2次曲線と2次形式(conics and quadratic forms)とは、2 次曲線 $ax^2+bxy+cy^2+dx+ey+f=0$($(a,b,c)\ne(0,0,0)$)の種類が、主に 2 次形式 $ax^2+bxy+cy^2$ の対称行列 $A=\begin{pmatrix}a&b/2\\b/2&c\end{pmatrix}$ で決まることである。実対称行列は回転行列で対角化でき(主軸変換)、$xy$ の項が消え $\lambda_1X^2+\lambda_2Y^2$($\lambda_i$ は $A$ の固有値)になる。判別式 $D=b^2-4ac=-4\det A$ が負なら楕円・1 点・空集合、正なら双曲線・交わる 2 直線、$0$ なら放物線・平行な 2 直線・1 直線・空集合である。$a>0$ かつ $D<0$ は 2 次形式の正定値性と同値である。
前提知識: 行列, 行列式, 固有値, ベクトルの内積(高校数学), 判別式(高校数学)
高校では、$a,b>0$、$p\ne0$ として次の標準形を習う。
$$
\text{楕円 }\ \frac{x^2}{a^2}+\frac{y^2}{b^2}=1,\qquad \text{双曲線 }\ \frac{x^2}{a^2}-\frac{y^2}{b^2}=\pm1,\qquad \text{放物線 }\ y^2=4px
$$
($x$ と $y$ を入れ替えたものも含める)。
1 次の項は平方完成で消せる。たとえば
$$
x^2+4y^2-2x+8y+1=0\iff (x-1)^2+4(y+1)^2=4
$$
なので、これは中心 $(1,-1)$ の楕円を平行移動したものである。
$xy$ の項があるときは座標を回転する(二次曲線を回転させて考えることは、現在の高校の課程(平成30年告示の学習指導要領)の数学Cの内容には含まれていない。文部科学省『高等学校学習指導要領(平成30年告示)解説 数学編 理数編』p. 121)。たとえば
$$
5x^2-6xy+5y^2=8
$$
に $x=\frac{X-Y}{\sqrt2}$、$y=\frac{X+Y}{\sqrt2}$(座標軸を $45^\circ$ 回した新しい座標 $X,Y$)を代入すると $2X^2+8Y^2=8$、すなわち $\frac{X^2}4+Y^2=1$ となり、直線 $y=x$ の方向に長軸をもつ楕円だと分かる。
ここから次の問いが浮かぶ。
| 具体的な計算 | 大学の概念 | ボックス |
|---|---|---|
| $\tan2\theta=\frac b{a-c}$ となる角だけ回す | 対称行列の固有ベクトルの向き(主軸変換) | lem-cqf-rotation、cor-cqf-principal-axes |
| 回転後の係数(上の例の $2,8$) | 対称行列の固有値 | thm-cqf-spectral |
| 平方完成と平行移動 | 対角化された 2 次形式の標準形 | thm-cqf-classification |
| $b^2-4ac$ の符号で形を見分ける | $-4\det A_q$、固有値の符号 | thm-cqf-classification |
| $ax^2+bx+c>0$ がつねに成り立つ条件 | 2 次形式の正定値性 | prop-cqf-definite |
$px^2+2rxy+sy^2=q(x,y)$ が恒等的に成り立つなら係数を比べて $p=a$、$r=b/2$、$s=c$ なので、$q$ を表す対称行列は $A_q$ ただ 1 つである。
$q=x^2+4xy+y^2$ では $a=c=1$、$b=4$ なので $A_q=\begin{pmatrix}1&2\\ 2&1\end{pmatrix}$、$\det A_q=1-4=-3$ である。判別式は $D=4^2-4\cdot1\cdot1=12$ で、確かに $-4\det A_q=12$ に等しい。
座標を $\boldsymbol v=P\boldsymbol w$($\boldsymbol w={}^t(X,Y)$)と取り替えると
$$
q(P\boldsymbol w)={}^t\boldsymbol w\,({}^tPA_qP)\,\boldsymbol w
$$
であり、${}^tPA_qP$ も対称行列である。$P=R_\theta$ のとき、この取り替えは図形を回転して見ることにあたり、長さや形を変えない。したがって、$xy$ の項を消すことは、${}^tR_\theta A_qR_\theta$ を対角行列にすることである。これが本記事で取り出す構造である。
$\boldsymbol v=R_\theta\boldsymbol w$ により $q(x,y)=a'X^2+b'XY+c'Y^2$ となるとき、
$$
a'=\frac{a+c}2+\frac{a-c}2\cos2\theta+\frac b2\sin2\theta,\qquad b'=b\cos2\theta-(a-c)\sin2\theta,\qquad a'+c'=a+c,\qquad b'^2-4a'c'=b^2-4ac
$$
である。特に、$a=c$ なら $\theta=\frac\pi4$、$a\ne c$ なら $\tan2\theta=\frac b{a-c}$ を満たす $\theta$ をとれば $b'=0$ となる。
$A':={}^tR_\theta A_qR_\theta=\begin{pmatrix}a'&b'/2\\b'/2&c'\end{pmatrix}$ である。$\boldsymbol e_1={}^t(1,0)$、$\boldsymbol e_2={}^t(0,1)$ とおくと $R_\theta\boldsymbol e_1={}^t(\cos\theta,\sin\theta)$、$R_\theta\boldsymbol e_2={}^t(-\sin\theta,\cos\theta)$ なので、
$$
a'={}^t\boldsymbol e_1A'\boldsymbol e_1=q(\cos\theta,\sin\theta)=a\cos^2\theta+b\cos\theta\sin\theta+c\sin^2\theta
$$
であり、$\cos^2\theta=\frac{1+\cos2\theta}2$、$\sin^2\theta=\frac{1-\cos2\theta}2$、$\cos\theta\sin\theta=\frac{\sin2\theta}2$ から $a'$ の式を得る。同様に
$$
\frac{b'}2={}^t(R_\theta\boldsymbol e_1)A_q(R_\theta\boldsymbol e_2)=-a\cos\theta\sin\theta+\frac b2(\cos^2\theta-\sin^2\theta)+c\sin\theta\cos\theta
$$
から $b'$ の式を得る。$a'+c'$ は $A'$ の対角成分の和(トレース)であり、$\operatorname{tr}({}^tR A R)=\operatorname{tr}(AR\,{}^tR)=\operatorname{tr}A$ から $a+c$ に等しい。$\det R_\theta=1$ なので $\det A'=\det A_q$ であり、$b'^2-4a'c'=-4\det A'=-4\det A_q=b^2-4ac$ である。最後の主張は $b'$ の式から直ちに従う。$\square$
$a=7$、$b=6\sqrt3$、$c=13$ なので $\tan2\theta=\frac{6\sqrt3}{7-13}=-\sqrt3$ であり、$\theta=-\frac\pi6$ をとる。lem-cqf-rotation の式で $a'=10+(-3)\cdot\frac12+3\sqrt3\cdot\bigl(-\frac{\sqrt3}2\bigr)=4$、$c'=a+c-a'=16$ となり、$q=4X^2+16Y^2$ である。判別式は $b^2-4ac=108-364=-256$ で、$-4\cdot4\cdot16=-256$ と一致する。
$xy$ の項を消すために「$\tan2\theta=\frac b{a-c}$ となる角だけ座標軸を回す」方法(ex-cqf-start-rotation)は、この補題そのものである。以下では、この角が行列の言葉では何なのかを明らかにする。
$A=\begin{pmatrix}p&r\\r&s\end{pmatrix}$ を実対称行列とする。
$A=\begin{pmatrix}2&1\\ 1&2\end{pmatrix}$ の固有多項式は $t^2-4t+3=(t-1)(t-3)$ で、固有値は $3$(固有ベクトル ${}^t(1,1)$)と $1$(固有ベクトル ${}^t(-1,1)$)である。2 つの固有ベクトルは直交している。長さ $1$ にそろえた $P=\frac1{\sqrt2}\begin{pmatrix}1&-1\\ 1&1\end{pmatrix}=R_{\pi/4}$ について ${}^tPAP=\begin{pmatrix}3&0\\ 0&1\end{pmatrix}$ である。
2 次形式 $q(x,y)=ax^2+bxy+cy^2$ は、適当な回転 $\boldsymbol v=R_\varphi\boldsymbol w$ により $\lambda_1X^2+\lambda_2Y^2$ の形になる。ここで $\lambda_1,\lambda_2$ は $A_q$ の固有値であり、
$$
\lambda_1+\lambda_2=a+c,\qquad \lambda_1\lambda_2=\det A_q=ac-\frac{b^2}4=-\frac D4
$$
である。新しい座標軸(主軸)の方向は $A_q$ の固有ベクトルの方向である。
証明は thm-cqf-spectral を $A=A_q$ に適用するだけである。lem-cqf-rotation の角 $\theta$ で $b'=0$ となるとき ${}^tR_\theta A_qR_\theta$ は対角行列なので、$R_\theta$ の列は固有ベクトルである。つまり、lem-cqf-rotation の「$\tan2\theta=\frac b{a-c}$」は、固有ベクトルの向きを求める計算である。
2 次曲線 $C:\ ax^2+bxy+cy^2+dx+ey+f=0$ の判別式を $D=b^2-4ac$ とする。
cor-cqf-principal-axes の回転 $\boldsymbol v=R_\varphi\boldsymbol w$ を行うと、1 次の項は 1 次の項に移るので、$C$ は $\lambda_1X^2+\lambda_2Y^2+d'X+e'Y+f=0$ の形になる($d',e'$ は実数)。$\lambda_1\lambda_2=-D/4$ である。
$D\ne0$ の場合を考える。$\lambda_1,\lambda_2\ne0$ なので、$X,Y$ それぞれについて平方完成し、平行移動 $X_1=X+\frac{d'}{2\lambda_1}$、$Y_1=Y+\frac{e'}{2\lambda_2}$ を行うと $\lambda_1X_1^2+\lambda_2Y_1^2=k$($k$ は実数)となる。
2 次形式の判別式の符号と定値性の関係は 2次形式と2次曲線の判別式 で扱う。
判別式の符号は回転で変わらず(lem-cqf-rotation)、平行移動では 2 次の項が変わらないので、$D$ の符号は図形そのものの性質である。
楕円と「1 点・空集合」、双曲線と「交わる 2 直線」を見分けるには、3 次の対称行列
$$
M:=\begin{pmatrix}a&b/2&d/2\\b/2&c&e/2\\d/2&e/2&f\end{pmatrix}
$$
を使う。$C$ の方程式は $(x\ y\ 1)\,M\,{}^t(x\ y\ 1)=0$ と書ける。
thm-cqf-classification の $C$ について、$\det M\ne0$ ならば、$C$ は $D<0$ のとき楕円または空集合、$D>0$ のとき双曲線、$D=0$ のとき放物線である。$\det M=0$ ならば、$C$ は 1 点、直線(交わる 2 直線・平行な 2 直線・1 直線)、空集合のいずれかである。
回転 $R$ と平行移動 ${}^t(t_1,t_2)$ を合わせた座標変換 ${}^t(x,y)=R\,{}^t(X,Y)+{}^t(t_1,t_2)$ は、${}^t(x,y,1)=T\,{}^t(X,Y,1)$、$T=\begin{pmatrix}R&\boldsymbol t\\{}^t\boldsymbol 0&1\end{pmatrix}$($\boldsymbol t={}^t(t_1,t_2)$、$\boldsymbol 0={}^t(0,0)$)と書ける。新しい座標での行列は ${}^tTMT$ であり、$\det T=\det R=1$ なので行列式は変わらない。thm-cqf-classification の証明の最後の形で計算すると、$\lambda_1X^2+\lambda_2Y^2-k=0$ では $\det M=-\lambda_1\lambda_2k$、$\lambda_1X^2+e'Y=0$ では $\det M=-\lambda_1e'^2/4$、$\lambda_1X^2-k=0$ では $\det M=0$ である。よって $\det M\ne0$ となるのは、$D\ne0$ かつ $k\ne0$ の場合と、$D=0$ かつ $e'\ne0$ の場合に限られる。thm-cqf-classification の証明の場合分けと照らし合わせて主張を得る。$\square$
ex-cqf-start-rotation の $A_q=\begin{pmatrix}5&-3\\-3&5\end{pmatrix}$ の固有値は $2$(固有ベクトル ${}^t(1,1)$)と $8$(固有ベクトル ${}^t(-1,1)$)である。$\lambda_1+\lambda_2=10=a+c$、$\lambda_1\lambda_2=16=-\frac{(-6)^2-4\cdot5\cdot5}4$ となっている。主軸は直線 $y=x$ と $y=-x$ であり、$a=c$ なので lem-cqf-rotation の角は $\frac\pi4$ である。冒頭の $2X^2+8Y^2=8$ の係数 $2,8$ は固有値そのものである。
$a=c=0$、$b=1$ で $D=1>0$。$\frac\pi4$ 回すと $xy=\frac{X^2-Y^2}2$ なので $X^2-Y^2=2$ となり、直角双曲線である。固有値は $\pm\frac12$ である。
$D=4-4=0$。$X=\frac{x-y}{\sqrt2}$、$Y=\frac{x+y}{\sqrt2}$ とおくと $2X^2-2\sqrt2\,Y=0$、すなわち $Y=\frac{X^2}{\sqrt2}$ で放物線である。prop-cqf-nondegenerate の行列では $\det M=-4\ne0$ である。
平方完成についていえば、$xy$ の項がないとき($b=0$)、$A_q$ はすでに対角行列で、固有値は $a,c$ である。このとき thm-cqf-classification の証明は、高校で行う平方完成と平行移動(ex-cqf-start-complete-square)そのものである。
| 外した仮定 | 崩れる主張 | ボックス |
|---|---|---|
| $\det M\ne0$ | $D>0$ ならば双曲線 | ex-cqf-two-lines |
| $\det M\ne0$(仮定しても空集合は残る) | $D<0$ ならば楕円、$D=0$ ならば放物線 | ex-cqf-point-empty |
| 行列が対称 | 2 次形式の係数は行列の固有値 | ex-cqf-nonsymmetric |
| 変数変換が回転(直交行列) | 平方和に直した係数が固有値 | ex-cqf-nonsymmetric |
| Hesse 行列の行列式が $0$ でない | 2 次の項だけで極値を判定できる | ex-cqf-hessian-degenerate |
$x^2-y^2=0$ は $D=4>0$ であるが、$(x-y)(x+y)=0$ なので 2 直線 $y=\pm x$ である。$M=\begin{pmatrix}1&0&0\\ 0&-1&0\\ 0&0&0\end{pmatrix}$ で $\det M=0$ となっており、「$D>0$ ならば双曲線」という含意は、prop-cqf-nondegenerate の条件 $\det M\ne0$ を外すと成り立たない。
$x^2+y^2=0$ は $D=-4<0$ であるが原点 1 点であり($\det M=0$)、$x^2+y^2+1=0$ は $D<0$ かつ $\det M=1\ne0$ であるが空集合である。「$D<0$ ならば楕円」という含意は成り立たず、$\det M\ne0$ を仮定しても空集合が残る。$D=0$ の $(x-y)^2=1$ は平行な 2 直線 $x-y=\pm1$ であり($\det M=0$)、放物線ではない。
$x^2+xy+y^2={}^t\boldsymbol v\begin{pmatrix}1&1\\ 0&1\end{pmatrix}\boldsymbol v$ とも書けるが、この行列の固有値は $1$(重複)だけである。一方、対称行列 $A_q=\begin{pmatrix}1&1/2\\ 1/2&1\end{pmatrix}$ の固有値は $\frac12,\frac32$ で、$\frac\pi4$ 回すと $x^2+xy+y^2=\frac32X^2+\frac12Y^2$ となる。cor-cqf-principal-axes の「対称行列」という条件を外すと、「係数は行列の固有値」という結論が破れる。また平方完成 $x^2+xy+y^2=\bigl(x+\frac y2\bigr)^2+\frac34y^2$ の係数 $1,\frac34$ も固有値ではない。この変数変換は回転ではない(直交行列でない)ので形を保たないからである。ただし係数の符号(正が 2 個)は一致する。どんな可逆な 1 次変換で平方和に直しても正・負の係数の個数は変わらないこと(Sylvester の慣性法則)が知られている(本記事では証明しない)。
2 次形式 $q$ が、$(x,y)\ne(0,0)$ のすべてで $q(x,y)>0$ となるとき正定値、$q(x,y)<0$ となるとき負定値という。正の値も負の値もとるとき不定という。
$x^2+y^2$ は正定値、$-x^2-2y^2$ は負定値である。$x^2-y^2$ は $(1,0)$ で $1$、$(0,1)$ で $-1$ をとるので不定である。$x^2$ は $(0,1)\ne(0,0)$ で値 $0$ をとり、負の値はとらないので、正定値でも負定値でも不定でもない。
$q(x,y)=ax^2+bxy+cy^2$ について、次は同値である。
(1 ⇔ 2) cor-cqf-principal-axes により $q=\lambda_1X^2+\lambda_2Y^2$ であり、回転は $(x,y)\ne(0,0)$ と $(X,Y)\ne(0,0)$ を対応させる。$\lambda_1,\lambda_2>0$ なら $q>0$ である。逆に $q$ が正定値なら $(X,Y)=(1,0),(0,1)$ で $\lambda_1,\lambda_2>0$ である。
(1 ⇔ 3) 恒等式 $4a\,q(x,y)=(2ax+by)^2-Dy^2$ を使う。$a>0$、$D<0$ なら右辺は $0$ 以上で、$0$ になるのは $y=0$ かつ $2ax+by=0$、すなわち $(x,y)=(0,0)$ のときだけなので、$q$ は正定値である。逆に $q$ が正定値なら $a=q(1,0)>0$ であり、$(x,y)=(-b,2a)$ を代入すると $4a\,q=-4a^2D>0$ から $D<0$ である。
(不定 ⇔ $D>0$) $q=\lambda_1X^2+\lambda_2Y^2$ が不定であるのは $\lambda_1\lambda_2<0$、すなわち $D=-4\lambda_1\lambda_2>0$ のときに限る。$\square$
高校の「$a\ne0$ のとき、すべての実数 $x$ で $ax^2+bx+c>0$ となるのは $a>0$ かつ $b^2-4ac<0$ のとき」は、$q(x,1)=ax^2+bx+c$ として prop-cqf-definite を $y=1$ に制限したものである($y\ne0$ なら $q(x,y)=y^2q(x/y,1)$。$y=0$ なら $q(x,0)=ax^2$ であり、すべての $x$ で $ax^2+bx+c>0$ なら、$a\ne0$ のもとで $a>0$ である)。$a\ne0$ は外せない。$q=y^2$ は $q(x,1)=1>0$ だが、$q(1,0)=0$ なので正定値でない。また $D<0$ の 2 次曲線が楕円になるのは、$q$ が正定値か負定値で、曲線 $q=k$ が有界になるからである。
2 回連続微分可能な関数 $f(x,y)$ が点 $\boldsymbol p$ で $f_x=f_y=0$ を満たすとする。$\boldsymbol p$ の近くでは
$$
f(\boldsymbol p+\boldsymbol h)\approx f(\boldsymbol p)+\frac12\bigl(f_{xx}h_1^2+2f_{xy}h_1h_2+f_{yy}h_2^2\bigr)
$$
であり(2 変数の Taylor の定理)、右辺の 2 次形式(係数行列は Hesse 行列 $H=\begin{pmatrix}f_{xx}&f_{xy}\\f_{xy}&f_{yy}\end{pmatrix}$、値は $\boldsymbol p$ でとる)が正定値なら $f$ は $\boldsymbol p$ で極小、負定値なら極大、不定なら極値をとらない。prop-cqf-definite により、$f_{xx}>0$ かつ $f_{xx}f_{yy}-f_{xy}^2>0$ なら極小である。この判定法は本記事では証明しない(Leb26 演習 8.6.7 に極小の場合の証明の筋道がある。極大は $-f$ に適用すればよい)。
$f=x^2+xy+y^2-3x$ は $f_x=2x+y-3=0$、$f_y=x+2y=0$ から $(2,-1)$ が唯一の候補で、$H=\begin{pmatrix}2&1\\ 1&2\end{pmatrix}$ は $f_{xx}=2>0$、$\det H=3>0$ なので正定値であり、極小値 $f(2,-1)=-3$ をとる。
$f_1=x^2+y^4$ と $f_2=x^2-y^4$ は、ともに原点で $f_x=f_y=0$、Hesse 行列 $\begin{pmatrix}2&0\\ 0&0\end{pmatrix}$(2 次形式 $2h_1^2$ は正定値でも不定でもない)をもつ。$f_1$ は原点で極小($f_1\ge0=f_1(0,0)$)だが、$f_2$ は $f_2(0,y)=-y^4<0< f_2(x,0)$($x,y\ne0$)なので極値をとらない。$\det H=0$ では、2 次の項だけから極値を判定するという方法が働かない。
1 変数の 2 次関数を平方完成して最大・最小を読む方法は 2次関数の最大・最小 で扱う。
正の整数 $a,b$ について $ab+1$ が $a^2+b^2$ を割り切るならば、$\dfrac{a^2+b^2}{ab+1}$ は整数の平方であることを示せ。
出典:国際数学オリンピック(1988 年)第 6 問 Oly88。筆者による和訳。
$k:=\frac{a^2+b^2}{ab+1}$ が平方数でないと仮定する。0 以上の整数の組 $(x,y)$ で
$$
x^2-kxy+y^2=k
$$
を満たすもの($(a,b)$ があるので空でない)のうち、$x+y$ が最小のものをとる。方程式は $x,y$ について対称なので、$x\ge y$ としてよい。$y=0$ なら $k=x^2$ となり仮定に反するので $y\ge1$ である。$x$ は $t$ の 2 次方程式 $t^2-ky\,t+(y^2-k)=0$ の根であり、もう一つの根は、解と係数の関係から
$$
x'=ky-x=\frac{y^2-k}{x}
$$
である。左の式から $x'$ は整数である。$x'<0$ なら $x'^2-kyx'+y^2-k\ge x'^2+k+y^2-k>0$($-kyx'\ge k$ による)となって根であることに反し、$x'=0$ なら $k=y^2$ で仮定に反する。よって $x'>0$ で、$(x',y)$ も条件を満たす。ところが $x'=\frac{y^2-k}x<\frac{y^2}x\le y\le x$ なので $x'+y< x+y$ となり、最小性に反する。したがって $k$ は平方数である。$\square$
$k=1$ なら結論は明らかであり、$k=2$ となることはない($a^2+b^2=2ab+2$ は $(a-b)^2=2$ となる)ので、$k\ge3$ としてよい。このとき、上の方程式が表す曲線 $H_k$ は、判別式 $D=k^2-4>0$、$\det M=\frac{k(k^2-4)}4\ne0$ なので、prop-cqf-nondegenerate により双曲線である。$x=\frac{u+v}{\sqrt2}$、$y=\frac{u-v}{\sqrt2}$ と $\frac\pi4$ 回すと
$$
\Bigl(1-\frac k2\Bigr)u^2+\Bigl(1+\frac k2\Bigr)v^2=k
$$
となり、主軸は直線 $y=x$ と $y=-x$、漸近線は原点を通る 2 直線 $y=\frac{k\pm\sqrt{k^2-4}}2\,x$ である。高校の解法の「もう一つの根に跳ぶ」操作 $(x,y)\mapsto(ky-x,\,y)$ は、点 $(x,y)$ を通る水平な直線と双曲線 $H_k$ のもう一つの交点をとることにあたり、$x$ と $y$ の役割を入れ替えた $(x,y)\mapsto(x,\,kx-y)$ と交互に使うと、第 1 象限の格子点は双曲線の枝に沿って原点に近い側へ降りていく。高校の解法が示したのは、降り切った先が $x$ 軸(または $y$ 軸)との交点 $(\sqrt k,0)$ になることであり、そこが格子点であることが「$k$ が平方数」ということである。たとえば $k=4$ では、$(2,0)$ から逆にたどって $(2,8),(8,30),(30,112),\dots$ が得られる。
判別式の符号の役割も見える。2 つの跳び移りは 2 次形式 $x^2-kxy+y^2$ の値を変えない 1 次の変換であり、それらの合成は行列式 $1$ の行列 $\begin{pmatrix}k^2-1&-k\\k&-1\end{pmatrix}$ で表される。この行列の固有値は $\lambda,\lambda^{-1}$($\lambda+\lambda^{-1}=k^2-2>2$)で、固有ベクトルは漸近線の方向を向いている。曲線が有界な楕円($D<0$)ならこのような無限の列は生じない。双曲線であること($D>0$)が、解が無限に続き、しかも降下で 1 つの代表に帰着できることの幾何学的な背景である。
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