1階線形微分方程式と積分因子(高校数学)

同義語:1階線形微分方程式(高校数学)first-order linear differential equations and integrating factors (high school mathematics)

概要

1階線形微分方程式と積分因子(first-order linear differential equations and integrating factors)とは、区間 $I$ で連続な $p$、$q$ についての方程式 $y'+p(x)y=q(x)$ と、それを解くために掛ける関数 $e^{P(x)}$($P(x)=\int_{x_0}^xp(t)\,dt$、$x_0\in I$)のことである。これを掛けると左辺が $(e^{P}y)'$ になり、解は $y=e^{-P(x)}\left(\int_{x_0}^xq(t)e^{P(t)}\,dt+C\right)$($C$ は定数)の形に限る。$y(x_0)=y_0$ を満たす解は $C=y_0$ のものただ 1 つで、解の全体は特殊解に $Ce^{-P(x)}$ を足した形である。$p$ が連続でない点をまたぐと一意性が崩れうる。

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{div}[0]{\mathbin{÷}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: 変数分離形の微分方程式, 微分方程式としての指数関数・三角関数, 積の微分とLeibnizの公式, 定積分で表された関数, 平均値の定理

高校での出発点:$y'+y=x$ を解いてみる

変数分離形の微分方程式 では、$y'=f(x)g(y)$ の形の方程式を「$y$ の式を左辺、$x$ の式を右辺に分けて積分する」方法で解いた。では、次の方程式はどうだろうか。
$$ y'+y=x $$
右辺を $y'=x-y$ と書き直しても、$x$ の式と $y$ の式の積にはならないので、変数分離はそのままでは使えない。この方程式を 2 通りの方法で解いてみる。

$y'+y=x$ を 2 通りに解く
  1. 1 次式を置いてみる。右辺が $x$ の 1 次式なので、$y=ax+b$ の形の解を探す。$y'=a$ を代入すると
    $$ a+(ax+b)=x,\qquad\text{すなわち}\qquad ax+(a+b)=1\cdot x+0 $$
    である。これがすべての $x$ で成り立つように係数を比べると $a=1$、$a+b=0$ で、$a=1$、$b=-1$ となる。$y=x-1$ は解の 1 つである。
  2. 差を見る。$y$ を別の解とし、$z=y-(x-1)$ とおく。$y'+y=x$ と $(x-1)'+(x-1)=x$ を引くと
    $$ z'+z=0,\qquad\text{すなわち}\qquad z'=-z $$
    である。微分方程式としての指数関数・三角関数 の定理「$y'=ky$ の解」($k=-1$)により $z=Ce^{-x}$($C$ は定数)である。よって $y=x-1+Ce^{-x}$ である。
  3. $e^x$ を掛けてみる。方程式の両辺に $e^x$ を掛けると
    $$ e^xy'+e^xy=xe^x $$
    となる。左辺は積の微分 $(e^xy)'=e^xy'+e^xy$ そのものなので、$(e^xy)'=xe^x$ である。部分積分で $\displaystyle\int xe^x\,dx=(x-1)e^x+C$ だから
    $$ e^xy=(x-1)e^x+C,\qquad y=x-1+Ce^{-x} $$
    となり、(2) と同じ答えが出る。
  4. 確かめ。$y=x-1+Ce^{-x}$ なら $y'=1-Ce^{-x}$ で、$y'+y=1-Ce^{-x}+x-1+Ce^{-x}=x$ である。たとえば $y(0)=0$ となるのは $C=1$ のときで、$y=x-1+e^{-x}$ から $y(1)=e^{-1}=0.3678\ldots$、$y(3)=2+e^{-3}=2.0497\ldots$ である。

(1)(2) は「解を 1 つ見つけて、残りを右辺が $0$ の方程式に押しつける」方法、(3) は「うまい関数を掛けて左辺を 1 つの関数の導関数にする」方法である。(3) で掛けた $e^x$ を 積分因子 という。図 1 は、$C$ をいろいろに変えた解のグラフで、どれも $x$ が大きくなると直線 $y=x-1$ に近づく。$Ce^{-x}$ の部分が $0$ に近づくからである。
y'+y=x の解 y=x-1+Ce^{-x} を C=-3 から 3 まで描いた。どの曲線も x が大きくなると赤い直線 y=x-1 に近づく y'+y=x の解 y=x-1+Ce^{-x} を C=-3 から 3 まで描いた。どの曲線も x が大きくなると赤い直線 y=x-1 に近づく
この記事で答える問いは次の 3 つである。

    1. の $e^x$ はどう見つけるのか。$y'+p(x)y=q(x)$ の形なら、いつも同じ方法が使えるか。→ lem-fol-factor
  1. $y=x-1+Ce^{-x}$ 以外の解は本当にないのか。初期条件で解はただ 1 つに決まるか。→ thm-fol-main
  2. (1)(2) の「特殊解 + 右辺が $0$ の方程式の解」という形は、いつでも成り立つか。→ cor-fol-structure
    高校の計算この記事の言葉大学の言葉
    $e^x$ を掛けて積の微分を逆に読む積分因子 $e^{P(x)}$積分因子
    $y=ax+b$ と置いて係数を比べる特殊解未定係数法
    答えの $+Ce^{-x}$右辺を $0$ にした方程式の解線形写像の核
    1 次式 + 等比数列の一般項(二項間漸化式)一般解 = 特殊解 + $Ce^{-P(x)}$アフィンな解の集合

取り出す構造:1 階線形微分方程式と積分因子

1 階線形微分方程式

$I$ を区間とし、$p(x)$、$q(x)$ を $I$ で連続な関数とする。
$$ y'+p(x)y=q(x) $$
の形の微分方程式を 1 階線形微分方程式 という。$I$ で微分可能な関数 $y$ が、すべての $x\in I$ で $y'(x)+p(x)y(x)=q(x)$ を満たすとき、$y$ を $I$ 上の 解 という。$q$ が恒等的に $0$ のものを 同次(または斉次)の方程式という。

「線形」とは、未知の関数 $y$ とその導関数 $y'$ が 1 次式で入っている($y^2$ や $\sin y$ や $yy'$ のような形で入っていない)という意味である。$p$、$q$ は、$I$ で連続であれば $x$ のどんな式でもよい。

1 階線形微分方程式の例と、そうでない例
  1. $y'+y=x$ は $p(x)=1$、$q(x)=x$ で、$I=\mathbb{R}$ の 1 階線形微分方程式である。
  2. $y'+\dfrac1xy=x$ は $p(x)=\dfrac1x$、$q(x)=x$ で、$I=(0,\infty)$(または $(-\infty,0)$)の 1 階線形微分方程式である。$x=0$ では $p$ が定義されないので、$0$ を含む区間はとれない。
  3. $y'=xy$ は $y'+(-x)y=0$ と書けるので、同次の 1 階線形微分方程式である。これは変数分離形でもある。
  4. $y'+y^2=0$ は $y^2$ を含むので線形ではない。変数分離形ではある。
  5. $y'=x-y$ は $y'+y=x$ と同じもので、線形である。「$y'$ が $y$ の 1 次式(係数は $x$ の関数)で表される」ものは、すべて $y'+p(x)y=q(x)$ の形に書き直せる。

ex-fol-start の (3) を一般の $p$ で真似するために、$p$ の原始関数を 1 つ決めておく。

積分因子

def-fol-linear の方程式について、点 $x_0\in I$ を 1 つ決め、
$$ P(x)=\int_{x_0}^xp(t)\,dt\qquad(x\in I) $$
とおく。関数 $e^{P(x)}$ をこの方程式の 積分因子 という。

$p$ は $I$ で連続なので、微分積分学の基本定理により $P$ は $I$ で微分可能で、$P'(x)=p(x)$、$P(x_0)=0$ である(定積分で表された関数)。また $e^{P(x)}>0$ である。

積分因子の例
  1. $p(x)=1$、$x_0=0$ なら $P(x)=x$ で、積分因子は $e^x$ である。ex-fol-start の (3) で掛けた関数である。
  2. $p(x)=\dfrac1x$($I=(0,\infty)$)、$x_0=1$ なら $P(x)=\displaystyle\int_1^x\frac{dt}t=\log x$ で、積分因子は $e^{\log x}=x$ である。
  3. $p(x)=2x$、$x_0=0$ なら $P(x)=x^2$ で、積分因子は $e^{x^2}$ である。
積分因子を掛けると積の微分になる

def-fol-factor の $P$ について、$I$ で微分可能な任意の関数 $y$ に対し
$$ \bigl(e^{P(x)}y\bigr)'=e^{P(x)}\bigl(y'+p(x)y\bigr) $$
が成り立つ。

積の微分と合成関数の微分を使う。$\bigl(e^{P(x)}\bigr)'=e^{P(x)}P'(x)=e^{P(x)}p(x)$ なので
$$ \bigl(e^{P(x)}y\bigr)'=\bigl(e^{P(x)}\bigr)'y+e^{P(x)}y'=\underbrace{e^{P(x)}y'+p(x)e^{P(x)}y}_{\text{方程式の左辺の }e^{P(x)}\text{ 倍}}=e^{P(x)}\bigl(y'+p(x)y\bigr) $$
である。$\square$

補題の式は、左辺が「$y$ だけの導関数」ではなく「$e^{P}y$ という積の導関数」になっていることがポイントである。$y'+p(x)y$ という 2 つの項の和が、積分因子を掛けるだけで 1 つの関数の導関数にまとまる。ex-fol-factor の (2) では $(xy)'=xy'+y=x\left(y'+\dfrac1xy\right)$ で、確かに補題の形になっている。

主定理:解の公式と、解がそれで尽きること

1 階線形微分方程式の解

$I$ を区間、$p$、$q$ を $I$ で連続な関数とし、$x_0\in I$、$P(x)=\displaystyle\int_{x_0}^xp(t)\,dt$ とする。
(1) $I$ で微分可能な関数 $y$ が $y'+p(x)y=q(x)$ の $I$ 上の解であるための必要十分条件は、ある定数 $C$ について
$$ y=e^{-P(x)}\left(\int_{x_0}^xq(t)e^{P(t)}\,dt+C\right)\qquad(x\in I) $$
となることである。
(2) 数 $y_0$ を与えると、初期条件 $y(x_0)=y_0$ を満たす解はただ 1 つあり、それは (1) の式で $C=y_0$ としたものである。

方針:lem-fol-factor で方程式を「$e^Py$ の導関数が決まった関数に等しい」という形に直し、導関数が等しい 2 つの関数の差は定数であることを使う。
段 1(準備)。$P$ は $I$ で微分可能で $P'=p$、$P(x_0)=0$ である(def-fol-factor の後の注意)。関数 $q(t)e^{P(t)}$ は連続関数どうしの積と合成なので $I$ で連続である。そこで
$$ G(x)=\int_{x_0}^xq(t)e^{P(t)}\,dt $$
とおくと、微分積分学の基本定理により $G$ は $I$ で微分可能で $G'(x)=q(x)e^{P(x)}$、$G(x_0)=0$ である。
段 2(方程式の言い換え)。$e^{P(x)}>0$ なので、各 $x$ で $y'+p(x)y=q(x)$ であることと、両辺に $e^{P(x)}$ を掛けた $e^{P(x)}\bigl(y'+p(x)y\bigr)=q(x)e^{P(x)}$ であることは同値である。lem-fol-factor により左辺は $\bigl(e^{P(x)}y\bigr)'$、段 1 により右辺は $G'(x)$ なので、
$$ y\text{ が解である}\iff\bigl(e^{P(x)}y\bigr)'=G'(x)\ (x\in I)\iff\bigl(e^{P(x)}y-G(x)\bigr)'=0\ (x\in I) $$
である。
段 3(解は必ず公式の形)。$y$ を解とし、$h(x)=e^{P(x)}y-G(x)$ とおく。段 2 により $I$ で $h'=0$ である。区間 $I$ の任意の 2 点 $x_1< x_2$ に平均値の定理を使うと、$h(x_2)-h(x_1)=h'(c)(x_2-x_1)=0$ となる $c$ が $x_1$ と $x_2$ の間にある。よって $h$ は $I$ で定数で、その値を $C$ とすると $e^{P(x)}y=G(x)+C$、両辺に $e^{-P(x)}$ を掛けて
$$ y=e^{-P(x)}\bigl(G(x)+C\bigr) $$
である。これは (1) の式である。
段 4(公式の形はすべて解)。逆に、定数 $C$ について $y=e^{-P(x)}\bigl(G(x)+C\bigr)$ とおく。$e^{P(x)}y-G(x)=C$ なので $\bigl(e^{P(x)}y-G(x)\bigr)'=0$ で、段 2 により $y$ は解である。以上で (1) が示された。
段 5(初期条件)。(1) により、解は $y=e^{-P(x)}\bigl(G(x)+C\bigr)$ の形のものに限る。$x=x_0$ を代入すると、$P(x_0)=0$、$G(x_0)=0$ なので $y(x_0)=e^0(0+C)=C$ である。よって $y(x_0)=y_0$ となるのは $C=y_0$ のときだけで、そのとき確かに解である(段 4)。$\square$

段 3 で平均値の定理を使うところで、$I$ が区間であることが効いている。区間でない集合(たとえば 2 つの区間を並べたもの)では、導関数が $0$ でも定数とは限らない(ex-fol-cx-interval)。また、$p$ の連続性は段 1 で $P'=p$ を得るのに使った。$p$ が連続でないと定理が崩れる例は ex-fol-cx-singular で見る。
定理の証明は、微分方程式としての指数関数・三角関数 の定理「$y'=ky$ の解」の証明で $e^{-kx}$ を掛けて $ye^{-kx}$ が定数であることを示したのと同じ考え方である。$p(x)=-k$、$q=0$、$x_0=0$ とすると $P(x)=-kx$、$G=0$ で、定理は「$y=Ce^{kx}$ に限る」になる。

$y'+y=x$ を公式で解く

$p=1$、$q=x$、$I=\mathbb{R}$、$x_0=0$ とする。$P(x)=x$ で、部分積分により
$$ G(x)=\int_0^xte^t\,dt=\Bigl[te^t\Bigr]_0^x-\int_0^xe^t\,dt=xe^x-(e^x-1)=(x-1)e^x+1 $$
である。thm-fol-main により解は
$$ y=e^{-x}\bigl((x-1)e^x+1+C\bigr)=x-1+(C+1)e^{-x} $$
に限り、$y(0)=y_0$ の解は $C=y_0$ の $y=x-1+(y_0+1)e^{-x}$ ただ 1 つである。$y_0=0$ なら $y=x-1+e^{-x}$ で、ex-fol-start の (4) と一致する。ex-fol-start で求めた $y=x-1+Ce^{-x}$ も、$C+1$ を改めて $C$ と書けば同じ形であり、それ以外に解がないことが定理で保証された。

$x>0$ で $y'+\dfrac1xy=x$ を解く

$p(x)=\dfrac1x$、$q(x)=x$、$I=(0,\infty)$、$x_0=1$ とする。ex-fol-factor の (2) により $P(x)=\log x$、$e^{P(x)}=x$、$e^{-P(x)}=\dfrac1x$ である。
$$ G(x)=\int_1^xt\cdot t\,dt=\Bigl[\frac{t^3}3\Bigr]_1^x=\frac{x^3}3-\frac13 $$
なので、thm-fol-main により解は
$$ y=\frac1x\left(\frac{x^3}3-\frac13+C\right)=\frac{x^2}3+\frac{C-\frac13}{x} $$
に限る。$C-\dfrac13$ を改めて $C$ と書けば $y=\dfrac{x^2}3+\dfrac Cx$ である。

代入して確かめる計算を開く

$y=\dfrac{x^2}3+\dfrac Cx$ なら $y'=\dfrac{2x}3-\dfrac C{x^2}$、$\dfrac1xy=\dfrac x3+\dfrac C{x^2}$ で、和は $\dfrac{2x}3+\dfrac x3=x$ である。


$y(1)=1$ の解は $\dfrac13+C=1$ から $C=\dfrac23$ で、$y=\dfrac{x^2}3+\dfrac2{3x}$、たとえば $y(2)=\dfrac43+\dfrac13=\dfrac53$ である。

ex-fol-start の (1)(2) の考え方は、次の形で一般に成り立つ。

一般解 = 特殊解 + 同次方程式の解

thm-fol-main の仮定のもとで、$y_1$ を $y'+p(x)y=q(x)$ の $I$ 上の解の 1 つとする。このとき、$I$ 上の解は、ちょうど
$$ y=y_1+Ce^{-P(x)}\qquad(C\text{ は定数}) $$
の形の関数である。

段 1(差は同次方程式の解)。$y$ を解とし、$z=y-y_1$ とおく。$y'+py=q$ と $y_1'+py_1=q$ を引くと $z'+p(x)z=0$ である。これは $q=0$ の場合の 1 階線形微分方程式なので、thm-fol-main($q=0$ なので $G=0$)により $z=Ce^{-P(x)}$ である。よって $y=y_1+Ce^{-P(x)}$ である。
段 2(この形はすべて解)。$\bigl(Ce^{-P(x)}\bigr)'=-p(x)Ce^{-P(x)}$ なので、$z=Ce^{-P(x)}$ は $z'+pz=0$ を満たす。$y=y_1+z$ とおくと $y'+py=(y_1'+py_1)+(z'+pz)=q+0=q$ である。$\square$

$y_1$ を 特殊解、$Ce^{-P(x)}$ の全体を同次方程式の 一般解 という。この系により、特殊解は 1 つ見つければ十分で、見つけ方は何でもよい。ex-fol-start の (1) のように、右辺 $q(x)$ と同じ形の式を置いて係数を決める方法(恒等式と未定係数法)は、積分の計算を避けられるので便利である。

二項間漸化式とくらべる

二項間漸化式 で学ぶ $a_{n+1}=ra_n+s$ と、係数が定数の $y'+ky=m$ は、同じ構造をもっている。漸化式は「次の項が今の項の 1 次式で決まる」、微分方程式は「変化の速さが今の値の 1 次式で決まる」という決まりである。以下、$r\ne1$、$k\ne0$ とする。

漸化式 $a_{n+1}=ra_n+s$微分方程式 $y'+ky=m$
変わらない解不動点 $\alpha=\dfrac s{1-r}$($\alpha=r\alpha+s$)定常解 $y=\dfrac mk$($0+k\cdot\dfrac mk=m$)
変わらない解との差$a_n-\alpha$ は公比 $r$ の等比数列$y-\dfrac mk$ は $z'=-kz$ の解
一般の解$\alpha+Cr^{n-1}$$\dfrac mk+Ce^{-kx}$
変わらない解に近づく条件$\lvert r\rvert<1$$k>0$
右辺が一般のときの公式$a_n=r^{n-1}a_1+\displaystyle\sum_{j=1}^{n-1}r^{n-1-j}f(j)$$y=e^{-k(x-x_0)}y_0+\displaystyle\int_{x_0}^xe^{-k(x-t)}q(t)\,dt$
共鳴$f(n)=cr^n$ のとき $cnr^{n-1}$$q(x)=e^{-kx}$ のとき $xe^{-kx}$

表の「右辺が一般のときの公式」の行の右側は、thm-fol-main で $p=k$ とした式である。$P(x)=k(x-x_0)$ なので、$e^{-P(x)}e^{P(t)}=e^{-k(x-t)}$ となり、
$$ y=e^{-k(x-x_0)}\left(\int_{x_0}^xq(t)e^{k(t-x_0)}\,dt+y_0\right)=e^{-k(x-x_0)}y_0+\int_{x_0}^xe^{-k(x-t)}q(t)\,dt $$
である。左側の公式は 二項間漸化式 の定理「一般項を和で表す公式」で、$j$ 番目に加わった $f(j)$ が、残りの $n-1-j$ 回で $r^{n-1-j}$ 倍される。右側では、時刻 $t$ に加わった $q(t)$ が、残りの時間 $x-t$ の間に $e^{-k(x-t)}$ 倍に減る。和が積分に、$r$ の累乗が $e^{-k\times(\text{時間})}$ に替わっただけである。
表の最後の行の「共鳴」は、右辺が同次方程式の解と同じ形のときに起こる。

共鳴:$y'+y=e^{-x}$

右辺 $e^{-x}$ は同次方程式 $y'+y=0$ の解と同じ形である。$y=ae^{-x}$ と置くと $y'+y=-ae^{-x}+ae^{-x}=0$ で、どんな $a$ でも右辺 $e^{-x}$ にならない。
そこで積分因子 $e^x$ を掛けると、$(e^xy)'=e^x\cdot e^{-x}=1$ である。thm-fol-main($x_0=0$)により $e^xy=x+C$、つまり
$$ y=(x+C)e^{-x} $$
に限る。特殊解 $xe^{-x}$ には $x$ が掛かっている。

代入による確かめと、一般の $k$ の場合を開く

$y=(x+C)e^{-x}$ なら $y'=e^{-x}-(x+C)e^{-x}$ で、$y'+y=e^{-x}$ である。一般に、$k\ne0$ で $y'+ky=e^{-kx}$ なら、積分因子 $e^{kx}$ を掛けて $(e^{kx}y)'=1$ となり、$y=(x+C)e^{-kx}$ に限る。

二項間漸化式 の例「定数項が指数:公比が $p$ と一致するとき(共鳴)」で $n2^{n-1}$ と $n$ が掛かったのと同じ現象である。2 階の方程式では、外から加える力の振動数が、ばねの固有の振動数と一致するときに同じ現象が起こり、振れ幅が時間に比例して大きくなる(強制振動と共振(高校数学))。

右辺が周期的なとき:$y'+y=\cos x$

右辺が $\cos x$ なので、$y=a\cos x+b\sin x$ と置く。$y'=-a\sin x+b\cos x$ だから
$$ y'+y=(a+b)\cos x+(b-a)\sin x $$
である。これが $\cos x$ に等しいように係数を比べると $a+b=1$、$b-a=0$ で、$a=b=\dfrac12$ となる。cor-fol-structure により解は
$$ y=\frac{\cos x+\sin x}2+Ce^{-x} $$
に限る。三角関数の合成(加法定理から積和・和積・合成・正接の公式を導く)で $\dfrac{\cos x+\sin x}2=\dfrac1{\sqrt2}\cos\left(x-\dfrac\pi4\right)$ なので、$x$ が大きくなると、どの解も振幅 $\dfrac1{\sqrt2}$ で、右辺より $\dfrac\pi4$ だけ遅れた振動に近づく。

応用:電気回路と冷却

コンデンサーの充電

抵抗の大きさ $R$ の抵抗と、電気容量 $c$ のコンデンサーを直列につなぎ、時刻 $t=0$ に電圧 $E$ の電池をつなぐ。コンデンサーの電圧を $V(t)$ とすると、流れる電流は $cV'$ で、抵抗での電圧の下がり $RcV'$ とコンデンサーの電圧 $V$ の和が $E$ に等しいので
$$ RcV'+V=E,\qquad V(0)=0 $$
である。$\tau=Rc$(時定数という)とおくと $V'+\dfrac1\tau V=\dfrac E\tau$ で、$p=\dfrac1\tau$、$q=\dfrac E\tau$ はどちらも定数である。$t_0=0$ とすると $P(t)=\dfrac t\tau$ で
$$ G(t)=\int_0^t\frac E\tau e^{s/\tau}\,ds=\Bigl[Ee^{s/\tau}\Bigr]_0^t=E\bigl(e^{t/\tau}-1\bigr) $$
なので、thm-fol-main の (2) により、ただ 1 つの解は
$$ V=e^{-t/\tau}\Bigl(E\bigl(e^{t/\tau}-1\bigr)+0\Bigr)=E\bigl(1-e^{-t/\tau}\bigr) $$
である。$t=\tau$ では $V=E(1-e^{-1})=0.632\ldots\times E$ で、時定数は「最終の電圧の約 $63\%$ まで充電される時間」である。$\tau=2$、$E=5$ なら $V(2)=3.16\ldots$、$V(4)=4.32\ldots$、$V(10)=4.96\ldots$ である(図 2)。

時定数 2、電池の電圧 5 のコンデンサーの電圧 V=5(1-e^{-t/2}) のグラフ。t=2、4、10 での値を赤い点で示し、破線 V=5 に近づく 時定数 2、電池の電圧 5 のコンデンサーの電圧 V=5(1-e^{-t/2}) のグラフ。t=2、4、10 での値を赤い点で示し、破線 V=5 に近づく
変数分離形の微分方程式 の例「Newton の冷却の法則」では、周りの温度が一定の $20$ 度だった。周りの温度が時間とともに変わると、方程式は変数分離形でなくなるが、1 階線形なので積分因子で解ける。

周りの温度が上がるときの冷却

朝、温度 $90$ 度の飲み物を部屋に置く。部屋の温度は $u(t)=20+0.2t$($t$ は分)と、1 分に $0.2$ 度ずつ上がるとする。飲み物の温度 $T(t)$ が、冷却の法則 $T'=-k\bigl(T-u(t)\bigr)$($k=0.1$)に従うとすると、
$$ T'+0.1T=0.1u(t)=2+0.02t,\qquad T(0)=90 $$
である。右辺が $t$ の 1 次式なので、特殊解を $T_1=at+b$ と置くと
$$ a+0.1(at+b)=2+0.02t,\qquad\text{すなわち}\qquad 0.1at+(a+0.1b)=0.02t+2 $$
で、係数を比べて $0.1a=0.02$、$a+0.1b=2$ から $a=0.2$、$b=18$ となる。$T_1=0.2t+18$ である。cor-fol-structure により $T=0.2t+18+Ce^{-0.1t}$ で、$T(0)=90$ から $C=72$、
$$ T=0.2t+18+72e^{-0.1t} $$
である。$T(10)=20+72e^{-1}=46.48\ldots$、$T(30)=24+72e^{-3}=27.58\ldots$(部屋は $26$ 度)、$T(60)=30+72e^{-6}=30.17\ldots$(部屋は $32$ 度)である。
$72e^{-0.1t}=2$、つまり $t=10\log36=35.83\ldots$ 分で飲み物は部屋と同じ温度になり、その後は部屋より低くなる。十分時間がたつと $T$ は $T_1=u(t)-2$ に近づき、部屋の温度より $2$ 度低いまま一緒に上がっていく。部屋が温まる速さ $0.2$ に、飲み物の温度が追いつけないためで、遅れの $2$ 度は $\dfrac{0.2}{k}$ である(図 3)。

赤は部屋の温度 u=20+0.2t、青は飲み物の温度 T、灰色の破線は特殊解 T1=18+0.2t。T は 36 分ごろに u と交わり、その後は T1 に近づく 赤は部屋の温度 u=20+0.2t、青は飲み物の温度 T、灰色の破線は特殊解 T1=18+0.2t。T は 36 分ごろに u と交わり、その後は T1 に近づく

例と反例

thm-fol-main と cor-fol-structure の仮定を外すと何が崩れるかを並べる。

外す条件反例成り立たなくなること
$p$ が区間で連続$xy'-2y=0$($\mathbb{R}$ 上)初期条件を満たす解がただ 1 つある
方程式が線形$y'+y^2=0$右辺が $0$ の方程式の解どうしの和や定数倍がまた解である
定義域が区間$y'=0$($(-1,0)\cup(0,1)$ 上)解は公式の形(ここでは定数)に限る
反例:$p$ が連続でない $xy'-2y=0$

方程式 $xy'-2y=0$ を $\mathbb{R}$ 全体で考える。$x\ne0$ では $y'-\dfrac2xy=0$ と書けるが、$p(x)=-\dfrac2x$ は $x=0$ で定義されず、$0$ を含む区間で連続な $p$ をもつ形には書けない。
定数 $C_1$、$C_2$ を任意にとり
$$ y=\begin{cases}C_1x^2&(x\ge0)\\C_2x^2&(x<0)\end{cases} $$
とおく。$x>0$ では $xy'-2y=x\cdot2C_1x-2C_1x^2=0$、$x<0$ でも同じく $0$ である。$x=0$ では、右からの差分商は $\dfrac{C_1h^2}h=C_1h\to0$、左からは $C_2h\to0$ なので $y'(0)=0$ で、$0\cdot0-2\cdot0=0$ を満たす。よって、$\mathbb{R}$ 上の解で $y(0)=0$ を満たすものが無数にある(図 4)。また、$x=0$ を代入すると $-2y(0)=0$ なので、$y(0)=1$ を満たす解は 1 つもない。初期条件を $x_0=0$ で与えると、解の存在も一意性も崩れる。
$x>0$ だけで考えれば $p=-\dfrac2x$ は連続で、thm-fol-main により $y(1)=C_1$ の解は $C_1x^2$ ただ 1 つである。崩れるのは、$p$ が連続でなくなる点 $x=0$ をまたいだときである。

xy'-2y=0 の解のうち 4 本。x が正の側と負の側で係数を別々に選べ、どれも原点を通る xy'-2y=0 の解のうち 4 本。x が正の側と負の側で係数を別々に選べ、どれも原点を通る

反例:線形でない $y'+y^2=0$

$x>0$ で $y_1=\dfrac1x$、$y_2=\dfrac1{x+1}$ とおくと、$y_1'=-\dfrac1{x^2}=-y_1^2$、$y_2'=-\dfrac1{(x+1)^2}=-y_2^2$ で、どちらも $y'+y^2=0$ の解である。和 $s=y_1+y_2$ については
$$ s'+s^2=-\frac1{x^2}-\frac1{(x+1)^2}+\frac1{x^2}+\frac2{x(x+1)}+\frac1{(x+1)^2}=\frac2{x(x+1)}\ne0 $$
なので、$s$ は解でない($x=1$ で $s'+s^2=1$)。定数倍 $2y_1$ も $(2y_1)'+(2y_1)^2=\dfrac2{x^2}\ne0$ で解でない。線形の方程式では、cor-fol-structure の段 2 のように、同次方程式の解を足しても定数倍しても解であり、その性質が「一般解 = 特殊解 + $Ce^{-P}$」を支えている。$y'+y^2=0$ ではその性質がない。

解が区間全体に延びない例を開く

$y(0)=-1$ の解 $y=\dfrac1{x-1}$ は $x\to1-0$ で負の無限大に発散し($y'=-\dfrac1{(x-1)^2}=-y^2$)、$x=1$ を越えて延ばせない。1 階線形微分方程式の解は、thm-fol-main の公式により $p$、$q$ が連続な区間 $I$ 全体で定義されるので、このようなことは起こらない。

反例:定義域が区間でない

$D=(-1,0)\cup(0,1)$ の上で $y'=0$($p=q=0$)を考える。
$$ y=\begin{cases}0&(-1< x<0)\\1&(0< x<1)\end{cases} $$
は $D$ のすべての点で微分可能で $y'=0$ を満たすが、$D$ 全体で定数ではない。thm-fol-main の段 3 で使った平均値の定理は、$x_1=-\dfrac12$、$x_2=\dfrac12$ を結ぶ区間の中に $D$ に属さない点 $0$ があるので使えない。区間ごとに別の定数を選べるので、「解は公式の形に限る」が崩れる。

大学数学で見る:線形写像と解の集合

$I$ で微分可能な関数 $y$ に、関数 $L[y]=y'+p(x)y$ を対応させる。微分の性質から、関数 $y$、$z$ と定数 $a$、$b$ について
$$ L[ay+bz]=(ay+bz)'+p(ay+bz)=a\bigl(y'+py\bigr)+b\bigl(z'+pz\bigr)=aL[y]+bL[z] $$
が成り立つ。このような対応を 線形写像 という。方程式 $y'+p(x)y=q(x)$ は $L[y]=q$ と書ける。

  • 同次方程式 $L[y]=0$ の解の全体は、$L$ の 核 とよばれる集合で、thm-fol-main により $\Set{Ce^{-P(x)} \mid C\in\mathbb{R}}$ である。これは 1 つの関数 $e^{-P(x)}$ の定数倍の全体で、1 次元のベクトル空間である。
  • cor-fol-structure は、$L[y]=q$ の解の全体が「特殊解 $y_1$ + 核」になることを言っている。平面の中の原点を通る直線を $y_1$ だけ平行移動した直線のような集合で、これを アフィンな集合 という。連立 1 次方程式の解の全体が「特殊解 + 同次方程式の解」になるのと同じ構造である。
    定数変化法と、区間全体での存在と一意性を開く

    積分因子のほかに、定数変化法とよばれる解き方もある。同次方程式の解 $Ce^{-P(x)}$ の定数 $C$ を関数 $C(x)$ に置き換えて $y=C(x)e^{-P(x)}$ とおくと、$y'=C'(x)e^{-P(x)}-p(x)C(x)e^{-P(x)}$ なので $y'+p(x)y=C'(x)e^{-P(x)}$ となる。これが $q(x)$ に等しいのは $C'(x)=q(x)e^{P(x)}$ のときで、$C(x)=\displaystyle\int_{x_0}^xq(t)e^{P(t)}\,dt+C$ となる。できあがる式は thm-fol-main の式と同じで、計算の中身も同じである($C(x)$ は $e^{P(x)}y$ そのもの)。定数変化法は 2 階以上の線形方程式にも使える形で一般化される。

    thm-fol-main は、1 階線形微分方程式の初期値問題が、$p$、$q$ が連続な区間 $I$ の全体で解をただ 1 つもつことを示している。Leb26a Exercise 6.3.6 は、この主張を Picard の定理(初期値問題の解の存在と一意性の定理)の線形の場合として挙げ、積分因子の式をヒントにした演習としている。一般の(線形でない)方程式 $y'=F(x,y)$ の Picard の定理は、解の存在と一意性を初期値の近くでしか保証しない(変数分離形の微分方程式 の注意「Picard–Lindelöf の定理(証明しない)」、この記事では証明しない)。線形の方程式では、公式が具体的に書けるので、区間全体で解が定まる。

さらに先へ

  • 右辺に外からの力がある 2 階の方程式 $x''+\omega^2x=F\cos\Omega t$ も、「特殊解 + 右辺を $0$ にした方程式の解」の形で解ける。外力の振動数が固有の振動数と一致すると、ex-fol-resonance と同じく $t$ が掛かった解が現れる(強制振動と共振(高校数学))。
  • 微分を掛け算に変える Laplace 変換を使うと、ex-fol-rc のような初期値問題を分数式の計算で解ける(Laplace変換の入口(高校数学))。
  • 未知の関数が 2 つ以上ある連立の 1 階線形微分方程式 $\boldsymbol{y}'=A\boldsymbol{y}$ は、行列の指数関数 $e^{xA}$ で解ける(行列の指数関数)。

関連項目

参考文献

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