Mertensの定理

同義語:メルテンスの定理Mertens' theoremsMertensの三定理

概要

Mertensの定理(Mertens' theorems)とは、$x$ 以下の素数 $p$ にわたる 3 つの量の漸近式の総称であり、$\sum_{p\le x}(\log p)/p=\log x+O(1)$、$\sum_{p\le x}1/p=\log\log x+b+O(1/\log x)$、$\prod_{p\le x}(1-1/p)\sim e^{-\gamma}/\log x$ を述べる($b$ は Meissel–Mertens の定数、$\gamma$ は Euler の定数)。証明は階乗の素因数分解と Chebyshev の評価、部分和の変形だけで済み、積の定数が $e^{-\gamma}$ になるのは、ゼータ関数を通して素数の和が整数の和と比べられるからである。素数定理より弱いが、素因数の個数の平均や分布、篩の評価には多くの場合これで足りる。

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{div}[0]{\mathbin{÷}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: 素数, Landau記号, Abelの級数変形法とその応用, Eulerの定数, von Mangoldt関数

Mertens の定理(Mertens' theorems)は、素数についての 3 つの漸近式の総称である(F. Mertens, 1874)。$x$ 以下の素数 $p$ にわたって、重み付きの和 $\sum_{p\le x}(\log p)/p$ は $\log x$ と有界な差しかなく、逆数の和 $\sum_{p\le x}1/p$ は $\log\log x$ に定数 $b=0.2614972\ldots$ を足したものに近づき、積 $\prod_{p\le x}(1-1/p)$ は $e^{-\gamma}/\log x$ に漸近する。ここで $\gamma=0.5772156\ldots$ は Eulerの定数 である。
素数の逆数の和が発散することは Euler 以来知られていた(素数の逆数和の発散)。Mertens の定理はその発散の速さを、定数項と誤差の大きさまで決める。証明は Chebyshev の評価(素数定理 の定理「Chebyshevの評価」)だけを使う初等的なもので、素数定理 よりずっと弱い情報から得られる。それでも、素因数の個数の平均と分布(算術関数の平均位数、Hardy–Ramanujanの定理(素因数の個数)、Erdős–Kacの定理)や篩の評価(篩法)では、素数定理の代わりにこの定理で十分なことが多い。
同じ名前で呼ばれる別の定理に、片方が絶対収束する 2 つの級数の積についての定理がある(Cauchy積 の定理「Mertensの定理」)。Möbius 関数の部分和 $\sum_{n\le x}\mu(n)$ は Mertens 関数と呼ばれるが、これも別の主題である。

定理

以下、$p$ はつねに素数を表し、$\sum_{p\le x}$、$\prod_{p\le x}$ は $x$ 以下の素数にわたる和と積である。$\log$ は自然対数、$\lfloor x\rfloor$ は $x$ 以下の最大の整数である。

3 つの関数

実数 $x\ge1$ について
$$ S(x):=\sum_{p\le x}\frac{\log p}{p},\qquad P(x):=\sum_{p\le x}\frac1p,\qquad \Pi(x):=\prod_{p\le x}\Bigl(1-\frac1p\Bigr) $$
とおく($x<2$ では和は $0$、積は $1$ とする)。また $\theta(x):=\sum_{p\le x}\log p$ とする(Chebyshev の $\theta$ 関数。von Mangoldt関数 の定義「von Mangoldt 関数と Chebyshev の関数」)。

Mertensの第一定理

定数 $A>0$ があって、すべての実数 $x\ge2$ について $\lvert S(x)-\log x\rvert\le A$ である。すなわち $S(x)=\log x+O(1)$ である(HW60 Theorem 425、§22.6、p. 348)。

Mertensの第二定理

実定数 $b$ があって、すべての実数 $x\ge2$ について
$$ \Bigl\lvert P(x)-\log\log x-b\Bigr\rvert\le\frac{2A}{\log x} $$
である($A$ は thm-mt-first の定数)。すなわち $\sum_{p\le x}1/p=\log\log x+b+O(1/\log x)$ である。定数は
$$ b=1-\log\log2+\int_2^\infty\frac{S(t)-\log t}{t(\log t)^2}\,dt $$
で与えられる(Pol09 Theorem 3.14、p. 97)。

Mertensの第三定理

$x\to\infty$ のとき
$$ \prod_{p\le x}\Bigl(1-\frac1p\Bigr)=\frac{e^{-\gamma}}{\log x}\Bigl(1+O\Bigl(\frac1{\log x}\Bigr)\Bigr) $$
である。とくに $\prod_{p\le x}(1-1/p)\sim e^{-\gamma}/\log x$、$\prod_{p\le x}(1-1/p)^{-1}\sim e^{\gamma}\log x$ である(HW60 Theorem 429、§22.8、p. 351)。

第二定理の定数 $b$ を Meissel–Mertens の定数 という。第三定理の証明の途中で
$$ b=\gamma-\sum_p\sum_{m=2}^\infty\frac1{mp^m}=\gamma+\sum_p\Bigl(\log\Bigl(1-\frac1p\Bigr)+\frac1p\Bigr) $$
が分かる(lem-mt-constant)。中辺の二重和は正なので(右端の和は負なので)$b<\gamma$ である。数値は $b=0.2614972128\ldots$、$\gamma-b=0.3157184520\ldots$、$e^{-\gamma}=0.5614594835\ldots$ である。

番号の付け方

3 つの定理の番号は文献によって異なる。この記事は $S$、$P$、$\Pi$ の順に第一・第二・第三と呼ぶ。Pol09 は $P$ の評価を「第一定理」(Theorem 3.14、p. 97)、$\Pi$ の評価を「第二定理」(Theorem 3.15・3.17、pp. 97–99)と呼び、HW60 は積の評価だけを「Mertens の定理」と呼ぶ(Theorem 429、§22.8、p. 351)。単に「Mertens の定理」というときは、積の評価を指すことが多い。

直感

thm-mt-first は、素数 $p$ に重み $(\log p)/p$ を付けて数えると、すべての正の整数に重み $1/n$ を付けて数えた $\sum_{n\le x}1/n\approx\log x$ と同じ速さで増えることを言う。素数の「密度」が $1/\log p$ 程度であることの、和の形での表れである。重みを $1/p$ に替えると、$\log p$ だけ重みが軽くなる。$\log p$ は $p$ の大きさに応じてゆっくり増えるので、和は $\log x$ ではなく $\int^x dt/(t\log t)=\log\log x$ の速さで増える。これが第二定理である。
積 $\Pi(x)$ は、ほぼ「$x$ 以下のどの素数でも割り切れない」確率と読める。$\log\Pi(x)=\sum_{p\le x}\log(1-1/p)$ の主要部は $-P(x)$ なので $\Pi(x)$ は $1/\log x$ の定数倍になるが、その定数は $e^{-b}$ ではなく、$\log(1-1/p)$ と $-1/p$ の差を全部足した補正を受けて $e^{-\gamma}$ になる。$\gamma$ が現れる理由は、証明で素数の和を整数の和 $\sum1/n=\log x+\gamma+\cdots$ と比べることにある。

例

数値で見る

$x=10^k$ での 3 つの量は次のとおりである(小数第 4 位に丸めた)。

$x$$S(x)-\log x$$P(x)-\log\log x$$\Pi(x)\log x$
$10$$-0.9899$$0.3422$$0.5263$
$10^2$$-1.2357$$0.2756$$0.5541$
$10^3$$-1.2982$$0.2654$$0.5593$
$10^4$$-1.3195$$0.2627$$0.5608$
$10^5$$-1.3286$$0.2618$$0.5613$
$10^6$$-1.3319$$0.2615$$0.5614$
$10^7$$-1.3324$$0.2615$$0.5615$

2 列目は有界にとどまり(thm-mt-first)、3 列目は $b=0.2614\ldots$ に、4 列目は $e^{-\gamma}=0.5614\ldots$ に近づく(thm-mt-second、thm-mt-third)。たとえば $x=10$ では $P(10)=\frac12+\frac13+\frac15+\frac17=\frac{247}{210}=1.1762\ldots$、$\log\log10=0.8340\ldots$ である。

第一定理の証明

$\log N!$ を素因数分解で 2 通りに見積もる。使うのは次の 2 つの事実である。

  • Legendre の公式:正の整数 $N$ と素数 $p$ について、$N!$ の素因数分解における $p$ の指数は $v_p(N!)=\sum_{k\ge1}\lfloor N/p^k\rfloor$ である(素数定理 の補題「階乗に含まれる素数の指数」)。
  • Chebyshev の上からの評価:すべての実数 $x\ge1$ について $\theta(x)<(4\log2)\,x$ である(素数定理 の定理「Chebyshevの評価」の 1)。
階乗の対数と素数の指数

整数 $N\ge2$ について次が成り立つ。

  1. $N\log N-N<\log N!\le N\log N$。
  2. 各素数 $p\le N$ について $\dfrac Np-1< v_p(N!)\le\dfrac N{p-1}$。

1:$\log N!=\sum_{m=2}^N\log m\le N\log N$ である。$\log$ は増加関数なので $\log m\ge\int_{m-1}^m\log t\,dt$($m\ge2$)であり、足すと $\log N!\ge\int_1^N\log t\,dt=N\log N-N+1$ である。
2:$v_p(N!)\ge\lfloor N/p\rfloor>N/p-1$ である。また $\lfloor N/p^k\rfloor\le N/p^k$ を $k\ge1$ について足すと $v_p(N!)\le\sum_{k\ge1}N/p^k=N/(p-1)$ である。$\square$

階乗の素因数分解を 2 通りに見積もる

まず整数 $N\ge2$ で示す。$\log N!=\sum_{p\le N}v_p(N!)\log p$ である($N!$ の素因数は $N$ 以下である)。
上から:lem-mt-factorial の 2 の左側から
$$ \log N!>\sum_{p\le N}\Bigl(\frac Np-1\Bigr)\log p=N\,S(N)-\theta(N) $$
である。1 の右側と Chebyshev の評価から $N\,S(N)< N\log N+(4\log2)N$、すなわち $S(N)-\log N<4\log2$ である。
下から:lem-mt-factorial の 2 の右側から
$$ \log N!\le\sum_{p\le N}\frac{N\log p}{p-1}=N\,S(N)+N\sum_{p\le N}\frac{\log p}{p(p-1)}\le N\,S(N)+c_1N,\qquad c_1:=\sum_{n=2}^\infty\frac{\log n}{n(n-1)} $$
である。$\log n\le\sqrt n$ と $n-1\ge n/2$ から各項は $2n^{-3/2}$ 以下なので $c_1<\infty$ である。1 の左側と合わせて $S(N)-\log N>-1-c_1$ である。
実数 $x\ge2$ については $N:=\lfloor x\rfloor\ge2$ とおくと $S(x)=S(N)$ であり、$N\le x< N+1\le2N$ から $0\le\log x-\log N<\log2$ である。よって $-1-c_1-\log2< S(x)-\log x<4\log2$ となり、$A:=\max\{4\log2,\ 1+c_1+\log2\}$ とすればよい。$\square$

同じ評価を素数冪まで含めた $\sum_{n\le x}\Lambda(n)/n$ について行うと、von Mangoldt関数 の定理「$\Lambda(n)/n$ の和の評価」になる。両者の差 $\sum_{p^k\le x,\,k\ge2}(\log p)/p^k$ は $c_1$ 以下なので、どちらからどちらも導かれる(Pol09 p. 96 の (3.22)–(3.25) と HW60 Theorem 425(§22.6、p. 348)は、この順で示している)。

第二定理の証明

重み $(\log p)/p$ の和 $S$ から、重みを $1/\log p$ 倍した和 $P$ へ移る。これは Abelの級数変形法とその応用 の定理「総和関数による積分公式」の特別な場合であるが、ここでは直接に計算する。

重みを $1/\log p$ 倍する

$x\ge2$ とし、$R(t):=S(t)-\log t$ とおく。thm-mt-first により $t\ge2$ で $\lvert R(t)\rvert\le A$ である。
素数 $p\le x$ について $\dfrac1{\log p}=\dfrac1{\log x}+\displaystyle\int_p^x\frac{dt}{t(\log t)^2}$ である。両辺に $(\log p)/p$ を掛けて $p\le x$ について足す。$2\le t\le x$ で $\sum_{p\le t}(\log p)/p=S(t)$ なので、有限和と積分を入れ替えて
$$ P(x)=\frac{S(x)}{\log x}+\int_2^x\frac{S(t)}{t(\log t)^2}\,dt $$
を得る。$S(t)=\log t+R(t)$ を代入し、$\int_2^x\frac{dt}{t\log t}=\log\log x-\log\log2$ を使うと
$$ P(x)=\log\log x+1-\log\log2+\frac{R(x)}{\log x}+\int_2^x\frac{R(t)}{t(\log t)^2}\,dt $$
である。$\int_2^\infty\frac{\lvert R(t)\rvert}{t(\log t)^2}dt\le A\int_2^\infty\frac{dt}{t(\log t)^2}=\frac A{\log2}$ なので、定理の式で $b$ は有限の実数として定まり、
$$ P(x)-\log\log x-b=\frac{R(x)}{\log x}-\int_x^\infty\frac{R(t)}{t(\log t)^2}\,dt $$
である。右辺の 2 項の絶対値はどちらも $A/\log x$ 以下である($\int_x^\infty\frac{dt}{t(\log t)^2}=\frac1{\log x}$)。$\square$

この証明は Pol09 Theorem 3.14(p. 97)と同じ道筋である。HW60 Theorem 427(§22.7、p. 351)は誤差を $o(1)$ として同じ式を述べる。

第三定理の証明

$\log\Pi(x)$ を $-P(x)$ と収束する補正項に分けると、$\Pi(x)$ が $1/\log x$ の定数倍であることはすぐに分かる(lem-mt-product)。難しいのは定数が $e^{-\gamma}$ であることの確認で、ここでは実数 $s>1$ での Riemannゼータ関数 $\zeta(s)=\sum_{n\ge1}n^{-s}$ を仲立ちにして、素数の和 $P$ を整数の和 $\sum_{n\le u}1/n$ と比べる(lem-mt-constant)。
以下 $H:=\sum_p\sum_{m=2}^\infty\dfrac1{mp^m}$ とおく。各素数について $0<\sum_{m\ge2}\frac1{mp^m}\le\frac12\sum_{m\ge2}p^{-m}=\frac1{2p(p-1)}$ なので、$0< H\le\sum_{n\ge2}\frac1{2n(n-1)}=\frac12$ である。

定数が未定の積の評価

$C:=b+H$ とおく。すべての実数 $x\ge2$ について
$$ -\log\Pi(x)=\log\log x+C+E(x),\qquad\lvert E(x)\rvert\le\frac{2A+1}{\log x} $$
であり、したがって $\Pi(x)=\dfrac{e^{-C}}{\log x}\Bigl(1+O\Bigl(\dfrac1{\log x}\Bigr)\Bigr)$ である。

$0\le u<1$ で $-\log(1-u)=\sum_{m\ge1}u^m/m$ なので、$u=1/p$ として $p\le x$ で足すと
$$ -\log\Pi(x)=P(x)+H-T(x),\qquad T(x):=\sum_{p>x}\sum_{m=2}^\infty\frac1{mp^m} $$
である。上の評価から $0\le T(x)\le\sum_{n>x}\frac1{2n(n-1)}=\frac1{2\lfloor x\rfloor}\le\frac1x\le\frac1{\log x}$ である($\lfloor x\rfloor\ge x/2$、$\log x\le x$)。thm-mt-second と合わせて $E(x)=P(x)-\log\log x-b-T(x)$ の評価を得る。
後半:$\Pi(x)\log x\cdot e^{C}=e^{-E(x)}$ であり、$\lvert e^{w}-1\rvert\le\lvert w\rvert e^{\lvert w\rvert}$ と $\lvert E(x)\rvert\le(2A+1)/\log2$ から $\lvert e^{-E(x)}-1\rvert\le K/\log x$($K$ は定数)である。$\square$

定数の同定

$H=\gamma-b$ である。すなわち $C=b+H=\gamma$ である。

素数の和と整数の和を同じ積分で表す

要点:$\log\zeta(1+a)$ を、素数の和 $\sum_pp^{-1-a}$ に補正 $K(a)$ を足したものとして、また整数の和 $\sum_ne^{-an}/n$ として、2 通りに表す。どちらの和も $a\int_0^\infty e^{-au}(\cdots)\,du$ の形に書け、被積分関数の差 $h(u)-P(e^u)$ は $u\to\infty$ で $\gamma-b$ に近づくので、$a\to0$ で $K(a)\to\gamma-b$ となる。一方で $K(a)\to H$ である。

詳しい証明を開く

$0< a\le1$ とし、$h(u):=\sum_{n\le u}1/n$($u<1$ では $0$)とおく。

段 1($\log\zeta$ の分解):Riemannゼータ関数 の定理「Euler 積」を実数 $s=1+a$ で使い、正の実数の有限積の対数をとって極限に移ると$$\log\zeta(1+a)=\sum_p-\log\bigl(1-p^{-1-a}\bigr)=\sum_pp^{-1-a}+K(a),\qquad K(a):=\sum_p\sum_{m=2}^\infty\frac1{m\,p^{m(1+a)}}$$である。$K(a)$ の各項は正で、$a\downarrow0$ のとき単調に増えて $\frac1{mp^m}$ に近づくので、単調収束により $K(a)\to H$ である。

段 2($\log\zeta$ の大きさ):$t^{-1-a}$ は減少関数なので $\frac1a=\int_1^\infty t^{-1-a}dt\le\zeta(1+a)\le1+\frac1a$ であり、$0\le\log\zeta(1+a)+\log a\le\log(1+a)\le a$ である。また $a-\frac{a^2}2\le1-e^{-a}\le a$ から $\lvert\log(1-e^{-a})-\log a\rvert\le-\log(1-\frac a2)\le a$ である。よって$$\log\zeta(1+a)=-\log(1-e^{-a})+O(a)=\sum_{n\ge1}\frac{e^{-an}}n+O(a)$$である。

段 3(2 つの和を積分で書く):$e^{-av}=a\int_v^\infty e^{-au}du$ を $v=n$ と $v=\log p$ に使い、正の項の和と積分を入れ替えると$$\sum_{n\ge1}\frac{e^{-an}}n=a\int_0^\infty e^{-au}h(u)\,du,\qquad\sum_pp^{-1-a}=\sum_p\frac{e^{-a\log p}}p=a\int_0^\infty e^{-au}P(e^u)\,du$$である($u\ge v$ となる $n$、$p$ を集めると $h(u)$、$P(e^u)$ になる)。段 1・段 2 と合わせて$$K(a)=a\int_0^\infty e^{-au}\bigl(h(u)-P(e^u)\bigr)du+O(a)$$である。

段 4(被積分関数の評価):$D(u):=h(u)-P(e^u)-(\gamma-b)$ とおく。$u\ge1$ では $\lvert h(u)-\log u-\gamma\rvert\le1/u$ であり(Abelの級数変形法とその応用 の例「調和数の漸近展開と Euler の定数」の最後の式で、2 つの誤差項はどちらも $0$ 以上 $1/u$ 未満)、$e^u\ge2$ なので thm-mt-second により $\lvert P(e^u)-\log u-b\rvert\le2A/u$ である。よって $\lvert D(u)\rvert\le(2A+1)/u$ である。$0\le u<1$ では $h(u)=0$、$P(e^u)\in\{0,\frac12\}$($e^u<3$)なので $\lvert D(u)\rvert\le c_2:=\frac12+\lvert\gamma-b\rvert$ である。$a\int_0^\infty e^{-au}du=1$ なので$$K(a)-(\gamma-b)=a\int_0^\infty e^{-au}D(u)\,du+O(a)$$であり、右辺の積分は、$0< a<1$ で $u\ge1/a$ のとき $1/u\le a$ であることを使って$$\Bigl\lvert a\int_0^\infty e^{-au}D(u)\,du\Bigr\rvert\le c_2a+(2A+1)\Bigl(a\int_1^{1/a}\frac{du}u+a\cdot a\int_{1/a}^\infty e^{-au}du\Bigr)=c_2a+(2A+1)\bigl(a\log\tfrac1a+ae^{-1}\bigr)$$と抑えられる。これは $a\to0$ で $0$ に近づく。よって $K(a)\to\gamma-b$ である。段 1 の $K(a)\to H$ と比べて $H=\gamma-b$ を得る。$\square$

この比較の方法は Pol09 Theorem 3.17(pp. 99–100)による。HW60 Theorem 428(§22.8、p. 351)は同じ等式 $b=\gamma-H$ を、$\gamma=-\int_0^\infty e^{-u}\log u\,du$(Γ関数 の命題「対数微分の級数表示」)を使って示す。

2 つの補題を合わせる

lem-mt-product に lem-mt-constant の $C=\gamma$ を代入すればよい。$\square$

帰結

第一定理だけから、素数の個数の増え方についての次の制約が出る。

$\theta(x)/x$ の上極限と下極限

$$ \liminf_{x\to\infty}\frac{\theta(x)}x\le1\le\limsup_{x\to\infty}\frac{\theta(x)}x $$
である。とくに $\theta(x)/x$ が $x\to\infty$ で極限をもてば、その極限は $1$ である。

$S$ を $\theta$ で書き直す

素数 $p\le x$ について $\frac1p=\frac1x+\int_p^x\frac{dt}{t^2}$ に $\log p$ を掛けて足すと、prf-mt-second と同じ入れ替えにより
$$ S(x)=\frac{\theta(x)}x+\int_2^x\frac{\theta(t)}{t^2}\,dt\qquad(x\ge2) $$
である。上極限が $1$ より小さいとすると、$\varepsilon>0$ と $T\ge2$ があって $t\ge T$ で $\theta(t)\le(1-\varepsilon)t$ となる。Chebyshev の評価 $\theta(x)/x<4\log2$ と合わせて $S(x)\le(1-\varepsilon)\log x+O(1)$ となり、thm-mt-first の $S(x)\ge\log x-A$ に反する。下極限が $1$ より大きいとすると、同様に $t\ge T$ で $\theta(t)\ge(1+\varepsilon)t$ となり、$\theta(x)/x\ge0$ から $S(x)\ge(1+\varepsilon)\log x-O(1)$ となって $S(x)\le\log x+A$ に反する。$\square$

$0\le\psi(x)-\theta(x)=O(\sqrt x(\log x)^2)$(von Mangoldt関数 の命題「$\psi$ と $\theta$ の差」)なので、$\psi(x)/x$ についても同じことが成り立つ。$\pi(x)\log x/x$ についても同じ結論が成り立つ(HW60 Theorem 426、§22.6、p. 349。この記事では証明しない)。極限が存在すること自体は 素数定理 であり、Mertens の定理からは出ない。
第三定理からは、$x$ 以下の素数を約数にもたない整数の「割合」の大きさも読み取れる。$\Pi(x)^{-1}=\prod_{p\le x}(1-1/p)^{-1}=\prod_{p\le x}\sum_{k\ge0}p^{-k}$ は、素因数がすべて $x$ 以下である正の整数 $n$ にわたる $\sum1/n$ に等しく、その中には $n\le x$ のすべてが含まれる。したがって $\Pi(x)^{-1}\ge\sum_{n\le x}1/n>\log x$ であり、第三定理はこの素朴な下からの評価が定数倍 $e^{\gamma}=1.781\ldots$ を除いて正しいことを示している。

反例:条件を替えると成り立たない式

替える条件替えた式成り立たなくなること
素数 $p$ を正の整数 $n\ge2$ 全体に替える$\sum_{n\le x}\frac1n=\log x+\gamma+O(\frac1x)$、$\prod_{2\le n\le x}(1-\frac1n)=\frac1{\lfloor x\rfloor}$和は $\log\log x$ でなく $\log x$ の速さで増え、積は $1/\log x$ でなく $1/x$ の速さで $0$ に近づく
第三定理で $\log(1-\frac1p)$ を $-\frac1p$ に替える$\exp\bigl(-\sum_{p\le x}\frac1p\bigr)\sim\frac{e^{-b}}{\log x}$定数は $e^{-b}=0.7698\ldots$ になり、$e^{-\gamma}=0.5614\ldots$ にならない
積の範囲を $p\le x$ から $p\le\sqrt x$ に替えて $\pi(x)$ を見積もる$x\prod_{p\le\sqrt x}(1-\frac1p)\sim\frac{2e^{-\gamma}x}{\log x}$$\pi(x)\sim x/\log x$ と比べて $2e^{-\gamma}=1.1229\ldots$ 倍ずれる
反例の確認

1 行目:和は Abelの級数変形法とその応用 の例「調和数の漸近展開と Euler の定数」による。積は $\prod_{n=2}^N\frac{n-1}n=\frac1N$ と打ち消し合う。
2 行目:thm-mt-second から $\exp(-P(x))=e^{-b}e^{-\log\log x}e^{O(1/\log x)}\sim e^{-b}/\log x$ である。一方 lem-mt-product と lem-mt-constant により $\Pi(x)\sim e^{-b-H}/\log x$ で、$H=\gamma-b>0$ の分だけ小さい。
3 行目:thm-mt-third を $\sqrt x$ に使うと $\log\sqrt x=\frac12\log x$ から $\prod_{p\le\sqrt x}(1-\frac1p)\sim2e^{-\gamma}/\log x$ である。$\sqrt x< n\le x$ である整数 $n$ が素数であることと、$\sqrt x$ 以下の素数で割り切れないことは同値なので、「各素数で割り切れないことが独立に確率 $1-1/p$ で起こる」と考えると $\pi(x)$ はこの量で近似できそうに見える。しかし 素数定理 により $\pi(x)\sim x/\log x$ であり、比は $1$ でなく $2e^{-\gamma}$ に近づく。$x=10^4,10^6,10^7$ での比 $x\prod_{p\le\sqrt x}(1-1/p)/\pi(x)$ は $0.979$、$1.031$、$1.047$ で、$1.1229\ldots$ へゆっくり近づいていく。整除の事象は $p$ が $x$ に比べて大きくなると独立とはみなせない。

補足

関連項目

参考文献

[1]
G. H. Hardy and E. M. Wright, An Introduction to the Theory of Numbers, 4th ed., Oxford, Clarendon Press, 1960, §22.6, Theorem 425, p. 348(Σ log p/p の評価)、Theorem 426, p. 349(π(x)log x/x の極限);§22.7, Theorem 427, p. 351(Σ1/p の漸近式);§22.8, Theorems 428–429, p. 351(定数 b の表示と積の漸近式)
[2]
Paul Pollack, Not Always Buried Deep: A Second Course in Elementary Number Theory, American Mathematical Society, 2009, 第 3 章 §4, (3.22)–(3.25) p. 96、Theorem 3.14 p. 97、Theorem 3.15 pp. 97–98、Theorem 3.17 pp. 99–100

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