部分列

同義語:subsequence部分列極限subsequential limit

概要

部分列(subsequence)とは、点列 $(x_n)$ と狭義単調増加な番号の列 $n_0<n_1<n_2<\cdots$ から作った点列 $(x_{n_k})_{k}$ のことであり、元の列から無限個の項を順序を保ったまま取り出したものである。収束列の部分列は同じ極限に収束し、これは番号が無限大に向かうことだけで決まる。ある部分列の極限を部分列極限といい、距離空間では部分列極限全体は閉集合である。列が $x$ に収束することは、どの部分列も $x$ に収束する部分列をもつことと同値であり、極限の候補が一つしかないときの収束の証明に使われる。可算個の有界な実数列からは、対角線論法ですべてを同時に収束させる共通の部分列が取り出せる。

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{div}[0]{\mathbin{÷}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: 点列, 数列の極限, 距離空間, 位相空間

数列 $1,-1,1,-1,\ldots$ は収束しないが、1 つ目・3 つ目・5 つ目…の項だけを取り出すと $1,1,1,\ldots$ となって $1$ に収束し、2 つ目・4 つ目…の項だけなら $-1$ に収束する。このように、数列から無限個の項を順序を保ったまま取り出して作った列を部分列(subsequence)という。
部分列は、解析学で「何かが存在する」ことを示すときの基本の道具である。有界な実数列は収束しないこともあるが、収束する部分列は必ずもつ(Bolzano–Weierstrassの定理)。条件を満たす点の列を作り、収束する部分列を取り出し、その極限が求めるものになる、という議論は、最大値の存在、コンパクト性、関数列の収束など、至るところに現れる。逆向きに、数列が収束することを示すのにも部分列が使える。「どの部分列からも、$x$ に収束する部分列がさらに取り出せる」ならば、数列そのものが $x$ に収束する(thm-subseq-criterion)。本記事では、部分列の定義を確かめたうえで、部分列の極限の集合、この収束の判定法、可算個の数列から共通の部分列を取り出す対角線論法を扱う。

定義

以下、点列 の記事にならい、$\mathbb{N}=\{0,1,2,\ldots\}$ を添字の集合とし、集合 $X$ の点列を写像 $x\colon\mathbb{N}\to X$、$n\mapsto x_n$ とみて $(x_n)$ と書く。

部分列

$(x_n)_{n\in\mathbb{N}}$ を集合 $X$ の点列とする。写像 $\sigma\colon\mathbb{N}\to\mathbb{N}$ が狭義単調増加($k< l$ ならば $\sigma(k)<\sigma(l)$)であるとき、$n_k:=\sigma(k)$ とおいて得られる点列
$$ (x_{n_k})_{k\in\mathbb{N}}=(x_{n_0},x_{n_1},x_{n_2},\ldots),\qquad n_0< n_1< n_2<\cdots $$
すなわち合成写像 $x\circ\sigma\colon\mathbb{N}\to X$ を、$(x_n)$ の部分列という。

部分列の $k$ 番目の項は元の列の $n_k$ 番目の項であり、$k$ は部分列の中での番号、$n_k$ は元の列での番号である。同じ定義は 点列 の記事の定義「部分列の定義」にあり、Leb Definition 2.1.16(p. 58)は添字を $1$ から始めた同じ定義である。

  • 偶数番目 $(x_{2k})$、奇数番目 $(x_{2k+1})$、平方番目 $(x_{k^2})$ は部分列である。選ぶ間隔は一定でなくてよく、いくらまばらでもよい。
  • $N\in\mathbb{N}$ について、最初の $N$ 項を捨てた列 $(x_{k+N})_{k\in\mathbb{N}}$ も部分列である。$\sigma=\mathrm{id}$ とすれば、点列は自分自身の部分列である。
  • 順序を入れ替えた列 $(x_1,x_0,x_3,x_2,\ldots)$ や、同じ項を繰り返した列 $(x_0,x_0,x_1,x_1,\ldots)$ は、一般には部分列でない(点列 の記事の注意「反例:部分列でない並べ替え」)。有限個の項だけを取り出した列も、この定義では部分列と呼ばない。
    部分列について、次の基本的な事実を断らずに使う。いずれも 点列 の記事で証明されている。
  1. 番号は $n_k\geq k$ を満たす。部分列の部分列は、元の列の部分列である(命題「部分列の基本性質」)。
  2. 位相空間 の点列 $(x_n)$ が $x$ に収束するならば、その任意の部分列も $x$ に収束する(命題「収束列の部分列」)。
    部分列は「値の列」ではなく「番号の選び方 $\sigma$ を伴う列」である。定数列 $(c,c,c,\ldots)$ ではどの $\sigma$ を選んでも値の列は同じだが、選び方は異なる。この記事の議論では、値だけでなく番号 $n_k$ を追いかけることが要点になる。

収束が受け継がれる理由

収束列の部分列が同じ極限に収束するのは、$n_k\geq k$ により、部分列の項が元の列の十分後ろから選ばれるからである。証明で使っているのは番号が無限大に向かうことだけであり、狭義単調増加である必要はない。

番号が無限大に向かう取り出し方

$X$ を位相空間、$(x_n)$ を $x\in X$ に収束する $X$ の点列とする。写像 $\psi\colon\mathbb{N}\to\mathbb{N}$ が、任意の $N\in\mathbb{N}$ に対しある $K$ があって $k\geq K$ ならば $\psi(k)\geq N$ となる($\psi(k)\to\infty$)ものならば、$(x_{\psi(k)})_{k\in\mathbb{N}}$ も $x$ に収束する。特に、$\psi$ が全単射(項の並べ替え)の場合もこの条件を満たすので、収束する点列の項を並べ替えた列は同じ極限に収束する。

番号の条件を収束の定義に代入する

$V$ を $x$ の近傍とする。$x_n\to x$ より、$n\geq N$ ならば $x_n\in V$ となる $N$ がある。$\psi(k)\to\infty$ より、$k\geq K$ ならば $\psi(k)\geq N$ となる $K$ があり、このとき $x_{\psi(k)}\in V$ である。よって $x_{\psi(k)}\to x$ である。
$\psi$ が全単射のとき、$N$ に対し集合 $\{k\mid\psi(k)< N\}$ は $\{0,1,\ldots,N-1\}$ の $\psi$ による逆像で、$\psi$ が単射なので高々 $N$ 個の元しかもたない。$K$ をこの集合のどの元よりも大きくとれば、$k\geq K$ で $\psi(k)\geq N$ である。

条件 $\psi(k)\to\infty$ は外せない。$x_n=\frac1{n+1}$ は $0$ に収束するが、$\psi(k)=0$(定数)とすると $x_{\psi(k)}=1$ で、$0$ に収束しない。部分列では $n_k\geq k$ によってこの条件が自動的に満たされる。数列の収束は並べ替えで変わらないが、級数の和は項の並べ替えで変わりうることに注意する。級数の収束は部分和の列の収束であり、項を並べ替えると部分和の列そのものが別の列になるからである(この記事では証明しないが、Leb Example 2.6.4(pp. 103–104)は交代調和級数 $\sum_{n\geq1}\frac{(-1)^{n+1}}n$ の項を並べ替えて和を変える例を与えている)。

部分列の極限

部分列極限

$X$ を位相空間、$(x_n)$ を $X$ の点列とする。$(x_n)$ のある部分列が点 $p\in X$ に収束するとき、$p$ を $(x_n)$ の部分列極限(subsequential limit)という。

収束する点列の部分列極限は、Hausdorff空間(たとえば距離空間)では極限そのもの 1 点だけである(部分列も同じ極限に収束し、Hausdorff 空間では点列の極限は一つに決まるから)。したがって、異なる 2 つの部分列極限をもつ点列は収束しない。$(-1)^n$ の部分列極限は $1$ と $-1$ である。
部分列極限は、番号の「数え方」で特徴づけられる。$p$ の任意の近傍 $V$ について $\{n\in\mathbb{N}\mid x_n\in V\}$ が無限集合であるとき、$p$ を点列 $(x_n)$ の集積点という(集積点 の記事が扱う、値の集合の集積点とは別の概念である)。部分列 $(x_{n_k})$ が $p$ に収束すれば、$p$ の近傍 $V$ は十分大きいすべての $k$ で $x_{n_k}$ を含み、$n_k$ は相異なるので、$p$ は集積点である。逆に、第1可算公理 を満たす空間(距離空間はこれを満たす)では、集積点は部分列極限である(第1可算公理 の記事の命題「点列の集積点は部分列の極限」)。距離空間 $(X,d)$ では、$p$ が部分列極限であることは、任意の $\varepsilon>0$ について $d(x_n,p)<\varepsilon$ となる $n$ が無限個あることと同値である。

部分列極限の集合は閉集合

$(X,d)$ を距離空間、$(x_n)$ を $X$ の点列とし、$S$ を $(x_n)$ の部分列極限全体の集合とする。このとき $S$ は $X$ の閉集合である。

近くの部分列極限の近くに無限個の項がある

$p$ を $S$ の閉包の点とし、$p\in S$ を示す。上の特徴づけにより、任意の $\varepsilon>0$ について $d(x_n,p)<\varepsilon$ となる $n$ が無限個あることを示せばよい。$p$ は $S$ の閉包の点なので、$d(s,p)<\varepsilon/2$ となる $s\in S$ がある。$s$ は部分列極限なので、$d(x_n,s)<\varepsilon/2$ となる $n$ は無限個ある。そのような $n$ ではすべて、三角不等式により $d(x_n,p)\leq d(x_n,s)+d(s,p)<\varepsilon$ である。

すべての点が部分列極限になる列

$[0,1]$ の有理数全体は可算無限集合なので(可算集合)、そのすべての元をちょうど 1 回ずつ項にもつ点列 $(q_n)$ がある。このとき $(q_n)$ の部分列極限全体は $[0,1]$ である。実際、$y\in[0,1]$ と $\varepsilon>0$ について、$(y-\varepsilon,y+\varepsilon)\cap[0,1]$ は無限個の有理数を含み、それぞれが $(q_n)$ にちょうど 1 回現れるので、$\lvert q_n-y\rvert<\varepsilon$ となる $n$ は無限個ある。逆に、$[0,1]$ の外の点 $y$ は部分列極限でない。$[0,1]$ は閉集合で、$[0,1]$ の中の点列の極限は $[0,1]$ に入るからである。値の集合 $\{q_n\}$ は $[0,1]$ の中で疎らに見えても、部分列極限の集合は区間全体になる。同じ考え方で $\mathbb{Q}$ 全体を並べると、すべての実数が部分列極限になる点列が得られる(Leb Exercise 2.1.17、p. 60 はこのような列を求める演習である)。

有界な実数列では、部分列極限の集合は空でない有界閉集合で、その最大値が上極限、最小値が下極限である(上極限と下極限 の記事の定理「有界列の最大・最小集積値」)。

部分列による収束の判定

数列が $x$ に収束しないことは、$x$ から離れた項が無限個あること、すなわち $x$ に近づかない部分列があることである。この言い換えから、次の判定法が得られる。

部分列の部分列による収束の判定

$X$ を位相空間、$(x_n)$ を $X$ の点列、$x\in X$ とする。次は同値である。

  1. $(x_n)$ は $x$ に収束する。
  2. $(x_n)$ の任意の部分列 $(x_{n_k})$ は、$x$ に収束する部分列 $(x_{n_{k_j}})_{j\in\mathbb{N}}$ をもつ。
収束しない列から近づかない部分列を取り出す

1 ⇒ 2:部分列 $(x_{n_k})$ は $x$ に収束するので、自分自身が求める部分列である。
2 ⇒ 1:対偶を示す。$(x_n)$ が $x$ に収束しないとすると、$x$ のある近傍 $V$ について、「$n\geq N$ ならば $x_n\in V$」となる $N$ が存在しない。すなわち、どの $N$ についても $n\geq N$ かつ $x_n\notin V$ となる $n$ があるので、集合 $A:=\{n\in\mathbb{N}\mid x_n\notin V\}$ は無限集合である。$A$ の元を小さい順に $n_0< n_1< n_2<\cdots$ と並べると($n_k$ は $n_{k-1}$ より大きい $A$ の最小の元として決まる)、部分列 $(x_{n_k})$ のすべての項は $V$ の外にある。この部分列のどの部分列も、すべての項が $V$ の外にあるので $x$ に収束しない。よって 2 が成り立たない。

実数列についての同じ主張は Leb Exercise 2.3.11(p. 82)である。2 は「任意の部分列が $x$ に収束する」よりずっと弱い条件に見えるが、同値である。実際の使い方では、何らかのコンパクト性で「収束する部分列がある」ことを保証し、別の理由で「その極限は $x$ しかありえない」ことを示す。

極限の候補が一つしかない場合

$X$ を点列コンパクトな位相空間($X$ の任意の点列が $X$ の点に収束する部分列をもつ)、$(x_n)$ を $X$ の点列、$x\in X$ とする。$(x_n)$ の部分列が点 $y$ に収束するならば $y=x$ である、とする。このとき $(x_n)$ は $x$ に収束する。

点列コンパクト性で部分列の部分列を作る

$(x_{n_k})$ を任意の部分列とする。点列コンパクト性により、$(x_{n_k})$ はある点 $y$ に収束する部分列 $(x_{n_{k_j}})$ をもつ。これは $(x_n)$ の部分列(点列 の記事の命題「部分列の基本性質」)なので、仮定により $y=x$ である。よって thm-subseq-criterion の 2 が成り立ち、$(x_n)$ は $x$ に収束する。

$X$ を有界閉区間 $[-M,M]$ とすれば、Bolzano–Weierstrassの定理 の記事の命題「収束する部分列の極限による判定」(有界な実数列は、収束する部分列の極限がすべて $x$ なら $x$ に収束する)が得られる。点列コンパクト性は外せない。$\mathbb{R}$ の点列 $x_n$ を、$n$ が偶数なら $0$、奇数なら $n$ と定めると、収束する部分列は有界なので奇数番目の項を有限個しか含まず、その極限は $0$ だけである。しかし $(x_n)$ は収束しない。$\mathbb{R}$ は点列コンパクトでない(同じ例は同記事の命題の直後にもある)。

グラフが閉じた有界関数は連続

$f\colon[a,b]\to\mathbb{R}$ が有界($\lvert f\rvert\leq M$)で、グラフ $\Gamma:=\{(t,f(t))\mid t\in[a,b]\}$ が $\mathbb{R}^2$ の閉集合であるとする。このとき $f$ は連続である。$t_n\to t$($t_n,t\in[a,b]$)とし、$f(t_n)\to f(t)$ を示す。点列 $(f(t_n))$ は $[-M,M]$ の中にあり、$[-M,M]$ は点列コンパクトである(Bolzano–Weierstrassの定理 の記事の系「有界閉集合の点列コンパクト性」)。その部分列 $f(t_{n_k})$ が $y$ に収束したとすると、$(t_{n_k},f(t_{n_k}))\in\Gamma$ は $(t,y)$ に収束し、$\Gamma$ は閉集合なので $(t,y)\in\Gamma$、すなわち $y=f(t)$ である。cor-subseq-unique-limit により $f(t_n)\to f(t)$ である。有界性は外せない。$f(0)=0$、$t\neq0$ で $f(t)=\frac1t$ と定めた $[-1,1]$ 上の関数は、$0$ で連続でないが、グラフは閉集合である。実際、グラフの点 $(t_n,f(t_n))$ が $(t,y)$ に収束したとする。$t\neq0$ なら $f$ は $t$ の近くで連続なので $y=\frac1t=f(t)$ である。$t=0$ のとき、$t_n\neq0$ となる $n$ が無限個あれば、その部分列で $\lvert f(t_n)\rvert=\frac1{\lvert t_n\rvert}\to\infty$ となって $f(t_n)\to y$ に反するので、$t_n=0$ となる $n$ が有限個を除くすべてであり、$y=0=f(0)$ である。どちらの場合も $(t,y)$ はグラフの点である。この $f$ は有界でないので、$(f(t_n))$ から収束する部分列を取り出す段が使えない。

対角線論法:共通の部分列

有界な実数列が 1 つなら Bolzano–Weierstrass の定理で収束する部分列が取れる。有限個の有界な実数列 $(a^{(0)}_n),\ldots,(a^{(m)}_n)$ についても、まず $(a^{(0)}_n)$ が収束する部分列をとり、その番号の中から $(a^{(1)}_n)$ が収束する部分列をとり、と $m+1$ 回繰り返せば、すべてが同時に収束する共通の番号の列が得られる(部分列の部分列は部分列であり、収束列の部分列は収束する)。可算無限個の列では、この繰り返しは終わらない。それでも、各段の $k$ 番目の番号を拾う「対角線」の番号の列を作ると、共通の部分列が得られる。

対角線論法による共通の部分列

各 $i\in\mathbb{N}$ について、$(a^{(i)}_n)_{n\in\mathbb{N}}$ を有界な実数列とする。このとき狭義単調増加な番号の列 $n_0< n_1< n_2<\cdots$ で、すべての $i$ について $(a^{(i)}_{n_k})_{k\in\mathbb{N}}$ が収束するものが存在する。

段ごとに部分列を取り直し、対角線の番号を拾う

段 1(入れ子の部分列).狭義単調増加な写像 $\sigma_i\colon\mathbb{N}\to\mathbb{N}$ を $i$ について帰納的に定める。Bolzano–Weierstrassの定理 により、有界な列 $(a^{(0)}_n)$ は収束する部分列をもつので、$(a^{(0)}_{\sigma_0(k)})_k$ が収束する $\sigma_0$ をとる。$\sigma_{i-1}$ まで定まったとき、列 $(a^{(i)}_{\sigma_{i-1}(k)})_k$ は有界なので、収束する部分列をもつ。すなわち狭義単調増加な $\tau_i$ があって $(a^{(i)}_{\sigma_{i-1}(\tau_i(k))})_k$ が収束する。$\sigma_i:=\sigma_{i-1}\circ\tau_i$ とおく。こうして、$i\geq1$ について $\sigma_i=\sigma_{i-1}\circ\tau_i$ で、$(a^{(i)}_{\sigma_i(k)})_k$ が収束する列 $\sigma_0,\sigma_1,\ldots$ が得られる。
段 2(対角線).$n_k:=\sigma_k(k)$ とおく。$\tau_{k+1}(k+1)\geq k+1$(狭義単調増加な $\mathbb{N}\to\mathbb{N}$ の写像の性質、点列 の記事の命題「部分列の基本性質」)と、$\sigma_k$ が狭義単調増加であることから
$$ n_{k+1}=\sigma_k\bigl(\tau_{k+1}(k+1)\bigr)\geq\sigma_k(k+1)>\sigma_k(k)=n_k $$
であり、$(n_k)$ は狭義単調増加である。
段 3(各列の収束).$i$ を固定する。$k\geq i$ について $\rho(k):=\bigl(\tau_{i+1}\circ\cdots\circ\tau_k\bigr)(k)$ とおく($k=i$ のときは $\rho(i):=i$)。すると $\sigma_k=\sigma_i\circ\tau_{i+1}\circ\cdots\circ\tau_k$ なので $n_k=\sigma_i(\rho(k))$ である。段 2 と同じ計算で、$\rho(k+1)=\bigl(\tau_{i+1}\circ\cdots\circ\tau_k\bigr)\bigl(\tau_{k+1}(k+1)\bigr)\geq\bigl(\tau_{i+1}\circ\cdots\circ\tau_k\bigr)(k+1)>\rho(k)$ なので、$k\mapsto\rho(k)$($k\geq i$)は狭義単調増加である。したがって $(a^{(i)}_{n_k})_{k\geq i}=(a^{(i)}_{\sigma_i(\rho(k))})_{k\geq i}$ は、収束列 $(a^{(i)}_{\sigma_i(m)})_m$ の部分列(を $k=i$ から番号付けたもの)であり、同じ極限に収束する。最初の $i$ 項を加えても収束は変わらないので、$(a^{(i)}_{n_k})_{k\in\mathbb{N}}$ は収束する。

各段で「収束する部分列」を 1 つ選ぶところは、Bolzano–Weierstrass の定理の証明が番号を「条件を満たす最小のもの」として規則で決めているので、その規則に従えば選択公理を使わずに済む(Bolzano–Weierstrassの定理 の記事の注意「選択公理との関係」)。この論法は、対角線論法 の記事の補足で触れている「対角線部分列の方法」である。定理は関数列について次のように言い換えられる。

可算集合上の関数列

$D$ を可算集合、$f_n\colon D\to\mathbb{R}$($n\in\mathbb{N}$)を各点で有界な関数列(各 $x\in D$ について $(f_n(x))_n$ が有界)とする。$D=\{x_0,x_1,x_2,\ldots\}$ と番号を付け、$a^{(i)}_n:=f_n(x_i)$ として thm-subseq-diagonal を使うと、部分列 $(f_{n_k})$ で、$D$ のすべての点で $(f_{n_k}(x))_k$ が収束するものが得られる($D$ が有限集合なら、同じ論法を有限回で止めればよい)。Leb26 Proposition 11.6.5(pp. 172–173)は複素数値の関数列についてこの主張と同じ証明を与え、同じ節の Arzelà–Ascoli の定理(Theorem 11.6.9、pp. 174–175)の証明で、稠密な可算部分集合の上で各点収束する部分列を取り出す段に使っている。

定義域が可算でなければ、各点で有界な関数列でも、各点で収束する部分列をもつとは限らない。

反例:非可算集合上の関数列

$x\in[0,1)$ の 2 進展開 $x=\sum_{m\geq1}d_m(x)\,2^{-m}$($d_m(x)\in\{0,1\}$、ある番号から先がすべて $1$ になる展開は使わない)をとり、$f_n(x):=d_{n+1}(x)$ とおく。$0\leq f_n\leq1$ なので $(f_n)$ は各点で有界である。任意の部分列 $(f_{n_k})$ について、
$$ x:=\sum_{j\in\mathbb{N}}2^{-(n_{2j}+1)} $$
とおく。この和は 2 進展開で第 $n_0+1,n_2+1,n_4+1,\ldots$ 桁が $1$、ほかの桁が $0$ である数で、第 $n_1+1,n_3+1,\ldots$ 桁が $0$ なので $0$ の桁が無限個あり、$x\in[0,1)$ で上の約束に合う展開である。よって $f_{n_k}(x)$ は $k$ が偶数なら $1$、奇数なら $0$ であり、$(f_{n_k}(x))_k$ は収束しない。「各点で有界」という性質を満たし「各点で収束する部分列をもつ」という性質を満たさない。thm-subseq-diagonal で可算であることは外せない。

反例:仮定を外すと何が崩れるか

外す条件反例成り立たなくなること
番号が無限大に向かう(prop-subseq-reindex)$x_n=\frac1{n+1}$、$\psi(k)=0$取り出した列が $0$ に収束する
極限がすべて同じ $x$(thm-subseq-criterion の 2)$x_n=(-1)^n$列が収束する
点列コンパクト性(cor-subseq-unique-limit)$\mathbb{R}$ の中の $0,1,0,3,0,5,\ldots$列が収束する
有界性(ex-subseq-closed-graph)$f(t)=\frac1t$($t\neq0$)、$f(0)=0$グラフが閉じた関数の連続性
定義域が可算(thm-subseq-diagonal)2 進展開の桁の関数列各点で収束する部分列の存在

2 行目について:$(-1)^n$ の任意の部分列は $1$ か $-1$ に収束する部分列をもつ($1$ の項か $-1$ の項の少なくとも一方は無限個ある)。つまり「どの部分列も何かに収束する部分列をもつ」は満たすが、その極限が部分列ごとに違ってよいので、thm-subseq-criterion の 2(極限は同じ $x$)は満たさず、列は収束しない。他の行の確認は、それぞれの命題の直後と例で述べた。

補足

位相空間では点列が足りない

点列と部分列は、距離空間、より一般に 第1可算公理 を満たす空間では位相を調べるのに十分な道具である。一般の位相空間では点列だけでは足りず、コンパクト空間 でも点列コンパクトとは限らない(点列コンパクト の記事の例「反例:コンパクトだが点列コンパクトでない空間」)。そこでは点列の代わりに、有向集合で番号を付けたネットと、その「部分ネット」が使われる。ネット の記事の定義「部分ネットと集積点」は、番号の付け替え $\varphi$ に「狭義単調増加」ではなく、prop-subseq-reindex の条件 $\psi(k)\to\infty$ にあたる「共終」(どの番号 $d$ に対しても、十分先では $\varphi(e)\geq d$)を課している(部分ネットの定義には流儀の違いがあることも同記事が注意している)。部分列は部分ネットの特別な場合である。

関連項目

参考文献

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