Fermatの最終定理

同義語:フェルマーの最終定理Fermatの大定理Fermat's Last Theorem

概要

Fermatの最終定理(Fermat's Last Theorem)とは、$n\ge3$ のとき $x^n+y^n=z^n$ を満たす $0$ でない整数 $x,y,z$ は存在しないという定理である。$n=4$ と奇素数の指数に帰着でき、$n=3,4$ や正則素数の指数、$p$ と $2p+1$ がともに素数のときの $p\nmid xyz$ の場合(Sophie Germain の定理)は初等的または古典的な方法で示される。一般の場合は、解から作る Frey 曲線がモジュラーでないという Ribet の定理と、半安定な楕円曲線はモジュラーであるという Wiles と Taylor–Wiles の定理(1995 年刊行)を合わせて証明された。

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{div}[0]{\mathbin{÷}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: 合同式, 互いに素, 無限降下法, 楕円曲線

$3$ 以上の整数 $n$ について、$x^n+y^n=z^n$ を満たす正の整数 $x,y,z$ は存在しない。この主張を Fermat の最終定理(Fermat's Last Theorem)という。$n=2$ では $3^2+4^2=5^2$ のように解が無数にある(ピタゴラス数)のに対し、指数を $3$ 以上にすると解が 1 つもなくなる、というのが主張である。P. de Fermat は Diophantus の『算術』の自分の本の余白に、この主張と「驚くべき証明を見つけたが、余白が狭すぎて書けない」という書き込みを残し、それは Fermat の死後の 1670 年に息子が刊行した Diophantus の版に収められた(Oes88 p. 165)。
主張は初等的だが、一般の $n$ の証明は 1994 年に A. Wiles が R. Taylor の助けを得て完成させるまで、350 年あまり得られなかった。その証明は、仮に解があればそこから作られる楕円曲線(Frey 曲線)が、楕円曲線とモジュラー形式を結びつける予想(モジュラー形式。谷山豊(Yutaka Taniyama)・志村五郎(Goro Shimura)の予想)に反する、という筋による。この記事では、主張と、指数を $4$ と奇素数に帰着すること、古典的に示された場合の地図、初等的に証明できる Sophie Germain の定理、そして Frey 曲線から Wiles の証明に至る筋道を述べる。最後の筋道に現れる深い定理は、主張と所在を述べるだけで、この記事では証明しない。

主張と言い換え

Fermat の方程式と自明な解

$n\ge1$ を整数とする。方程式 $x^n+y^n=z^n$ を指数 $n$ の Fermat の方程式 という。$xyz=0$ となる整数解を 自明な解、$x,y,z$ がどれも $0$ でない整数解を 自明でない解 という。自明でない解で $\gcd(x,y,z)=1$ のものを 原始的な解 という。

Fermat の最終定理

$n\ge3$ とする。Fermat の方程式 $x^n+y^n=z^n$ は自明でない整数解をもたない。

証明の所在

この定理は、半安定な楕円曲線のモジュラー性を示した Wiles の論文と、その証明の一段を補った Taylor–Wiles の論文(どちらも 1995 年刊行)によって証明された(Sil09 p. 443、Mil21 pp. 209–210)。この記事では証明しない。 証明の構成は節「Frey 曲線と Wiles の証明」で述べる。

方程式は斉次なので、自明でない整数解 $(x,y,z)$ を $z$ で割れば、曲線 $X^n+Y^n=1$ の有理点 $(x/z,\,y/z)$ で $XY\ne0$ のものが得られ、逆に有理点の分母を払えば整数解が得られる。したがって thm-flt-main は「$n\ge3$ のとき、曲線 $X^n+Y^n=1$ の有理点は、$n$ が奇数なら $(1,0),(0,1)$ の 2 点、偶数なら $(\pm1,0),(0,\pm1)$ の 4 点だけである」と言い換えられる(Sil09 Example I.1.3.2、p. 3)。

指数の帰着

指数を 4 と奇素数に帰着する
  1. 指数 $d$ の Fermat の方程式が自明でない整数解をもたなければ、$d$ の倍数 $n$ を指数とする方程式も自明でない整数解をもたない。
  2. $n\ge3$ は $4$ か奇素数で割り切れる。
  3. したがって、thm-flt-main は $n=4$ と、$n$ が奇素数の場合に示せば十分である。
  4. 自明でない整数解があれば、原始的な解がある。また $n$ が奇数のとき、自明でない整数解があれば、正の整数 $x,y,z$ による解がある($n$ が偶数なら符号を取りかえるだけで正にできる)。

1:$n=dk$ とし、$x^n+y^n=z^n$、$xyz\ne0$ とすると、$(x^k)^d+(y^k)^d=(z^k)^d$ で $x^ky^kz^k\ne0$ だから、指数 $d$ の自明でない解が得られる。対偶をとればよい。
2:$n$ が奇素数を素因数にもたなければ $n=2^e$ と書け、$n\ge3$ より $e\ge2$ なので $4\mid n$ である。
3:1 と 2 による。
4:$g=\gcd(x,y,z)$ とすると $g^n$ で割って $(x/g)^n+(y/g)^n=(z/g)^n$ が成り立ち、これは原始的な解である。$n$ が奇数のときは $(-t)^n=-t^n$ なので、負の項を等式の反対側に移せる。$x^n+y^n+(-z)^n=0$ と書き、$u=x$、$v=y$、$w=-z$ とおく。$u,v,w$ が全部同符号になることは和が $0$ でないのでありえず、必要なら全体に $-1$ を掛けて、2 つが正で 1 つが負としてよい。負のものを $w$ とすると $u^n+v^n=\lvert w\rvert^n$ で、$u,v,\lvert w\rvert$ は正である(負のものが $u$ や $v$ のときも、その項を右辺に移して同じ形にする)。$\square$

古典的に示された場合

prop-flt-reduction により、$n=4$ とすべての奇素数 $p$ について示せばよい。Wiles 以前に示されていた主な場合は次のとおりである。

場合方法記事・所在
$n=4$$x^4+y^4=z^2$ に正の整数解がないことを 無限降下法 で示すピタゴラス数と円の有理点 の系「指数が 4 の倍数の Fermat の最終定理」。HW60 Theorem 226(p. 191)
$n=3$Eisenstein 整数 $\mathbb{Z}[\rho]$($\rho$ は 1 の原始 3 乗根)の中での降下HW60 Theorem 227(p. 193)。この記事では証明しない
$p$ が正則素数円分体 $\mathbb{Q}(\zeta_p)$ のイデアルの $p$ 乗根を単項にする(Kummer)正則素数 の定理「正則素数に対するFermatの最終定理」
第一の場合($p\nmid xyz$)で $2p+1$ が素数法 $2p+1$ での $p$ 乗の値を調べるthm-flt-germain

奇素数 $p$ の場合を、解が $p\nmid xyz$ を満たすか(第一の場合)、$p$ が $x,y,z$ のどれかを割るか(第二の場合)で分けて扱うことが多い。$p\nmid xyz$ の条件は、方程式 $x^p+y^p+z^p=0$ の形で書くと $x,y,z$ について対称になる($p$ が奇数なので $z$ を $-z$ に取りかえればよい)。

Sophie Germain の定理

A.-M. Legendre は 1823 年の論文で、補助の素数 $q$ を法とする議論によって第一の場合を示す定理を S. Germain の結果として紹介し、彼女がそれを使って $100$ 未満のすべての奇素数指数で第一の場合を示したことを述べた(Dic05 Chapter XXVI、pp. 734–735。一般の形の定理と証明もそこにある)。ここでは補助の素数が $q=2p+1$ の場合を述べ、証明を完全に書く。証明には次の補題を使う。

$p$ 乗の和の因数分解

$p$ を奇素数、$y,z$ を互いに素な整数とし、
$$ Q(y,z):=\sum_{i=0}^{p-1}(-1)^iy^{p-1-i}z^i $$
とおく。このとき $y^p+z^p=(y+z)\,Q(y,z)$ であり、$Q(y,z)\equiv p\,y^{p-1}\pmod{y+z}$ である。さらに $p\nmid y+z$ なら、$y+z$ と $Q(y,z)$ は互いに素である。

等比数列の和の公式により $(y+z)Q(y,z)=y^p-(-z)^p=y^p+z^p$ である($p$ は奇数)。法 $y+z$ では $z\equiv-y$ なので、各項は $(-1)^iy^{p-1-i}(-y)^i=y^{p-1}$ となり、$Q\equiv py^{p-1}$ である。素数 $r$ が $y+z$ と $Q$ をともに割るとすると、$r\mid py^{p-1}$ である。$r=p$ なら $p\mid y+z$ となり仮定に反するので $r\mid y$ であり、$r\mid y+z$ から $r\mid z$ となって、$y,z$ が互いに素であることに反する。$\square$

Sophie Germain の定理

$p$ を奇素数とし、$q=2p+1$ も素数とする。このとき、$x^p+y^p+z^p=0$ かつ $p\nmid xyz$ を満たす整数 $x,y,z$ は存在しない。とくに、指数 $p$ の Fermat の方程式の第一の場合の解は存在しない。

$100$ 未満では $p=3,5,11,23,29,41,53,83,89$ がこの条件を満たす。

法 $2p+1$ では $p$ 乗は $0,\pm1$ しかない

段 1(互いに素にする).解 $x,y,z$ があったとする。$p\nmid xyz$ なので $xyz\ne0$ である。$g=\gcd(x,y,z)$ で割っても等式と $p\nmid xyz$ は保たれるので、$\gcd(x,y,z)=1$ としてよい。素数 $r$ が 2 つ、たとえば $x,y$ を割れば $r^p\mid z^p$ から $r\mid z$ となるので、$x,y,z$ はどの 2 つも互いに素である。
段 2(法 $q$ での $p$ 乗).$q\nmid t$ なら Fermatの小定理 により $(t^p)^2=t^{q-1}\equiv1\pmod q$ で、$q$ は素数なので $t^p\equiv\pm1\pmod q$ である。したがって整数 $u,v,w$ が $u^p+v^p+w^p\equiv0\pmod q$ を満たせば、$q\mid uvw$ である。実際、そうでなければ左辺は $\pm1$ の 3 つの和で、$\pm1$ か $\pm3$ に合同だが、$q\ge7$ なのでどれも $0$ に合同でない。とくに $q\mid xyz$ であり、方程式と仮定は $x,y,z$ について対称なので、$q\mid x$ としてよい。
段 3($p$ 乗に分ける).$-x^p=y^p+z^p=(y+z)Q(y,z)$ である(lem-flt-germain-factor)。$p\nmid x$ なので $p\nmid y+z$ であり、補題により $y+z$ と $Q(y,z)$ は互いに素である。互いに素な 2 整数の積が $(-x)^p$ という $p$ 乗数なので、素因数分解の一意性により、どちらも符号を除いて $p$ 乗数であり、$p$ が奇数なので符号は $p$ 乗の中に入れられる。よって整数 $a,\alpha$ で $y+z=a^p$、$Q(y,z)=\alpha^p$ となるものがある。$x,y,z$ の役割を取りかえて同じ議論をすると、整数 $b,c$ で $z+x=b^p$、$x+y=c^p$ となるものがある。
段 4($q$ は $a$ を割る).$q\mid x$ なので
$$ b^p+c^p+(-a)^p=(z+x)+(x+y)-(y+z)=2x\equiv0\pmod q $$
であり、段 2 により $q\mid abc$ である。$q\mid b$ なら $q\mid z+x$ と $q\mid x$ から $q\mid z$ となり、$x,z$ が互いに素であることに反する。同様に $q\mid c$ なら $q\mid y$ となり矛盾する。よって $q\mid a$、すなわち $y+z\equiv0\pmod q$ である。
段 5(矛盾).$q\mid y+z$ なので、補題の合同式から $\alpha^p=Q(y,z)\equiv py^{p-1}\pmod q$ である。一方、$q\mid x$ より $y\equiv x+y=c^p\pmod q$ であり、$q\nmid y$($x,y$ は互いに素)なので $q\nmid c$、段 2 より $c^p\equiv\pm1$ である。$p-1$ は偶数なので $y^{p-1}\equiv(\pm1)^{p-1}=1\pmod q$ となり、$\alpha^p\equiv p\pmod q$ を得る。ところが段 2 により $\alpha^p$ は $0,1,-1$ のどれかに合同で、$1< p< 2p=q-1$ なので $p$ はそのどれとも合同でない。これは矛盾である。$\square$

段 2 で使ったのは「法 $q$ で $p$ 乗が $0,\pm1$ の 3 つしかなく、その 3 つの和が $0$ にならない」ことと「$p$ 自身が $p$ 乗の値でない」ことの 2 つで、Dic05 p. 734 の一般形はこの 2 条件を仮定にした形である。

Frey 曲線と Wiles の証明

$p\ge5$ を素数とし、互いに素な $0$ でない整数 $a,b,c$ が $a^p+b^p+c^p=0$ を満たすとする($c$ を $-c$ に取りかえれば Fermat の方程式の原始的な解と同じである)。Y. Hellegouarch と G. Frey は、楕円曲線
$$ E:\ y^2=x\,(x-a^p)\,(x+b^p) $$
を考えた(Oes88 p. 165)。これを Frey 曲線 という。

Frey 曲線の判別式

Weierstrass 方程式 $y^2=(x-e_1)(x-e_2)(x-e_3)$ の判別式は $\Delta=16(e_1-e_2)^2(e_1-e_3)^2(e_2-e_3)^2$ である(Sil09 Proposition III.1.7 の証明、p. 50)。Frey 曲線では $e_1=0$、$e_2=a^p$、$e_3=-b^p$ で、
$$ e_1-e_2=-a^p,\qquad e_1-e_3=b^p,\qquad e_2-e_3=a^p+b^p=-c^p $$
だから $\Delta=16\,(abc)^{2p}\ne0$ であり、$E$ は楕円曲線である。判別式は「ほぼ $2p$ 乗数」で、悪い還元をもつ素数は $abc$ を割る素数(と $2$)に限られる。

$a,b,c$ を並べ替え符号を調整して、$b$ が偶数で $a\equiv-1\pmod 4$ となるようにすると、$E$ の極小判別式は $2^{-8}(abc)^{2p}$、導手は $abc$ を割る素数すべての積になる(Oes88 p. 166)。とくに $E$ は 半安定(どの素数でも乗法的還元か良い還元をもつ。半安定還元)である(Sil09 Remark C.13.6.2、p. 443)。極小判別式がほぼ $2p$ 乗数で、導手に比べて非常に大きいという性質はあまりに特殊に見え、Frey はこのような曲線はモジュラーでありえないと考えた(Oes88 pp. 165–166、Sil09 Remark C.13.6.2、p. 443)。
楕円曲線 $E/\mathbb{Q}$ が モジュラー であるとは、ある正の整数 $N$ について、モジュラー曲線 $X_0(N)$ から $E$ への $\mathbb{Q}$ 上の全射があることをいう(Sil09 p. 442)。同値な言い方として、$E$ の $L$ 関数が重さ $2$ のある新形式の $L$ 関数に等しい、というものがある(Mil21 Definition V.5.3、p. 208)。

Ribet の定理

$p\ge5$ を素数とし、互いに素な $0$ でない整数 $a,b,c$ が $a^p+b^p+c^p=0$ を満たすとする。このとき Frey 曲線 $E$ はモジュラーでない。

Ribet の定理の所在と筋

K. Ribet は 1986 年に、J.-P. Serre が定式化したモジュラーな Galois 表現の水準についての予想の一部を証明して、この定理を得た(Mil21 p. 209 と §V.9 の Theorem 9.4 とその後の議論、p. 224。Oes88 Théorème 1、p. 166)。$E$ の $p$ 等分点への Galois 群の作用は既約で、$2$ と $p$ 以外の素数で不分岐、$p$ で平坦である。$E$ がモジュラーならこの作用もモジュラーで、Ribet の結果によりそれは水準 $2$・重さ $2$ のカスプ形式から来ることになるが、$X_0(2)$ の種数は $0$ なので、そのようなカスプ形式はない、という筋である。この記事では証明しない。

半安定な楕円曲線のモジュラー性(Wiles、Taylor–Wiles)

$\mathbb{Q}$ 上の半安定な楕円曲線はモジュラーである。

モジュラー性定理の所在

これは 1994 年に Wiles が Taylor の助けを得て証明し、1995 年に刊行された(Mil21 pp. 209–210、Sil09 p. 443)。のちに C. Breuil、B. Conrad、F. Diamond、Taylor が半安定の仮定を外し、$\mathbb{Q}$ 上のすべての楕円曲線がモジュラーであること(モジュラー性定理)を 2001 年に示した(Sil09 Theorem C.13.6、p. 442 と p. 443、Mil21 p. 210)。この記事では証明しない。

以上を合わせると thm-flt-main が得られる。$p\ge5$ の素数指数の自明でない解があれば、原始的な解から Frey 曲線が作れ、それは半安定なので thm-flt-wiles によりモジュラーだが、thm-flt-ribet によりモジュラーでない。これは矛盾なので、$p\ge5$ の素数指数では解がない。$n=3,4$ は古典的に示されているので、prop-flt-reduction によりすべての $n\ge3$ で解がない。
$\mathbb{Q}$ 上の楕円曲線がすべてモジュラーであるという予想は、谷山豊(Yutaka Taniyama)が 1955 年の東京・日光の代数的整数論の国際会議で配った問題の中で、数体上の楕円曲線について漠然とした形で問い、志村五郎(Goro Shimura)が有理数体上の楕円曲線についての予想として述べ、A. Weil の 1967 年の論文が導手と水準の一致を含めて広く知らせたものである(Mil21 p. 209 と脚注 13・14、Sil09 Remark C.13.6.1、p. 443)。名前の付け方は文献によって異なり、「志村–谷山予想」「谷山–志村予想」「谷山–Weil 予想」などと呼ばれる。

ほかの方向との関係

  • 有限性.$n\ge4$ では曲線 $x^n+y^n=z^n$ の種数は $\frac{(n-1)(n-2)}2\ge3$ なので、Faltingsの定理 により、各 $n\ge4$ について原始的な解は(符号を除いて)有限個しかない(Oes88 p. 165)。Wiles 以前に知られていた「解は高々有限個」という形の結果で、Faltings の定理からこの有限性を導く証明は Faltingsの定理 の命題「Fermat の方程式の原始的な解の有限性」にある。
  • abc 予想.abc予想 からは、十分大きい指数の Fermat の最終定理が従う(abc予想 の定理「abc 予想から Fermat の最終定理(大きい指数)」)。Szpiro の予想からも同じことが従い、その証明にも Frey 曲線が使われる(Sil09 Proposition VIII.11.2、pp. 256–257)。
  • 合同式では解ける.指数 $m$ を固定すると、十分大きい素数 $p$ について $u^m+v^m\equiv w^m\pmod p$ には $p$ で割れない解がある(Schurの定理(和のない集合) の定理「Fermatの方程式の合同式での可解性」)。したがって、1 つの素数を法として解がないことを示すだけでは、Fermat の最終定理は証明できない。thm-flt-germain でも、法 $q$ で $p$ 乗の値が $0,\pm1$ しかないことだけでは矛盾は出ず、段 3 で $y+z$ と $Q(y,z)$ を互いに素にするのに「$p\nmid xyz$」を使ってはじめて矛盾を生む。

反例

thm-flt-main の条件を 1 つ外すと、主張は成り立たなくなる。

外す条件反例成り立たなくなること
$n\ge3$$n=2$:$3^2+4^2=5^2$自明でない整数解がある
解が整数(有理数)$n=3$、$\mathbb{Z}[\sqrt2]$ の元 $x=18+17\sqrt2$、$y=18-17\sqrt2$、$z=42$$x^3+y^3=z^3$ が成り立ち、$xyz\ne0$
等式(整数としての一致)$n=3$、法 $19$:$1^3+4^3\equiv2^3\pmod{19}$法 $19$ では $19$ で割れない解がある
自明でない解($xyz\ne0$)$1^n+0^n=1^n$自明な解はどの $n$ でもある
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2 行目:$x+y=36$、$xy=18^2-2\cdot17^2=324-578=-254$ なので、$x^3+y^3=(x+y)^3-3xy(x+y)=46656+27432=74088=42^3$ である。$x,y$ は $\mathbb{Q}(\sqrt2)$ の整数環 $\mathbb{Z}[\sqrt2]$ の $0$ でない元で、有理数ではない。

3 行目:$1+64=65=3\cdot19+8$ で $2^3=8$ なので成り立つ。$19\equiv1\pmod 3$ なので法 $19$ の 3 乗の値は $0$ 以外に 6 個しかない($1,7,8,11,12,18$)が、それでも解がある。

関連項目

参考文献

[1]
Joseph H. Silverman, The Arithmetic of Elliptic Curves, 2nd ed., Graduate Texts in Mathematics 106, Springer, 2009, Example I.1.3.2(p. 3)、Proposition III.1.7 の証明(判別式と根の差、p. 50)、Proposition VIII.11.2(pp. 256–257)、Theorem C.13.6(モジュラー性定理、p. 442)、Remark C.13.6.1・C.13.6.2(p. 443)
[3]
Joseph Oesterlé, Nouvelles approches du « théorème » de Fermat, Séminaire Bourbaki (exp. no 694, 1987–88), Astérisque 161–162, 1988, p. 165(Fermat の書き込みと刊行、Faltings の定理からの有限性、Hellegouarch・Frey の曲線)、p. 166(極小判別式 $(abc)^{2p}/256$ と導手、Théorème 1(Ribet))
[4]
G. H. Hardy and E. M. Wright, An Introduction to the Theory of Numbers, 4th ed., Oxford, Clarendon Press, 1960, Chapter XIII:Theorem 226($x^4+y^4=z^2$、p. 191)、Theorem 227($x^3+y^3=z^3$、p. 193)
[5]
Leonard Eugene Dickson, History of the Theory of Numbers, Vol. II: Diophantine Analysis, Dover ed., Dover Publications, 2005, Chapter XXVI(Legendre の 1823 年の論文と Sophie Germain の定理、pp. 734–735)

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