被覆次元

同義語:Lebesgue被覆次元ルベーグ被覆次元Čech–Lebesgue次元covering dimensionLebesgue covering dimension

概要

被覆次元(covering dimension)とは、正規空間 $X$ の任意の有限開被覆が、どの点も高々 $n+1$ 個の元にしか属さない有限開被覆で細分できるような最小の整数 $n$ を $\dim X$ とするもので、細かく覆うとき避けられない開集合の重なりの個数で次元を測る位相不変量である。Lebesgue 被覆次元ともいう。基本的な結果は $\dim[0,1]^n=n$ で、下からの評価は、向かい合う面の両方と交わる元のない有限開被覆には $n+1$ 個の元に属する点があるという Lebesgue の被覆定理(Brouwer の不動点定理から従う)による。これから次元の異なる立方体は同相でないことが分かる。$\dim X=0$ は、互いに素な閉集合を開かつ閉な集合で分けられることと同値である。

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{div}[0]{\mathbin{÷}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: 正規空間, 開被覆, 細分, コンパクト空間, 距離空間

線分は細かい開区間で覆うとき、隣どうしが重なるだけで済み、どの点も高々 2 個の区間にしか入らないようにできる。正方形を細かい開集合で覆うと、煉瓦を互い違いに積んだ壁のように工夫しても、どこかに 3 個が重なる点がどうしても残る。被覆次元(covering dimension)は、この「細かく覆うとき避けられない重なりの個数」で空間の次元を測る。Lebesgue 被覆次元、Čech–Lebesgue 次元ともいう。
定義は開集合だけで書かれるので、被覆次元は位相で決まる量(位相不変量)である。いちばん基本的な事実は、$n$ 次元の立方体 $[0,1]^n$ の被覆次元がちょうど $n$ であることで、これにより次元の異なる Euclid 空間の立方体どうしが同相でないことも分かる。この記事では、被覆次元を定義し、0 次元の空間の特徴づけを与え、$\dim[0,1]^n=n$ を完全に証明する。下からの評価の要は Lebesgue の被覆定理で、Brouwer の不動点定理から導く。上からの評価には単体の重心細分を使う。

定義

被覆の位数

集合 $X$ の部分集合の族 $\mathcal{U}$ と整数 $m\ge0$ について、$\mathcal{U}$ の位数が $m$ 以下であるとは、$X$ のどの点も $\mathcal{U}$ の高々 $m$ 個の元にしか属さないことをいう。

位数の数え方には流儀がある。この記事と Pontryaginの曲面 の記事は「1 点が属する元の個数の最大値」で数える。Eng78 の Definition 1.6.6(p. 54)は「共通部分が空でない元の個数の最大値から 1 を引いた数」を位数(order)と呼ぶので、この記事の「位数 $n+1$ 以下」は Eng78 の「$\operatorname{ord}\le n$」にあたる。

被覆次元

$X$ を正規空間、$n\ge-1$ を整数とする。$X$ の任意の有限な開被覆が、位数 $n+1$ 以下の有限な開被覆で細分できるとき、$\dim X\le n$ と書く。$\dim X\le n$ となる $n$ の最小値を $X$ の被覆次元といい $\dim X$ で表す。そのような $n$ がなければ $\dim X=\infty$ とする。

ここで開被覆 $\mathcal{V}$ が $\mathcal{U}$ の細分であるとは、$\mathcal{V}$ の各元が $\mathcal{U}$ のある元に含まれることをいう(細分)。$\dim X=-1$ は $X=\emptyset$ と同じである(空でない空間では、位数 $0$ 以下の被覆は空集合しか元にもてず、覆えない)。

  • 被覆次元は位相不変量である:同相写像 $h\colon X\to Y$ は開被覆・細分・位数をそのまま移す。
  • 定義の条件そのものは任意の位相空間で意味をもつが、閉集合の分離を使う基本定理(下の prop-covdim-zero など)のために正規空間で考える。Eng78 の Definition 1.6.7(p. 54)も正規空間について定義している。
  • コンパクト距離空間では、この定義は Pontryaginの曲面 の記事の定義「被覆次元」と一致する(そちらはコンパクト距離空間に限って同じ条件で定義している)。
    「位数 $n+1$ 以下の細分がある」ことが問題なのであって、与えられた被覆そのものの位数ではない。$[0,1]$ を $\{[0,1],[0,1)\}$ で覆うと点 $0$ は 2 個の元に入るが、$\{[0,1]\}$ という位数 1 の細分がある。どんなに細かい被覆にも、重なりの少ない細分がとれるかどうかを見ている。

直感:煉瓦の壁

平面を一辺 $\varepsilon$ の正方形の格子で覆い、各正方形を少し膨らませた開集合にすると、格子点のまわりでは 4 個が重なる。これは細分の工夫で減らせる。煉瓦のように、1 段ごとに半分ずらして並べると、どの点のまわりにも高々 3 個の煉瓦しか集まらない。$\mathbb{R}^3$ でも同じように積めば 4 個まで減らせる。一方、どう工夫しても平面で 2 個まで、つまり線分と同じ重なり方にはできない、というのが Lebesgue の発見である(Leb11 p. 166)。どちらの向きも、下の thm-covdim-cube の証明で確かめる。被覆次元の定義はこの現象を「細分の位数の最小値」として取り出したものである。

0 次元の空間

$\dim X=0$ は、任意の有限開被覆が、互いに交わらない開集合からなる有限開被覆で細分できることを意味する。互いに交わらない開集合で覆うと各元は閉集合でもある(補集合がほかの元の和集合)。次の命題は、これを閉集合の分離で言い換える。

0 次元の特徴づけ

正規空間 $X$ について、次は同値である。

  1. $\dim X\le0$。
  2. 互いに素な任意の閉集合 $A,B\subset X$ に対し、開かつ閉な集合 $C$ で $A\subset C\subset X\setminus B$ となるものがある。

1 から 2:$\{X\setminus A,\ X\setminus B\}$ は $A\cap B=\emptyset$ より有限開被覆である。位数 $1$ 以下の有限開細分 $\mathcal{W}$ をとる。位数 $1$ 以下なので $\mathcal{W}$ の相異なる元は互いに交わらない。$\mathcal{W}$ の元のうち $X\setminus A$ に含まれるものの和集合を $D$、残りの元の和集合を $C$ とする。残りの元は $X\setminus A$ に含まれないので $X\setminus B$ に含まれ、$C\subset X\setminus B$ である。$C$ と $D$ は開集合で、互いに交わらず、$X$ を覆うので、どちらも開かつ閉である。$D\cap A=\emptyset$ だから $A\subset C$ である。
2 から 1:$\{U_1,\dots,U_k\}$ を有限開被覆とする。
段 1(閉集合への縮小).閉集合 $F_i\subset U_i$ で $X=F_1\cup\dots\cup F_k$ となるものをとる(正規性を $k$ 回使う)。

詳細

$i=1,\dots,k$ の順に、$U_i$ を開集合 $V_i$ で $\overline{V_i}\subset U_i$ となるものに取り替えても被覆のままであるようにすればよい。$V_1,\dots,V_{i-1}$ まで取り替えたとき、$E:=X\setminus(V_1\cup\dots\cup V_{i-1}\cup U_{i+1}\cup\dots\cup U_k)$ は閉集合で $E\subset U_i$ である。正規性を互いに素な閉集合 $E$ と $X\setminus U_i$ に使うと、開集合 $V_i\supset E$、$W\supset X\setminus U_i$ で $V_i\cap W=\emptyset$ となるものがあり、$\overline{V_i}\subset X\setminus W\subset U_i$ である。$E\subset V_i$ なので取り替えた後も被覆である。最後に $F_i:=\overline{V_i}$ とおく。


段 2(開かつ閉な集合で囲む).各 $i$ で $F_i$ と $X\setminus U_i$ は互いに素な閉集合なので、2 により開かつ閉な $C_i$ で $F_i\subset C_i\subset U_i$ となるものがある。$C_1,\dots,C_k$ は $X$ を覆う。
段 3(互いに交わらないようにする).$D_i:=C_i\setminus(C_1\cup\dots\cup C_{i-1})$ とおく。開かつ閉な集合の有限個の和・差は開かつ閉なので $D_i$ は開集合で、$D_i\subset C_i\subset U_i$、$D_1,\dots,D_k$ は互いに交わらず $X$ を覆う。これは位数 $1$ 以下の有限開細分であり、$\dim X\le0$ である。$\square$

2 の条件は、帰納次元 の記事の大きな帰納次元について $\operatorname{Ind}X\le0$ と同じ条件である(Eng78 Theorem 1.6.11、p. 56)。

開かつ閉な集合の可算基

距離空間 $X$ が、開かつ閉な集合からなる可算な開基をもつならば、$\dim X\le0$ である。

距離空間は正規である。$\{U_1,\dots,U_k\}$ を有限開被覆とし、開基の元のうちどれかの $U_i$ に含まれるものを $C_1,C_2,\dots$ と並べる(有限個なら有限列)。開基なので $C_m$ は $X$ を覆う。$D_m:=C_m\setminus(C_1\cup\dots\cup C_{m-1})$ は開かつ閉で、互いに交わらず、$X$ を覆う。各 $D_m$ に、$D_m\subset C_m\subset U_i$ となる最小の $i$ を対応させ、$E_i$ を $i$ に対応する $D_m$ の和集合とする。$E_i$ は開集合で $E_i\subset U_i$、$E_1,\dots,E_k$ は互いに交わらず $X$ を覆う。これは位数 $1$ 以下の有限開細分である。$\square$

prf-covdim-clopen-base で $D_m$ をそのまま使うと可算個の元をもつ細分になり、定義の「有限な開被覆」を満たさない。最後に $U_i$ ごとにまとめ直すのはそのためである。

0 次元の例

次の距離空間は、開かつ閉な集合からなる可算基をもつので、prop-covdim-clopen-base により被覆次元 $0$ である(空でないので $-1$ ではない)。

  • 有理数 $\mathbb{Q}$:$a,b\in\sqrt2+\mathbb{Q}$(無理数)に対する $(a,b)\cap\mathbb{Q}$ の全体。端点が $\mathbb{Q}$ に属さないので、$(a,b)\cap\mathbb{Q}=[a,b]\cap\mathbb{Q}$ は開かつ閉である。
  • 無理数の全体 $\mathbb{R}\setminus\mathbb{Q}$:$a,b\in\mathbb{Q}$ に対する $(a,b)\setminus\mathbb{Q}$ の全体。同じ理由で開かつ閉である。
  • Cantor集合 $C$:$[0,1]$ から中央の $1/3$ を取り除く操作を $m$ 回行って残る長さ $3^{-m}$ の閉区間 $J$ に対する $J\cap C$ の全体。$J\cap C$ は $C$ の閉集合であり、$J$ を少し広げた開区間と $C$ の共通部分でもあるので開集合である。
  • 有限集合や可算な離散空間:一点集合の全体。
    $\mathbb{Q}$ と無理数の全体の和は $\mathbb{R}$ で、$\dim\mathbb{R}\ge1$ である(下の cor-covdim-euclid)。0 次元の部分空間 2 個の和の次元が上がりうることが分かる。

閉部分空間

正規空間の閉部分空間は正規なので、その被覆次元が定義される。

閉部分空間の被覆次元

正規空間 $X$ の閉集合 $M$ について $\dim M\le\dim X$ である。

$\dim X=\infty$ なら示すことはない。$\dim X\le n$ とし、$\{M\cap O_1,\dots,M\cap O_k\}$($O_i$ は $X$ の開集合)を $M$ の有限開被覆とする。$\{O_1,\dots,O_k,X\setminus M\}$ は $X$ の有限開被覆なので、位数 $n+1$ 以下の有限開細分 $\mathcal{V}$ がある。$\{V\cap M\mid V\in\mathcal{V}\}$ は $M$ の有限開被覆で、位数は $n+1$ 以下である($M$ の点が属する $V\cap M$ の個数は、その点が属する $V$ の個数以下)。$V\cap M\ne\emptyset$ なら $V$ は $X\setminus M$ に含まれないので、ある $O_i$ に含まれ、$V\cap M\subset M\cap O_i$ である(空集合はどの元にも含まれる)。よって $\dim M\le n$。$\square$

コンパクト距離空間の場合は Pontryaginの曲面 の記事の補題「閉集合の次元」と同じ議論である。閉という仮定は外せない(下の「反例」の節の表)。

立方体の被覆次元

この節の主定理は次である。以下 $I^n:=[0,1]^n$($n\ge1$)とし、$i=1,\dots,n$ について向かい合う面を
$$ A_i:=\{x\in I^n\mid x_i=0\},\qquad B_i:=\{x\in I^n\mid x_i=1\} $$
とする。$\mathbb{R}^n$ には Euclid 距離 $\|\cdot\|$ を入れる。$x\in A_i$、$y\in B_i$ なら $\| x-y\|\ge\lvert x_i-y_i\rvert=1$ なので、直径 $1$ 未満の集合は $A_i$ と $B_i$ の両方とは交わらない。

立方体の被覆次元

すべての $n\ge1$ について $\dim I^n=n$ である。

証明の構成

証明は、下からの評価(Lebesgue の被覆定理)と上からの評価(重心細分の開星)に分かれる。

下からの評価:Lebesgue の被覆定理

まず、Brouwer の不動点定理を立方体で使える形にする。

立方体と閉球体は同相

$I^n$ は閉球体 $D^n:=\{y\in\mathbb{R}^n\mid\| y\|\le1\}$ と同相である。したがって $I^n$ からそれ自身への連続写像は不動点をもつ。

要点:$[-1,1]^n$ の点 $x$ を、向きを保ったまま長さを $\max_i\lvert x_i\rvert$ に縮める写像が $D^n$ への同相写像になる。

詳しい証明を開く

$x\mapsto2x-(1,\dots,1)$ で $I^n$ は $[-1,1]^n$ と同相である。$\| x\|_\infty:=\max_i\lvert x_i\rvert$ とし、$$h(x):=\frac{\| x\|_\infty}{\| x\|}\,x\quad(x\ne0),\qquad h(0):=0$$とおく。$\| h(x)\|=\| x\|_\infty$ なので $h$ は $[-1,1]^n$ を $D^n$ に写し、原点でも連続である。逆向きに $k(y):=\dfrac{\| y\|}{\| y\|_\infty}\,y$($y\ne0$)、$k(0):=0$ とおくと、$\| k(y)\|_\infty=\| y\|$ なので $k$ は $D^n$ を $[-1,1]^n$ に写し、原点でも連続である。$y\ne0$ について $\| k(y)\|=\| y\|^2/\| y\|_\infty$ だから$$h(k(y))=\frac{\| y\|}{\| y\|^2/\| y\|_\infty}\cdot\frac{\| y\|}{\| y\|_\infty}\,y=y$$であり、同様に $k(h(x))=x$ である。よって $h$ は同相写像である。


後半は Brouwerの不動点定理 の記事の定理(全次元の場合は 写像度 の記事の系「球面は円板のレトラクトでない」と レトラクト の記事の命題「Brouwerの不動点定理との同値性」による)と、Brouwerの不動点定理 の記事の命題「同相な空間への移し替え」による。$\square$

面を保つ写像は全射

連続写像 $g\colon I^n\to I^n$ が、すべての $i$ について $g(A_i)\subset A_i$ かつ $g(B_i)\subset B_i$ を満たすならば、$g$ は全射である。

$c\in I^n$ を任意にとる。$\pi\colon\mathbb{R}^n\to I^n$ を座標ごとに $[0,1]$ へ切り詰める写像 $\pi(y)_i:=\min\{1,\max\{0,y_i\}\}$ とし、
$$ T(x):=\pi\bigl(x-g(x)+c\bigr)\qquad(x\in I^n) $$
とおく。$T\colon I^n\to I^n$ は連続なので、lem-covdim-cube-ball により不動点 $x=T(x)$ がある。各 $i$ について $g_i(x)=c_i$ を示す。

  • $0< x_i<1$ のとき:$\pi$ の第 $i$ 成分の値が $(0,1)$ に入るのは、切り詰める前の値 $x_i-g_i(x)+c_i$ が $(0,1)$ に入っていてそのまま出てくるときだけである。よって $x_i=x_i-g_i(x)+c_i$、すなわち $g_i(x)=c_i$。
  • $x_i=0$ のとき:$x\in A_i$ なので $g_i(x)=0$ で、切り詰める前の値は $c_i\in[0,1]$、切り詰めた値も $c_i$ である。不動点なので $c_i=x_i=0=g_i(x)$。
  • $x_i=1$ のとき:同様に $g_i(x)=1$ で、$c_i=x_i=1=g_i(x)$。
    よって $g(x)=c$ であり、$g$ は全射である。$\square$
Lebesgueの被覆定理

$\mathcal{U}$ を $I^n$ の有限開被覆とし、どの元も、どの $i$ についても $A_i$ と $B_i$ の両方とは交わらないとする。このとき、$\mathcal{U}$ の少なくとも $n+1$ 個の元に属する点がある。

空集合の元は除いてよい。$\mathcal{U}=\{U_1,\dots,U_k\}$(相異なる空でない開集合)とする。どの $U_j$ も $A_1$ と $B_1$ の両方と交わることはないので $U_j\ne I^n$ であり、$E_j:=I^n\setminus U_j$ は空でない閉集合である。
段 1(1 の分割). $d_j(x):=\inf\{\| x-y\|\mid y\in E_j\}$ は連続で、$d_j(x)>0$ と $x\in U_j$ は同値である($E_j$ は閉集合)。各点はどれかの $U_j$ に入るので $\sum_ld_l(x)>0$ であり、
$$ \varphi_j(x):=\frac{d_j(x)}{\sum_{l=1}^kd_l(x)} $$
は連続で、$\varphi_j\ge0$、$\sum_j\varphi_j=1$、$\varphi_j(x)>0\iff x\in U_j$ を満たす。
段 2(面を保つ写像). 各 $j$ について点 $p_j\in I^n$ を、第 $i$ 座標が、$U_j$ が $A_i$ と交わるなら $0$、$B_i$ と交わるなら $1$、どちらとも交わらないなら $\frac12$ となるように定める(仮定により両方と交わることはない)。
$$ g(x):=\sum_{j=1}^k\varphi_j(x)\,p_j $$
は $p_j$ の凸結合なので $I^n$ に値をもつ連続写像である。$x\in A_i$ とすると、$\varphi_j(x)>0$ となる $j$ では $x\in U_j\cap A_i$ なので $p_j$ の第 $i$ 座標は $0$ であり、$g_i(x)=0$、すなわち $g(x)\in A_i$ である。同様に $g(B_i)\subset B_i$ である。lem-covdim-face により $g$ は全射である。
段 3(重なりが少ないと全射にならない). どの点も $\mathcal{U}$ の高々 $n$ 個の元にしか属さないと仮定する。点 $x$ で $\varphi_j(x)>0$ となる $j$ の集合 $J$ は $n$ 個以下で、$g(x)$ は $\{p_j\mid j\in J\}$ の凸包に入る。$n$ 個以下の点を通るアフィン部分空間 $L_J$ の次元は $n-1$ 以下なので、
$$ I^n=g(I^n)\subset\bigcup_{\lvert J\rvert\le n}L_J $$
となる。右辺は有限個の、$\mathbb{R}^n$ の真のアフィン部分空間の和である。真のアフィン部分空間は超平面 $\{a\cdot y=b\}$($a\ne0$)に含まれるので、内点をもたない閉集合である。内点をもたない閉集合 $F,G$ の和も内点をもたない(空でない開集合 $W\subset F\cup G$ があれば、$W\setminus F$ は空でない開集合で $G$ に含まれ矛盾)。帰納的に右辺は内点をもたないが、左辺 $I^n$ は内点をもつ。これは矛盾である。よって $n+1$ 個以上の元に属する点がある。$\square$

Lebesgue 自身は閉集合の被覆で述べた(Leb11 p. 166、Eng78 1.8.15、p. 78)。閉集合版も開集合版から導ける。

閉集合による被覆

$I^n$ が有限個の閉集合 $F_1,\dots,F_k$ で覆われ、どの $F_j$ もどの $i$ についても $A_i$ と $B_i$ の両方とは交わらないならば、少なくとも $n+1$ 個の $F_j$ に属する点がある。

要点:$F_j$ を少し太らせた開集合に thm-covdim-lebesgue を使い、太らせ方を $0$ に近づけて極限をとる。

詳しい証明を開く

$F_j\cap A_i=\emptyset$ となる組 $(j,i)$ について、$F_j$ と $A_i$ はコンパクトで交わらないので距離 $\operatorname{dist}(F_j,A_i)$ は正である。$B_i$ についても同じで、これらの正の数(有限個)の最小値を $\delta_0$ とする(空でない $F_j$ だけを考える)。$0<\delta<\delta_0$ について $U_j^\delta:=\{x\in I^n\mid\operatorname{dist}(x,F_j)<\delta\}$ とおくと、$U_j^\delta$ は開集合で $F_j$ を含み、$F_j$ が交わらない面とは交わらない。よって thm-covdim-lebesgue により、ある点 $x_\delta$ と $n+1$ 個の添字の集合 $J_\delta$ があって、$j\in J_\delta$ なら $\operatorname{dist}(x_\delta,F_j)<\delta$ である。

$\delta=\delta_0/(m+1)$($m=1,2,\dots$)とすると、添字の集合は有限通りしかないので、ある $J$ が無限個の $m$ で現れる。その $m$ に沿った点列は、$I^n$ がコンパクトなので収束する部分列をもち、極限 $x$ は $j\in J$ について $\operatorname{dist}(x,F_j)=0$、すなわち $x\in F_j$ を満たす($F_j$ は閉集合)。$\square$

下からの評価

$\dim I^n\ge n$ である。

$\dim I^n\le n-1$ と仮定する。$I^n$ はコンパクトなので、半径 $\frac13$ の開球と $I^n$ の共通部分の有限個で覆える。この有限開被覆は、仮定により位数 $n$ 以下の有限開細分 $\mathcal{W}$ をもつ。$\mathcal{W}$ の各元は直径 $\frac23<1$ 以下の集合に含まれるので、どの $A_i$ と $B_i$ の両方とも交わらない。thm-covdim-lebesgue により $\mathcal{W}$ の $n+1$ 個以上の元に属する点があり、位数 $n$ 以下であることに矛盾する。$\square$

上からの評価:重心細分の開星

上からの評価は、立方体を単体に取り替えて行う。単体・単体複体・多面体の用語は 単体複体 の記事、重心細分は 重心細分 の記事にしたがう。有限な幾何的単体複体 $K$ の多面体 $\lvert K\rvert$ は $\mathbb{R}^N$ からの相対位相をもつコンパクト距離空間である(単体複体 の記事の命題「有限単体複体の多面体の位相」)。
頂点 $v$ の開星 $\operatorname{st}(v)$ を、$v$ を頂点にもつ単体の開単体の和集合、すなわち $\lvert K\rvert$ の点 $y$ のうち、$y$ の台($y$ を開単体に含む唯一の単体、単体複体 の記事の補題「各点の台」)が $v$ を頂点にもつものの全体とする。Pontryaginの曲面 の記事の命題「開星の被覆の位数」により、$K$ の次元が $n$ 以下なら、開星の全体は $\lvert K\rvert$ の開被覆で位数は $n+1$ 以下である。

多面体の被覆次元の上からの評価

$K$ を次元 $n$ 以下の有限な幾何的単体複体とすると、$\dim\lvert K\rvert\le n$ である。

$\mathcal{U}$ を $\lvert K\rvert$ の有限開被覆とする。$\lvert K\rvert$ はコンパクト距離空間なので、細分 の記事の定理「Lebesgue 数の存在」により $\lambda>0$ があって、直径 $\lambda$ 未満の部分集合はどれも $\mathcal{U}$ のある元に含まれる。重心細分 の記事の系「反復した重心細分の網目」により、$r$ を十分大きくとると $L:=\operatorname{sd}^rK$ の単体の直径の最大値(網目)は $\lambda/2$ 未満になる。同記事の定理「重心細分は単体複体の細分である」により $L$ は $\lvert L\rvert=\lvert K\rvert$ を満たす幾何的単体複体で、位相も一致する。$L$ の単体は $K$ の単体の重心の鎖が張るもので、鎖の長さは $n+1$ 以下なので、$L$ の次元も $n$ 以下である。
$L$ の頂点 $v$ の開星を考える。$y\in\operatorname{st}(v)$ なら、$y$ と $v$ は $y$ の台の単体に属するので $\| y-v\|<\lambda/2$ である。よって $\operatorname{st}(v)$ の 2 点の距離は $v$ を経由して $\lambda$ 未満であり、$\operatorname{st}(v)$ は $\mathcal{U}$ のある元に含まれる。開星の全体は $\lvert K\rvert$ の有限開被覆で位数 $n+1$ 以下なので、これが求める細分である。$\square$

$\Delta^n$ を標準 $n$ 単体とする。単体複体 の記事の命題「単体は閉球体と同相」により $\Delta^n$ は $D^n$ と同相で、lem-covdim-cube-ball により $D^n$ は $I^n$ と同相である。$\Delta^n$ はその面の全体という次元 $n$ の有限単体複体の多面体なので、prop-covdim-upper により $\dim\Delta^n\le n$ である。被覆次元は位相不変量なので $\dim I^n\le n$ であり、prop-covdim-lower と合わせて $\dim I^n=n$ である。$\square$

帰結と例

Euclid 空間・球面・Hilbert 立方体

$n\ge1$ とする。

  1. $\dim D^n=\dim\Delta^n=n$。
  2. $\dim S^n=n$。ここで $S^n:=\{y\in\mathbb{R}^{n+1}\mid\| y\|=1\}$。
  3. $\dim\mathbb{R}^n\ge n$。
  4. Hilbert立方体 $[0,1]^{\mathbb{N}}$(直積位相)の被覆次元は $\infty$ である。
  1. thm-covdim-cube と同相による。
  2. 単体複体 の記事の命題「単体は閉球体と同相」により、$S^n$ は $(n+1)$ 単体の境界 $\partial\Delta^{n+1}$ と同相で、$\partial\Delta^{n+1}$ は真の面の全体という次元 $n$ の有限単体複体の多面体なので、prop-covdim-upper により $\dim S^n\le n$。一方、上半球 $S^n_+:=\{y\in S^n\mid y_{n+1}\ge0\}$ は $S^n$ の閉集合で、$(y_1,\dots,y_{n+1})\mapsto(y_1,\dots,y_n)$ は $S^n_+$ から $D^n$ への連続な全単射(逆は $y_{n+1}=\sqrt{1-\sum_{i\le n}y_i^2}$)なので、コンパクト空間から Hausdorff 空間への連続な全単射として同相である。prop-covdim-closed と 1 により $\dim S^n\ge n$。
  3. $\mathbb{R}^n$ は距離空間なので正規で、$I^n$ はその閉集合である。prop-covdim-closed による。
  4. $[0,1]^{\mathbb{N}}$ はコンパクト距離化可能なので正規である(位相空間の埋め込み定理 の記事の命題「Hilbert 立方体の距離」と Tychonoffの定理)。各 $n$ について $I^n\times\{0\}\times\{0\}\times\cdots$ は $I^n$ と同相な閉集合なので、prop-covdim-closed により $\dim[0,1]^{\mathbb{N}}\ge n$ がすべての $n$ で成り立つ。$\square$

$\dim\mathbb{R}^n=n$ も成り立つ(Eng78 Theorem 1.8.2、p. 73。正規空間の可算個の閉集合の和についての可算和定理(Eng78 Theorem 3.1.8、p. 212)を $\mathbb{R}^n=\bigcup_{m}[-m,m]^n$ に使えば上の結果から出る)が、この記事では証明しない。

立方体の次元の不変性

$m\ne n$ なら $I^m$ と $I^n$ は同相でない。

被覆次元は位相不変量であり、thm-covdim-cube により $\dim I^m=m\ne n=\dim I^n$ である。$\square$

$[0,1]$ と $[0,1]^2$ の間には全単射があり(Cantor、1878)、$[0,1]$ から $[0,1]^2$ への連続な全射もある(Peano 曲線、1890)。どちらも Eng78 p. 6 の歴史的注意にある。次元の違いを見分けるには、全単射性と連続性の両方、すなわち同相であることが要る。

$[0,1]$ の細かい被覆

$\varepsilon>0$ に対し $N>2/\varepsilon$ をとり、$[0,1]$ を開集合 $V_j:=\bigl(\frac{j-1}{N},\frac{j+1}{N}\bigr)\cap[0,1]$($j=0,\dots,N$)で覆う。各元の直径は $2/N<\varepsilon$ 以下で、点 $x$ が属するのは $\lvert x-\frac jN\rvert<\frac1N$ となる $j$ だけ、すなわち高々 2 個である。これは prf-covdim-upper で $K$ を線分 $[0,1]$ の $N$ 等分とした開星の被覆そのものである。一方 thm-covdim-lebesgue により、直径 $1$ 未満の元からなる $[0,1]$ の有限開被覆には、必ず 2 個の元に属する点がある:$0$ を含む元と $1$ を含む元は異なり、$[0,1]$ は連結なので、互いに交わらない開集合だけでは覆えない。

正方形の煉瓦

$I^2$ を、$\varepsilon$ 程度の大きさの長方形を 1 段ごとに半分ずらして積んだ「煉瓦」で覆い、各煉瓦を少し膨らませて開集合にする。煉瓦の角は隣の段の煉瓦の辺の中ほどに来るので、どの点も高々 3 個の煉瓦にしか入らない。$\dim I^2\le2$ はこのような被覆からも分かる。$\dim I^2\ge2$ は、どんな細かい有限開被覆にも 3 個が重なる点があるという thm-covdim-lebesgue の $n=2$ の場合である。

反例

被覆次元についての主張の条件を外したときの反例を表にする。

外す条件反例成り立たなくなること
Lebesgue の被覆定理の「どの元も向かい合う面の両方とは交わらない」$I^n$ の被覆 $\{I^n\}$$n+1$ 個以上の元に属する点がある(どの点も 1 個にしか属さない)
閉部分空間の定理の「閉」Dowker の例:$\dim Z=0$ のコンパクト空間 $Z$ と、その正規な部分空間 $X$ で $\dim X>0$ のもの$\dim X\le\dim Z$
次元の不変性の「同相」を「連続な全射」にするPeano 曲線 $[0,1]\to[0,1]^2$写像の像の次元は元の次元以下
次元の不変性の「同相」を「全単射」にするCantor の全単射 $[0,1]\to[0,1]^2$全単射なら次元が等しい
0 次元の部分空間の和の「閉」(可算和定理の型の主張)$\mathbb{R}=\mathbb{Q}\cup(\mathbb{R}\setminus\mathbb{Q})$0 次元の部分空間 2 個の和は 0 次元
  • 1 行目:$\{I^n\}$ は $A_1$ と $B_1$ の両方と交わる。仮定を外すと、重なりのない被覆がありうる。$n=1$ でも定理の結論(2 個に属する点)が破れる。
  • 2 行目:Eng78 Example 2.2.11(p. 176)と、Theorem 3.1.4 の後の注意(p. 209)。この記事では証明しない。$X$ は $Z$ の閉集合ではない。
  • 3・4 行目:cor-covdim-invariance の後の注意。Peano 曲線は全単射でなく、Cantor の全単射は連続でない。
  • 5 行目:ex-covdim-zero-examples と cor-covdim-euclid。$\mathbb{Q}$ と無理数の全体はともに被覆次元 $0$ だが、無理数の全体は $\mathbb{R}$ の閉集合でない。正規空間の可算個の閉集合の和の次元は各閉集合の次元の上限を超えない(可算和定理、Eng78 Theorem 3.1.8、p. 212。この記事では証明しない)。

ほかの次元との関係

被覆次元のほかに、境界の次元で帰納的に定める小さな帰納次元 $\operatorname{ind}$ と大きな帰納次元 $\operatorname{Ind}$ がある(帰納次元)。正規空間では $\dim X\le\operatorname{Ind}X$ であり(Eng78 Theorem 3.1.28、p. 220)、$\dim X=0$ と $\operatorname{Ind}X=0$ は同値である(prop-covdim-zero)。可分距離空間では 3 つの次元は一致する(一致定理、Eng78 Theorem 1.7.7、p. 65)。一致定理はこの記事では証明せず、次元論の一致定理 の記事が扱う。
コンパクト距離空間の被覆次元は、係数つきのコホモロジーで測ったコホモロジー次元と比べられる。係数によって次元が変わる例と、積の次元が和にならない例は Pontryaginの曲面 の記事にある。

関連項目

参考文献

[1]
Ryszard Engelking, Dimension Theory, North-Holland Mathematical Library 19, North-Holland / PWN, 1978, Definition 1.6.6・1.6.7(位数と被覆次元、p. 54)、Theorem 1.6.11(Ind=0 と dim=0 の同値、p. 56)、Theorem 1.7.7(一致定理、p. 65)、Theorem 1.8.2(p. 73)、1.8.15 Lebesgue の被覆定理(p. 78)、Example 2.2.11(Dowker の例、p. 176)、Theorem 3.1.4 とその後の注意(p. 209)、Theorem 3.1.8(可算和定理、p. 212)、Theorem 3.1.28(p. 220)、第 1.1 節の歴史的注意(Cantor 1878・Peano 1890、p. 6)
[2]
Henri Lebesgue, Sur la non-applicabilité de deux domaines appartenant respectivement à des espaces à n et n+p dimensions, Mathematische Annalen, Mathematische Annalen 70 (1911), 166–168。p. 166(有限個の小さな閉集合による被覆には n+1 個に共通な点があるという主張)

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