Chevalleyの定理

同義語:Chevalley's theoremシュヴァレーの定理

概要

Chevalleyの定理(Chevalley's theorem)とは、Noether スキームの間の有限型射 $f\colon X\to Y$ が構成可能集合を構成可能集合へ送るという定理であり、特に像 $f(X)$ は構成可能である。像は開でも閉でもないことがあり、例えば $(x,y)\mapsto(x,xy)$ による平面の像は、直線 $x=0$ の点のうち原点だけを含む。それでも像は局所閉集合の有限合併として記述できる。より一般に、準コンパクトかつ局所有限表示な射についても同じことが成り立つ。

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: スキーム, 有限型射, Noetherスキーム, 構成可能集合(位相)

主張と所有範囲

Chevalleyの定理(Chevalley's theorem)は、適切な有限性をもつスキームの射が構成可能集合を構成可能集合へ送ることを述べる。本記事は、Noetherスキームの間の有限型射に対する形とその証明を所有する。構成可能集合そのものの位相的定義、Boolean演算に関する性質、Noether空間での特徴づけは 構成可能集合(位相) が所有する。

Chevalleyの定理(Noether版)

$X,Y$ をNoetherスキームとし、$f\colon X\to Y$ を有限型射とする。$C\subset |X|$ が構成可能集合ならば、集合としての像
$$ f(C)=\{f(x)\mid x\in C\}\subset |Y| $$
も構成可能集合である。特に $f(X)$ は $Y$ の構成可能集合である。

この定理は「像が閉じている」とは述べない。有限型射の像は開でも閉でもないことがあるが、局所閉集合の有限合併という有限な記述は失われない。これは、多項式で定義された点をいくつかの変数を忘れて射影したとき、等式だけでは記述できなくなっても、等式と不等式の有限な組合せでは記述できるという消去理論の幾何学的な形である。
より一般に、準コンパクトかつ局所有限表示な射は局所構成可能集合を局所構成可能集合へ送る。これは Stacks054K Theorem 29.23.3(Tag 054K)の形である。Noetherスキームの間では有限型射は有限表示射であり、上の定理はこの一般形からも従う。本記事ではNoether版を、以下で独立に証明する。
アフィン有限表示版には、有限個の生成元を一つずつ加える因子分解と、係数環を閉部分と主開部分に分ける帰納法を用いる別証明もある。これは Stacks00FE Theorem 10.29.10(Tag 00FE)に記載されている。

証明の二つの準備

Noether空間での判定法

生成点近傍による構成可能性判定

$T$ をNoether位相空間、$E\subset T$ を部分集合とする。次は同値である。

  1. $E$ は構成可能である。
  2. 任意の既約閉集合 $Z\subset T$ に対し、$E\cap Z$ が $Z$ で稠密ならば、$E\cap Z$ は $Z$ の空でない開集合を含む。

まず $E$ が構成可能とする。$E\cap Z$ も構成可能であり、Noether空間では有限個の局所閉集合の合併
$$ E\cap Z=\bigcup_{i=1}^r(U_i\cap F_i) $$
と書ける。ここで $U_i$ は $Z$ で開、$F_i$ は $Z$ で閉である。左辺が $Z$ で稠密なら、有限合併の閉包が $Z$ なので、既約性よりある $i$ について $\overline{U_i\cap F_i}=Z$ となる。このとき $F_i=Z$ であり、空でない開集合 $U_i$ が $E\cap Z$ に含まれる。
逆に条件2を仮定する。すべての閉集合 $Z\subset T$ について $E\cap Z$ が $Z$ の構成可能集合であることを、閉集合に関するNoether帰納法で示す。$Z$ が可約なら、有限個の真の既約成分 $Z_1,\ldots,Z_m$ の合併である。帰納法により各 $E\cap Z_i$ は構成可能だから、その有限合併 $E\cap Z$ も構成可能である。
$Z$ が既約で、$E\cap Z$ が稠密でなければ、閉包 $W=\overline{E\cap Z}$ は $Z$ の真の閉部分集合である。帰納法により $E\cap Z=E\cap W$ は構成可能である。$E\cap Z$ が稠密なら、条件2により空でない開集合 $U\subset Z$ で $U\subset E$ となる。補集合 $Z\setminus U$ は真の閉部分集合なので、帰納法から $E\cap(Z\setminus U)$ は構成可能である。従って
$$ E\cap Z=U\cup\bigl(E\cap(Z\setminus U)\bigr) $$
も構成可能である。$Z=T$ とすれば結論を得る。$\square$

この補題で重要なのは、稠密な像が単に生成点へ近づくだけでなく、生成点の近傍を丸ごと含むことを示せばよい、という点である。

優勢射の像が開集合を含むこと

アフィン整スキーム上の生成点近傍

$A\hookrightarrow B$ を整域の単射で、$B$ を有限型 $A$-代数とする。このとき、ある $0\neq a\in A$ が存在して
$$ D(a)\subset\operatorname{Im}\bigl(\operatorname{Spec}B\to\operatorname{Spec}A\bigr) $$
となる。

相対Noether正規化 Stacks00OW Lemma 10.115.7 により、ある整数 $d\geq0$、$B$ の部分 $A$-代数 $B'$、および $0\neq a\in A$ が存在して、単射の列
$$ A\longrightarrow A[y_1,\ldots,y_d]\longrightarrow B'\longrightarrow B $$
を得る。ここで $B'$ は $A[y_1,\ldots,y_d]$ 上有限であり、局所化後には $B'_a\cong B_a$ である。
有限な単射は整拡大なので、lying-over Stacks00GQ Lemma 10.36.17 により
$$ \operatorname{Spec}B'_a\longrightarrow \operatorname{Spec}A_a[y_1,\ldots,y_d] $$
は全射である。一方、任意の素イデアル $\mathfrak p\subset A_a$ に対して、多項式環の素イデアル $\mathfrak p A_a[y_1,\ldots,y_d]$ は $\mathfrak p$ の上にある。従って
$$ \operatorname{Spec}A_a[y_1,\ldots,y_d]\longrightarrow\operatorname{Spec}A_a $$
も全射である。$B'_a\cong B_a$ を用いると、合成 $\operatorname{Spec}B_a\to\operatorname{Spec}A_a$ が全射である。$\operatorname{Spec}A_a=D(a)$ だから主張を得る。$\square$

この証明は、有限型代数 $B$ を根拠なく単生成代数 $A[x]/(g)$ に置き換えていない。有限個の生成元は相対Noether正規化により多項式環と有限整拡大へ同時に処理され、核が主イデアルであるという誤った仮定も使わない。

優勢有限型射の像は生成点近傍を含む

$X,Y$ を既約なNoetherスキームとし、$f\colon X\to Y$ を優勢な有限型射とする。このとき $f(X)$ は $Y$ の空でない開集合を含む。

$Y$ の空でないアフィン開集合 $V$ を取る。優勢性により $f^{-1}(V)$ は空でない。有限型射は準コンパクトなので、$f^{-1}(V)$ は有限個の空でないアフィン開集合 $U_1,\ldots,U_r$ で覆われる。像の閉包について
$$ V=\overline{f(f^{-1}(V))} =\bigcup_{i=1}^r\overline{f(U_i)} $$
であり、$V$ は既約だから、ある $i$ について $f(U_i)$ は $V$ で稠密である。
$X,Y$ を被約化しても基礎位相と像は変わらないので、$U_i=\operatorname{Spec}B$、$V=\operatorname{Spec}A$ を整域のスペクトルとしてよい。稠密性は環準同型 $A\to B$ の核が $0$ であることと同値である。有限型性と lem-chevalley-affine-generic-open により、$f(U_i)$ はある空でない主開集合 $D(a)\subset V$ を含む。従って $f(X)$ も $Y$ の空でない開集合を含む。$\square$

Chevalleyの定理の証明

Noether空間の構成可能集合は有限個の局所閉集合の合併である。各局所閉集合には被約な局所閉部分スキームの構造を入れられ、その $X$ への射は有限型である。像は有限合併と両立するから、まず $C=X$、すなわち $f(X)$ が構成可能であることを示せば十分である。
$E=f(X)$ とおく。lem-chevalley-constructible-criterion を適用するため、既約閉集合 $Z\subset Y$ で $E\cap Z$ が $Z$ に稠密なものを任意に取る。基礎位相だけを考えるので $Z$ には被約閉部分スキームの構造を入れる。基底変換
$$ X_Z=X\times_Y Z\longrightarrow Z $$
は有限型であり、$X_Z$ はNoetherスキームである。その有限個の既約成分を $T_1,\ldots,T_m$ とすると、集合として
$$ E\cap Z=\bigcup_{i=1}^m f_Z(T_i) $$
である。この合併は $Z$ で稠密であり $Z$ は既約だから、ある $i$ について $f_Z(T_i)$ の閉包は $Z$ である。
$T_i$ を被約化すると、$T_i\to Z$ は既約なNoetherスキーム間の優勢有限型射になる。prop-chevalley-dominant-open により、その像は $Z$ の空でない開集合を含む。この開集合は $E\cap Z$ に含まれる。従って $E$ は lem-chevalley-constructible-criterion の条件2を満たし、$Y$ の構成可能集合である。
最初の帰着へ戻ると、$C$ の各局所閉成分の像は構成可能であり、その有限合併 $f(C)$ も構成可能である。$\square$

この証明では、Noether帰納法は lem-chevalley-constructible-criterion の中で正しい向きに使われている。すなわち、稠密な像が非空開集合 $U$ を含むことを先に示し、その後で真の閉部分集合 $Z\setminus U$ に帰納法を適用する。

例と反例

開でも閉でもない像

$k$ を代数閉な無限体とし、
$$ f\colon\mathbb A_k^2\longrightarrow\mathbb A_k^2, \qquad (x,y)\longmapsto(x,xy) $$
を考える。標的の座標を $(u,v)$ とすると
$$ f(\mathbb A_k^2)=D(u)\cup\{(0,0)\}. $$
実際、$u\neq0$ なら $(u,v)=f(u,v/u)$ であり、$u=0$ の像は $(0,0)$ だけである。この像は主開集合と閉点の合併なので構成可能である。一方、$D(u)$ を含むため閉包は平面全体だが平面全体ではないので閉でない。また原点を含むが、原点のどのZariski開近傍も直線 $u=0$ 上の原点以外の点を含むため、開でもない。Chevalleyの定理の結論が「開」や「閉」ではなく「構成可能」である理由を示す例である。

有限射の像

有限射は閉写像である。従って有限射 $f\colon X\to Y$ では、閉集合の像は閉集合であり、特に構成可能である。Chevalleyの定理は、有限射より広い有限型射に対し、閉性を構成可能性へ弱めることで像を制御している。

反例:準コンパクト性を外す

$k$ を標数 $0$ の体、$Y=\operatorname{Spec}k[t]$ とし、
$$ X=\coprod_{n\geq0}\operatorname{Spec}k $$
の第 $n$ 成分を閉点 $(t-n)$ へ送る射 $f\colon X\to Y$ を取る。この射は準コンパクトでなく、従って有限型でない。像
$$ E=\{(t-n)\mid n\geq0\} $$
は $Y$ で稠密である。実際、$E$ を含む閉集合が $V(g)$ なら、多項式 $g$ は無限個の相異なる元 $n\in k$ で消えるため $g=0$ である。しかし $E$ は $Y$ の空でない開集合を含まない。どの空でない開集合も生成点 $(0)$ を含む一方、$(0)\notin E$ だからである。lem-chevalley-constructible-criterion により $E$ は構成可能でない。従って一般形における準コンパクト性を無条件に外すことはできない。

仮定と一般形

  • Noether版: $X,Y$ がNoether、$f$ が有限型なら、構成可能集合の像は構成可能である。本記事で完全証明した形である。
  • 一般形: $f$ が準コンパクトかつ局所有限表示なら、局所構成可能集合の像は局所構成可能である。完全な一般形は Stacks054K に委譲する。
  • 有限表示と有限型の差: 非Noether基底上では有限型代数の関係式が有限生成とは限らないため、有限型と有限表示は一致しない。Noether仮定を外して有限型だけを残した主張へ、Noether版の証明をそのまま流用してはいけない。
  • 有限射の場合: 像は構成可能であるだけでなく閉である。

関連項目

参考文献

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