらどうなるか。たとえば長さ $1$ の 2 つのベクトルでなす角を $45^\circ$ にすると、$\lvert\vec v-\vec u\rvert^2=2-2\cos45^\circ\approx0.586$ で、対角線の方が辺より短くなる。最短距離 $d$ が $1$ より小さくなるので、円を小さくしなければならない。角を小さくしすぎると損をするのである。この釣り合いを正確に言うのが主定理である。
証明の方針は「格子の中から、なるべく短いベクトルを 2 本選んで基底にする」ことである。
格子 $L$ と正の数 $\rho$ について、長さが $\rho$ 以下の $L$ のベクトルは有限個である。特に、$\vec 0$ でない $L$ のベクトルの長さには最小値 $d>0$ がある。
要点:基底 $(\vec e_1,\vec e_2)$ を使って $\vec x=m\vec e_1+n\vec e_2$ と書き、連立 1 次方程式を解いて係数を表すと、$\lvert\vec x\rvert\le\rho$ のとき $\lvert m\rvert$ と $\lvert n\rvert$ は $\rho$ に比例する数以下になる。その範囲の整数の組は有限個である。
$L$ の基底を $(\vec e_1,\vec e_2)$、その基本面積を $D$ とする。$\vec x=m\vec e_1+n\vec e_2$ の成分を連立 1 次方程式とみて $m$ について解くと、$\vec x=(x_1,x_2)$、$\vec e_j=(e_{j1},e_{j2})$ として
$$m=\frac{x_1e_{22}-x_2e_{21}}{e_{11}e_{22}-e_{12}e_{21}}$$
である(分母の絶対値が $D$ で、$D\ne0$)。分子はベクトル $(x_1,x_2)$ と $(e_{22},-e_{21})$ の内積で、後者の長さは $\lvert\vec e_2\rvert$ なので、分子の絶対値は $\lvert\vec x\rvert\lvert\vec e_2\rvert$ 以下である(内積の絶対値は長さの積以下。ベクトルの内積(高校数学))。よって $\lvert\vec x\rvert\le\rho$ なら $\lvert m\rvert\le\dfrac{\rho\lvert\vec e_2\rvert}{D}$ で、同じく $\lvert n\rvert\le\dfrac{\rho\lvert\vec e_1\rvert}{D}$ である。この範囲の整数の組 $(m,n)$ は有限個しかない。
$\vec 0$ でない $L$ のベクトルのうち長さが $\lvert\vec e_1\rvert$ 以下のものは、$\vec e_1$ 自身を含み、有限個なので、その中に長さが最小のものがある。それより長いベクトルは比べる必要がないので、これが $\vec 0$ でないベクトル全体の中で最短である。$\square$
lem-cpk-finite により、次のように 2 本のベクトルを選べる。
(R1) $\vec u$ は、$\vec 0$ でない $L$ のベクトルのうち、長さが最小のもの($\lvert\vec u\rvert=d$)。
(R2) $\vec v$ は、$\vec u$ と平行でない $L$ のベクトルのうち、長さが最小のもの。
条件 (ii) のベクトルがあるのは、$\vec u$ と平行でない $L$ のベクトル(たとえば基底のどちらか)があり、lem-cpk-finite と同じ理由で、それより短いものは有限個しかないからである。
$\vec u,\vec v$ を条件 (i)(ii) のように選ぶと、
$$
\lvert\vec u\rvert\le\lvert\vec v\rvert,\qquad \lvert\vec u\cdot\vec v\rvert\le\frac12\lvert\vec u\rvert^2
$$
である。特に、$\vec u$ と $\vec v$ のなす角 $\theta$ は $60^\circ\le\theta\le120^\circ$ をみたす。
段 1。$\vec v$ は $\vec 0$ でない $L$ のベクトルで、$\vec u$ はその中で最短なので、$\lvert\vec u\rvert\le\lvert\vec v\rvert$ である。
段 2。$\vec v+\vec u$ と $\vec v-\vec u$ は $L$ のベクトルで、$\vec u$ と平行でない(もし $\vec v\pm\vec u=k\vec u$ なら $\vec v=(k\mp1)\vec u$ となり、$\vec v$ が $\vec u$ と平行になってしまう)。$\vec v$ は $\vec u$ と平行でないものの中で最短なので、
$$
\lvert\vec v+\vec u\rvert^2\ge\lvert\vec v\rvert^2,\qquad \lvert\vec v-\vec u\rvert^2\ge\lvert\vec v\rvert^2
$$
である。左の式を展開すると $\lvert\vec v\rvert^2+2\vec u\cdot\vec v+\lvert\vec u\rvert^2\ge\lvert\vec v\rvert^2$、つまり $2\vec u\cdot\vec v\ge-\lvert\vec u\rvert^2$ である。右の式から同じく $2\vec u\cdot\vec v\le\lvert\vec u\rvert^2$ である。合わせて $\lvert\vec u\cdot\vec v\rvert\le\dfrac12\lvert\vec u\rvert^2$ である。
段 3(角)。段 1・2 から $\lvert\cos\theta\rvert=\dfrac{\lvert\vec u\cdot\vec v\rvert}{\lvert\vec u\rvert\lvert\vec v\rvert}\le\dfrac12$ となり、$0^\circ<\theta<180^\circ$ なので $60^\circ\le\theta\le120^\circ$ である。$\square$
$\cos\theta=\dfrac{\vec u\cdot\vec v}{\lvert\vec u\rvert\lvert\vec v\rvert}$ で、段 2 の $\lvert\vec u\cdot\vec v\rvert\le\dfrac12\lvert\vec u\rvert^2$ と段 1 の $\lvert\vec v\rvert\ge\lvert\vec u\rvert$ から
$$\lvert\cos\theta\rvert=\frac{\lvert\vec u\cdot\vec v\rvert}{\lvert\vec u\rvert\lvert\vec v\rvert}\le\frac{\frac12\lvert\vec u\rvert^2}{\lvert\vec u\rvert\cdot\lvert\vec u\rvert}=\frac12$$
である(分母の $\lvert\vec v\rvert$ を小さい $\lvert\vec u\rvert$ に置きかえると分数は大きくなる)。$-\dfrac12\le\cos\theta\le\dfrac12$ となる $0^\circ<\theta<180^\circ$ の範囲は $60^\circ\le\theta\le120^\circ$ である。
$\vec u,\vec v$ を条件 (i)(ii) のように選ぶと、$(\vec u,\vec v)$ は $L$ の基底である。つまり $L$ のどのベクトルも $m\vec u+n\vec v$($m,n$ は整数)と書ける。
要点:$L$ のベクトル $\vec w$ を $a\vec u+b\vec v$ と書き、$a,b$ から整数を引いて「余り」$\vec x=s\vec u+t\vec v$($\lvert s\rvert\le\dfrac12$、$0\le t\le\dfrac12$)を作る。$t\ne0$ なら lem-cpk-angle により $\lvert\vec x\rvert^2\le\dfrac34\lvert\vec v\rvert^2$ となって (ii) の最小性に反し、$t=0$ なら (i) の最小性から $s=0$ になる。
段 1(余りを作る)。$\vec w\in L$ を実数 $a,b$ で $\vec w=a\vec u+b\vec v$ と書く。$b$ に最も近い整数を $n$ とし(ちょうど中間なら小さい方)、$\vec w-n\vec v$ を考えると、$\vec v$ の係数 $b-n$ は $-\dfrac12\le b-n\le\dfrac12$ をみたす。係数が負なら全体に $-1$ を掛けて、$\vec v$ の係数を $0$ 以上 $\dfrac12$ 以下にする。次に $\vec u$ の係数に最も近い整数の $\vec u$ 倍を引くと、$\vec u$ の係数も $-\dfrac12$ 以上 $\dfrac12$ 以下になる。こうして、整数 $m',n'$ と符号 $\pm$ を使って $\vec x=\pm(\vec w-n\vec v)-m'\vec u=s\vec u+t\vec v$、$\lvert s\rvert\le\dfrac12$、$0\le t\le\dfrac12$ と書ける $\vec x$ を得る。$\vec x$ は $L$ のベクトルの整数係数の和なので $L$ に入る。
段 2($t\ne0$ はありえない)。$t\ne0$ とする。$\vec x$ は $\vec u$ と平行でない。lem-cpk-angle の $\lvert\vec u\cdot\vec v\rvert\le\dfrac12\lvert\vec u\rvert^2$ と $\lvert\vec u\rvert\le\lvert\vec v\rvert$ を使うと
$$\lvert\vec x\rvert^2=s^2\lvert\vec u\rvert^2+2st\,\vec u\cdot\vec v+t^2\lvert\vec v\rvert^2\le s^2\lvert\vec u\rvert^2+\lvert s\rvert t\lvert\vec u\rvert^2+t^2\lvert\vec v\rvert^2\le\left(\frac14+\frac14+\frac14\right)\lvert\vec v\rvert^2=\frac34\lvert\vec v\rvert^2$$
である($s^2\le\dfrac14$、$\lvert s\rvert t\le\dfrac14$、$t^2\le\dfrac14$ と $\lvert\vec u\rvert^2\le\lvert\vec v\rvert^2$ を使った)。すると $\vec x$ は $\vec u$ と平行でない $L$ のベクトルで $\vec v$ より短く、条件 (ii) に反する。よって $t=0$ である。
段 3($s=0$)。$t=0$ なので $\vec x=s\vec u$、$\lvert\vec x\rvert=\lvert s\rvert\lvert\vec u\rvert\le\dfrac12\lvert\vec u\rvert$ である。$\vec x\ne\vec 0$ なら、$\vec u$ より短い $\vec 0$ でない $L$ のベクトルがあることになり、条件 (i) に反する。よって $\vec x=\vec 0$、$s=0$ である。
段 4(結論)。$\vec x=\vec 0$ なので $\pm(\vec w-n\vec v)=m'\vec u$、つまり $\vec w=n\vec v\pm m'\vec u$ で、$\vec w$ は $\vec u,\vec v$ の整数係数の和である。$\square$
逆に、ある基底が lem-cpk-angle の 2 つの不等式をみたせば、最短距離はその基底から読み取れる。
$(\vec u,\vec v)$ が格子 $L$ の基底で、$\lvert\vec u\rvert\le\lvert\vec v\rvert$、$\lvert\vec u\cdot\vec v\rvert\le\dfrac12\lvert\vec u\rvert^2$ をみたすとする。このとき $L$ の最短距離は $d=\lvert\vec u\rvert$ である。
要点:$a=\lvert\vec u\rvert^2$ とおくと、仮定から $\lvert m\vec u+n\vec v\rvert^2\ge a\bigl((\lvert m\rvert-\lvert n\rvert)^2+\lvert m\rvert\lvert n\rvert\bigr)$ で、かっこの中は $(m,n)\ne(0,0)$ の整数の組でいつも $1$ 以上である。
$\vec 0$ でない $L$ のベクトルは $m\vec u+n\vec v$($m,n$ は整数で、少なくとも一方は $0$ でない)と書ける。仮定の $2\lvert\vec u\cdot\vec v\rvert\le a$ と $\lvert\vec v\rvert^2\ge a$ を使うと
$$\lvert m\vec u+n\vec v\rvert^2=m^2a+2mn\,\vec u\cdot\vec v+n^2\lvert\vec v\rvert^2\ge m^2a-\lvert m\rvert\lvert n\rvert a+n^2a=a\bigl((\lvert m\rvert-\lvert n\rvert)^2+\lvert m\rvert\lvert n\rvert\bigr)$$
である。$m,n$ がどちらも $0$ でなければ $\lvert m\rvert\lvert n\rvert\ge1$、一方が $0$ なら他方は $0$ でない整数で $(\lvert m\rvert-\lvert n\rvert)^2\ge1$ なので、かっこの中はいつも $1$ 以上である。よって $\lvert m\vec u+n\vec v\rvert^2\ge a$ で、$m=1$、$n=0$ のとき等号が成り立つ。$\square$
$\vec e_1=(1,0)$、$\vec e_2=\left(\dfrac{12}5,\dfrac65\right)$ で生成される格子 $L$ を考える。$\lvert\vec e_2\rvert^2=\dfrac{144+36}{25}=\dfrac{36}5$ で、$\vec e_1$ と $\vec e_2$ のなす角は $\cos\theta=\dfrac{12/5}{6/\sqrt5}=\dfrac2{\sqrt5}$ より約 $26.6^\circ$ である。このままでは lem-cpk-angle の範囲に入らない。
$\vec e_2$ から $\vec e_1$ を引けるだけ引く。$\vec e_1\cdot\vec e_2=\dfrac{12}5$ を $\lvert\vec e_1\rvert^2=1$ で割ると $2.4$ で、最も近い整数は $2$ なので、
$$
\vec v=\vec e_2-2\vec e_1=\left(\frac25,\frac65\right),\qquad \vec u=\vec e_1=(1,0)
$$
とおく。$(\vec u,\vec v)$ も $L$ の基底である($\vec e_2=\vec v+2\vec u$ なので、$\vec e_1,\vec e_2$ の整数係数の和は $\vec u,\vec v$ の整数係数の和で書ける)。すると
$$
\lvert\vec u\rvert^2=1,\qquad \lvert\vec v\rvert^2=\frac{4+36}{25}=\frac85,\qquad \vec u\cdot\vec v=\frac25\le\frac12
$$
で、lem-cpk-reduced の条件をみたす。よって最短距離は $d=1$ である。基本面積は $D=\left\lvert1\cdot\dfrac65-0\cdot\dfrac25\right\rvert=\dfrac65$ で、$\vec e_1,\vec e_2$ で計算しても $\left\lvert1\cdot\dfrac65-0\cdot\dfrac{12}5\right\rvert=\dfrac65$ と同じである。密度は
$$
\frac{\pi d^2}{4D}=\frac{\pi}{4\cdot\frac65}=\frac{5\pi}{24}\approx0.654
$$
である。$\vec v\pm\vec u$ の長さの 2 乗は $\dfrac{17}5$ と $\dfrac95$ で、どちらも $\lvert\vec v\rvert^2=\dfrac85$ より大きい(図 6)。
格子の基底を短いものに取りかえる。灰色の破線の e2 から u を 2 回引くと v になり、v+u と v−u(緑)はどちらも v より長い
ex-cpk-reduce の「引けるだけ引く」操作は、整数の割り算で余りを小さくしていく Euclid の互除法(Euclidの互除法)とよく似ている。
格子 $L$ の最短距離を $d$、基本面積を $D$ とする。このとき
$$
D\ge\frac{\sqrt3}2d^2
$$
である。したがって、$L$ による格子の詰め込みの密度は
$$
\frac{\pi d^2}{4D}\le\frac{\pi}{2\sqrt3}\approx0.9069
$$
をみたす。等号が成り立つのは、$L$ が六角格子のときであり、そのときに限る。
段 1(基底を選ぶ)。条件 (i)(ii) のように $\vec u,\vec v$ を選ぶ。lem-cpk-basis により $(\vec u,\vec v)$ は $L$ の基底なので、基本面積は $D=\sqrt{\lvert\vec u\rvert^2\lvert\vec v\rvert^2-(\vec u\cdot\vec v)^2}$ で計算できる(prop-cpk-density (1) により、どの基底で計算しても同じ値である)。また $\lvert\vec u\rvert=d$ である。
段 2(面積の評価)。lem-cpk-angle の $(\vec u\cdot\vec v)^2\le\dfrac14\lvert\vec u\rvert^4$ を使うと
$$
D^2=\lvert\vec u\rvert^2\lvert\vec v\rvert^2-(\vec u\cdot\vec v)^2\ge\lvert\vec u\rvert^2\lvert\vec v\rvert^2-\frac14\lvert\vec u\rvert^4
$$
である。さらに lem-cpk-angle の $\lvert\vec v\rvert^2\ge\lvert\vec u\rvert^2$ を使うと
$$
D^2\ge\lvert\vec u\rvert^4-\frac14\lvert\vec u\rvert^4=\frac34d^4
$$
で、両辺は正なので $D\ge\dfrac{\sqrt3}2d^2$ である。
段 3(密度)。段 2 から
$$
\frac{\pi d^2}{4D}\le\frac{\pi d^2}{4\cdot\frac{\sqrt3}2d^2}=\frac{\pi}{2\sqrt3}
$$
である。
段 4(等号の場合)。段 2 で等号が成り立つのは、2 つの不等式がどちらも等号のとき、つまり $\lvert\vec v\rvert=\lvert\vec u\rvert$ かつ $\lvert\vec u\cdot\vec v\rvert=\dfrac12\lvert\vec u\rvert^2$ のときである。このとき $\vec u$ と $\vec v$ は長さが等しく、なす角は $60^\circ$ か $120^\circ$ である。$60^\circ$ なら $L$ は六角格子である。$120^\circ$ なら $\vec v'=\vec v+\vec u$ とおくと、$(\vec u,\vec v')$ も $L$ の基底で($\vec v=\vec v'-\vec u$)、$\vec u\cdot\vec v=-\dfrac12\lvert\vec u\rvert^2$ から
$$
\lvert\vec v'\rvert^2=\lvert\vec v\rvert^2+2\vec u\cdot\vec v+\lvert\vec u\rvert^2=\lvert\vec u\rvert^2,\qquad \vec u\cdot\vec v'=\vec u\cdot\vec v+\lvert\vec u\rvert^2=\frac12\lvert\vec u\rvert^2
$$
なので、$\vec u$ と $\vec v'$ は長さが等しく、なす角は $60^\circ$ である。やはり $L$ は六角格子である。
段 5(六角格子で等号)。逆に、$L$ が六角格子なら、長さ $s$ の 2 つのベクトル $\vec u,\vec v$ でなす角が $60^\circ$ のものを基底にとれる。$\lvert\vec u\rvert=\lvert\vec v\rvert$、$\vec u\cdot\vec v=\dfrac12s^2$ なので lem-cpk-reduced の条件をみたし、$d=s$ である。$D=s^2\sin60^\circ=\dfrac{\sqrt3}2s^2=\dfrac{\sqrt3}2d^2$ で、等号が成り立つ。$\square$
段 5 で見たように、六角格子の詰め込みの密度はちょうど $\dfrac{\pi}{2\sqrt3}$ で、ex-cpk-hex の計算と一致する。ex-cpk-examples の $75^\circ$ のひし形の格子では $D\approx0.966$、$\dfrac{\sqrt3}2d^2\approx0.866$ で、確かに $D$ の方が大きい。ex-cpk-reduce の格子でも $D=1.2>0.866$ である。
証明の段 2 は、基本平行四辺形の高さで見ることもできる。高さは $\dfrac{\sqrt3}2d$ 以上で、ちょうど $\dfrac{\sqrt3}2d$ になるのは、$\vec 0$、$\vec u$ の終点、$\vec v$ の終点(または $-\vec u$ の終点)が正三角形を作るときである。
$\vec u=(d,0)$ となるように座標をとり、$\vec v=(x,y)$($y>0$)とする。lem-cpk-angle の $\lvert\vec u\cdot\vec v\rvert\le\dfrac12d^2$ は $\lvert dx\rvert\le\dfrac12d^2$、つまり $-\dfrac d2\le x\le\dfrac d2$ であり、$\lvert\vec v\rvert\ge d$ は $x^2+y^2\ge d^2$ である。基本平行四辺形の底辺は $d$、高さは $y$ で、
$$y^2\ge d^2-x^2\ge d^2-\frac{d^2}4=\frac34d^2$$
なので、高さは $\dfrac{\sqrt3}2d$ 以上である。等号は $x=\pm\dfrac d2$、$x^2+y^2=d^2$ のとき、つまり $\vec v$ の終点が $\left(\pm\dfrac d2,\dfrac{\sqrt3}2d\right)$ のときに限る。
thm-cpk-main とその証明で使った条件を外すと何が崩れるかを並べる。
| 外す条件 | 反例 | 成り立たなくなること |
|---|---|---|
| 条件 (ii):$\vec u$ と平行でないもののうち最短 | 六角格子の基底 $\vec u=(1,0)$、$\vec w=\left(\frac32,\frac{\sqrt3}2\right)$ | なす角が $60^\circ$ 以上 $120^\circ$ 以下(lem-cpk-angle) |
| 円の半径がすべて等しい | 正方形格子の円と、すき間に入れた小さな円 | 密度が $\frac{\pi}{2\sqrt3}$ 以下 |
| 円が重ならない | 正方形格子の点を中心とする半径 $\frac{\sqrt2}2$ の円 | おおう割合が $\frac{\pi}{2\sqrt3}$ 以下 |
| 中心が格子をなす | 六角格子から円を 1 個取り除いた並べ方 | 密度 $\frac{\pi}{2\sqrt3}$ になるのは六角格子だけ |
六角格子を $\vec u=(1,0)$、$\vec v=\left(\dfrac12,\dfrac{\sqrt3}2\right)$ で生成し、$\vec w=\vec u+\vec v=\left(\dfrac32,\dfrac{\sqrt3}2\right)$ とおく。$\vec v=\vec w-\vec u$ なので、$(\vec u,\vec w)$ も六角格子の基底である。しかし $\vec w$ は条件 (ii) をみたさない($\lvert\vec w\rvert=\sqrt3$ で、$\vec u$ と平行でない $\vec v$ の方が短い)。実際
$$
\vec u\cdot\vec w=\frac32>\frac12=\frac12\lvert\vec u\rvert^2,\qquad \cos\theta=\frac{3/2}{1\cdot\sqrt3}=\frac{\sqrt3}2
$$
で、なす角は $30^\circ$ である(図 8)。段 2 の不等式は、lem-cpk-angle の条件をみたす基底でだけ使える。
この基底で prf-cpk-main の段 2 の最初の不等式 $D^2\ge\lvert\vec u\rvert^2\lvert\vec w\rvert^2-\dfrac14\lvert\vec u\rvert^4$ を使おうとすると、$D^2\ge1\cdot3-\dfrac14=\dfrac{11}4$ という誤った結論になる。本当の値は $D^2=\left(1\cdot\dfrac{\sqrt3}2-0\cdot\dfrac32\right)^2=\dfrac34$ である。$(\vec u\cdot\vec w)^2=\dfrac94$ が $\dfrac14\lvert\vec u\rvert^4=\dfrac14$ より大きいので、不等式の向きが保証されない。
正方形格子の点 $(m,n)$ に半径 $\dfrac12$ の円を置き、さらに正方形のすき間の中心 $\left(m+\dfrac12,n+\dfrac12\right)$ に半径 $r'=\dfrac{\sqrt2-1}2\approx0.207$ の円を置く(図 7)。大小の円はちょうど接し、どの 2 つも重ならない。1 辺 $1$ の正方形 1 つあたり大きな円 1 個分と小さな円 1 個分が入るので、おおう割合は
$$
\frac\pi4+\pi\left(\frac{\sqrt2-1}2\right)^2=\frac\pi4\bigl(1+(3-2\sqrt2)\bigr)=\frac{\pi(2-\sqrt2)}2\approx0.920
$$
で、$\dfrac{\pi}{2\sqrt3}\approx0.907$ より大きい。
大きな円の中心と小さな円の中心の距離の最小値は $\sqrt{\left(\dfrac12\right)^2+\left(\dfrac12\right)^2}=\dfrac{\sqrt2}2$ で、半径の和 $\dfrac12+\dfrac{\sqrt2-1}2=\dfrac{\sqrt2}2$ に等しいので、ちょうど接して重ならない。大きな円どうしの中心の距離は $1$ 以上で半径の和 $1$ 以上、小さな円どうしの中心の距離も $1$ 以上で、$2r'=\sqrt2-1<1$ なので重ならない。割合は、prop-cpk-density (2) を 2 つの格子の詰め込み(正方形格子と、それを $\left(\dfrac12,\dfrac12\right)$ だけ平行移動したもの。平行移動した格子でも prf-cpk-density と同じ議論が使える)に使って足したものである。
正方形のすき間に小さな円を入れると、六角形の並べ方より多くおおえる
六角格子の基底 u と w。w は u と平行でないものの中で最短ではなく、なす角は 30° になる
正方形格子の点 $(m,n)$ を中心とする半径 $\dfrac{\sqrt2}2$ の円を考える。となりの円の中心の距離 $1$ は半径の和 $\sqrt2$ より小さいので、円は重なっている。この円は平面のすべての点をおおうので、おおう割合は $1$ で、thm-cpk-main の上限 $\dfrac{\pi}{2\sqrt3}$ を超える。
平面の点 $(x,y)$ に対し、$x$ に最も近い整数を $m$、$y$ に最も近い整数を $n$ とすると $\lvert x-m\rvert\le\dfrac12$、$\lvert y-n\rvert\le\dfrac12$ なので、$(x,y)$ と $(m,n)$ の距離は $\sqrt{\dfrac14+\dfrac14}=\dfrac{\sqrt2}2$ 以下である。よって平面のすべての点がどれかの円に入り、$A(R)=(2R)^2$ である。
六角格子の詰め込みから、原点の円を 1 個だけ取り除く。残りの円の中心の全体 $S$ はどの格子の格子点の全体でもなく(平行移動した格子の格子点の全体でもない)、それでも密度は六角格子と同じ $\dfrac{\pi}{2\sqrt3}$ である。
格子点の全体 $M$ は、3 点 $\vec a,\vec b,\vec c\in M$ について $\vec a+\vec b-\vec c\in M$ をみたす(格子のベクトルの整数係数の和だから。平行移動した格子でも同じ)。ところが $\vec a=\vec u$、$\vec b=\vec v$、$\vec c=\vec u+\vec v$ はどれも $S$ に入るのに、$\vec a+\vec b-\vec c=\vec 0$ は $S$ に入らない。
$Q_R$ で円がおおう面積は、六角格子の詰め込みの $A(R)$ から高々円 1 個分 $\dfrac\pi4$ しか減らない。$\dfrac{\pi/4}{(2R)^2}\to0$ なので、密度は六角格子と同じである。
最後の例は「等号の場合」が崩れる例で、「密度が $\dfrac{\pi}{2\sqrt3}$ 以下」という不等式そのものは崩れていない。格子でない並べ方でも密度は $\dfrac{\pi}{2\sqrt3}$ を超えないことが知られている(次の節)。
格子のベクトルの長さの 2 乗を、基底 $(\vec u,\vec v)$ の係数で書くと
$$
\lvert m\vec u+n\vec v\rvert^2=\underbrace{\lvert\vec u\rvert^2}_{a}m^2+2\underbrace{(\vec u\cdot\vec v)}_{b}mn+\underbrace{\lvert\vec v\rvert^2}_{c}n^2
$$
となり、整数 $m,n$ の 2 次式 $f(m,n)=am^2+2bmn+cn^2$ が現れる。これを 2 元 2 次形式 という(2次形式)。係数の間には $ac-b^2=D^2>0$ の関係がある。
lem-cpk-angle の 2 つの不等式は、係数で書くと
$$
2\lvert b\rvert\le a\le c
$$
になる。この形の 2 次形式を 簡約された 2 次形式という。lem-cpk-basis は「どの格子にも、簡約された 2 次形式を与える基底がある」ことを言っている。thm-cpk-main は、$ac-b^2=\Delta>0$、$a>0$ の 2 次形式について、$\vec 0$ でない整数の組 $(m,n)$ での値の最小値が
$$
\min f(m,n)\le\frac2{\sqrt3}\sqrt\Delta
$$
をみたす、という主張と同じである($d^2=\min f$、$D=\sqrt\Delta$ を $D\ge\frac{\sqrt3}2d^2$ に代入する)。
六角格子の基底 $(1,0)$、$\left(\dfrac12,\dfrac{\sqrt3}2\right)$ では $f(m,n)=m^2+mn+n^2$ で、等号が成り立つ。
六角格子の基底では $a=c=1$、$b=\dfrac12$ で、$\Delta=\dfrac34$、最小値 $1=\dfrac2{\sqrt3}\sqrt{\dfrac34}$ で等号である。ex-cpk-reduce の基底では $f(m,n)=m^2+\dfrac45mn+\dfrac85n^2$($a=1$、$b=\dfrac25$、$c=\dfrac85$)で、$\Delta=\dfrac85-\dfrac4{25}=\dfrac{36}{25}$、最小値 $1<\dfrac2{\sqrt3}\cdot\dfrac65\approx1.386$ である。
六角格子が平面の格子の詰め込みの中で最も密であることは Gauss が示した、と Wei26 は書いている。この記事の証明は、上の 2 次形式の簡約をベクトルの言葉で書いたものである。
中心が格子をなすとは限らない詰め込みの中でも、六角格子の詰め込みが最も密であること(密度 $\dfrac{\pi}{2\sqrt3}$ を超える同じ半径の円の詰め込みはないこと)は、L. Fejes Tóth が 1940 年に証明したと Wei26 は書いている。この記事では証明しない。格子でない並べ方は、中心の位置に規則がないので、1 つの基本平行四辺形で数える prop-cpk-density の方法が使えず、別の議論が要る。
空間で同じ半径の球を詰める問題は 球の詰め込み で扱う。3 次元の格子でも、単位の立体 1 つあたりの球の体積で密度を計算する。1 つの円(球)に接する円(球)の個数の最大値は 接吻数 で扱う。平面では、六角格子の詰め込みの 1 つの円のまわりにちょうど 6 つの円が接している。
格子と面積の関係を使う別の定理に、格子点を含まない対称な凸図形の面積の上限を与える Minkowskiの格子点定理 がある。
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