空間を平面で分ける領域の数

同義語:平面による空間の分割ケーキの数space division by planes

概要

空間を平面で分ける領域の数(space division by planes)とは、一般の位置にある $n$ 枚の平面、すなわちどの2枚も平行でなく、どの3枚もちょうど1点で交わり、どの4枚も共通の点をもたない平面が空間に作る領域の数のことで、$\binom n0+\binom n1+\binom n2+\binom n3=\frac{n^3+5n+6}6$ である。$n$ 枚目の平面の上には先の平面との交線が一般の位置の $n-1$ 本の直線として現れ、平面を分けた部分の数だけ領域が増える。すべてが1点を通り、どの3枚も直線を共有しない $n$ 枚の平面では $n^2-n+2$ 個になる。

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{div}[0]{\mathbin{÷}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: 平面を円で分ける領域の数, 平面を直線で分ける領域の数, 空間の平面と法線ベクトル, 二項定理と組合せの恒等式

高校での出発点:ケーキを平面で切る

丸いケーキを包丁でまっすぐ切ると、切り口は平面になる。1回で2切れ、2回で4切れ、3回目を水平に入れれば8切れになる。では4回切ると最大で何切れか。16切れと答えたくなるが、実は15切れが限界である。この記事では、ケーキの代わりに空間全体を平面で切り、領域の数を数える。どこまでも広がる部分も1つの領域として数える。

3枚の座標平面

空間の3枚の座標平面 $x=0$、$y=0$、$z=0$ を考える。点 $(x,y,z)$ がどの領域にあるかは、$x,y,z$ それぞれが正か負かで決まる。符号の組は $2^3=8$ 通りあり、各組が1つの領域(8分円)になる。たとえば $x>0,\ y>0,\ z>0$ の部分と $x< 0,\ y>0,\ z>0$ の部分は、平面 $x=0$ を横切らなければ行き来できない。したがって3枚で8個の領域に分かれる。

4枚目の平面 $x+y+z=1$

ex-rsp-octants に平面 $x+y+z=1$ を加える。この平面の上の点では $x+y+z=1>0$ なので、$x,y,z$ がすべて負になることはない。つまり4枚目の平面は、8つの領域のうち $x< 0,\ y< 0,\ z< 0$ の1つとは交わらず、残りの7つと交わる。4枚目の平面の上では、3本の交線 $x=0$、$y=0$、$z=0$ が三角形を作り、平面を7つの部分に分ける(図1の右)。各部分が1つの古い領域を2つに割るので、領域は $8+7=15$ 個になる。

左は3枚の座標平面と4枚目の平面。右は4枚目の平面の上の3本の交線が作る7つの部分で、括弧の中は x、y、z の符号である 左は3枚の座標平面と4枚目の平面。右は4枚目の平面の上の3本の交線が作る7つの部分で、括弧の中は x、y、z の符号である
ここで鍵になったのは、「新しい平面の上に、先の平面との交線が何本の直線として現れ、平面をいくつに分けるか」である。これは 平面を直線で分ける領域の数 の問題そのものである。1つ低い次元の答えを使って漸化式を立てる、というのがこの記事の方法である。
この記事の問いは次の2つである。

  1. $n$ 枚の平面で空間をいくつの領域に分けられるか。→ thm-rsp-total
  2. $n$ 枚の平面がすべて1点を通るときはどうか。→ thm-rsp-point
    次元分けるもの増える数領域の数
    直線(1次元)$n$ 個の点$1$$\binom n0+\binom n1$
    平面(2次元)$n$ 本の直線$n$(点で分けた直線の部分)$\binom n0+\binom n1+\binom n2$
    空間(3次元)$n$ 枚の平面$L(n-1)$(直線で分けた平面の部分)$\binom n0+\binom n1+\binom n2+\binom n3$

一般の位置にある平面

一般の位置にある平面

空間の $n$ 枚の平面について、次の3条件が成り立つとき、これらの平面は 一般の位置 にあるという。
(R1) どの2枚も平行でなく、異なる平面である。
(R1) どの3枚も、ちょうど1点で交わる。
(R1) どの4枚も、共通の点をもたない。
$n$ 枚の平面が一般の位置にあるときの領域の数を $S(n)$ と書く。$S(0)=1$ とする。

条件 (i) により、どの2枚も1本の直線(交線)で交わる。条件 (ii) は、3枚が1本の直線を共有したり(本のページのような置き方)、3本の交線が平行になったり(三角柱の側面のような置き方)しないことを求める。
平面で分けた領域は凸である。平面 $ax+by+cz=d$ は空間を $ax+by+cz>d$ と $ax+by+cz< d$ の2つの側に分け、各領域はすべての平面について一方の側にある。2点 $P,Q$ が同じ側にあれば、線分 $PQ$ の点もすべて同じ側にある($ax+by+cz-d$ の値は線分の上で1次式として変わり、両端で同じ符号なら途中でも同じ符号である)。したがって、同じ領域の2点を結ぶ線分はどの平面も横切らない。

新しい平面の上の交線

$n\ge1$ 枚の平面が一般の位置にあるとき、$n$ 枚目の平面 $\pi$ と先の $n-1$ 枚との交線は、平面 $\pi$ の上で一般の位置にある $n-1$ 本の直線である。

一般の位置の条件を1つずつ写す

先の平面を $\alpha_1,\ldots,\alpha_{n-1}$、交線を $\ell_i=\pi\cap\alpha_i$ とする。条件 (i) により各 $\ell_i$ は直線である。
段1(異なる直線)。$\ell_i=\ell_j$($i\ne j$)なら、3枚 $\pi,\alpha_i,\alpha_j$ がこの直線を共有し、条件 (ii) に反する。
段2(平行でない)。$\ell_i$ と $\ell_j$ が平行なら、3枚 $\pi,\alpha_i,\alpha_j$ に共通の点はない(共通の点は $\ell_i$ と $\ell_j$ の共通の点だから)。これも「ちょうど1点で交わる」という条件 (ii) に反する。したがって $\ell_i$ と $\ell_j$ は1点で交わる。
段3(3本が1点で交わらない)。$\ell_i,\ell_j,\ell_k$ が1点を共有すれば、4枚 $\pi,\alpha_i,\alpha_j,\alpha_k$ がその点を共有し、条件 (iii) に反する。
以上で、$\ell_1,\ldots,\ell_{n-1}$ は平面 $\pi$ の上で一般の位置にある。$\square$

主定理1:領域の総数

一般の位置の $n$ 枚の平面が作る領域

$n$ 枚の平面が一般の位置にあるとき、領域の数は
$$ S(n)=\binom n0+\binom n1+\binom n2+\binom n3=\frac{n^3+5n+6}6 $$
である。ただし $n< k$ のとき $\binom nk=0$ とする。

新しい平面の上の部分を数える

方針:$n$ 枚目の平面が増やす領域の数を、その平面の上の部分の数として数え、漸化式 $S(n)=S(n-1)+L(n-1)$ を立てて足す。ここで $L(m)=\binom m0+\binom m1+\binom m2$ は、一般の位置の $m$ 本の直線が平面を分ける数である(平面を直線で分ける領域の数 の主定理)。
段1(古い領域ごとに見る)。$n\ge1$ とし、先の $n-1$ 枚が作る古い領域の1つを $R$ とする。新しい平面 $\pi$ が $R$ と交わらなければ、$R$ はそのまま1つの領域として残る。$\pi$ が $R$ と交わるなら、$R$ は $\pi$ の両側の部分 $R_+$、$R_-$ に分かれる。$R$ は開いた凸な集合で、$\pi$ が $R$ の点を通るので、その点の近くに $\pi$ の両側の点があり、$R_+$ も $R_-$ も空でない。$R_+$ と $R_-$ はそれぞれ凸な集合の共通部分なので凸で、一続きである。よって $R$ はちょうど2つに分かれる。したがって、増える領域の数は「$\pi$ と交わる古い領域の数」に等しい。
段2(交わる古い領域と、$\pi$ の上の部分の対応)。$\pi$ の上で、先の平面との交線は $n-1$ 本の直線であり、lem-rsp-trace により一般の位置にある。これらは $\pi$ を $L(n-1)$ 個の部分に分ける。$\pi$ と交わる古い領域 $R$ に対し、$R\cap\pi$ は交線を含まない凸な集合なので、ただ1つの部分に含まれる。逆に、$\pi$ の上の1つの部分は凸で先の平面と交わらないので、ただ1つの古い領域に含まれる。この2つから、$R\cap\pi$ はちょうど1つの部分に一致し、交わる古い領域と部分は1対1に対応する。よって
$$ S(n)-S(n-1)=L(n-1)\qquad(n\ge1),\qquad S(0)=1. $$
段3(差を足す)。この式を $1$ から $n$ まで足すと、途中の項は打ち消し合い、
$$ S(n)=1+\sum_{k=0}^{n-1}L(k)=1+\sum_{k=0}^{n-1}\left\{\binom k0+\binom k1+\binom k2\right\}. $$
ホッケースティック恒等式 $\displaystyle\sum_{k=0}^{n-1}\binom kr=\binom n{r+1}$(二項定理と組合せの恒等式)を $r=0,1,2$ に使うと
$$ S(n)=1+\binom n1+\binom n2+\binom n3=\binom n0+\binom n1+\binom n2+\binom n3. $$
段4(多項式で書く)。通分すると
$$ 1+n+\frac{n(n-1)}2+\frac{n(n-1)(n-2)}6=\frac{6+6n+3n^2-3n+n^3-3n^2+2n}6=\frac{n^3+5n+6}6. $$
$\square$

$$ \underbrace{S(n)-S(n-1)}_{\text{空間で増える領域}} =\underbrace{L(n-1)}_{\text{新しい平面の上の部分の数}} $$

小さい枚数を順に数える

$L(0),L(1),L(2),\ldots$ は $1,2,4,7,11,16,22$ である。$S(0)=1$ から順に足すと
$$ S(1)=1+1=2,\quad S(2)=2+2=4,\quad S(3)=4+4=8,\quad S(4)=8+7=15, $$
$$ S(5)=15+11=26,\quad S(6)=26+16=42,\quad S(7)=42+22=64. $$
$S(4)=15$ は ex-rsp-fourth の数え方と一致する。一般項でも $S(4)=\frac{64+20+6}6=15$ である。

$n$$0$$1$$2$$3$$4$$5$$6$$7$
平面を直線で $L(n)$$1$$2$$4$$7$$11$$16$$22$$29$
空間を平面で $S(n)$$1$$2$$4$$8$$15$$26$$42$$64$
$2^n$$1$$2$$4$$8$$16$$32$$64$$128$

$n\le3$ では $S(n)=2^n$ だが、$n=4$ から $2^n$ より小さくなる。$n\le3$ なら $\binom n0+\cdots+\binom n3$ は二項係数の行の和 $2^n$ 全体であり、$n\ge4$ では $\binom n4$ 以降の項が欠けるからである。
この数は 最大 でもある。新しい平面の上の交線が一般の位置になければ、平面の上の部分は $L(n-1)$ 個以下になり、増える領域も $L(n-1)$ 以下になる。Wei26a はこの最大の数 $\frac16(n^3+5n+6)$ と値の列を挙げ、ケーキを切る問題との関係から、これらを ケーキの数 と呼ぶことを述べている(Wei26b)。

三角数を積み上げた数として見る

平面の場合の答えは $L(k)=1+\frac{k(k+1)}2=1+T_k$ と書ける。$T_k=1+2+\cdots+k$ は三角数($T_0=0$)である。これを段3の和に入れると
$$ S(n)=1+\sum_{k=0}^{n-1}(1+T_k)=1+n+(T_1+T_2+\cdots+T_{n-1}) $$
となる。三角数を順に足した $1,4,10,20,\ldots$ は四面体数と呼ばれ、$T_1+\cdots+T_m=\binom{m+2}3$ である。たとえば $n=4$ では $1+4+(1+3+6)=15$ で、ex-rsp-values と一致する。四面体数は 角錐数 で扱う。

主定理2:すべてが1点を通る平面

平面がすべて1点を通ると、条件 (ii)(3枚がちょうど1点で交わる)は成り立たない。このときは 平面を円で分ける領域の数 の球面の結果が使える。

1点を通る $n$ 枚の平面

$n\ge1$ 枚の異なる平面がすべて点 $O$ を通り、どの3枚も1本の直線を共有しないとする。このとき空間は $n^2-n+2$ 個の領域に分かれる。

球面の切り口に移す

方針:$O$ を中心とする半径 $1$ の球面 $\Sigma$ との切り口を考え、空間の領域と球面の領域を1対1に対応させる。
段1(切り口は大円)。$O$ を通る平面と $\Sigma$ の切り口は大円である。異なる平面の切り口は異なる大円である。3枚の平面が1本の直線($O$ を通る)を共有することと、3つの大円がその直線と球面の交点を共有することは同じである。よって、どの3つの大円も共通の点をもたない。平面を円で分ける領域の数 の主定理(球面を大円で分けた領域)により、$\Sigma$ は $n^2-n+2$ 個の領域に分かれる。
段2(領域は $O$ から伸びる錐)。$O$ を原点にとると、各平面は $ax+by+cz=0$ の形である。点 $P$ をどの平面の上にもない点とし、$t>0$ とすると、$tP$ での $ax+by+cz$ の値は $P$ での値の $t$ 倍で、符号が同じである。したがって $P$ と $tP$ は同じ領域にある。とくに、各領域は $\Sigma$ と交わる($P$ を $\frac{1}{OP}P$ に縮めればよい)。
段3(1対1の対応)。空間の領域 $R$ に対し、$R\cap\Sigma$ の2点 $P,Q$ を考える。$R$ は凸なので線分 $PQ$ は $R$ に含まれ、$O$ を通らない($O$ はすべての平面の上にある)。線分の各点を $O$ からの距離で割って $\Sigma$ に移すと、$P$ から $Q$ への $\Sigma$ の上の道ができ、段2によりその道は $R\cap\Sigma$ の中にある。よって $R\cap\Sigma$ は大円を横切らずに行き来でき、球面の1つの領域に含まれる。逆に、球面の1つの領域の2点を大円を横切らずに結ぶ道は、どの平面も横切らないので、空間の1つの領域の中にある。したがって、空間の領域と球面の領域は $R\mapsto R\cap\Sigma$ で1対1に対応し、領域の数は $n^2-n+2$ である。$\square$

1点を通る4枚の平面

原点を通る4枚の平面 $x=0$、$y=0$、$z=0$、$x+y+z=0$ を考える。どの3枚も1本の直線を共有しない(たとえば $x=0$、$y=0$、$x+y+z=0$ の共通部分は原点だけである)。主定理2により領域は $4^2-4+2=14$ 個で、一般の位置の $15$ 個より1つ少ない。
ex-rsp-fourth と比べると、4枚目を $x+y+z=1$ から $x+y+z=0$ に平行移動しただけで、4枚目の平面の上の3本の交線が原点で1点に集まり、平面の上の部分が7つから6つに減る。

一般の位置でない場合

外す条件反例成り立たなくなること
条件 (iii)(4枚が1点を通らない)原点を通る4枚の平面(ex-rsp-point-four)領域は $15$ でなく $14$
条件 (i)(平行でない)$x=0$、$x=1$、$y=0$領域は $8$ でなく $6$。平行な2枚は交線をもたず、条件 (ii) も同時に破れる
条件 (ii)(3枚が1点で交わる):直線を共有1本の直線を共有する3枚(本のページ)領域は $8$ でなく $6$。$n$ 枚では $2n$ 個
条件 (ii):交線が平行三角柱の側面を含む3枚領域は $8$ でなく $7$
表の反例を数える

平面 $x=0$、$x=1$、$y=0$ では、$x$ が $x< 0$、$0< x< 1$、$x>1$ の3通り、$y$ が正か負の2通りで、領域は $3\times2=6$ 個である。
$z$ 軸を共有する $n$ 枚の平面は、$xy$ 平面で見ると原点を通る $n$ 本の直線である。原点を通る $n$ 本の直線は平面を $2n$ 個の角の部分に分けるので、空間の領域も $2n$ 個である。$n=3$ なら $6$ 個である。
3枚の平面の交線がすべて $z$ 軸に平行なとき(三角柱の側面を延ばした3枚)は、$xy$ 平面での切り口が一般の位置にある3本の直線になり、平面の分割の $L(3)=7$ 個がそのまま空間の領域の数になる。

条件 (i) を外す例では、平行な2枚と3枚目が1点で交わらないので、条件 (ii) も一緒に破れている。表の各行の減り方は、新しい平面の上の交線が一般の位置でなくなり、lem-rsp-trace の結論が崩れることから来ている。

大学数学で見る:次元を上げる

表のように、$d$ 次元の空間を一般の位置にある $n$ 枚の超平面($d-1$ 次元の平らな図形)で分けると、領域の数は
$$ \binom n0+\binom n1+\cdots+\binom nd $$
になる。この記事の方法、すなわち「新しい超平面の上には $d-1$ 次元の問題が現れる」という漸化式と、凸性による1対1の対応を次元ごとに繰り返すと、$d=1,2,3$ と同じ形で得られる。ただし「一般の位置」の条件を $d$ 次元で書き直す必要があり、この記事では一般の $d$ の場合を書き下さない。

さらに先へ

rem-rsp-tetra に現れた $1,4,10,20,\ldots$ は、みかんを三角錐の形に積んだときの個数でもある。平面の分割の数を足し上げて空間の分割の数を得たのと同じように、三角形に並べた点の数を足し上げて三角錐の点の数を得る。この数の性質は 角錐数 で扱う。

関連項目

参考文献

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