開かつ閉集合

同義語:clopen set開閉集合

概要

開かつ閉集合(clopen set)とは、位相空間の中で開集合であると同時に閉集合でもある部分集合である。開かつ閉であることは境界が空であることと同値であり、非自明な開かつ閉集合の存在は空間の非連結性と同値である。開閉性は周囲の空間に依存し、有限の集合演算で保存されるが、無限の場合には注意が必要である。

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前提知識: 開集合, 閉集合

定義

開かつ閉集合

位相空間 $X$ の部分集合 $A$ が開かつ閉集合(clopen set)であるとは、$A$ が開集合であり、同時に閉集合でもあることをいう。閉集合は補集合が開である集合なので、これは $A$ と $X\setminus A$ がともに開集合であることと同値である。MathlibClopen26

$\emptyset$ と $X$ は常に開かつ閉集合であり、自明な開かつ閉集合と呼ぶ。$\emptyset\ne A\ne X$ を満たすものは自明でない。

直感

「閉である」は「開でない」という意味ではない。開であるかどうかと、その補集合が開であるかどうかは別の条件なので、両方を満たす集合も、どちらも満たさない集合もある。
自明でない開かつ閉集合 $A$ があると、$X$ は $A$ と $X\setminus A$ という二つの非空な開集合に分かれる。また、開閉性は周囲の空間と位相に依存する。同じ集合でも、実数直線の中で見る場合と、その部分空間の中で見る場合とでは答えが変わる。

例と反例

離れた二つの閉区間

通常の実数直線の部分空間として、二つの閉区間の和である $X=[0,1]\cup[2,3]$ を考える。部分空間で開である集合は、周囲の開集合と $X$ の共通部分として書ける集合である。
$$ [0,1]=X\cap(-1,3/2),\qquad [2,3]=X\cap(3/2,4) $$
だから、$A=[0,1]$ とその $X$ 内の補集合 $[2,3]$ はともに開である。したがって $A$ は $X$ で開かつ閉である。一方、$[0,1]$ は実数直線全体では開ではない。点 $0$ のどの開区間近傍にも負の実数が入るからである。

有理数の部分空間

$\mathbb Q$ に実数直線からの相対位相を入れ、
$$A=\{q\in\mathbb Q:q^2<2\}=\mathbb Q\cap(-\sqrt2,\sqrt2)$$
とする。$\pm\sqrt2$ は有理数ではないので、
$$\mathbb Q\setminus A=\mathbb Q\cap\bigl((-\infty,-\sqrt2)\cup(\sqrt2,\infty)\bigr).$$
両方とも周囲の開集合との共通部分であり、$A$ は $\mathbb Q$ で開かつ閉である。$0\in A$、$2\notin A$ なので自明ではない。

離散位相をもつ空間

すべての部分集合を開集合とする位相を離散位相という。この位相では $A$ もその補集合も開なので、すべての部分集合が開かつ閉である。MathlibClopen26

反例:開と閉は互いの否定ではない

通常の $\mathbb R$ で $(0,1)$ は開だが閉ではなく、$[0,1]$ は閉だが開ではない。また $[0,1)$ は開でも閉でもない。$(0,1)$ が閉でないことは端点 $0$、$[0,1)$ が閉でないことは端点 $1$ の近傍を見ると分かる。$[0,1)$ の開性は、そこに属する $0$ の近傍で失敗する。いずれも開かつ閉集合ではない。

性質

補集合と有限の集合演算

開かつ閉集合の補集合、有限和、有限共通部分は開かつ閉である。したがって、開かつ閉集合 $A,B$ に対し差集合 $A\setminus B$ も開かつ閉である。MathlibClopen26

開性と補集合の開性を確認する

$A$ と $X\setminus A$ が開である条件は両者を交換しても変わらないので、補集合について成り立つ。二集合の和 $A\cup B$ は開で、その補集合 $(X\setminus A)\cap(X\setminus B)$ も開である。二集合の共通部分 $A\cap B$ は開で、その補集合 $(X\setminus A)\cup(X\setminus B)$ も開である。これを有限回繰り返せばよい。空の和は $\emptyset$、空の共通部分は $X$ とする。最後に $A\setminus B=A\cap(X\setminus B)$ を使う。

連結性による特徴づけ

空間 $X$ が連結であるとは、二つの非空で互いに交わらない開集合に分割できないことをいう(連結の定義は 連結空間)。これは、$X$ の開かつ閉集合が $\emptyset$ と $X$ に限られることと同値である。ここでは空空間も連結とする。MathlibConnected26

開集合への分割との対応

自明でない開かつ閉集合 $A$ があれば、$A$ と $X\setminus A$ は非空で、互いに交わらず、和が $X$ となる開集合である。逆に $X=U\cup V$ がこのような開集合への分割なら、$V=X\setminus U$ なので $U$ は開かつ閉であり、非空性より自明ではない。空空間ではどちらの非連結性の条件も成立しない。

境界が空であることとの同値性

$A$ の閉包 $\overline A$ は $A$ を含む最小の閉集合、境界は $\partial A=\overline A\cap\overline{X\setminus A}$ と定める。このとき、$A$ が開かつ閉であることと $\partial A=\emptyset$ は同値である。MathlibClopen26

閉包の最小性から示す

$A$ が開かつ閉なら、$A$ と $X\setminus A$ はともに閉なので、それぞれの閉包は自分自身である。よって境界は空になる。
逆に $\overline A\cap\overline{X\setminus A}=\emptyset$ とする。$\overline A$ に $A$ の外の点があれば、その点は $X\setminus A\subseteq\overline{X\setminus A}$ にも属して矛盾する。したがって $\overline A=A$ であり、$A$ は閉である。同様に $\overline{X\setminus A}=X\setminus A$ なので補集合も閉、従って $A$ は開である。

Boole 代数

prop-clopen-finite-operations により開かつ閉集合の全体は $\mathcal P(X)$ の部分 Boole代数 をなす。Cantor集合 は開かつ閉集合が開基をなす(完全不連結空間)。

補足:無限和・無限共通部分には注意

有限という条件を外した反例

$\mathbb R$ の部分空間
$$X=\{0\}\cup\{1/n:n=1,2,\ldots\}$$
を考える。各一点集合 $\{1/n\}$ は $X$ で開かつ閉である。実際、実数直線の一点集合は閉であり、$1/n$ の前後に十分小さい開区間を取れば $X$ との共通部分を $\{1/n\}$ にできる。
しかし、その無限和 $X\setminus\{0\}$ は閉でない。$0$ のどの相対開近傍も、十分大きい $n$ に対する $1/n$ を含むからである。補集合を取れば、開かつ閉集合 $X\setminus\{1/n\}$ の無限共通部分 $\{0\}$ が開でない例も得られる。有限演算についての性質を、そのまま任意の無限演算へ延ばすことはできない。

関連項目

参考文献

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