Montelの定理(Montel's theorem)とは、$\mathbb{C}^n$($n\ge1$)の開集合の上の正則関数の族が局所有界(各点の近くで族全体が一様に有界)ならば正規族である、すなわち族から取ったどの列も各コンパクト集合の上で一様収束する部分列をもち、その極限は正則で偏導関数も局所一様に収束する、という定理である。逆に正規族は局所有界であり、証明の核心は、Cauchy の評価式によって族に共通な Lipschitz 定数が得られ、Arzelà–Ascoli の定理が使えることにある。ここから、連結な開集合の上の局所有界な列が空でない開集合(1 変数では集積点をもつ集合)の上で各点収束すれば全体で局所一様収束するという Vitali の定理が従う。Riemann の写像定理の証明や Julia 集合の理論で使われる。
前提知識: 多変数の正則関数, 多重円板, Arzelà–Ascoliの定理, 一様収束
有界な複素数列は収束する部分列をもつ(Bolzano–Weierstrassの定理)。Montel の定理はこの事実の正則関数版で、正則関数の族が各点の近くで一様に有界なら、族から取ったどの列も、定義域の各コンパクト集合の上で一様に収束する部分列をもつ、と主張する。連続関数や滑らかな関数では同じことは成り立たない(mt-ex-counterexamples)。正則関数では Cauchy の評価式が関数の大きさで導関数の大きさを押さえるので、族が自動的に同程度連続になる。これが定理の核心である。
この記事では $\mathbb{C}^n$($n\ge1$)の開集合の上で定理を証明する。$n=1$ が複素平面の場合である。あわせて、逆に正規族は局所有界であること、各点での収束から局所一様収束を導く Vitali の定理(多変数では、収束を仮定する集合が開集合を含む必要がある)、仮定を外した反例を述べ、応用の行き先を案内する。
以下 $n\ge1$ とする。$z=(z_1,\dots,z_n)\in\mathbb{C}^n$ の長さを $|z|:=(|z_1|^2+\cdots+|z_n|^2)^{1/2}$ と書き、点 $z$ と集合 $S$ の距離を $\operatorname{dist}(z,S):=\inf_{s\in S}|z-s|$ とする($S=\emptyset$ なら $\infty$)。$\mathbb{C}^n=\mathbb{R}^{2n}$ とみると、これは Euclid の長さと距離である。多重指数 $\alpha$、$\alpha!:=\alpha_1!\cdots\alpha_n!$、$|\alpha|:=\alpha_1+\cdots+\alpha_n$、多重円板 $\Delta(a,r)$、開集合 $U$ 上の正則関数の全体 $\mathcal{O}(U)$、複素偏導関数 $\partial^\alpha f$ の記号は 多変数の正則関数 にならう。半径がすべて $\rho$ の多重円板 $\Delta(a,(\rho,\dots,\rho))$ を $\Delta(a,\rho)$ と略記する。$f\in\mathcal{O}(U)$ は $C^\infty$ 級で、$\partial^\alpha f$ もすべて正則である(多変数の正則関数 の定理「正則性の言い換え」)。
$U\subset\mathbb{C}^n$ を開集合とし、$\mathcal{F}\subset\mathcal{O}(U)$ とする。
2 の条件は「各点にある近傍があり、その上で一様収束する」と同値である。実際、コンパクト集合は有限個のそのような近傍で覆える。逆に各点 $a$ の閉球 $\{|z-a|\le\varepsilon\}\subset U$ はコンパクトである。
正規族の定義には、局所一様に $\infty$ に発散する部分列も許す流儀がある。1 変数の力学系ではこちらを使う(Julia集合 の定義「正規族」、Mil91 §2, 2.6, p. 2-4)。この記事の定義は極限が有限の値の関数であることを求めるので、それより強い。違いは mt-ex-exp で見る。
$U\subset\mathbb{C}^n$ を開集合とする。$\mathcal{F}\subset\mathcal{O}(U)$ が局所有界であることと、$U$ の各コンパクト部分集合 $K$ に定数 $M_K$ があって、すべての $f\in\mathcal{F}$ について $\max_K|f|\le M_K$ となることは同値である。
局所有界とする。コンパクト集合 $K$ の各点の近傍 $V$ と定数 $M$ を定義のとおりにとると、$K$ は有限個の $V_1,\dots,V_p$ で覆えるので、$M_K:=\max_iM_i$ とすればよい。逆に後者の条件を仮定すると、$a\in U$ の閉球 $\{|z-a|\le\varepsilon\}\subset U$ はコンパクトなので、その内部を $V$ とすればよい。$\square$
正則関数の族について、値の大きさの評価から導関数の評価と、族に共通な Lipschitz 定数が出る。証明の要になる補題である。
$U\subset\mathbb{C}^n$ を開集合、$K\subset U$ を空でないコンパクト集合とし、$\rho>0$ を
$$
L:=\{z\in\mathbb{C}^n\mid\operatorname{dist}(z,K)\le2\sqrt n\,\rho\}\subset U
$$
となるようにとる。$f\in\mathcal{O}(U)$ とし、$M:=\max_L|f|$ とおく。
このような $\rho$ はいつもとれる。$U=\mathbb{C}^n$ なら任意の $\rho>0$ でよい。そうでなければ、閉集合 $\mathbb{C}^n\setminus U$ とコンパクト集合 $K$ は交わらないので $d:=\inf_{k\in K}\operatorname{dist}(k,\mathbb{C}^n\setminus U)>0$ であり、$2\sqrt n\,\rho< d$ ととる。$z\in L$ には $|z-k|\le2\sqrt n\,\rho$ となる $k\in K$ がある($K$ はコンパクト)ので、$z\notin U$ なら $\operatorname{dist}(k,\mathbb{C}^n\setminus U)< d$ となって矛盾する。$L$ は有界な閉集合なのでコンパクトであり、$M<\infty$ である。
$U\subset\mathbb{C}^n$ を開集合とし、$f_m\in\mathcal{O}(U)$ が関数 $f\colon U\to\mathbb{C}$ に局所一様収束するとする。このとき $f\in\mathcal{O}(U)$ であり、各多重指数 $\alpha$ について $\partial^\alpha f_m$ は $\partial^\alpha f$ に局所一様収束する。
$f\in\mathcal{O}(U)$ であることは 多変数の正則関数 の定理「局所一様極限」である(各点の近傍での一様収束は、上で見たとおりここでの局所一様収束と同値)。空でないコンパクト集合 $K\subset U$ に対し、mt-lem-derivative の $\rho$ と $L$ をとり、その 1 を $f_m-f\in\mathcal{O}(U)$ に使うと
$$
\max_K|\partial^\alpha f_m-\partial^\alpha f|\le\alpha!\,(2\rho)^{-|\alpha|}\max_L|f_m-f|
$$
である。$L$ はコンパクトなので右辺は $m\to\infty$ で $0$ に収束する。$\square$
$U\subset\mathbb{C}^n$ を開集合とし、$\mathcal{F}\subset\mathcal{O}(U)$ を局所有界な族とする。このとき $\mathcal{F}$ は正規族である。詳しく言えば、$\mathcal{F}$ の任意の列 $(f_m)$ は、ある $f\in\mathcal{O}(U)$ に局所一様収束する部分列 $(f_{m_k})$ をもち、さらに各多重指数 $\alpha$ について $\partial^\alpha f_{m_k}$ は $\partial^\alpha f$ に局所一様収束する。
正規族であることは、$n=1$ の場合は Leb26 Theorem 6.2.2(p. 154)、一般の $n$ の場合は Hor90 Corollary 2.2.5(p. 26)にある(偏導関数の収束は mt-lem-limit で示す)。方針は、mt-lem-derivative で族の同程度連続性を出し、Arzelà–Ascoliの定理 をコンパクト集合の増大列に当てて、対角線論法で 1 つの部分列にまとめることである。
段 1(コンパクト集合の増大列)。 $j=1,2,\dots$ について
$$
K_j:=\Bigl\{z\in\mathbb{C}^n\ \Big|\ |z|\le j,\ \operatorname{dist}(z,\mathbb{C}^n\setminus U)\ge\frac1j\Bigr\}
$$
とおく。$z\mapsto\operatorname{dist}(z,\mathbb{C}^n\setminus U)$ は連続なので $K_j$ は有界な閉集合、すなわちコンパクトであり、$K_j\subset U$、$K_j\subset K_{j+1}$ である。任意のコンパクト集合 $K\subset U$ は有界で、$\mathbb{C}^n\setminus U$ から正の距離にあるので(mt-lem-derivative の後の説明)、十分大きい $j$ で $K\subset K_j$ となる。特に $U=\bigcup_jK_j$ である。
段 2(同程度連続性)。 $K_j\ne\emptyset$ とし、mt-lem-derivative の条件を満たす $\rho_j>0$ と $L_j$ をとる。$\mathcal{F}$ は局所有界なので、mt-prop-compact-bound により $M_j:=\sup_{f\in\mathcal{F}}\max_{L_j}|f|<\infty$ である。mt-lem-derivative の 2 により、$z,w\in K_j$、$|w-z|<\rho_j$ ならすべての $f\in\mathcal{F}$ について
$$
|f(w)-f(z)|\le\sqrt n\,M_j\rho_j^{-1}|w-z|
$$
である。$\varepsilon>0$ に対し $\delta:=\min\{\rho_j,\ \varepsilon\rho_j/(\sqrt n\,M_j+1)\}$ とおけば、$|w-z|<\delta$ ならすべての $f\in\mathcal{F}$ について $|f(w)-f(z)|<\varepsilon$ である。したがって $\mathcal{F}$ の元を $K_j$ に制限した族は同程度連続であり、$|f|\le M_j$ により一様有界である。
段 3(対角線論法)。 $(f_m)$ を $\mathcal{F}$ の列とする。$K_j$ はコンパクトな距離空間であり、段 2 と Arzelà–Ascoliの定理($\mathbb{C}=\mathbb{R}^2$ とみる)により、$(f_m)$ の部分列 $(f^{(1)}_i)_i$ で $K_1$ 上一様収束するものがあり、その部分列 $(f^{(2)}_i)_i$ で $K_2$ 上一様収束するものがあり、以下同様に、$(f^{(j)}_i)_i$ が $(f^{(j-1)}_i)_i$ の部分列で $K_j$ 上一様収束するようにとれる($K_j=\emptyset$ のときは部分列を取り替えない)。対角線の列 $g_k:=f^{(k)}_k$ は $(f_m)$ の部分列であり、$k\ge j$ の部分 $(g_k)_{k\ge j}$ は $(f^{(j)}_i)_i$ の部分列なので、各 $K_j$ の上で一様収束する。$U=\bigcup_jK_j$ なので、各点 $z\in U$ で極限 $f(z):=\lim_kg_k(z)$ が存在する。段 1 により任意のコンパクト集合 $K\subset U$ はある $K_j$ に含まれるので、$(g_k)$ は $f$ に局所一様収束する。
段 4(極限の正則性と導関数)。 mt-lem-limit により $f\in\mathcal{O}(U)$ であり、各 $\alpha$ について $\partial^\alpha g_k\to\partial^\alpha f$ は局所一様である。$\square$
$n=1$ の場合に同じ方針で書いた証明が 複素解析 の節「代表的な定理:Montel の定理」にもある。多変数の証明で 1 変数と変わるのは、Cauchy の評価式を多重円板で使うことと、線分に沿う積分で Wirtinger の微分作用素の $\partial/\partial\bar z_j$ の項が消えることだけである。
$U\subset\mathbb{C}^n$ を開集合とし、$F_m=(F_{m,1},\dots,F_{m,p})\colon U\to\mathbb{C}^p$ を正則写像の列で、各成分の族 $\{F_{m,l}\}_m$ が局所有界であるものとする。このとき、ある正則写像 $F\colon U\to\mathbb{C}^p$ に局所一様収束する部分列がある。
mt-thm-main を第 1 成分に使って部分列をとり、その部分列の第 2 成分に使ってさらに部分列をとる。これを $p$ 回繰り返すと、すべての成分が局所一様収束する部分列が得られ、極限の各成分は正則である。$\square$
たとえば単位多重円板から単位球や単位多重円板への正則写像の列は、各成分の絶対値が $1$ 未満なので、局所一様収束する部分列をもつ。Poincaréの定理(球と多重円板) の定理「球と多重円板の非同値」の証明はこの形で使う。
$U\subset\mathbb{C}^n$ を開集合とし、$\mathcal{F}\subset\mathcal{O}(U)$ を正規族とする。このとき $\mathcal{F}$ は局所有界である。したがって mt-thm-main とあわせて、$\mathcal{F}\subset\mathcal{O}(U)$ が正規族であることと局所有界であることは同値である。
局所有界でないとすると、mt-prop-compact-bound により、コンパクト集合 $K\subset U$ で $\sup_{f\in\mathcal{F}}\max_K|f|=\infty$ となるものがある。各 $m$ について $\max_K|f_m|\ge m$ となる $f_m\in\mathcal{F}$ を選ぶ。正規族なので、部分列 $(f_{m_k})$ が $K$ 上で関数 $g$ に一様収束する。$g$ は連続関数の一様極限なので連続で、$K$ 上で $|g|\le B$ となる定数 $B$ がある。十分大きい $k$ で $\max_K|f_{m_k}-g|\le1$ なので $\max_K|f_{m_k}|\le B+1$ であるが、これは $m_k\to\infty$ に反する。$\square$
$\mathcal{O}(U)$ に半ノルムの列 $p_j(f):=\max_{K_j}|f|$($K_j$ は mt-prf-main の段 1 のもの。空集合の上の最大値は $0$)で位相を入れると、その位相での収束は局所一様収束である。
$U$ 上の連続関数の空間 $C(U)$ はこの半ノルムで Fréchet 空間であり(Fréchet空間 の定理「滑らかな関数の空間は Fréchet 空間」の 1。$\mathbb{C}^n=\mathbb{R}^{2n}$ とみる)、mt-lem-limit により $\mathcal{O}(U)$ はその閉部分空間なので、$\mathcal{O}(U)$ も Fréchet 空間である。半ノルムで位相が定まる空間で部分集合 $B$ が有界であるとは各 $p_j$ が $B$ 上で有界であることをいい、mt-prop-compact-bound によりこれは $B$ が局所有界であることと同じである。距離化可能な空間ではコンパクト性と点列コンパクト性は一致するので、mt-thm-main と mt-prop-converse は「$\mathcal{O}(U)$ の部分集合の閉包がコンパクトであることと、有界であることは同値」と言い換えられる。特に有界な閉集合はコンパクトである。この性質をもつ Fréchet 空間を Montel 空間という。
Montel の定理は、部分列の存在だけでなく、列そのものの収束を示すのにも使える。
$U\subset\mathbb{C}^n$ を連結な開集合、$(f_m)$ を $\mathcal{O}(U)$ の局所有界な列、$A\subset U$ とし、各 $z\in A$ で $f_m(z)$ が収束するとする。さらに次のどちらかを仮定する。
$n=1$ の場合は Vitali の定理(Vitali–Porter の定理)と呼ばれる。測度論の Vitaliの収束定理 とは別の定理である。
段 1。 $(f_m)$ の任意の部分列は、mt-thm-main により、$\mathcal{O}(U)$ のある元に局所一様収束する部分列をもつ。特に、$(f_m)$ の部分列の局所一様極限として現れる関数が少なくとも 1 つある。
段 2。 $g,h\in\mathcal{O}(U)$ がどちらも $(f_m)$ のある部分列の局所一様極限なら、$A$ の各点 $z$ で $g(z)=\lim_mf_m(z)=h(z)$ である。仮定 1 の場合は、$g$ と $h$ が空でない開集合の上で一致するので、多変数の正則関数 の定理「多変数の一致の定理」により $g=h$ である。仮定 2 の場合は、$\{g=h\}\supset A$ が $U$ に集積点をもつので、一致の定理 の定理「平面の領域上の一致の定理」により $g=h$ である。この共通の関数を $f$ とおく。
段 3。 $(f_m)$ が $f$ に局所一様収束しないとすると、コンパクト集合 $K\subset U$、$\varepsilon>0$ と部分列 $(f_{m_k})$ で、すべての $k$ について $\max_K|f_{m_k}-f|\ge\varepsilon$ となるものがある。段 1 によりこの部分列はさらに局所一様収束する部分列をもち、段 2 によりその極限は $f$ である。すると、その部分列の上で $\max_K|f_{m_k}-f|\to0$ となって矛盾する。$\square$
実変数ではこのようなことは起こらない。$[0,1]$ 上の $x^m$ は $|x^m|\le1$ で各点で収束するが、極限は $x=1$ で $1$、それ以外で $0$ の連続でない関数であり、一様収束しない。
| 外す条件 | $U$ と列 $f_m$ | 収束する集合 $A$ | 起こること |
|---|---|---|---|
| 局所有界 | $\{\lvert z\rvert<2\}\subset\mathbb{C}$、$z^m$ | $\{\lvert z\rvert<1\}$ | $f_m(\frac32)\to\infty$ |
| $U$ の連結性 | 交わらない 2 つの開円板 $D_1\cup D_2$、$D_1$ で $0$、$D_2$ で $(-1)^m$ | $D_1$ | $D_2$ の点で収束しない |
| $A$ が開集合を含む($n=2$) | 単位多重円板 $\Delta(0,1)\subset\mathbb{C}^2$、$(-1)^mz_1$ | $\{z_1=0\}$ | $z_1\ne0$ の点で収束しない |
どの行も、外す条件以外の仮定は満たしている。
1 行目:$U$ は連結で $A$ は開集合、$|z|<1$ では $z^m\to0$ である。しかし $\{|z|\le\frac32\}$ の上で $\max|z^m|=(\frac32)^m\to\infty$ なので局所有界でない(mt-prop-compact-bound)。2 行目:列は $|f_m|\le1$ で局所有界、$A=D_1$ は開集合で、$D_1$ の上では $f_m=0$ である。しかし $U$ は連結でなく、$D_2$ の点では値が $1,-1$ を交互にとる。3 行目:$U$ は連結(凸)で $|f_m|\le|z_1|<1$ である。$A=\{(0,z_2)\mid|z_2|<1\}$ の上では $f_m=0$ で、$A$ のどの点も $A$ の集積点であるが、$A$ は内点をもたない($(0,z_2)$ のどの近傍も $z_1\ne0$ の点を含む)。$z_1\ne0$ の点では $f_m(z)=\pm z_1$ が交互に現れる。この例は、多変数では一致の定理が「集積点をもつ集合の上で一致」では足りないことを反映している(関数 $z_1$ は $0$ でないが、零点集合 $\{z_1=0\}$ は集積点だらけである)。
$D:=\Delta(0,1)\subset\mathbb{C}^n$ を単位多重円板とし、$f_m(z):=(z_1z_2\cdots z_n)^m$ とおく。$|f_m|\le1$ なので族は局所有界である。コンパクト集合 $K\subset D$ では $R:=\max_{z\in K}\max_j|z_j|<1$ なので $\max_K|f_m|\le R^{nm}\to0$ であり、列そのものが $0$ に局所一様収束する。しかし $z=(t,\dots,t)$($0< t<1$)で $f_m(z)=t^{nm}$ であり、$t\to1$ とすれば $\sup_D|f_m|=1$ なので、$D$ 全体では一様収束しない。定理の結論の「局所」は外せない。
$U$ を開集合、$c>0$ とし、$\mathcal{B}_c:=\{f\in\mathcal{O}(U)\mid U\ \text{上で}\ |f|\le c\}$ とおく。$\mathcal{B}_c$ は局所有界なので正規族であり、局所一様極限 $f$ も各点で $|f|\le c$ を満たすので $\mathcal{B}_c$ に属する。したがって $\mathcal{B}_c$ の列はいつも $\mathcal{B}_c$ の元に局所一様収束する部分列をもつ。一方、$\mathcal{B}'_c:=\{f\mid|f|< c\}$ も正規族だが、定数関数の列 $f_m:=c(1-\frac1m)$ の極限 $c$ は $\mathcal{B}'_c$ に属さない。正規族の定義で極限が族に属することを求めないのはこのためである。
$n=1$、$f_m(z):=e^{mz}$ とする。$|f_m(z)|=e^{m\operatorname{Re}z}$ である。左半平面 $\{\operatorname{Re}z<0\}$ では $|f_m|<1$ で局所有界であり、コンパクト集合の上では $\operatorname{Re}z\le-\delta<0$ なので $|f_m|\le e^{-m\delta}\to0$ となり、列は $0$ に局所一様収束する。右半平面 $\{\operatorname{Re}z>0\}$ では各点で $|f_m(z)|\to\infty$ なので、この記事の意味の正規族ではないが、族 $\{f_m\}$ から取った列は、添字が有界なら同じ関数を無限回含むので定数の部分列をもち、有界でなければ添字が $\infty$ に向かう部分列が局所一様に $\infty$ に発散する(コンパクト集合の上では $\operatorname{Re}z\ge\delta>0$)ので、$\infty$ への発散を許す流儀では正規族である。$0$ を含む開円板 $V$ の上では、どの部分列も $\operatorname{Re}z<0$ の点で $0$ に、$\operatorname{Re}z>0$ の点で $\infty$ に向かうので、$V$ 上で有限の関数に局所一様収束することも、$V$ 上で局所一様に $\infty$ に発散することもない。どちらの流儀でも正規族でない。
| 外す条件 | 反例($D:=\Delta(0,1)\subset\mathbb{C}^n$) | 成り立たなくなること |
|---|---|---|
| 局所有界 | $f_m(z):=mz_1$(正則) | 点 $(\frac12,0,\dots,0)$ で値が $\infty$ に発散し、収束する部分列がない |
| 正則(有界な実解析的関数に替える) | $f_m(z):=\sin(mx_1)$、$x_1:=\operatorname{Re}z_1$($\lvert f_m\rvert\le1$) | 線分 $S:=\{(x,0,\dots,0)\mid -\frac12\le x\le\frac12\}$ の上でさえ一様収束する部分列がない |
1 行目:どの部分列も $(\frac12,0,\dots,0)$ での値 $m/2$ が発散する。2 行目:部分列 $(f_{m_k})$ が $S$ 上で関数 $g$ に一様収束したとする。$g$ は連続で、$g(0)=\lim_kf_{m_k}(0)=0$ である。$m_k\ge4$ のとき $x_k:=\pi/(2m_k)$ は $S$ の点で $f_{m_k}(x_k)=\sin(\pi/2)=1$ だから、$|g(x_k)|\ge1-\max_S|f_{m_k}-g|$ であり、右辺は $1$ に近づく。ところが $x_k\to0$ なので $g(x_k)\to g(0)=0$ となり、矛盾する。$f_m$ は実の意味で $C^\infty$ 級だが、$x_1$ 方向の傾き $m\cos(mx_1)$ は $m$ とともに大きくなる。正則関数では mt-lem-derivative が値の大きさで傾きを押さえるので、この現象が起こらない。$\square$
1 変数の定理と正規族の定義は Leb26 Definition 6.2.1・Theorem 6.2.2(p. 154。Arzelà–Ascoli による証明)にある。多変数の定理は Hor90 Corollary 2.2.5(p. 26)である。多重円板の Cauchy の積分公式・局所一様極限の正則性・Cauchy の評価式は同書 Theorem 2.2.1・Corollary 2.2.4(p. 26)・Theorem 2.2.7(p. 27)にある。$\infty$ への発散を許す正規族の定義と基本正規族定理は Mil91 §2(2.5・2.6、p. 2-4)にある。mt-lem-derivative の 2 の共通の Lipschitz 評価、mt-thm-vitali の多変数の形と反例の表は、この記事で組み立てたものである。
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