三角関数のグラフと周期(graphs and periods of trigonometric functions)とは、$y=\sin x$ などのグラフが一定の長さごとに同じ形をくり返す性質である。$f(x+T)=f(x)$ がすべての $x$ で成り立つ正の数 $T$ を周期、その最小のものを基本周期という。$\sin x,\cos x$ の基本周期は $2\pi$、$\tan x$ は $\pi$ である。$A\ne0$、$\omega\ne0$ のとき $A\sin(\omega x+\varphi)+B$ の基本周期は $\frac{2\pi}{|\omega|}$、最大値は $B+|A|$、最小値は $B-|A|$ である。相異なる正の数 $a,b$ について $\sin ax+\sin bx$ が周期関数になるのは $a/b$ が有理数のときに限る。
高校では、単位円上の点 $P(\theta)=(\cos\theta,\sin\theta)$ の高さ $\sin\theta$ を、横軸の $\theta$ の位置に描いて $y=\sin\theta$ のグラフを作る(図 1)。角は弧度法で測る。点が単位円を 1 周すると同じ位置に戻るので、グラフは長さ $2\pi$ ごとに同じ形をくり返す。この記事では、このくり返しの長さ(周期)を正確に定義し、$y=A\sin(\omega x+\varphi)+B$ の周期が $\dfrac{2\pi}{|\omega|}$ であることを証明する。さらに、2 つの三角関数の和がいつ周期関数になるかを調べる。
単位円上の点 P(θ) の高さ sin θ を、横軸の θ の位置に描くと y = sin θ のグラフになる
まず、高校の教科書と同じ計算を 3 つ見る。
$x$ を $\dfrac\pi6$ ずつ動かして $\sin x$ の値を並べる($\dfrac{\sqrt3}2=0.866\ldots$)。
| $x$ | $0$ | $\frac\pi6$ | $\frac\pi3$ | $\frac\pi2$ | $\frac{2\pi}3$ | $\frac{5\pi}6$ | $\pi$ | $\frac{7\pi}6$ | $\frac{3\pi}2$ | $\frac{11\pi}6$ | $2\pi$ |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| $\sin x$ | $0$ | $\frac12$ | $\frac{\sqrt3}2$ | $1$ | $\frac{\sqrt3}2$ | $\frac12$ | $0$ | $-\frac12$ | $-1$ | $-\frac12$ | $0$ |
$x=2\pi$ で値は $x=0$ のときと同じ $0$ に戻る。$x=2\pi+\dfrac\pi6$ では $P\left(2\pi+\dfrac\pi6\right)=P\left(\dfrac\pi6\right)$ なので、$\sin\left(2\pi+\dfrac\pi6\right)=\dfrac12$ である。表の値が $2\pi$ ごとにくり返す。
$y=2\sin\left(3x-\dfrac\pi2\right)$ のグラフを、次の 3 段で $y=\sin x$ から作る(図 3)。
$\sin x$ は周期 $2\pi$、$\sin2x$ は周期 $\pi$ をもつ。$2\pi$ は $\pi$ の $2$ 倍なので、$\sin2(x+2\pi)=\sin(2x+4\pi)=\sin2x$ となり、$\sin2x$ も $2\pi$ ごとにくり返す。したがって $f(x)=\sin x+\sin2x$ は $f(x+2\pi)=f(x)$ を満たす。一方、$\pi$ ずらすと $f(x+\pi)=-\sin x+\sin2x$ となり、$x=\dfrac\pi2$ では $f\left(\dfrac{3\pi}2\right)=-1$、$f\left(\dfrac\pi2\right)=1$ で一致しない。$2\pi$ より短いくり返しは本当にないのか。これを ex-tgp-sum-examples で確かめる。
この記事で答える問いは次の 5 つである。
| 高校の計算 | この記事の言葉 | 大学の言葉 |
|---|---|---|
| $\sin(x+2\pi)=\sin x$ | 周期と基本周期(def-tgp-period) | 円周 $\mathbb{R}/2\pi\mathbb{Z}$ 上の関数 |
| $\sin\omega x$ の周期は $\frac{2\pi}{\omega}$ | thm-tgp-general-sine | 変数の 1 次変換と周期の群 |
| $\sin x+\sin2x$ の周期は $2\pi$ | thm-tgp-sum(周期の比が有理数) | Fourier 級数(基本周期の整数分の 1 の波を重ねる) |
| $\sin x+\sin\sqrt2\,x$ はくり返さない | prop-tgp-not-two | 概周期関数、Kronecker の定理 |
$D$ を実数の集合、$f$ を $D$ で定義された関数とし、$T$ を正の実数とする。$D$ が「$x\in D$ なら $x+T\in D$ かつ $x-T\in D$」を満たし、すべての $x\in D$ について
$$
f(x+T)=f(x)
$$
が成り立つとき、$T$ を $f$ の 周期 という。周期をもつ関数を 周期関数 という。$f$ の周期のうち最小のものがあるとき、それを $f$ の 基本周期 という。
高校の教科書で「$f(x)$ の周期」と言うときは、多くの場合この基本周期を指す。この記事では、2 つを区別して「周期」「基本周期」と書く。
周期の性質を 2 つ確かめる。
$f$ を $D$ で定義された関数とする。
方針:周期の定義の等式をくり返し使う。
段 1(1 の証明)。$n$ についての数学的帰納法で示す。$n=1$ では仮定そのものである。$nT$ が周期だとすると、$x\in D$ について $x+nT\in D$ であり、$T$ が周期なので
$$
f\bigl(x+(n+1)T\bigr)=f\bigl((x+nT)+T\bigr)=f(x+nT)=f(x)
$$
である。$D$ の条件($x\pm(n+1)T\in D$)も同じようにくり返しで確かめられる。よって $(n+1)T$ も周期である。
段 2(周期は逆向きにも使える)。$T$ が周期なら、$x\in D$ について $y:=x-T\in D$ であり、$f(y+T)=f(y)$ から $f(x)=f(x-T)$ である。
段 3(2 の証明)。$x\in D$ とする。$T_1$ が周期なので $f(x+T_1)=f(x)$ である。段 2 を $T_2$ と点 $x+T_1$ に使うと $f\bigl((x+T_1)-T_2\bigr)=f(x+T_1)$ である。合わせて $f\bigl(x+(T_1-T_2)\bigr)=f(x)$ である。$T_1-T_2>0$ であり、$D$ の条件も $x\pm T_1\mp T_2$ の形で確かめられるので、$T_1-T_2$ は周期である。$\square$
基本周期があるとき、周期はその整数倍に限られる。これが周期の問題の要になる。
$f$ が基本周期 $T_0$ をもつとする。正の実数 $T$ が $f$ の周期であることと、$T$ が $T_0$ の正の整数倍であることは同値である。
方針:$T$ を $T_0$ で割った余りを作り、余りが $0$ でなければ $T_0$ より小さい周期ができて矛盾することを示す。
段 1(整数倍なら周期)。prop-tgp-period-sum の 1 による。
段 2(割り算)。$T$ を周期とし、$q:=\left\lfloor\dfrac T{T_0}\right\rfloor$ とおく。$q\le\dfrac T{T_0}< q+1$ なので、$r:=T-qT_0$ は $0\le r< T_0$ を満たす。$T\ge T_0$($T_0$ は最小の周期)なので $q\ge1$ である。
段 3(余りは $0$)。$r>0$ と仮定する。$qT_0$ は段 1 により周期で、$T>qT_0$ なので、prop-tgp-period-sum の 2 により $T-qT_0=r$ も周期である。ところが $0< r< T_0$ で、$T_0$ が最小の周期であることに反する。よって $r=0$、つまり $T=qT_0$ である。$\square$
ex-tgp-period-examples の (3) の定数関数のように基本周期がない関数では、prop-tgp-fundamental-multiples は使えない。基本周期がない周期関数の、もっと極端な例を ex-tgp-dirichlet で見る。
以下では、三角関数を単位円で定める。実数 $\theta$ に対し、点 $(1,0)$ から単位円に沿って、$\theta\ge0$ なら反時計回りに、$\theta<0$ なら時計回りに長さ $|\theta|$ だけ進んだ点を $P(\theta)$ とし、$P(\theta)=(\cos\theta,\sin\theta)$ とする。$\cos\theta\ne0$ のとき $\tan\theta=\dfrac{\sin\theta}{\cos\theta}$ である。単位円の周の長さは $2\pi$ である。
実数 $\theta,\psi$ について、$P(\theta)=P(\psi)$ であることと、$\theta-\psi$ が $2\pi$ の整数倍であることは同値である。特に
prop-tgp-full-turn の最初の主張は、「周の長さが $2\pi$ の円の上を進むとき、同じ点に着くのは進んだ長さの差が 1 周の長さの整数倍のとき」ということである。1 は $P(\theta)=(1,0)=P(0)$ の場合、2 は $P(\theta)=(1,0)$ または $(-1,0)=P(\pi)$ の場合、3 は半周進むと原点に関して反対側の点に着くことである。
弧の長さを使ったこの説明は、高校の定義に沿った説明である。弧の長さに頼らずに、微分の性質から $\pi$ を定義して同じ事実を証明する方法は 三角関数はどう定義するか で扱う(定理「余弦の零点・π・周期」)。この記事では prop-tgp-full-turn を証明せず、出発点として使う。
方針:周期であることは prop-tgp-full-turn から出す。短い周期がないことは、周期 $T$ を特別な点に代入して、$T$ が満たすべき条件を導く。
段 1($2\pi$ は $\sin,\cos$ の周期)。$(x+2\pi)-x=2\pi$ は $2\pi$ の $1$ 倍なので、prop-tgp-full-turn により $P(x+2\pi)=P(x)$ である。座標を比べて $\cos(x+2\pi)=\cos x$、$\sin(x+2\pi)=\sin x$ である。
段 2($\cos$ に $2\pi$ より短い周期はない)。$T$ を $\cos$ の周期とする。$x=0$ を代入すると $\cos T=\cos0=1$ である。prop-tgp-full-turn の 1 により $T=2n\pi$($n$ は整数)で、$T>0$ なので $n\ge1$、つまり $T\ge2\pi$ である。
段 3($\sin$ に $2\pi$ より短い周期はない)。$T$ を $\sin$ の周期とする。$x=\dfrac\pi2$ を代入すると $\sin\left(\dfrac\pi2+T\right)=\sin\dfrac\pi2=1$ である。$\cos^2+\sin^2=1$ なので $\cos\left(\dfrac\pi2+T\right)=0$ であり、$P\left(\dfrac\pi2+T\right)=(0,1)=P\left(\dfrac\pi2\right)$ である。prop-tgp-full-turn により $T=\left(\dfrac\pi2+T\right)-\dfrac\pi2$ は $2\pi$ の整数倍で、$T>0$ なので $T\ge2\pi$ である。
段 4($\pi$ は $\tan$ の周期)。定義域 $D=\left\{x:x\ne\dfrac\pi2+n\pi\right\}$ は、$\pi$ を足しても引いても $D$ に移る。prop-tgp-full-turn の 3 により、$x\in D$ について
$$
\tan(x+\pi)=\frac{\sin(x+\pi)}{\cos(x+\pi)}=\frac{-\sin x}{-\cos x}=\tan x
$$
である。
段 5($\tan$ に $\pi$ より短い周期はない)。$T$ を $\tan$ の周期とする。$x=0$ を代入すると $\tan T=\tan0=0$ なので、$\sin T=0$ である。prop-tgp-full-turn の 2 により $T=n\pi$($n$ は整数)で、$T>0$ なので $T\ge\pi$ である。
段 6(まとめ)。段 1〜3 により、$2\pi$ は $\sin,\cos$ の周期のうち最小である。段 4・5 により、$\pi$ は $\tan$ の周期のうち最小である。$\square$
上は y = sin x(実線)と y = cos x(破線)、下は y = tan x。点線 x = π/2 + nπ は tan x の漸近線
図 2 の上のように、$\cos x$ のグラフは $\sin x$ のグラフを $x$ 軸方向に $-\dfrac\pi2$ だけ平行移動したものである。これは $\cos x=\sin\left(x+\dfrac\pi2\right)$ の言いかえで、正弦の加法定理から出る(ex-tgp-cos-shift)。加法定理の形と証明の所在は 加法定理から積和・和積・合成・正接の公式を導く の「出発点:単位円と加法定理」の節にまとめてある。
$\tan x$ のグラフ(図 2 の下)は、$x$ が $\dfrac\pi2$ に左から近づくと限りなく大きくなり、右から近づくと限りなく小さくなる。このように、グラフが限りなく近づく直線 $x=\dfrac\pi2+n\pi$ を 漸近線 という。
$\sin$ の中身を $\omega x+\varphi$ に取り替え、外側で $A$ 倍して $B$ を足す。このとき周期がどう変わるかを、$\sin$ に限らない形で示しておく。
$h$ を実数全体で定義された関数とし、基本周期 $T_0$ をもつとする。実数 $A,\omega,\varphi,B$ は $A\ne0$、$\omega\ne0$ を満たすとし、
$$
g(x):=A\,h(\omega x+\varphi)+B
$$
とおく。正の実数 $T$ が $g$ の周期であることと、$|\omega|T$ が $h$ の周期であることは同値である。特に $g$ の基本周期は $\dfrac{T_0}{|\omega|}$ である。
方針:$g$ の周期の条件を、$u=\omega x+\varphi$ とおいて $h$ の周期の条件に書き直す。
段 1(外側の $A$ 倍と $B$ を外す)。$g(x+T)=g(x)$ は $A\,h\bigl(\omega(x+T)+\varphi\bigr)+B=A\,h(\omega x+\varphi)+B$ である。両辺から $B$ を引いて $A\ne0$ で割ると、これは
$$
h(\omega x+\varphi+\omega T)=h(\omega x+\varphi)
$$
と同値である。
段 2(中身がすべての実数を動く)。$x$ がすべての実数を動くとき、$u=\omega x+\varphi$ もすべての実数を動く。どんな実数 $u$ も $x=\dfrac{u-\varphi}\omega$($\omega\ne0$)とすれば $u=\omega x+\varphi$ と書けるからである。したがって「すべての $x$ で段 1 の等式が成り立つ」ことは「すべての $u$ で $h(u+\omega T)=h(u)$ が成り立つ」ことと同値である。
段 3($\omega$ の符号)。$\omega>0$ なら、段 2 の条件は「$\omega T=|\omega|T$ が $h$ の周期」そのものである。$\omega<0$ なら $\omega T=-|\omega|T$ で、条件は「すべての $u$ で $h(u-|\omega|T)=h(u)$」である。$u=v+|\omega|T$ とおき直すと「すべての $v$ で $h(v)=h(v+|\omega|T)$」となり、これも「$|\omega|T$ が $h$ の周期」と同値である。
段 4(基本周期)。段 1〜3 により、$T$ が $g$ の周期 ⇔ $|\omega|T$ が $h$ の周期 ⇔ $|\omega|T=nT_0$ となる正の整数 $n$ がある(prop-tgp-fundamental-multiples)⇔ $T=\dfrac{nT_0}{|\omega|}$ である。このうち最小のものは $n=1$ の $\dfrac{T_0}{|\omega|}$ である。$\square$
実数 $A,\omega,\varphi,B$ は $A\ne0$、$\omega\ne0$ を満たすとし、$f(x)=A\sin(\omega x+\varphi)+B$ とする。
方針:1 は lem-tgp-linear-change に $h=\sin$ を入れる。2 は $\sin$ のとる値の範囲から出す。3 は式の変形である。
段 1(基本周期)。thm-tgp-basic-periods により $\sin$ の基本周期は $T_0=2\pi$ である。lem-tgp-linear-change により $f$ の基本周期は $\dfrac{2\pi}{|\omega|}$ である。
段 2(値の範囲)。$\sin u$ は $-1\le\sin u\le1$ を満たし、$u=\dfrac\pi2$ で $1$、$u=\dfrac{3\pi}2$ で $-1$ をとる。lem-tgp-linear-change の証明の段 2 のとおり、$u=\omega x+\varphi$ はすべての実数を動くので、$\sin(\omega x+\varphi)$ も $-1$ 以上 $1$ 以下の値をとり、$1$ と $-1$ を実際にとる。$A>0$ なら $A\sin(\omega x+\varphi)$ の最大値は $A$、最小値は $-A$ であり、$A<0$ なら最大値は $-A$、最小値は $A$ である。どちらでも最大値は $|A|$、最小値は $-|A|$ で、$B$ を足して 2 を得る。
段 3(平行移動)。$\omega x+\varphi=\omega\left(x+\dfrac\varphi\omega\right)$ なので、$F(x):=A\sin\omega x+B$ とおくと $f(x)=F\left(x+\dfrac\varphi\omega\right)$ である。点 $(x,y)$ が $y=f(x)$ のグラフ上にあることは、点 $\left(x+\dfrac\varphi\omega,\,y\right)$ が $y=F(x)$ のグラフ上にあることと同じである。したがって $y=f(x)$ のグラフは $y=F(x)$ のグラフを $x$ 軸方向に $-\dfrac\varphi\omega$ 平行移動したものである。
段 4($\cos$ と $\tan$)。$\cos$ の基本周期も $2\pi$ で、$-1\le\cos u\le1$、$\cos0=1$、$\cos\pi=-1$ なので、段 1〜3 は同じように成り立つ。$\tan$ の基本周期は $\pi$ である(thm-tgp-basic-periods)。lem-tgp-linear-change は実数全体で定義された関数についての補題なので、$\tan$ では定義域を確かめ直す。$g(x)=A\tan(\omega x+\varphi)+B$ の定義域 $D_g$ は、$\omega x+\varphi\ne\dfrac\pi2+n\pi$($n$ は整数)となる $x$ 全体である。$x$ を $T$ ずらすと $\omega x+\varphi$ は $\omega T$ ずれるので、「$x\in D_g$ なら $x\pm T\in D_g$」は「$u$ が $\tan$ の定義域に入るなら $u\pm|\omega|T$ も入る」と同値である。特に $T=\dfrac\pi{|\omega|}$ なら $u$ は $\pm\pi$ ずれるだけなので、$D_g$ は $x\pm T$ で $D_g$ に移る。そのうえで、lem-tgp-linear-change の証明の段 1〜4 を、「すべての実数 $x$」を「$D_g$ に入る $x$」に、「すべての実数 $u$」を「$\tan$ の定義域に入る $u$」に読みかえると、同じ計算でそのまま成り立つ($x$ が $D_g$ を動くとき、$u=\omega x+\varphi$ は $\tan$ の定義域全体を動く)。prop-tgp-fundamental-multiples は定義域 $D$ をもつ関数について示してあるので、$\tan$ にも使える。よって基本周期は $\dfrac\pi{|\omega|}$ である。$\square$
$A$ を 振幅、$\dfrac{2\pi}{|\omega|}$ を 周期(基本周期)という。$\varphi$ は、$x=0$ のときの角 $\omega x+\varphi$ の値で、初期位相 と呼ばれることがある。
y = sin x から、横に 1/3 倍(y = sin 3x)→ 右へ π/6 平行移動(y = sin 3(x − π/6))→ 縦に 2 倍として y = 2 sin(3x − π/2) を作る
$y=\sin\left(3x-\dfrac\pi2\right)$ を「$y=\sin3x$ を右へ $\dfrac\pi2$ ずらしたもの」と読むのはよくある間違いである。$x$ を $x-c$ に替えたものが $c$ だけの平行移動なので、$3x-\dfrac\pi2=3\left(x-\dfrac\pi6\right)$ と $3$ でくくってから読む。確かめ方として、$y=\sin3x$ は $x=0$ で $0$ から増え始めるので、$y=\sin\left(3x-\dfrac\pi2\right)$ が $0$ から増え始める点を探すと、$3x-\dfrac\pi2=0$ の $x=\dfrac\pi6$ である。
$a\sin x+b\cos x$ の形の関数も、三角関数の合成の公式で $r\sin(x+\varphi)$($r=\sqrt{a^2+b^2}$)の形に直せば、thm-tgp-general-sine が使える。合成の公式の証明は 加法定理から積和・和積・合成・正接の公式を導く で扱う。
$y=\sin x+\sqrt3\cos x$ は、合成の公式により $y=2\sin\left(x+\dfrac\pi3\right)$ である。実際、加法定理で右辺を展開すると $2\left(\sin x\cdot\dfrac12+\cos x\cdot\dfrac{\sqrt3}2\right)=\sin x+\sqrt3\cos x$ である。thm-tgp-general-sine により、基本周期は $2\pi$、最大値 $2$、最小値 $-2$ である。周期 $2\pi$ の 2 つの関数 $\sin x$ と $\sqrt3\cos x$ を足しても、周期 $2\pi$ の 1 つの波になる。
$f$ は周期 $T_1$、$g$ は周期 $T_2$ をもち、どちらも実数全体で定義されているとする。$\dfrac{T_1}{T_2}=\dfrac pq$($p,q$ は正の整数)ならば、$qT_1=pT_2$ は $f$ と $g$ の両方の周期であり、したがって $f+g$ の周期である。
方針:$qT_1=pT_2$ を確かめ、それぞれの周期の整数倍であることを使う。
段 1。$\dfrac{T_1}{T_2}=\dfrac pq$ の両辺に $qT_2$ を掛けると $qT_1=pT_2$ である。この数を $T$ とおく。
段 2。prop-tgp-period-sum の 1 により、$T=qT_1$ は $f$ の周期、$T=pT_2$ は $g$ の周期である。
段 3。すべての $x$ で $(f+g)(x+T)=f(x+T)+g(x+T)=f(x)+g(x)=(f+g)(x)$ なので、$T$ は $f+g$ の周期である。$\square$
この命題は「和が周期をもつ」ことだけを言っていて、その周期が基本周期であるとは言っていない。基本周期まで決めるには、もう少し調べる必要がある(ex-tgp-lcm-fails)。$\sin ax+\sin bx$ の形なら、次の定理で完全に決まる。
$a,b$ を相異なる正の実数とし、$f(x)=\sin ax+\sin bx$ とする。
方針:$f$ の周期は $f$ の 2 回微分 $f''$ の周期でもある。$f''$ と $f$ を組み合わせて $\sin ax$ と $\sin bx$ を 1 つずつ取り出し、周期が両方の基本周期の整数倍であることを示す。微分は数学 III の範囲である。
段 1(周期は微分しても周期)。$T$ を $f$ の周期とする。すべての $x$ で $f(x+T)=f(x)$ なので、両辺を $x$ で微分すると、合成関数の微分($(x+T)'=1$)により $f'(x+T)=f'(x)$ である。もう一度微分して $f''(x+T)=f''(x)$ である。
段 2(1 つずつ取り出す)。$(\sin ax)''=-a^2\sin ax$、$(\sin bx)''=-b^2\sin bx$ なので
$$
f''(x)+b^2f(x)=(b^2-a^2)\sin ax,\qquad f''(x)+a^2f(x)=(a^2-b^2)\sin bx
$$
である。段 1 により、左辺は $T$ を周期にもつ。$a\ne b$ なので $b^2-a^2\ne0$ で割ってよく、$T$ は $\sin ax$ の周期であり、同じく $\sin bx$ の周期でもある。
段 3(整数倍)。lem-tgp-linear-change により $\sin ax$ の基本周期は $\dfrac{2\pi}a$、$\sin bx$ の基本周期は $\dfrac{2\pi}b$ である。prop-tgp-fundamental-multiples により、正の整数 $m,n$ があって
$$
T=\frac{2\pi m}a=\frac{2\pi n}b
$$
である。これから $\dfrac ab=\dfrac mn$ で、$\dfrac ab$ は有理数である。これで 1 の「⇒」を示した。
段 4(1 の「⇐」)。$\dfrac ab=\dfrac pq$ とすると、$\dfrac{T_1}{T_2}=\dfrac{2\pi/a}{2\pi/b}=\dfrac ba=\dfrac qp$ は有理数なので、prop-tgp-common-period により $f$ は周期 $p\cdot\dfrac{2\pi}a=q\cdot\dfrac{2\pi}b$ をもつ。$\dfrac{2\pi p}a=\dfrac{2\pi q}b$ は $\dfrac ab=\dfrac pq$ から出る。
段 5(基本周期)。$T$ を $f$ の任意の周期とする。段 3 により $T=\dfrac{2\pi m}a$、$\dfrac mn=\dfrac ab=\dfrac pq$ である。$mq=np$ で、$p$ は $mq$ を割り切り、$p$ と $q$ は互いに素なので、$p$ は $m$ を割り切る($p$ の素因数分解に現れる素数の冪は $q$ に含まれないので、すべて $m$ に含まれる。素因数分解がただ 1 通りであることは 素因数分解の一意性 で証明する)。$m=kp$($k$ は正の整数)とすると $T=k\cdot\dfrac{2\pi p}a\ge\dfrac{2\pi p}a$ である。段 4 により $\dfrac{2\pi p}a$ 自身は周期なので、これが最小の周期である。$\square$
上は sin x + sin 2x で、間隔 2π ごとに同じ形がくり返す。下は sin x + sin √2 x で、同じ形がくり返さず、値は 2 に近づくが 2 にはならない
$\dfrac ab$ が無理数のとき、たとえば $\sin x+\sin\sqrt2\,x$ は、thm-tgp-sum により周期関数でない($\sqrt2$ が無理数であることは 実数とは何か:無理数の証明 で証明する)。図 4 の下のように、グラフは似た形を何度も描くが、ぴったり同じ形はくり返さない。
すべての実数 $x$ について $\sin x+\sin\sqrt2\,x<2$ である。
方針:和が $2$ になるのは 2 つの正弦が同時に $1$ になるときに限る。その条件から $\sqrt2$ が有理数になることを導き、矛盾させる。
段 1(同時に 1)。$\sin x\le1$、$\sin\sqrt2\,x\le1$ なので、和は $2$ 以下であり、$2$ になるのは $\sin x=1$ かつ $\sin\sqrt2\,x=1$ のときに限る。
段 2(角の条件)。$\sin\theta=1$ は $P(\theta)=(0,1)=P\left(\dfrac\pi2\right)$ と同じなので、prop-tgp-full-turn により $\theta=\dfrac\pi2+2n\pi$($n$ は整数)と同値である。したがって整数 $m,n$ があって
$$
x=\frac\pi2+2m\pi,\qquad \sqrt2\,x=\frac\pi2+2n\pi
$$
である。
段 3(矛盾)。1 つ目の式を $\sqrt2$ 倍して 2 つ目と比べ、両辺を $\dfrac\pi2$ で割ると $\sqrt2\,(1+4m)=1+4n$ である。$1+4m$ は $4$ で割って $1$ 余る整数なので $0$ でない。よって $\sqrt2=\dfrac{1+4n}{1+4m}$ は有理数になり、$\sqrt2$ が無理数であることに反する。したがって和が $2$ になる $x$ はない。$\square$
$\sin x=1$ となる点 $x_m=\dfrac\pi2+2m\pi$ で $f(x)=\sin x+\sin\sqrt2\,x$ の値を計算すると、$f(x_m)=1+\sin\sqrt2\,x_m$ である。$m=0,1,2,\dots$ と順に計算すると、$m=7$、つまり $x_7=\dfrac\pi2+14\pi=45.553\ldots$ で
$$
f(x_7)=1.99981\ldots
$$
となる(図 4 の下の赤い点)。$m=77$($x=485.37\ldots$)では $1.99992\ldots$ である。値は $2$ にかなり近いが、prop-tgp-not-two により $2$ にはならない。これは有限回の数値計算であり、証明ではない。
| 外した仮定・条件 | 崩れる主張 | ボックス |
|---|---|---|
| $\omega\ne0$ | 基本周期は $\frac{2\pi}{\lvert\omega\rvert}$ | ex-tgp-omega-zero |
| 基本周期があること | 周期は基本周期の整数倍に限る | ex-tgp-dirichlet |
| 周期の比 $\frac ab$ が有理数 | $\sin ax+\sin bx$ は周期関数 | prop-tgp-not-two、ex-tgp-near-two |
| (誤った推測)和の基本周期は、それぞれの基本周期の最小公倍数 | $f+g$ の基本周期は $f,g$ の基本周期の最小公倍数 | ex-tgp-lcm-fails |
| $A\,h(\omega x+\varphi)+B$ の形であること | 基本周期は $h$ の基本周期の $\frac1{\lvert\omega\rvert}$ 倍 | ex-tgp-square |
$\omega=0$ とすると、$y=A\sin(0\cdot x+\varphi)+B=A\sin\varphi+B$ は定数関数である。たとえば $A=2$、$\varphi=\dfrac\pi6$、$B=0$ なら $y=1$ である。定数関数はすべての正の実数を周期にもち、基本周期をもたない(ex-tgp-period-examples の (3))。公式 $\dfrac{2\pi}{|\omega|}$ は $\omega=0$ で意味をもたない。lem-tgp-linear-change の証明の段 2 で「$u=\omega x+\varphi$ がすべての実数を動く」ことを使ったが、$\omega=0$ では $u=\varphi$ の 1 点しか動かないので、この段が成り立たない。
$x$ が有理数なら $1$、無理数なら $0$ となる関数を $D(x)$ とする。
$f(x)=\sin2x+\sin x$、$g(x)=-\sin x$ とする。$f$ の基本周期は thm-tgp-sum により $2\pi$、$g$ の基本周期は $2\pi$ で、最小公倍数も $2\pi$ である。ところが $f(x)+g(x)=\sin2x$ の基本周期は $\pi$ である。足すと打ち消し合う部分があると、周期は短くなりうる。prop-tgp-common-period が「共通の周期がある」ことしか言わないのはこのためである。
$\sin x+\sin\sqrt2\,x$ の値は $2$ にならない(prop-tgp-not-two)。では、$2$ にいくらでも近づくのか。数値計算(ex-tgp-near-two)では $1.9999$ を超える値が見つかる。
方針:$x_m=\dfrac\pi2+2m\pi$ での値を、小数部分の言葉に直す。
段 1。$\sin x_m=1$ なので $f(x_m)=1+\sin\sqrt2\,x_m$ である。$f(x_m)$ が $2$ に近いことは、$\sin\sqrt2\,x_m$ が $1$ に近いこと、つまり角 $\sqrt2\,x_m$ が $\dfrac\pi2+2n\pi$ の形の角に近いことである。
段 2。$\sqrt2\,x_m-\dfrac\pi2=2\pi\left(\sqrt2\,m+\dfrac{\sqrt2-1}4\right)$ である。実際、右辺は $2\sqrt2\,m\pi+\dfrac{(\sqrt2-1)\pi}2$ で、左辺 $\sqrt2\left(\dfrac\pi2+2m\pi\right)-\dfrac\pi2=2\sqrt2\,m\pi+\dfrac{\sqrt2\pi-\pi}2$ に等しい。
段 3。したがって、$c:=\dfrac{\sqrt2-1}4$ として、$\sqrt2\,m+c$ が整数に近いほど、$\sqrt2\,x_m$ は $\dfrac\pi2$ に $2\pi$ の整数倍を足した角に近く、$f(x_m)$ は $2$ に近い。$m=7$ では $\sqrt2\cdot7+c=10.0030\ldots$ で、整数 $10$ に近い。これが ex-tgp-near-two の $f(x_7)=1.99981\ldots$ である。$\square$
段 3 の問いは「$\sqrt2\,m$ の小数部分を、$m$ を選んで好きな値に近づけられるか」である。これは高校数学の範囲では答えにくいが、大学数学では次のように見通せる。
$\alpha$ が無理数のとき、$m\alpha$($m=1,2,3,\dots$)の小数部分は区間 $[0,1)$ のどんな小さな区間にも入る(Kronecker の定理)。これは、小数部分が $[0,1)$ に一様に分布する、つまり $[0,1)$ の中の区間に入る $m$ の割合がその区間の長さに近づくという Weyl の一様分布定理から出る。長さが正の区間に入る割合は正の数に近づくので、その区間に入る $m$ が必ずある。Kronecker の定理も Weyl の一様分布定理も、この記事では証明しない。Weyl の一様分布定理は一様分布の教科書 KN06 で扱われている。この記事では、Kronecker の定理を、上のように Weyl の一様分布定理から出るものとして扱う。Kronecker の定理を $\alpha=\sqrt2$ に使うと、$\sqrt2\,m$ の小数部分を $1-c$ にいくらでも近づけられるので、$\sqrt2\,m+c$ はいくらでも整数に近くなり、$f(x_m)$ はいくらでも $2$ に近くなる。つまり $\sin x+\sin\sqrt2\,x$ の値の上限は $2$ だが、最大値はない。
大学では、このように「ぴったりはくり返さないが、どんなに小さな誤差 $\varepsilon$ を許しても、その誤差の範囲でくり返すずらし幅が、ある長さ $L$($\varepsilon$ によって決まる)のどの区間にも必ず見つかる」関数を 概周期関数 と呼ぶ(定義の正確な形は 概周期関数 で扱う)。周期関数の和 $\sin x+\sin\sqrt2\,x$ は、周期関数ではないが概周期関数の代表例である。
周期 $2\pi$ の関数 $f$ は、$x$ と $x+2\pi$ で同じ値をとるので、実数 $x$ そのものではなく、単位円上の点 $P(x)$ で値が決まる。prop-tgp-full-turn により、$P(x)=P(y)$ は $x-y$ が $2\pi$ の整数倍であることと同じだからである。大学ではこれを、実数から $2\pi$ の整数倍の差を無視した集合 $\mathbb{R}/2\pi\mathbb{Z}$(円周)の上の関数と見る。周期 $T$ の関数 $f$ に対し、$g(x)=f\left(\dfrac{T}{2\pi}x\right)$ とおくと、$g(x+2\pi)=f\left(\dfrac{T}{2\pi}x+T\right)=f\left(\dfrac{T}{2\pi}x\right)=g(x)$ なので、$g$ は周期 $2\pi$ をもつ(lem-tgp-linear-change の証明の段 1〜3 と同じ計算)。
周期 $2\pi$ の関数のうち最も基本的なものが、$\cos nx$、$\sin nx$($n=1,2,3,\dots$)である。thm-tgp-general-sine により、これらの基本周期は $\dfrac{2\pi}n$ で、どれも $2\pi$ を周期にもつ。prop-tgp-common-period により、有限個の和
$$
a_0+\sum_{n=1}^N(a_n\cos nx+b_n\sin nx)
$$
も周期 $2\pi$ をもつ。大学では逆に、周期 $2\pi$ の関数をこの形の無限和(Fourier 級数)で表すことを考える(Leb26b §11.8)。係数 $a_n,b_n$ の求め方は、$\cos mx$ と $\cos nx$ などの積の積分が $0$ になる性質(直交性)から出る。この計算は 三角関数の直交性(高校数学) で扱い、係数の意味は Fourier係数と最良近似 で扱う。一方、$\sin x+\sin\sqrt2\,x$ のように周期が「整数分の 1」にそろわない波の和は、Fourier 級数の枠からはみ出し、rem-tgp-almost-periodic の概周期関数になる。
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