2次曲線と2次形式

同義語:主軸変換2次曲線の分類conics and quadratic formsprincipal axis transformation

概要

2次曲線と2次形式(conics and quadratic forms)とは、2 次曲線 $ax^2+bxy+cy^2+dx+ey+f=0$($(a,b,c)\ne(0,0,0)$)の種類が、主に 2 次形式 $ax^2+bxy+cy^2$ の対称行列 $A=\begin{pmatrix}a&b/2\\b/2&c\end{pmatrix}$ で決まることである。実対称行列は回転行列で対角化でき(主軸変換)、$xy$ の項が消え $\lambda_1X^2+\lambda_2Y^2$($\lambda_i$ は $A$ の固有値)になる。判別式 $D=b^2-4ac=-4\det A$ が負なら楕円・1 点・空集合、正なら双曲線・交わる 2 直線、$0$ なら放物線・平行な 2 直線・1 直線・空集合である。$a>0$ かつ $D<0$ は 2 次形式の正定値性と同値である。

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: 行列, 行列式, 固有値, ベクトルの内積(高校数学), 判別式(高校数学)

高校数学から見た出発点

高校では、$a,b>0$、$p\ne0$ として次の標準形を習う。
$$ \text{楕円 }\ \frac{x^2}{a^2}+\frac{y^2}{b^2}=1,\qquad \text{双曲線 }\ \frac{x^2}{a^2}-\frac{y^2}{b^2}=\pm1,\qquad \text{放物線 }\ y^2=4px $$
($x$ と $y$ を入れ替えたものも含める)。

平方完成で 1 次の項を消す

1 次の項は平方完成で消せる。たとえば
$$ x^2+4y^2-2x+8y+1=0\iff (x-1)^2+4(y+1)^2=4 $$
なので、これは中心 $(1,-1)$ の楕円を平行移動したものである。

回転で $xy$ の項を消す

$xy$ の項があるときは座標を回転する(二次曲線を回転させて考えることは、現在の高校の課程(平成30年告示の学習指導要領)の数学Cの内容には含まれていない。文部科学省『高等学校学習指導要領(平成30年告示)解説 数学編 理数編』p. 121)。たとえば
$$ 5x^2-6xy+5y^2=8 $$
に $x=\frac{X-Y}{\sqrt2}$、$y=\frac{X+Y}{\sqrt2}$(座標軸を $45^\circ$ 回した新しい座標 $X,Y$)を代入すると $2X^2+8Y^2=8$、すなわち $\frac{X^2}4+Y^2=1$ となり、直線 $y=x$ の方向に長軸をもつ楕円だと分かる。

ここから次の問いが浮かぶ。

  1. $45^\circ$ という角はどこから来たのか。→ lem-cqf-rotation、cor-cqf-principal-axes
  2. 一般の $ax^2+bxy+cy^2$ で $xy$ の項を消す回転はいつでも見つかるのか。→ thm-cqf-spectral
  3. $ax^2+bxy+cy^2+dx+ey+f=0$ が楕円・双曲線・放物線のどれになるかは、係数から直接分かるのか。→ thm-cqf-classification、prop-cqf-nondegenerate
    これらは 2 次形式と対称行列の対角化という 1 つの構造で答えられる。具体的な計算と大学の概念の対応は次のとおりである。
    具体的な計算大学の概念ボックス
    $\tan2\theta=\frac b{a-c}$ となる角だけ回す対称行列の固有ベクトルの向き(主軸変換)lem-cqf-rotation、cor-cqf-principal-axes
    回転後の係数(上の例の $2,8$)対称行列の固有値thm-cqf-spectral
    平方完成と平行移動対角化された 2 次形式の標準形thm-cqf-classification
    $b^2-4ac$ の符号で形を見分ける$-4\det A_q$、固有値の符号thm-cqf-classification
    $ax^2+bx+c>0$ がつねに成り立つ条件2 次形式の正定値性prop-cqf-definite

取り出すべき構造

2 次形式・対称行列・2 次曲線
  1. 実数 $a,b,c$ について、$q(x,y)=ax^2+bxy+cy^2$ を(2 変数の実)2 次形式という。$\boldsymbol v=\begin{pmatrix}x\\y\end{pmatrix}$ とし、対称行列(転置 ${}^tA$ が $A$ に等しい正方行列)
    $$ A_q:=\begin{pmatrix}a&b/2\\b/2&c\end{pmatrix} $$
    をとると $q(x,y)={}^t\boldsymbol vA_q\boldsymbol v$ である。$D:=b^2-4ac=-4\det A_q$ を $q$ の判別式という。
  2. ${}^tPP=I$($I$ は単位行列)を満たす実正方行列 $P$ を直交行列という。角 $\theta$ の回転行列 $R_\theta:=\begin{pmatrix}\cos\theta&-\sin\theta\\\sin\theta&\cos\theta\end{pmatrix}$ は直交行列である。
  3. $(a,b,c)\ne(0,0,0)$ のとき、$q(x,y)+dx+ey+f=0$ を満たす点 $(x,y)$ 全体を 2 次曲線という。
  4. 回転と平行移動で標準形 $\frac{X^2}{\alpha^2}+\frac{Y^2}{\beta^2}=1$、$\frac{X^2}{\alpha^2}-\frac{Y^2}{\beta^2}=1$、$Y^2=4pX$($\alpha,\beta>0$、$p\ne0$)に移る図形を、それぞれ楕円・双曲線・放物線という。

$px^2+2rxy+sy^2=q(x,y)$ が恒等的に成り立つなら係数を比べて $p=a$、$r=b/2$、$s=c$ なので、$q$ を表す対称行列は $A_q$ ただ 1 つである。

$x^2+4xy+y^2$ の対称行列と判別式

$q=x^2+4xy+y^2$ では $a=c=1$、$b=4$ なので $A_q=\begin{pmatrix}1&2\\ 2&1\end{pmatrix}$、$\det A_q=1-4=-3$ である。判別式は $D=4^2-4\cdot1\cdot1=12$ で、確かに $-4\det A_q=12$ に等しい。

座標を $\boldsymbol v=P\boldsymbol w$($\boldsymbol w={}^t(X,Y)$)と取り替えると
$$ q(P\boldsymbol w)={}^t\boldsymbol w\,({}^tPA_qP)\,\boldsymbol w $$
であり、${}^tPA_qP$ も対称行列である。$P=R_\theta$ のとき、この取り替えは図形を回転して見ることにあたり、長さや形を変えない。したがって、$xy$ の項を消すことは、${}^tR_\theta A_qR_\theta$ を対角行列にすることである。これが本記事で取り出す構造である。

主定理と証明

回転で $xy$ の項を消す

回転による係数の変化

$\boldsymbol v=R_\theta\boldsymbol w$ により $q(x,y)=a'X^2+b'XY+c'Y^2$ となるとき、
$$ a'=\frac{a+c}2+\frac{a-c}2\cos2\theta+\frac b2\sin2\theta,\qquad b'=b\cos2\theta-(a-c)\sin2\theta,\qquad a'+c'=a+c,\qquad b'^2-4a'c'=b^2-4ac $$
である。特に、$a=c$ なら $\theta=\frac\pi4$、$a\ne c$ なら $\tan2\theta=\frac b{a-c}$ を満たす $\theta$ をとれば $b'=0$ となる。

行列で計算する

$A':={}^tR_\theta A_qR_\theta=\begin{pmatrix}a'&b'/2\\b'/2&c'\end{pmatrix}$ である。$\boldsymbol e_1={}^t(1,0)$、$\boldsymbol e_2={}^t(0,1)$ とおくと $R_\theta\boldsymbol e_1={}^t(\cos\theta,\sin\theta)$、$R_\theta\boldsymbol e_2={}^t(-\sin\theta,\cos\theta)$ なので、
$$ a'={}^t\boldsymbol e_1A'\boldsymbol e_1=q(\cos\theta,\sin\theta)=a\cos^2\theta+b\cos\theta\sin\theta+c\sin^2\theta $$
であり、$\cos^2\theta=\frac{1+\cos2\theta}2$、$\sin^2\theta=\frac{1-\cos2\theta}2$、$\cos\theta\sin\theta=\frac{\sin2\theta}2$ から $a'$ の式を得る。同様に
$$ \frac{b'}2={}^t(R_\theta\boldsymbol e_1)A_q(R_\theta\boldsymbol e_2)=-a\cos\theta\sin\theta+\frac b2(\cos^2\theta-\sin^2\theta)+c\sin\theta\cos\theta $$
から $b'$ の式を得る。$a'+c'$ は $A'$ の対角成分の和(トレース)であり、$\operatorname{tr}({}^tR A R)=\operatorname{tr}(AR\,{}^tR)=\operatorname{tr}A$ から $a+c$ に等しい。$\det R_\theta=1$ なので $\det A'=\det A_q$ であり、$b'^2-4a'c'=-4\det A'=-4\det A_q=b^2-4ac$ である。最後の主張は $b'$ の式から直ちに従う。$\square$

$7x^2+6\sqrt3\,xy+13y^2$ を回す

$a=7$、$b=6\sqrt3$、$c=13$ なので $\tan2\theta=\frac{6\sqrt3}{7-13}=-\sqrt3$ であり、$\theta=-\frac\pi6$ をとる。lem-cqf-rotation の式で $a'=10+(-3)\cdot\frac12+3\sqrt3\cdot\bigl(-\frac{\sqrt3}2\bigr)=4$、$c'=a+c-a'=16$ となり、$q=4X^2+16Y^2$ である。判別式は $b^2-4ac=108-364=-256$ で、$-4\cdot4\cdot16=-256$ と一致する。

$xy$ の項を消すために「$\tan2\theta=\frac b{a-c}$ となる角だけ座標軸を回す」方法(ex-cqf-start-rotation)は、この補題そのものである。以下では、この角が行列の言葉では何なのかを明らかにする。

対称行列の直交対角化

2 次の実対称行列の直交対角化

$A=\begin{pmatrix}p&r\\r&s\end{pmatrix}$ を実対称行列とする。

  1. $A$ の固有値 $\lambda_1,\lambda_2$ はともに実数である。
  2. 回転行列 $P$ で ${}^tPAP=\begin{pmatrix}\lambda_1&0\\ 0&\lambda_2\end{pmatrix}$ となるものがある。$P$ の 2 つの列は、長さ $1$ で互いに直交する $A$ の固有ベクトルである。
  3. 異なる固有値に属する固有ベクトルは直交する。
1 本の固有ベクトルを 90° 回す
  1. 固有多項式は $\det(tI-A)=t^2-(p+s)t+(ps-r^2)$ であり、その判別式は
    $$ (p+s)^2-4(ps-r^2)=(p-s)^2+4r^2\ge0 $$
    なので、2 つの根はともに実数である。
  2. $\lambda_1$ は実数で $\det(\lambda_1I-A)=0$ なので、$(A-\lambda_1I)\boldsymbol u=\boldsymbol0$ となる $\boldsymbol u\ne\boldsymbol0$ が実数の範囲にある。長さで割って $\boldsymbol u_1={}^t(\cos\varphi,\sin\varphi)$ とし、これを $90^\circ$ 回した $\boldsymbol u_2={}^t(-\sin\varphi,\cos\varphi)$ をとる。$A$ が対称なので、内積について
    $$ \boldsymbol u_1\cdot A\boldsymbol u_2=A\boldsymbol u_1\cdot\boldsymbol u_2=\lambda_1\,\boldsymbol u_1\cdot\boldsymbol u_2=0 $$
    である(${}^t\boldsymbol x A\boldsymbol y={}^t(A\boldsymbol x)\boldsymbol y$ を使った)。$\boldsymbol u_1,\boldsymbol u_2$ は長さ $1$ で直交するので、平面のベクトル $\boldsymbol w$ は $\boldsymbol w=(\boldsymbol u_1\cdot\boldsymbol w)\boldsymbol u_1+(\boldsymbol u_2\cdot\boldsymbol w)\boldsymbol u_2$ と書ける。$\boldsymbol w=A\boldsymbol u_2$ とすると $A\boldsymbol u_2=\mu\,\boldsymbol u_2$($\mu:=\boldsymbol u_2\cdot A\boldsymbol u_2$)となり、$\boldsymbol u_2$ も固有ベクトルである。$P:=(\boldsymbol u_1\ \boldsymbol u_2)=R_\varphi$ とおくと $AP=P\begin{pmatrix}\lambda_1&0\\ 0&\mu\end{pmatrix}$、${}^tP=P^{-1}$ なので ${}^tPAP$ は対角行列である。トレースを比べると $\lambda_1+\mu=p+s=\lambda_1+\lambda_2$ なので $\mu=\lambda_2$ である。
  3. $A\boldsymbol x=\lambda\boldsymbol x$、$A\boldsymbol y=\lambda'\boldsymbol y$、$\lambda\ne\lambda'$ なら、$\lambda\,\boldsymbol x\cdot\boldsymbol y=A\boldsymbol x\cdot\boldsymbol y=\boldsymbol x\cdot A\boldsymbol y=\lambda'\,\boldsymbol x\cdot\boldsymbol y$ から $\boldsymbol x\cdot\boldsymbol y=0$ である。$\square$
$\begin{pmatrix}2&1\\ 1&2\end{pmatrix}$ の直交対角化

$A=\begin{pmatrix}2&1\\ 1&2\end{pmatrix}$ の固有多項式は $t^2-4t+3=(t-1)(t-3)$ で、固有値は $3$(固有ベクトル ${}^t(1,1)$)と $1$(固有ベクトル ${}^t(-1,1)$)である。2 つの固有ベクトルは直交している。長さ $1$ にそろえた $P=\frac1{\sqrt2}\begin{pmatrix}1&-1\\ 1&1\end{pmatrix}=R_{\pi/4}$ について ${}^tPAP=\begin{pmatrix}3&0\\ 0&1\end{pmatrix}$ である。

主軸変換

2 次形式 $q(x,y)=ax^2+bxy+cy^2$ は、適当な回転 $\boldsymbol v=R_\varphi\boldsymbol w$ により $\lambda_1X^2+\lambda_2Y^2$ の形になる。ここで $\lambda_1,\lambda_2$ は $A_q$ の固有値であり、
$$ \lambda_1+\lambda_2=a+c,\qquad \lambda_1\lambda_2=\det A_q=ac-\frac{b^2}4=-\frac D4 $$
である。新しい座標軸(主軸)の方向は $A_q$ の固有ベクトルの方向である。

証明は thm-cqf-spectral を $A=A_q$ に適用するだけである。lem-cqf-rotation の角 $\theta$ で $b'=0$ となるとき ${}^tR_\theta A_qR_\theta$ は対角行列なので、$R_\theta$ の列は固有ベクトルである。つまり、lem-cqf-rotation の「$\tan2\theta=\frac b{a-c}$」は、固有ベクトルの向きを求める計算である。

判別式による分類

判別式による 2 次曲線の分類

2 次曲線 $C:\ ax^2+bxy+cy^2+dx+ey+f=0$ の判別式を $D=b^2-4ac$ とする。

  1. $D<0$ なら、$C$ は楕円、1 点、空集合のいずれかである。
  2. $D>0$ なら、$C$ は双曲線、交わる 2 直線のいずれかである。
  3. $D=0$ なら、$C$ は放物線、平行な 2 直線、1 直線、空集合のいずれかである。
回転してから平方完成する

cor-cqf-principal-axes の回転 $\boldsymbol v=R_\varphi\boldsymbol w$ を行うと、1 次の項は 1 次の項に移るので、$C$ は $\lambda_1X^2+\lambda_2Y^2+d'X+e'Y+f=0$ の形になる($d',e'$ は実数)。$\lambda_1\lambda_2=-D/4$ である。
$D\ne0$ の場合を考える。$\lambda_1,\lambda_2\ne0$ なので、$X,Y$ それぞれについて平方完成し、平行移動 $X_1=X+\frac{d'}{2\lambda_1}$、$Y_1=Y+\frac{e'}{2\lambda_2}$ を行うと $\lambda_1X_1^2+\lambda_2Y_1^2=k$($k$ は実数)となる。

  • $D<0$ のとき $\lambda_1,\lambda_2$ は同符号である。両辺に $-1$ を掛けて $\lambda_1,\lambda_2>0$ としてよい。$k>0$ なら $\frac{X_1^2}{k/\lambda_1}+\frac{Y_1^2}{k/\lambda_2}=1$ で楕円、$k=0$ なら 1 点 $X_1=Y_1=0$、$k<0$ なら空集合である。
  • $D>0$ のとき $\lambda_1,\lambda_2$ は異符号である。$k\ne0$ なら、両辺を $k$ で割って(必要なら $X_1,Y_1$ を入れ替える $90^\circ$ の回転をして)$\frac{X_1^2}{\alpha^2}-\frac{Y_1^2}{\beta^2}=1$ の形になり双曲線である。$k=0$ なら $\lambda_1X_1^2=-\lambda_2Y_1^2$ から $Y_1=\pm\sqrt{-\lambda_1/\lambda_2}\,X_1$ で、交わる 2 直線である。
    $D=0$ の場合を考える。$\lambda_1\lambda_2=0$ である。両方 $0$ なら ${}^tR_\varphi A_qR_\varphi$ が零行列で $A_q=O$ となり $(a,b,c)\ne(0,0,0)$ に反するので、ちょうど一方が $0$ であり、$\lambda_1\ne0=\lambda_2$ としてよい。$X_1=X+\frac{d'}{2\lambda_1}$ とおくと $\lambda_1X_1^2+e'Y+f_1=0$($f_1$ は実数)となる。
  • $e'\ne0$ なら $Y_1:=Y+\frac{f_1}{e'}$ として $X_1^2=-\frac{e'}{\lambda_1}Y_1$ となり、$X_1,Y_1$ を入れ替えれば $Y^2=4pX$ の形で、放物線である。
  • $e'=0$ なら $X_1^2=-f_1/\lambda_1$ であり、右辺が正なら平行な 2 直線、$0$ なら 1 直線、負なら空集合である。$\square$

2 次形式の判別式の符号と定値性の関係は 2次形式と2次曲線の判別式 で扱う。
判別式の符号は回転で変わらず(lem-cqf-rotation)、平行移動では 2 次の項が変わらないので、$D$ の符号は図形そのものの性質である。
楕円と「1 点・空集合」、双曲線と「交わる 2 直線」を見分けるには、3 次の対称行列
$$ M:=\begin{pmatrix}a&b/2&d/2\\b/2&c&e/2\\d/2&e/2&f\end{pmatrix} $$
を使う。$C$ の方程式は $(x\ y\ 1)\,M\,{}^t(x\ y\ 1)=0$ と書ける。

退化の判定

thm-cqf-classification の $C$ について、$\det M\ne0$ ならば、$C$ は $D<0$ のとき楕円または空集合、$D>0$ のとき双曲線、$D=0$ のとき放物線である。$\det M=0$ ならば、$C$ は 1 点、直線(交わる 2 直線・平行な 2 直線・1 直線)、空集合のいずれかである。

3 次の行列で平行移動も表す

回転 $R$ と平行移動 ${}^t(t_1,t_2)$ を合わせた座標変換 ${}^t(x,y)=R\,{}^t(X,Y)+{}^t(t_1,t_2)$ は、${}^t(x,y,1)=T\,{}^t(X,Y,1)$、$T=\begin{pmatrix}R&\boldsymbol t\\{}^t\boldsymbol 0&1\end{pmatrix}$($\boldsymbol t={}^t(t_1,t_2)$、$\boldsymbol 0={}^t(0,0)$)と書ける。新しい座標での行列は ${}^tTMT$ であり、$\det T=\det R=1$ なので行列式は変わらない。thm-cqf-classification の証明の最後の形で計算すると、$\lambda_1X^2+\lambda_2Y^2-k=0$ では $\det M=-\lambda_1\lambda_2k$、$\lambda_1X^2+e'Y=0$ では $\det M=-\lambda_1e'^2/4$、$\lambda_1X^2-k=0$ では $\det M=0$ である。よって $\det M\ne0$ となるのは、$D\ne0$ かつ $k\ne0$ の場合と、$D=0$ かつ $e'\ne0$ の場合に限られる。thm-cqf-classification の証明の場合分けと照らし合わせて主張を得る。$\square$

具体的な計算は特別な場合

冒頭の楕円 $5x^2-6xy+5y^2=8$

ex-cqf-start-rotation の $A_q=\begin{pmatrix}5&-3\\-3&5\end{pmatrix}$ の固有値は $2$(固有ベクトル ${}^t(1,1)$)と $8$(固有ベクトル ${}^t(-1,1)$)である。$\lambda_1+\lambda_2=10=a+c$、$\lambda_1\lambda_2=16=-\frac{(-6)^2-4\cdot5\cdot5}4$ となっている。主軸は直線 $y=x$ と $y=-x$ であり、$a=c$ なので lem-cqf-rotation の角は $\frac\pi4$ である。冒頭の $2X^2+8Y^2=8$ の係数 $2,8$ は固有値そのものである。

直角双曲線 $xy=1$

$a=c=0$、$b=1$ で $D=1>0$。$\frac\pi4$ 回すと $xy=\frac{X^2-Y^2}2$ なので $X^2-Y^2=2$ となり、直角双曲線である。固有値は $\pm\frac12$ である。

放物線 $x^2-2xy+y^2-2x-2y=0$

$D=4-4=0$。$X=\frac{x-y}{\sqrt2}$、$Y=\frac{x+y}{\sqrt2}$ とおくと $2X^2-2\sqrt2\,Y=0$、すなわち $Y=\frac{X^2}{\sqrt2}$ で放物線である。prop-cqf-nondegenerate の行列では $\det M=-4\ne0$ である。

平方完成についていえば、$xy$ の項がないとき($b=0$)、$A_q$ はすでに対角行列で、固有値は $a,c$ である。このとき thm-cqf-classification の証明は、高校で行う平方完成と平行移動(ex-cqf-start-complete-square)そのものである。

例と反例

外した仮定崩れる主張ボックス
$\det M\ne0$$D>0$ ならば双曲線ex-cqf-two-lines
$\det M\ne0$(仮定しても空集合は残る)$D<0$ ならば楕円、$D=0$ ならば放物線ex-cqf-point-empty
行列が対称2 次形式の係数は行列の固有値ex-cqf-nonsymmetric
変数変換が回転(直交行列)平方和に直した係数が固有値ex-cqf-nonsymmetric
Hesse 行列の行列式が $0$ でない2 次の項だけで極値を判定できるex-cqf-hessian-degenerate
反例:$D>0$ でも双曲線とは限らない

$x^2-y^2=0$ は $D=4>0$ であるが、$(x-y)(x+y)=0$ なので 2 直線 $y=\pm x$ である。$M=\begin{pmatrix}1&0&0\\ 0&-1&0\\ 0&0&0\end{pmatrix}$ で $\det M=0$ となっており、「$D>0$ ならば双曲線」という含意は、prop-cqf-nondegenerate の条件 $\det M\ne0$ を外すと成り立たない。

反例:$D<0$ でも楕円とは限らない

$x^2+y^2=0$ は $D=-4<0$ であるが原点 1 点であり($\det M=0$)、$x^2+y^2+1=0$ は $D<0$ かつ $\det M=1\ne0$ であるが空集合である。「$D<0$ ならば楕円」という含意は成り立たず、$\det M\ne0$ を仮定しても空集合が残る。$D=0$ の $(x-y)^2=1$ は平行な 2 直線 $x-y=\pm1$ であり($\det M=0$)、放物線ではない。

反例:対称でない行列の固有値は主軸の係数にならない

$x^2+xy+y^2={}^t\boldsymbol v\begin{pmatrix}1&1\\ 0&1\end{pmatrix}\boldsymbol v$ とも書けるが、この行列の固有値は $1$(重複)だけである。一方、対称行列 $A_q=\begin{pmatrix}1&1/2\\ 1/2&1\end{pmatrix}$ の固有値は $\frac12,\frac32$ で、$\frac\pi4$ 回すと $x^2+xy+y^2=\frac32X^2+\frac12Y^2$ となる。cor-cqf-principal-axes の「対称行列」という条件を外すと、「係数は行列の固有値」という結論が破れる。また平方完成 $x^2+xy+y^2=\bigl(x+\frac y2\bigr)^2+\frac34y^2$ の係数 $1,\frac34$ も固有値ではない。この変数変換は回転ではない(直交行列でない)ので形を保たないからである。ただし係数の符号(正が 2 個)は一致する。どんな可逆な 1 次変換で平方和に直しても正・負の係数の個数は変わらないこと(Sylvester の慣性法則)が知られている(本記事では証明しない)。

2 次形式の正定値性と極値判定

正定値・負定値・不定

2 次形式 $q$ が、$(x,y)\ne(0,0)$ のすべてで $q(x,y)>0$ となるとき正定値、$q(x,y)<0$ となるとき負定値という。正の値も負の値もとるとき不定という。

正定値・負定値・不定の例

$x^2+y^2$ は正定値、$-x^2-2y^2$ は負定値である。$x^2-y^2$ は $(1,0)$ で $1$、$(0,1)$ で $-1$ をとるので不定である。$x^2$ は $(0,1)\ne(0,0)$ で値 $0$ をとり、負の値はとらないので、正定値でも負定値でも不定でもない。

正定値性の判定

$q(x,y)=ax^2+bxy+cy^2$ について、次は同値である。

  1. $q$ は正定値である。
  2. $A_q$ の固有値はともに正である。
  3. $a>0$ かつ $D=b^2-4ac<0$ である。
    また、$q$ が不定であることと $D>0$ は同値である。
主軸と平方完成

(1 ⇔ 2) cor-cqf-principal-axes により $q=\lambda_1X^2+\lambda_2Y^2$ であり、回転は $(x,y)\ne(0,0)$ と $(X,Y)\ne(0,0)$ を対応させる。$\lambda_1,\lambda_2>0$ なら $q>0$ である。逆に $q$ が正定値なら $(X,Y)=(1,0),(0,1)$ で $\lambda_1,\lambda_2>0$ である。
(1 ⇔ 3) 恒等式 $4a\,q(x,y)=(2ax+by)^2-Dy^2$ を使う。$a>0$、$D<0$ なら右辺は $0$ 以上で、$0$ になるのは $y=0$ かつ $2ax+by=0$、すなわち $(x,y)=(0,0)$ のときだけなので、$q$ は正定値である。逆に $q$ が正定値なら $a=q(1,0)>0$ であり、$(x,y)=(-b,2a)$ を代入すると $4a\,q=-4a^2D>0$ から $D<0$ である。
(不定 ⇔ $D>0$) $q=\lambda_1X^2+\lambda_2Y^2$ が不定であるのは $\lambda_1\lambda_2<0$、すなわち $D=-4\lambda_1\lambda_2>0$ のときに限る。$\square$

高校の「$a\ne0$ のとき、すべての実数 $x$ で $ax^2+bx+c>0$ となるのは $a>0$ かつ $b^2-4ac<0$ のとき」は、$q(x,1)=ax^2+bx+c$ として prop-cqf-definite を $y=1$ に制限したものである($y\ne0$ なら $q(x,y)=y^2q(x/y,1)$。$y=0$ なら $q(x,0)=ax^2$ であり、すべての $x$ で $ax^2+bx+c>0$ なら、$a\ne0$ のもとで $a>0$ である)。$a\ne0$ は外せない。$q=y^2$ は $q(x,1)=1>0$ だが、$q(1,0)=0$ なので正定値でない。また $D<0$ の 2 次曲線が楕円になるのは、$q$ が正定値か負定値で、曲線 $q=k$ が有界になるからである。

極値判定への応用

2 回連続微分可能な関数 $f(x,y)$ が点 $\boldsymbol p$ で $f_x=f_y=0$ を満たすとする。$\boldsymbol p$ の近くでは
$$ f(\boldsymbol p+\boldsymbol h)\approx f(\boldsymbol p)+\frac12\bigl(f_{xx}h_1^2+2f_{xy}h_1h_2+f_{yy}h_2^2\bigr) $$
であり(2 変数の Taylor の定理)、右辺の 2 次形式(係数行列は Hesse 行列 $H=\begin{pmatrix}f_{xx}&f_{xy}\\f_{xy}&f_{yy}\end{pmatrix}$、値は $\boldsymbol p$ でとる)が正定値なら $f$ は $\boldsymbol p$ で極小、負定値なら極大、不定なら極値をとらない。prop-cqf-definite により、$f_{xx}>0$ かつ $f_{xx}f_{yy}-f_{xy}^2>0$ なら極小である。この判定法は本記事では証明しない(Leb26 演習 8.6.7 に極小の場合の証明の筋道がある。極大は $-f$ に適用すればよい)。

$x^2+xy+y^2-3x$ の極小

$f=x^2+xy+y^2-3x$ は $f_x=2x+y-3=0$、$f_y=x+2y=0$ から $(2,-1)$ が唯一の候補で、$H=\begin{pmatrix}2&1\\ 1&2\end{pmatrix}$ は $f_{xx}=2>0$、$\det H=3>0$ なので正定値であり、極小値 $f(2,-1)=-3$ をとる。

反例:Hesse 行列の行列式が 0 のときは判定できない

$f_1=x^2+y^4$ と $f_2=x^2-y^4$ は、ともに原点で $f_x=f_y=0$、Hesse 行列 $\begin{pmatrix}2&0\\ 0&0\end{pmatrix}$(2 次形式 $2h_1^2$ は正定値でも不定でもない)をもつ。$f_1$ は原点で極小($f_1\ge0=f_1(0,0)$)だが、$f_2$ は $f_2(0,y)=-y^4<0< f_2(x,0)$($x,y\ne0$)なので極値をとらない。$\det H=0$ では、2 次の項だけから極値を判定するという方法が働かない。

1 変数の 2 次関数を平方完成して最大・最小を読む方法は 2次関数の最大・最小 で扱う。

数学オリンピックの問題から

1988 年第 6 問:跳び移りと双曲線

国際数学オリンピック(1988 年)第 6 問

正の整数 $a,b$ について $ab+1$ が $a^2+b^2$ を割り切るならば、$\dfrac{a^2+b^2}{ab+1}$ は整数の平方であることを示せ。
出典:国際数学オリンピック(1988 年)第 6 問 Oly88。筆者による和訳。

高校数学で解く

$k:=\frac{a^2+b^2}{ab+1}$ が平方数でないと仮定する。0 以上の整数の組 $(x,y)$ で
$$ x^2-kxy+y^2=k $$
を満たすもの($(a,b)$ があるので空でない)のうち、$x+y$ が最小のものをとる。方程式は $x,y$ について対称なので、$x\ge y$ としてよい。$y=0$ なら $k=x^2$ となり仮定に反するので $y\ge1$ である。$x$ は $t$ の 2 次方程式 $t^2-ky\,t+(y^2-k)=0$ の根であり、もう一つの根は、解と係数の関係から
$$ x'=ky-x=\frac{y^2-k}{x} $$
である。左の式から $x'$ は整数である。$x'<0$ なら $x'^2-kyx'+y^2-k\ge x'^2+k+y^2-k>0$($-kyx'\ge k$ による)となって根であることに反し、$x'=0$ なら $k=y^2$ で仮定に反する。よって $x'>0$ で、$(x',y)$ も条件を満たす。ところが $x'=\frac{y^2-k}x<\frac{y^2}x\le y\le x$ なので $x'+y< x+y$ となり、最小性に反する。したがって $k$ は平方数である。$\square$

大学数学で見ると

$k=1$ なら結論は明らかであり、$k=2$ となることはない($a^2+b^2=2ab+2$ は $(a-b)^2=2$ となる)ので、$k\ge3$ としてよい。このとき、上の方程式が表す曲線 $H_k$ は、判別式 $D=k^2-4>0$、$\det M=\frac{k(k^2-4)}4\ne0$ なので、prop-cqf-nondegenerate により双曲線である。$x=\frac{u+v}{\sqrt2}$、$y=\frac{u-v}{\sqrt2}$ と $\frac\pi4$ 回すと
$$ \Bigl(1-\frac k2\Bigr)u^2+\Bigl(1+\frac k2\Bigr)v^2=k $$
となり、主軸は直線 $y=x$ と $y=-x$、漸近線は原点を通る 2 直線 $y=\frac{k\pm\sqrt{k^2-4}}2\,x$ である。高校の解法の「もう一つの根に跳ぶ」操作 $(x,y)\mapsto(ky-x,\,y)$ は、点 $(x,y)$ を通る水平な直線と双曲線 $H_k$ のもう一つの交点をとることにあたり、$x$ と $y$ の役割を入れ替えた $(x,y)\mapsto(x,\,kx-y)$ と交互に使うと、第 1 象限の格子点は双曲線の枝に沿って原点に近い側へ降りていく。高校の解法が示したのは、降り切った先が $x$ 軸(または $y$ 軸)との交点 $(\sqrt k,0)$ になることであり、そこが格子点であることが「$k$ が平方数」ということである。たとえば $k=4$ では、$(2,0)$ から逆にたどって $(2,8),(8,30),(30,112),\dots$ が得られる。
判別式の符号の役割も見える。2 つの跳び移りは 2 次形式 $x^2-kxy+y^2$ の値を変えない 1 次の変換であり、それらの合成は行列式 $1$ の行列 $\begin{pmatrix}k^2-1&-k\\k&-1\end{pmatrix}$ で表される。この行列の固有値は $\lambda,\lambda^{-1}$($\lambda+\lambda^{-1}=k^2-2>2$)で、固有ベクトルは漸近線の方向を向いている。曲線が有界な楕円($D<0$)ならこのような無限の列は生じない。双曲線であること($D>0$)が、解が無限に続き、しかも降下で 1 つの代表に帰着できることの幾何学的な背景である。

さらに先へ

  • $n$ 変数の場合:実対称行列は $n$ 次でも直交行列で対角化できる(スペクトル定理。Axl24 の定理 7.29 は、実内積空間の自己共役作用素が正規直交な固有ベクトルの基底をもつことと同値であるという形で述べている。本記事では 2 次の場合だけを証明した)。これにより 3 変数の 2 次曲面(楕円面・双曲面・放物面)も同じように分類され、$n$ 変数関数の極値判定も Hesse 行列の正定値性で述べられる。
  • 無限遠点:$q(x,y)=0$ を満たす方向($(x,y)\ne(0,0)$)の数は、$D>0$ なら 2 本、$D=0$ なら 1 本、$D<0$ なら 0 本である($a\ne0$ なら $at^2+bt+c=0$ の実根の数、$a=0$ でも同様に確かめられる)。これは双曲線の 2 本の漸近線、放物線の軸の方向、楕円が有界であることに対応する。射影平面ではこれらは「無限遠直線と 2 点・1 点・0 点で交わる」同じ種類の曲線とみなされる。
  • 整数係数の 2 次形式:$ax^2+bxy+cy^2$ を整数の変数で考えると、判別式 $b^2-4ac$ ごとに形式を分類する Gauss の理論になる。上の数学オリンピックの問題はその一例であり、$D>0$ で $D$ が平方数でない形式では、解が 1 つあれば無限に続く(Pell 方程式と同じ現象。本記事では証明しない)。

関連項目

参考文献

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