C^r級関数

同義語:C^r function

概要

$C^r$ 級関数($C^r$ function)とは、$r$ 回微分可能で、$r$ 階までの導関数(多変数では $r$ 階までの偏導関数)がすべて連続である関数のことで、$C^0$ 級は連続、$C^\infty$ 級は何回でも微分できることを表す。多変数では、偏導関数による定義と、全微分 $Df$ が $C^{r-1}$ 級であるという帰納的な定義が一致する。$C^r$ 級の関数は和・積・商・合成で閉じ、$r\ge1$ で導関数が $0$ にならない 1 変数の $C^r$ 級関数の逆関数も $C^r$ 級である。連続・微分可能・$C^1$ 級・2 回微分可能・… の包含はどれも真の包含であり、$r$ が有限なら閉区間上の $C^r$ 級関数の空間は導関数まで含めたノルムで Banach 空間になる。

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{div}[0]{\mathbin{÷}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: 導関数, 偏微分, 連続関数

関数が $C^r$ 級であるとは、$r$ 回微分できて、$r$ 階の導関数(多変数なら $r$ 階までの偏導関数)が連続であることをいう。$C^0$ 級は連続、$C^\infty$ 級は何回でも微分できることである。微分可能性そのものは 1 点ごとの性質で、導関数が連続とは限らない(導関数 の例「反例:導関数が連続でない微分可能な関数」)。$C^r$ 級は「微分できる」に「導関数が連続である」を足した条件で、Taylorの定理・逆関数定理・Newton法 の誤差評価や C^r多様体 の定義など、解析学のほとんどの定理の仮定に現れる。
この記事では、1 変数と多変数の定義を述べ、多変数では「偏導関数による定義」と「微分 $Df$ による帰納的な定義」が一致することを示す。次に、$C^r$ 級の関数が和・積・商・合成で閉じていることと、1 変数の逆関数が $C^r$ 級であることを証明する。さらに、$C^r$ 級と $r+1$ 回微分可能と $C^{r+1}$ 級がすべて異なることを例で示し、閉区間上の $C^r$ 級関数の空間が Banach 空間であることを証明する。

定義

1 変数の場合

$I\subset\mathbb{R}$ を 2 点以上を含む区間とする。$I$ の端点が $I$ に属するときは、そこでの微分係数は片側の極限で定める(連鎖律 の定義「区間上の関数の微分可能性」)。

1 変数の $C^r$ 級関数

$f\colon I\to\mathbb{R}$ とする。

  1. $f$ が連続であるとき、$f$ は $C^0$ 級であるという。
  2. 整数 $r\ge1$ について、$f$ が $I$ 上で $r$ 回微分可能で、$r$ 階導関数 $f^{(r)}$ が $I$ 上で連続であるとき、$f$ は $C^r$ 級であるという。
  3. すべての整数 $r\ge0$ について $C^r$ 級であるとき、$f$ は $C^\infty$ 級(滑らか)であるという。
    $I$ 上の $C^r$ 級関数の全体を $C^r(I)$ と書く($0\le r\le\infty$)。値が複素数や $\mathbb{R}^m$ の関数は、実部・虚部や各成分が $C^r$ 級であるときに $C^r$ 級という。

$r\ge1$ のとき、$f^{(k)}$($k< r$)は微分可能なので連続である(導関数 の命題「微分可能ならば連続」)。したがって $C^r$ 級の関数は $0\le k\le r$ のすべての導関数が連続であり、$C^r(I)\supset C^{r+1}(I)$ である。また定義から、$r\ge1$ について
$$ f\in C^r(I)\iff f\text{ は }I\text{ 上で微分可能で }f'\in C^{r-1}(I) $$
である。$C^1$ 級を 連続的微分可能(continuously differentiable)ともいう。

多変数の場合

$U\subset\mathbb{R}^n$ を開集合とする。多変数の $C^r$ 級は 偏微分 の定義「高階の偏導関数と $C^k$ 級」と同じく偏導関数で定める。

多変数の $C^r$ 級写像

$f=(f_1,\dots,f_m)\colon U\to\mathbb{R}^m$ とする。整数 $r\ge1$ について、すべての成分 $f_i$ の $r$ 階までのすべての偏導関数が $U$ 上で存在して連続であるとき、$f$ は $U$ 上 $C^r$ 級であるという。$C^0$ 級は連続であること、$C^\infty$ 級はすべての $r$ で $C^r$ 級であることとする。全体を $C^r(U,\mathbb{R}^m)$、$m=1$ のときは $C^r(U)$ と書く。

$n=1$ で $U$ が開区間なら、偏導関数は導関数なので def-cr-one-variable と一致する。定義から次の言い換えがすぐ分かる。

1 階の偏導関数による言い換え

$r\ge1$ とし、$f\colon U\to\mathbb{R}$ とする。$f\in C^r(U)$ であることと、すべての 1 階偏導関数 $\partial_jf:=\frac{\partial f}{\partial x_j}$($j=1,\dots,n$)が $U$ 上で存在して $C^{r-1}(U)$ に属することは同値である。

$f$ の $1$ 階から $r$ 階までの偏導関数は、ある $j$ について $\partial_jf$ そのものか、$\partial_jf$ の $1$ 階から $r-1$ 階までの偏導関数である。よって、すべての $\partial_jf$ が存在して $C^{r-1}$ 級であることは、$f$ の $1$ 階から $r$ 階までの偏導関数がすべて存在して連続であることと同じである。残るのは $f$ 自身の連続性で、これは 1 階偏導関数が連続なら 偏微分 の定理「偏導関数が連続なら全微分可能」から従う。$\square$

多変数の微分積分では、$C^r$ 級を微分 $Df$ を使って帰納的に定めることも多い(逆関数定理 の定義「微分と $C^k$ 級」)。$Df(x)$ は線形写像 $\mathbb{R}^n\to\mathbb{R}^m$ で、Jacobi行列 によって $m\times n$ 行列と同一視し、$Df$ を $U$ から $\mathbb{R}^{mn}$ への写像とみる。2 つの定義は一致する。

偏導関数による定義と微分による定義の一致

$r\ge1$ とし、$f\colon U\to\mathbb{R}^m$ とする。次は同値である。

  1. $f$ は def-cr-several の意味で $C^r$ 級である。
  2. $f$ は $U$ の各点で全微分可能で、$Df\colon U\to\mathbb{R}^{mn}$ は def-cr-several の意味で $C^{r-1}$ 級である。

写像が $C^{r-1}$ 級であることは各成分が $C^{r-1}$ 級であることなので、成分ごとに見てよい。
2 ⇒ 1:$f$ が全微分可能なら、Jacobi行列 の命題「全微分の行列はJacobi行列」の 1 によりすべての偏導関数が存在し、$Df$ の $(i,j)$ 成分は $\partial_jf_i$ である。仮定から各 $\partial_jf_i$ は $C^{r-1}$ 級であり、lem-cr-first-partials により各 $f_i$ は $C^r$ 級である。
1 ⇒ 2:各 $f_i$ は $C^r$ 級なので、lem-cr-first-partials により $\partial_jf_i$ は存在して $C^{r-1}$ 級、とくに連続である。同じ命題の 2 により $f$ は各点で全微分可能で、$Df$ の成分は $\partial_jf_i$ である。よって $Df$ は $C^{r-1}$ 級である。$\square$

$r=1$ の場合は、$f$ が $C^1$ 級であることと、全微分可能で $Df$ が連続であることの同値であり、Rud76 Theorem 9.21(p. 219)と同じ主張である。thm-cr-two-definitions を $Df$、$D(Df)$、… に繰り返し当てれば、$C^r$ 級であることは $D^kf$($k\le r$)が順に存在して最後の $D^rf$ が連続であることとも言い換えられる。

演算で閉じていること

和・積・商・合成

$C^r$ 級関数の演算

$0\le r\le\infty$ とし、$U\subset\mathbb{R}^n$、$V\subset\mathbb{R}^m$ を開集合とする。

  1. $f,g\in C^r(U)$ と $\lambda\in\mathbb{R}$ について、$f+g$、$\lambda f$、$fg$ は $C^r$ 級である。$U$ の各点で $g\ne0$ なら $1/g$ も $C^r$ 級である。
  2. $f\in C^r(U,\mathbb{R}^m)$ が $f(U)\subset V$ を満たし、$g\in C^r(V,\mathbb{R}^p)$ なら、合成 $g\circ f\colon U\to\mathbb{R}^p$ は $C^r$ 級である。
$r$ についての帰納法

$C^\infty$ 級はすべての有限の $r$ での主張から従うので、有限の $r$ について帰納法で示す。$r=0$ は連続関数の和・積・商・合成が連続であることにほかならない。$r\ge1$ とし、$r-1$ で 1 と 2 が成り立つとする。
1:$f,g$ は $C^1$ 級なので各点で全微分可能であり(偏微分 の定理「偏導関数が連続なら全微分可能」)、$x_j$ 方向の 1 変数の微分法から
$$ \partial_j(f+g)=\partial_jf+\partial_jg,\qquad\partial_j(fg)=(\partial_jf)\,g+f\,(\partial_jg),\qquad\partial_j\Bigl(\frac1g\Bigr)=-\frac{\partial_jg}{g^2} $$
である。$\partial_jf,\partial_jg\in C^{r-1}(U)$(lem-cr-first-partials)、$f,g\in C^r(U)\subset C^{r-1}(U)$ なので、帰納法の仮定($r-1$ での 1)により右辺はどれも $C^{r-1}$ 級である($1/g^2$ は $C^{r-1}$ 級の $g^2$ の逆数)。lem-cr-first-partials により $f+g$、$fg$、$1/g$ は $C^r$ 級である。$\lambda f$ は $\lambda$ を定数関数とみて積に含まれる。
2:成分ごとに見てよいので $p=1$ とする。$f$、$g$ は $C^1$ 級なので全微分可能であり、連鎖律 の定理「多変数の連鎖律」と Jacobi行列 の命題「全微分の行列はJacobi行列」により、$g\circ f$ はすべての偏導関数をもち
$$ \partial_j(g\circ f)=\sum_{k=1}^{m}\bigl((\partial_kg)\circ f\bigr)\,\partial_jf_k $$
である。$\partial_kg\in C^{r-1}(V)$ と $f\in C^{r-1}(U,\mathbb{R}^m)$ に帰納法の仮定($r-1$ での 2)を当てると $(\partial_kg)\circ f\in C^{r-1}(U)$ であり、$\partial_jf_k\in C^{r-1}(U)$ なので、$r-1$ での 1 により右辺は $C^{r-1}$ 級である。lem-cr-first-partials により $g\circ f$ は $C^r$ 級である。$\square$

1 変数では、$U$、$V$ を開区間に限らず 2 点以上を含む任意の区間に替えても thm-cr-operations は成り立つ。証明は同じで、偏導関数の代わりに区間上の導関数(端点では片側)を使い、合成には 連鎖律 の定理「連鎖律」を使う。

$C^\infty$ 級の関数

座標関数 $x\mapsto x_j$ と定数関数は $C^\infty$ 級なので、thm-cr-operations の 1 により多項式は $C^\infty$ 級であり、分母が $0$ にならない開集合の上で 有理関数 も $C^\infty$ 級である。$\exp'=\exp$、$\sin'=\cos$、$\cos'=-\sin$ なので、帰納法によって $\exp$・$\sin$・$\cos$ は $\mathbb{R}$ 上 $C^\infty$ 級であり、合成の $e^{-\|x\|^2}$ や $\sin(x_1x_2)$ なども $C^\infty$ 級である。正方行列の逆をとる写像 $A\mapsto A^{-1}$ は、Cramerの公式 により成分が有理関数なので、正則行列の全体の上で $C^\infty$ 級である(逆関数定理 の注意「逆をとる写像の滑らかさ」)。

逆関数

1 変数の逆関数の $C^r$ 級

$1\le r\le\infty$ とし、$I$ を 2 点以上を含む区間、$f\in C^r(I)$ とし、$I$ のすべての点で $f'\ne0$ とする。このとき $f$ は狭義単調で、$J:=f(I)$ は区間であり、逆関数 $g:=f^{-1}\colon J\to I$ は $C^r$ 級で $g'=1/(f'\circ g)$ である。

$f'$ は連続で $0$ にならないので、中間値の定理 により $I$ 上で符号が一定である。よって $f$ は狭義単調であり(平均値の定理 の系「導関数の符号と増減」)、連続な関数の区間の像なので $J$ は区間である。単調関数 の系「狭義単調関数の逆関数の連続性」により $g$ は連続である。連鎖律 の系「逆関数の微分公式」により $g$ は $J$ の各点で微分可能で $g'=1/(f'\circ g)$ である。
$r$ が有限のとき、$0\le k< r$ について $g\in C^k(J)$ なら $g\in C^{k+1}(J)$ であることを示せばよい($k=0$ は上で示した)。$f'\in C^{r-1}(I)$ と $g\in C^k(J)$ に thm-cr-operations の 2($\min\{k,r-1\}=k$ の場合)を当てると $f'\circ g\in C^k(J)$ であり、これは $0$ にならないので同じ定理の 1 により $g'=1/(f'\circ g)\in C^k(J)$ である。よって $g\in C^{k+1}(J)$ である。ここで thm-cr-operations は区間の上の形で使った。$r=\infty$ ならすべての有限の $r$ に当てればよい。$\square$

多変数では、$f\in C^r(U,\mathbb{R}^n)$ で $Df(a)$ が正則なら、$a$ の近くで $f$ の逆写像が存在して $C^r$ 級になる。これが 逆関数定理 の定理「逆関数定理」であり、その 3 の証明は上の帰納法と同じく $Dg=\mathrm{inv}\circ Df\circ g$ と thm-cr-operations による。

階級がすべて異なること

$I$ 上で $r$ 回微分可能な関数の全体を $D^r(I)$ と書くと、定義から
$$ C^0(I)\supset D^1(I)\supset C^1(I)\supset D^2(I)\supset C^2(I)\supset\cdots\supset C^\infty(I) $$
である。次の命題は、この包含がどれも真の包含であることを示す。

階級を分ける関数

整数 $r\ge0$ について次が成り立つ。

  1. $g_r(x):=x^r|x|$ は $\mathbb{R}$ 上 $C^r$ 級であるが、$0$ で $r+1$ 回微分可能でない。
  2. $\varphi(x):=x^2\sin\frac1x$($x\ne0$)、$\varphi(0):=0$ とし、$F_0:=\varphi$、$F_k(x):=\int_0^xF_{k-1}(t)\,dt$($k\ge1$)とおく。$F_r$ は $\mathbb{R}$ 上で $r+1$ 回微分可能であるが、$C^{r+1}$ 級でない。

1:$r\ge1$ について $g_r'=(r+1)g_{r-1}$ を示す。$x>0$ では $g_r(x)=x^{r+1}$、$x< 0$ では $g_r(x)=-x^{r+1}$ なので、$x\ne0$ で $g_r'(x)=\pm(r+1)x^r=(r+1)x^{r-1}|x|$ である。$0$ では差分商が $\frac{g_r(x)}{x}=x^{r-1}|x|\to0$($r\ge1$)なので $g_r'(0)=0=(r+1)g_{r-1}(0)$ である。これを繰り返すと $g_r^{(r)}=(r+1)!\,g_0=(r+1)!\,|x|$ であり、これは連続だが $0$ で微分可能でない(導関数 の例「反例:連続だが微分可能でない関数」)。よって $g_r$ は $C^r$ 級で、$0$ で $r+1$ 回微分可能でない。
2:$\varphi$ は連続($|\varphi(x)|\le x^2$)なので、微分積分学の基本定理 の系「連続関数の原始関数」により $F_1$ は $\mathbb{R}$ 上で微分可能で $F_1'=\varphi$ であり、とくに $F_1$ は連続である。帰納的に、各 $F_k$ は微分可能で $F_k'=F_{k-1}$ である。よって $F_r^{(r)}=\varphi$ である。導関数 の例「反例:導関数が連続でない微分可能な関数」により $\varphi$ は $\mathbb{R}$ 上で微分可能だが $\varphi'$ は $0$ で連続でない。したがって $F_r$ は $r+1$ 回微分可能で、$F_r^{(r+1)}=\varphi'$ は連続でない。$\square$

$C^\infty$ 級より強い条件として、各点の近くで収束する冪級数の和として表される 実解析的 な関数($C^\omega$ 級)がある。$C^\infty$ 級だが実解析的でない関数の例は、Taylorの定理 の命題「何回でも微分できて導関数がすべて0になる関数」の $e^{-1/x^2}$ である(同じ記事の例「反例:Taylor級数が収束しても元の関数に一致しない」)。この関数は 隆起関数 を作る材料になる。

類次の類に入らない例理由
$C^0$$\lvert x\rvert$$0$ で微分可能でない
$D^1$$x^2\sin\frac1x$導関数が $0$ で連続でない(prop-cr-strict の 2、$r=0$)
$C^1$$x\lvert x\rvert$導関数 $2\lvert x\rvert$ が $0$ で微分可能でない(prop-cr-strict の 1、$r=1$)
$D^{r+1}$$F_r$$r+1$ 回微分可能で、$F_r^{(r+1)}$ が連続でない
$C^\infty$$e^{-1/x^2}$($0$ で $0$)$0$ の近くで Taylor 級数の和にならない

閉区間上の $C^r$ 級関数の空間

$a< b$ とし、$r\ge0$ を整数とする。$f\in C^r([a,b])$ について
$$ \|f\|_{C^r}:=\sum_{k=0}^{r}\sup_{a\le x\le b}|f^{(k)}(x)| $$
とおく。各 $f^{(k)}$ はコンパクトな $[a,b]$ 上の連続関数なので上限は有限であり、$\|\cdot\|_{C^r}$ は $C^r([a,b])$ のノルムである($\|f\|_{C^r}=0$ なら $\sup|f|=0$ である)。$r=0$ では上限ノルムである。

$C^r([a,b])$ の完備性

$(C^r([a,b]),\|\cdot\|_{C^r})$ は Banach空間 である。

導関数ごとの一様収束と積分の式

$(f_n)$ を $\|\cdot\|_{C^r}$ についての Cauchy 列とする。$0\le k\le r$ について $\sup|f_n^{(k)}-f_m^{(k)}|\le\|f_n-f_m\|_{C^r}$ なので、$(f_n^{(k)})_n$ は一様 Cauchy 列であり、連続関数 $h_k$ に一様収束する(Banach空間 の命題「有界連続関数の空間の完備性」)。
$0\le k< r$ とする。$f_n^{(k)}$ は $[a,b]$ 上で微分可能で導関数 $f_n^{(k+1)}$ は連続なので、微分積分学の基本定理 の定理「原始関数による積分の計算」により
$$ f_n^{(k)}(x)=f_n^{(k)}(a)+\int_a^xf_n^{(k+1)}(t)\,dt\qquad(a\le x\le b) $$
である。$n\to\infty$ とすると、左辺と右辺の第 1 項は $h_k(x)$、$h_k(a)$ に収束し、積分は 一様収束 の定理「一様収束と積分の交換」(区間 $[a,x]$ に当てる)により $\int_a^xh_{k+1}(t)\,dt$ に収束する。よって $h_k(x)=h_k(a)+\int_a^xh_{k+1}(t)\,dt$ であり、$h_{k+1}$ は連続なので、微分積分学の基本定理 の系「連続関数の原始関数」により $h_k$ は $[a,b]$ 上で微分可能で $h_k'=h_{k+1}$ である。
これを $k=0,1,\dots,r-1$ に使うと、$h_0$ は $r$ 回微分可能で $h_0^{(k)}=h_k$ であり、$h_r$ は連続なので $h_0\in C^r([a,b])$ である。さらに $\|f_n-h_0\|_{C^r}=\sum_{k\le r}\sup|f_n^{(k)}-h_k|\to0$ である。$\square$

上の証明は、$f_n'$ が一様収束すれば極限が微分可能で導関数が極限に等しいという事実(一様収束 の定理「一様収束と微分の交換」、Rud76 Theorem 7.17、p. 152)を、導関数が連続な場合に積分の式から示したものである。

上限ノルムでは $C^1$ 級は閉じていない

$f_n(x):=\sqrt{x^2+\frac1n}$ は $[-1,1]$ 上 $C^\infty$ 級である(thm-cr-operations の 2)。$0\le f_n(x)-|x|=\frac{1/n}{\sqrt{x^2+1/n}+|x|}\le\frac{1}{\sqrt n}$ なので、$f_n$ は $|x|$ に一様収束するが、$|x|$ は $C^1$ 級でない。したがって $C^1([-1,1])$ は上限ノルムについて完備でない。$f_n'(x)=\frac{x}{\sqrt{x^2+1/n}}$ は $\operatorname{sgn}x$($x=0$ では $0$)に各点収束し、この極限は連続でないので一様収束しない。したがって、$(f_n)$ は $\|\cdot\|_{C^1}$ については Cauchy 列でない。

thm-cr-banach と ex-cr-not-closed は、$C^r$ 級関数を扱うときは導関数まで含めたノルムで近さを測るのが自然であることを示している。$C^\infty([a,b])$ では 1 つのノルムではなくノルムの列 $\|\cdot\|_{C^r}$($r=0,1,2,\dots$)の全体で近さを測る。可算個のノルムや半ノルムで位相を定める空間は Fréchet空間 の記事で扱う。導関数にさらに Hölder 条件を課した空間は Hölder空間 で扱う。

局所性

$C^r$ 級であることは各点の近くだけで決まる性質である。すなわち、$U$ のどの点にも、その点を含む開集合 $W\subset U$ で $f|_W$ が $C^r$ 級になるものがあれば、$f$ は $U$ 上 $C^r$ 級である。偏導関数とその連続性がどちらも各点の近くで決まるからである。逆に、局所的に与えた $C^r$ 級関数を貼り合わせて大域的な $C^r$ 級関数を作るには、$C^\infty$ 級の 隆起関数 や 1の分割 を掛けて足す。多様体の上の $C^r$ 級関数は、座標近傍での局所表示がこの記事の意味で $C^r$ 級であることとして定め、その $r$ は多様体の座標変換の滑らかさを超えられない(C^r多様体 の命題「$C^k$ 級関数は $k\le r$ でしか定まらない」)。

仮定を外すと成り立たなくなること

外す条件反例成り立たなくなること
thm-cr-inverse の「すべての点で $f'\ne0$」$f(x)=x^3$($\mathbb{R}$ 上)逆関数 $x^{1/3}$ は $0$ で微分可能でなく、$C^1$ 級でない
def-cr-several の偏導関数の連続性(存在だけにする)$\frac{xy}{x^2+y^2}$(原点で $0$)原点で連続でなく、$C^0$ 級ですらない(偏微分 の例「反例:偏微分係数があっても連続でない関数」)
thm-cr-banach のノルムの導関数の項(上限ノルムだけにする)ex-cr-not-closed の $\sqrt{x^2+\frac1n}$極限 $\lvert x\rvert$ が $C^1$ 級でなく、完備でない
thm-cr-operations の 2 の内側の写像の階級($C^{r-1}$ 級に下げる)$g(y)=y$、$f(x)=x\lvert x\rvert$ を $r=2$ で$g\circ f=x\lvert x\rvert$ は $C^2$ 級でない

1 行目の $f(x)=x^3$ は $C^\infty$ 級の全単射で、$f'(0)=0$ の 1 点だけで仮定が破れている。$g(y)=y^{1/3}$ は $0$ での差分商 $y^{-2/3}$ が有界でないので微分可能でない。4 行目は、合成の階級が一般には内側と外側の階級の小さいほうまでしか保証されないことを示す最も簡単な例である。

補足

流儀と文献

「滑らか」(smooth)は多くの本で $C^\infty$ 級を指すが、$C^1$ 級や「十分な回数だけ微分可能」の意味で使う本もあるので、文脈で確かめる必要がある。1 変数の $C^1$ 級の定義と記号 $C^1(I)$ は Leb26 §4.2(p. 169)にあり、多変数の $C^1$ 級写像の定義と偏導関数による特徴づけは Rud76 Definition 9.20 と Theorem 9.21(p. 219)にある。thm-cr-operations・thm-cr-inverse・thm-cr-banach の証明は、偏微分・連鎖律・微分積分学の基本定理・一様収束 の定理から組み立てたものである。

関連項目

参考文献

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