Urysohnの補題(Urysohn's lemma)とは、正規性条件を満たす位相空間、すなわち互いに素な閉集合を互いに素な開集合で分離できる空間では、互いに素な閉集合 $A,B$ に対し、$A$ 上で $0$、$B$ 上で $1$ をとる連続関数 $f\colon X\to[0,1]$ が存在するという定理である。証明では、二進有理数 $r$ で添字付けた開集合 $U_r$ を $r<s$ なら $\overline{U_r}\subset U_s$ となるように挟み込み、$f(x)=\inf\{r\mid x\in U_r\}$ と目盛りを読む。逆も成り立つので、正規性は連続関数による閉集合の分離と同値である。正規空間が Tychonoff 空間であること、Tietze の拡張定理、Urysohn の距離化定理の出発点となる。
位相空間の上に連続な実数値関数がどれだけあるかは、位相を決めただけでは分からない。たとえば無限集合に補有限位相を入れると、連続な実数値関数は定数関数しかない(ex-urylem-cofinite)。Urysohn の補題(Urysohn's lemma)は、互いに交わらない閉集合どうしを開集合で引き離せる空間(正規空間)では、その引き離しを連続関数で行えることを主張する。すなわち、一方の閉集合の上で $0$、他方の上で $1$ になる連続関数が必ずある。
この補題は、正規空間の上で連続関数を「作る」ための出発点である。閉集合の上の連続関数を空間全体へ延長する Tietzeの拡張定理、第 2 可算な正則空間に距離を入れる Urysohnの距離化定理、1 の分割の存在など、多くの構成がこの補題から始まる。証明の考え方は、欲しい関数 $f$ の「等高線」を先に作ることである。$f< r$ となるべき範囲を開集合 $U_r$ として、目盛り $r$ を細かくしながら順に挟み込んでいき、最後に目盛りを読んで $f$ を定める。
位相空間 $X$ の部分集合 $A,B$ が互いに素であるとは $A\cap B=\emptyset$ をいう。部分集合 $S$ の閉包 $\overline{S}$ は $S$ を含む最小の閉集合である。$X$ が正規性条件を満たすとは、互いに素な任意の閉集合 $A,B$ に対して、$A\subset U$、$B\subset V$、$U\cap V=\emptyset$ となる開集合 $U,V$ が存在することをいう。正規性条件を満たす $T_1$ 空間(一点集合がすべて閉である空間)が正規空間である(正規空間の記事の定義)。
位相空間 $X$ が正規性条件を満たすとする。互いに素な閉集合 $A,B\subset X$ に対し、連続関数 $f\colon X\to[0,1]$ であって
$$
f(x)=0\quad(x\in A),\qquad f(x)=1\quad(x\in B)
$$
を満たすものが存在する。
この定理は仮定の正規性条件だけを使い、$T_1$ 条件も距離も要らない。証明は下の「証明」の節で与える。関数 $f$ は一意とは限らず、証明では「等高線」となる開集合の取り方に選択の余地がある。
この $f$ を $A$ と $B$ を分離する Urysohn 関数と呼ぶことがある。定理に $T_1$ 条件は要らない。値域 $[0,1]$ は任意の閉区間 $[a,b]$($a< b$)に取り替えられる。$g:=a+(b-a)f$ は連続で、$A$ 上で $a$、$B$ 上で $b$ をとるからである。
逆向きも成り立つ。互いに素な閉集合の任意の組がこのような連続関数で分離されるなら、$f^{-1}([0,1/2))$ と $f^{-1}((1/2,1])$ が $A,B$ を分離する互いに素な開集合になるので、$X$ は正規性条件を満たす(正規空間の記事の命題「関数による分離は正規性を導く」)。したがって正規性条件は「互いに素な閉集合を連続関数で分離できる」ことと同値である。Urysohn の補題の中身は、開集合による分離という位相の言葉の条件から、連続関数という解析の対象が生まれるところにある。
$[0,1]$ の二進有理数の全体を
$$
D:=\Bigl\{\frac{k}{2^m}\Bigm| m\ge0,\ 0\le k\le 2^m\Bigr\},\qquad D_m:=\Bigl\{\frac{k}{2^m}\Bigm| 0\le k\le 2^m\Bigr\}
$$
とおく。$D_0=\{0,1\}\subset D_1\subset D_2\subset\cdots$ であり、$D=\bigcup_mD_m$ である。$D$ は $[0,1]$ で稠密である。すなわち $0\le u< v\le1$ なら $u< r< v$ となる $r\in D$ がある($2^{-m}< v-u$ となる $m$ をとれば、$k/2^m$ の刻みのどれかが $u$ と $v$ の間に入る)。
証明は 2 段に分かれる。まず、$D$ で添字付けた開集合の族から連続関数を読み取る方法を示す(lem-urylem-scale)。次に、正規性条件を使ってそのような族を作る(prf-urylem-main)。
$X$ を位相空間とし、各 $r\in D$ に開集合 $U_r\subset X$ が与えられていて、
$$
r< s\ \Longrightarrow\ \overline{U_r}\subset U_s\qquad(r,s\in D)
$$
が成り立つとする。$x\in X$ に対し
$$
f(x):=\inf\bigl(\{r\in D\mid x\in U_r\}\cup\{1\}\bigr)
$$
とおく。このとき $f\colon X\to[0,1]$ は連続であり、次が成り立つ。
$S(x):=\{r\in D\mid x\in U_r\}$ とおく。$f(x)$ は $[0,1]$ の空でない部分集合 $S(x)\cup\{1\}$ の下限なので $0\le f(x)\le1$ である。
1:$x\in U_r$ なら $r\in S(x)$ なので $f(x)\le r$ である。
2:$x\notin\overline{U_r}$ とする。$r'\in D$、$r'< r$ なら $U_{r'}\subset\overline{U_{r'}}\subset U_r\subset\overline{U_r}$ なので $x\notin U_{r'}$ であり、$r'=r$ でも $x\notin U_r$ である。よって $S(x)\subset(r,1]$ となり、$S(x)\cup\{1\}$ の元はすべて $r$ 以上だから $f(x)\ge r$ である。$x\notin U_1$ なら、$r<1$ について $U_r\subset\overline{U_r}\subset U_1$ なので $S(x)=\emptyset$ であり、$f(x)=1$ である。
連続性:実数 $a$ に対し、$\{x\mid f(x)< a\}$ と $\{x\mid f(x)>a\}$ が開集合であることを示す。
(i) $\{f< a\}$。$a>1$ なら $X$ 全体、$a\le0$ なら空集合なので、どちらも開である。$0< a\le1$ のとき
$$
\{x\mid f(x)< a\}=\bigcup_{r\in D,\ r< a}U_r
$$
を示す。右辺の $x$ は、ある $r< a$ で $x\in U_r$ なので 1 により $f(x)\le r< a$ である。逆に $f(x)< a$ なら、下限の定義から $S(x)\cup\{1\}$ に $a$ より小さい元がある。$1\ge a$ なのでそれは $S(x)$ の元 $r$ であり、$x\in U_r$、$r< a$ である。右辺は開集合の和なので開である。
(ii) $\{f>a\}$。$a\ge1$ なら空集合、$a<0$ なら $X$ 全体である。$0\le a<1$ のとき
$$
\{x\mid f(x)>a\}=\bigcup_{r\in D,\ r>a}\bigl(X\setminus\overline{U_r}\bigr)
$$
を示す。右辺の $x$ は、ある $r>a$ で $x\notin\overline{U_r}$ なので 2 により $f(x)\ge r>a$ である。逆に $f(x)>a$ なら、$D$ の稠密性から $a< r< s< f(x)$ となる $r,s\in D$ がとれる。$x\in U_s$ なら 1 により $f(x)\le s$ となって矛盾するので $x\notin U_s$ であり、$\overline{U_r}\subset U_s$ だから $x\notin\overline{U_r}$ である。右辺は閉集合の補集合の和なので開である。
実数直線の開集合は開区間の和であり、開区間 $(a,b)$ の逆像は $\{f< b\}\cap\{f>a\}$ なので開である。よって $\mathbb{R}$ の開集合の $f$ による逆像は開であり、$f\colon X\to[0,1]$ は連続である。$\square$
$f$ は「$x$ が初めて入る目盛り」を読んでいる。$U_r$ はおおよそ $\{f< r\}$ で、閉包の条件 $\overline{U_r}\subset U_s$ が、隣り合う等高線が触れ合わないことを保証している。閉包の条件を $U_r\subset U_s$ に弱めると、2 の議論が崩れ、関数が跳ぶことがある。
目盛りの作り方で使うのは、正規性条件の次の言い換えだけである(正規空間の記事の命題「閉包ごとの縮小による言い換え」):
閉集合 $F$ と開集合 $G$ が $F\subset G$ を満たせば、$F\subset V\subset\overline{V}\subset G$ となる開集合 $V$ がある。
これを「$F$ を $G$ の中で閉包ごと縮める」と呼ぶことにする。
段 1(両端の目盛り)。$U_1:=X\setminus B$ とおく。$B$ は閉なので $U_1$ は開で、$A\cap B=\emptyset$ より $A\subset U_1$ である。閉集合 $A$ を $U_1$ の中で閉包ごと縮めて、開集合 $U_0$ を $A\subset U_0\subset\overline{U_0}\subset U_1$ となるようにとる。これで $D_0=\{0,1\}$ の目盛りができ、$\overline{U_0}\subset U_1$ が成り立つ。
段 2(目盛りを細かくする)。$m\ge0$ とし、$r\in D_m$ に対する開集合 $U_r$ が、$D_m$ の中で隣り合う $r< s$($s=r+2^{-m}$)について $\overline{U_r}\subset U_s$ を満たすように定まっているとする。$D_{m+1}\setminus D_m$ の各元 $t$ は、$D_m$ の隣り合う 2 元 $r=t-2^{-m-1}$ と $s=t+2^{-m-1}$ のちょうど中点である。閉集合 $\overline{U_r}$ を開集合 $U_s$ の中で閉包ごと縮めて
$$
\overline{U_r}\subset U_t\subset\overline{U_t}\subset U_s
$$
となる開集合 $U_t$ をとる。すると $D_{m+1}$ の中で隣り合う組は $(r,t)$ と $(t,s)$ の形のものだけで、そのどちらについても閉包の条件が成り立つ。$m$ についての帰納法で、すべての $r\in D$ に $U_r$ が定まる。
段 3(隣り合う組から全部の組へ)。$r< s$ を $D$ の元とする。$r,s\in D_m$ となる $m$ をとり、$D_m$ の中で $r=r_0< r_1<\dots< r_N=s$ と隣り合う元を並べる。段 2 により $\overline{U_{r_i}}\subset U_{r_{i+1}}$ だから
$$
\overline{U_{r_0}}\subset U_{r_1}\subset\overline{U_{r_1}}\subset U_{r_2}\subset\cdots\subset U_{r_N}
$$
となり、$\overline{U_r}\subset U_s$ である。$D_m$ の中で隣り合う組の条件は、それより細かい $D_{m'}$ で $U_r$ を定め直さないので、どの $m$ で見ても同じ族について成り立っている。
段 4(関数を読み取る)。族 $(U_r)_{r\in D}$ に lem-urylem-scale を適用して連続関数 $f\colon X\to[0,1]$ を得る。$A\subset U_0$ なので、同じ補題の 1 により $A$ 上で $f=0$ である。$B=X\setminus U_1$ なので、同じ補題の 2 により $B$ 上で $f=1$ である。$\square$
最初の数段を表にすると次のようになる。どの段でも、すでにある隣り合う 2 つの開集合の間に、新しい開集合を 1 つずつ挟む。
| 段 | 新しく作る目盛り | 挟む位置 |
|---|---|---|
| 1 | $U_0$、$U_1$ | $A\subset U_0\subset\overline{U_0}\subset U_1=X\setminus B$ |
| 2($m=0$) | $U_{1/2}$ | $\overline{U_0}\subset U_{1/2}\subset\overline{U_{1/2}}\subset U_1$ |
| 2($m=1$) | $U_{1/4}$、$U_{3/4}$ | $\overline{U_0}\subset U_{1/4}\subset\overline{U_{1/4}}\subset U_{1/2}$ と $\overline{U_{1/2}}\subset U_{3/4}\subset\overline{U_{3/4}}\subset U_1$ |
$X=[0,1]$、$A=\{0\}$、$B=\{1\}$ とする。$r\in D$ に対して $U_r:=[0,(1+r)/2)$ とおくと、各 $U_r$ は $[0,1]$ の開集合で、$A\subset U_0=[0,1/2)$、$U_1=[0,1)=X\setminus B$ である。$r< s$ なら $\overline{U_r}=[0,(1+r)/2]\subset[0,(1+s)/2)=U_s$ なので、lem-urylem-scale の仮定を満たす。
$x\in U_r$ は $r>2x-1$ と同値である。したがって $f(x)=\inf(\{r\in D\mid r>2x-1\}\cup\{1\})$ であり、$D$ の稠密性から
$$
f(x)=\max\{0,\,2x-1\}\qquad(0\le x\le1)
$$
となる($x=1$ では条件を満たす $r$ がなく $f(1)=1$)。この $f$ は $A$ 上で $0$、$B$ 上で $1$ だが、$[0,1/2]$ の全体で $0$ である。一方、下の距離による公式からは $f(x)=x$ が得られる。Urysohn 関数は一つに決まらず、$f^{-1}(0)$ が $A$ より大きくなることもある。
$(X,d)$ を距離空間とし、$A,B$ を空でない互いに素な閉集合とする。点 $x$ と集合 $S$ の距離を $d(x,S):=\inf_{s\in S}d(x,s)$ とおくと、
$$
f(x):=\frac{d(x,A)}{d(x,A)+d(x,B)}
$$
は連続で、$A$ 上で $0$、$B$ 上で $1$ をとる(正規空間の記事の定理「距離空間は正規」とその証明)。この $f$ では $f^{-1}(0)=A$、$f^{-1}(1)=B$ がちょうど成り立つ。$\mathbb{R}$ で $A=\{0\}$、$B=\{1\}$ とすると $f(x)=\lvert x\rvert/(\lvert x\rvert+\lvert x-1\rvert)$ であり、$[0,1]$ の上では $f(x)=x$ である。距離空間では目盛りの構成は要らない。Urysohn の補題が力を発揮するのは、距離がまだ無い空間である。
コンパクトな Hausdorff 空間は正規空間である(正規空間の記事の定理「コンパクト Hausdorff 空間は正規」)。したがって、コンパクト Hausdorff 空間の互いに素な閉集合は連続関数で分離できる。たとえば直積位相を入れた非可算個の閉区間の積 $[0,1]^I$ はコンパクト Hausdorff 空間であるが(Tychonoffの定理)、距離化可能ではない(距離化可能空間の記事の注意「反例:非可算積は一般に距離化できない」)。距離による公式が使えないこの空間でも、互いに素な閉集合を分離する連続関数がある。
Urysohn の補題の最も基本的な帰結は、正規空間には点と閉集合を分離するのに十分な連続関数がある、ということである。
正規空間 $X$(正規性条件を満たす $T_1$ 空間)は Tychonoff 空間である。すなわち $X$ は Hausdorff であり、閉集合 $F$ と点 $x\notin F$ に対して、$f(x)=0$ かつ $F$ 上で $f=1$ となる連続関数 $f\colon X\to[0,1]$ が存在する。
$X$ は $T_1$ なので $\{x\}$ は閉集合であり、$x\notin F$ より $\{x\}$ と $F$ は互いに素な閉集合である。thm-urylem-main により求める $f$ がある。Hausdorff 性は正規空間の記事の命題「正規空間は正則かつ Hausdorff」による。$\square$
分離公理の階層で言えば、cor-urylem-tychonoff は $T_4\Rightarrow T_{3.5}$ を示している(Tychonoff空間、分離公理)。逆は成り立たない。Niemytzki平面は Tychonoff 空間だが正規でない。
Urysohn 関数 $f$ の零点集合 $f^{-1}(0)$ は $A$ を含むが、一般には $A$ より大きい(ex-urylem-interval)。零点集合をちょうど $A$ にできるかどうかは、$A$ が可算個の開集合の共通部分($G_\delta$ 集合、Gδ集合)であるかどうかで決まる。
$X$ を正規性条件を満たす位相空間、$A\subset X$ を閉集合とする。$f^{-1}(0)=A$ となる連続関数 $f\colon X\to[0,1]$ が存在するための必要十分条件は、$A$ が $G_\delta$ 集合であることである。
必要性:$f$ が連続なら、$f^{-1}([0,1/n))$ は開集合で、
$$
f^{-1}(0)=\bigcap_{n\ge1}f^{-1}\bigl([0,1/n)\bigr)
$$
なので $f^{-1}(0)$ は $G_\delta$ 集合である。
十分性:$A=\bigcap_{n\ge1}G_n$($G_n$ は開集合)とする。各 $n$ について $A$ と $X\setminus G_n$ は互いに素な閉集合なので、thm-urylem-main により $A$ 上で $0$、$X\setminus G_n$ 上で $1$ となる連続関数 $f_n\colon X\to[0,1]$ がある($n$ ごとに 1 つ選ぶ)。
$$
f:=\sum_{n=1}^{\infty}2^{-n}f_n
$$
とおく。部分和 $s_N:=\sum_{n\le N}2^{-n}f_n$ は連続で、すべての $x$ で $\lvert f(x)-s_N(x)\rvert\le\sum_{n>N}2^{-n}=2^{-N}$ だから、$s_N$ は $f$ に一様収束する。連続写像の一様極限は連続なので(距離空間の位相の基本的性質の記事の命題「連続写像の一様極限は連続」)、$f$ は連続で、値は $[0,1]$ に入る。$x\in A$ ならすべての $f_n(x)=0$ で $f(x)=0$ である。$x\notin A$ なら $x\notin G_n$ となる $n$ があり、$f_n(x)=1$ なので $f(x)\ge2^{-n}>0$ である。よって $f^{-1}(0)=A$ である。$\square$
すべての閉集合が $G_\delta$ 集合である正規空間を完全正規空間という。prop-urylem-exact により、完全正規空間ではすべての閉集合がちょうどある連続関数の零点集合になる。距離空間はその代表例である(ex-urylem-metric)。
条件を外したり結論を強めたりすると、主張は成り立たなくなる。
| 外す条件 | 反例 | 成り立たなくなること |
|---|---|---|
| 正規性条件 | 無限集合上の補有限位相 | 2 点 $\{a\}$、$\{b\}$ を分離する連続関数が存在する |
| $A$ が閉集合 | $\mathbb{R}$ の $A=[0,1)$、$B=\{1\}$ | $A$ 上で $0$、$B$ 上で $1$ の連続関数が存在する |
| (結論を $f^{-1}(0)=A$ に強める) | 非可算離散空間の一点コンパクト化と $A=\{\infty\}$ | 零点集合がちょうど $A$ になる連続関数が存在する |
$X$ を無限集合とし、空集合と補集合が有限な部分集合を開集合とする位相(補有限位相)を入れる。閉集合は有限集合と $X$ だけであり、とくに一点集合は閉なので $X$ は $T_1$ である。$X$ が無限なので、空でない 2 つの開集合は必ず交わる(補集合がともに有限なので、共通部分の補集合も有限で、$X$ 全体ではありえない)。
連続関数 $f\colon X\to[0,1]$ が 2 つの値 $u< v$ をとったとすると、$c:=(u+v)/2$ として $f^{-1}([0,c))$ と $f^{-1}((c,1])$ は空でない互いに素な開集合になり、矛盾する。よって連続関数は定数だけである。異なる 2 点 $a,b$ に対し $\{a\}$、$\{b\}$ は互いに素な閉集合だが、$a$ で $0$、$b$ で $1$ となる連続関数はない。
満たす性質:$T_1$。満たさない性質:正規性条件(Urysohn の補題の逆によって、あるいは空でない開集合が必ず交わることから直接)。この例は、仮定の正規性条件を外すと結論が成り立たないことを示す。
$X=\mathbb{R}$、$A=[0,1)$、$B=\{1\}$ とする。$A,B$ は互いに素で $B$ は閉だが、$A$ は閉でない($\overline{A}=[0,1]$ は $B$ と交わる)。連続関数 $f$ が $A$ 上で $0$ なら、$1-1/n\in A$ から $f(1)=\lim_{n\to\infty}f(1-1/n)=0$ となり、$f(1)=1$ にはできない。一般に、連続関数が $A$ 上で $0$、$B$ 上で $1$ なら、$f^{-1}(0)$ と $f^{-1}(1)$ は閉集合なので $\overline{A}\cap\overline{B}=\emptyset$ でなければならない。閉集合という仮定はこの条件を保証するためにある。
$D$ を非可算集合、$\infty\notin D$ とし、$X:=D\cup\{\infty\}$ の部分集合 $U$ を、$\infty\notin U$ であるか、$\infty\in U$ かつ $X\setminus U$ が有限であるとき開と定める。$X$ はコンパクト Hausdorff 空間なので正規であり、$\{\infty\}$ は閉集合だが $G_\delta$ 集合でない(正規空間の記事の例「反例:正規だが完全正規でない空間」とその証明)。したがって prop-urylem-exact の必要性の部分により、$f^{-1}(0)=\{\infty\}$ となる連続関数 $f\colon X\to[0,1]$ はない。Urysohn の補題は $A\subset f^{-1}(0)$ を与えるが、等号までは与えない。
正則だが正規でない空間(Niemytzki平面、正規空間の記事の注意「反例:正則だが正規でない空間と直積」の Sorgenfrey 平面)でも、Urysohn の補題の結論はある閉集合の組について成り立たない。互いに素な閉集合の任意の組を連続関数で分離できれば、上で述べた逆向きにより正規性条件が成り立つからである。
prf-urylem-main の段 2 では、各段で有限個の開集合を選ぶが、次の段で挟む位置は前の段で選んだ集合に依存する。この形の再帰は一般に従属選択公理(選択公理の弱い形)を使う。距離空間では ex-urylem-metric の公式が関数を直接与えるので、選択は要らない。prop-urylem-exact の十分性の証明では、可算個の関数 $f_n$ を選ぶところで可算選択を使う。
Urysohn は距離化定理の論文 Ury25 で、この主張を補題(Hilfssatz)として述べ(p. 310)、二進分数で添字付けた開集合の系 $G_r$ による証明を与えている(p. 311)。本記事の証明はこの形に従っている。教科書では Bass24 Lemma 20.31 が同じ型の証明(関数は下限でなく上限で読む)を与え、Remark 20.33 で値域を $[a,b]$ に取り替えている。
Urysohn の補題を使う代表的な構成は次のとおりである。閉集合上の連続関数を全体に延長する Tietzeの拡張定理は、Urysohn 関数を小さくしながら足し合わせて作る。第 2 可算な正則空間を Hilbert 立方体に埋め込む Urysohnの距離化定理は、可算個の Urysohn 関数を座標に並べる。局所有限な開被覆に従属する 1の分割も、各開集合に Urysohn 関数を割り当てて作る。可微分多様体では、連続関数の代わりに滑らかな関数で同じ分離ができる(滑らかな Urysohn の補題。1の分割の記事が扱う)。
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