Heron三角形

同義語:ヘロン三角形Heronian triangle

概要

Heron三角形(Heronian triangle)とは、3 辺の長さと面積がすべて有理数である三角形である。3 本の高さはすべて有理数で、最も長い辺に下ろした垂線の足はその辺の内部にあり、辺を有理数の長さに分ける。したがって Heron 三角形は、3 辺が有理数の 2 つの直角三角形を共通の辺で貼り合わせたものであり、逆にそのように貼り合わせた三角形は Heron 三角形である。3 辺が整数の Heron 三角形では、周の長さは偶数で、面積は整数かつ $6$ の倍数である。例は $13,14,15$(面積 $84$)や $4,13,15$(面積 $24$)で、3 辺が整数でも周が奇数の三角形($2,3,4$ など)は面積が無理数になる。

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{div}[0]{\mathbin{÷}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: ピタゴラス数と円の有理点, Heronの公式とCayley–Menger行列式, 三角形の面積の公式, 合同式の計算規則

高校での出発点:3 辺も面積も整数の三角形

3 辺の長さが整数の直角三角形は、ピタゴラス数 $3,4,5$ や $5,12,13$ から作れる(ピタゴラス数と円の有理点)。直角三角形でない三角形で、3 辺の長さも面積も整数になるものはあるだろうか。3 辺から面積を求める Heron の公式で、いくつかの三角形を調べてみる。
Heron の公式は、3 辺の長さが $a,b,c$、$s=\dfrac{a+b+c}2$ の三角形の面積 $S$ が
$$ S=\sqrt{s(s-a)(s-b)(s-c)} $$
であるという公式で、両辺を 2 乗して $16$ 倍した形
$$ 16S^2=(a+b+c)(-a+b+c)(a-b+c)(a+b-c) $$
でも使う。証明は Heronの公式とCayley–Menger行列式 にある。

3 辺が $13,14,15$ の三角形

$a=14$、$b=15$、$c=13$ とすると $s=21$ で、
$$ S=\sqrt{21\cdot(21-14)\cdot(21-15)\cdot(21-13)}=\sqrt{21\cdot7\cdot6\cdot8}=\sqrt{7056}=84 $$
である。面積は整数になった。
3 本の高さは、面積が「底辺 $\times$ 高さ $\mathbin{÷}2$」であることから、高さ $=\dfrac{2S}{\text{底辺}}$ で求まる。
$$ \frac{2\cdot84}{14}=12,\qquad \frac{2\cdot84}{15}=\frac{56}5,\qquad \frac{2\cdot84}{13}=\frac{168}{13} $$
長さ $14$ の辺に下ろした垂線の高さは $12$ で、整数である。座標で見ると、$B(0,0)$、$C(14,0)$、$A(5,12)$ とおけば $AB=\sqrt{5^2+12^2}=13$、$AC=\sqrt{9^2+12^2}=15$ で、垂線の足は $D(5,0)$ である。辺 $BC$ は $BD=5$ と $DC=9$ に分かれ、三角形 $ABC$ は

  • 3 辺が $5,12,13$ の直角三角形 $ABD$
  • 3 辺が $9,12,15$ の直角三角形 $ADC$
    を、長さ $12$ の辺 $AD$ で貼り合わせたものになっている。
面積が整数になる例とならない例
  1. 3 辺が $5,5,6$ の二等辺三角形。$s=8$ で $S=\sqrt{8\cdot3\cdot3\cdot2}=\sqrt{144}=12$ である。長さ $6$ の辺への高さは $\dfrac{24}6=4$ で、辺は $3$ と $3$ に分かれる。$3,4,5$ の直角三角形 2 つを、長さ $4$ の辺で貼り合わせたものである。
  2. 3 辺が $5,5,8$ の二等辺三角形。$s=9$ で $S=\sqrt{9\cdot4\cdot4\cdot1}=\sqrt{144}=12$ である。長さ $8$ の辺への高さは $\dfrac{24}8=3$ で、$4,3,5$ の直角三角形 2 つを長さ $3$ の辺で貼り合わせたものである。
  3. 3 辺が $2,3,4$ の三角形。$s=\dfrac92$ で
    $$ S^2=\frac92\cdot\frac52\cdot\frac32\cdot\frac12=\frac{135}{16},\qquad S=\frac{\sqrt{135}}4=\frac{3\sqrt{15}}4 $$
    である。$135=3^3\cdot5$ は平方数でないので、面積は無理数である。
3 辺が 13, 14, 15 の三角形は、高さ 12 の垂線で 5, 12, 13 と 9, 12, 15 の直角三角形に分かれる 3 辺が 13, 14, 15 の三角形は、高さ 12 の垂線で 5, 12, 13 と 9, 12, 15 の直角三角形に分かれる
3 辺が 4, 13, 15 の三角形は、9, 12, 15 の直角三角形から 5, 12, 13 の直角三角形を取り除いた形になる 3 辺が 4, 13, 15 の三角形は、9, 12, 15 の直角三角形から 5, 12, 13 の直角三角形を取り除いた形になる

図 1 は ex-hrt-start の分け方である。図 2 の三角形は 3 辺が $4,13,15$ で、面積は $24$ である。こちらは $9,12,15$ の直角三角形から $5,12,13$ の直角三角形を取り除いた形で、「差として貼り合わせた」三角形になっている。
これらの例から、次の問いが出てくる。

  1. 3 辺と面積が有理数の三角形は、いつも 2 つの直角三角形の貼り合わせか。→ thm-hrt-glue
  2. 3 辺が整数で面積が有理数なら、面積はどんな整数か。周の長さについて何が言えるか。→ thm-hrt-six
  3. 面積が無理数になる ex-hrt-start2 の (3) のような三角形は、どこで条件を外れているか。→ ex-hrt-cx-odd
    高校の計算この記事の言葉大学の言葉
    Heron の公式の根号がはずれるHeron 三角形曲線・曲面の有理点
    高さ $=\dfrac{2S}{\text{底辺}}$高さが有理数有理数体の上で閉じた計算
    直角三角形に分ける2 つの有理数の直角三角形の貼り合わせ単位円の有理点の組
    余りで場合分けする周は偶数、面積は $6$ の倍数合同式による障害

言葉の準備:Heron 三角形

Heron 三角形

3 辺の長さと面積がすべて有理数である三角形を Heron 三角形 という。3 辺の長さが整数である Heron 三角形を 整数の Heron 三角形 という。

Heron 三角形の 3 辺をすべて $k$ 倍($k$ は正の有理数)すると、面積は $k^2$ 倍になるので、やはり Heron 三角形である。3 辺の分母の最小公倍数を $k$ にとれば、どの Heron 三角形も、整数の Heron 三角形と相似である。そこで、3 辺の最大公約数が $1$ の整数の Heron 三角形を調べれば、すべての Heron 三角形が相似を除いて分かる。

Heron 三角形の例
  1. 3 辺が有理数の直角三角形は Heron 三角形である。3 辺が $a,b,c$($c$ が斜辺)なら面積は $\dfrac{ab}2$ で、有理数である。$3,4,5$ の面積は $6$、$5,12,13$ の面積は $30$ である。
  2. ex-hrt-start の $13,14,15$(面積 $84$)、ex-hrt-start2 の $5,5,6$ と $5,5,8$(面積 $12$)、図 2 の $4,13,15$(面積 $24$)は、整数の Heron 三角形である。
  3. 3 辺が $\dfrac{13}2,7,\dfrac{15}2$ の三角形は、$13,14,15$ を $\dfrac12$ 倍したものなので、面積は $\dfrac{84}4=21$ の Heron 三角形である。辺は整数でない。

主定理 1:2 つの直角三角形の貼り合わせ

ex-hrt-start では、垂線の足が辺の内部にあり、辺を整数の長さに分けた。図 2 の $4,13,15$ では、長さ $4$ の辺に下ろした垂線の足は辺の外に出ている。どの辺に下ろせば足が辺の内部にくるかを、まず確かめる。

最も長い辺に下ろした垂線の足

三角形 $ABC$ で $a=BC$、$b=CA$、$c=AB$ とし、$a\ge b$ かつ $a\ge c$($BC$ が最も長い辺)とする。頂点 $A$ から直線 $BC$ に下ろした垂線の足を $D$ とすると、$D$ は線分 $BC$ の内部(両端を除く)にあり、
$$ BD=\frac{a^2+c^2-b^2}{2a},\qquad DC=\frac{a^2+b^2-c^2}{2a} $$
である。

要点:$B(0,0)$、$C(a,0)$、$A(p,h)$($h>0$)とおくと、足は $D(p,0)$ で、$c^2=p^2+h^2$ と $b^2=(p-a)^2+h^2$ を引き算すれば $p=\dfrac{a^2+c^2-b^2}{2a}$ が出る。$a$ が最も長いので、$p$ の分子と $a-p$ の分子はどちらも正になる。

詳しい証明を開く

$B(0,0)$、$C(a,0)$ とし、$A$ の座標を $(p,h)$($h>0$)とする。$A$ から $x$ 軸に下ろした垂線の足は $D(p,0)$ である。2 点間の距離の公式から $c^2=AB^2=p^2+h^2$、$b^2=AC^2=(p-a)^2+h^2$ である。1 つ目の式から 2 つ目の式を引くと $h^2$ が消えて $c^2-b^2=p^2-(p-a)^2=2ap-a^2$ となる。$a>0$ なので $p=\dfrac{a^2+c^2-b^2}{2a}$ である。

$D$ が線分 $BC$ の内部にあることは、$0< p< a$ と同じである。仮定 $a\ge b$ から $a^2\ge b^2$ なので $a^2+c^2-b^2\ge c^2>0$、よって $p>0$ である。また $a-p=\dfrac{2a^2-(a^2+c^2-b^2)}{2a}=\dfrac{a^2+b^2-c^2}{2a}$ で、仮定 $a\ge c$ から $a^2+b^2-c^2\ge b^2>0$、よって $a-p>0$ である。$BD=p$、$DC=a-p$ なので、示すべき式が得られた。$\square$

最も長い辺でない辺では、lem-hrt-foot の式の $BD$ や $DC$ が負になることがある(負の値は、足が辺の外にあることを表す)。図 2 の $4,13,15$ で長さ $4$ の辺を $BC$、$CA=15$、$AB=13$ にとると、$p=\dfrac{16+169-225}{8}=-5$ で、足は $B$ の外側 $5$ の位置にくる。

Heron 三角形は 2 つの直角三角形の貼り合わせ
  1. Heron 三角形の 3 本の高さは、すべて有理数である。
  2. Heron 三角形 $ABC$ の最も長い辺を $BC$ とし、$A$ から $BC$ に下ろした垂線の足を $D$ とする。$D$ は辺 $BC$ の内部にあり、$BD$、$DC$、$AD$ はすべて有理数である。したがって三角形 $ABC$ は、3 辺が有理数の 2 つの直角三角形 $ABD$ と $ADC$ を、共通の辺 $AD$ で貼り合わせたものである。
  3. 逆に、3 辺が有理数の 2 つの直角三角形で、直角をはさむ辺の一方が同じ長さ $h$ のものを考える。もう一方の直角をはさむ辺を $d_1$、$d_2$、斜辺を $\ell_1$、$\ell_2$ とする。長さ $h$ の辺を重ねて反対側に並べると、3 辺が $\ell_1,\ell_2,d_1+d_2$ の Heron 三角形ができる。$d_1\ne d_2$ なら、同じ側に重ねると、3 辺が $\ell_1,\ell_2,\lvert d_1-d_2\rvert$ の Heron 三角形ができる。
  1. 3 辺を $a,b,c$、面積を $S$ とする。長さ $a$ の辺への高さを $h_a$ とすると、$S=\dfrac12ah_a$ より $h_a=\dfrac{2S}a$ である。$S$ と $a$ は有理数で $a\ne0$ なので、$h_a$ は有理数である。ほかの 2 本の高さも同じである。
  2. lem-hrt-foot により、$D$ は辺 $BC$ の内部にあり、$BD=\dfrac{a^2+c^2-b^2}{2a}$ である。右辺は有理数の和・差・積・商なので、$BD$ は有理数である。$DC=a-BD$ も有理数であり、$AD=h_a$ は (1) により有理数である。$D$ が辺 $BC$ の内部にあるので、三角形 $ABC$ は線分 $AD$ で 2 つの三角形 $ABD$、$ADC$ に分かれ、どちらも $D$ で直角である。三角形 $ABD$ の 3 辺 $BD$、$AD$、$AB=c$ と、三角形 $ADC$ の 3 辺 $DC$、$AD$、$AC=b$ はすべて有理数である。
  3. 共通の辺を $y$ 軸の上に置く。$D(0,0)$、$A(0,h)$ とする。
    反対側に並べる場合は $B(-d_1,0)$、$C(d_2,0)$ とする。三平方の定理から $AB=\sqrt{d_1^2+h^2}=\ell_1$、$AC=\sqrt{d_2^2+h^2}=\ell_2$ で、$BC=d_1+d_2$ である。3 辺は有理数で、面積は $\dfrac12(d_1+d_2)h$ なので有理数である。
    同じ側に重ねる場合は $B(d_1,0)$、$C(d_2,0)$ とする。$AB=\ell_1$、$AC=\ell_2$ は同じで、$BC=\lvert d_1-d_2\rvert$ である。$d_1\ne d_2$ なので $B\ne C$ であり、$A$ は $x$ 軸の上にないので、3 点 $A,B,C$ は三角形をつくる。面積は $\dfrac12\lvert d_1-d_2\rvert h$ で、有理数である。$\square$
  1. で「最も長い辺」を選んだのは、足が辺の内部にくることを保証するためである。ほかの辺でも、両端の角が鋭角なら同じように分けられる。ex-hrt-start では長さ $14$ の辺(最も長い辺ではない)で分けた。
$4,13,15$ を最も長い辺で分ける

3 辺が $4,13,15$ の三角形で、最も長い辺 $BC=15$、$CA=4$、$AB=13$ とする。lem-hrt-foot から
$$ BD=\frac{15^2+13^2-4^2}{2\cdot15}=\frac{225+169-16}{30}=\frac{378}{30}=\frac{63}5,\qquad DC=15-\frac{63}5=\frac{12}5 $$
であり、高さは $AD=\dfrac{2\cdot24}{15}=\dfrac{16}5$ である。

  • 三角形 $ABD$ の 3 辺は $\dfrac{63}5,\dfrac{16}5,13$ で、$63^2+16^2=3969+256=4225=65^2$ から、$16,63,65$ の直角三角形の $\dfrac15$ 倍である。
  • 三角形 $ADC$ の 3 辺は $\dfrac{12}5,\dfrac{16}5,4$ で、$3,4,5$ の直角三角形の $\dfrac45$ 倍である。
    全体を $5$ 倍すると、3 辺 $20,65,75$ の整数の Heron 三角形が、$16,63,65$ と $12,16,20$ の直角三角形を長さ $16$ の辺で貼り合わせたものとして得られる。

3 辺が 4, 13, 15 の三角形を最も長い辺 15 に下ろした垂線で分けると、辺は 63/5 と 12/5 に分かれ、高さは 16/5 になる 3 辺が 4, 13, 15 の三角形を最も長い辺 15 に下ろした垂線で分けると、辺は 63/5 と 12/5 に分かれ、高さは 16/5 になる
図 3 は ex-hrt-longest の分け方である。長さ $4$ の辺で見ると差の形(図 2)、長さ $15$ の辺で見ると和の形になる。
thm-hrt-glue の (3) を使うと、Heron 三角形をいくらでも作れる。

共通の辺 $12$ から作る

直角をはさむ辺の一方が $12$ の、3 辺が整数の直角三角形に $5,12,13$、$9,12,15$、$16,12,20$、$35,12,37$ がある(ピタゴラス数 $3,4,5$ の $3$ 倍・$4$ 倍と、原始的なピタゴラス数 $5,12,13$・$12,35,37$)。2 つずつ選んで thm-hrt-glue の (3) を使う。

選んだ 2 つ反対側に並べる(和)面積同じ側に重ねる(差)面積
$5,12,13$ と $9,12,15$$13,15,14$$84$$13,15,4$$24$
$5,12,13$ と $16,12,20$$13,20,21$$126$$13,20,11$$66$
$9,12,15$ と $16,12,20$$15,20,25$$150$$15,20,7$$42$
$16,12,20$ と $35,12,37$$20,37,51$$306$$20,37,19$$114$

面積はどれも $\dfrac12\cdot12\cdot(\text{第 3 の辺})=6\cdot(\text{第 3 の辺})$ である。$15,20,25$ は $3,4,5$ の $5$ 倍で、直角三角形になる。

このように 2 つの直角三角形を貼り合わせて有理数の辺の三角形を作る方法は古くから知られていて、Dic05b の p. 191–192 に、共通の辺 $12$ の直角三角形 $35,12,37$ と $16,12,20$ から 3 辺 $37,20,51$ の三角形を得る例が記録されている。

主定理 2:周は偶数、面積は $6$ の倍数

ex-hrt-build の面積 $84,24,126,66,150,42,306,114$ は、どれも $6$ の倍数である。ex-hrt-start2 の $5,5,6$ と $5,5,8$ の面積 $12$ も $6$ の倍数で、周の長さ $16$、$18$ は偶数である。これが一般に成り立つことを、余りを使って示す。合同式 $a\equiv b\pmod m$ の計算規則は 合同式の計算規則 で扱う。
まず、2 つの場面で使う補題を用意する。

3 つの奇数とその和の積

$u,v,w$ が奇数ならば、
$$ uvw(u+v+w)\equiv3\pmod4 $$
である。特に、$uvw(u+v+w)$ は整数の 2 乗ではない。

要点:$u,v,w$ のうち $4$ で割った余りが $3$ のものの個数を $k$ とすると、$uvw\equiv(-1)^k$、$u+v+w\equiv3+2k\pmod4$ である。$k$ が偶数なら積は $1\cdot3$、奇数なら $3\cdot1$ と合同で、どちらも $3$ である。整数の 2 乗を $4$ で割った余りは $0$ か $1$ である。

詳しい証明を開く

奇数を $4$ で割った余りは $1$ か $3$ である。$u,v,w$ のうち、$4$ で割った余りが $3$ のものの個数を $k$ とする($k=0,1,2,3$)。$3\equiv-1\pmod4$ なので $uvw\equiv(-1)^k\pmod4$、$u+v+w\equiv1\cdot(3-k)+3\cdot k=3+2k\pmod4$ である。

  • $k$ が偶数のとき:$uvw\equiv1$ で、$2k$ は $4$ の倍数なので $u+v+w\equiv3$ である。積は $1\cdot3=3$ と合同である。
  • $k$ が奇数のとき:$uvw\equiv-1\equiv3$ で、$2k$ を $4$ で割った余りは $2$ なので $u+v+w\equiv3+2=5\equiv1$ である。積は $3\cdot1=3$ と合同である。

どちらの場合も $uvw(u+v+w)\equiv3\pmod4$ である。一方、整数の 2 乗は、$(2m)^2=4m^2$、$(2m+1)^2=4(m^2+m)+1$ より、$4$ で割った余りが $0$ か $1$ である。よって $uvw(u+v+w)$ は整数の 2 乗ではない。$\square$

補題を小さい数で確かめる
  1. $u=v=w=1$:$1\cdot1\cdot1\cdot3=3$ で、$4$ で割った余りは $3$ である。
  2. $u=1$、$v=3$、$w=5$:$1\cdot3\cdot5\cdot9=135$ で、$135=4\cdot33+3$ である。この $135$ は ex-hrt-start2 の (3) で $16S^2$ として現れた数である。
整数の Heron 三角形の周と面積

3 辺の長さ $a,b,c$ が整数で、面積 $S$ が有理数の三角形について、次が成り立つ。
(R1) 周の長さ $a+b+c$ は偶数である。
(R2) 面積 $S$ は整数である。
(R3) 面積 $S$ は $6$ の倍数である。

方針:Heron の公式の右辺の 4 つの因数に lem-hrt-mod4 を当てて (i) を示し、半分にした 4 つの因数に同じ補題と $3$ で割った余りの場合分けを当てて (ii)・(iii) を示す。途中で「有理数の 2 乗が整数なら、その有理数は整数」を 2 回使う。
段 1(有理数の 2 乗が整数なら整数)。正の有理数 $r$ を既約分数 $r=\dfrac pq$($p,q$ は互いに素な正の整数)で書き、$r^2$ が整数だとする。$q>1$ なら、$q$ を割る素数 $\ell$ をとる。$r^2=\dfrac{p^2}{q^2}$ が整数なので $q^2$ は $p^2$ を割り、$\ell$ は $p^2$ を割る。素数が積を割れば因数のどちらかを割るので、$\ell$ は $p$ を割り、$p,q$ が互いに素であることに反する。よって $q=1$ で、$r$ は整数である。
段 2(周は偶数)。$x=-a+b+c$、$y=a-b+c$、$z=a+b-c$ とおく。三角形の成立条件(2 辺の和は残りの辺より長い)から $x,y,z$ は正の整数で、$x+y+z=a+b+c$ である。Heron の公式は
$$ 16S^2=(x+y+z)xyz $$
と書ける。左辺は $(4S)^2$ で、$4S$ は正の有理数、右辺は整数なので、段 1 により $4S$ は整数である。ここで $a+b+c$ が奇数だったとする。$(a+b+c)-x=2a$ は偶数なので $x$ は奇数であり、同じく $y,z$ も奇数である。lem-hrt-mod4 により $(x+y+z)xyz$ は整数の 2 乗でないが、これは $(4S)^2$ に等しく矛盾する。よって $a+b+c$ は偶数である。
段 3(面積は整数)。段 2 から $s=\dfrac{a+b+c}2$ は整数で、$x=2(s-a)$、$y=2(s-b)$、$z=2(s-c)$、$x+y+z=2s$ である。$u=s-a$、$v=s-b$、$w=s-c$ とおくと、$u,v,w$ は正の整数で $u+v+w=3s-(a+b+c)=s$ であり、
$$ 16S^2=2s\cdot2u\cdot2v\cdot2w\qquad\text{より}\qquad S^2=uvw(u+v+w) $$
である。右辺は整数なので、段 1 により $S$ は整数である。
段 4(面積は偶数)。$S$ が奇数だったとすると、$S^2=uvw(u+v+w)$ は奇数なので、4 つの因数 $u,v,w,u+v+w$ はすべて奇数である。lem-hrt-mod4 により $uvw(u+v+w)$ は整数の 2 乗でなく、$S^2$ に等しいことに矛盾する。よって $S$ は偶数である。
段 5(面積は $3$ の倍数)。$S$ が $3$ の倍数でなかったとする。$3$ は素数なので $S^2$ も $3$ の倍数でなく、4 つの因数 $u,v,w,u+v+w$ のどれも $3$ の倍数でない。$u,v,w$ を $3$ で割った余りは $1$ か $2$ である。3 つの余りがすべて同じなら $u+v+w\equiv3\cdot1$ または $3\cdot2$ で $3$ の倍数になってしまうので、余りは 2 つが同じで 1 つが違う。場合は次の 2 つである。

$u,v,w$ の余り(順不同)$u+v+w$ の余り$uvw(u+v+w)$ の余り
$1,1,2$$4\equiv1$$1\cdot1\cdot2\cdot1=2$
$2,2,1$$5\equiv2$$2\cdot2\cdot1\cdot2=8\equiv2$

どちらも $S^2\equiv2\pmod3$ である。一方、整数の 2 乗を $3$ で割った余りは、$(3m)^2=9m^2$、$(3m\pm1)^2=3(3m^2\pm2m)+1$ より $0$ か $1$ で、$2$ にならない。これは矛盾なので、$S$ は $3$ の倍数である。
段 4・段 5 から $S$ は $2$ の倍数かつ $3$ の倍数で、$2$ と $3$ は互いに素なので $6$ の倍数である。$\square$

主定理 2 を例で確かめる
  1. $13,14,15$:周は $42$。$s=21$、$u,v,w=7,6,8$ で $S^2=7\cdot6\cdot8\cdot21=7056$、$S=84=6\cdot14$ である。$v=6$ は偶数で $3$ の倍数でもあるので、4 つの因数がすべて奇数になる段 4 の場合にも、どれも $3$ の倍数でない段 5 の場合にも入らない。
  2. $5,5,8$:周は $18$。$s=9$、$u,v,w=4,4,1$ で $S^2=4\cdot4\cdot1\cdot9=144$、$S=12=6\cdot2$ である。
    もう 1 つの例を開く

    (3) $20,37,51$(ex-hrt-build):周は $108$。$s=54$、$u,v,w=34,17,3$ で $S^2=34\cdot17\cdot3\cdot54=93636$、$S=306=6\cdot51$ である。

段 2 で分かるように、3 辺が整数で周が奇数の三角形は、面積が有理数にならない。ex-hrt-start2 の (3) の $2,3,4$ はその例である。面積が $6$ の倍数であることと周が偶数であることは、Dic05b の p. 196 に、辺と面積が整数の三角形についての既知の結果として記録されている(証明の筋はこの記事のものと同じとは限らない)。

小さい Heron 三角形の表

3 辺が $30$ 以下で、3 辺の最大公約数が $1$ の整数の Heron 三角形は $26$ 個ある(すべての組 $a\le b\le c\le30$ について $16S^2$ が平方数かどうかを計算機で調べた)。そのうち直角三角形でないものの一部を表にする。3 辺を $a\le b\le c$ の順に書き、高さは長さ $a,b,c$ の辺への高さの順、最後の列は最も長い辺 $c$ を垂線の足で分けた 2 つの長さ(長さ $b$ の辺の側 $+$ 長さ $a$ の辺の側)である。

3 辺周面積高さ最長の辺の分け方
$5,5,6$$16$$12$$\frac{24}{5},\ \frac{24}{5},\ 4$$3+3$
$5,5,8$$18$$12$$\frac{24}{5},\ \frac{24}{5},\ 3$$4+4$
$10,13,13$$36$$60$$12,\ \frac{120}{13},\ \frac{120}{13}$$\frac{119}{13}+\frac{50}{13}$
$4,13,15$$32$$24$$12,\ \frac{48}{13},\ \frac{16}{5}$$\frac{63}{5}+\frac{12}{5}$
$13,14,15$$42$$84$$\frac{168}{13},\ 12,\ \frac{56}{5}$$\frac{42}{5}+\frac{33}{5}$
$9,10,17$$36$$36$$8,\ \frac{36}{5},\ \frac{72}{17}$$\frac{154}{17}+\frac{135}{17}$
$11,13,20$$44$$66$$12,\ \frac{132}{13},\ \frac{33}{5}$$\frac{56}{5}+\frac{44}{5}$
$7,15,20$$42$$42$$12,\ \frac{28}{5},\ \frac{21}{5}$$\frac{72}{5}+\frac{28}{5}$
$10,17,21$$48$$84$$\frac{84}{5},\ \frac{168}{17},\ 8$$15+6$
$13,20,21$$54$$126$$\frac{252}{13},\ \frac{63}{5},\ 12$$16+5$
3 辺が 30 以下の 26 個をすべて開く
3 辺周面積高さ最長の辺の分け方
$3,4,5$$12$$6$$4,\ 3,\ \frac{12}{5}$$\frac{16}{5}+\frac{9}{5}$
$5,5,6$$16$$12$$\frac{24}{5},\ \frac{24}{5},\ 4$$3+3$
$5,5,8$$18$$12$$\frac{24}{5},\ \frac{24}{5},\ 3$$4+4$
$5,12,13$$30$$30$$12,\ 5,\ \frac{60}{13}$$\frac{144}{13}+\frac{25}{13}$
$10,13,13$$36$$60$$12,\ \frac{120}{13},\ \frac{120}{13}$$\frac{119}{13}+\frac{50}{13}$
$4,13,15$$32$$24$$12,\ \frac{48}{13},\ \frac{16}{5}$$\frac{63}{5}+\frac{12}{5}$
$13,14,15$$42$$84$$\frac{168}{13},\ 12,\ \frac{56}{5}$$\frac{42}{5}+\frac{33}{5}$
$9,10,17$$36$$36$$8,\ \frac{36}{5},\ \frac{72}{17}$$\frac{154}{17}+\frac{135}{17}$
$8,15,17$$40$$60$$15,\ 8,\ \frac{120}{17}$$\frac{225}{17}+\frac{64}{17}$
$16,17,17$$50$$120$$15,\ \frac{240}{17},\ \frac{240}{17}$$\frac{161}{17}+\frac{128}{17}$
$11,13,20$$44$$66$$12,\ \frac{132}{13},\ \frac{33}{5}$$\frac{56}{5}+\frac{44}{5}$
$7,15,20$$42$$42$$12,\ \frac{28}{5},\ \frac{21}{5}$$\frac{72}{5}+\frac{28}{5}$
$10,17,21$$48$$84$$\frac{84}{5},\ \frac{168}{17},\ 8$$15+6$
$13,20,21$$54$$126$$\frac{252}{13},\ \frac{63}{5},\ 12$$16+5$
$13,13,24$$50$$60$$\frac{120}{13},\ \frac{120}{13},\ 5$$12+12$
$12,17,25$$54$$90$$15,\ \frac{180}{17},\ \frac{36}{5}$$\frac{77}{5}+\frac{48}{5}$
$7,24,25$$56$$84$$24,\ 7,\ \frac{168}{25}$$\frac{576}{25}+\frac{49}{25}$
$14,25,25$$64$$168$$24,\ \frac{336}{25},\ \frac{336}{25}$$\frac{527}{25}+\frac{98}{25}$
$3,25,26$$54$$36$$24,\ \frac{72}{25},\ \frac{36}{13}$$\frac{323}{13}+\frac{15}{13}$
$17,25,26$$68$$204$$24,\ \frac{408}{25},\ \frac{204}{13}$$\frac{253}{13}+\frac{85}{13}$
$17,25,28$$70$$210$$\frac{420}{17},\ \frac{84}{5},\ 15$$20+8$
$20,21,29$$70$$210$$21,\ 20,\ \frac{420}{29}$$\frac{441}{29}+\frac{400}{29}$
$6,25,29$$60$$60$$20,\ \frac{24}{5},\ \frac{120}{29}$$\frac{715}{29}+\frac{126}{29}$
$17,17,30$$64$$120$$\frac{240}{17},\ \frac{240}{17},\ 8$$15+15$
$11,25,30$$66$$132$$24,\ \frac{264}{25},\ \frac{44}{5}$$\frac{117}{5}+\frac{33}{5}$
$5,29,30$$64$$72$$\frac{144}{5},\ \frac{144}{29},\ \frac{24}{5}$$\frac{143}{5}+\frac{7}{5}$

表から次のことが読み取れる。

  • 周はすべて偶数で、面積はすべて $6$ の倍数である(thm-hrt-six)。
  • 高さは有理数だが、整数とは限らない(thm-hrt-glue の (1) は有理数であることしか言っていない)。
  • $10,17,21$、$13,20,21$ のように、最も長い辺を分けた長さと高さがすべて整数になるものがある。$10,17,21$ は $6,8,10$ と $15,8,17$ の直角三角形を長さ $8$ の辺で貼り合わせたものである。一方、$13,14,15$ では最も長い辺を分けた長さが整数でなく、整数の直角三角形に分けるには長さ $14$ の辺を使う(ex-hrt-start)。

例と反例

thm-hrt-glue と thm-hrt-six の条件を 1 つずつ外すと、次のように結論が崩れる。

外す条件反例成り立たなくなること
最も長い辺に下ろす$4,13,15$ の長さ $4$ の辺垂線の足が辺の内部にある
3 辺が有理数3 辺 $1,1,\sqrt2$(面積 $\frac12$)高さがすべて有理数
面積が有理数3 辺 $2,3,4$(周 $9$)周が偶数
3 辺が整数3 辺 $\frac32,2,\frac52$(面積 $\frac32$)面積が $6$ の倍数の整数
反例:最も長い辺でない辺では足が外に出る

3 辺 $4,13,15$ の三角形で、長さ $4$ の辺を $BC$、$CA=15$、$AB=13$ とする。lem-hrt-foot の要点と同じ座標で $p=\dfrac{4^2+13^2-15^2}{2\cdot4}=\dfrac{16+169-225}8=-5$ なので、垂線の足は $D(-5,0)$ で、辺 $BC$($0\le x\le4$)の外にある。角 $B$ は鈍角で、三角形は 2 つの直角三角形の和ではなく差になる(図 2)。lem-hrt-foot で「最も長い辺」を仮定した理由がここにある。

反例:辺が無理数だと高さは有理数とは限らない

3 辺が $1,1,\sqrt2$ の直角二等辺三角形の面積は $\dfrac12\cdot1\cdot1=\dfrac12$ で有理数である。しかし斜辺への高さは $\dfrac{2\cdot\frac12}{\sqrt2}=\dfrac{\sqrt2}2$ で、無理数である。thm-hrt-glue の (1) の証明の $h_a=\dfrac{2S}a$ は、$a$ が有理数であることを使っていた。

反例:周が奇数なら面積は無理数

3 辺が $2,3,4$ の三角形は、ex-hrt-start2 の (3) のとおり面積 $\dfrac{3\sqrt{15}}4$ が無理数で、Heron 三角形でない。周 $9$ は奇数で、thm-hrt-six の証明の段 2 で見たとおり、$16S^2=9\cdot5\cdot3\cdot1=135$ は $4$ で割った余りが $3$ である(ex-hrt-mod4 の (2))。
3 辺が整数で周が奇数の三角形は、同じ理由でどれも Heron 三角形でない。たとえば 1 辺 $3$ の正三角形(周 $9$)の面積は $\dfrac{\sqrt3}4\cdot9=\dfrac{9\sqrt3}4$ で、無理数である。1 辺が有理数 $a$ の正三角形の面積 $\dfrac{\sqrt3}4a^2$ はいつも無理数なので、正三角形は Heron 三角形にならない。

3 辺が 2, 3, 4 の三角形で長さ 4 の辺に垂線を下ろすと、分けた長さ 11/8 と 21/8 は有理数だが、高さは無理数になる 3 辺が 2, 3, 4 の三角形で長さ 4 の辺に垂線を下ろすと、分けた長さ 11/8 と 21/8 は有理数だが、高さは無理数になる
図 4 は、$2,3,4$ の三角形の長さ $4$ の辺への垂線である。lem-hrt-foot の式で分けた長さ $\dfrac{4^2+3^2-2^2}{8}=\dfrac{21}8$ と $\dfrac{11}8$ は有理数になるが、高さ $\dfrac{2S}4=\dfrac{3\sqrt{15}}8$ は無理数である。3 辺が有理数なら分けた長さはいつも有理数で、Heron 三角形かどうかを決めるのは高さ(つまり面積)である。

反例:辺が整数でないと面積は $6$ の倍数とは限らない

3 辺が $\dfrac32,2,\dfrac52$ の直角三角形($3,4,5$ の $\dfrac12$ 倍)の面積は $\dfrac12\cdot\dfrac32\cdot2=\dfrac32$ で、整数でない。Heron 三角形ではあるが、thm-hrt-six の結論 (ii)・(iii) は成り立たない。thm-hrt-six は 3 辺が整数であることを段 2 の偶奇の議論で使っている。

大学数学で見る:半角の正接と単位円の有理点

thm-hrt-glue は、Heron 三角形が「有理数の直角三角形 2 つ」に分かれることを言っていた。有理数の直角三角形は、単位円の有理点と対応する(ピタゴラス数と円の有理点)。この対応を使うと、Heron 三角形を 2 つの有理数で表せる。

半角の正接による判定

3 辺 $a,b,c$ が有理数の三角形 $ABC$ について、次の 3 つは同値である。
(R1) 三角形 $ABC$ は Heron 三角形である。
(R2) $\sin B$ は有理数である。
(R3) $\tan\dfrac B2$ は有理数である。

余弦定理から $\cos B=\dfrac{a^2+c^2-b^2}{2ac}$ で、3 辺が有理数なので $\cos B$ はいつも有理数である。
(i) と (ii):面積は $S=\dfrac12ac\sin B$ で、$a,c$ は $0$ でない有理数なので、$S$ が有理数であることと $\sin B$ が有理数であることは同値である。
(ii) と (iii):$0< B<\pi$ なので $-\pi< B<\pi$ を満たす。ピタゴラス数と円の有理点 の系「$\tan\frac\theta2$ 置換との一致」により、$\cos B$ と $\sin B$ がともに有理数であることと、$\tan\dfrac B2$ が有理数であることは同値である。$\cos B$ はいつも有理数なので、$\sin B$ が有理数であることと $\tan\dfrac B2$ が有理数であることは同値である。$\square$

Heron 三角形の媒介変数表示

$t=\tan\dfrac B2$、$u=\tan\dfrac C2$ を $0< t<1$、$0< u<1$ の有理数とし、高さ $1$ の 2 つの直角三角形を貼り合わせると、3 辺が
$$ \frac{1+t^2}{2t},\qquad \frac{1+u^2}{2u},\qquad \frac{1-t^2}{2t}+\frac{1-u^2}{2u} $$
の Heron 三角形(面積は第 3 の辺の $\dfrac12$)ができる。最も長い辺を $BC$ にとれば、どの Heron 三角形もこの形の三角形と相似である。

この表示が得られる理由と例を開く

thm-hrt-glue の (2) で、直角三角形 $ABD$ の $D$ で直角、$B$ の角を $B$ とすると、$\dfrac{BD}{AB}=\cos B$、$\dfrac{AD}{AB}=\sin B$ は有理数で、点 $(\cos B,\sin B)$ は単位円の有理点である。ピタゴラス数と円の有理点 の定理「単位円の有理点の媒介変数表示」と系により、$t=\tan\dfrac B2$ として $\cos B=\dfrac{1-t^2}{1+t^2}$、$\sin B=\dfrac{2t}{1+t^2}$ である。$B$ は鋭角(lem-hrt-foot から $BD>0$)なので $0< t<1$ である。高さ $AD$ を $1$ にそろえると $AB=\dfrac1{\sin B}=\dfrac{1+t^2}{2t}$、$BD=\dfrac{\cos B}{\sin B}=\dfrac{1-t^2}{2t}$ である。$C$ の側も同じで、$u=\tan\dfrac C2$ として $AC=\dfrac{1+u^2}{2u}$、$DC=\dfrac{1-u^2}{2u}$ である。

例:$t=\dfrac23$、$u=\dfrac12$ とすると、3 辺は $\dfrac{13}{12}$、$\dfrac54$、$\dfrac5{12}+\dfrac34=\dfrac76$ で、$12$ 倍すると $13,15,14$ になる(ex-hrt-start)。$t=u=\dfrac13$ とすると 3 辺は $\dfrac53,\dfrac53,\dfrac83$ で、$3$ 倍すると $5,5,8$ になる(ex-hrt-start2)。

Dic05b の p. 193 には、有理数の辺と面積をもつ三角形の辺の比を 4 つの整数の媒介変数で表す Euler の式が記録されている。その導き方を書いた部分は失われていて、2 つの直角三角形を貼り合わせる方法によったのだろうと推測されている。rem-hrt-param の $t,u$ を分数 $t=\dfrac qp$、$u=\dfrac sr$ で書けば、4 つの整数の媒介変数になる。
辺だけでなく、中線や角の二等分線まで有理数にする問題もある。Dic05b の第 V 章には「有理数の中線をもつ Heron 三角形」の節(p. 207 から)がある。MathWorld の頁 Wei26 には、2 本の中線も有理数になる Heron 三角形の例として 3 辺 $73,51,26$(面積 $420$)が挙がっている。長さ $73$ と $51$ の辺への中線は $\dfrac{35}2$ と $\dfrac{97}2$ で、長さ $26$ の辺への中線は無理数である。

中線の長さの計算を開く

中線の長さの公式 $m_a=\dfrac12\sqrt{2b^2+2c^2-a^2}$ から、$\dfrac12\sqrt{2\cdot51^2+2\cdot26^2-73^2}=\dfrac12\sqrt{1225}=\dfrac{35}2$、$\dfrac12\sqrt{2\cdot73^2+2\cdot26^2-51^2}=\dfrac12\sqrt{9409}=\dfrac{97}2$、$\dfrac12\sqrt{2\cdot73^2+2\cdot51^2-26^2}=\dfrac12\sqrt{15184}=2\sqrt{949}$ である。面積は Heron の公式で $s=75$、$\sqrt{75\cdot2\cdot24\cdot49}=\sqrt{176400}=420$ である。

さらに先へ

  • 三角形を直方体に替え、3 辺と 3 つの面の対角線をすべて整数にする問題が Eulerの直方体 である。ピタゴラス数を 3 組組み合わせて作り、余りの議論で辺の性質を調べる。
  • 直角三角形の面積に注目すると、「どんな整数が有理数の直角三角形の面積になるか」という問題になる。これが 合同数(高校数学) で、面積 $1$ の有理数の直角三角形がないことを無限降下法で示す。
  • 座標平面の格子点を頂点とする多角形の問題は 格子点の正多角形 で扱う。格子点を頂点とする三角形の面積は $\dfrac12$ の倍数だが、辺の長さは一般に整数でない。
  • 有理数の辺の三角形の問題は、曲線の上の有理点を探す問題につながる。Heron の公式そのものの大学向けの説明は Heronの公式、有理点の問題の代表例は 楕円曲線 にある。

関連項目

参考文献

[1]
Leonard Eugene Dickson, History of the Theory of Numbers, Vol. II: Diophantine Analysis, Dover Publications, 2005, Chapter V, p. 191(Heron 三角形の定義と 13, 14, 15 の三角形)、p. 192(共通の辺 12 の直角三角形を貼り合わせて 37, 20, 51 を得る例)、p. 193(Euler の媒介変数の式と、その導き方が失われていること)、p. 196(辺と面積が整数なら面積は 6 の倍数、周は偶数)、p. 207(有理数の中線をもつ Heron 三角形の節)

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